シナリオ

Welcome to Dungeon!!

#√ドラゴンファンタジー

タグの編集

作者のみ追加・削除できます(🔒️公式タグは不可)。

 #√ドラゴンファンタジー

※あなたはタグを編集できません。

●ダンジョンのある世界へようこそ
 √ドラゴンファンタジーにある小さな町。そこでは冬のお祭りが開催されていた。
 町の人々は今年の一年に感謝の想いを告げながら、温かいスープやパンを楽しんでいる。
 例え雪が降り始めても、冷たい空気もなんのその。子ども達は元気に広場を駆け巡る。
 そんな彼らの将来と健康を祈りながら、大人達も微笑ましく笑うのだった。

 ささやかながらも平和で賑やかな催し。しかし町長は複雑そうな表情を見せている。
「まずいな……ダンジョンが出現した件、どうにか早急に……」
 ぼそぼそと呟いた後、近くにいた従業員に指示を出す。
「ダンジョンの件、住民達にはまだ公開するな。ただ、冒険者を集める用意だけは進めておいてくれ」
「承知いたしました」
 指示を受けた従業員はスマホを片手に、お祭り会場からそっと抜け出していくのだった。

 あーあ、今日はのんびり警備の仕事をするつもりだったのに……これも日常茶飯事だけど。
 さてと、仕事場に帰ったらダンジョンの資料と申請書の作成に、クエストの発行手続きと……。はぁ、忙しいなぁ。

●碧斗の情報
「さっそく冒険に出かけるぞ!」
 集まった√能力者達の前で、元気に話し始めたのはヤンチャそうな小学生。
「あ、まずは挨拶だった! 初めまして、オレは草ヶ谷・碧斗、ヒーローやってるぞ!」
 お面を被った子ども、草ヶ谷・碧斗(ヒーローごっこ・h00467)。彼もまた立派な√能力者である。
「でね、オレ予知で見たんだ! √ドラゴンファンタジーって世界でダンジョンが出たって話があるの! ダンジョンってのは放っておくとヤバい事になるっていうからさ、みんなで攻略しに行ってほしいんだぜ!」
 ダンジョン。それは天上界の遺産が世界中にばら撒かれた結果生み出された、危険な疑似異世界である。
 このまま放っておけば付近の町にも影響が及び、最悪モンスター化も進んでしまうだろう。そうなる前にダンジョンを攻略し、主であるモンスターを討伐をしなければならない。
「ダンジョンの奥には強ェモンスターがいるから、そいつを倒して遺産を封印すればいいらしいぞ! 途中にあるお宝は持って帰ってもいいんだって! 何があるんだろーな!」
 ダンジョンは至ってシンプル。薄暗くジメジメとした空間が広がっており、時折宝石が埋まっているという噂もある。周囲や足元に気を付けて進むべきだろう。

「ダンジョンの話はそんな感じかな。後は行ってみれば分かるぜ!」
 それじゃああっちな! と√能力者達が向かうべき方向へ指をさそうとした碧斗だったが、ふと何かを思い出して動きを止める。
「あっ、でもダンジョン行く前に町に寄っていくといいかも! お祭りやってるんだって! 行く前の準備は大事って言うじゃん!」
 と、無邪気にそんな提案を投げ掛けた。
 町ではお祭りが開催されているようで、様々な屋台が並んでいるらしい。温かいスープ、焼きとり、ホットドッグ、クレープなど。どれも美味しそうなものばかり。
 他にも冒険者用に武具やアイテムを売っている屋台もあるようだ。透き通った宝石を加工したアクセサリーは特に有名な品だそうで、どれも幻想的で美しいとのこと。
 それであれば、√ドラゴンファンタジーの空気を少し感じてみるのも良いかもしれない。

「よし、伝える事はとりあえず言えたかな! それじゃあ頑張ってな!」
 今度こそ行ってらっしゃい! と、碧斗は元気に手を振って見送る。
 教えられた小道を進んでいけば――知らず知らずに別世界へと足を踏み入れているだろう。

マスターより

ののん
 初めまして、ののんと申します。
 √EDENスタートおめでとうございます。
 楽しい冒険譚となりますよう努めますので、キャラ共々どうぞよろしくお願い致します!

 ●状況
 √ドラゴンファンタジーが舞台となります。
 3章で完結します。

 第1章は、町のお祭りを自由に楽しむ場面となります。
 √ドラゴンファンタジーの世界を観光したい、戦闘以外のシーンを楽しみたい、という方はどうぞお気軽にご参加ください。
 第2章からダンジョン攻略が開始するので、1章のみ参加、2章以降から参加など、ご自由にしていただければと思います。
 もちろん全部参加でも構いません、嬉しいです!

 ●プレイングについて
 受付はいつでも。キャラ口調ですとリプレイに反映しやすいです。

 以上、皆様のご参加お待ちしております。
18

閉じる

マスターより・プレイング・フラグメントの詳細・成功度を閉じて「読み物モード」にします。
よろしいですか?

第1章 日常 『お祭りに行こう』


POW 露店を巡り、買い物を楽しむ
SPD 楽しい音楽や踊りに参加する
WIZ お祭りの由来や伝承を聞く
√ドラゴンファンタジー 普通5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

野分・風音
ダンジョンが出現したとあれば、冒険者として行かないって選択肢は無いよね!
けど、その前に寄り道も大事だよね。お祭り楽しむよ!

スープや焼き鳥も美味しそうだけど、甘い物が食べたい気分。
あ、クレープの屋台がある。これにしようっと!
うーん、イチゴも良いけどバナナも良いし……決めた、アップルカスタードくださーい!

ほんのり温かいクレープを齧りながら、武具やアイテムの屋台も見て周る。
装備は今使ってるもので行くとして、消耗品は少し買い足そうかな?
それにしてもこのクレープ美味しい!リンゴがちょっと酸っぱいのがカスタードに合ってて絶品だね。
ダンジョン攻略の後もお祭りやってたら、帰りも食べて帰ろ!

絡み、アドリブ歓迎

 冷たい風を肌で感じながらも、町の雰囲気がそれを忘れさせてくれる。
 ダンジョンと聞けば冒険者の出番。でもその前の寄り道だって大事なこと!
「わ、いいねー賑わってる!」
 野分・風音(人間(√ドラゴンファンタジー)の鉄拳|格闘者《エアガイツ》・h00543)も気分が乗ってきた。やはり屋台が並んでいる光景はいつ見てもテンションが上がる。
 温かくて美味しそうなものは匂いだけでもお腹が満たされる気分。じゅうじゅうと何かを焼いている音はいつ聞いても心惹かれる。
「スープや焼き鳥も美味しそうだけど……」
 思わずキョロキョロしてしまうのも無理はない。が、今は甘い物が食べたい気分。何かいい感じの屋台は……。
「……あ、クレープの屋台がある。これにしようっと!」
 ふと目に入ったクレープ屋。クリームも多めに入れてくれるみたいだし、ボリュームもありそう!
「いらっしゃいませー、何にしますか?」
 やって来た風音に、店員の女性がにこやかに声を掛ける。メニューやサンプルの写真を見せてくれたが、どれも気になってしまって余計に迷ってしまった。
「うーん、イチゴも良いけどバナナも良いし……」
「どれもおススメですけど、私のおススメはリンゴですね。この時期が旬のリンゴを使っているんですよ」
「へー……。それじゃあ決めた、アップルカスタードくださーい!」
 迷ったらおススメされたものにするのが早い! 風音が元気に注文をすれば、店員も慣れた手付きでクレープの生地を焼き始める。焼きたての生地に包まれたアップルカスタードを受け取れれば、思わず魅了されてしまい。
「はむ……んー美味しい! ありがとうございます!」
 輝く女子中学生の瞳。店員も満足そうに微笑むのだった。

