シナリオ

一目見たいと思ったから

#√妖怪百鬼夜行 #√EDEN

タグの編集

作者のみ追加・削除できます(🔒️公式タグは不可)。

 #√妖怪百鬼夜行
 #√EDEN

※あなたはタグを編集できません。

 その生き物は深緑色の見事な毛並みをしていた。大きな黒い瞳、千里を駆けるようなしなやかな体。大きさは小さな猫くらい、猫と言うには少しコロンとしているが、4本脚で立ってこちらを見ている。
「ホウッ」
 その生き物が一声発した。その後身振り手振りで何かを伝えようとしている、どうやら知性はあるらしい。川原達明は困っていた、会社からの帰り道、家に着くまであと10分と言ったところ、早く帰らなければ妻と娘に怒られるからだ。娘に仕事がんばりすぎないでね、と寂しそうな顔で言われたことを思い出す。
「まいったな。おまえ、いったい、何の用なんだ? 僕も忙しいんだよ」
 その生き物に声をかけたが返事は「ホウ」だけ。初めて見るはずなのに、どうにも気になる生き物だった。その目を憶えていると言うか……。
「ホウって名前なのか?」
 なんとはなしに声をかける。生き物は嬉しそうに「ホウ!」と言うと地面に『たつあき』と書いた。その後また必死に身振りで何かを伝える。達明にはそれが何かわかるような気がした。
「敵が、来るから、逃げて? 敵ってなんだ?」
 達明がそこまで理解した時、あたりにざわついた気配が立ちこめる。
「見つけたヨ」
「こいつらなノ」
「殺すかネ」
「ダメ、ダメ、連れて行ク」
 笠を被った一団が2人を取り囲む。
「ホウ!」
 ホウは達明を庇うように前に出ると一声吠えた。

「古妖の出現を予知しました」
 木原元宏(歩みを止めぬ者・h01188)は集まった√能力者達に向かって話す。
「かつて√EDENに現れ封印された古妖が復活し、封印した者に恨みを晴らすために再び√EDENに現れます。みなさんには古妖の再封印をお願いします」
 そう言って元宏は2枚の画像を画面に映す。30代くらいの男性と深緑色のもふもふした体毛の小さな妖怪だ。
「この2人、1人と1匹でもいいかもしれないですが、が古妖を封じた者です。今から20年ほど前、東京近郊の街に現れた古妖を苦闘の末に√妖怪百鬼夜行に追い返し、封印したそうです。男性の方は川原達明さん。今は結婚して妻と娘が一人いるらしいです。妖怪の方はホウさん。言葉はしゃべれないものの知性は人間並みにあります。達明さんは当時√能力者だったそうですが、古妖を封印した時に欠落を取り戻して現在は一般人です。ですので達明さんには当時の記憶はありません。まずは古妖の手下に襲われている2人を助けて下さい」
 少しだけ寂しそうな顔をして元宏は続ける。
「ホウさんは達明さんにまた会えることを喜んでいるとともに、忘れられてしまったことを仕方ないと思いながら悲しんでいるようです。すいません。事件の解決とは関係のないことを言ってしまいました」
 気を取り直して元宏は話す。
「2人を助けた後は、追ってくる古妖を撒きながら√妖怪百鬼夜行の封印の祠へ向かって下さい。ホウさんと達明さんがいれば執念深い古妖は後を追ってくるはずです。祠にたどり着いた後、2人を守りながら古妖を倒すことが出来れば最善です。みなさん、よろしくお願いします」
 元宏は深々と頭を下げてお願いした。

マスターより

九野誠司
 九野誠司(くの・せいじ)と申します。よろしくお願いします。

 √妖怪百鬼夜行に古妖が現れました。みなさまには古妖の再封印をお願いします。
 それと、1人と1匹を守ってあげて下さい。

 プレイングの受付は「プレイング受付中」のタグでお知らせします。みなさまらしいプレイングを是非送っていただけますと幸いです。
 それではよろしくお願いします。
56

閉じる

マスターより・プレイング・フラグメントの詳細・成功度を閉じて「読み物モード」にします。
よろしいですか?

