頭を開いて、音をしまい込め。
●うつろさを、えるように
その音色は陰鬱。
響き渡るエリック・サティの生み出した調べ。ゆっくりと自由に、そして感覚的に。拍子記号も小節線もない楽譜から生まれる各々の解釈を、ぼくは深く愛している!
……脳の奥底にまで響く穏やかで甘く恐ろしい音。
耳を塞いでも聞こえるよ。人類の肉体は優秀なんだ。手で塞ぐくらいじゃあどうにもならない。
……やめて。嫌。事故なの。わたしたちはそれを見ただけ。
本当かい? そう、それはよかった! ああでもあの子、頭を打ったおかげで、腕を動かせなくなって、耳も聴こえなくなってしまったらしいんだ。
……そんなの知らない。だってわたしたち。
――あいつがどうなったって、どうでもよかった!
「煩い」
乱雑に響く音。
グランドピアノの鍵盤に強く手をついて立ち上がった女は、這いつくばり、あるいはうずくまるように耳を塞ぐ|少女《被害者》たちへと歩いていく。
――それは壮絶ないじめの顛末。曰く……『音楽なんていう、地味なくせに高尚な趣味』を持つその娘が気に食わなかった。
クラシックなんてくだらないもの、校内放送で流すとか……もっと流行りの曲を流せばいいのに!
いじめる切っ掛けとなったのはただ、それだけ。
軽く押した。押しただけ。尻餅でもついたら面白い。
椅子に彼女の足が引っかかって、頭を机の角に打ち付け。次は床に倒れ込み、動かなくなった。
面白かった! あいつ、いつも音楽室に籠もっていたから。わたしたちも大声で好きに笑えた!
だから対応が遅れた。わたしたちだけだったから。
彼女が起き上がらないこと、机に血が付いている。床に血液が広がって。
嘘を、つきました。
あの子を|仲良しグループ《遊び仲間》に『入れてあげている』って思われていたから。
いずれバレるかもしれない嘘を吐いて、信じてもらえた。
では彼女たちは、なぜここにいるのか。
夕暮れの日が差し込む窓。逆光に照らされる中で、女は少女たちを睨む。
「あの娘は二度と……|グノシエンヌ《ぼく》を、奏でられなくなった」
立て続けに二度の衝撃を受けた頭は『開かれた』。意識はまだ戻らない。後遺症が残るだろうと宣告され、一週間経つ。
女は『彼女』を知っている。この√に訪った際、比較的『平和』に接したことのある人間。
多少『|洗脳《心遣い》』はした。その才能を見込んで|ぼくのこと《グノシエンヌ》を愛してもらった。
彼女の指は鮮やかに動く。鍵盤を優しく撫で甘い音を響かせる。コンクールで予選を通過したと聞いたときには、共に喜んだものだ!
それが『ぼくの手助け』があったからだとしても。音楽を心から愛する彼女をぼくが愛さない理由はなかった。
許せない。
ぼくが愛する物を、ぼくを愛する者を愚弄し――|ぼく《グノシエンヌ》を弾く『あの指』を奪った、こいつらが!
「――きみたちの頭も開こう。大丈夫、穏やかなものだ……ぼくに任せるといい」
そう。あの子の頭より、丁寧に開いて!
その大脳、左右が分からぬほど、ぐちゃぐちゃに掻き混ぜてやろう!
さあ『グノシエンヌ』第3番。甘く陰鬱な旋律も今は凶器。
奏で続けようサティの調べ。あの娘のため、ぼく自身のため!
きみたちの脳が愛らしい桃色のスムージーになるまでぐるぐると――。
それを床へぶちまけて、踏みつけてやることで!
ぼくのこの気持ちの昂りは、ようやく、おさまってくれるはずだ!
●こんばんは。
「よう、『こんばんは』。良い夜だな――と、言いたいところだが……」
夕暮れ、とある学校前。言葉を区切り煙草の煙を吐き出す男。
人間災厄とはいつでも自由。「歓喜の歌」、六宮・フェリクス(An die Freude・h00270)曰くだが。彼は面倒くさそうに頭を掻いた。
|彼ら《人間災厄》は、己の主義や主張、本能に従い行動する。収容され管理され――この男のように√能力者として人類に加担する者もいれば。
語られたゾディアック・サインのように、気まぐれに人を惑わせ洗脳し、何かあれば私刑を執行するようなものもいる。
「『グノシエンヌ』。エリック・サティの曲を冠する人間災厄だ」
火の消えた煙草を携帯灰皿へと突っ込み、学校へと目配せをするフェリクス。あの場所にはきっと彼女の痕跡が、これから行う所業の前触れがある。
人払いはある程度済んでおり、下校時刻も過ぎている。中に残っている者はかなり少ない。自由に歩き回れるだろう。
「餌を盗られてキレてる。甘いもん与えて肥えさせて、最終的には食うわけだからな。オレにゃあ分かる」
……災厄として、どれだけ人間を愛していようとも……最終的な所業がそれでは、意味がない。
「耳からぐちゃぐちゃの脳みそぶちまけてる死体なんて、見たかァないだろ? ――奴は音に関わる場所を好む。それから……|女生徒《加害者》を集めて、演奏会をするんだってよ」
そう言い残し、立ち去る星詠み。「これ以上は関与したくない」、とばかりに……。
マスターより

おはようございます、親愛なる皆様!
R-Eと申します。
難易度ちょっぴり高めです。がんばっていきましょう。
ド陰鬱をお届け!!!!星詠みが黙って首を振る!!!!精神がへこむ&わりとグロテスクなタイプのシリアスシナリオです。お気をつけて。
そういうのがお好き? ありがとうございます。
お望みとあらばそれっぽくプレイングを書いていただけるとひょいっと拾います。2章以降くらいから。
楽しみましょう。この演奏会を!
●1章
ただやみくもに探すだけでは、簒奪者たちの姿を見つけることは難しいです。
被害者となる女生徒達の姿もありません。
『グノシエンヌ』自身も学校内のどこかに潜伏しており、痕跡こそありますが発見は困難。
配下については、関連していそうな場所を探すと良いかもしれません。
オープニングに情報が出ています。
●2章
配下との戦闘です。
1章で「配下か『グノシエンヌ』を発見できた」or「発見できなかった」場合で配下が変化。
3章開始時点での展開も変わります。
●3章
人間災厄『グノシエンヌ』との戦闘。
性質・性格を見抜ければ、そこそこ戦いやすい相手でしょう。見抜けなければ、厳しい戦いに持ち込まれる可能性もあります。
それでは、あなた自身を頼りに、良い音楽鑑賞を。
48
第1章 冒険 『簒奪者の痕跡を追え』

POW
怪しい箇所をくまなく歩き回り、痕跡を探す
SPD
簒奪者特有の行動の痕跡を追う
WIZ
周囲を漂うインビジブルの挙動からヒントを探す
√EDEN 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

|簒奪者特有の行動の痕跡《SPD》を追おう。
音に関係する場所なんぞ、学校は各教室にオルガンが置いてある可能性はある。それを考えれば広範囲が過ぎるな……とはいえ、音に関わる場所でわざわざ被害者を集める、ということを考えれば、視聴覚室か、音楽室か。
放送室……はないか……?ソレだと集めて被害者の苦しむ顔を見て楽しむことはできないからな……等考えながら、入り口にある学校案内を確認し、音に関係しそうな場所をチェック。まずは音楽室からあたっていこうか。
「仕事だからな」音楽室へ向かう道中も見落としのないように探していく。
被害者が出る前に辿り着ければ御の字かね。
アドリブ、共闘OKです。