 勢いで食べてしまうのが勿体ないと、ゆっくり食べながら会場を渡り歩く風音。他の食べ物屋も気になってしまうが、ここは冒険者。流石に本来の目的は忘れない。
「この辺りがアイテム屋多めの場所かな。さてと……」
 今回向かうダンジョンについてはまだ町に噂がなくとも、他のダンジョンならいくらでもある。その為、武具やアイテム、アクセサリー類はしっかりと充実していた。
「うんうん、装備は今使ってるもので行くとして、消耗品は少し買い足そうかな?」
 所持品チェックをしつつ、必要そうなものを選んで購入していく。この準備段階もまたワクワク感を感じられて気持ちが良い瞬間とも言える。さらに言えば今回は|後のお楽しみ《・・・・・・》もあるのだ。
「うーん、それにしてもこのクレープ美味しい!」
 リンゴの酸味とカスタードの甘さの絶妙なマッチング、それにプラスして、この柔らかい生クリームとクレープ生地! こんな贅沢なクレープ食べたことがない!
「こんなの他のクレープだって絶品に決まってる! ダンジョン攻略終わったら、帰りも食べて帰ろ!」
 本番はこれから。だけどその終わりにも楽しみがある。
 これはきっと、冒険者にとっては大事なことに違いないのだ。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

トゥーラ・ミストレイ
ダンジョンと聞いては放っておけないよね。ダンジョン大好きなんだ。どうしてあのような変異が起きるのか…興味深くてわくわく。新しい情報に飛びついて私が来たよ
っと、その前に町で情報収集などを…おや、お祭りかい?いいね、にぎやかなのはスキ

そうだな…露店を見に行こうか
綺麗な石に力がある、というのは常に言われる話だよね
よいことだ。私も信じているよ
そうだな…特に赤い石にめがないのだ。なにかおすすめや、よさげな品などあるだろうか
お祭りで評判のいい品という噂だし、観光しにきたような私にでも手の届く品だとよいのだが…ついでにこれからの探索のお守りとして一役買ってくれると嬉しいな。掘り出し物に期待をしたいところだね

 ダンジョンという単語に心ときめく者はこの世界に多い。
 冒険者とは様々である。力試しをする者、お宝探しに没頭する者、話のネタ探しに向かう者。中でも彼、トゥーラ・ミストレイ(|編異繋翼《異なるを編み繋ぐ翼》・h00636)はどれに当てはまるのかと言えば、底知れぬ探究心と呼ぶべきだろうか。
「果たして今回のダンジョンはどんな仕組みなのだろう……早くこの目で見てみたいものだね」
 どうしてあのような変異が起きるのか、そしてどんな者達がダンジョンに待ち受けているのか。ただただそれが興味深い。もうすぐそれが確認できるのだと思うと、楽しみで楽しみで仕方がない。現地調査ほどわくわくするものはないのだ。

 とは言うものの、それはそれとして。出発前の準備はやはり大事。それに賑やかな場所は嫌いじゃない。むしろ好きな方だ。
 噂に聞いたそのお祭り会場へとやって来た訳だが、なるほど、それなりに人は多い。決して派手で大きな催しという訳ではないが、そういう場所ほど掘り出し物があると見た。
「この辺りがアクセサリー屋が並ぶゾーンかな。……本当だ、石の加工品が多い」
 どの店も宝石や水晶を使ったアイテムやアクセサリーを並べていた。これから向かうダンジョンにも宝石があるとは聞いたが、そもそもこの辺りに多くあるのかもしれない。
 トゥーラがゆっくり露店を見回っていると、角の生えた男が声を掛けてきた。
「灰色の兄ちゃん、どうだい。俺の商品見ていかないか」
 声を掛けられた方へ目を向けてみれば、テーブルの上には色鮮やかなアクセサリーが並べられていた。よく見れば宝石は透き通っているように見えて、まるで硝子玉のようだ。
「インテリアにしてもいいし、装飾品のひとつにしてもいい。パワーストーンなんて呼んでお守り代わりにする人もいるよ」
「パワーストーン、か。綺麗な石に力がある、というのは常に言われる話だよね」
「そうだな。兄ちゃんはそういうの信じないタイプか?」
「いいや、よいことだ。私も信じているよ。それほど力が宿ってるように見えるということだろうからね」
 丁寧に加工された綺麗な石達だ、と。並ぶ商品を見やりながらトゥーラが言えば、男は肩を揺らして笑った。
「はは! 上手いな。そんなつもりはなかったが有り難いね」
 そんな談笑も交えた後、そうだ、と男はテーブルからひとつの商品を手に取った。小さな試験管だ。その中には赤々と輝く宝石が閉じ込められている。
「こういうの、良かったらどうだ。何、おまけして安くしてやるからさ」
「へぇ、赤い石……よく分かったね、その色が好みだと」
「似合いそうだったし、まぁ長く商売してたら分かるさ、視線とかでな」
 渡された試験管を空にかざしてみる。赤い宝石は燃えるような炎にも、鮮血のような紅にも見える。様々な表情を見せてくれる面白い一品なのかもしれない。
「飾りにするなりペンダントにするなり、好きに使ってくれ」
「いいね、これから出掛ける所だったんだ。丁度良いお守りになってくれそうだよ」
 トゥーラは男に礼を言うと、赤い石を眺めながら、これから向かうダンジョンへと思いを馳せるのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

竜雅・兎羽
わあ、お祭りですか♪
記憶にある限りは行ったことないから楽しみです。

レゾナンスディーヴァとしては音楽に興味があります。
一緒に歌っても良ければ、是非混ぜていただけないでしょうか。
歌には自信があるんですよ。戦うためだけの能力ではないですから。

小さいけれど、平和で素敵な町ですね。
この平和を守れるよう、ダンジョンをきちんと攻略しないと…。
…と、今から気をはりすぎてもいけませんね。
町にいる間は、お祭りを楽しみましょうか。

 力と記憶を奪われ人間の姿へとなった竜、ドラゴンプロトコル。
 過去、何をしていたのかと問うた所で、彼らは何も答えないだろう。

 だが、そんな状態でも明るくポジティブに過ごす者もいる。竜雅・兎羽(歌うたいの桃色兎・h00514)もそのうちの一人だ。
「わあ……これがお祭りなのですね」
 今の姿になってからはこれが初体験。賑やかで、お店がいっぱいで……何処から見ていこうか悩んでしまう。きょろきょろと見渡しながらも、とりあえず気の赴くままに会場内を進んでいくことにした。彼女の護霊である『竜兎』も一緒に楽しんでいるようだ。
 美味しそうな匂い、見た目の可愛い食べ物、キラキラのアクセサリー。どれも惹かれて仕方がなかったけれど。
「……?」
 遠くで何かが聞こえた。ざわざわする声と――楽器の音。
 思わず耳が反応した。その瞬間、音のする方向へ自然と足が動いていた。

 急ぎ足になった兎羽が辿り着いた先は、この町のシンボルであろう大樹がそびえ立つ広場。集まる人々の中へと入ってみれば、どうやら大樹の下で演奏会が始まったばかりのようだった。
 バイオリンにフルート、ギター、アコーディオンの奏者が並び、息を合わせてアコースティックな音色を響かせる。
「すごい……素敵、これが演奏会……」
 ――これが音楽の力。
 どの楽器の音も心に響いて、聴いているみんなが癒されていて、平和な時間を共有している。
 感動した兎羽も思わず体を揺らしてメロディーを口ずさむ。小さな声で、楽しそうに。

 長いようで短く感じた演奏が終われば、観客達は拍手を送った。良かった! と兎羽も奏者達へ拍手を送る。
 すると、奏者の一人が兎羽に向かって手を振った。
「どう? 良かったらここで一曲」
「え? わ、私ですか?」
「楽しそうにしていたからさ。任せな、アドリブは得意だから」
 突然の誘いに戸惑いながらも、レゾナンスディーヴァとしての自信と好奇心が勝り、そっと壇上へと上がる。飛び入り参加をした愛らしいピンク色の竜人の姿に、観客達も期待の眼差しを向けている。
「それでは、お言葉に甘えて……こほん」
 心を落ち着かせて、喉の調子を整えてから、そっと歌声を風に乗せる。
 彼女の声に合わせて奏者達は楽器を鳴らし、大樹もさらさらとコーラスを奏でる。
 ――戦うだけの力じゃない。私も、誰かの癒しになるような歌を届けたい。
 そんな思いを抱きながら、兎羽は心を籠めて歌う。
(「楽しいお祭り、素敵な演奏会。小さいけれど、平和で素敵な町」)
 だからこそダンジョンを攻略しなければいけない、この平和を守るためにも……。そう気持ちを引き締めた直後。
「……いいセッションだった」
 奏者の一言と、観客席からの大きな拍手でハッと我に返る。どうやら歌い終わっていたらしい。
(「少し浸りすぎていた……かしら。ううん、気合いを入れるのも程々に。今は……目一杯お祭りを楽しまなきゃですね♪」)
 どの気持ちにも嘘はない。周囲の人達の笑顔と拍手が何よりもの証拠で、心の糧だ。
 兎羽は笑顔と共に、深々と一礼をした。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

