シナリオ

バッドエンドロール

#√マスクド・ヒーロー #デザイアモンスター #魔法少女現象

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 #√マスクド・ヒーロー
 #デザイアモンスター
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●バッドエンドロール
 ちいさい頃から、映画がすきだった。
 一番古い思い出は、動物の国に住んでいる住民達が大冒険を繰り広げるアニメだったと思う。
 おおきなスクリーンで見る映像はきらきらとしていて、いっぱいに聞こえる音楽にびっくりしたけど、その物語が楽しくて仕方がなかった。
 母子家庭だった私を育ててくれたお母さんは、それ以来定期的に映画館に連れていってくれて、私が気になったものはなんだって見せてくれた。
 もちろん、教育上よくない映画は見たことがないけど。

 今でも思い出せるのは、女の子が魔法少女として悪と戦うテレビアニメの劇場版。二十年近く続いているシリーズだとかで、お母さんも小学生の頃に見たヒロインと、私がすきなヒロインが共闘する作品。お母さん、泣いてたっけ。
「――で、なんで私はこうなってるわけ?」
 ひらひらかわいいフリルのワンピース、だけどまるでネガフィルムのようなシックな色合い。
 それから、目の前には現実にはありえないような怪物の群れ。もちろんヒーローなんて何処にも居なくて――だけど。

「つまり、私がやれってことだよね」

 あの頃見た、憧れのヒロインみたいに。

●ハッピーエンドシネマ
「お疲れ様です。早速ですが、√マスクド・ヒーローへ向かってもらえますか」
 井碕・靜眞(蛙鳴・h03451)の言葉に、集まった能力者達は顔を見合わせる。
「はい、|魔法少女現象《プエラマギカ・フェノメノン》……こども達が、いわゆる魔法少女と呼ばれる存在に覚醒する事件です」
 自分もあまり詳しくないジャンルですけど、と続けて、星詠みは資料を渡す。
「こども達が覚醒した時、その心を狙うデザイアモンスターと呼ばれる怪物の群れが現れます。今まではロボトロンというメカが退治していたらしいんですが、彼らでは手に負えないほどこども達の覚醒が増えているらしく……今回は皆さんにも、その手伝いをお願いします」
 男は次の資料をめくるよう、能力者達に告げる。
「保護してもらいたいのは、|間中 未映《まなか みえ》――中学生二年生の少女です。映画鑑賞が趣味のようで、映画館へ向かう途中に覚醒することになります。今は魔法少女現象は発生しておらず、彼女も行きつけのカフェで過ごしていますから、皆さんもそのカフェや周辺施設で過ごしてもらうのがいいかと」
 その後、少女が覚醒した際にデザイアモンスターが襲来する。そこで能力者が駆けつけ彼女を守る必要がある。
「間中さんですが……その、随分やる気があるようで。魔法の力を得てはいますが、戦い方を知りません。逃がすにせよ手伝わせるにせよ、能力者ではないので、うまく誘導してあげてください。撃退後は、彼女にモンスターをけしかけたボスが現れます――お気をつけて」

 説明を終えたカミガリは、ぽつりとつぶやく。
「年齢は関係ないことですが、自分としても未成年がこういった事件に巻き込まれることはうれしくありません。間中さんを、よろしくお願いします」