第1章 集団戦 『カラクリコガサ』


POW 鬼唐傘
自身の【右目】を【真紅】に輝く【鬼目へ、石づき(足)を決戦モード】に変形させ、攻撃回数と移動速度を4倍、受けるダメージを2倍にする。この効果は最低でも60秒続く。
SPD 唐傘茸
【傘】から【青白い毒の粒子】を放ち、命中した敵に微弱ダメージを与える。ただし、命中した敵の耐久力が3割以下の場合、敵は【錯乱or痙攣or昏睡】して死亡する。
WIZ 破唐傘
自身のレベルに等しい「価値」を持つ【古鈴】を創造する。これの所有者は全ての技能が価値レベル上昇するが、技能を使う度に13%の確率で[古鈴]が消滅し、【酸性雨】によるダメージを受ける。
イラスト 芋園缶
√妖怪百鬼夜行 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

江田島・大和
共闘、アドリブ〇

護衛任務でありますか。昔やったことが無いわけではないけど、ひとまず

切り込みで川原殿とホウ殿の前に入り込んで、手下たちの攻撃から庇うでありますよ。
こっちは多少傷ついたところで問題はなし、その間に空雨達を展開させて手下たちを攻撃するであります。

ひとまずは倒さなくていい、2人を連れて距離を稼ぐのが目的でありますよ。

手下たちの攻撃は我輩が引き受けるであります、これでも頑丈だしね。

奥さんと娘さんが待ってるなら、早く帰らないとね。

「助太刀に入るであります!」
 そう言うとカラクリコガサの眼前に飛び出したのは江田島・大和(探偵という名の何でも屋・h01303)だった。丈夫なことを自負している大和は達明とホウを庇うために2人と敵の間に立った。リン、と鈴の音が響くとカラクリコガサ達が大和に殺到する。カラクリコガサ達が整然と並んで傘を突き出すと大和は敢えて全身で受けて敵の体勢を崩す。バランスを崩したカラクリコガサの後ろからやって来た別の個体がぶつかってもみ合った。大和が達明達に声をかける。
「手下たちの攻撃は我輩が引き受けるであります、これでも頑丈だしね」
「どなたか知りませんが助かりました。って、どこに行くんだおまえ!?」
 一目散に走り出したホウについて行く達明、これでしばらくは時間を稼げる。空雨達を展開する大和。倒れた仲間を踏みつけながら殺到するカラクリコガサ。
「行かせないであります」
 大和の号令でレーザーを照射する空雨。脚を撃ち抜かれて倒れるカラクリコガサ。倒れた仲間が邪魔をして動きが鈍るカラクリコガサ達。その隙に大和は達明達に追いついた。
「奥さんと娘さんが待ってるなら、早く帰らないとね」
 そう言われて、頭を悩ませる達明。
「僕もそう思っていたのですけどね。こいつ、ホウって言うらしいんですけど、ホウを助けてあげないといけない気がしていて。そうは言っても僕はあんな化け物を見たことがないし、どうしていいものか。出来ればあなたにも助けていただきたいのですが」
 迷いながら言う達明だがその目には強い決意が見て取れた。思い出したわけじゃなくても心に響くものがあるらしかった。
「ホウゥ」
 ホウが一声鳴く。困ったな、でも嬉しいよ、そう言っている気がした。
🔵​🔵​🔴​ 成功

緇・カナト
お、イイよな情の深いイヌ
…いや見た目的にはネコの方か?
まぁ妖怪だろうし何方でもいいか
どれ程の刻を経ようとも
護りたいモノの為に懸命な姿は
それだけでもうつくしい
互いに守りたい想いや其の先のため
傘ヤロウ退治に助太刀するぜ