白石・翠咲
……僕らと同じ、令和の道を辿っているはずなのに、どこかファンタジーめいていて外国の風景のような街並み……雪も降っているし、なんだか素敵な場所ですね。

おっと、まずは身体を温めないと……暖かいスープを頂きましょうかね……クリーム系のスープがあれば、それを頂きたいです。ふぅ。寒い中で頂く暖かいものは季節を感じられていいですね。

有名らしい宝石のアクセサリーも見ていきますかね。綺麗なものは……好きですから。
ペンダント型のものがあればそれを買い求めて見ましょうか。揺れてキラキラ光る姿は、美しいでしょうから。

 きらきらと降る雪が、広げた手のひらに落ちては消えゆく。√ドラゴンファンタジーの世界へ訪れた白石・翠咲(花を撒く者・h02856)は改めてその光景に関心を示す。
 歴史は違えど、同じ時間を歩んでいるはずなのに、自分の知っている光景とはまるで違う。外国に来たような感覚に近いけれど、周囲を歩く人々を見ると、ここが異世界である事をより実感させられる。
「雪も降っていて寒いのに……なんと温かな雰囲気なのでしょう」
 がやがやとした賑やかさ。しかしうるさく感じる事はなく、むしろ心地良いくらい。それだけ誰もが楽しんでいて、平和である証拠なのだから。

 さて、とはいえ実際に空気は冷たい。少し凍えた手を擦っていると、翠咲の元へ一人の女性が歩み寄ってきた。
「寒いでしょう、良かったらどうぞ」
 そう言って渡してきたものは、温かそうなスープの入ったカップ。
「おっと、ありがとうございます。いただきますね」
 両手でカップを包むように受け取る。じんわりと感じる熱が有り難い。それに、ほんわりと湯気を漂わせる白いコーンクリームスープがなんとも食欲をそそる。
「ミルクが多めのコーンスープなんです。飲みやすいと思うので、どうぞごゆっくり」
 女性は頭に生えた耳を揺らしながら一礼し、また別の誰かの元へと向かっていった。彼女を見届けた後、翠咲はさっそくスープを一口味わってみる。
「……えぇ、優しいお味ですね」
 まろやかで濃厚。だけどすっきりと飲める。体の中がぽかぽかと温まるこの感覚は冬ならではとも言える。これでより一層、お祭りも楽しめそうだ。

 スープを大事に飲みながら会場内を進んでいくと、装飾品のが並ぶ通りへと辿り着いた。
 そういえば、この町では宝石を使ったアクセサリーが有名なのだとか。確かにどの屋台も宝石が硝子のように透き通っている。不思議だな、と様々な商品を眺めていたその時。
「綺麗な人……」
 ぼそ、と聞こえた声の方へ振り向くと、露店の店番であろう少女がそこにいた。翠咲と目が合うと驚いたのか固まっている。
「……素敵なアクセサリーですね。少し見てもいいですか?」
「はい! わ、私が作りました」
「なんと、あなたがこれを?」
 今度は翠咲が驚いてみせた。子どもの職人など珍しくはないのだろうが、ここまで宝石を細工する技術があるとは思ってもいなかったからだ。
 指輪にブレスレット、髪飾りまで作品は様々。派手なデザインこそないものの、宝石を丁寧に扱っている事がよく分かる。
「そうですね……」
 じっと作品を見つめて翠咲が悩んでいると、少女はテーブルの端に飾っていた品を手に取り、翠咲へ見せてきた。
「こ、これ、どうでしょうか」
 少女が選んできたものは、白い宝石を使ったペンダントだった。まるで溶けない雪を使ったかのような美しい色合いだ。
「このデザインは……まるで」
 ――白蓮の花びらのようだ。
「お、お土産に、いかがでしょうか」
「はい、是非こちらを。選んでいただきありがとうございます」
 柔らかな笑みを浮かべながら、翠咲は少女からペンダントを受け取る。陽の光を浴びるペンダントは、何よりもきらきらと輝いていているように見えた。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

斑・蜘
心情>
そうだ、旅をしよう。冒険という旅を。
ふと思い立ってこの場に来たボクなのである。
異√の空気を楽しもう。ついでに頼まれ事もしよう。

行動>
指定した√能力を使ってこっそり楽しもう。美味しいお肉ないかな。
ぷちっといかれないように!

補足>
黒化型ジョロウグモ。
普段はほぼ無口だけど必要があれば、人で言う10歳のおちついた女の子な声で「ボク、~さん、だね、だよ、かな?」って感じで喋るかな。時々丁寧語でもしゃべるよ。
他の√能力者に迷惑をかける行為はしないし、例え依頼の成功のためでも公序良俗に反する行動はしない。
ひとりで楽しむ予定だけど、絡みOK。アドリブは大歓迎。

(ネタに走り過ぎるのはやめてほしいかな)

 旅をするのは何も人だけに非ず。この世には人ならざる者もいれば、人の姿をしていない者まで様々だ。言葉を話す動物やモンスター、怪奇等々、どんな者がいたって不思議ではないのだ。
 そう、この小さな蜘蛛もまた、数多の世界を旅する若者の一人(一匹)に過ぎない。

 そうだ、旅をしよう。
 いつだってそう思い立つのは突然の事。明確な目的も作らず飛び出してしまうのは悪い癖かもしれないが、それもまた冒険らしさを感じられる丁度良いスパイスだ。
 まぁ今回の場合は頼まれ事もあるのだけれど、それはそれとして異世界へ向かえる良い切っ掛けになった訳で。

 今日の天気は晴れときどき雪。ちらちらと降ってくる雪と冷たい空気に、とても冬を感じる。
 斑・蜘(旅する蜘蛛・h01447)はお祭り会場の門の上にこっそりといた。地上になんていられない。こんな人混みではいつ潰されてもおかしくないのだから。
 こういう時は会場を彩る飾りや街灯を伝って移動するのが一番。それに上から眺める町並みは見ていて爽快だ。一番その地域の雰囲気を味わえる気がするからだ。
 ファンタジーらしくレンガ造りの建物が多く、その中で木々や自然物も共存している。しかし自転車が走っている様子やスマホを持つ通行人を見ると、「あぁ、これは現代なんだな」と改めて思えてしまう。やはり異世界とは不思議で、それでいて面白い。
 道歩く人々も普通の人間だけでなく、耳が尖っている人、角や翼がある人、耳や尻尾のある人……そして人ではない者もたまにいる。その世界に住む種族を見ると、まだ見慣れないせいもあってか新鮮な気持ちになってしまう。
 この中に同業者もいるだろうけど……こんな高い場所に誰かがいるなんて想像もしていないだろう。そういう意味では、お互い様なのかもしれない。

 飾り旗を伝って街中や会場内を観光していると、いい匂いを察知した。匂いのする温かい煙を辿ってみれば、そこにあったのは美味しそうな焼きとりの屋台。ちょうどお腹も空いてきた頃合い。少し拝借してしまおう。
 蜘は静かに身構えると、糸を出しながら、つう、と屋台の裏へと降りていく。誰も彼女の気配に気付かないのは√能力のおかげか。そのまま蜘は焼きとりの串を一本、そっと抱えて再び空中へと戻っていくのだった。
 丁度良さげな木の上まで運び、焼きとりに齧りついてみる。うん、ジューシーで美味しい塩味だ。やはり冬は温かい食べ物に限る。これはどの世界でも共通しているようだ。
 今度はから揚げの入ったカップでも拝借してみようかな。そんな事を考えながら、蜘は賑やかな町の様子を楽しむのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 集団戦 『バーゲスト』


POW 角突撃
【全身に生えた角】で近接攻撃し、4倍のダメージを与える。ただし命中すると自身の【前足】が骨折し、2回骨折すると近接攻撃不能。
SPD バーゲストファング
命中する限り「【穢らわしい牙】による攻撃→技能攻撃→[穢らわしい牙]攻撃→技能攻撃」を何度でも繰り返せる。技能攻撃の成功率は技能レベルに依存し、同じ技能は一度しか使えない。
WIZ バーゲスト・スタンピード
自身の【赤く輝く目】がA、【全身から生えた角】がB、【鋭い爪を備えた脚】がC増加し、それぞれ捕食力、貫通力、蹂躙力が増加する。ABCの合計は自分のレベルに等しい。
イラスト はるまき
√ドラゴンファンタジー 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