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第1章 日常 『カフェで一休み』


不破・鏡子

「そうね、良くないわ」
 星詠みの言葉を思い出し、不破・鏡子は呟く。未成年だから、というのもあるけれど、偶発的に力を得て否応なく戦いに巻き込まれるというのが、鏡子の正義感には許せないものがあった。
 自ら望んで鍛えて身を投じたとしても、つらいことはいくらだってあるのに。
「――でも、そうなってしまったものは仕方ない」
 とにかく守ってあげなきゃね、と、まだ名もなきヒーローは決意してカフェへと向かう。
 人気店であるカフェは、雑誌で見るよりも雰囲気がよく穏やかな空気が流れている。
「なにか、定番のメニューなんかあるのかしら」
 これから戦いになるのだから、気合を入れておきたいもの。食べ過ぎで動けなくなっては元も子もないけれど、紅茶とサンドイッチを注文する。
「お待たせしました」
 しばらくすれば鏡子のために用意された品が届いて、あたたかな紅茶と共にサンドイッチをひと口。ふわふわの食パンに野菜と卵、ハムの絶妙なバランスは見事なもので、お嬢様である鏡子の口にも合うものだった。
 糖質とタンパク質は確かなエネルギーとして、しっかり身体に満たされることだろう。
 ちらと件の少女を見れば、ドーナツを齧りながらスマートフォンを見つめている。
 それはごく普通の、何処にでも居るような女の子。これから彼女の身に起こる現象は止められないけれど、力にはなれるはずだから。
「あとは警戒ね」
 力を得た先輩のひとりとして、鏡子は静かに未映を見守る。

チェスター・ストックウェル

 バングルを腕につけた金髪の少年が、カフェに訪れた。幽霊であるチェスター・ストックウェルがその姿を実体化する時、鋭い痛みが伴う。
 幽霊のままでは、保護対象である未映に気づいてもらえない。そのためにも、とある薬屋が処方してくれた痛み止めを服用していた。
「ほんと、頭が上がらないなあ」
 なんて呟いていれば順番がまわってきて、いらっしゃいませ、と女性の店員がチェスターへと微笑んだ。
「やあ、ミルクティーをひとつお願い。砂糖有りで」
「ご飲食は店内でなさいますか?」
「ううん、テイクアウト」
 かしこまりました、と注文を受けた店員がてきぱきと用意を始める。ビルダーズ・ティーのように甘い紅茶が好みだけれど、ここは日本。あとで砂糖はもうワンスティック追加しようと思いながら、少年は未映や他の能力者達の姿を確認しておく。
「お待たせいたしました」
 あたたかなミルクティーは、カップスリーブ越しの掌にちょうどよい熱を届けてくれる。ありがと、とウィンクをひとつ、スティックシュガーもひとつ貰って、カフェを後にする。
 それからふわりと現れたのは、簒奪者には視えない死霊達。映画館までの道筋に点々と向かう彼らは、もしもの警戒に当たるにはもってこい。
「うーん、自然に張り込むのって難しい」
 今度、カミガリの先輩方にアドバイスを貰うのもいいかもしれない。そうしてひと口、デフォルトよりも甘くなったミルクティーを飲む。
「……やっぱ足りないなぁ」

第2章 集団戦 『デザイアモンスター』


「なに、これ」
 思わず疑問の声をこぼした少女は、シックな装いのフリルのワンピースドレス姿。
 魔法少女としての覚醒を果たした未映の視界に映るのは彼女へと襲いかかるデザイアモンスター達だった。
 映画館へと足を運ぶ途中だったのであろう人々は、まだ周辺に居る。ならばと彼女は呟いた。
「つまり、私がやれってことだよね」
 憧れのヒロインの活躍を胸に、少女は目覚めた。その手を貸すため、能力者達と戦場へ集う。
不破・鏡子

 不破・鏡子の目に映るのは、魔法少女として覚醒した未映の姿。これが魔法少女現象か、と改めて摩訶不思議な現象を認め、同時に現れた怪物の群れを睨む。
「現れたわね、怪人……じゃなくてデザイアモンスター!」
 たん、と軽やかに地を蹴って空中に跳んだヒーローは、敵を飛び越え未映とモンスターの間に割って入る。
「だ、誰……?」
「自己紹介はあと!」
 不気味な腕を振りかぶった敵の攻撃を、エネルギーのバリアが弾く。同時に、鏡子は未映と語りかける。
「さて、魔法少女さん。あなたの力を疑う訳じゃないけれど、初めての変身でこの大群を相手にするのは大変でしょう? 手を貸すわ、魔法少女仲間じゃなくて悪いけど」
 彼女がどういった能力の持ち主であるかも気になる。鏡子の言葉に、未映も素直に頷いた。
「……うん、お願い。私ひとりじゃ、流石に難しいってことくらいわかる」
「ええ、それじゃあ始めましょう」
 五指に嵌めたリングから放たれる、無色透明の不可視の糸。それらがモンスター達を絡めとり、一か所に纏めあげる。
「はぁっ!」
 気合の声をひとつ、マスクド・ヒーローは得意の蹴撃を食らわせる。確かな一撃は化け物達を傷つけるものの、欲望のオーラを増幅させることでじわじわと形を修復していく。
「こいつら、ほっとくと傷が治るのは厄介ね。魔法少女さん、サポートはできそう?」
「できる、と……思う!」
 リボン状のネガフィルムがしゅるりと伸びて、敵を拘束。なるほど、と鏡子は頷いて、再びモンスター達へ接近。右掌で触れたなら、これ以上奴らが回復することはない。
 フィルムリボンの上に飛び乗って、宙を舞ったヒーローは必殺の蹴りを一発食らわせる。数体を一気に消滅させたものの、敵の数はまだ減らない。
「今回は防衛線ってトコね!」
 様々な戦いを続けてきた先輩として、鏡子は果敢に笑う。

