シナリオ

流水

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 貧血だろうか、身体を起こそうとしても、不快なまでに冷たい。
 ぐちゃぐちゃと、ぬたぬたと、汚らしい蚯蚓が日常と非日常の狭間で蠕動している。最早、己自身も含めて、誰にも解せない数頁は如何様な地獄を――或いは楽園を――孕んでいるのか。結局のところ我々は本能には抗えないと、我々は、大罪には抗えないと、河向こうの父や母に囁かれているような気がしてならない。いいや、成りたくないし、慣れたくないのだ。この、高慢さを彷彿とさせる咽喉の渇きこそを殺さなければいけない。この、傲慢さを想像させる歯の疼きを溶かさなければいけない。その為に、何度も何度も、ペン先を撫でた。ペン先を撫でると共に指に付着する、粘着する、黒色、黒色、黒色……。いつの間にか、黒が赤に変わっていた。自分の指先に穴でも出来たのか。いいや、これは自身の脳髄が映している――現実、夜闇のような――幻想である。ああ、これは幻想なのだ。幻覚なのだから、わざわざ、私が『つきあってやる』必要性など欠片としてない。ぶん、と、頭から『うそ』を振り払おうと試みた。だが、この充血は……無様は如何だ。情け容赦なくやってくる己の脆弱性、濁り、なまくらと化したひとつの脳髄。……腹が減ったし、それに加えて、度し難いほどの色が蚯蚓の代わりに蠢いている。……これは、ダメだ。がばりと、自分を抑制するが如くに立ち上がり、がつがつと歩を進める。其処にあったのは鏡面だろうか。蛇口をひねり、だばだばと、がばがばと、やかましい水の流れ――私なのか? これが、私なのか? 嫌になるほどに呵っ開いた瞳孔。咽喉を鳴らして、懐から取り出したのは錠剤だ。倍々ゲームを自分から奨めるとは、我ながらに狂っている。服用した。あとは堕ちていくだけか。ああ、悪い夢に誘われたヒトサマの真似事、何処にヒトサマの要素が残っているのだ。
 脳髄が鈍っているのだ。なまくらにされて異るのだから、このような状況に陥っても問題などない。不意に持ち上がった意識の中、オマエはひとつの『影』を認める。青々とした瞳を、ぐるり、ぐるりと、吐きそうになるほどに回してしまったら、さて、ようやく己の状態に気が付いた。何も身に付けていない。いや、正確には『竜漿石』の他、何も纏っていない。ぶらんと、虚しそうに、悲しそうに垂れ下がっているのはタリスマンと己の象徴だけか。な……何が……何故……? 混乱するのも無理なしだ。影がヴェールのように、衣のように、ゆっくりと覆い被さってきた。誰だ……誰なんだ。私は、あなたを見たことなど……! 誰なのかは知らない。出会った記憶などない。しかし、何故だろうか。影が晴れた途端にやってくる、この、筆舌に尽くし難い感情は……。貴方、自分が何をしたのか、わかってるの? 貴方、自分だけが逃げられると思っていたの? 貴方、自分が餌の気持ちを理解できていたと、本気で……。女はタリスマンを手に、それを、そのまま、粉砕した。あ……あぁ……それは、彼女からの……! でも、貴方、結局、今を生きているだけじゃない。
 血の気が引いた。違う。シンプルに血が不足していた。如何やら既にオマエの四肢はゴミの袋に片付けられていたのだ。知らない女はオマエの口腔を無理やり開いて、そこに、ヤケに頑丈な漏斗を入れた。大丈夫、ちゃんと、外れないようにしておいたから。ああ、這入ってくる。何が這入ってくるのかと問われたら、莫迦みたいに冷えた水だ。これで、貴方はもう、呼吸をしなくて良い。これで、貴方はもう、何も喋らなくて良い。ああ、死にそうだ。今にも、死んでしまいそうなほどに冷たい。胃袋はもちろん、肺臓まで到達した水は――私の心と身体を、狂気を、浄めてくれているかの如くに――あら? 貴方、どうして、そんなにも悦んでいるの? どこに悦ばしい要素があるのかしらね? そう、わかってる。貴方はきっと彼女に、こうしてもらいたかった。だから、代わりに私が「してあげる」。子供が虫に対してするように、吸血鬼が人間に対してするように、女は、オマエに対して『それ』をした。まさか、こんなふうに扱われるとは。まさか、このような沙汰で、熱くなるとは。いや、冷たい。冷たいのだけれども……あつくて、あつくて、ひどい眩暈に晒される。撹拌されたのは胃液だろうか漿液だろうか、それとも、濁りに濁った泥だろうか。そう……そんなにも、欲しいのね。そんなに欲しいなら、さっさと、裏切ってしまえば良かったのに。ああ……そうだったわ。貴方は中途半端だから、蛆虫だから、裏切ろうともしなかったのね! 欲求不満な化け物に相応しい末路だ。殺さないでくれ、ずっと、永久に、罰し続けてくれ……。
 反吐が出る……自分自身に、だ。
 本当に、如何して、私というものは……。
 やけに|べっとり《●●●●》した目覚めだ。
 臭い物に蓋をする。蓋をする暇もないなんて!
 ……悪い夢だ。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

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