 賑やかな町での一時を過ごした後、報告のあったダンジョンへと√能力者達は向かう。
 外よりもひんやりとした空気が漂い、足音が空間に反響する。水滴の落ちる音すら暫く耳に残るほどだ。

 暫く進むと、鍾乳洞のある広い空間へと辿り着いた。
 ……いや、これは鍾乳洞ではない。硝子のような宝石の塊だ。
 誰かが遺したランプの灯りに照らされ、宝石の塊はただ静かに、美しく輝いていたのだ。
 思わずそれに目を奪われたのも束の間。何処かから獣の唸り声が響き渡った事を√能力者達はすぐさま感じる。

 闇の奥から現れる赤い輝き。
「グルルル……ッ!」
 黒き獣の群れだ。その全身から生えた複数の角は酷く汚れている。彼らはダンジョンから生まれた者か、それともダンジョンの犠牲となった哀れな獣か。
「バウッ!!」
 獣達は我を忘れたかのように暴れ狂い、牙を剥き出し、突如√能力者達へと襲い掛かる――!
トゥーラ・ミストレイ
・アドリブ、絡み等歓迎です

ふむ。綺麗な宝石だ。街で石加工が盛んなのも、こういった影響があるのだろうか?
っと、敵さんのお出ましだね。よかろう!できるだけ宝石を傷つけずに楽しもうじゃないか。

先の探索もあるだろうから、消耗には気を付けなくてはね。
怪我もそうだが…腹が減っては戦はできぬともいうだろう。
敵の様子を伺った結果、分かったことがあるのだ。
そう、私が異形合戦なら得意だということだ。
私の√能力、鱗翼灰溶は融合体を行使し自らを異形と化す技。
黒き獣は美味しいのかな。
ちょうど空腹である。背からの触手を増やし、獣に噛みつこう
「喰らうのは…私だ…!」
穢れなど、とうに受けている。天から堕ちた罪の末裔なのだから

 せっかく綺麗な宝石を目の当たりにしたというのに。いや、邪魔が入るのは想定済みではあったのだが。
「この辺りのダンジョンは宝石が生まれやすいのだろうか……。まぁ後で調べさせてもらおう」
 なるべく傷付けないようにと巨大な宝石を背に、トゥーラ・ミストレイ(|編異繋《異なるを編み繋ぐ》・h00636)は現れた敵へと目を向ける。
 黒き獣、バーゲスト達は低い唸り声を響かせ、棘の生えた尻尾をしならせる。外部から来た者を決して逃がさんという黒い殺意。戦う術のない者なら生きた心地がしないだろう。
「ふむ……一体何処から来て、その身体はどうなっているのか……大変興味があるよ」
 しかしそんな状況でも臆する事なく、そして退く様子も見せないのが冒険者、もとい√能力者。トゥーラの場合は|このために来た《・・・・・・・》と言っても過言ではない。
 彼の表情は、非常に明るく見える。
「……ウガァッッ!!」
 一匹のバーゲストが地を蹴り跳躍した。鋭利な角が生えた前脚を、トゥーラは最小限の動きで交わしてみせたが、やはり相手の一撃は重い。硬い岩を簡単に砕き、周囲に飛び散る欠片が皮膚を掠る。
 それでもトゥーラの表情は変わらない。なるほど、と呟きバーゲストから目を離さない。そう、彼は観察をしているのだ。
「その爪もさながら、角も非常に硬いと見た。やはりあれは骨が変形したものなのだろうか」
 強さを求めた結果、あのような姿になったのかと思うと……ぞくぞくしてくる。

 もう観察はいい。
 ――ばらばらにしたい。

「思い出した事がある。小腹が減っていたんだ」
 バーゲストにそう告げるが相手に言葉は通じない。己の身をも傷付けながらもバーゲストは前脚で彼を力強く薙ぎ払おうとした。
 が、しかし。
「ッ……グッ……!?」
 どういう事だ、力任せに動かしたはずの脚が動かない。
「人の話はちゃんと聞くものだよ」
 いや、待て。
 おかしい、おかしい、おかしい。
 さっきまで目の前にいた獲物は|こんな姿《・・・・》だったか?

「さて……黒き獣は美味しいのかな」
 灰色の異形が嗤う。背中から伸びる複数の触手がバーゲストの脚を捕らえ、そして、脆い宝石のように砕く。
「勘違いするなよ。喰らうのは……私だ……!」
 怯んだバーゲストの喉元に喰らいつく。もはやどちらが穢れた存在であるかなど、知れた事ではない。
 そこに在るのは、ただただおぞましい触手が、翼が、鱗が、黒き獣の姿を飲み込んでいく様子だけであった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

野分・風音
見た目の綺麗なダンジョン探索は楽しいね!
このまま観光スポットに出来ちゃいそうな感じだけど……とてもじゃないけど一般の人達を連れて来られない原因が来ちゃったかな。

犬型のモンスターか……。犬好きとして複雑な気分だけど、流石にそう牙を剥いて向かってこられちゃ戦うしかないよね!
あの角で攻撃されちゃ怪我じゃ済まないね。集中して極力躱そう!
躱した隙をついて反撃だ!
まずは風を纏った拳で牽制、すかさず旋風で捕縛して、止めはこの蹴りだー!
これがアタシの【暴風連撃】だ!世界の果てまで吹っ飛んで行け!

さて、モンスターも退いたなら奥へ進もう!
奥には何が待ってるかな?
と、その前に落ちてる宝石とか拾っておこうっと!

 楽しかった町の次は綺麗なダンジョン! とはいえ、やはり観光気分で行けるような場所ではない。そんな気分で入れてしまうのは冒険者だけである。
 突然現れた相手だって、人間好きの可愛い犬だったら良かったのに。
「ウウゥゥ……ッ!!」
 闇の中から唸る危険な魔物、バーゲスト。本来は犬であったであろう姿でも、彼らは罪を重ねすぎた。野分・風音(暴風少女・h00543)は少々複雑な気持ちを抱きつつも、戦いは避けられないとすぐさま切り替える。
「先に喧嘩売ってきたのはそっちなんだから! 仕方ないよね!」
 軽くストレッチも行いながら風音は前へと進み出る。|格闘者《エアガイツ》の血が騒ぐのか、真面目でありながら彼女の表情は強気な笑顔だ。

 互いに見つめ合う中、一匹のバーゲストが動きを見せた。荒れ狂うように全身の角を突き出し、壁を蹴り上げ風音の頭上から襲い掛かる!
「うわっ!」
 横へ転がるように回避した風音。バーゲストの鋭い爪や角は、まるで爆発でも起こしたかのように地面を強く抉り破壊した。
「わぁ……受け止めようとか思わなくてよかったかも」
 一瞬の判断ミスも許されない。もし真正面から防いでいたら潰されていたかもしれない。
 ……|だからこそ《・・・・・》戦いとは面白いのだと、感じてしまうのかもしれない。
「もう分かった、次は行けそう!」
 態勢を整え、拳を強く握り締める。バーゲストは既にこちらへと向かって来ていたが、風音はしっかりとその姿を目で追う。再びバーゲストが跳躍して腕を振り上げた瞬間、再び風音はそれを見事に避けてみせたのだが。
「そこっ!」
 今度はバックステップを行い、相手の着地を狙って右腕を突き出した。腕を捻りながら繰り出した拳から突風の弾丸が放たれる。見事バーゲストに直撃し吹き飛ばされたが、それでもまだ相手にダメージはない。
「まだまだ!」
 勿論、そんな事は織り込み済みだ。風音はすぐさま駆け出し、スッ、と指を動かす。そう、彼女が会得しているのは格闘術だけではない。風の魔術も彼女の特技だ。
 次にバーゲストを襲ったのは何処からともなく発生した旋風。見えない攻撃に不意を打たれ、空中に投げ出されたバーゲストは体勢を崩した。そこへ風を纏いながら勢いに乗せて跳び上がる風音。
「世界の果てまで……吹っ飛んで行けー!!」
 ぐるんと全身を一回転させながら力強くバーゲストを一蹴。角の生えていない脇腹を狙った蹴飛ばしによって、バーゲストは一直線に壁へと叩き付けられる。力尽きた仲間がどさりと降ってきた様子に、近くにいたバーゲスト達は思わず狼狽えた。
「よし! この調子!」
 地上へ降り立った風音はまだまだ元気だ。このまま他のバーゲスト達も次々薙ぎ払っていくのだろう。つま先でトントンと靴を整えていると、
「あ」
 足元に宝石の欠片が転がっている事に気付く。
「……拾っておこうっと!」
 手のひらに収まる程度の欠片だったが、そっとポケットに入れてから風音は走り出した。
🔵​🔵​🔴​ 成功