アンドレアス・オルロック

「簒奪者を発見した。これより殲滅する」
 短く誰かへとそう告げて、アンドレアス・オルロックは見に纏ったまっかな護霊へと命ずる。
「行くぞメリーウェザー、護霊としての任を果たせ」
 ふわり、ストラの端がほどける。ちいさな糸くずめいたそれはやがて巨大化し、突然の出来事に動揺する通行人達を丁寧に包み込む。デザイアモンスターの欲望を増加するオーラから遮断された一般市民の姿に、魔法少女に目覚めたばかりの未映は驚いた。
「え!? なに、これ」
 そんな彼女を無視して、男は迷いなく自らの手首をナイフで掻っ切る。
「サングルローズ、外へ」
 彼の血潮に巡る融合体は、あかい雫と共に周囲のモンスターへと絡みつく。その異形の匂いに惹かれるように集まる怪物共を、一気に縛り上げた。そうしてぎちりと強い拘束を行えば、男は素早く接近し怪物の手足を踏み砕く。悲鳴すらあげないモンスターを、淡々と処理していく彼の姿に、少女はわずかに恐怖を覚えた。
「おい、娘」
 アンドレアスが自分のことを呼んだのだと、未映はワンテンポ遅れて気づく。
「何をやる気になっているか知らんが、貴様な未だ只の一般人に過ぎん。さっさと避難しろ」
「で、でも」
 男は視線を怪物に向けたまま、回し蹴りによって蹴り千切る。言葉の通じぬいのちを絶やしていく。
「生き物を殺したことはあるのか? 殺したい奴はいるか? 力だけ得た餓鬼め、平凡な幸福のなかで生きればいいものを」
 咥え煙草の赤い煙は消えず、彼がどれだけの地獄を潜り抜けてきたのかは、少女にもうっすらと感じ取れたかもしれない。
「――だが理不尽な神の采配だ。お前はこれから狙われる」
 それを止められるものは居ないのだから、アンドレアスは生き延びる術を教えてやる。
「よく見ておけ。まずは動きを止め、相手の武器を壊せ。こうやるんだ」
 蠢く触腕を蹴り潰す男の姿を緊張した面持ちで見つめていた未映は、ネガフィルムのリボンを敵へと放つ。
 そうして縛りつけた敵の腕は、リボンを絞ることで砕かれた。

