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【歌配信】しうとクリスマス

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いつも夜は、決まった流れをなぞる。
 バイトから帰ってきたら、学校の宿題や準備を終わらせてお風呂に入る。準備していたハニーミルクを手に自分の部屋に戻ったら、パソコンを起動させて、お気に入りのマイクや機材のチェックをして。
 そうして、夢咲・紫雨は配信開始のボタンを押す。
「みんな、メリークリスマス。しうだよ」
 いつものように、紫雨は画面に向かってふわふわと話しはじめた。同時に、画面のなかでコメントが流れはじめる。
 メリークリスマス、メリクリ、しうちゃん待ってた――コメントの流れは緩やかだが、見慣れた名前が並んでいる。いつも紫雨の配信に来てくれるリスナーたちだ。
〈メリークリスマスしうちゃん! 今ケーキ食べてたとこ!〉
「みーちゃん、ケーキ食べてたんだ? しうも食べたよ。おやつにクレープも食べちゃったけど、今日はいいよね」
 クリスマスだもん。その一言で、なんとなく気分が明るくなる気がする。
 今日はクリスマスだ。紫雨も楽しく過ごして、いつもよりはしゃいでしまった気がする、特別な日のひとつ。けれどそんな日だからこそ、いつも通りに寝る前に配信がしたかった。
「今日は配信ないかと思った? ちょっと遅くなっちゃったもんね。でもやっぱり、歌って寝ないと落ち着かなくって」
 いつもそうしてるから、と紫雨はふわりと笑う。
 紫雨は歌が好きだ。好きなだけ歌っていたくて、こうして配信もしている。限りなくマイペースにやっているから、歌い手として大人気かと言うとそうではないだろう。けれど紫雨自身こののんびりした雰囲気が好きだ。
「今日はなにを歌おっか。決めてあるのもあるんだけど……あ」
 言いかけて、ふと視線を向けた先には部屋の窓があった。うっかりカーテンを閉め忘れていたようで、つい素直に声がこぼれてしまう。カーテンを吸音素材にしているから、そういう意味でも閉めておかないと意味がない。
〈しうちゃんどうした?〉
〈なにか歌いたいの見つけた?〉
「ううん、カーテン閉めるの忘れちゃってたなって。閉めてきてもいい?」
 半ば答えをわかって訊いてみれば、コメント欄から一斉にいいよ、の声が返る。音としてはなにも聞こえないのに、賑やかな気がしてつい頬が緩んだ。
「ありがと、みんな。ちょっと待っててね」
 言い置いて、紫雨はあえてミュートを入れずに席を立つ。数歩で辿り着く窓辺は、デスク周りより少しひんやりとしていた。カーテンに手をかけようとして、
「あ」
 また声が出る。マイクに拾われただろうか。そう思いながら、紫雨はカーテンを丁寧に閉めて、パソコンの前に戻った。
「戻ったよ、お待たせみんな」
〈おかえりー〉
〈おかえりしうちゃん。あって聞こえた〉
「ふふ、やっぱり聞こえてた? あのね、カーテン閉めるときに気づいたんだけど」
 言いながら、ひとつの曲を用意する。カーテンの隙間から見えた、クリスマスの夜。そこに紫雨は素敵なものを見つけたのだ。
「雪、降ってきたね。……ホワイトクリスマス。だから今日は、この歌からにしようって」
 ボタンひとつで、曲のイントロが流れ出す。マイクに向かって姿勢を整えながら、紫雨はお決まりの台詞を口にする。

「しうの歌で、優しい夢までご案内。……よければ、聴いていってほしいな」

 やわらかく、わたあめのようにふわりと溶けてしまいそうな歌声が、クリスマスの夜――広いネットの海へと響き出す。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​ 成功

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