モフ・ゾンビへのいざない
●このタヌキがゾンビにお誘いしているというのに?
「もふもふがゾンビになってしまったのじゃ……」
狐堂・カイナ(古書店主代理狐・h02271)が、まるでおしまいを迎えたような悲し気な顔つきで、依頼の説明を切り出した。
「……こほん。今回、大量のモンスター出現の報せがあっての。√ドラゴンファンタジーのダンジョンに赴いて欲しいのじゃ」
出現するのは、ある特性を備えたモンスターだという。それは……ゾンビ。
これまで、√ドラゴンファンタジーでは、いわゆるゾンビと称されるアンデッド型モンスターは確認されていなかった。
今回発見されたモンスターがゾンビと呼ばれるからには、理由がある。そのモンスターの有する性質が、『ゾンビに噛まれるとゾンビになる』というものだからだ。
「つまり、ゾンビがゾンビを増やし、そのゾンビが更にゾンビを増やすと……ダンジョン内はすべてがゾンビになるというわけじゃ」
増殖したゾンビはダンジョンという枠に収まりきれなくなり、人里にまでゾンビ旋風を巻き起こしかねない状況だ。
「ゆえに、ゾンビ大増殖を止めるのは今をおいてほかにない。皆に、ゾンビダンジョンに向かって欲しいのじゃ!」
ダンジョン内は、まるで森の様相。生い茂る木々が、迷宮のような体を為している。
そして、足を踏み入れた瞬間から、ダンジョンは牙を剥いてくる。『アニマル・モンスターズ』の襲来である。
様々な動物の特徴を併せ持つこのモンスターも、当然、既にゾンビ化している。
たとえEDENであっても、うっかり噛まれれば、ただでは済まないかもしれない。出来るだけ無傷で突破する事が望ましいだろう。
「もふもふ可愛いのに……触れられぬとは、惜しいのう……」
何やら残念そうにつぶやくカイナ。
アニマル・モンスターズのテリトリーを抜けると、いよいよ本番。ダンジョン深部への道を塞ぐゾンビモンスターとの対面だ。
アニマル・モンスターズ同様、ゾンビは侵入者をゾンビ仲間に入れようと襲ってくる。そして、その姿は。
「どうやら、たぬきのようじゃな……」
たぬき。
これまた、ゾンビであることを忘れてしまいそうになる愛らしさ。
しかし、野生動物とのふれあいは安易にするべきではなく、そもそもこのたぬきはモンスターだし、あまつさえゾンビなので触れるなんてもってのほかなのだった。
「探索はまだ続く。ここで|ゲームオーバー《おしまい》になっている場合ではないのじゃ」
心を鬼にして討伐してほしいと、カイナは言う。
そして最深部には、今回のゾンビ異変に関する何かが待ち受けているという。モンスターをゾンビ化したものか、あるいはそれに関係するものが。
「いずれにせよ、このダンジョンにおけるゾンビ化現象を終わらせるために、皆にはもうひと踏ん張りしてもらうことになるのう」
動物系モンスターをゾンビ化した元凶を、排除するのだ。
そしてカイナは、再びEDEN達に忠告する。
「このダンジョンで遭遇するモンスターは、そろって愛らしい動物型ばかりじゃが、どれもゾンビじゃ。くれぐれも用心するのじゃぞ。可愛くとも、可愛くとも……」
繰り返し、釘をさすカイナなのだった。
マスターより
七尾マサムネみなさんこんにちは。
アニマル・ゾンビ・ダンジョンへようこそ!
●第一章
ゾンビ化した『アニマル・モンスターズ』達と戦います。
元々、縄張り意識が強いモンスターで、ゾンビ化した今も、侵入者をかたっぱしからゾンビにしてしまおうと襲ってきます。
●第二章
ゾンビ化したたぬきモンスターが待ち受けます。
侵入者をゾンビになりませんかと誘うような仕草をみせます。
あとは、最深部への道を通せんぼするくらいですが、それはそれとしてゾンビなので退治はしましょう。
●第三章
ゾンビ異変にまつわるものを解決します。
進行時に、断章にて詳細をお知らせします。
それでは、皆さまの道行きに幸いがあらんことを!
51
第1章 集団戦 『アニマル・モンスターズ』
POW
アニマルズ・ラッシュ
【仲間との連携】により、視界内の敵1体を「周辺にある最も殺傷力の高い物体」で攻撃し、ダメージと状態異常【防御力低下】(18日間回避率低下/効果累積)を与える。
【仲間との連携】により、視界内の敵1体を「周辺にある最も殺傷力の高い物体」で攻撃し、ダメージと状態異常【防御力低下】(18日間回避率低下/効果累積)を与える。
SPD
モンスターズ・コミュニティ
事前に招集しておいた12体の【味方のモンスター】(レベルは自身の半分)を指揮する。ただし帰投させるまで、自身と[味方のモンスター]全員の反応速度が半減する。
事前に招集しておいた12体の【味方のモンスター】(レベルは自身の半分)を指揮する。ただし帰投させるまで、自身と[味方のモンスター]全員の反応速度が半減する。
WIZ
ティル・ナ・ノーグ
【一族に伝わる英雄譚】を語ると、自身から半径レベルm内が、語りの内容を反映した【物語を再現した結界】に変わる。この中では自身が物語の主人公となり、攻撃は射程が届く限り全て必中となる。
【一族に伝わる英雄譚】を語ると、自身から半径レベルm内が、語りの内容を反映した【物語を再現した結界】に変わる。この中では自身が物語の主人公となり、攻撃は射程が届く限り全て必中となる。
森なダンジョン。
自然と作為の融合……迷路となった内部を進めば、『それ』はすぐに現れる。
『キタナ』
『キタゾ』
尾と耳の長い、複数の影。その正体こそ、『アニマル・モンスターズ』。
数々の動物の特徴を掛け合わせた、キメラ的な外見の持ち主。だが、その顔色は、通常の個体よりも幾分よろしくない。
ゾンビゆえに。
ゾンビと化してなお、愛らしさを失わぬその姿は、侵入者に牙を剥く。
『……オマエ モ ナカマニシテヤル!』
シャァッ!!
襲い来るアニマル・ゾンビ!
彼らに噛まれてはいけない。触れてはいけない。
被弾を許せば、哀れ彼らの仲間入り……EDENでさえゾンビになってしまうかもしれないのだから!
春尾・志選かわいくてもふもふなのにモンスターで、その上ゾンビだから触れないなんて……いや、元々モンスターだからあんまり触れないじゃないかなぁ?
でも確かに、噛まれたらアウトかもって言う所は大問題。
とにかくゾンビを増やされても困るし、頑張って全部倒さなきゃ……!
ほんとは近付かれないように戦いたいけど、今の私の力だとそれはちょっと無理そう。
まずはとりあえずエネルギーバリア全開!
少しでも噛まれたりし辛くしておこう。
相手が動物でゾンビなら、多分火が苦手な感じはするから……鳳凰の力を借りて燃やしちゃおう。
小さい動物には避けられるかも知れないけど、それはそれで私がちょっと戦いやすくなるからちょっとお得かな。
後は防御力が下がると噛みつきが通ってくるかもだから……その辺はルートブレイカーで何とかする!
ゾンビには触れられないとしても、何かの物を使って攻撃してくるならそっちに使えるはず。
頑張って何とかやっつけるよ!
森なダンジョン。
モンスターの巣窟に足を踏み入れた春尾・志選(鵺の巫女・h07952)を待ち受けていたのは、アニマル・モンスターズの面々だった。
『ナカマ』
『ナカマニナレ』
誘いかけてくるアニマル達に、志選は、むむ、と眉間に力を入れた。
確かに愛嬌があるが、様子が少し、おかしい。ゾンビだからだ。
「かわいくてもふもふなのにモンスターで、その上ゾンビだから触れないなんて……いや、元々モンスターだからあんまり触れないじゃないかなぁ?」
要素が結構もりもりで、その分、ツッコミどころもじゅうぶん。
けれど実際、『噛まれたらアウトの可能性アリ』という部分は大問題。
「ゾンビを増やされても困るし、頑張って全部倒さなきゃ……!」
きりりっ、と表情引き締め、ゾンビ・アニマル達に立ち向かう志選。
『ナカマニ、ナレーッ』
数は力なり。敵は集団であることを生かした連携攻撃で、志選を追い込む作戦に出た。
接近されないよう、間合いをとりながら戦いたいところだが、アニマル達の俊敏さは、ゾンビという単語から連想するのとは程遠いものだった。
志選を挑発するように反復横跳びを披露すると、一気に突撃!
『ピャッ!?』
噛みつこうと飛び掛かってきたアニマルの体が、吹き飛んだ。志選の展開した、エネルギーバリアに弾き返されたのだ。
もちろん、このくらいでめげるゾンビではない。再び襲来するアニマルを、志選の炎が迎え撃った。
鳳凰の力の具現、渦巻く炎。動物かつゾンビという、火が苦手そうなもの同士の組み合わせが、アニマル達を狙う。しかし。
しゅばっ!
動物のいいとこどりをしたアニマル達は、その能力の1つ……素早さを発揮した。
傍に生えた木を蹴って、すんでのところで、火の直撃を避けきる。
……が。
『!?』
アニマル達の動きが止まる。だるまさんがころんだ、で、鬼が振り返った時のように。
気づけば彼らの周りは、かわした炎によって生まれた海に囲まれていたのだ。
火がアニマルを包もうと包むまいと、志選にとっては戦況を有利に運ぶことが出来る、隙のない能力。お得。
『キュッ!』
うかつに接近できないのなら、道具を使うまで!