まぁキノコの群れみたいにうじゃうじゃと
満員電車だったらカサ畳んでおけよなァ
配下共の数多い方が的にし易くもあるんだが
一般人と妖怪一匹を背後なり庇う為に
遠距離用の精霊銃を構えて
効率よく数多くを始末するのに
爆発も交えた雷属性の弾丸を射出しようか
味方にも【帯電】による戦闘力強化を振舞い
先に進むための邪魔者たちは
速やかに片付けてしまうに限るなァ

「お、イイよな情の深いイヌ。…いや見た目的にはネコの方か? まぁ妖怪だろうし何方でもいいか」
 ホウを見た緇・カナト(hellhound・h02325)はそう呟く。どちらなのだろう? 妖怪のことだ、たぶんどちらでもないし、もしかしたらどちらでもあるのかもしれない。誰かの心の中にいたものなのかもしれない。それはそうと助太刀に来たのだった。カナトは見晴らしのいいビルの屋上に陣取ると遠距離用の精霊銃「Ace」を構える。
「まぁキノコの群れみたいにうじゃうじゃと、満員電車だったらカサ畳んでおけよなァ」
 まったく面倒なことだ。カラクリコガサの一体に照準を合わせて引き金を引くと、カラクリコガサは稲妻に撃たれたようにビリビリと震えて倒れた。爆風でまわりのカラクリコガサも吹き飛ばされてビルの壁に叩きつけられる。
「どれ程の刻を経ようとも、護りたいモノの為に懸命な姿はそれだけでもうつくしい。互いに守りたい想いや其の先のため、傘ヤロウ退治に助太刀するぜ」
 カナトはビルの間を走る達明とホウに言う。1人と1匹はカナトを見上げ、頷くと走り出した。【帯電】による戦闘力強化のため、足取りは殺気よりも力強く見える。
「さて、もう一仕事するか。邪魔者たちは速やかに片付けてしまうに限るなァ」
 ホウの行く先を邪魔しそうなカラクリコガサから順番に撃ち抜き、ルートを確実に確保していく。おあつらえ向きのきれいな月の夜だった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

烏有・蘭
川原さん達の前に現れ、ホウにどっち向かうか問いかける
とりあえずその子と一緒に避難してください
貴方に逃げて、言うてるんやし誘導してくれると思います 
(ホウにそっと囁く)また会えたのは嬉しいし、忘れられとんのは悲しいし。どっちもホンマの気持ちやなぁ
……どっちも生きとるなら、またここから積み重ねられる
これから、があるんよ
大丈夫、奴らは私らが倒す。任せてーな先輩
 
さて、邪魔なもんはさぱーっと片付けよか
握りしめた木べらを櫂のような大きさに変化させて構える
追いかけようとする相手を優先して攻撃
小学校の時に習った剣道の要領で突き払い、時折木べらで持ち上げて敵に投げつけたりもする

 こんばんはと言う声がした。達明が声のする方を見ると人の良さそうな優しい笑顔の女性が立っている。
「とりあえずその子と一緒に避難してください。貴方に逃げて、言うてるんやし誘導してくれると思います」
 その女性、烏有・蘭(人間(√EDEN)の載霊禍祓士・h01998)はしゃがみ込んでホウに目線を合わせる。
「また会えたのは嬉しいし、忘れられとんのは悲しいし。どっちもホンマの気持ちやなぁ。……どっちも生きとるなら、またここから積み重ねられる。これから、があるんよ」
 噛みしめるように蘭はささやく。立ち上がって大丈夫、と言うと手に持った木べらを巨大化させる。まるで櫂のような大きさになった木べらを構えて達明達が来た方を向く。カラクリコガサ達がやってくる気配がしたからだ。
「大丈夫、奴らは私らが倒す。任せてーな先輩」
 達明とホウに振り返り、笑顔で蘭が言った。
「先輩?」
 達明は少し悩んだ顔で言う。何かモヤモヤとした感じがある。どこかに隙間があると言うか、忘れている気がする。頭を振って蘭に答えた。
「こっちは僕の仕事のようですね。ここはお任せしました。よろしくお願いします」
 達明は駆け出すホウを追いかけて行った。
「それでいいんよ」
 蘭はカラクリコガサに向き直った。達明達を追いかけようとするカラクリコガサを剣道の要領で払うと木べらに打たれたカラクリコガサが道ばたに転がる。我先にと殺到するカラクリコガサを突き、倒れたカラクリコガサを木べらで掬って敵に投げつける。投げつけられたカラクリコガサに当たって数体が倒れる。
「さて、邪魔なもんはさぱーっと片付けよか」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