SPD判定
被害者候補の頭が割られても守ることができても、いじめられていた子が治る訳じゃない
だからと言って手を抜くことはしないけど
(なんだか、やり切れない話だね)
フェリクスの言葉を元にまずは音楽室へ向かう
楽器……特にピアノの傍を探って蓋を開けてみて痕跡を探す
他に候補があるなら体育館かな
演奏会をするなら音楽室より大きい会場を求めているかもしれない
音楽室も体育館も、誰も居なければ駄目元でグノシエンヌのメロディを弾いてみる
……片手でどうにかメロディをなぞれる程度の児戯だから、人間災害が聞いていたら怒られるかもしれないな
洗脳されていたとしても
音楽を奏でていた時は、幸せだったんだろうか
※アドリブ、連携歓迎

アドリブ・連携お任せ
うわ~……私のようなのが言うのもなんですがグロテスクな現場になってしまうのですね
まぁ、頑張って探してみますか(お菓子もぐもぐ)
う~ん?しかし音に関わる場所?ですか……
普通に音楽室とかでしょうか?
(一先ず音楽室にとてとて好みの曲を口ずさみながら向かい、探してみたり)
う~ん、ここ以外とすると……途中チャイムが聞こえたときに思いましたが、全体に知らせる放送室?のようなところも候補ですかね?
それ以外だと……演奏会と言っていましたからやはりステージのある……場所なんかも候補ですかね?
(他の場所として該当する場所も、お菓子を食べて歌を口ずさみながら、痕跡がないかと探して回り)
下校を促す、最後のチャイムが鳴った。残っていた職員たちもこれですべて引き払っていくことだろう。
前もって用意されていた鍵を用いて学校内へと入り、軽く周囲を見渡すはクラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)と、奇しくも同じ場所を目指しているという千早・鴉綺(|武装機械《Triple Apocalypse》・h05341)、そして神咲・七十(本日も迷子?の狂食姫・h00549)だ。
「(被害者候補の頭が割られても守ることができても、いじめられていた子が治る訳じゃない)」
クラウスの思考はごもっともだ。復讐心に突き動かされ、「そうでもしないと抑えきれない」という激情をその内に湛えて、鍵盤を弾くのがあの人間災厄。手を抜くことはできないが……どうにも、やりきれない話である。
結果的なものにはなるが。犠牲者は既に――グノシエンヌに魅入られた、あの少女――出てしまったあとだ。
「うわ~……私のようなのが言うのもなんですが、この学校がグロテスクな現場になってしまうのですね……」
やや呑気に。お菓子を食べながら周囲をきょろきょろ見回しながら歩く七十。先程までクラウスと鴉綺に対しガッチガチに緊張し、メッセージボードで会話していたとは思えない変わりようである。
一度慣れてしまえば、そこからは自由なものだ。ピーナッツをチョコレートでコーティングした丸い菓子を開けて、ツメが無地だったことにちょっとした落胆を覚えつつも、鼻歌を口ずさみながら彼女は歩く。
次なる犠牲者がどのような者たちなのかは分かっているものの、簒奪者はどこにいるのか。星詠み曰く、簒奪者の痕跡は「音楽に関連する場所にある」という。
「オルガンのある教室も含めれば、とんでもない数の場所をあたることになってしまうな……」
それこそ、やみくもに。注意深く、周囲への警戒をしつつ鴉綺は先を行く二人の少し後ろを歩く。仕事なのだから、油断は禁物だ。
曖昧な情報から手繰り寄せるならば、まず向かうべきは当然、音楽室であろう。……星詠みたる彼は関わりたくなかったのか、それとも、それ以上読み取れなかったのか。微妙なところだ。
位置については、入口にあった校内地図の案内で把握している。四階の端だ。真正面には非常階段の扉。それを見つつ音楽室へと入れば、そこはイメージ通りの室内であった。
……さらっと見通しただけで分かる。床の赤いカーペット、その一部分が切り取られ、新しいものに張り替えられた跡があった。血液で汚れた部分だろう、そこだけが新品として明るい色彩をしていることが、どうにも不気味だ。
当然ではあるが、簒奪者本人たちの姿は無い。下調べといったところに収まるだろう。
それ以外に目立つものといえば当然、グランドピアノ。開いてみれば日常的に使用されているのだろう、学校に設置されているピアノとしては、よく手入れされているほうである。
お菓子をつまんでいる七十に代わり、クラウスが鍵盤をひとつ押してみれば、よく響く美しい音色。異常はない、そのように思える。
「う~ん、ここ以外とすると……途中チャイムが聞こえたときに思いましたが、全体に知らせる放送室? のようなところも候補ですかね?」
「ああ。被害者を集めるには狭いが、あり得るだろう」
最後に鳴ったチャイム。音に関するという点では、探索する場所の候補に入れていて良い。視聴覚室という可能性もある。ある程度広く、楽器を運び込めて、音についてもそこまで響かないよう考慮された位置にあるはずだ。
「……集める。集めるならば、放送室から呼び出すという方法もあるか」
「それに演奏会と言っていましたから、やはりステージのある……」
「体育館……とかになるかな」
各々が思考し、ひとまず三人は体育館へと向かう。事にした。ドアを開ければ、かなり広く作られているようだ。
既にカーテンが締め切られており暗く、体育館の舞台、その緞帳も閉まっている。
暗がりの中を進み、緞帳をめくり中を覗き込んだ目前に現れるは、グランドピアノ。
「ここにも……」
七十が小さく呟く中、クラウスはピアノの様子を見る。懐中電灯で照らしてみれば、その表面には埃を拭ったであろう跡が残っていた。鍵盤蓋を開けて鍵盤も押してみるが、やや音の響きが鈍い。こちらのピアノは長い間使われていないようである。
「んー……予知だとピアノでしたがー」
「……『ズレ』た可能性もあるな」
くるんと丸まったスナック菓子を口に放り込む七十の言葉に、鴉綺が頷く。簒奪者……グノシエンヌ。彼女もまた√能力者であり、星詠みの力を持っていたとしてもまったくおかしくはない。
クラウスが再度、鍵盤へと指を当てる。ゆっくりと、やや拙い手つきで、グノシエンヌのメロディーをなぞる。
どこか陰鬱で、オリエンタルな響き。自由に、常識にとらわれないようにと作られた楽曲。
「(洗脳されていたとしても、音楽を奏でていた時は、幸せだったんだろうか)」
こうして音をなぞっていると、複雑な気分にもなるというものだ。洗脳された結果得たもの、それで「彼女たち」は満足できたのか。
ともあれ……ここに今、敵影は無い。鍵盤蓋を閉めて、三人は探索へと戻っていく。
被害者が出る前に、探し当てなければ。
それでも陽は無慈悲に沈んでいく。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴 成功
●第1番
拙い|グノシエンヌ《ぼく》が聞こえる。
指の動きはがちがちで、片手でなぞっているのだろう。
ああ今すぐにでもその手をとって、優しく、こう指を置くといいと、教えてやりたいものだ!
けして指先に力を込めず……人の肌を撫でるように……けれど確かに、沈み込ませるように。泥を撫でるように……。
自らの前に現れる幻影の鍵盤。それに指を置き、弾き始める。音のない、演奏。ゆっくりと、自分に任せ、己のために――グノシエンヌとは、そのような音楽なのだから。
ねえ、聞こえるかい。
インビジブル程度になら、聞こえているかな。
苦しい? そうか、それはよかった。
自由に……怒りや憂鬱を込めても良い。「ゆっくりと」、それだけの曖昧な指示に従って。ぼくの指は、確かに鍵盤をなぞる。
ぼくは、音楽を、愛している。……穢させるものか。