竜雅・兎羽
連携・アドリブ歓迎

わあ、綺麗な鍾乳洞…あれ、違いますね、これは宝石…?
なんて素敵なんでしょう♪これだからダンジョンに潜るのは止められませんね♪
と、油断してちゃいけませんね。早速おでましの様で…

まあ、獣さん…どう戦いましょうか…
見るからにあまり近寄りたくないタイプですね…
ということで、「竜兎召喚」を使用して攻撃技「【竜兎ストライク】」を指示します
『おいでませ、竜兎♪』
(兎の様なかわいらしい見た目をしたドラゴンが召喚される)
これで遠距離から攻撃してみます

群れなので囲まれないように気を付けます
ダンジョンですから、うっかり袋小路に行ってしまわない様にも注意します
それでは、頑張りましょう!

 ダンジョンとは危険な場所である。このまま放っておけば、楽しかったあの町も消えてしまうかもしれない。だからこそ、この世界では冒険者が不可欠だ。
 しかし、いざ向かってみるとダンジョンも悪い事ばかりではない事が分かる。お宝もあるし、不思議な場所に出会す事だってある。
「綺麗な宝石の鍾乳洞……」
 竜雅・兎羽(歌うたいの桃色兎・h00514)がそう呟いてしまうのも無理はない。外では見られない幻想的な場所を発見する度、冒険者になれて良かったとつくづく感じるのだ。このまま静かに眺めていたい所だが、闇から現れたバーゲストの群れがそれを許さない。
 彼らがいかに罪を重ねてきたものか、穢れた角を見れば容易に想像ができる。少しでも気を抜けば……恐ろしい結果しか待っていないだろう。
「お話の通じる相手、だったら良かったのですが……」
 どうやらそれもできないらしい。他の√能力者達が奮闘したおかげで数は減ってきたが、それでもバーゲスト達に退く様子は見られない。
 こちらを狙う相手から目を逸らさないようにしつつ、一定の距離を保ち続ける兎羽。さて、この睨み合いの時間が長く続くとは思えない。どう出ようか。

 先に動いたのはバーゲストの方だった。咆哮を響かせながらこちらへ突っ込んでくる! 万事休すか、と思えるかもしれないが、兎羽も立派な√能力者である事を忘れてはいけない。そう、何も用意していない訳がないのだ。
「出番ですよ。さあ、おいでませ、竜兎♪」
 彼女が呼び出したのは護霊『竜兎』。兎に似たドラゴンが召喚に応じると、バーゲストへ向かって真横から強烈な体当たりを繰り出した。
「ギャウンッ!!」
 クリーンヒット! 思わぬ不意討ちにバーゲストは吹き飛ばされ、別のバーゲストとぶつかり合い気絶する。全身に生えた角が自身や仲間をも傷付けるとは考えてもいなかっただろう。
「うんうん、さすが頼もしいです! 一緒に頑張りましょうね♪」
 竜兎は気合十分といった様子でふんぞり返っている。兎羽が褒めると、任せろ、と言わんばかりに翼を動かしてみせた。バーゲスト達は彼女達に驚いたようだが、それでも尚襲いかかろうと牙を剥く。
「退きませんか……竜兎も、あの角には気を付けてくださいね。さあ『竜兎ストライク』です!」
 いくら護霊とはいえ怪我は最小限にしてあげたい。竜兎へ的確に指示をしつつ、兎羽も前へ前へと歩み出す。徐々にバーゲスト達が劣勢になってきている証拠だ。
 兎羽と竜兎の勇敢な姿に、他の√能力者達も互いを鼓舞し合ったのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

斑・蜘
心情>
お肉美味しかったなぁ。お祭りの様子を眺めるのも面白かったし。
さてと、楽しんだ後は運動かな。頼まれたことをしないとね。
近くに同業者がいたら軽く挨拶もしとこうかな?

行動>
『いざ、どろん!【蜘蛛童】』
主に近接攻撃になるかな。己の八つの爪と強靭な顎で攻撃して、蜘蛛らしく糸でけん制できたらいいかな

補足>
【蜘蛛童】…体長1メートル程度の巨大な蜘蛛。TW2より。
人で言う10歳のおちついた女の子な声で「ボク、~さん、だね、だよ、かな?」って感じで喋るかな。時々丁寧語でもしゃべるよ。
他の√能力者に迷惑をかける行為はしないし、例え依頼の成功のためでも公序良俗に反する行動はしないよ。
絡み・アドリブ大歓迎。

 楽しい町の観光は終わり。次の冒険の舞台はダンジョン。勿論、これは遊びではなく、頼まれ事の為に来ているのだけれど。
 今はトゲトゲの狼の群れが探索の邪魔をしている。さて、これをどうにかしなければ。

 実はこっそり同業者にくっついてここまで来ていた斑・蜘(旅する蜘蛛・h01447)。バーゲスト達の咆哮に思わずびっくりして天井に巣を作っちゃったけれど、おかげで戦場を上から観察することができた。敵の動きもよく分かったような気がする。
 さすがに誰もこんな小さな蜘蛛には気付かない。戦闘中だからというのもあるが、「√能力者の気配を感じるけどよく分からないな……」といった具合の可能性もある。
 どちらにせよ、このまま傍観し続ける訳にもいかない。ちゃんと自分も戦わねば。軽く挨拶も兼ねて、ね。

「ウゥゥ……」
 一匹のバーゲストは√能力者達に向かって牙を剥き出し唸る。仲間の数が減って更に怒りを露わにしているようだ。姿勢を低くして今にも飛び掛かりそうな様子を見せた、その時。
「いざ、どろん!」
 突然そんな声が聞こえた。それと同時に、バーゲストの頭上から何かが落ちてきた!
「ギャゥッ!!?」
 ドッキリは大成功。ドスン! と、何かに踏みつぶされたバーゲスト。その正体は、体長約1メートルの巨大な蜘蛛。√能力者達もその姿には驚いたものの、微かに感じていた√能力者の気配が彼女であった事を悟り、すぐさま受け入れた。心強い味方が増えたのは良い事でもある。
「こんにちは、ボクも戦うね」
 見た目に反して幼い少女の声を持つ蜘。挨拶も済ませた所で、下敷きにしたバーゲストを鋭い足で何度も突き刺す(人間でいう、連続パンチを繰り出すのと同義だろう)。
 暴れるバーゲストから一度離れると、体に浮かぶ模様を輝かせながら、蜘は身構える。身がボロボロになっても尚狂うバーゲストは捨て身の勢いで突進を仕掛けてきた。
「ふんっ」
 蜘は体を反らし、お尻の針から糸をばら撒く。暴走したバーゲストがそれを避ける判断などできるはずがなく、絡み付いた糸に足を取られ大きく転倒した。哀れ、自身の角が体に食い込み、痛みをより倍増させている。
「それじゃあ、いただきます」
 巨大な蜘蛛は捕らえた獲物に近付き、鋭い顎で噛み付く。

 ああ、お祭りで食べた肉よりは劣るな。そりゃそうか。
 そんな事を考えながら、動かなくなったバーゲストの首元に再び喰らい付いた。
🔵​🔵​🔴​ 成功

アリス・グラブズ(サポート)
※アドリブ・連携歓迎 チョイ役・苦戦描写OK
南蛮渡来のハイカラ妖怪を自称する女の子です。
子供っぽい明るく元気な口調で(自称:ワタシ、他称:~さん、二人称:アナタ、口調:ね、わ、~よ、~の?)を使用します。
行動指針は、直積的ながら善性と倫理観を重視したもので、子供らしくひねった行動や頭の良い行動はあまりしません。
戦闘では素手やバス停で戦い、
『怪力』を活かして、殴ったり・掴んだり・投げたり・踏みつけたり・なぎ払ったりします。
以上、どうぞよろしくお願いいたします。