伏見・那奈璃
向かった先で二人の前に姿を現せば
「いきなりですみませんが、お二方とも此処は任せて行ってください。」
そう言葉をかけ、続けてホウの方に瞳を向けると
「貴方はどこに向かうか解ってますよね、案内をお願いします。」
後は任せて、と言わんばかりに彼らを背に手下達の前に立ちはだかる。
「さぁ折角の再会なのです、邪魔するなど無粋な事をするんじゃありませんよ」
そう言うが否や「九尾妖力術」を使い手下達を薙ぎ払う。
集団戦に向いたこの術で効果的に数を減らす考えである。全部は無理かも知れないが二人が場を離れる時間には十分成るはず。他の能力者も来ている、全てを殲滅する必要は無い。ある程度手下達を倒したら二人の後を追っていく

「いきなりですみませんが、お二方とも此処は任せて行ってください。」
 そう言って現れたのは伏見・那奈璃(九尾狐の巫女さん霊剣士。・h01501)だった。長い銀髪が揺れている。
「君は、いや、君達はどうして僕達を助けてくれるんだ?」
 達明は那奈璃に聞く。理由がわかれば何かを思い出すことができるかもしれない。
「私達はこうして人知れず戦っているんです。あなたもかつてそうだったと聞いています。今は忘れてしまっているだけで」
「どうして、そんなに大事なことを忘れてしまったんだ、僕は」
 困ったように達明は言う。この小さな生き物のこともきっと憶えていたのでは無いか、そんな顔をしている。
「戦えるものだけが憶えていられるのです」
 那奈璃はそう言うとホウを見る。
「貴方はどこに向かうか解ってますよね、案内をお願いします」
「ホウ」
 いい子ですね、と言うとホウはまたどこかへと駆け出す。それについて行く達明。カラクリコガサを足止めするためにその場に残る那奈璃。
「さぁ折角の再会なのです、邪魔するなど無粋な事をするんじゃありませんよ」
 迫ってくるカラクリコガサを【九尾妖力術】でなぎ払う。じりじりと間合いを計るカラクリコガサ達。那奈璃がハッと手を振るとカラクリコガサ達に動揺が走る。その隙にホウと達明を追いかける那奈璃。列をなしてやってくるカラクリコガサ達を時折なぎ払いながら、那奈璃は2人の元へ走って行った。
🔵​🔵​🔴​ 成功

氷志・ライラ
ふむ。ホウ殿というのか。随分と愛らしい妖怪だな。
なに、忘れられたことをそう哀しむことはない。ホウ殿が憶えていれば、ふたりの間の思い出は消えない。
それに、何かを失うことによって何かを得る例もある。たとえばホウ殿の大切な川原殿が、愛する家族を得たように。それはきっと、ホウ殿にとっても良いことだろう?

さて。我が氷の令嬢に出張ってもらおうか。
レディ・グラキエス、美しき礼節を。
彼女達は有能でね、氷ゆえの反射で視覚を奪い、ブリザードを起こし、幾つもの鋭い氷柱を飛ばして敵を貫く。あくまでも礼を欠くことのない美しい所作で。
折角だ、何体でも生成しよう。ふたりが無事この場を逃れるまで。