御巫・朔夜

 ぞろりと現れるデザイアモンスターが、魔法少女に覚醒したばかりの少女へと襲いかかる――瞬間、凄まじい光線が敵をぶち抜いた。
 あっという間に消え失せたモンスターに目を瞠る未映の傍、すらりとした美女が降り立った。
「君、怪我はないようだな」
「あっありがとう……!」
 御巫・朔夜は少女に怪我がないのを確かめて、静かに頷く。まだまだあふれるようにこちらをぐるりと取り囲む怪物達に、改造人間は凛とした眼差しを向けた。
「私があらかた撃ち抜いていく、君は支援を頼めるか」
 朔夜の問いに頷いて、魔法少女は自身を包むネガフィルムめいたリボンを敵へと飛ばす。数体の怪物を一気に引き絞りひとまとめにしたのを見て、なるほど、と朔夜は彼女の能力を把握。
「これだけの数だ、出し惜しみをする必要もないな――|切り札《ジョーカー》を切らせて貰う」
 魔法少女の愛らしい変身とはまた違う、うつくしくどこか艶ある妖精族因子の覚醒。いつかの記憶に眠るシャドウエルフ形態を取った朔夜の耳は、長くとがったものへと変わる。
 白銀の弾丸をガンライフルに詰めたなら、あおい眸はまっすぐに怪物共を睨む。引き金をひいた時、撃ちだされるのは月光めいた影を帯びた一撃。
 少女が拘束していたデザイアモンスターは弾丸を浴びて消滅する。
「すごい……」
「君のサポートのおかげだ、この調子で突破するぞ」
 力頷く魔法少女の眼には、朔夜が頼もしく映ったことだろう。

チェスター・ストックウェル

「おー、これが魔法少女の変身! 生で見れるとテンション上がるなあ」
 少女の変身をふわりと上空から見ていたチェスター・ストックウェルは、テレビでしか見ない姿に歓声ひとつ。
 そして、自分のようなギャラリーですら盛り上がってしまうのだから、当の本人はやる気に満ちているはずで。
「無理矢理撤退させるのは気がひけるね」
 ぱちり、指を鳴らして呼びだしたのは、徹底的なマークが得意なかわいらしいシーツおばけ達。あまり詳しくはないけれど、魔法少女モノにはこういったキュートなマスコットがつきものだと聞いている。
「じゃ、みんな。よろしくね」
 はぁい、と返事をするようにふよふよと浮いたおばけ達は、逃げ遅れた人々とほぼ変わらぬ外見に変身。こっちへ、と避難誘導をしていく彼らについていく一般人の流れを確認して、少年は地上へと降りる。
「や、そこの彼女。戦いは初めて?」
「……は?」
 まずい、初手の声かけを失敗した。明らかにこちらを怪しむ未映の視線に、チェスターは慌てて首を横に振る。
「――いやいや、ナンパじゃなくて! 俺は……ほら、魔法少女モノに偶に出てくるイケメンライバル枠的なアレだよアレ!」
「自分でイケメンとか言うんだ……」
 わかってはいたものの、突っ込まれると自分で言っててもちょっと悲しくなってくる。
「とにかく、この業界では俺の方が先輩。後輩の君はまだ残ってる人達の避難誘導やサポートをお願い」
「でも……あなた、一人で大丈夫なの?」
「言ったろ、先輩なんだって。俺の友達に続いて! 早く!」
 ふわり、シーツおばけが未映の手をとる。かわいらしいちいさなおばけに目を丸くしつつも、少女はチェスターの言葉に従う。
 少女がネガフィルムのリボンを器用に扱い矢印を生み出して、人々の誘導へと向かうのを見届けて、少年幽霊はステンレス製の自動拳銃を取り出す。
「さぁて、先輩ぶったからにはやらないとね!」
 引き金をひけば次々と飛び出す霊弾は、霊障によって敵の動きを阻害する。個体で戦うのは難しいと判断したのか、デザイアモンスター達は不定形な身体を合体させる。
「っと、怪獣大決戦? ジャンルが違うんじゃないかな」
 巨大な腕が少年の身体を叩き伏せようとも、世界の歪みがそれを阻む。透りぬけた彼の姿に巨腕が驚くより先、チェスターはあえて敵集団へと飛び込んでいく。
「鬼さんこちらっと」
 チェスターを追いかける腕が、再び勢いよく攻撃を仕掛ける。しかしそれは彼の身体を傷つけず、凄まじい勢いで他のデザイアモンスター達を吹き飛ばす。
「はい、今のでキルマークもうひとつ!」
 貫く弾丸の勢いは止まらず、同士討ちもやまない。軽やかに躍るステップで、少年幽霊は怪物達を翻弄していく。