……何とも言えない話だな。
だが迂闊な同情も軽蔑も禁物だろう。さて、どうしたものか。
音楽室……は誰かが当たっていそうだな。それなら俺は永劫回帰で音楽が好きだった部下の記憶を呼び出して、音楽――――特にグノシエンヌの聞こえてくる方向を探そうか。音を頼りに怪しい箇所をくまなく歩きまわり痕跡を探そう。体育館や教室辺りに目安をつけて、ひたすら足で稼ごうか。
放送室も気になるな。この場所から音楽を流せば学校のどこに居たって聞こえるだろう。攻撃するにもけん制するにも呼び込むにももってこいだ。
だがまずはともかく学校内を歩き回ってみるか。音楽の聞こえる方向へ。
ああ、だが音楽鑑賞だなんて随分と久しぶりだな…………。
眉根を寄せ、ハインツ・ハイネ(デッドマンの戦線工兵・h00422)は小さく、白い息を吐く。何とも言えない話だ。
くだらない理由で少女を虐めるに至った加害者たち。詳細は分からないが、洗脳され人間災厄に頼ってしまった少女。曰く「餌を盗られてキレている」、それだけではなさそうな人間災厄。ワードを掻き集めれば、線が少しずつ繋がっていく。
……迂闊な同情も軽蔑も禁物だ。どこに何をぶつけても、誰かしらに「触れてしまう」。ハイネはそれをよく、理解していた。
「(音楽室は誰かが当たっていそうだな)」
その通り、既に調査は進んでいる。彼は知らぬ事だが、気になる点はあれどそこには簒奪者と、加害者たる少女たちによる「酷い痕跡」だけがあったのだ。
ならばとハイネは√能力を使用する――|永劫回帰《アルゾ・シュパー》。起きろ。仕事だ。
……音楽が好きだった、あの部下の記憶。選ばれたるは当然趣味技能、本来の『グノシエンヌ』が何たるか、そして音楽に関する記憶。
瞼を開けるように、めざめるように情報として染み込む情報。
……どこからか微かに、グノシエンヌが聞こえる。拙く、短く。体育館か。これは他の√能力者が弾いているものだろうか? すぐに音は止んでしまった。
それでも耳に残る旋律。気付けば口ずさんでいる。己の情報ではない、曖昧な……うつろな、メロディー。音楽の聞こえる方向へ。気配を辿って。己自身を頼りに。
時間をかけすぎるわけにもいかない、怪しい箇所を絞り込んでいく。音楽室と体育館は既に誰かが向かっている、ならば教室――覗ける分だけ、効率的に周れるよう。
やや時間はかかったものの、さほどの時間はかからなかった。インビジブルが、空虚な魚影が避けるように泳いでいく。どこからか逃げるように。
そうして向かうは放送室。
『(――パッと見、本体も被害者も居ないってなりゃあ、『誰か』が集めなきゃいけない――呼び出しといったらココですよ。それに)』
己の思考だというのに、部下の言葉遣いが混ざって。
ドアを開けようとする。鍵が掛かっている。中から気配がする。問答、無用。
『(――あの子、「音楽を流した」から、いじめられるようになったんでしょうよ?)』
蹴り開けた先て待っていた者達は、虚をつかれたように体を跳ね上げて身構える。
「――予定変更!」
ひとりが叫ぶ。慌てて機材を弄る指先。
最大音量、録音済みの『グノシエンヌ第3番』、それに重なる声。
「『ズレた』ぜ、グノシエンヌ!!」
叫ぶは『人間災厄』への呼びかけだった。
ああ、音楽鑑賞だなんて、随分と久しぶりだ。
それがこのような形になるとは、思っていなかったが。
🔵🔵🔵 大成功
第2章 集団戦 『トクリュウ』

POW
火事場のクソ力
知られざる【生存本能】が覚醒し、腕力・耐久・速度・器用・隠密・魅力・趣味技能の中から「現在最も必要な能力ひとつ」が2倍になる。
知られざる【生存本能】が覚醒し、腕力・耐久・速度・器用・隠密・魅力・趣味技能の中から「現在最も必要な能力ひとつ」が2倍になる。
SPD
強盗の嗜み
【隠し持っていたナイフや武器】で近接攻撃し、4倍のダメージを与える。ただし命中すると自身の【腕】が骨折し、2回骨折すると近接攻撃不能。
【隠し持っていたナイフや武器】で近接攻撃し、4倍のダメージを与える。ただし命中すると自身の【腕】が骨折し、2回骨折すると近接攻撃不能。
WIZ
必殺めくらまし!
【催涙スプレー】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【状況:ガス】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
【催涙スプレー】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【状況:ガス】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
√EDEN 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
放送室の機材を弄る手を止めて、臨戦態勢を取るものたち。年頃はやや違うようだが少年少女と呼べる範囲に収まっているように見える。
おそらくは『グノシエンヌ』に心乱された、あるいは、彼女と何かしらの取引をした――√能力者。
穏やかなはずの旋律も、これほどの音量となれば鼓膜を強く揺さぶってくる。それにこれは、ただの音楽ではない――「彼女」が弾き、録音されたものだ。
……ああ、容赦はいらないよ。
彼らも殺されれば、どこかの√でよみがえるのだからね。
Ankerがいない奴? あは! ぼくが知った事ではないなあ!
――√EDEN。東洋の神秘よ! 食らうにふさわしいインビジブル達の巣、『夢見る魚』たちの楽園!
まあ、ぼくはたいして魚は好みじゃない。「ひとのもの」が一番いい……。
さあ頭を開いて、よく聴くがいい。彼らのように。

命まで取るかはともかくとしても、悪い子にはちゃあんとお仕置きしないとねい。
放送室から少し離れた廊下、扉が見えるくらいの位置と大音量の音楽に隠れるように御伽語り・妖妖を使用。
移動せずにおとぎ話を語って、妖精と妖怪の幻影をできる限り多く召喚して相手に向かっていってもらうよう。
最初の2体の幻影は出方に応じて相手の攻撃を反射してもらう係、その次以降の子は全部攻撃に回して沢山殴ってもらうねい。
記憶をなくしたりするなら大ごとだけれど、√能力者なら命はなかなか軽いもんだしねい。できるだけ手加減はするにしても、オレたちが不利になるほどはしないようにするよう。
アドリブ、共闘歓迎だよう。
ピアノの音色が聞こえる。音割れ。元々はゆったりとした甘い旋律だったのだろう。だが今となってはただの騒音に近く、鼓膜を強く揺さぶる音と化していた。
あまりに喧しい。夜白・青(語り騙りの社神・h01020)はふむ、と閉じた扇の先を口の先へと当てる。
「命まで取るかはともかくとしても、悪い子にはちゃあんとお仕置きしないとねい」
|我々《√能力者》の命は、他の生命よりも軽い。Ankerに殺されない限り、特別なことがなければ滅多に死に至ることがない。たとえ殺されたとしても、どこかの√で蘇る――それを是とするか非とするかは、個々人の問題として。
スピーカーから流れてくる音楽と直接的な接敵を避けるために、放送室からやや離れた廊下から。グノシエンヌの音に紛れさせるように、ひとつひとつと詠唱を、おとぎ話を語っていく。
鉄鼠、僧の怨念より生じたもの。七人の小人、働き者たちよ。鳴蛇、干ばつを呼ぶ。|窮奇《かまいたち》、脚を切り刻むもの。
御伽語りは止まらない。しばらくすれば魑魅魍魎の軍勢が生まれ、放送室へとなだれ込む――!
「なっ! おいおい用意が良すぎねェかッ!?」
真っ先に放送室へと入り込んだのは小さな鉄鼠が二匹。少年へと襲いかかろうと飛び上がるそれへ咄嗟に催涙スプレーを噴霧するも、鉄鼠は空中でくるんと身体を捻り、そのスプレーの噴霧を反射してみせた。
「っづぁ!?」
思わず自らの袖で目を覆うもやや遅い。視界を失った彼はやみくもに催涙スプレーを放送室の中へ撒きはじめる――!
「だっ、バカやめろッ! 当たってねえっての!」
別の少年が催涙スプレーを取り上げるも、室内は催涙ガスが充満する空間となった。たまらず外へと飛び出してくる少年たち、それへと攻撃を加えていく|妖《あやかし》。
小人が群れをなし足止めを、鳴蛇が締め付け、窮奇が脚を切り裂き行動能力を奪っていく。
ひとの形だ。狙うべき場所は急所ではなく、「行動不能にすること」。撤退を強いる、あるいは戦意を喪失させるための手段。最終的に彼らをどうするかはともかく、今は相応の手加減をしておいた方が良い。ともあれ、初手としては十分――狭い室内に籠城されるよりも、廊下の方が他の√能力者たちにとっても戦いやすいというものだ。
「さ、きちんとお仕置きは受けてもらないといけないねい」
洗脳されている者以外、望んでグノシエンヌに手を貸しているものは、特に。
魑魅魍魎の群れの蹂躙は、まだしばらくの間、続く。
🔵🔵🔵 大成功