ばきっ! アニマル達は、その強靭なパンチ力、もしくはキック力を発揮すると、周囲に生えていた木を圧し折った。
枝や幹を、槍や鈍器に見立て、√能力にて操ると、志選に投擲する。
元は何の変哲もない木々であっても、能力を帯びれば立派な凶器となる。
それでも、志選は、慌てない。すかさず、次なる√能力を発動。
右掌に投擲物が触れた瞬間、攻性が解除され、ただの木々へと戻っていく。ルートブレイカーの力が、正しく発揮されたのだ。
『キュッ……』
『キュイッ!』
弱気な鳴き声が、強気なそれに転じる。
自由を奪われ、あまつさえ攻撃まで無効化される。それでも、ゾンビ・アニマル達はめげなかった。
ゾンビ仲間を増やすという、ある意味本能のような衝動に突き動かされ、果敢に、志選にアタックを繰り返す。
だが、志選の守りを突破することは叶わず。
反対に、アニマル達を、志選が次々と退治していったのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
トゥルエノ・トニトルス時雨殿(h00536)と
モンスターだけでなく
タヌキも現れるダンジョンらしいなぁ…
もふもふの巣窟になっているのだろうか?
早速、調査に出発だな〜
…此れは!キメラっぽいアニマル達〜
に加えて、顔色も悪そうだなあ
此れがゾンビ化と言うやつか…
噛まれてはいけない、触れてもいけない
もふもふの風上にも置けないヤツだな〜
さて、退治しようか
黄昏れこえて射貫けよ神の槍、と
周囲に雷纏う投槍を浮遊させて
動きの鈍ってる物から片付けて行こうか
黄昏の呪詛も付与して槍投げしつつ
…触れないふわもふ程
お預け気分はないだろうからなぁ
この戦いが無事に終わったら…
わたしで もふもふしていくか?
何かのフラグっぽくも聴こえそうだよなぁ
野分・時雨エノくん(h06535)と
アニマル!ふわふわ!もふもふ!
楽しみだね~。大きいふわふわも、手のひらサイズのふわふわもいるかも!
紛うことなきゾンビだ…。
星詠さんから聞いてたけど本当に触っちゃだめなのかな。
目の前にふわふわいるのに触れない。
エノくんも悲しいよね。アニマルに属するものとして言ってやってください。
えー。じゃあ……
噛みつかれないように影業纏い。
先制攻撃して、濃霧で撹乱します。
触れないように高速移動で……早業で攻撃打ち込んでいきますけど……
こんな、可愛いのに。
もふもふ良いんですか。吸うよ。ほんとに。
探険の時!
トゥルエノ・トニトルス(coup de foudre・h06535)と野分・時雨(初嵐・h00536)は、件のダンジョンの入り口へと到着していた。
「モンスターだけでなくタヌキも現れるらしいなぁ……もふもふの巣窟になっているのだろうか? これは早速、調査に出発だな〜」
若干呑気さを含んだ決意と共に、ダンジョンに足を踏み入れるトゥルエノ。
時雨もまた、わくわくしていた。なんなら、トゥルエノ以上にその感情を余すところなく表に出していた。
「アニマル! ふわふわ! もふもふ! 楽しみだね~。大きいふわふわも、手のひらサイズのふわふわもいるかも!」
時雨の期待は高まるばかり。
キメラ的要素を含んだモンスターなようだが、絶妙に可愛らしさを保ったままらしいので、時雨はやはり楽しみだった。
いざダンジョンアタック!
「……此れは!」
トゥルエノ達の行く手に立ちはだかったのは、モンスターの群れ。
ウサギ的な耳や、また別の動物の牙などなど……様々な特徴を兼ね備えた動物型モンスター達だった。しかし、特徴はそれだけではない。
「ゾンビ……」
「紛うことなきゾンビだ……」
ゾンビ。
ダンジョンにやってきた頃のウキウキ加減は、遠い日の出来事のよう。
時雨は、死んだ魚の目で、アニマル・モンスターズ・ゾンビを見つめた。
せめてもう少し血色がよければよかったのに……いやそういう問題じゃない。
「キメラっぽいアニマル達〜に加えて、顔色も悪そうだなあ。此れが噂のゾンビ化と言うやつか……」
実際、これまで発見されているアニマル・モンスターズとは、また色合いが異なっている。
すると、トゥルエノ達から注目されて気分が上がったのか、モンスター達が、全身を使って、威嚇を始めた。
『ナカマニ……』
『ナカマニナレ……!』
人語を発するモンスター達。
武器めいて備わる牙が、単なる凶器ではないことを、トゥルエノは知っている。
「噛まれてはいけない、触れてもいけない。もふもふの風上にも置けないヤツだな〜」
困ったことに、ゾンビと化してなお、その毛並みはふわふわとしている。触り心地を想像するだけでも、トゥルエノの心まで、もふもふとしてくる。
これは、とてもではないが刃を向けることなどできそうに……。
「星詠さんから聞いてたけど本当に触っちゃだめなのかな」
時雨はあきらめていなかった。
ゾンビ化のトリガーは噛まれる事。少々接触するくらいならいい気もする。
もっとも、その隙にガブっとやられたら元も子もない。そしてこのゾンビならそうする、という謎の確信が、時雨にはあった。
「目の前にふわふわいるのに触れない。エノくんも悲しいよね。アニマルに属するものとして言ってやってください」
「さて、退治しようか」
トゥルエノは果断だった。
「えー。じゃあ……」
トゥルエノがそういうのなら。
渋々。重い腰を上げようとする時雨に、アニマル達が襲い掛かった。
『ナカマニシテヤル!』
事前に招集していた仲間も加えて、準備は万全。しかし、時雨の方が先んじた。
『ピャッ!?』
モンスターが、思いのほか可愛らしい鳴き声を上げた。時雨のもたらした濃霧に視界を遮られ、左右をきょろきょろ。
相手に噛みつかれてしまわないよう、影業を纏う。狗型の影で接触お断りを表明しつつ、時雨は、相手に先制した。やられる前にやれ、ならぬ、噛まれる前に噛め。
どこから仕掛けられるのか……判断しかねている間にも、時雨の攻撃が、アニマル達を仕留めていく。
森のゾンビ大乱戦。トゥルエノにも、アニマル軍団が攻めかかる。
「黄昏れこえて射貫けよ神の槍」
トゥルエノの詠唱に応えて、その周囲に、雷纏う投槍が浮かびあがる。接触できないのならば、遠距離から仕留めるまで。
狙いは、動きの鈍ったモンスター。仲間を12体も呼んだ代償。その挙動は、まさにゾンビのように鈍重になっていた。
黄昏の呪詛も付与して、槍を投擲。俊敏さを失った相手は、恰好の的だ。
「こんな、可愛いのに」
残念を含みながらも、時雨は、一撃を打ち込んでいく。心を鬼にして。
せめてゾンビでなかったら、多少はもふもふの機会もあったかもしれないというのに。これはゾンビ化首謀者許すまじ。
「……確かに、触れないふわもふ程お預け気分はないだろうからなぁ」
敵を打ち倒していきながらも、時雨への同情を禁じ得ないトゥルエノ。
「この戦いが無事に終わったら……わたしで もふもふしていくか?」
「もふもふ良いんですか。吸うよ。ほんとに」
そんなふうにトゥルエノから誘いかけられたら、その気になってしまいそうな時雨。
何の気なしに告げたはいいものの、何かのフラグっぽくも聴こえそうだよなぁ、と思い直すトゥルエノ。
ともあれ、もふもふお預けを喰らった時雨は、そのうっ憤を晴らすように、ゾンビ・モンスターズを倒していくのだった。
流した心の涙が、明日の自分を強くしてくれると信じて。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
小明見・結※アドリブ・連携歓迎
この動物さんたちもゾンビ化に巻き込まれた被害者みたいなものよね。そう考えると悲しいわね。
精霊さんの力を借りて、木の根を生やしてもらうわ。
遠くから動けないように抑えつけましょう。噛まれたりすると大変でしょうし。
とりあえず襲ってこないように抑えておけば大丈夫かしら。あまり傷つけるのも心苦しいし。
本当だったら、ふれあっていきたいところだけど…、ゾンビ化してるんじゃ、そんなこともできないわよね。
奥にもまだモンスターがいるはずで、そっちの対応もしなきゃいけないし…先を急ぎましょう。
このダンジョンのゾンビ化の原因を解決すれば、彼らも元に戻るかしら。そのときにゆっくり遊べるといいけれど。
『ナカマ……』
『ナカマニ……ナレ……』
森なダンジョンを探索する小明見・結(もう一度その手を掴むまで・h00177)は、さっそく、アニマル・モンスターズの『歓迎』を受けていた。
ひいき目に見ても、色合いが、悪い。その理由が、亜種、の一言で済めばよかったのに。
「この動物さんたちもゾンビ化に巻き込まれた被害者みたいなものよね。そう考えると悲しいわね」
仲間を渇望し、集団でにじり寄ってくるアニマル達を、結はある種の同情を以て見つめた。
しかし、仲間は仲間でも、ゾンビ仲間にされるのはお断りだ。
がばっ、とアニマルの口が開かれる。ゾンビにしてしまおうと、猛々しい牙が、結を狙う……!
かと思いきや。
『ムカシムカシ、コノダンジョンハ……』
唐突に、語りが始まった。
アニマル英雄譚。ダンジョンの生態系の頂点に立ち、ダンジョン・マスターとなった一体のアニマルの物語……!
言葉の羅列は、実際の力となる。語るアニマルの力を高め、今また新たな英雄を誕生させようとする。
今やアニマルの周囲は、一種の結界。結ですら、おいそれとは立ち入れぬ領域となった。ならば……。
『ワレ、ダンジョンノハシャナリ!』
高らかに宣言したゾンビ・アニマルの足元から、突然、木の根が出現した。
結の呼びかけに応え、精霊達がその力を用いて、根を生やす。それは力強い拘束具となり、アニマル達から自由を奪い取った。
「噛まれたりしたら大変ですものね」
『グ……ハナセ……!』
『カマセロ……!』
じたばた。
全身の力を振り絞って、根の束縛から脱しようとするアニマル達だったが、精霊力の賜物であるそれは、容易くほどけるものではない。
それでいて、殺傷力は抑えられている。結の意志を反映して。
「とりあえず襲ってこないようにこうして抑えておけば大丈夫かしら。あまり傷つけるのも心苦しいし……」
本当なら、触れ合いの時間を持ちたいところだったが、今のアニマル達はゾンビ化状態。危険を伴う行為だ、出来そうもない。
しかも、この奥にもまだ|モンスター《たぬき》が控えている。そちらの対応にもリソースを割かねばならない。
「……先を急ぎましょう」
『ハナセーッ』
アニマルの懇願を振り切って、結は奥へと進む。
このダンジョンのゾンビ化の原因を解決すれば、アニマル達も、元の状態に戻るだろうか。
もしもそうなら、その時にゆっくり遊べるといいけれど。願望もこめつつ、結は深部へと向かっていくのだった。
🔵🔵🔵 大成功
ジズ・スコープおや まぁ……ゾンビ、ですか。
もふもふわんだほーは、不可と?