 闇の中から獲物を狙う瞳は光る。
 相手が小さい子どもだろうがバーゲストは容赦しない。奮い立つ体毛と全身に纏った鋭い角を見れば、殺意に満ち溢れている事くらい容易に感じ取れる。
「あらあら! 随分トゲトゲなわんこさんね!」
 しかしアリス・グラブズ(平凡な自称妖怪(怪人見習い)・h03259)は恐れる様子を微塵も見せない。寧ろ楽しそうだ。
「それで? アナタはどんな攻撃をしてくるの?」
 相手へ無邪気に問い掛けるアリス。その言葉の意味が理解できていようがいまいが、怒り狂うバーゲストが選ぶ行動はひとつ。突進だ。その攻撃で何度も敵を貫いてきたのだろう。汚れた角がそれを物語っている。
 その突進が直撃などしたら、子どもなど吹き飛ぶどころか即死間違いなし。だがバーゲストは大きな間違いを犯していた。相手が|ただの人間の子ども《・・・・・・・・・》であれば、どれだけ良かっただろうか。

「あらまぁシンプルね。それなら……よい、しょっと!」
 アリスは近場にあった大岩を可愛らしい両手で掴む。すると、なんという事だろうか。大岩は簡単に持ち上げられてしまったのだ。そのままボールを投げるかのように大岩はバーゲストの元へ投げ付けられる!
 真正面から突然吹っ飛んできた大岩に慌てて急ブレーキを掛けるバーゲスト。何とか直撃は免れたが、落ち着く間もなくその影から現れたのは笑顔のアリス!
「捕まえた!」
 角のない尻尾の部分を掴まれた。両手でがっしりと握られているとはいえ、その力は明らかに子どものものではない。もっと違う、人間ではない感触だ。それをやっと察知したバーゲストだったが、もう遅い。
「そーれっ!」
 自分よりも体の小さい相手に軽々と引き摺られ、尻尾から持ち上げられ、そして思い切り地面へ叩き付けられる。それを何度も、何度も。まるで鞭にでもされたかのように。
「アナタが! 泣いて! 謝るまで! ぶつわよ!」
 既に虫の息であるバーゲストには最後まで容赦はしない。そのまま馬乗りになり、アリスは何度も殴る。手をグーにしてポカポカと叩いている、なんてそんな微笑ましい光景ではない。ただただ無慈悲で、遠慮のない撲殺だ。
 獲物を間違えたバーゲストは、泣く事も謝る事もできないまま、ただの死骸と成り果てる。
🔵​🔵​🔴​ 成功

第3章 ボス戦 『堕落騎士『ロード・マグナス』』


POW 英雄は死なず
【鎧】と完全融合し、【剣】による攻撃+空間引き寄せ能力を得る。また、シナリオで獲得した🔵と同回数まで、死後即座に蘇生する。
SPD ファルス・ソード
自身が受けた武器や√能力を複製した【偽りの聖剣】を創造する。これは通常の行動とは別に使用でき、1回発動すると壊れる。
WIZ カースドフレア
移動せず3秒詠唱する毎に、1回攻撃or反射or目潰しor物品修理して消える【呪いの炎】をひとつ創造する。移動すると、現在召喚中の[呪いの炎]は全て消える。
イラスト キリタチ
√ドラゴンファンタジー 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

 最後のバーゲストを倒し、彼らが現れた闇の中へと進んでいく√能力者達。
 警戒しながら進んだ先にあったのは、いくつもの炎が灯る大部屋だった。壁や天井には無数の宝石が埋め込まれており、灯りによって各々が自身の色を主張させている。まさにお宝部屋とも呼べる場所だろう。

 だが今回も宝石ばかりに目を向けている時間はなさそうである。部屋の奥には立派な玉座があり、そこに誰かが座っていたのだ。黒い鎧を纏った騎士である。
 騎士は既に侵入者に気付いていたのか、慌てる様子もなく、ゆっくりと立ち上がる。
「貴様らの狙いは宝石か」
 騎士は語る。
「私が求めているのは、聖剣だ。だが道中も見ただろう。私はこれだけの宝石を発見してしまった」
 求めているものがあると、確かにそう言った。しかし冒険者とは異なる気配を感じる。√能力者とは似て非なるオーラを纏っているように見えるのだ。
「聖剣を渡せば、宝石はいくらでもやろう。だがそれまでは、この場所は私のものだ。宝石が、私を離さないのだ」
 つまり彼は、ダンジョンの力によってモンスター化してしまった冒険者なのかもしれない。それによって意識をも侵蝕されてしまったのか、はたまた混乱しているのか。騎士は武器を手に取る。
「ただの賊であるならば、私が、正義の為に……勇者の名に懸けて、ここで成敗しよう」
 彼が何を行動原理としているのか、聖剣とやらが何なのか、すべてが分からない。だが、止める事もできないらしい。宝石に魅了された騎士は、侵入者を皆殺しにせんと剣を構える。

 胸に輝く禍々しい宝石が、恐らくダンジョンを構成した遺産なのだと推測できる。であれば、この騎士がダンジョンの主である事は間違いない。
 今一度、彼を眠らせる事ができれば、遺産の封印と共にダンジョンも消滅するだろう。それで今回のミッションはクリアだ。
 煌くダンジョンでの最終決戦へ、√能力者達は身を投じる。
野分・風音
聖剣かぁ。悪いけど心当たり無いや。
剣は使えないけど、代わりに『拳』ならたっぷり味わわせてあげられるよ。
ここの宝石もどうやら良くないものっぽいし、早く戦闘を終わらせて遺産の封印しちゃわないとね!

固そうな鎧だけど、アタシの『鉄拳』はもっと固いよ!
『百錬自得拳』で攻撃、とにかく続けられる限りは攻撃を続ける!
殴ってグラップル、殴って吹き飛ばし、殴ってダッシュで近づいてまた殴る!
例え蘇生したってまた殴っちゃうよ!

絡み、アドリブ歓迎

(「折角綺麗だったのに……訳アリっていうのはなぁ」)
 訳アリなのはこの部屋の宝石だけかもしれない。けど、さっき見た大きな宝石ももしかしたら……。そう思うと少し残念かも。
 野分・風音(暴風少女・h00543)はポケットに入れていた宝石の欠片を取り出して見つめる。透明感のある輝きに怪しさは感じられない。これもまた幻想なのだろうか? あの黒い騎士を見てしまった後だと、少し疑心暗鬼になってしまうのも仕方がない。
 騎士は剣を構え、再び問う。
「聖剣を差し出せ」
 風音はすぐさま答える。
「悪いけど心当たり無いや。その代わり」
 グッと地面を踏みしめ、強気な態度を見せながら身構える。
「『|拳《けん》』ならたっぷり味わわせてあげられるよ」
「なるほど。ではその腕を貰おう」
 互いの短い会話が終わると、騎士の纏う鎧がより黒色に染まり始める。力強く剣を一振りすれば、突如発生したのは強烈な竜巻。その強風に周囲のものが吸い込まれていく。勿論、風音もその対象だ。
 どれだけ踏ん張っても吸い寄せられる風音の体。このまま足が地面から離れてしまったら為す術がないだろう。
(「……いや、違う! 足が離れなければいいんだ!」)
 風に惑わされてたまるか。これくらいに対応できなきゃ、風の能力者の名が廃る。風音は目標を定めると、自ら騎士の元へと駆け出した!
 強風に身を乗せ、その勢いを増していく風音。無謀な少女を薙ぎ払おうと騎士は剣を構えたが。
「遅いよ!」
 風音の方が一手早かった。彼女の拳が向かった先は胴体――ではなく、剣を持つ腕だった。
「なっ……!!」
 己の生み出した風と、風音の纏った風が合わさった鉄拳に貫けるものなどない。鎧と一体化した事でより強固となったはず騎士の籠手が、硝子のようにあっさりと砕かれたのである。
 一瞬にして片腕を失った騎士。しかし失ったのはそれだけではない。遠くへ飛ばされた剣は地面へ突き刺さると、まだ勢いの落ちない風音はそのまま剣のグリップを握った。
「ふんッ!」
 剣を掴んだ反動でぐるりと方向転換し、再び騎士の方へ飛び込む! 今度は背中へ拳を一発。ほんの数秒で起きた連続攻撃に、流石の騎士も避ける事はできない。
「まだまだ! アタシの|百錬自得拳《エアガイツ・コンビネーション》はまだ止まらないよ!」
 遠くへ吹き飛ばされた騎士に、まだ追い打ちを試みる風音。一蹴りのダッシュで騎士へ急接近し、再び拳を一発! ヒビの入った鎧を打ち砕くには十分な力をお見舞いしてやった。
 ボロボロに砕けた騎士だったが、自身にかけた√能力によってすぐ復活してしまうだろう。それでも風音は強気に笑う。
「何度蘇生したって、また殴っちゃえばいいもんね!」
 相手の技をも活用し、戦場を制する者。自慢の『鉄拳』がある限り、彼女の心に『敗北』や『諦め』などといった言葉は現れないだろう。
 拳の中でひっそり輝く宝石の欠片も、手助けしてくれているように感じた。
🔵​🔵​🔴​ 成功