「なるほど、これは厄介だな」
音楽は音を楽しむと言うが……まぁ、それも一つの楽しみ方か。
まぁ、依頼達成の為には容赦せず、全て排除していくのが一番早い。
右の拳で√能力を奪い、それでも止まらないようならば左の拳に宿した破壊の炎で、向かってくる敵を焼いていく。
完全に戦意喪失し、向かってこなくなった敵へ止めを刺すようなことはしないが、
自身と今回一緒に依頼を受けている√能力者が危険にさらされそうなのであれば、容赦しない。
(ただし、味方側の意志・意見を尊重します)
Ankerがいるかいないかなぞ、そいつの選択だからな。
敵対している今、それを配慮する必要を俺は感じないな。
アドリブ・連携歓迎です。

※アドリブ・連携歓迎※
「止まれ。おとなしくすれば悪いようにはしない」
と言って止まってくれるのならば良いが、そんな連中ばかりではないだろう。警告しても抵抗してくる者には容赦も油断も禁物だ。
ハチェットを手に取ってオートキラーで先制攻撃を試みよう。その後は制圧まで隠密状態からひたすら先制攻撃を繰り返す。降伏したものは捕まえるなり何なりしよう。
そういえば、このハチェットは曰く人間の頭蓋を叩き割る手斧なのだそうだ。轟音のグノシエンヌを文字通り直接頭を開いて叩き込まれるのはどんな気分なのだろうな。最も、知らない方が良いことなのだろうが……だがそれこそ思考の隅でちらついてやまない。まるで過去の記憶の様に。
廊下へと戦場を移した少年少女たちと√能力者。敵対心をむき出しにして睨みつけてくるその目は、どこか獣じみた印象を受ける。
「止まれ。おとなしくすれば悪いようにはしない」
「ばぁか止まるかっての!」
ハチェットを手にして告げるハインツ・ハイネ(デッドマンの戦線工兵・h00422)だったが、少年の返答は想像通り。戦意はとびきり強いようだ。それがどのような理由かというのは各々異なるだろうが。
「……なるほど、これは厄介だな」
呟くは千早・鴉綺(|武装機械《Triple Apocalypse》・h05341)。音楽は『音を楽しむ』と言うが、この爆音を鑑賞しようとはいまいち思えない。
もっとも、眼の前の『敵』たる少年少女たちは、音割れしたこの曲を不愉快に思えど、止めようなどとは思っていないようだが。
これならば、容赦や油断は必要ないだろう。考えず、排除していくのが一番早い。ある程度の手心は加えてやるべきかもしれないが。
どこから仕入れたのか、折りたたみナイフでハイネを切りつけようとする少年だったが、その刃をひらりとハイネがかわし、ハチェットの切っ先でその手の中の得物を狙って振り上げる。ナイフを取り落としかけた少年が顔を上げるも目前には既にハイネの姿はない。
舌打ちをして周囲を見回す少年――その間に、別の少年が強く叫ぶ。
「ご立派に正義の味方気取ってんじゃねえよ! お前らのやってる事なんか、結局俺らと同じ人殺しだろうがッ!!」
上擦る怒声、暗がりに姿を見つけた彼がハイネへアイスピックを振り上げるが、それもまた空振った。今度は腕を切りつけ、再度闇へと姿を隠す。夕方の廊下だ。影と闇は限られているが、それでも十分――。
そうして引き出される彼らの生存本能。容赦はされている、だが殺されないという保証はない。痛み・苦しみを味わうのは彼らだって本望ではない――だからこそ、|あの女《グノシエンヌ》の元へと集ったのだろう。
細かに戦力を、体力を削られていく。それならば己のために、『彼女』のために耐えるしかない。時間を稼ぎ、彼女が目的を達成するまで足止めをする。それこそが、自分達に課せられた使命。
鴉綺を狙い荒々しい手つきで振るわれる少年の腕を掴む右手。――ルートブレイカー。重い攻撃は少年らしい勢いのものへと変化し、耐えるための能力すらも奪われている。それを察した少年は前蹴りを繰り出して鴉綺を引き剥がそうと暴れるが、鴉綺はそれを見て、左拳へと宿した炎で少年を焼くと同時に距離を取る。
それでも起き上がろうとする彼へ追撃とばかりに炎を放ち、廊下の奥へと弾き飛ばした。
√能力者たちにとって、Ankerの有無は自身の選択。配慮する必要はない。……ただ。「己が信じられるものを、得ることが出来なかった者」と言ってしまえば。一種、憐れむべき存在なのかもしれない。
……精神を、蝕まれつつある。音楽が響く。美しいとは思えなかった音が、はっきりと聞き取れるようになっていく。手指の流れ、押される鍵盤、そして。頭を振れば多少はましになる、けれどそれを「続ければ」――。
まだ人数は、残っている。数は減ってきた。『敵が、減ってきた』のだ。望んでいたのは全滅、撤退を選べる程度。だが今となってはどうだ。眼の前に倒れているものは何だ。
ひとだ。
ハチェットとは手斧である。枝を払い、薪を割るのが現在の使い方だ。だが遡れば『凶器』として扱われていた歴史がある。北アメリカの先住民が得物として用いた。獣だけではなく、『ひと』の頭骨をも砕いた手斧。頭を揺さぶるグノシエンヌ。左脳と右脳がどちらだったか、理解があいまいになる。
これを頭を開いて叩き込まれたら。あるいは頭骨に大穴を開けて、もっとよく聞こえるようにしてやったら、「これ」はどんな気分なのだろう。自分自身はどのような気分になるのだろう。
知らない方が良い。知らない方が。知らないはずだ。
だが思考の隅でちらつくのは――確りと、それを『記憶している』自分だった。
ああ、そうだ、この、『からだ』は――!
気絶した少年へとハイネが腕を振り上げ。その頭部へと、手斧を。
「止まれ」
――鴉綺の一言、伸ばされた右手。
息を切らすハイネへと声をかけ、その掌に宿る力で行動を制する。
……ゆっくりと降ろされた腕を見て。鴉綺はひどい頭痛を訴える頭骨へと右掌を添えた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