第3章 ボス戦 『フィルム・アクセプター『シネマプラグマ』』


 デザイアモンスター達が消滅し、無事に一般人を避難させた時。かつこつと足音が聞こえてくる。
「やはり、借り物の雑魚ではこの程度か」
 どこかヒーローめいた見目、そして映写機やネガフィルムを思わせる姿は未映にも通じるところがある。けれど彼女の纏う雰囲気と、その怪人の纏うオーラはあまりにも違いすぎた。
「その小娘を放置しておく訳にはいかん、お前達のような脇役もな」
 彼の名はフィルム・アクセプター、シネマプラグマ。魔法少女に覚醒した未映へとデザイアモンスターを嗾けた張本人。
「ここはオレの劇場……間もなく上映開始だ。お前らのBADENDがな」
 強敵へと身構える能力者達の背後、少女の声が響く。
「なにがバッドエンドよ! 私はそういう終わり方、大嫌い」
 ふん、と文句を告げる未映を中心に、ふわりとあわい光が能力者達を包む。
「それが作者も演者も納得できるならいい。でもね、少なくとも私もこの人達も、あんたの作品の脇役なんかじゃない!」
 鮮やかなフィルムが能力者達を包めば、それはいつかの大切な記憶ばかり。
「あんたのまじでつまんない映画、ハッピーエンドにしてぶち壊してあげる!」

※覚醒した未映の能力によって、未映が味方と認識した能力者全員は著しい命中率上昇の強化付与を得ることができます。
大切な記憶は未映のもの、あるいは能力者のものを映し出すでしょう。
アンドレアス・オルロック
不破・鏡子

 はじめての戦いにもかかわらず、恐ろしい見目のモンスターや怪人を前にしても見事な啖呵を切った未映。それを見た不破・鏡子は、ふふ、と笑みをこぼす。
「もしかしたら素晴らしい才能の持ち主かもね、この子」
 アンドレアス・オルロックはその言葉を聞きながら、流れていく少女の記憶のフィルムにちらと目を遣る。
 母親とはじめて出かけたのであろう映画館での、楽しげな幼い未映の驚いたり緊張したり、最後には満面の笑みで拍手をする姿。それに感傷を持つわけでもなく、けれど男は静かにシネマプラグマへと告げる。
「映画を流したければ映画館に行け、駄作でも数人は見るだろう。エキストラも上手く使えん程度で監督を気取るな、脇役」
「ならばこれで、多少はお前らも満足するか?」
 怪人が一気に放ったのは駆動音ひとつ立てぬ戦闘機械と、きぃきぃ騒がしい小妖怪の群れ。
「ふふ、どうかしらね。さて、私も頑張らなきゃ!」
 一度に無数の配下を差し向ける姿を見て、鏡子はスピード重視の装備へと瞬時に変身していく。同時、全身に巡る融合体へとアンドレアスは告げた。
「混ざれ、サングルローズ」
 魔術によって凝固した血液は外殻型の装甲として展開し、男を包み込む。小妖怪の群れの攻撃に、あえて鏡子が飛び出す。瞬時に跳躍した彼女がナイフを振るえば、光学迷彩を纏って瞬時に消えた少女の姿はどこにも無い。
「なに!?」
 驚くシネマプラグマの命令に従った戦闘機械が索敵に集中しようとした時、アンドレアスを防護する盾と籠手がおもいっきり打ち合わせられた。がなり立てるような轟音は、精密機械の超感覚センサーをあっという間に破壊する。
「性能がいいのも考え物だな?」
 ただのがらくたへと成り下がった戦闘機械を蹴り飛ばし、高速で駆け抜ける鏡子は小妖怪達をナイフで切り刻む。手にした銃でシネマプラグマが彼女を狙おうにも、そこにあるのは残像ばかり。
 舌打ちをこぼした怪人が男へ照準を合わせれば、小妖怪が主人の放つ光弾を誤魔化すようにアンドレアスに飛びかかる。
「ああ、くだらん演出しかできないようだな」
 浅はかな。吐き棄てた男の言葉は、自由自在の劔の尾が示している。伸ばされた尾が回転し、力任せの薙ぎ払いによって光弾ごと小妖怪を吹き飛ばす。
「あんたなんかに、この人達が負けるもんですか!」
 叫ぶ魔法少女の声に、再び彼女の大切な記憶が二人の力と成る。だいすきなヒロインの活躍に感激している娘と、かつて憧れたヒロインの姿に涙する母親。
「頼もしい限りね」
 攪乱のさなかに鏡子は隙を見て、ナイフによる強烈な一撃を叩き込む。続けざま、赤いストラのかたちをした護霊がガラクタと妖の骸をひとまとめにしたものを、アンドレアスは淡々と、それでいて勢いよくプラグマへとぶち込んだ。
「こうなったらもうあなたの行く末は決まりね、プラグマ。ハッピーエンド……ヴィランにとってのバッドエンドで終わりにしてあげる!」
 凛とした姿で言い放つ鏡子がまっすぐに敵を見据え、アンドレアスはくゆる煙草の煙をそのままに。
「貴様の映画は思想が出過ぎだ、子供が見るべきではない。潰れろ、簒奪者」