それはそれは残念ですね。
まぁ、ゾンビともなれば、触り心地も、あまりよろしくないでしょうし……仕方ありませんね。
嗚呼、ゾンビなどになるのではなく、咬んできた其の動物になるとかであれば、もふもふぱらだいすが出来上がるでしょうに……ゾンビですか、そうですか。残念ですね。
さっさと倒してしまいましょうか。
近寄らず神鳴りにて攻撃
攻撃見切り躱すか、鉄壁オーラ防御
木々が織り成す、自然系ダンジョン。
不穏な気配がしきりに漂う森の中、ジズ・スコープ(野良|古代語魔術師《ブラックウィザード》・h01556)は、モンスターと邂逅していた。
『ヨウコソ……』
『アタラシイ……ナカマ……』
アニマル・モンスターズ。しかし、顔色がよろしくない。
その原因を、ジズは知っている。
「おや まぁ……ゾンビ、ですか」
『ゾンビ……ナカマニナレ……』
ざっ、ざっ……。
不穏な足取りで近づいてくるアニマル達。やはりゾンビだ。
「もふもふわんだほーは、不可と? それはそれは残念ですね」
しかも、アニマルの毛並みはそれなりにもふもふとしてはいるが、しんなり気味。
諸々の事情と、コンディションの良いもふもふを堪能できないという現実を加味した上で、ジズは結論に至った。
仕方ない、と。
「嗚呼、ゾンビなどになるのではなく、咬んできた其の動物になるとかであれば、もふもふぱらだいすが出来上がるでしょうに……ゾンビですか、そうですか。残念ですね」
ジズの想像が現実となれば、ダンジョンも楽園となったことであろう。
しかし現実は残酷だったので、ジズは決断した。
「さっさと倒してしまいましょうか」
ジズの葛藤や思案など何処吹く風、アニマル・ゾンビ達は、列を為した。
すっかり『相手をゾンビにする』という衝動に取りつかれている。もはや本能といっても良いそれに従い、ジズを威圧する。
『ムカシムカシ、アルトコロニ……』
突如始まる劇。それは、アニマル達の伝承。数多のモンスターの頂点に立った、英雄の物語。
『ナガキニワタルハケンアラソイ……ヒトリノユウカンナアニマルガタチアガッタ』
英雄役のアニマルが、爪を振り上げると、やられ役のアニマルが、次々、こてんと横になっていく。
「おや……これは」
一応、観客に徹していたジズが、気づいた。
演者のアニマル達の周囲が、不思議な力で満たされていく。この中では、アニマル達は、英雄的能力を発揮できるという。ゾンビ化は免れない……!
『ナカマニ……ピャーッ!?』
英雄気取りのアニマル達を、天からの雷が襲った。
近寄れば無敵。ならば、近寄らなければいい。これぞ君子危うきに近寄らず。
絶え間なき落雷が、アニマル達を蹂躙する。その数は、300にまで至る。森を、緑から白へとその色彩を変化させるほどに激しい。
かくしてジズは、アニマル伝説を打ち破り、元・もふもふを退治していったのだった。
🔵🔵🔵 大成功
第2章 ボス戦 『かわいいたぬき』
POW
こんなにかわいいたぬきなのに?
【可愛い仕草】を放ち、半径レベルm内の自分含む全員の【かわいいたぬき】に対する抵抗力を10分の1にする。
【可愛い仕草】を放ち、半径レベルm内の自分含む全員の【かわいいたぬき】に対する抵抗力を10分の1にする。
SPD
たぬきはさつまいもが大好きなのです
全身の【意識】を【さつまいも】に集中すると、[さつまいも]が激しく燃え上がり、視界内の全員の「隙」が見えるようになる。
全身の【意識】を【さつまいも】に集中すると、[さつまいも]が激しく燃え上がり、視界内の全員の「隙」が見えるようになる。
WIZ
たぬきはもうおしまいです
【自分を閉じ込める箱罠】を召喚し、攻撃技「【死んだふり】」か回復技「【箱罠の中に居る限り無敵】」、あるいは「敵との融合」を指示できる。融合された敵はダメージの代わりに行動力が低下し、0になると[自分を閉じ込める箱罠]と共に消滅死亡する。
【自分を閉じ込める箱罠】を召喚し、攻撃技「【死んだふり】」か回復技「【箱罠の中に居る限り無敵】」、あるいは「敵との融合」を指示できる。融合された敵はダメージの代わりに行動力が低下し、0になると[自分を閉じ込める箱罠]と共に消滅死亡する。
襲い来るゾンビアニマルズを蹴散らして、EDEN達は進んだ。ダンジョンの奥へと。
されど、深部への道を、何か大きなものが塞いでいる。
フョ~……ポキョ~……。
謎めいた鳴き声に惹かれるようにして、近づいていくと、それは、たぬきだった。
『ポキョ~……』
葉っぱを頭に載せた、たぬきモンスター。
人畜無害そうな表情とは裏腹に、その顔色は、少し、悪い。れっきとしたゾンビと化している証拠だった。
『フョ~……』
先ほどのアニマルと違い、人語を発することは出来ないようだ。
それでも、なんとなく相手の意志は伝わってきた。
たぬきといっしょに、ぞんびに、なりませんか?
きゅるっ、と小首をかしげて誘いかけてくるたぬき。その仕草は愛らしく、これが恐ろしい誘いであることを一瞬忘れそうになる。
だがゾンビだ。たぬきである前にゾンビだ。ゾンビは全てに優先する。
ゆえに、誘惑されてはいけない。おいもという賄賂を差し出してきたとしても、お断りするしかないのだった。
アドリブ嬉しいです◎
なんて調子を狂わされるゾンビなんだ…
積極的に攻撃してこない相手をどうこうするのは
ちょっとだけ心が痛むけど
ゾンビになってしまったものは仕方がないものね
せめてさくっと終わらせてあげよう
わあ、おいしそうなおいもだねぇ…
いやいやいけない、集中しよう
君けっこうでっかいからなぁ…
クリスタータで顎棘蔓を多めに生やし攻撃
たぬきくんからの反撃があれば棘枝と棘蔦で適宜対処、拘束を
触ってはいけないんだったね
だけどこれくらいは許してくれる?
蓮花の加護の白い掌でたぬきの頭をそっと撫でる
もし君が生まれ変われるなら
そしてまた僕と会えたなら、
次はそのおいもをおいしくいただきたいものだね
じぃっ……。
白百合・蓮華(徒花の|実《じつ》・h12988)は見つめ合っていた。たぬきと。
蓮華としては観察のつもりだったが、やたら邪気の無いたぬきと視線が合うと、不思議と和やかな雰囲気に包まれる。
『ポキョ~……』
「なんて調子を狂わされるゾンビなんだ……」
そう、ゾンビである。
噛まれれば、蓮華もゾンビの仲間入り。なぜかこのゾンビもご多分に漏れず、仲間を求める習性を持つ。ゾンビってば、寂しがり屋なのだろう。きっと。
にしても、このたぬきは、ゾンビになってもなんだかのんびり。のそのそと近づいては来るものの、狂暴性の欠片も見当たらない。
積極的に攻撃してこない相手をどうこうするのは、蓮華としても(ちょっとだけ)心が痛む。
だとしてもゾンビである。こうなってしまった以上、仕方がない。
「せめてさくっと終わらせてあげよう」
蓮華が一歩を踏み出すと、たぬきは、びくん、と巨大な体を震わせた。そのわがままふわもふボディを。
ずいっ。
『ポキュー?』
これでゆるしてはいただけませんか? とばかりに差し出されるさつまいも。
「わあ、おいしそうなおいもだねぇ……いやいやいけない、集中しよう」
蓮華が構えを取ると、その頸椎から刺顎が、木々の陰から刺枝が、たぬきの足元から刺蔦が次々と生え始めた。
プレゼントを丁重にお断りした代わり、というわけではないが、増量である。
「君けっこうでっかいからなぁ……」
『フョ~……?』
さすがののんきたぬきでも、敵意を察する事は出来るらしい。いや、むしろ敏感な方なのかもしれない。すぐおしまいになってしまうくらいなので。
蓮華に対抗すべく、たぬきは、自らもその能力を発揮した。
ぺろっ。
舌をちょろりと出して可愛さアピール。世にいう『たぬぺろ』という奴である。……世にいう?
「うーん……」
こんなにかわいいたぬきをこうげきするつもりなのですか?
たぬきとしては、反撃のつもりらしい。確かに、蓮華の心は揺れたが、実質ノーダメージである。
それでもやむを得ないので、棘枝と棘蔦で、ちくちくぐさぐさと、もふボディを刺し、蹂躙した。
「ああ、触ってはいけないんだったね。だけどこれくらいは許してくれる?」
そっ。
たぬきの頭を、優しくなでる蓮華。蓮花の加護の白い掌ならば、問題はないだろう。
「もし君が生まれ変われるなら、そしてまた僕と会えたなら……次はそのおいもをおいしくいただきたいものだね」
『ポ、ポキョ~……』
もうおしまいです……とばかり、こてんと転がるたぬきに、蓮華は穏やかに告げたのだった。
🔵🔵🔵 大成功
トゥルエノ・トニトルス時雨殿(h00536)と
タヌキってポキョ~と鳴くのだなぁ
イヌ科なのに…?
さて置き、可愛さを台無しにする
ゾンビ化現象は何とかせねばなるまい
とりあえず…退治するか!
円相転じて、福を呼ぼう~
わたしも、ちいまる麒麟に変身すれば
もふもふ魅了に突撃力も2倍…!