竜雅・兎羽
連携・アドリブ歓迎

聖剣、ですか…存じ上げませんね
見つけて差し上げられれば良かったのですが。
相手が勇者さんでも、私たちもこのダンジョンを何とかするために来たのです。
こうなっては戦うしか道はなさそうですね。

私の主な攻撃手段は歌です。
【ライブモード】を使用して攻撃回数と移動速度を上げて挑みます
相手に攻撃される前になるべくやってしまおう、という作戦です。
『この歌声の届く限り♪』
竜兎も手伝ってくれるでしょうが、今回は私がメインで頑張らないと…

この攻撃、受けるダメージも上がりますがそこは覚悟のうえで頑張ります。
冒険ですもの、痛いときもあります
それでも戦い抜いてこそ、冒険者なのだと。
後でゆっくり治しましょう

 このダンジョンでは聖剣らしきものなど見当たらなかったし、町でもそのような情報は聞いていない。もしそれがあれば、彼は堕落などせず真っ当な勇者として生きていたのだろうか?
 それも今となっては分からない。だから相手が本当に勇者であったとしても、こちらも退く訳にはいかない。
「あなたも救う事ができれば良かったのですが……仕方ありません」
 √能力者として、冒険者として。戦いを避けられない|運命《さだめ》を受け入れる竜雅・兎羽(歌うたいの桃色兎・h00514)。竜兎も翼を逆立て威嚇する。
「あなたに捧げましょう。――この歌声の届く限り♪」
 腕を広げ、兎羽は静かに歌い始める。彼女の全身をピンク色の輝きが包み込み、それは徐々に周囲へ広がっていく。
「悪いが、遊びに付き合っている暇はない」
 騎士は自身を悪しき覇気で包み込む。鎧と一体化し強固となった騎士は、その重々しい足で一歩、また一歩と地面を踏み込む。
「邪魔だ」
 腕を突き出すと、突如激しい突風が部屋中に吹き荒れた。兎羽は騎士の方へ全身を引き寄せられそうになるが、
「これくらいの、アクシデントで……ライブは中止になりません!」
 それでも尚、彼女は必死で堪えながら歌を続けた。高らかに、伸びやかに、ここにいる者達の為に歌い続けた。
 くだらん、と騎士は思った。さっさと茶番を終わらせる為、剣を掲げて兎羽へ急接近を仕掛ける!

 しかし、騎士は剣を振り下ろせなかった。腕が、足が、体が、動かないのだ。
「なん、だ……これは……っ!」
 まるで麻痺をしたかのように指示を聞こうとしない。困惑する騎士だったが、原因は兎羽である事をすぐに悟る。
 彼女の声は空間中に反響していた。気付けばピンク色の輝きは辺り一面を埋め尽くしており、壁に埋まる無数の宝石は、まるで満員となったライブ会場のペンライトだ。
「――♪」
 応援されているような気分になった彼女は、その歌声をどんどんと大きくしていく。騎士の鎧は、その歌に聴き入っているのだ。
「馬鹿な、そんな」
 あり得ない。宝石も鎧も、命を持たないものが歌を理解するはずなど。……まさか動けないのは、今の自分は|鎧そのもの《・・・・・》だからか?
「どうでしょうか? これが私の歌です♪」
 たとえ怪我をしても、どんな状況でも、歌を披露してみせると。それが冒険者であり、レゾナンスディーヴァの|力《意地》であると。
「何度でも歌ってみせましょう。あなたが満足するその時まで……♪」
 硬直していた騎士の鎧にヒビが入る。兎羽が最後のフレーズを紡ぎ、ゆっくりとお辞儀をした直後、騎士の鎧はボロボロと砂のように崩れていった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

パトリシア・ドラゴン・ルーラー(サポート)
余はドラゴンプロトコルの高い身体能力を活かした白兵戦闘と、炎を操ることを得意としている。

闘争を好む気質ゆえに敵との戦闘が発生するシナリオには好んで参加するぞ。
余は己の実力に絶大なる自信があるために策を弄したり、虚言で欺いたりということは好まぬ。
いかなる敵が相手でも正正堂堂、正面から打ち破るのみだ。

√能力の演出は御任せしよう。
得意な技能は、攻撃には〈怪力〉〈焼却〉〈爆破〉を活用する。
敵の攻撃に対しては回避するというよりは〈鉄壁〉や各種耐性技能による圧倒的な防御力やタフネスで耐え抜くという感じだな。

それ以外については基本的には御任せしよう。
よろしく頼むぞ。

「勇者とはまた大きく出たものだ」
 パトリシア・ドラゴン・ルーラー(竜帝・h00230)は嗤ってやった。今一度己の姿を見るがいい、と赤い瞳を細めて騎士を見やる。
「宝石も聖剣とやらも、貴様には似合わぬ。酔い痴れるのも程々が良いぞ」
「ほざけ」
 剣を握り締める力がより強まると同時に、騎士が纏う闇のオーラが増幅する。悪しき√能力の高まりをピリピリと感じるが、パトリシアは微動だにしない。
 騎士の鎧がより漆黒色に染まる。鎧と一体化した騎士は重々しく地面を踏みしめながら、パトリシアの方へ歩み寄る。彼女はただただ相手を待ち続けた。
 『竜帝』を名乗る彼女の目前で、騎士が片膝を着いて忠誠を誓う。もしそのような光景が後に続いたのならば、なんと勇ましく神話のようだっただろうか。
 しかし現実では、双方に在るのは純粋な『殺意』と『闘争』だけだ。
「はぁッ!!」
 徐々に速足となっていった騎士がパトリシアの目前で剣を振り上げた。勿論、向かう先は竜帝の首。簡単にも刎ねてしまえそうな力強い一振りに対し、パトリシアは静かに右手を添える。
「どれ」
 パァン!! と巨大な衝撃音が部屋中に響き渡る。剣の刃がパトリシアに直撃した音だ。そう、確かに|直撃《・・》はした。だが騎士は困惑した。
「何……っ!?」
 刃は相手の首を刎ねてなどいなかった。首元を守るように添えられた右手だけで、刃を受け止められたのだ。
 それでも尚、騎士は薙ぎ払おうと力を籠めた。しかし剣は微動だにしない。腕の肉さえ裂く事ができないのだ。
 相手の焦る様子に、パトリシアは小さく溜め息を吐いた。
「なんだ、こんなものか」
 刃と自身の首元との間が広がっていく。押し戻されている現象に騎士は驚き、そして気付く。『己を纏う闇が右手に吸収されている』事を――。
「貴様、まさか……!」
「遅いな。余の炎は√能力さえ焼き尽くす!」
 黒き炎の色が変わっていく。鎧との一体化を解除された騎士に輪廻の効果はない。やがて鎧は灼熱に包まれ、焼き付く痛みに騎士は悲鳴を上げる。
「グ、グアァァッッ……!!」
「さぞ拷問であろうな。だが、その程度でしかない貴様が悪いのだ」
 剣の刃を握り締めたまま、パトリシアは再び嗤ってやった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

斑・蜘
心情>
今度は頼まれ事の本命らしいんだよ。
ちょっと新調した装備を身に着けてみて着心地テスト!!
…なんてね。ちょっと新調装備に心強くなってるけど強くなったなんて思ってないのでぷちっと逝かれない様に頑張る所存。
旅のついでの頼まれ事。宝石には興味がないけど…もし、もし小さな欠片でも持ち帰れれば思い出になったりするのかな。

>行動
(先ほどのバーゲスト達との戦闘から引き続き蜘蛛童の姿で対戦(できるかな)
墜落騎士への主火力にはなれないだろうけど気を散らしたりちくちく応戦みたいなことはできるんじゃないかな。できたらいいな。