チェスター・ストックウェル

 やれやれ、とチェスター・ストックウェルはシネマプラグマへと大袈裟に肩をすくめる。
「見た目はヒーローっぽいのに、セリフが完全に悪役のそれなんだよなあ」
 ふいに、幽霊を包み込むように流れるフィルムの映像。映し出されたのは、少年達が楽しそうに、それでいて真剣な表情でサッカーをしているものだった。
 相手のディフェンダーを抜き去って、描いたシュートコースをなぞるようにボールはゴールへ吸い込まれていく。歓声をあげて駆け寄るチームメイトは、この試合のヒーローを小突いては笑顔を見せる。その輪のまんなかに居るのは、チェスター本人だった。
 これ以上なく満たされた幸せな記憶――そんな光景に、少年幽霊はやわく未映へと笑いかけた。
「ありがと、俄然やる気が湧いてきたよ」
 この映画の主役は能力者達と魔法少女であり、当然ラストは大団円。悪を倒して、街には平和が訪れることを知っている。
「ありふれたものだな」
「そう? 君にとっても傑作になると思うけど?」
 ほざけ、とシネマプラグマが群れる怪異を放つ。ぞうぞうと不気味なそれらがチェスターへと向かってきたなら、少年は視界で|游《およ》ぐインビジブルと瞬時に選手交代。場所を入れ替わったインビジブルは呪いを撒き散らし、怪異の群れに苦痛を伴うダメージを与えて蹴散らした。
「なんだと!?」
 思わぬ展開にシネマプラグマは焦りつつも、怪異を増やし手にした銃で少年へと照準を定める――途端、チェスターは敵の群れるまっただなかへと飛び込んだ。
「ちょっと借りるよ」
 インビジブルを制御しながら、怪異を盾に怪人から放たれる光線を防ぎきる。チェスターを狙って呪殺の波動を飛ばす怪異達は少年の動きに翻弄され、味方であるはずの同志を滅ぼす。
「俺はアドリブが結構得意でね――だから、君の筋書きには従えない」
 金の双眸が爛々とかがやく。根元から折り曲げられ、鋭く尖った道路標識がシネマプラグマへと突き立てられる。
 終わりはあっけないもので、自分の胸元を深々と貫く呪物に怪人は目を剥いた。
「ふふん、これがダーツなら今のはブルかな。悪役の最期に相応しい気の利いたセリフを頼むよ」
 ふ、とちいさく怪人が鼻でわらうようにこぼして、それから。
「――プラグマに、栄光あれ」
 派手な爆発もなく、ただ消えていく怪人の姿を見届けて、少年幽霊はふと思う。俺も、もう少しファンシーな技を習得するべき?
「なんてね!」
 そういって、魔法少女へとウィンクを飛ばす。

 怪人を倒した能力者達に、いまだ変身が解けないままの未映が笑顔を向ける。
「ありがと、ヒーローさん達」
 これから始まる彼女の物語を前に、薄暗いエンドロールが流れることはない。
 能力者達もまた、確かな物語を紡ぎ続けている途中なのだ。

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