さらに可愛さによる電撃で
雨雲にも濡れたゾンビを攻撃だ~
時雨殿のもふもふ欲は…
多少満足できたのだろうか…?
言われてみれば、動物のキリンは
牛のようにモーと鳴くらしいな
此の姿のままで試しに鳴き声だしてみるか……
ピィーー(とても甲高い音)(シカの鳴き声)
野分・時雨エノくん(h06535)と
ポキョ~だって!可愛い、可愛い!
可愛い!のに、ゾンビ……なんでえ……。
噛まれないように影業を両腕に纏い。
高速移動で、後ろに回り込みます。
ガシッと掴んで──満足。もふもふしてた。
あとはごめんね、で√能力使い。
雨雲呼び出して融合を指示します。
えーんたぬき……。
でも、ちいまる麒麟くん見れたからよしよし。
ちなみにエノくんは、黒麒麟さんはなんて鳴くの?
モー? フョ~…とか……鳴かない……?(期待)
野分・時雨(初嵐・h00536)は、感激のあまり、傍らのトゥルエノ・トニトルス(coup de foudre・h06535)をぱしぱしと叩いた。
「エノくん! ポキョ~だって! 可愛い、可愛い!」
「タヌキってポキョ~と鳴くのだなぁ。イヌ科なのに……?」
冷静なるトゥルエノ。たぬきの鳴き声には、非常に諸説があるとされている(諸説あり)。
『ポキョー……』
「ほらまた! 聞いた!? 生ポキョー!」
引き続き興奮していた時雨だったが、トゥルエノをぱしぱししていた手の動きが、次第にスローになっていく。
「可愛い! 可愛い! ……のに、ゾンビ……なんでえ……」
ぞーん。
テンション急降下。
肩を落とす時雨だが、たぬきは、「たぬきはぞんびですがなにか?」というのんき度100%の表情を返すだけ。無邪気さが恨めしい。
しばし、時雨の感情の浮き沈みを観賞していたトゥルエノだったが、改めてたぬきの様子をうかがう。
「さて置き、可愛さを台無しにするゾンビ化現象は何とかせねばなるまい。とりあえず……するか! 退治!」
決意を表明したトゥルエノに、たぬきは何かを繰り出した。
「おいもか」
おいもだ。
友愛の証の如く差し出されたさつまいもが、突如、燃え上がった。
「どういうことなのか」
ぼーぼーと火に包まれるさつまいもを、たぬきとともに眺めるトゥルエノ。
たぬきの表情は、心なしか得意げ。もうすぐおいしい焼き芋が爆誕するんですよ……とでも言っているのだろうか?
焚火の揺らめきは、人の心を鎮める効果があるという。それと同じかもしれない。
実のところ、こちらの隙を看破するという能力の発現らしいのだが、だからと言ってゾンビたぬきが何らかの行動を起こすようすはなかったので、
「どういうことなのか」
トゥルエノは、二回言った。別に大事なことではないけれど。
「うう……ゾンビ……」
ぬーん。
乗り越える壁の如く。立ちはだかるたぬきゾンビを、悲しみとともに見つめる時雨。
たぬきのもふもふボディ(ゾンビ風味)が、再び、√能力の気配を纏う。そう、かわいいたぬきはモンスター。しかもゾンビ。EDEN達にとっては不倶戴天の……。
『ぺろ』
小さく舌が出た。
世にいう、たぬぺろ、という奴である。
可愛い仕草で時雨を油断させ、かぷり、とゾンビ仲間に引き入れる算段であろう。だが、時雨にはこの程度の篭絡……。
「可愛い!」
効果は抜群だった。なんということでしょう。
ぽてぽて。時雨が悶える絶好のチャンスに、たぬきが近づいてくる。
しかし。
『?』
たぬきが、小首をかしげた。
時雨の両腕には、噛まれ対策として、影業が纏われていたのだ。
あらまあ……という感じでたぬきがスンッとする間に、時雨は、瞬時に後ろに回り込んでいた。
ガシッと両腕で、たぬボディをしっかりとホールド。
ホールド……&リリース。
「──満足」
実はもふもふしてた。影業越しではあったが、もふれたのは何よりの収穫。
「それで……ごめんね」
時雨が申し訳なさそうに告げると、雨雲が現れた。この雨は、時雨の悲しみの涙だ。
「時雨殿のもふもふ欲は……多少満足できたのだろうか……?」
トゥルエノが見た所、幾分悲しみは薄れたようだ。
それならいいが、と、いよいよ本格的に退治に取り掛かる。
「円相転じて、福を呼ぼう~」
くるりん。
トゥルエノがその場で前転すると、|ちいまる《なんかちいさくてまるい》麒麟に変身した。
ちんまり、たぬきと向き合うその姿、もふもふ魅了に突撃力も2倍……!
変身の恩恵は、それだけではない。可愛さによる電撃という新たな武器を得たトゥルエノは、無敵といえた。たぶん。
そのまま、雨雲に濡れ、もふ度をダウンさせたゾンビを電撃で打ち据える。しんなりしたことで、可愛さでもトゥルエノに一歩譲る形となっていた。
そして、時雨の雨雲は、たぬきとぶつかり、融合を始めていく。
その途端、たぬきから一層やる気が失われていく。もうおしまいです……という雰囲気が漂う。時雨にも漂う。
「えーんたぬき……でも、ちいまる麒麟くん見れたからよしよし」
気を取り直すのも早かった。
「ちなみにエノくん……黒麒麟さんはなんて鳴くの? モー? フョ~……とか……鳴かない……?」
時雨の、期待の眼差し。
(「言われてみれば、動物のキリンは牛のようにモーと鳴くらしいな」)
|此の姿《ちいまるモード》のままで試しに鳴き声だしてみるか……。
トゥルエノはやってみた。
「ピィーー(とても甲高い音)」
トゥルエノの絞り出したシカの鳴き声が、ダンジョンな森に木霊したのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
小明見・結※アドリブ・連携歓迎
次は狸さんなのね…。
喋ったりしない分、普通に動物らしいから、遊んであげられないのは余計に心苦しいわね。
とはいえ、やっぱり、触れ合うわけにはいかないんだし…。しょうがないから、無理にでも通してもらうことにしましょう。
精霊さんに竜巻を起こしてもらいましょうか。なるべく傷つけないように威力は抑えめで。
近づけさせないように、竜巻で吹き飛ばしてもらいましょう。
こっちに向かってこないのなら、別に戦う必要もないのだけれど。
ゾンビにまつわる何かが待つという、ダンジョン最深部。
アニマルゾンビを切り抜けた小明見・結(もう一度その手を掴むまで・h00177)の道行きを遮る、新たな刺客とは……。
『ポキョ~……』
「狸さんなのね……」
たぬき。
先ほどのアニマルズと違い、言葉を発する様子はない。何の問題もなく動物らしさを振りまいている分、遊んであげられないのは余計に心苦しくもある。
しかし、問題は、確実に立ちはだかっている。1つ目は、モンスターであるという事。そして2つ目は……こちらの方が割と重大……ゾンビであるという事だ。
「やっぱり、触れ合うわけにはいかないんだし……しょうがないから、無理にでも通してもらうことにしましょう」
『ポキュー?』
小首をかしげる、かわいいたぬき・ゾンビ。できればそういう仕草はやめて欲しいと思う結である。討伐に差し支えるので。
いっしょにぞんびになりましょう、というニュアンスで迫るたぬきは、高らかに鳴き声を上げた。
『ポキョー』
ぽすん。
現れたのは箱罠である。ちょうど、かわいいたぬきがおさまるくらい。
もっとも、たぬきといってもモンスターなので、結が何人も入るくらいのサイズはある。
この中に結を閉じ込め、その隙にゾンビにしてしまうつもりに違いない。
身構える結の目前で、たぬきは、ぽてぽてと歩き出し……。
がしゃん。
『ポキョー!?』
自ら罠に閉じ込められた。
『ポキョ~……』
たぬきはもうおしまいです……こてん、と死んだふりをするたぬきゾンビ。
「ゾンビなのだから元々死んでいるのでは……」
結の言葉は通じなかった。
『ポキュ~……』
結がしばし見守っても、箱罠からたぬきが出てくるようすはない。
たぬき的には死に場所なのだろうが、はたから見るとむしろ安住の地である。さつまいもも完備だし。
「こっちに向かってこないのなら、別に戦う必要もないのだけれど……」
しかし、生憎と、たぬきが陣取っているのは、ちょうど結の進路上。これをどけなければ、先には進めない。
結は、一計を案じた。
「精霊さん」
呼び出された精霊達が、こぞって風を起こした。揺れる枝葉。巻き起こる竜巻。
とはいっても、結の意図を汲んで、風力は抑えめだ。なるべくならもふもふを傷付けたくはない。
しかし、箱罠を吹き飛ばすくらいの力なら十分あった。
『ポキョォ~~……』
哀れっぽい鳴き声を置いて、たぬきは、箱罠ごと吹き飛ばされていったのだった。
🔵🔵🔵 大成功
春尾・志選うっ……たぬきって間近で見るとこんなにかわいいんだ……!
良く見るかわいい動物と言えば犬や猫だけど、猫とも犬とも違う……なんていうかちょっとこう、ぽんこつな雰囲気って言うか……?
大きいからパンダみたいな感じもするし、アニメの映画に出てくるかわいい怪獣みたい。
でも、うん。気を引き締めなきゃ。
だって相手はゾンビで、ゾンビを増やそうとしてるんだもん。
つられて撫でに行ったりしちゃダメなんだから!
まずは光の霊符で目をくらませる。
あっちでも向いてくれれば、ちょっとは可愛さも減るはず。
そのまま捕縛して叩く!
気は引けるけど、ゾンビを増やさないため……頑張る!
ようこそ、いらっしゃいましたね。
かわいいたぬきは、よっこいせ、と居住まいを正して、春尾・志選(鵺の巫女・h07952)を迎えた。
「うっ……たぬきって間近で見るとこんなにかわいいんだ……!」
うう、とたじろぐ志選。
かわいいたぬきの名前は、伊達ではなかった。
「良く見るかわいい動物と言えば犬や猫だけど、猫とも犬とも違う……ええと、なんていうかちょっとこう、ぽんこつな雰囲気って言うか……?」
『ポキュー?』
たぬき、かわいいですか?