 あと少しで逃げ切れるというところだった。そこの路地を越えればたぶん一安心だ。街の構造を知っている達明はそう確信していた。突然カラクリコガサが空中から降ってくるまでは。ここはもう住宅地だ、民家の屋根伝いに追いかけてきたカラクリコガサが横合いから飛び出すとホウと達明は一瞬で囲まれてしまった。
「おまえだけでも逃げろ」
 そう達明が言ってもホウは動こうとしない。今度は守るのは自分の番だ、とでも言いたげな雰囲気だった。2人が覚悟を決め用としたその時、冷気がその場を満たした。氷志・ライラ(世界氷結の伽・h05308)が作り出した【氷の令嬢】達だった。
「私はこのような無粋な真似は好きではない」
氷の令嬢が冷気を舞わせカラクリコガサを凍らせるとライラがしずしずと現れた。
「ふむ。ホウ殿というのか。随分と愛らしい妖怪だな。なに、忘れられたことをそう哀しむことはない。ホウ殿が憶えていれば、ふたりの間の思い出は消えない」
 その間にも氷の令嬢達は優雅な所作でカラクリコガサ達を倒していく。また1体、氷柱に貫かれたカラクリコガサが倒れる。諭すように、ライラは語る。
「それに、何かを失うことによって何かを得る例もある。たとえばホウ殿の大切な川原殿が、愛する家族を得たように。それはきっと、ホウ殿にとっても良いことだろう?」
「ホウ」
 ホウは一声鳴く。その通りだと言わんばかりに。願うは友の幸せ、彼が元気でいることが一番大切なことだ。そのために、またこうして√EDENに来たのだから。達明がホウのことを憶えていないことは知っていた。それでももう一度会いたかったのだ。
「行きたまえ」
 ライラはカラクリコガサ達の囲みに穴を空けるとホウと達明に促す。2人は暗がりに消え、見えなくなった。
「折角だ、何体でも生成しよう。ふたりが無事この場を逃れるまで」
 新たな氷の令嬢を作り出すと満足げにライラは言った。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 冒険 『あなたのおうちはどこですか?』


POW 捜査は足、いろんなところを回り大きな声で手がかりを探す。
SPD 捜査は速さ、記憶がぼやけないよう最速で対象の反応を見ながら動く。
WIZ 操作は効率、周囲の情報を漏らさず集めて確実に絞り込んでいく。
√EDEN 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 ホウと達明はカラクリコガサ達から逃れることができた。√能力者達の足止めと協力のおかげだ。さて、√妖怪百鬼夜行に帰ろうとするホウの足が不意に止まった。20年の歳月は街の作りを変えてしまったようだった。古妖を封じていた社に繋がる道の場所は変わっていないのに、街の方が変わっていたのだった。
「ホウゥ……」
 困った顔でホウが達明を見る。
「そんな顔で見られてもな。僕にはどうして欲しいのか
 ホウが身振りで何かを伝えようとする。それを必死で理解しようとする達明。
「思い出の場所? 今までのことを考えると確かにそうなんだろうけど、僕は憶えていないんだ、ごめん」
 ホウが笑った気がした。その顔は大丈夫と言っているようだった。きみが勇気を見つけた場所だから、きみがまだ、勇気を持っているから、その目はそう言っていた。
「もしかしたら、僕は憶えてるのかもしれない。何があったのかは忘れても、どこかだけは。でも、いつの思い出だろう」

 ホウと達明の思い出の場所、社へと続く道を探してください。1匹と1人に聞いてもいいし、付近を回って彼らの記憶にある場所か確かめても大丈夫です。なにか√能力や技能を使うのも有効でしょう。
江田島・大和
こいつが使えないかな?