アドリブ・連携お任せ
あ~……まぁ、私も自己責任的な意味で容赦はしませんがAnkerがいない方は流石に戦闘参加はしないでいただけると嬉しいですね…………私に食べられたいのであれば別ですが♪
(√能力を使用。スプレーを受けても自傷、再生をして効果がありそうなら打ち消すを繰り返し、ガス状態にしない様にしてエルデで攻撃していく)
ふぎゅぅ……受けるときついですねこのスプレー
……本当に消えたくないならやめることですよ?
(攻撃して得た血肉から隷属者を培養、それらと共に残りを制圧していく)
ふにゅ……洗脳によるものか、別の理由か知りませんが無理をして貫き続けるものではないですよ
後がないわけでないのなら……ね♪
この中に、何人。Ankerのいない相手がいるのか、それでも構わず向かってきているものがいるのか。流石にそれらが戦う意志を持って、こちらへ向かって来られるのは困るが。それも自己責任。情け容赦は必要なく。
ただ。『食べられたい』のであれば、別。
「それじゃあ、私も奏でましょう♪」
構えるは浸食大鎌『エルデ』。マイクとは程遠い形状ではあるものの、それは確かな「音」を奏でてみせる刃だ。その身体と大鎌に巻き付く植物は、「この世界」では見慣れぬもの。
人間災厄「万理喰い」。神咲・七十(本日も迷子?の狂食姫・h00549)は、貪欲だ。
「ッ……ほんっとに! どいつもこいつも邪魔ばっかり!」
叫ぶ少女が七十へと催涙スプレーを噴霧する。一瞬怯むも、目眩ましとしては――半端。再生、開ける視界。身体は多少重いが、行動に問題はない。
「ふぎゅぅ……受けるときついですねこのスプレー……」
本音か、それとも。狼狽えて距離を取ろうとする少女に接敵し、容赦なく少女の肌を切り裂いた。――小手調べ。次は両断。目を見開く少女に対して、七十はにっこりと微笑んで。
「……本当に消えたくないなら、やめることですよ?」
隷属培養。少女が流した血液から生み出される、ひとがたの、何か。
七十が操る植物が少女の手をぐっと掴み取り絞り上げ、スプレーを取り落とすのを見届けて。次の標的を見定め、己の生み出したひとがたと共に敵へと迫る。
「なに……何なの、アンタ! こっち来ないでよぉっ!」
明らかな焦りと共に攻撃を加えようとするその手を狙い、七十は大鎌を振るって。グノシエンヌの響きに加わる、美しい金属音。
「ふにゅ……洗脳によるものか、別の理由か知りませんが。無理をして貫き続けるものではないですよ」
無理をしたところで、それは間違いなく一時的なものだ。どちらにせよ対応は変わりない。
とらえ、縛り上げ、もがく少女に向かって七十はにんまりと笑みを浮かべて、ちろりと唇を舐めた。
「後がないわけでないのなら……ね♪」
――後があったとしても。私には、関係ないので?
だってこの先きっと、二度と会うことなんて無いひとたちなのだから。
この|楽曲《グノシエンヌ》を二度聞くことがないことと、同じように。
🔵🔵🔵 大成功
●第2番
音楽を愛している。
同じく音楽を愛するものと友情を深め、深い交流を持っていたこともある。
けれど誰とも相容れなかった。好むものが違ったから。
誰にも理解されなかった。「このままでは、望む結末に至れない」。事実を突きつけられ、苦しくて、その輪から去ることにした。
一人は気が楽だ。自分の好きなようにして、好きな曲を奏で続けて。
音楽だけでいい。他にはなにもいらない。いらない、いらない、いらないったら。
なんで、どうして、こっちに来るの、なんで。なんで……。
……ねえ、聞こえる? グノシエンヌ。
わたし。
人間が。あいつらが、憎いの。

旋律が頭に響く
止めなければ、でも、もっと聞いていたい
(呑まれちゃ駄目だ)
思考が乱れ始めていることを自覚して、寄せ集めの遺留品を握って理性を保つ
アクセルオーバーを起動
上昇した移動速度を乗せたダッシュで懐に踏み込んで、電撃鞭でのマヒ攻撃やグローブや靴での喧嘩殺法(殴打や蹴り)で意識を刈り取って無力化を試みる
ピアノの音には狂気耐性や精神抵抗で抗って、敵の攻撃は見切りで回避を試みて
早く放送を止めるために、負傷を恐れず全力で戦う
「できれば」殺さずに無力化する
「できなければ」その限りじゃない
いろんな『いのち』を奪ってきた身だ、増えたところで……変わりはしない
※アドリブ、連携、負傷描写(心身問わず)歓迎です
響き渡る旋律。大音響にもやや慣れて。止めろ。止めなければならない。聞き続ければどうなるか、理解しているはずだというのに。なのに、もっと聞いていたい。もっと、長く、近く。穏やかに。
「(……呑まれちゃ駄目だ)」
乱れる思考、揺さぶられる脳。握りしめる遺留品、誰かの生きた証、誰かが生きようとした証。クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)の爪が僅かに、自らの掌に食い込む。
残るは、放送機材を維持しようとしている数人だけ。
飛び出したクラウスはスプレーを向けようとしたその手を蹴り上げ、得物を取り落とさせて、思いきり頭部を殴りつける。加減はしたつもりだ、倒れた後の安否は、今は確認できない。
――抵抗をやめる気はないらしい。やめることができないのかもしれない。こちらとて同じ。攻撃を続けるだけだ。
電撃鞭を振るい打ち付けて、痺れたその体を蹴りつける。噴霧されるスプレーなど知ったことか。掴めてしまえば、あとは叩きつけるだけ。
殴りかかろうとする腕は受け流し、電流を纏った肘で首を打つ。苦しげに唸り床に伏せるそれを一瞥して次へと。
……『ぼくのこの曲は、彼女のため』。
ノイズのように思考に混ざる。誰のものかは明らかだ。
混乱の中、放送機材をあれこれと弄って『音楽』を止めないようにしていた少女の腕を掴み引き寄せる。ばちりと爆ぜる紫電、瞳に映るは驚愕とおそれと、それから。
ああこの頭から出ていけ。必要ない。「できれば」殺さずに無力化する。「できなければ」その限りじゃない。俺のするべきことは変わらない。できれば、できなければ、できるのか。クラウスは床で体を捩り苦痛に身悶えるそれらを見て。
『できるのかい?』
……汚染。
幾つもの『いのち』を奪ってきた。増えたところで変わりはしない。ひとり、ふたり、増えたところで……。
『じゃあ、いいだろ。ひとりやふたり、さんにん、よにん……ああ、自由な指の運びで』
……増やして、いいのか?
まだ。まだだ、耐えきれる。正気でいられる、今のうちだ。
沈黙とは呼べない空間。いまだ響き続けるピアノの音。
半ば拳を叩きつけるようにして、鳴り響く音楽を止める。
|音楽《それ》が止んでも。あのピアノの旋律が聞こえなくなっても。クラウスは何度も、何度も機材を殴りつけ。一瞬、拳に痛みを覚えて。
そうしてようやく、脳内で鳴り続けていた音楽も、止まった。
🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『人間災厄『グノシエンヌ』』

POW
第1番
自身の【幻影の鍵盤】を【蒼白】に輝く【ピアノ線のようなレーザー鞭】に変形させ、攻撃回数と移動速度を4倍、受けるダメージを2倍にする。この効果は最低でも60秒続く。
自身の【幻影の鍵盤】を【蒼白】に輝く【ピアノ線のようなレーザー鞭】に変形させ、攻撃回数と移動速度を4倍、受けるダメージを2倍にする。この効果は最低でも60秒続く。
SPD
第2番
【幻影の鍵盤を演奏して放つ音波】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
【幻影の鍵盤を演奏して放つ音波】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
WIZ
第3番
【幻影の鍵盤】から【洗脳効果のある音楽・音波】を放ち、命中した敵に微弱ダメージを与える。ただし、命中した敵の耐久力が3割以下の場合、敵は【発狂】して死亡する。
【幻影の鍵盤】から【洗脳効果のある音楽・音波】を放ち、命中した敵に微弱ダメージを与える。ただし、命中した敵の耐久力が3割以下の場合、敵は【発狂】して死亡する。
√汎神解剖機関 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
「やっぱり生演奏でなきゃあ、ぼくの曲はこころに響きにくいようだね」
――『校庭に立つポール、|校内放送《グノシエンヌ》を流し続けていたスピーカー』。気配を消し、遠目から放送室前での沙汰を眺めていたグノシエンヌは、つまらなそうに唇を尖らせた。
「もっと優雅に……そう、この指先で。泥濘に指を沈めて……今の、自分自身を表現しないと。ぼくの感情は、半端にしか伝わらない……」
ああそうだ、半端に失敗した。いや、『させられた』。
それでもまだ、手は残っている。そう、己の「手」が。
「まあいい――時間稼ぎご苦労。それではぼくも、『会場』に向かおうじゃないか」
響き渡る音色は、√能力者や簒奪者たちだけでなく、一般人にも聞こえていたのだから。
足取りは軽く。向かうは体育館。扉を開け放てば、それだけで重いカーテンで閉ざされていたはずの窓から光が射し。緞帳が、幕が開く。
虚ろな目をした|聴衆《少女》たちの間を通り、|彼女《奏者》はステージ上に立った。
「では、始めよう」
さあ『グノシエンヌ』第3番。甘く陰鬱な旋律。
奏で続けようサティの調べ。あの娘のため、ぼく自身のため!
止めてみせるがいい、ぼくの演奏を。
きみたちになら、できるのだろう?
できないというのなら、おまえたちの大脳。左右が分からぬほど、ぐちゃぐちゃに掻き混ぜてやる。