小首をかしげるたぬきに、志選のハートは更に撃ち抜かれた。
しかもそれは、非常に抗いがたい。何せこう見えて、れっきとした√能力。可愛さという概念こそが、最大の武器。
もっとも、たぬきの側としては攻撃という意識はなく、可愛らしさが自然とこぼれ出ただけなのかもしれない。
いずれにせよ厄介である。
「大きいからパンダみたいな感じもするし、アニメの映画に出てくるかわいい怪獣みたい。でも、うん」
たぬきのかわいさ攻撃を一身に浴びながらも、こくり、うなずく志選。
「気を引き締めなきゃ」
なぜなら相手はゾンビ。そしてゾンビはゾンビを増やそうとするもの。噛まれれば、もちろん志選もゾンビの仲間入り。
「つられて撫でに行ったりしちゃダメなんだから!」
きりっ。
志選がフラグめいた決意を発しなければならないほどに、たぬきは愛らしかった。ゾンビ化こそしているが、そこまで顔色も悪くない。
もふもふ毛並みも、若干しんなりしつつも、たぬきボディのポテンシャルを完全に損ってはいなかったので、志選を魅了するには問題なかったのであった。
ゆえに戦いの覚悟は、しっかりと!
かかッ!!
『ポキョー!?』
志選のかざした霊符の眩さに、たぬきが、反射的に、顔を逸らす。
その途端、志選にかかっていた圧が軽くなる。浴びせ続けられていた可愛さが、軽減された証だ。
これはチャンス! 志選は、役目を果たした符に続けて、緋縄縛を放った。ゾンビもっふりボディが、しゅばっ、と捕縛される。
『ポ、ポキョ~……!』
あらあら? たぬきつかまりましたか?
困惑するたぬきの表情に、志選の心も揺らぎそうになる。
それでも、やらねばならない。
「ゾンビをこれ以上増やさないため……頑張る!」
きゅっ。
硬く結んだ唇。EDENとしての使命感と責任感。
志選の呪墨刀の一撃が、ゾンビたぬきを成敗するのであった。
🔵🔵🔵 大成功
ジズ・スコープ折角ですので、かわいいたぬき姿にて参戦。
なんですか、今度はタヌキさんですか……
おや、人語が発せない?
大丈夫です、私、動物と話す技能でばっちり理解出来ますので。
にしても、相も変わらずゾンビでいらっしゃると?
残念にも程がありますね。
嗚呼、ゾンビなどになるのではなく、咬んできた其の動物になるとかであれば、もふもふたぬたぬぱらだいすが出来上がるでしょうに……ゾンビですか、そうですか。残念ですね。(2度目)
もう、さっさと倒してしまいましょう。
確かにタヌキさんは可愛らしいですよ?
しかしですね、ゾンビになられて、毛並も血色も宜しくないのですよ。
つまり、本来の可愛さが失われていらっしゃるのです。
…いえ、私は仲間ではないですよ、確かに今、たぬきですけども。
私、ゾンビではありませんので。
かわいいたぬき、とは、こういう、もふもふもこもこ素敵な毛並み状態でこそです。
という事で、たぬきさんの抵抗力を10分の1にして差し上げましょう。
自らの能力で弱るところとか、本当、たぬきさんって生き物は……。
いえ、可愛い仕草をしても騙されませんよ。
申し訳ないのですが、かわいいたぬき、ではなく、
ゾンビなたぬきさんでいらっしゃいますので、
私の抵抗力になんら影響は御座いませんとも手加減なしです。
『万事順調』
躊躇いなく振り下ろした魔導書は
当たろうが当たるまいが気にせず
続いて2回攻撃
『轟け』
神鳴りを放つ
おや、箱罠に入ってしまわれましたか。
ドジくさい感じが狸さんですね。
では、箱罠ごと滅してしまいましょうか。
死んだふりしても無駄です。
消えゆかないところを見れば化かしである事は一目瞭然で御座いますれば…
『轟け』
容赦なく神鳴りを放つ
……死んだふりって熊に出会った時にするのではなかったでしょうか。
あの、たぬきさん?するべきは、寝たふり…では?
狸寝入りって言いますよね……?
神鳴りぴかぴかさせつつ…切に願う。
次はゾンビではない状態で出会いたいものです。
攻撃見切り躱すか、鉄壁オーラ防御
「なんですか、今度はタヌキさんですか……」
『ポキョ~?』
新たな訪問者に、かわいいたぬき(ゾンビのすがた)は、小首をかしげた。
ぽてぽて、と現れたのは、自分より小さいたぬき……それも、同じくらいかわいいたぬきだったからだ。
ジズ・スコープ(野良|古代語魔術師《ブラックウィザード》・h01556)の化けた姿である。
同族のよしみか。ジズたぬきに、かわいいたぬきは友好的な鳴き声をかけた。
『フョ~……』
「おや、人語が発せない? しかし大丈夫です。私、動物と話す技能で、たぬ語もばっちり理解出来ますので」
『それはたすかります』
にこ……。ジズの目には、たぬきが微笑んだように見えた。
とりあえず、すぐさま襲い掛かってくるようすはない。少しは語らう時間もありそうだ。
ジズは、かわいいたぬきの元に近寄ると、その大きなもふもふを見上げた。
「にしても、相も変わらずゾンビでいらっしゃると? 残念にも程がありますね」
『たぬきもこれはよそうがいでした』
フョ~。ため息をつくように鳴くたぬき。
人に害なすモンスターとはいえ、このたぬきもある意味、被害者だといえよう。
「嗚呼、ゾンビなどになるのではなく、咬んできた其の動物になるとかであれば、もふもふたぬたぬぱらだいすが出来上がるでしょうに……ゾンビですか、そうですか。残念ですね」
ジズのため息、再放送。
『たぬたぬぱらだいす! それはすてきですね。みんなでおいもをなかよくたべましょう』
おいも……!
自分の口から発せられた『おいも』というパワーワードに、たぬきの目が、きらきらと輝く。
だがそれは、叶わぬ夢。どうやらたぬきは、おいもとぱらだいすに気を取られ過ぎて、『ゾンビ』という肝心かなめの部分が抜け落ちてしまっているようだ。
あまり希望を持たせてはいけない。ジズの目の前にいるのは、たぬきの形こそしていても、ゾンビでモンスターなのだ……。
「もう、さっさと倒してしまいましょう」
『なんですって!?』
どうしてそんなひどいことをおっしゃる? 嘆きのまなざしでこちらを見つめるたぬきに、ジズはこう説く。
「確かにタヌキさんは可愛らしいですよ? しかしですね、すっかりゾンビになられて、毛並も血色も宜しくないのですよ。つまり、本来の可愛さが失われていらっしゃるのです」
『そ、そんなはずは……』
ぽてぽて。たぬきは、森の泉へと歩いていく。
そこに映った自分の姿を見て、ポキョ~と鳴いた。
『これはぞんびですね』
くるり。
たぬきは、現実を直視した後、ジズを振り返った。何かを懇願するようなまなざしで。
しかしジズは、ゆっくりと頭を横に振った。
「……いえ、私は仲間ではないですよ、確かに今、たぬきですけども。私、ゾンビではありませんので」
『ええ……?』
「かわいいたぬき、とは、こういう、もふもふもこもこ素敵な毛並み状態でこそです」
モッファ~ン。
わがままもふもふたぬきボディを誇示するジズ。これはかわいい。間違いなく。
すると、かわいいたぬきは、何やら構えを取った。眠っていた闘争本能に火がついたらしい。
『かわいいぽーず』
ほわほわほわーん。
溢れるたぬきの魅力。√能力であるそれは、ジズはおろか、たぬき自身をも魅了した。
『ふふふ、たぬきはかわいいですね……おや、どうしたんでしょう、なんだかちからがでない……』
「自らの能力で弱るところとか、本当、たぬきさんって生き物は……」
たぬ抵抗力10分の1。
すっかり骨抜きになったたぬきを見て、ジズが呆れていると、たぬきがぺろっ、と小さく舌を出した。
「いえ、そんな可愛い仕草をしても騙されませんよ」
『なんと』
「申し訳ないのですが、かわいいたぬき、ではなく、ゾンビなたぬきさんでいらっしゃいますので、私の抵抗力になんら影響は御座いませんとも」
そんな……というたぬきの視線を振り切って、ジズは、任務に移った。
「手加減なしです」
ぶん。
「『万事順調』」
『ポキョー!?』
会心の一撃!
ジズが躊躇いなく振り下ろした魔導書が、たぬきのもふヘッドを打ち据えた。
新鮮なたぬきの悲鳴を聞きながら、ジズは続けて攻撃を繰り出す。
「『轟け』」
閃く雷光。ダンジョン・森を揺るがす三ケタ超過の落雷が、たぬきとその周囲へ激しく、間断なく降り注いだ。
次々と能力を繰り出し、たぬゾンビを追い詰めていくジズたぬき。
『あぁー……これはいけません』
たぬきは、自らも能力を発動し、雷祭りからの卒業をはかった。
どでん、と箱罠を召喚する。さつまいも完備。
この中にジズを閉じ込めるつもりか。普通ならそう思うところだが、たぬ現実はそんなに甘くなかった。
がしゃーん。
『!!』
たぬき、in。
『たぬきはもうおしまいです……』
「おや、自ら箱罠に入ってしまわれましたか」
その一連はもはや、たぬきの持ち芸。
「このドジくさい感じがなんとも狸さんですね。では、箱罠ごと滅してしまいましょうか」
『そんなひどい!』
がーん。
精神的ダメージを喰らったたぬきは、こてん、と箱罠の中で横転した。
『たぬきのこころはおれました……ぱたり』
「死んだふりしても無駄です」
ジズに慈悲はなかった。
「消えゆかないところを見れば化かしである事は一目瞭然で御座いますれば……では再び。『轟け』」
電光閃き、雨あられ。
容赦なく放たれた神鳴りが、箱華ごと、たぬきを雷撃で包み込んだ。ゲーミング箱罠の様相。
「ええと……死んだふりって熊に出会った時にするのではなかったでしょうか。あの、たぬきさん? するべきは、寝たふり……では?」
『ポキョ?』
「ほら、狸寝入りって言いますよね……?」
『ああ!』
ぽん、と納得の腹鼓。
そういえば、と気づきを得た顔をするたぬき。
それはそれとして、なおも神鳴りぴかぴかさせつつ……ジズは、切に願う。
「次はゾンビではない状態で出会いたいものです。もふもふフルパワーで」
『ああー……たぬきはやっぱりおしまいです……またどこかでおあいしましょう』
ポキョー……ポキョー……。
悲し気な鳴き声を響かせ、消えゆくたぬきを見送るジズなのであった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『ふわもこまじぇすた』
POW
めろめろぱわーあたっく!
