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瑠璃の心臓

#√汎神解剖機関 #ノベル #【巻き込まれ】

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 さて怪異とは普遍的であるがどこにでもいてどこにもいない。インビジブルほど分かりやすければ良いものだが仕事として探すには骨が折れる。物理的に骨を折ってやるのはこちらとはいえ。
 路地に響くは|逢魔時《シリンジシューター》が毒薬を撃ち出す音色。瑠璃に瞬く金が散る、ラピスラズリの光は無慈悲な輝き。哀れ蜂の巣どころかどろどろ、今にも息絶えそうな『それ』が骨を曝け出しながらも抵抗を続けている。
 面倒臭い。脳裏に走る。自分は|唯《ただ》これのなかみが見たい。ゆえに黙ってほしい、死ねとは言わない、抵抗されぬ程度の沈黙が欲しかった。

「ありあちゃん」
 後方から呑気な声。とてとて素足に近い足音。何処から来たのだ。だが√能力者が戦闘に介入してくる事など普段通り。気にしている場合ではない。弾を装填しながら振り返ることなく、一・唯一(狂酔・h00345)は隣へ立った『災厄』に声をかけた。
「近寄ったらあかんよ、足が溶け……」
「ミッ」
「回収が速い」
 怪異の側へ向かおうとした人間災厄「少女の偶像」、そのつま先がとける。少女らしく脆い肉体につくられている彼女、その足裏が瑠璃に触れていた。どろりと肉が床に張り付き、後退しても引き剥がされた肉は帰って来ない。イリス・フラックス(ペルセポネのくちづけ・h01095)は困った様子で唯一へ視線を。
「とけた」
「せやね……」
 やや呆れながらの一言、その隙に怪異が動こうとする。察知したイリスがそれを見つめ。
「わたしはこんな、なのに。あなた、『どうして動けてるの』?」
 『|定義付け《レッテル》』。途端麻痺し動かなくなった怪異、すかさず弾丸でブチ抜く唯一。
 ようやく沈黙したが、半端に息のあるそれを前にし、イリスはまた彼女を振り返り。
「これ、おなか、開くの?」
 無邪気にそう聞いた。

 ――さて怪異の解剖とは正しく唯一の本職である。捕らえたはいいが皮膚が爛れたそれ。然し表皮には然程興味がない。でなければ溶かす等という攻撃は行わない。
 肌にすっとメスを入れる。存外柔らかく腹を開けば溢れる腑。脇へとよけて中味を漁る。シートを敷き清潔に保たれた床へ体液が散る。
 目立った器官は見当たらない。ならばと肋骨を鋸で断ち切り開く。肺を軽く持ち上げれば、そこには奇妙な形をした心臓が微かに脈打って。見つけた『お目当て』に笑みが溢れた。
「きれいね」
 忍び込んだと言うには堂々、地下まで着いてきていた災厄が呟く。
 綺麗。綺麗か、せやね、綺麗。
 時折痙攣する心臓、ぴくりと指先。『なかみ』を探られている怪異の気持ちなど二人は察せぬ。察さぬだ。
 先に腑を処理するか。胃や胆嚢に触れぬよう丁寧に楽しく漁り、切っ先で開く。その切先を眺める少女は興味のあるものしか見ようとしない。明らか『助けて』と懇願するように指を動かす怪異を見ても「ふうん」で止まる。
 あらかた探り頭骨も割り目立つものはないと手が止まり。
 最後に取り出される心臓、|R.I.P.《安らかに。》喧しい地下室の住人にならずに済んだ事を光栄に思え。

「これ、どうするの?」
 溢れ出ていた臓を手にして聞くイリス。唯一はしー、と人差し指を唇に当てた。よく分からないが察したふりして少女は頷く。
 興味はほどほど、元に戻してみようと腹へとぎゅう。当然戻るわけはなく。それを微笑ましく思いながら眺め唯一は言う。
「イリスのおなかにも、似たようなのが詰まっとるんよ」
 当然ながら。少女の姿を取り食事するならそうなのだろう。興味の一言へ微笑む偶像は、どこまでも無邪気に。

「おなか、みる?」
 まるで臓をクッションにするかのように頬を寄せて、云った。

 さて、回答は。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​ 成功

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