達明殿になるべく昔から持っているものはないか問いかけて、そいつを借りるであります。
当人に記憶はないにしても、物の記憶まで消えてないだろうし。

「貴殿の記憶、ちょっと覗かせてもらえんでありますかね?」

帰りたいと願っているのだから、その導を。

できた弾丸は、念の為取っておこうか
伏見・那奈璃
「そうですか、思い出の場所…私達が聞いてるのはその出来事は20年ほど前の話だという事ですね。」
「全てが忘れ去られるわけでは無いはずですから、不思議な体験とか詳細は分からないけど印象に残ってると言った記憶が有るかもしれません。ホウさんの言ってることを何となく察することが出来るのも完全に忘れていないと言う事を指してると思います。」
特にこちら側の√の事はある程度覚えている可能性が高いだろうとその頃の記憶で印象に残ってる場所を思い出してもらって、その場所に行ってその周囲を探してみましょう「霊能者」として他√を視るのは得意とする所。行ったその先から√妖怪百鬼夜行を覗いて社を探してみましょう。

「そうですか、思い出の場所…私達が聞いてるのはその出来事は20年ほど前の話だという事ですね」
 伏見・那奈璃(九尾狐の巫女さん霊剣士。・h01501)は達明に答えた。
「そうなんですか、僕の子供の頃。お恥ずかしいのですが、僕はとても臆病な子供だったんです。いつもクラスメートに馬鹿にされていじけてました。一人で見たこともないところに迷い込んだって言ったら親も呆れたりしまして」
 そうですね、と那奈璃が頷く。
「ホウさんの言ってることを何となく察することが出来るのも完全に忘れていないと言う事を指してると思います。もっと不思議な体験とか詳細は分からないけど印象に残ってると言った記憶がないでしょうか?」
「川沿いの、小さな廃工場。今はもう川ごと埋め立てられてないのですが、よく度胸試しに使われていたところです。ある日僕はそこで倒れているところを見つけられたそうです。怪我をしていて、工場にあった廃材でおなかを切ったのだろうと言われました。でも、どうしてそんな怪我をしたのかは憶えてないんです」
 ゆっくりと思い出しながら話す達明、ワイシャツを捲ると、おなかにはまだ傷跡があった。ホウが途端に寂しそうな鳴き声を上げる。
「それは? ずいぶん古いもののようでありますが?」
 横で話を聞いていた江田島・大和(探偵という名の何でも屋・h01303)が達明が首から提げていた木札を見て言う。
「これは、その廃工場で倒れていた時に右手に握りしめていたものだそうです。親にはそんな汚い物のために怪我してと散々怒られましたが、どうしても捨てる気にはなれなくて。妙に気になると言うか、それで、生きていたお守り代わりに身につけているんです。少し恥ずかしいので、普段は見えないようにしていますけど」
 何か昔から持っていたものを借りよう、当人に記憶はないにしても、物の記憶まで消えてないだろうし、と考えていた大和には渡りに船だった。達明から木札を借りた大和は【追憶】を発動する。
「貴殿の記憶、ちょっと覗かせてもらえんでありますかね?」
 ゆっくりと時間が巻き戻り、蝉の鳴き声とともに夏の風景が広がる。怯える子供に口に咥えた魔除けの札を渡す緑色の小さな妖怪。子供は勇気を振り絞ると迫り来る大きな赤い獣から必死に逃げた。そして場面が切り替わる。注連縄のかかった大樹に刺さった槍を引き抜く子供、赤い獣に立ち向かう小さな妖怪。引き抜いた槍を獣に突き刺すと赤い血がどっと吹き出る。最後の抵抗をする獣が小さな妖怪をその手の爪でなぎ払おうとする。飛び出す子供。子供は獣に腹を割かれ、苦しそうな笑顔を浮かべる。
「勇気って、こうやって出すんだね。ありがとう、ホウ」
「ホウ」
 そこで記憶の再生は終わった。なるほど、と頷く大和。
「もしかしたらでありますが、達明殿の欠落は勇気であったのかもしれないでありますね」
 欠落? と達明が聞くと、大和は答える。
「それをなくすと、不思議なことを憶えてられなくなるであります」
「そうなんですか。でも、今見せてもらいました。もう忘れたくはありません」
 大和は笑顔を作った。
「そうでありますな」
 しばらく歩くと廃工場跡にたどり着いた。ここからは那奈璃の出番だ。達明の記憶に残っている場所に行き周囲を探してみるつもりだった。周囲と言っても霊能者の那奈璃なのだ、折り重なる√の一つ一つまで見ることが出来る。しばし重なる√を眺め続けると川沿いの沢に注連縄のかかった大きな木がある√を見つけた。どうやらここのようだ。
「この近くのようですね。あとはその√への入り口にたどり着くだけです」
 もう少しだ、もう少しで古妖を封印していた社にたどり着くことが出来る。そこで待っていれば赤い獣は現れるだろう。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