【ふわもふのかわいい小動物たち】を放ち、半径レベルm内の自分含む全員の【かわいい】に対する抵抗力を10分の1にする。
【ふわもふのかわいい小動物たち】を放ち、半径レベルm内の自分含む全員の【かわいい】に対する抵抗力を10分の1にする。
SPD
ふわもふちーむ、しゅつどう!
先陣を切る(シナリオで、まだ誰のリプレイも出ていない章に参加する)場合、【ふわもふのかわいい小動物たち】と共に登場し、全ての能力値と技能レベルが3倍になる。
先陣を切る(シナリオで、まだ誰のリプレイも出ていない章に参加する)場合、【ふわもふのかわいい小動物たち】と共に登場し、全ての能力値と技能レベルが3倍になる。
WIZ
かわいいあぴーるだいさくせん!
半径レベルm内にレベル体の【ふわもふのかわいい小動物たち】を放ち、【ふわもふ好きをめざとく見つけるセンサー】による索敵か、【抗いづらいかわいさ】による弱い攻撃を行う。
半径レベルm内にレベル体の【ふわもふのかわいい小動物たち】を放ち、【ふわもふ好きをめざとく見つけるセンサー】による索敵か、【抗いづらいかわいさ】による弱い攻撃を行う。
かわいいたぬきのゾンビを、なんとか切り抜けて。
EDEN達は、ついにダンジョンの最深部へと到達した。
生い茂る木々の向こう、一軒の小屋がある。
世捨て人のアトリエを思わせる、その建物の内部に足を踏み入れる。
しかし、実際に備えられていたのは、実験施設の数々だった。正体不明な薬品や書物が、整然と棚に並べられている。
埃やカビの匂いはしない。ここが廃棄されたのではなく、現在も役割を果たしている証拠であった。
そして部屋の奥、特別に怪しい色のフラスコとともに、怪しい影があった。
『……おや? どなた?』
振り返った影の正体は、影、だった。
一見、ファンシーともいえるデザインの謎生物。
『あなたがた、ラフェンドラさまがいっていたEDEN、ですね? まさか、あのかわいいぞんびたちをやっつけたのですか? ひとでなしですね』
あの祠壊したんか、という調子で、真横に首をかしげる影……『ふわもこまじぇすた』。
どうやら、ゾンビの一件の首謀者、屍王『ラフェンドラ・オピオイド』に雇われた、√EDENの簒奪者らしい。
『いまわたしはいそがしいのですよね。この「ゾンビフラスコ」、まもらないといけません。ついでに√EDENにもちかえれないかなー、なんて。でもあなたたち……』
もちろん、じゃましますよね?
ふわもこまじぇすたの足元の影が、ぬるりと何かを吐き出した。
それは、小動物。ふわふわもふもふした動物の群れだった。
『ふわふわもふもふ、おすきですよね? このこたちとあそんでいてください』
その間に始末しますので。
言外の脅しを察したEDEN達は、ふわもこまじぇすたに立ち向かう。
この傭兵簒奪者を倒すだけではない。
かわいいアニマルやたぬきをゾンビ化した元凶、ゾンビウイルスを生成する『ゾンビフラスコ』を破壊するのだ。
このダンジョンに、新たなゾンビモンスターを発生させないために。
アドリブ連携嬉しいです◎
お邪魔しまー…す?
おや、同業者だね
なかなかいい設備じゃないか
人でなし、はは!
あまり人のことは言えない身だけど
君に言われたくはないなぁ
それに僕はどちらかというと
可愛いものは食べてしまいたい方かな
ふわもふの群れは加護の腕で
できるだけまとめて潰してしまおうね
よしよし、可愛い子たち
君たちも撫でさせてよ
必要に応じて棘枝でも応戦を
隙を見て棘蔦を生やしフラスコを狙う
これが元凶か、君が作ったのかな?
有用な発明だとは思うけどね…
ちょっと君の手には余るんじゃないかな
神に返そうね
きっちりと破壊する
君自身も…逃すわけにはいかないか
棘蔓の顎でぱくっといってしまおう
それじゃあ、いただきます
「お邪魔しまー……す?」
そっと扉を開けて。
奥の部屋をご訪問した白百合・蓮華(徒花の|実《じつ》・h12988)は、中にいるのがゾンビではないことを察した。
そして、この部屋が、非道な実験施設であることも。
「おや、同業者だね。なかなかいい設備じゃないか」
『へえ。どうぶつやたぬきをしまつしてきた、ひとでなしにもわかりますか?』
ふわもこまじぇすたの皮肉にも、蓮華の余裕は崩れない。
「人でなし、はは! あまり人のことは言えない身だけど、君に言われたくはないなぁ。それに」
眼鏡の奥、蓮華の瞳が、喜悦を帯びる。
「僕はどちらかというと可愛いものは食べてしまいたい方かな」
自分の同類であることを察したか。
ふわもこまじぇすたは、どこか喜びの気配をまとうと、蓮華の処理に着手した。
『ゆきなさい、いとしきものたちよ』
まじぇすたの力在る言葉が、ふわもふの群れを現実化させた。闇を凝縮したようなまじぇすたとは正反対の、ふんわり雲の色をした小動物達。
『ふわ』
『もふ』
室内に蔓延する愛らしさ。それは、蓮華の精神にまで干渉し、愛でる事を強制する。
確かに可愛い。されど……いや、だからこそ。『愛情表現』は、しっかりと。
蓮華の微笑に招かれ、虚空より白き腕が顕れる。
一対のそれは、ふわもふ達へ、高い包容力を発揮した。抱きしめるその力は、愛の強度を表すように激しく。
ふわもふ達は、その愛の重さに耐えきれず、まとめて潰された。
「よしよし、可愛い子たち。さぁおいで。君たちも撫でさせてよ」
くるり。振り返る蓮華。控えていたふわもふ達が、露骨にたじろいだ。
ひとでなし……!と抗議のまなざしのふわもふ達を、丁寧に潰滅させながら、蓮華は、戯れのように、まじぇすた本体に蔦枝を差し向けた。
暗がりからの奇襲に、まじぇすたの意識が向いた瞬間。
その死角に出現した棘蔦が、ゾンビフラスコの群れに向かう。
「これが元凶か、君が作ったのかな?」
『! それは』
初めて、まじぇすたの口調に焦りが混じった。
その反応に機嫌を良くしながら、蓮華は続ける。
「有用な発明だとは思うけどね……ちょっと君の手には余るんじゃないかな。じゃあ神に返しちゃおうね」
耳に心地よい、ガラスの破砕音。
『ああ、フラスコが……なんてことを! やはりひとでなし!』
怒りの気配と共に、蓮華に襲い掛かるまじぇすた。だが。
「あとは君自身も……逃すわけにはいかないか。それじゃあ、いただきます」
ぱくり。
棘蔓の顎が、まじぇすたの体にかぶりついたのだった。
🔵🔵🔵 大成功
春尾・志選ひとでなしと言われれば……まぁちょっと心は痛みます。
でもあなたやそのラフェンドラ様って人があの子達を使ってゾンビを増やそうとしなければ、私達だってやっつけなくて済んだかも知れません。
と言うか、ゾンビな時点で可愛くないですから!
……それにしてもまたかわいい動物を出してくるなんて!
こうなったらそろそろ触ってあげます。
でもこの右手でです、これならきっと放たれた動物が消えたりする……はず。
小動物さえいなくなれば、後はゾンビを増やすへんてこなマスコットが残るだけ。
左手でだって、木刀は振れるって所を見せてあげます!