さて、当人がどう考えているのか、どう感じているのか。
お前は止めてほしいのか、そうでないのか、どちらなんだろうな?
正直|女生徒《加害者》がどうなろうと俺はかまわんが……まぁ、依頼としては被害が大きくならないようにって話だ、手加減を忘れないようにする必要がある、か。
(音楽に、奏者に敬意を払えないヤツなど唾棄に値する)
閃光の刃を味方へは戦闘能力強化の結界としてばらまき、
聴衆相手には致命傷を避けつつ、貫通攻撃や、ルートブレイカーなどで行動を阻害し、無力化する。
痛い?そうか、よかったな。それはお前たちが生きていると感じることができるという証拠だ。
『人間災厄『グノシエンヌ』』へは、手加減をする必要はないだろう。
当人の腕を、指を、更には幻影の鍵盤を狙い、閃光の刃を放ち、演奏の邪魔をしておく。
……こんな遭遇で無ければ、普通に聞いていたいものではあったかもしれんな。
さて、一応話を聞く体は必要かもしれん。が、それが吉と出るか凶と出るか。
お前も、音楽だけを愛していられたなら、よかったのかもしれないな。

音楽の好きな部下が時々奏でていたことを思い出す。
グノシエンヌ第3番。静かで不思議なメロディ。どこか不気味だというものもいたが、俺はこの曲が好きだった。そうだ、確かに好きだった。そのはずだ。寄せ集めのバグで出来ている今の俺の思考と何のかかわりがなくとも。
洗脳の効果だろうか。どうしても気が散る。何かこの音楽の邪魔を出来るものは……そうだ、体育館には大体ピアノが有るはずだ。音楽には音楽。同じサティのジムノペティ第1番を弾いて彼女の旋律の邪魔をしてみよう。穏やかな曲だが、グノシエンヌよりは主張が強いから良い邪魔になるだろう。
そうと決まれば、起きろ。仕事の時間だ。
また聞かせてくれないか、お前のサティを。
|演奏会《コンサート》会場は穏やかで憂鬱な音色に包まれている。窓からは夕暮れの僅かに紅い光が差し、それに照らされる奏者はたおやかに、鮮やかに鍵盤を指先で撫でて。
それは脳の襞ひとつひとつを、なぞるかのような。
「遅くも速くもないご到着だね。さ、そこの|聴衆《奴ら》と同じ席に座って」
青白く輝く鍵盤を弾きながら言われども、座席などひとつもない。そこに居るのはうずくまり、這いずり、頭あるいは耳をおさえて、体液を垂れ流す少女たちの姿だけがある。
これでは無力化をするまでもないか。千早・鴉綺(|武装機械《Triple Apocalypse》・h05341)は既に惨状と呼ぶべき光景になりつつある『会場』を見回した。
――少女たちに行動を阻害する洗脳を施し、延々と己の曲を聞かせ続け。発狂とともに、脳の損傷による死を与える。グノシエンヌは『予知通り』の演奏会を開いたようだ。
「ああでも……きみたちは確かに、ぼくの演奏の邪魔ではある。任せてみようかな? 『いじめっこ』たちだ。きっと、そういう手段も知っているよ」
とん。ひとつ、強く押し込まれた鍵盤。
途端演奏が止まり。ピアノ線のような鞭へと変化した鍵盤がぴしりと床を鳴らすと同時、ゆらりと……|女生徒《犠牲者》たちが立ち上がった。がたがたと、膝を振るわせながら。足から滴り落ちるは、――。
「ぼくの邪魔をしたこと、後悔させてあげよう。猛獣使いの真似事も悪くない!」
嗜虐的な笑顔。そして「思いつき」のように女生徒を立たせた彼女に眉をひそめつつも、相手が臨戦態勢をとったのなら仕方がないか。鴉綺は考える。
ここで弾丸を放てば、女生徒へ致命傷を与えかねない。それほどまでにグノシエンヌは彼女たちを甚振っている。自分の攻撃、その後に彼女の追撃が加わればどうなるか。
……ならば。選べる選択肢がひとつ、ある。
――グノシエンヌと女生徒たちが鴉綺へと気を取られている中、ハインツ・ハイネ(デッドマンの戦線工兵・h00422)は戦場となった体育館の中央を避け、壇上へと回り込んでいた。
音楽を祖とする人間災厄。奏でる楽曲にて攻撃行動を行う。それを阻害するには何が良いか。
――音楽の好きな部下が、時々それを奏でていた。
『(自由に弾けっていうくせに注釈がついてるんですよ。解釈はそれぞれって言っても、書いてあったら自由じゃないって思いません?)』
思考は変わらずハイネ自分のもの、混ざる記憶は|永劫回帰《アルゾ・シュパー》により呼び起こされた『あいつ』のもの。
グノシエンヌ第3番、静かで不思議で、どこか不気味だというものもいたが、この曲が好きだった。
そうだ、確かに好きだった、はずだ。これが自分の思考か、それとも寄せ集められた己の体の一部が覚えているものか? そんなの今は、どうだっていい。
起きろ。起きろ。起きろ。どうしても気が散る。だが確かに、それは応える。『仕事の時間だ』と。
『(それじゃ、ひとつ。久々に……頭を開く必要なんか、ありませんね)』
聞かせてくれ、お前のサティを。――グランドピアノの鍵盤に、『彼』の指が乗せられた。
ジムノペディ、第1番。|ゆっくりと苦しみをもって《Lent et douloureux》。
ハイネの奏でるその響きが、グノシエンヌの動きを阻害する。ただの演奏……それでも、彼女にとってはとびきり煩わしい音のはず。
彼女は、愕然とした表情でハイネへと振り向いた。彼を見る目は見開かれ、瞳孔が絞られている。演奏は続く――永き苦しみを識るものが、奏でる曲として。
「……良いね。うつくしい響きだ……聴き入ってしまった」
よろこびと驚愕。純粋なる称賛であろう、喜色の滲む声。だが。
「でも、きみの『それ』、『自分の手』じゃないなあ!!」
グノシエンヌは『楽曲の災厄』である。ゆえにその手つきが彼自身のものではないと見抜き、聴き分けてみせた。楽しげに笑うグノシエンヌの鞭がハイネへと向かうも。
その背後に、鴉綺が迫る。
「ッ、ぐゥッ!?」
――グノシエンヌの腕を、鴉綺の弾丸が撃ち抜いた。
自身、ハイネ、聴衆、そしてグノシエンヌ。諸共を巻き込み弾丸が爆ぜる。耳を|劈《つんざ》くような音とともに、光と粉塵が舞う。
「ッ、は……ははは! おいおい、気でも狂ったか!?」
耳鳴りの中で嗤う彼女。鴉綺が女生徒たちをも巻き込み、自身に攻撃したと考えたようだ。だが視界が開ければ、すぐにその笑みは失せていく。
「……撤回はしなくてよさそうだ」
正直鴉綺にとっては、彼女たちがどうなろうと構わない。だが死ねば後味が悪いのは確かだ。
……彼は女生徒を『味方』と認識し、結界を用いてその戦闘力を強化したのだ。
音に反応したか、襲いかかってくる少女の脚へ致命傷を避けるよう狙い、行動を阻害し、加えてその体に右手で触れ。――ルートブレイカーは、鴉綺の施した強化も、グノシエンヌの洗脳も、すべてを平等に打ち消す。
「いっ……あ……痛いッ……いたい……っ!?」
何が起こったのか理解できていないのか、苦痛を訴えながら膝をつく少女に。
「痛い? そうか、よかったな」
それは、お前たちが「生きている」と感じている証拠だ。己が得るには少々時間のかかる、厄介な、証明。
続いて掴み掛かろうとしてきた少女の肩へと触れ。強化されているとはいえ、彼女たちは『|素人《一般人》』だ。鴉綺にとっては容易い相手。次々と処理すること、計、五人。正気を取り戻し混乱する彼女たちに鴉綺は告げる。
「お前たちでも、理解できるだろう。さっさと逃げろ」
――そう声を掛けられ、ごくりと喉を鳴らした女生徒。負傷した脚を引きずる少女を庇うようにして、彼女たちはこの『舞台』から去っていく。
「……へえ。『人類』は不思議で甘っちょろいね」
何を考えていたのか。撃ち抜かれた腕を押さえながら、グノシエンヌはつまらなそうに呟く。鴉綺と少女たちの交戦。それに一切手を出さずに眺め、奏でられるジムノペディを聴き続け。獲物が逃げるところまで見送るとは、いったいどのような心境か。……だが、それを察してやるつもりなど、鴉綺にはなかった。
「……騒がしい奴らは退場した。演奏を、続けようか」
後退しながら。再度、蒼白の鍵盤を広げるグノシエンヌ。傷つけどなお演奏を続ける。それが彼女の『|存在理由《アイデンティティ》』。腕を撃ち抜かれようと気にはしない。
血の滲む白い袖は優雅に広げられ――『第2番』を奏でる。広がる音、緞帳を切り裂き床板を砕き、鴉綺とハイネを的確に狙う衝撃波。耐性を持っていようと、体を引き裂くかのような音とそれに込められた「意志」が響く。……ハイネの腕がピアノから離れ、ジムノペディのメロディーが止んだ。
「(……こんな遭遇で無ければ、普通に聞いていたいものではあったかもしれんな)」
狂気の沙汰。演奏と音楽に関する彼女の情熱はその領域に達している。だからこその人間災厄。己が魂を掛けるに値するそれが、「人類にとっての害である」と認められた者。
「お前も、音楽だけを愛していられたなら、よかったのかもしれないな」
「……そうだね。半端に『人類』なんて愛するから……こうなるのさ」
細められるは雷光のような青。まだ|彼女《グノシエンヌ》は、|グノシエンヌ《彼女》を奏でられるだろう。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