氷志・ライラ
もう少し、というところか。
ここまで来たら、辿り着くのはそう難しくはないのではないか?
そうだな、占いでもしてみるか。
占いは、つまるところ本人の人生という旅に寄り添い、時に導き、時に警告を発し、時に心を包み込むものだ。
川原殿、あまり緊張せずに、助言を願いながら一枚カードを引いてみてくれ。ああ、少々ひんやりとするが驚かずにな。大丈夫だ、この程度では氷らない。

ほう。引いたカードは、『Ⅹ 運命の車輪』、正位置か。
逃れられない運命のいたずら――宿命との邂逅の暗示。
「すべては繋がっていると信じて、躊躇わずに貴方の直感のままに」
川原殿、自分の直感を信じて、一歩踏み出すのだ。そこに道はある。

「もう少し、というところか。ここまで来たら、辿り着くのはそう難しくはないのではないか?」
 氷志・ライラ(世界氷結の伽・h05308)はそう達明に言った。懐からカードを一揃え取り出すと笑顔を見せる。
「そうだな、占いでもしてみるか。占いは、つまるところ本人の人生という旅に寄り添い、時に導き、時に警告を発し、時に心を包み込むものだ」
 なるほどと言う顔をして達明。
「わかる気がします。それではよろしくお願いします」
 どれを選べばいいのか、と少々硬くなっている達明にライラは言う。
「川原殿、あまり緊張せずに、助言を願いながら一枚カードを引いてみてくれ。ああ、少々ひんやりとするが驚かずにな。大丈夫だ、この程度では氷らない」
 達明が意を決してカードを引く、ホウが一声鳴いた。
「『Ⅹ 運命の車輪』、正位置か。逃れられない運命のいたずら――宿命との邂逅の暗示。すべては繋がっていると信じて、躊躇わずに貴方の直感のままに」
「勇気が出る結果ですね。氷志さん、ありがとうございます。この先、敵との戦いになるなら、僕は役に立てないでしょう。あなた方のように戦うことは僕には出来ない。ホウもたぶん、そうでしょう。やさしい小さな友達だと思いますから。僕らは敵をこの先に導くのが役目なのでしょう」
 達明はホウの頭を軽く撫でる。ホウは気持ちよさそうにホウゥ、と鳴いた。すると空間の一点がゆっくりと揺らぎはじめた。その奥に大きな木と注連縄が見える。
「川原殿、自分の直感を信じて、一歩踏み出すのだ。そこに道はある」
「わかっています。氷志さん、あなた方のおかげで大切なことを思い出すことが出来ました。道は開きます。後は頼みますよ」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