おともだちの護霊「うさぎさん」を纏って勢いよくいくよ!
『うさぎさんきーっく!!』
ってね。

 今度は大きな身体だから、ぷちっとされる心配はない。……と思ってんだけど、今度の相手はガチガチに硬そう。ぷちっとされる可能性はやっぱりあるかも。旅のついでにやる頼まれ事にしては、わりと危険度は高そう。

 宝石を傷付けさせまいと騎士は身構えている。どうやら聖剣を持っていない相手だと認識したようだ。
(「まぁ、蜘蛛だし。実際そんなもの知らないし」)
 さてどうしようか、と斑・蜘(旅する蜘蛛・h01447)も騎士の様子を窺う。せめて一発くらいぎゃふんと言わせてから帰りたいものだ。
「虫けらは失せていろ」
 先に動いたのは騎士。突然出現させた禍々しい炎の弾をひとつ、蜘へ向けて発射させた。
(「確かに燃えたらまずいかも」)
 針から出した蜘蛛の糸をボール状に絡め、それを炎の弾へ咄嗟に投げ付ける。その場で激しく燃え上がり見事相殺に成功したが、攻撃がそれだけで終わるはずがなく、新たな炎の弾が次へ次へと襲い掛かってくる。
 蜘も負けじと蜘蛛の糸を投げ付けながら壁へ、天井へと縦横無尽に駆け回った。その素早さに炎の弾は目標に追い付く事もできず、更にはあちこち散りばめられた蜘蛛の糸によって騎士の視界をも欺く事ができたようだ。
 小癪な、と騎士は炎の弾を生み続ける。その様子を駆け回りながら見ていた蜘は、とある事に気付く。
(「ん? あの人、あそこから動いたっけ?」)
 自分は頑張って動いてたけど、そういえば相手が移動する所とか、見た記憶がない気がする。そして炎の弾も一定のタイミングで生成しているように見える……かも?
(「動かないなら、よし、じゃあそろそろ!」)
 ぐるん、と天井から地上へと降り立つ蜘。そして呼び出したのは護霊の『おともだち』!
「うさぎさん!」
 何処からともなく、名前を呼ばれたうさぎさんが現れた。そのまま勢いよく蜘へ飛び込みぶつかる! ように見えたが、その姿は蜃気楼のようにゆらりと揺らぎ、蜘の全身を包み込んでいく。やがては蜘蛛の姿から兎の姿へ――はしなかったが、兎の姿のオーラをその身に宿した。
「どろん! なんてね」
 護霊であるうさぎさんの力を借りた蜘が駆け始めた瞬間、その場に残像を残して姿を消してしまった。高速、いや、音速を手に入れてしまったかもしれない彼女に、炎の弾も追えるはずがなく。
「何ッ!?」
 完全に相手を見失った騎士が動揺する。その一瞬の間にも蜘は騎士の背後を陣取ってみせた。なんだ、チョロい!
「今だね、うさぎさんきーっく!!」
 勢いを乗せた高威力の跳び蹴りが騎士の背中を襲う。炎の弾を操る事に集中していた騎士は無防備も同然。炎の弾は消え去り、鋼鉄であるはずの騎士の鎧はバラバラに砕けた。遠くへ吹き飛ばしてやった騎士に、蜘もご満悦そうだ。
(「さすがうさぎさんだ!」)
 おともだちに感謝をしつつ、その記念に宝石を持ち帰ろうと決心したのであった。勿論選ぶのは大きな宝石なんかじゃない。いつもの蜘蛛の姿でも持ち帰れる、小さな小さな欠片だ。

 ――宝石は別に興味ない。ボクの欲しいお宝は、その宝石を見て感じ取れる|旅の記録《思い出》だから。
🔵​🔵​🔴​ 成功

夏之目・孝則
ここは√ドラゴンファンタジーですかね。友人から話は伺っていましたが、ダンジョンというものが数多と現れるのですよね。
(為うち、皆さんに合流)

少し来るのが遅くなりましたが、かろうじて間に合ったようですね。此方の√能力者は皆強者に見えますので、某が手伝うまでも無いかもしれませんが。
既に敵に隙を作ってくださっているので、某は√能力【柳緑花紅】を使用します。
幾ばくの余力が騎士にあるか測れません。多くの呪力を纏った飛翔する栞を用意しましょう。
然し様子を見つつ戦いたい。一斉発射はせず、其れ等の栞と共に探偵刀を手に騎士に向かいます。
栞と刀の切り込みで絶え間なく攻撃。栞は余力を残せるよう必要時一枚ずつ使います。

 これが√ドラゴンファンタジーの至る場所に出没すると言われているダンジョン。その中でもここは宝石をメインとした場所だったらしい。
「宝石が人を狂わすという話はよく聞きますが、当事者を目の当たりにするのは初めてかもしれません」
 宝石まみれの大部屋に佇む堕ちた騎士。夏之目・孝則(夏之目書店 店主・h01404)はその様子をまじまじと眺めた。これほどまでに|幻想的《ファンタジー》な光景が見られると、√能力者になったのも悪くないなと改めて感じられる。
 勿論、危険を冒してまで観光をしに来た訳ではないし、相手もそれを快く思わないだろう。
「では、仕事を終わらせましょうか」
 孝則は鞘から刀を引き抜く。騎士は既に体力を削られている。であれば、今こそその好機を力に変える時だ。
「馬鹿な……俺は勇者だ。賊共に押し負けるなど認めん」
「その『勇者』という驕りによって、ダンジョンに閉じ込められてしまったのかもしれませんね」
 さて、真実を知る日は来るのやら。どうやらこの騎士は他のダンジョンでも出現するらしく、ここで理由を述べたとしても、彼が本物である証拠を掴み取る事はできないのだ。きっと別のダンジョンでは、違う勇者を名乗るに違いない。
「聖剣さえ、聖剣さえあれば……!!」
 憤る騎士が最後の√能力を発動する。今までこの身に受けてきた√能力者達の技を集結させ、創り出したのは偽りの聖剣。禍々しい姿となった聖剣はひとりでに動き出し、孝則へ向かって真っ直ぐに突っ込んできた。
「おっと、ではこちらも」
 それでも冷静さを失わない孝則。本屋の店主とは思えない手慣れた様子で刀を操り、聖剣を弾きながら素早く避けてみせる。
「柳は緑、花は紅、そのほかに何の奇があると云います」
 彼の囁きと共に、色とりどりの栞が周囲に舞う。呪力を纏った栞は一枚、また一枚と飛翔し、聖剣を惑わしていく。
「聖剣だからと言って万能であるとは限りません。それすらも忘れてしまったというのであれば、仕方ありませんが」
 栞に動きを封じられた事を確認できれば、あとは騎士へ近付くのみ。孝則は一気に騎士の元へと接近する。
 騎士は自身の持つ剣を大きく振るい、それを孝則の刀が受け止める。鍔迫り合いだ。力だけで言えば騎士の方が圧倒的に上だ。ガチガチと鳴る刃同士に、決着がつくのはそう長くはないだろう。

 だが無計画に飛び込む訳ほど孝則も愚かではない。押し返されそのまま吹き飛ばされそうになったが、その直前、騎士の動きは突然停止した。
「どうぞ、静かにおやすみなさい」
 騎士の鎧の隙間から、するりと入っていった一枚の栞。鎧の中では一体何が起きたのだろうか。騎士は力を失くし、からんと剣を地面に落とす。鎧の中から呪詛の炎が噴き出し、とうとう騎士は倒れたのだった。
 孝則は刀を握り直し、がちゃりと、鎧についていた宝石を砕く。
「……これで終わりでしょうか。その栞はあげましょう。某の土産です」
 来世があるなら、その時に使って下さい。と、彼は最後に言葉を綴った。

 これで遺産は封印できた。宝石が潜むダンジョンはゆっくりと姿を消していくだろう。近隣の町の危機も取り除く事ができて一安心だ。
 硝子のように輝く宝石達に見送られながら、為すべき事を終えられた√能力者達は帰路につくのだった。
 とはいえ、あくまでこれは始まりの物語のひとつ。彼らはこれからもきっと、様々な冒険を体験していくのだろう。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

挿絵申請あり!

挿絵申請がありました! 承認/却下を選んでください。

挿絵イラスト