「止めてみせるさ」
できるできないの話じゃない
そうしなければ、いけないんだ
アクセルオーバーを起動
上昇した移動速度を乗せたダッシュで接近して紫電一閃で攻撃
そのまま光刃剣での居合や電撃鞭でのマヒ攻撃を使って近接戦闘で畳み掛ける
距離を取られたらダッシュで追いついて接近戦の間合いを保つ
攻撃時は手を狙って演奏を阻害し、少しでも音の影響を減らそうと試みるよ
敵からの攻撃は精神抵抗や狂気耐性で抵抗
音なんて躱しようが無い
洗脳に耐えながら自分が発狂するまでの間に倒す
鳴り響く音に身を委ねて狂ってしまえたらどんなに楽だろう
でも、それをしてはいけない
無力な一般人達を守らなければいけないんだ
※アドリブ連携、負傷歓迎です
止めてみせろと挑発してみせたグノシエンヌは、負傷してなお、機嫌良さそうに楽曲を奏でている。やつのご機嫌が良くなるようなことなど、何かあっただろうか。人間災厄、それも害をなす者の心のうちなど、理解できても共感はできないだろう。
「――それで? きみもぼくの演奏を聴きたくない? なら、やる事はやるんだよね?」
「ああ。……止めてみせるさ」
できる、できないの話ではない。そうしなければいけない。己を駆り立てる使命感とともに、クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)の視線が、嗤うグノシエンヌのそれとぴたりと合った。
「きみはまだ『まとも』そうだね。それとも、まともなフリでもしているのかな」
まるで子供の演奏のように。とん、たん、たん、と鍵盤を叩いてから、グノシエンヌはもはや何度目かも分からぬフレーズを奏ではじめた。
それに合わせるように。クラウスはアクセルオーバーによる速度を用いてグノシエンヌの懐に潜り込み、そのまま――紫電一閃が迸る。
狙うは腕と手。憎らしくもうつくしい旋律を奏でるそれがなくなってしまえば、この女は無力になるだろう。そう想定しての攻撃だ。居合い、抜かれる光刃剣。徹底的に近距離を保つ。
……だがそれは、彼女の演奏を近距離で聴き続けるということに他ならない。
「どいつもこいつも、ぼくの手を狙うね。指一本でも……なんなら、両腕が失せようと、弾いてみせるよ」
冗談か、それとも。クラウスの電撃鞭がグノシエンヌの腕を絡め取り、ナイフの追撃が手指へ『跳んだ』。
数本足りなくなった「それ」を眺めながら彼女は笑う。彼女は先の言葉通り、他の指で補うようにして。ゆったりとしたフレーズは続いていく――。
躱しようのない音。耳を塞げど聞こえてくるであろうそれに、防御行動など取れたものか。耐えるしかない。堪えるしか、ない。
鳴り響くこの音に身を委ねて、狂ってしまえたら、どんなに気が楽なことだろう。あの女生徒たちのように蹲るのはごめんだ、だというのに思考にちらつくこれは何だ。
でも、それをしてはいけない。委ねてはいけない。だって。無力な一般人たちを。
「……守らなければ、いけないんだ」
呟いたクラウスの言葉に、グノシエンヌが、『第3番』が声をかける。
「なぜ?」
疑問を抱く。抱かせる声。甘く奥底まで響く囁き。
「ぼくの愛する『手』を、ぼくの『腕』を、彼女を傷つけたあいつらを、どうして守らなきゃいけないんだ?」
まんまと逃れてみせたあの女ども。否、彼女が見逃した女生徒たち。なぜ逃したのか。
答えは。
「今この瞬間、彼女たちを守っても。ぼくはこの場所を覚えた。――死んでも、追い縋って、殺しに戻れるんだよ?」
まるで少女のような笑顔で、彼女は。
――ばちりとシナプスが爆ぜる。脳が、思考が、悲鳴を上げている。それでも、立っていなければ。
見届けなければ。幕が下りるまで、聞かなければならない。この|演奏会《コンサート》の終わりを待たなければならない。
いつのまにか頭を抱えていた手に力が入る。ぐ、と髪を掴み、耐えきろうとしているクラウスに、グノシエンヌは微笑んだ。
「気に入った。きみは、『|ぼく《グノシエンヌ》』という存在の結末を、そこで見ていろ」
これは、単純に「見逃された」のではない。言葉通りだ。ただ『気に入られた』。待ち針で縫い留められたかのように動けぬクラウスに、グノシエンヌは笑いかける。
「見ているだけでいい、聴かなくていい。なんなら、勝手に発狂して、死んで逃げたっていいさ。……ああ、なんて楽で、自由で、怠惰で、甘美な……」
ピアノの音色ではない、彼女の鼻歌。それすらも海馬まで染み込んでくるようで。唸り声すら上げられず、ただ――クラウスは、自身の欠けた指を撫でるグノシエンヌを睨みつけた。
🔵🔵🔵 大成功
●第3番
ねえ、ねえ、ねえったら。聞いてよ。聞いて。聴いて。
どうして、どうして、そんなに拒むの。
このぽっかり開いた窪みに、開かれた頭に、何をぶちまければいいかなんて、本当は分かってるくせに。
解ってるくせに。そんな指示なんてなかったかのように。ひねくれた踊りを。
終わらせていいのに――どうして、そんなに。
どうしてそんなに、足掻くのよ。グノシエンヌ。
わたし、とっくの昔に、死んでるのよ。