『ああ、ゾンビフラスコがこわされてしまいました……ですが、まだあります。なんとかなります。ばいようするので。……おや?』
突然のEDENの襲撃に対応していた、ふわもこまじぇすたは、体を大きく傾げた。
ちょっぴり傷心したようすの春尾・志選(鵺の巫女・h07952)を見て。
『げんきがないですね。どうしました?』
「あなたに、ひとでなしなんて言われたので……」
他人事のように訊ねるまじぇすたに、志選は、心ばかりの抗議の眼差しで答えた。
「でもあなたやそのラフェンドラ様って人が、あの子達を使ってゾンビを増やそうとしなければ、私達だってやっつけなくて済んだかも知れません」
『ぞんび、おきらいですか?』
「好きとか嫌いとか以前に! そもそも、ゾンビな時点で可愛くないですから!」
志選の力説カウンターを喰らい、今度は、まじぇすたがしょんぼりする番だった。
だが、一瞬で立ち直ると、妖しい黒霧を散布した。
『これならごまんぞくいただけるはずです』
うさぎ、はむすたー、こだぬき、うりぼう。
まじぇすたが召喚したのは、小動物の群れだった。
「……またかわいい動物を出してくるなんて!」
なんという悪辣な。この傭兵簒奪者ときたら、かわいいものが大好きらしい。そのくせゾンビにすることもいとわないのであるが。
ふわ……もふ……。
志選に押し寄せる、かわいいの群。志選は、きりり、と立ち向かう覚悟を示した。
「こうなったら」
すっ……と、構えを取る志選。
「そろそろ触ってあげます」
『まんまとかかりましたね。そう、ふわもこにはだれもあらがえないのです』
にたぁ……邪悪な笑みを浮かべるまじぇすたが見つめる前で、志選は、はむすたーに手を伸ばした。
しゅんっ。
『!?』
まじぇすたの驚愕。志選が触れるや否や、はむすたーが消失したのだ。
『そのみぎて……まさか、√能力むこうかでは!?』
まじぇすたがカラクリを看破したそばから、志選は、神秘なる右手で、動物達をなでて回る。
優しく触れられた小動物達は、柔らかい感触を残しながら、次々と消えていく。
期間限定ふわもこパラダイスは、あっという間に閉園。残ったのは、ゾンビを無闇に増やす、へんてこマスコットだけとなった。
『ああ、なんという……なんという!』
作戦をあっさりと打ち破られたまじぇすたは、語彙力を失った。
怒りに震えるまじぇすた目掛け、志選は、左手で握った木刀を振り下ろしたのだった。
🔵🔵🔵 大成功
小明見・結※アドリブ・連携歓迎
いまいち相手が何者なのかもわからないけど…、まずは話をしましょうか。
ゾンビフラスコに拘るのなら戦わざるを得ないのかもしれないけれど、そうじゃないなら別の道があるかもしれない。
まずは話して、互いの目的を知って、その後にどうするかを考えましょう。
一応、動物さんたちの攻撃から守ってもらうように精霊さんたちに備えてもらって、それから対話を試みましょうか。
動物さんたちをゾンビにして、何が狙いなのかしら。
ゾンビになってしまえば、可愛がることもできないし、動物さんたちとしてもあまり、幸せになるとは思いにくいのだけれど。それでもゾンビにする必要があったのかしら。
EDEN達との交戦を続ける、ふわもこまじぇすた。
今また、小明見・結(もう一度その手を掴むまで・h00177)との戦いの真っ最中であった。
『けんきゅうのじゃまはさせませんよ。かもん、ふわもふちーむのみなさん』
まじぇすたが、高らかに両腕を掲げる。
敵の襲来に備え、結は、風の精霊を呼んだ。EDEN達の戦いの成果が結実した6体が、結を守るように布陣する。
『……おや?』
まじぇすたが首を傾げた。誰一人、ちーむの動物が駆け付けてこなかったからだ。
どうやら……タイミングを間違えたらしい。
『……ええと』
たらり。
冷や汗を伝わせるまじぇすたに、結が詰め寄った。
「動物さんたちをゾンビにして、何が狙いなのかしら」
まじぇすたの思惑……何を望み、ラフェンドラなるものに従っているのか。
ゾンビフラスコに拘るのならば、刃を交えるのもやむを得ないが、会話次第では、戦いを避ける道もありえるかもしれない、と結は考えていた。
まじぇすたは、むむ、と精いっぱいの難しい顔をしていたが、すっ、と緊張を解いた。
『たたかいはわたしもこのむところではありません。ゾンビウイルスがうしなわれかねないので』
結達EDENは、まじぇすたにとってみれば、望まぬ訪問者。こちらが刃を向けないのなら、それに応じるだけの心の余裕はあるらしい。
「ゾンビになってしまえば、可愛がることもできないし、動物さんたちとしてもあまり、幸せになるとは思いにくいのだけれど。それでもゾンビにする必要があったのかしら」
『べつにどうぶつであるひつようはありませんでしたよ。けれど、このだんじょんにいたもんすたーがたまたまどうぶつだっただけ』
ひらひら、と掌を振りながら、語るまじぇすた。
『わたしがもとめるのは不死です。いのちをこえるちからです。なので、ラフェンドラさまからたくされたゾンビウイルスのこうかを、あにまるやたぬきで、たしかめたかったのですが』
まじぇすたの肩が落ちる。
『だめだったようですね。たやすくたおされてしまったので。でももうすこしがんばればいけそうなきもするので√EDENにもちかえります』
「全ては自分達のため、というわけね」
簒奪者が、これ以上の力を得る。
それがろくでもないことに結びつくのは、結も当然理解できた。
『でーたしゅうしゅうのため、あなたもぞんびになってもらいます』
「他者を犠牲にして力を求めるというのであれば……やはり戦うしかないようね」
ゾンビにだってなりたくはない。
自らの為すべき事を見定めた結は、風の精霊達とともに、改めてまじぇすたの討伐に取り掛かったのだった。
🔵🔵🔵 大成功
トゥルエノ・トニトルス時雨殿(h00536)と
確かに我々は獣妖と人妖でヒトではないが…
そういう意味だけではないのだろうか?
まぁ良い、これから始めるのは
ふわもこではないゾンビにされてしまった
小動物たちの恨み的な何か…!
ふわもこでは無いデザインの謎生物…!
黒い影なのにふわもこを名乗るな…!
時雨殿のフラストレーションに合わせて
わたしも攻撃に参加するとしようか〜
詠唱魔導槍の竜漿兵器に紫電纏わせて
帯電武装に変形させたならば
素早さを活かして、あまり可愛げのない
首謀者を狙い撃ちにするとしよう名案だな…!
反撃があれば見切りや空中浮遊も駆使して躱しつつ
ついでにゾンビフラスコも見つけて割っておこう〜
こうして悪は防がれる!
野分・時雨エノくん(h06535)と!
ひ、ひとでなしですって…!
でもそうかも。獣妖さんと人妖さんだもんね~。
ふわもこ小動物さんを使うほうがひとでなしでは?
この人非人!卑怯者!
ふわもこさんたちは掴み取り、投げて避けます。
あっちいけ!可愛いので戦い辛い!もう!
いっそお手玉みたいにして投げれば撹乱できる...?
比較的可愛...くない...まじぇすたさんには曲刀にて。 怒りの攻撃を叩き混みますよう。
もふもふできないのに!仕掛けて!来るな!
エノくんと連携しつもふもふへの怒りをぶつけましょう。
あ、フラスコどこ? ある?
見つけるの不得手なので。
エノくんに任せま~す!
「ひ、ひとでなしですって……!」
走る電光。
ふわもこまじぇすたの言霊アタックを喰らった野分・時雨(初嵐・h00536)は、その場に立ち尽くした。
精神攻撃は、予想以上の威力があったか。満足げなまじぇすた……だったが。
「でもそうかも。ぼくらゆかいな獣妖さんと人妖さんだもんね~」
時雨とトゥルエノ・トニトルス(coup de foudre・h06535)は、顔を見合わせうなずいた。
「確かに我々はヒトではないが……そういう意味だけではないのだろうか?」
『んん~』
小首をかしげるトゥルエノに、まじぇすたは、なんとも言えない表情になった。マイペースな2人。
「まぁ良い、これから始めるのは、ふわもこではないゾンビにされてしまった小動物たちの恨み的な何か……!」
静かに、トゥルエノのまとう気配が、妖気を帯びてゆく。
これはよくない。まじぇすたも、呼応するように、戦闘モードに移行する。
『こちらとしても、これいじょうゾンビフラスコをこわされたくはないので。おいで、いとしいこよ』
時雨達を駆逐すべく、まじぇすたが両手を掲げた。
闇の霧が、辺りに立ち込める。身構える時雨。
敵がゾンビウイルスなどという恐ろしい研究をしていることを考えれば、これも一種の化学兵器的攻撃である事は、容易に想像がつく……!
「……あれ?」
霧から現れたのは、ハムスターや仔たぬきを始めとした、小さく、もふもふもこもこな動物ばかりであった。
『さあわたしのかわいいこたち、いのちをすててたたかうのです』
「もしかして、ふわもこ小動物さんを使うほうがひとでなしでは?」
時雨のカウンターが、まじぇすたに炸裂した。
「この人非人! 卑怯者!」
ここぞとばかりに反撃に出る時雨。言葉のサンドバッグとなるまじぇすた。
しかし、ゾンビウイルスの使い手であるまじぇすたのメンタルの強さは、筋金入りだった。
『おほめのことばとうけとっておきましょう』
「ダメだ! 効いてない!」
不毛な言い争いをしている間にも、ふわもこ達は、時雨に押し寄せていた。
きゅーきゅー、ぽきょー、こけー。
こちらをロックオン、次々飛び掛かってくるふわもこたちを掴んでは投げ、掴んでは投げ。
「あっちいけ! あっちいけ! 可愛いので戦い辛い! もう!」
一体一体はたいして強くないというか、一般の小動物とほぼ変わりないので時雨が怪我を負うことはなかったが、この攻撃の真の恐ろしさは、攻撃力より可愛さ力にある。
かわいさの襲来に悩まされた挙句、時雨は、ついに打開策を編みだした。
「ふわもこお手玉!」
可愛げのある鳴き声とともに、時雨に弄ばれる小動物達。
よきタイミングで迫りくる小動物目掛けて投擲し、敵の陣形(?)を乱した。
そろそろ小動物の元凶を叩く!
時雨は、曲刀を抜くと、怒りに任せてまじぇすたとの距離を一瞬で詰めた。
斬撃を叩き込む。一閃に合わせ、漂う七蜜馨の香り。
相手は比較的可愛くなかったので、太刀筋に一分の乱れすらなかった。
「もふもふできないのに! 仕掛けて! 来るな!」
「ふわもこでは無いデザインの謎生物……! ただの黒い影如きがふわもこを名乗るな……!」
フラストレーションの共鳴。時雨が仕掛けるのに合わせて、トゥルエノも攻撃に加わる。
詠唱魔導槍に紫電纏わせれば、帯電武装へと変形を遂げる。
相手がその完成を見届けるより先に、トゥルエノは攻撃に移っていた。倍化した素早さを発揮し、あまり可愛げのない首謀者を狙い撃ちにする。これぞ、
「名案だな……!」
それは自画自賛にとどまらず。
疾風迅雷、神速で繰り出されたトゥルエノの連続槍撃が、影の如きまじぇすたの体に、穴をいくつも穿っていく。
『やってくれましたね……なぜわたしがふわもこをなのっているのか、そのりゆうをおとどけしましょう』
トゥルエノから何とか距離をとったまじぇすたの周囲に、再び闇の霧が生み出された。
中から現れたのは、小動物達。
「これはゾンビではないのだな」
『ぞんびではありませんがかわいいですよ』
「その言い方だとゾンビも当然可愛いものになってしまうがいいのだろうか」
トゥルエノの疑問に対する返答は、まじぇすたに代わって、小動物達が行った。
ちっちゃいものアタック!
