星が導く冒険譚
√ドラゴンファンタジーの欧州地域。
ここに、とある獣人貴族が住んでいた。
獣人貴族──カオマニーの血を持つ“ダオ”の家名を持つ一族は、ゴールドとアイスブルーのオッドアイを持ち、猫らしいマズルと尻尾を持ち、手足関節は人間に近い。
この地域には、星神の加護による占星術によって栄え、花々に愛されたという逸話が残されているとか。時代が進み、現在はその名残も薄くなってしまっているものの、星と花を愛することを忘れないよう星を意味する“ダオ”を家名に、ミドルネームには自らの誕生日花の名前を掲げているのだ。現在の家業は貿易商としており、その中でも織物製品を主としているという。
ダオ家の末娘であるシャルファ・ペンタス・ダオは、自分の将来を考えて欲しいという親からの言葉を受け、貴族の子として見聞を広げたいと考え冒険に出るという決意をした。
そして、春を迎えたある日のこと。
家族や使用人達に見守られる中、シャルファは大荷物を背負ってから、両親や兄姉に笑顔を見せた。
「それじゃあ、いってきます! お父様、お母様!」
「しっかりと見聞を広げ、自分のしたい事を見つけるのだぞ」
「シャルファ、身体には気をつけるのよ?」
「大丈夫よ、お母様。心配しないで。私のしたい事、見つけられるように頑張るから」
母親は少し涙ぐみ、シャルファを優しく抱き締める。涙こそ見せないが、父親もどこか寂しそうな表情を見せていた。
「家の事は俺達に任せてくれ。でも、時々連絡はしてくれよ?」
「一人で冒険なんて、僕は心配だな……。寂しくなったら、いつでも帰ってきて良いんだよ」
「シャロ……お姉ちゃん寂しいわ。お手紙とか電話とか、たくさんしてね?」
「そうだよ、シャロ。危ない事はしちゃダメだからねっ」
「お、お兄様っ! お姉様も、泣かないで……! さみしくなったら、たくさん電話するからね!」
兄姉達も寂しさがいっぱいで、双子の姉は二人して泣きながら抱き締めてくれれば、シャルファからも双子の姉、兄二人と順番に抱き締め返した。
最後に両親にも抱き締め返してから、改めて決意を胸にシャルファは冒険に出るため、家族の見送りを背に歩き出す。
この一歩が、大きな様々な経験に繋がることになるとは──この時のシャルファはまだ知らなかった。
☆
「ごきげんよう! すみません、今日か明日までにベルギーのシャルルロワという所に行ってみたいのですが、馬車の手配などはどこにお願いすればいいのでしょうか…?」
「おや? それなら丁度向かうところだから、良ければ送っていくよ」
「わぁ、ありがとうございます!」
慣れない土地、見慣れぬ街。
様々な場所へ赴き、シャルファは訪れた場所で歴史に触れたり文化に触れたりと見聞を広げていた。国が変われば、生活の在り方も、信仰するものも変わっていく。
見聞を広げるだけでなく、旅の中で様々な人との出会いもある。良い人だけでなく、中には怪しい人もいた。信じるべきは何か学ぶのもまた大事だということを、シャルファは体験しながら学び続けた。
「やっぱり、色んな人もいるのね……。でも、これも見聞を広めるため。頑張らなきゃっ!」
時には、モンスターに襲われそうになったりと危険もたくさん。その中でも冒険者が助けてくれた事で、大きな危険から逃れる事も出来、様々な経験を積んでいった。
──そんなある日。
今まで見えなかった未来ーー|星からの予知《ゾディアック・サイン》ーーが見えるようになっていた。誰かが悲しんでしまう、犠牲になってしまう。そんな未来を変えたくて、その力を活かし|仲間《EDEN》を集うことで様々な事件を解決。
星詠みとしての経験もまた、シャルファにとって大きな自信へと繋がるもの。誰にでも出来ない事だからこそ、この力で役に立てたらとも思うようにもなっていた。
☆
「私、シャルファといいます。すこしの間になりますが、よろしくお願いいたします」
「あらあら、そんなに畏まらないで。ここにいる間は、自分の家だと思って過ごして頂戴な」
縁が縁を繋ぐ。旅の途中で困っているところを助けたことから、宿代わりにと部屋を提供してくれたお婆さんにお礼を伝え、シャルファは短期間その家でお世話になる事に。
家事の手伝いをしたり、一緒に話をしたり。シャルファが過ごしている期間、お婆さんは本当の孫娘のように可愛がってくれていた。
ある日、久しぶりに家族へ連絡を取ろうと電話をかけた。
プルルル、プルルル。ガチャっという音が聞こえたと同時に、最初に聞こえた声は母親だった。
「もしもし?」
「もしもし、お母様?」
「まぁ、シャロ。元気な声が聞けて嬉しいわ」
「え、シャロから電話?」
「お母様、私も話したいわ!」
久し振りに聞いた家族の声は、一人旅を続ける中で抱えた不安も恐怖も癒していく。
どこで、どんなことをしてきたのか。話題はずっと尽きなくて、兄姉も話したいという声も聞こえれば順番に話をしていった。
「わ、もうこんな時間……! また連絡するね!」
「また連絡待っているぞ」
話は盛り上がり、気付けば月も空高く登っていて。
シャルファは名残惜しく思いながらも、また連絡すると約束して電話を切った。賑やかに話した後の静けさは、やはり寂しさが増してしまう。窓越しにまんまるの月を眺めながら、雪色と星色の瞳からぽたりと涙が零れるけれど、そっと涙を拭いシャルファは自分の胸に手を当てた。
(まだまだ未熟かもしれないけど……私もダオの血を引いてる一人として、精一杯自分らしい生き方を見つけるから)
まだまだ冒険は始まったばかり。
この先、まだ見ぬ出会いもあるはず。落ち込む事も、悲しい事もあるかもしれない。どんな事が起きたとしても、シャルファとしてどう生きるかを知るため、更なる見聞を広めるため、その歩みは止まらない。
☆。.:*・゜
──希望が叶う。
流れ星に願いをかけると叶うという言い伝えのある花の名を持つ白猫は、星が導くままに進み続ける。
希望に輝く星は、きらきらと瞬き続ける。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴 成功