アドリブ・連携お任せ
見事にステージと観客がいらっしゃいますね
まぁ、流石に止めますか
(√能力『万花変生』を使用。多種の植物とそれに組み込む隷属者達を操り組み上げ、生み出した移動式音楽ステージの上に立ち)
ふふ、私としても珍しい食べ方ですが……行きますね♪
♪~♬~
(グノシエンヌの音楽に、自身の歌…それをマイクにしているエルデの刃を通し、ステージで隷属化能力を付与したうえで増幅、拡張してグノシエンヌの音楽を相殺する)
これだけじゃないですよ
(相殺し始めた後、ステージを観客の頭上を通るように動かし、グノシエンヌに近づく、歌い続けるダメージは√能力『我隷我喰』を使用し、再生力を使って相殺する)
後は選んでください、私の歌に喰われるか…それともこの子たちに喰われるか
どちらでもしっかり貴女の怒りも憎しみも音楽も…愛もしっかり食い尽くしてあげます
(ステージの拡張も行い力を増幅、その上で攻撃用の隷属者を放ち、相殺した音の中でグノシエンヌを喰らう準備をさせ、歌と隷属者のどちらに喰われて隷属化したいかを選ばせて)
|舞台《ステージ》の上に彼女は立っている。まだ立っている。欠けた指、貫かれ焼け焦げた腕。神咲・七十(本日も迷子?の狂食姫・h00549)を見るグノシエンヌは、眼を細めながら微笑む。
「きみが最後かな」
「最後……か、どうかは分かりませんけどぉ。できれば、最後がいいですねぇ〜」
呑気にも思える、無邪気でぽんやりとした仕草。だがそんな彼女は、こう見えたって――全力だ。
だって、おなかがへっているから。
|万花変生《バンカヘンジョウ》。植物と召喚された『隷属者』たちが折り重なるように組み上げられ、ステージを作り上げる。その上に立つ七十を見て、ふうんとグノシエンヌは鼻を鳴らす。
「ふふ、私としても珍しい食べ方ですが……行きますね♪」
大鎌、否マイクたるエルデの刃を握り。歌うは――「わたしのものになれ」と。「わたしにくわれろ」と。アイドルのように愛らしい声と仕草で放たれる歌唱攻撃――!
己もグノシエンヌもすべてを巻き込む万花変生。己が受けるダメージは我隷我喰が相殺する。自分自身がその場から動けなくなる、そのリスクをも代償として。
「……欲にまみれた歌声だね。――ま、きみの歌より、|ぼく《グノシエンヌ》のほうが上回っているけれど!」
ピアノの音量が上がる。強く指を押し込んだ。頭上の天輪が足りない音を補完するかのように鍵盤が沈む。
耳から入り思考を奪う。しかし歌声と演奏。性質の違うもの同士、完全に打ち消すことは出来ない。生まれるのは喧しく混沌とした楽曲とも呼べぬ騒音。
狂気と『音楽』に精通した災厄に真っ向から勝負するには、それだけでは一手、足りない。正しく通らない攻撃では、彼女にダメージを与えることはできても、拘束するには至らない。
観客は自分達を含め何人いるのだか……グノシエンヌの、指を切り落とされた後の手でもじゅうぶんに、足りる。
「――これだけじゃないですよ」
だが七十も、追撃を用意している。――ステージが這いずる。己が動けないのなら、『彼ら』が動けばいいだけだ。
さあさあわたしの可愛い子たち、きちんと手足をうごかして。でないともっかいたべちゃうぞ♡――無邪気、無慈悲。
グノシエンヌに迫る『群れ』。彼女に手が届く前に、響く旋律により、ピアノ線に首を弾かれたかのように首が落ちていく。数を必要としているのだ、喰われ狂気に苛まれる弱い個体はさくさくと切り刻まれていく。
それでも『優秀なもの』がグノシエンヌの腕を掴み上げた。片腕、両腕、手指。容赦のない腕が彼女の関節をぱきりと外す。
それでも悲鳴すら上げない。ただ七十を見て――彼女は、幻影の鍵盤、『天輪』で、第3番を奏で続けていた。
「選んでください」
――追い詰めた。
|狂気《正気》に満ちた七十の眼は、グノシエンヌの目前に。鼻先どころか唇が触れ合うような距離で、七十は笑っている。わらって、いるのだ。
「私の歌に喰われるか……それとも、この子たちに喰われるか」
どちらでも、しっかりと。
「貴女の怒りも憎しみも音楽も……愛も。しっかり、食い尽くしてあげます」
貪欲。貪欲だ。かぷりと自分の人差し指を軽く甘噛みしながら、グノシエンヌへと囁く。二択。否、『死に方を選ばせてやる』という実質一択。
突きつけられた選択肢。身動きの取れぬ体、打ち消し合う攻撃、これでは、選ぶ他ない。だが。
「あは……ははは……!」
高笑い。選べと言われて出すような声ではない、『歓喜』に満ち、然して『虚ろ』な声が、舞台に響き渡る。
「『ぼく以外』の『音楽』に食われるなんて――死んでも――お断りだ!」
鍵盤の天輪が輝く。ぐるり回転したそれ。七十が目をぱちり瞬きして、迫っていた顔を上げた。その瞬間だ。
「ぼくはね。『指や腕がなくても、音楽を奏でられる』!」
それこそが、人間災厄。天輪はそのままグノシエンヌの首へと掛かり。鍵盤がひとりでにひとつ沈んで。
ばつん。
――髪が散る。頭が、落ちた。掴み上げられていた体がびくりと一瞬痙攣する。べしゃりと音を立て落ちた『|彼女《肉塊》』。生命を失ったそれはすぐにインビジブルとなり、血液だけを残して、掻き消えていった。
……与えられた選択肢ではなく、自決を選んだ。自身への『第3番』。己に確と聞こえればそれで良かったのだろう。
傷ついた体と精神だ、発狂死するには十分。それが、己へのギロチンとなったのだろう。
「……食べそこねちゃいました」
七十は呟く。――彼女は、どんな味がしたのだろう。音楽への愛。自分自身への愛。|少女《獲物》への愛。肉欲だって、きっとあった。私の口に合う味がしたはず、歯応えがあったはず。
おいしかっただろうなあ。口内に溢れてくる唾液をこくり飲み込んで、考える。
いつかまた、出会えたら。次はもっと、直接的に聞いても良いかもしれない。あなたがほしかった、あなたをたべたかった、って。
――こたえてくれるかは、べつとして。
●第『7』番
斯して、人間災厄による『コンサート』は幕を下ろした。残されたのは、戦場となった放送室と体育館。聴衆だけが残り、被害者だけが見当たらぬ惨状である。
立ちすくめど、もはやそこに音はない。
――|林檎《あの子》も|梨《ぼく》も真っ二つ。結局ふたつとも頭を開かれて、音を詰め込まれた。どこに違いがあったのだろう。かたちか? 味か? それとも。
ああそれでも思考を舌に乗せ逃げることなく聞くがいい。この曲、『第3番』によく似ていると思わないか?
ぼくは、この曲も好きなんだ。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功