外見の愛らしさを全開にした突撃が、トゥルエノのハートにダイレクトアタックを行う。
時雨への対応よりは攻撃力に劣るものの、かわいいもの耐性を強引に低下させる、恐ろしい策である。
常人ならば、その可愛さに攻撃の手は止まり、命の尊さに罪悪感を覚えるであろう。
「ひらり」
しかし、突撃はかわされた。
可愛いからといって攻撃を受ける義理はないし、ひとの心があっても空中浮遊で避けるくらいのことは出来たからだ。
きょろきょろ。
まじぇすたを成敗しながら、いっそう乱雑になった室内を見まわす時雨。
「あ、フラスコどこ? ある? エノくん」
「あそこだ、見つけた」
身軽に宙を舞うついでに、トゥルエノがゾンビフラスコを索敵、発見。破壊する。容赦なく。
連続する破砕音が奏でるのは、悪しきふわもこへの葬送曲か。
「こうして悪は防がれる!」
『ひどい』
まじぇすたが涙目になった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
ジズ・スコープ貴方ですね?
このダンジョンに居た可愛らしいもっふもふさん達を
ゾンビなどという毛並みの悪い動く屍に貶めた大馬鹿者は。
ゾンビなど流行らせてどうするのですか。
毛並み悪く腐敗臭がするなど最悪ではありませんか。
可愛さの損なわれた元もふもふもこもこ達が可哀そうでなりません。
御自身がふわやか毛並みではないからといって、可愛らしいもふもふさん達をゾンビ化させるなど、言語道断です。
忌まわしきウイルスは滅してしまいましょう。
そのフラスコはひとつ残らず叩き割って差し上げます。
ふわもこを害す愚かもの許すまじ。
おやおや?
ふわふわとした可愛らしい仔も出せたのですね。
そうですかそうですか……ゾンビになっていない可愛らしさ、良いですね。
求めるふわもこぱらだいすはこれです。
断じてゾンビ化した似非もふもふ達では御座いません。
現れたふわもふ小動物達ににっこにこ!
動物と話す技能で話しかける。
ええ、ええ、可愛らしいですね。
ふわもふ、大好きですよ。
…しかしながら、そこなフラスコのウイルスは貴方達かわいらしいふわもこさん達の敵ですよ。
毛並みが悪くなり皮膚が腐り毛根も死滅し下手すれば毛並みは抜け落ちてしまうような代物です。
ゾンビとはただ動く屍。
あのウイルスにかかれば、死を迎えるという事です。
さぁ、戦うべき相手は私では御座いません。
あのフラスコを滅するのです。
貴方達の自慢の毛並みの為に。
そのふわもふな可愛さの為に。
共に戦いましょう。我々はもふもふという仲間ではありませんか。
おびき寄せて言いくるめ、誘惑、魅了し、フラスコを割るよう誘導する。
動物好きは動物使いも嗜んでいるものです。
嗚呼、巻き込まれぬよう気を付けてくださいね。
などと可愛いふわもこ達に声をかけつつ、
狙うはふわもこまじぇすたとフラスコ。
小動物達からの攻撃は躱すのを第一に、進んで狙いはせず。
しかしながら手加減をする事はなく
範囲攻撃で全てのフラスコを砕きましょう。
攻撃見切り躱すか、鉄壁オーラ防御
「貴方ですね?」
『……え?』
自身の損傷と、ゾンビフラスコの相次ぐ被害。
心身共に傷ついたふわもこまじぇすたに、ジズ・スコープ(野良|古代語魔術師《ブラックウィザード》・h01556)が詰め寄った。
「貴方ですね? このダンジョンに居た可愛らしいもっふもふさん達を、ゾンビなどという毛並みの悪い動く屍に貶めた大馬鹿者は」
『だとしたらなんだというのです』
開き直るまじぇすたを、一層詰めていくジズ。
「ゾンビなど流行らせてどうするのですか。毛並み悪く腐敗臭がするなど最悪ではありませんか。可愛さの損なわれた元もふもふもこもこ達が可哀そうでなりません」
淡々と畳みかける言葉の責め苦が、まじぇすたの心を追い詰める。
「御自身がふわやか毛並みではないからといって、可愛らしいもふもふさん達をゾンビ化させるなど、言語道断です」
『んー……』
自分の体を見下ろすまじぇすた。すらっとした、影のようなそれを。
『たしかに。すれんだー』
ジズは、まじぇすたが大事そうに守る、ゾンビフラスコ達を睨んだ。
あるからいけない。あるのがいけない。
「ふわもこを害す愚かもの許すまじ。そのフラスコはひとつ残らず叩き割って差し上げます」
『そうはいきません。これはわたしのものですし、そもそもラフェンドラさまからのあずかりもの。このままではしかられてしまいます』
このままでは傭兵のメンツにかかわる。
危地に陥ったまじぇすたは、残る力を振り絞った。
「おやおや?」
ふわ、もふ。
ジズの周囲に広がる黒い霧。その中から現れたのは、小動物の群れだった。
能力の産物ながら、ゾンビとはうってかわって、純度の高いふわさ加減が降臨した。
「なんとまあ、ふわふわとした可愛らしい仔も出せたのですね」
『これがわたしのほんらいののうりょくですので』
「そうですかそうですか……ゾンビになっていない可愛らしさ、良いですね」
こちらを脅かす√能力の発現。しかし、ジズは一転、上機嫌。
ふわもふセンサー完備な小動物達にロックオンされながらも、むしろ歓迎ムード。
「求めるふわもこぱらだいすはこれです。断じてゾンビ化した似非もふもふ達では御座いません。断じて」
これにはジズもにっこにこ。こういうのでいいんだよ。
まじぇすたなんてそっちのけ。ちいさくてなんかかわいらしい動物達に語り掛けるジズ。あってよかった、動物と話す技能。
リーダーらしきハムスターが、鳴き声と身振り手振りで、必死に何かを訴える。
「ええ、ええ、可愛らしいですね。ふわもふ、大好きですよ」
小動物達と意志疎通しながら、ジズは楽しい会話の時間。
『あ、あの……』
ここ、わたしのへやですよ? そんな視線が飛んでくるが、ジズは気にせずコミュニケーションタイム続行。
「はい、わかってますとも。そこの輩がご主人様なのですよね。しかしながら、そこなフラスコのウイルスは貴方達かわいらしいふわもこさん達の敵ですよ」
なんだって!?
小さきもの達の間に戦慄が走る。嘘でしょ?
「本当です。毛並みが悪くなり皮膚が腐り毛根も死滅し下手すれば毛並みは抜け落ちてしまうような代物です」
ええっ……ジズの示した末路に、絶望に彩られる小さき者達。
「ゾンビとはただ動く屍。あのウイルスにかかれば、死を迎えるという事です」
死。
我らはもうおしまいです……身を寄せ合い、ぷるぷると震え出す小さき者達。
彼らを鼓舞するように、ジズはまじぇすたを指し示した。
「さぁ、戦うべき相手は私では御座いません。あのフラスコを滅するのです。貴方達の自慢の毛並みの為に。そのふわもふな可愛さの為に!」
敵は本能寺にあり理論を説いたジズの元に、小さき者達が集う。
もふー!
小さき者達は、まんまとジズに篭絡された。もふもふ同盟結成!
『ばかな。それはわたしののうりょくのたまものですよ?』
「だとしても動物である事に変わりはありません。そして動物好きは動物使いも嗜んでいるものです」
突如巻き起こる反乱。
まじぇすたは、飼い犬に手を噛まれる、という言葉の意味を、身を以て知る羽目になった。
抗いがたい可愛さを武器に、反攻する小さき者達。
寄ってたかられ、まじぇすたの動きが止められているうちに、ジズは次なる能力を発動させる。
「嗚呼、巻き込まれぬよう気を付けてくださいね」
ふわもこ達が四散するのを確かめつつ、ジズが狙うは、もちろんふわもこまじぇすたとフラスコ。
雷を降らせ、悪の元凶ゾンビフラスコを次々割り砕いていく。
『ああ! なんてひどい! うらぎりもののふわもふに、ようはありません』
怒りに震えるまじぇすたが、新たな小動物ズを呼び出す。
ここまでで教訓を得たまじぇすたは、先ほどより狂暴な奴らを選んだらしい。アライグマなどなど。
ジズに飛び掛かる、新たな小さき者達。少々狂暴だが、もちろん、彼らのことも傷つけたくなどない。
小さくとも、ちくり、と痛い爪の一撃は、しかし、虚空を薙いだ。ジズは、自身と、室内に存在するインビジブルの位置を入れ替えたのだ。
かわりにインビジブルがかわいい一撃を喰らうことになったが、もふもふでないのでジズの良心は針先ほど痛むだけで済んだ。
千変万化のもふもふに姿を転じて見せながら、まじぇすたを追い込むジズ。
「このように動物を悪用するとは許せません。自在に動物を呼び出せる能力はとても有用であることは認めますが」
ふわもふでなければ手加減不要。
ジズは、ここぞと武術の腕前を披露し、次々とフラスコを砕いていく。魔術師が体術不得手と誰が決めたか。
ウイルスのことごとくを破壊したジズは、元凶であるまじぇすたへと矛先を向ける。
『ひ、わたしはわるくないので』
その程度の命乞いなど通じるものか。
会心の一撃!
ジズの渾身をまともに喰らったまじぇすたが、部屋の奥まで吹き飛んで、残るフラスコを自ら破壊した。
『ああー……わたしのからだが……ゾンビウイルスが……これではラフェンドラさまにしかられてしま』
最後まで言い切ることなく。
ぱあん。
まじぇすたは、その不可思議ボディを膨張させたかと思うと、内側から風船の如くはじけて消えたのだった。
かくして、ゾンビウイルスの出どころの1つは根絶された。
しかし、ゾンビの恐怖は、また何処かのダンジョンを恐怖に陥れているかもしれない。
それでも、平穏が取り戻されたことを祝福するように。
ポキョー……と、たぬきの鳴き声がダンジョンに響いたのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功