第3章 ボス戦 『暴妖「赤鬼熊」』


POW 狂瀾怒濤の|魔顎《アギト》
【突進】による牽制、【のしかかり】による捕縛、【かみつき】による強撃の連続攻撃を与える。
SPD 疾風怒濤の|魔爪《クロー》
【鬼熊の殺気】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【破心魔爪】」が使用可能になる。
WIZ 蹂躙怒涛の|鳴動《ロアー》
【極大の咆哮】を放ち、半径レベルm内の指定した全対象にのみ、最大で震度7相当の震動を与え続ける(生物、非生物問わず/震度は対象ごとに変更可能)。
イラスト 十姉妹
√妖怪百鬼夜行 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 達明とホウは√能力者達の協力のおかげで、古妖、 『暴妖「赤鬼熊」』が封じられていた大木の元にたどり着くことができた。しばらく待つと地面を揺らすような大きな鳴き声とともに、赤鬼熊が現れた。目は血走り、恨みを晴らす気は満々のようだ。勇気を振り絞り、達明が威嚇するように大きく手を振ると、赤鬼熊は怒りを滾らせて近づいてくる。
「みなさん、頼みましたよ」
 と、達明は言った。1人と1匹を守ることが出来るのも、赤鬼熊を倒すことが出来るのも√能力者達だけ。最後の戦いが始まろうとしていた。
嘯祇・笙呼
ああん!? |殺《や》ったるわコラ?
適者生存、適者生存だ。|昔の偉い人《ダーウィン》だってそう言うさ。
早速√能力のチャージに入る。
フェイントに弓を用いた牽制射撃しつつ、見切り+鉄壁+吹き飛び耐性+いくつか適当な技能で守備力を高め、敵による攻撃時に力溜めを実行。
作戦の齟齬を防ぐ意味でも随時戦闘知識による修正を行ない、常に最適解の選択を試みる。
√能力は怪力+鎧無視攻撃+いくつか適当な技能を付与したうえで発動。そうだな、敵の攻撃の挙動を見切り、最適なタイミングでカウンターとして発動するのがいいだろう。
クックックッ体中に凄え魔力が駆け回ってるみてーだぜ…ま~るで負けるって気がしねぇ!
こっち見んな化物。
伏見・那奈璃
「承知いたしました、お任せください。必ずや私達でお守り致します。」
達明の言葉に応えるようにそう言うと、赤鬼熊の前に立ち塞がります。
「怒り狂った獣に言葉は不要ですね…参ります。」
相手は獣でも古妖と言う事で、初手から「神霊麒麟・雷光閃」を使い全力で行きます。
二人を守る事も念頭に置かねばならないので出来るだけ二人から距離が取れるように立ち回ります。
また、他の√能力者達の動きに合わせて、「霊能波」も使い。出来るだけフォローが出来るように行動します。
「さぁ、二人の邪魔です、疾く逝ってくださいませ」
そう言うと、その日最速の雷光閃を打ち込む。

闘い終われば二人を離れて見守っておきましょう、達明の記憶はまた失われることとなるのだろうが、せめて大切な友が居たという事実だけは心のどこかに残って欲しいと祈りながら。
氷志・ライラ
あー、そこの赤いクマさん。
人間災厄たる私が言うのも何だが、あまり周囲に迷惑をかけないことだ。
人間と共存するのも悪くないぞ。この世界はなかなかに興味深い。
そんなに眼を血走らせて怒ってみても、良いことはないと思うのだが……。

納得できんか? それならまあ仕方ないな。
川原殿達の安全を確認した上で、ではゆくぞ。
――乱れ舞え、我が眷属。
ブリザード。
暴妖を覆う猛吹雪の中、乱れ舞う氷雪に同化して素早く接近し、手にした氷槍の一撃を。
確かおぬし、以前も槍に貫かれたのだったろう?
思い出せ。恣に暴れれば封じられるしかない運命を。

うん? クマさんの咆哮?
たぶん私の周囲の「歪み」に呑み込まれるだろうな。

「承知いたしました、お任せください。必ずや私達でお守り致します」
 凜とした声で、伏見・那奈璃(九尾狐の巫女さん霊剣士。・h01501)が達明に言う。そのまま赤鬼熊の前に進み出ると【神霊・麒麟】を纏って一気に距離を詰める。
「怒り狂った獣に言葉は不要ですね…参ります」
 赤鬼熊は迫ってくる那奈璃を不機嫌そうに一瞥すると叫び声を上げる。
「オォォォッッッ!」
 大きく伸び上がり右腕を振り上げ、那奈璃をズタズタにしようと爪を突き立てるが加速した那奈璃が懐に飛び込む。
「神霊麒麟・雷光閃」
 低い位置から伸び上がるように振るわれた霊剣が赤鬼熊の胴をなぎ払った。赤い血が噴き出し、赤鬼熊は怒りの声を上げる。反撃しようと向き直る赤鬼熊にいくつもの矢が突き刺さった。
「ああん!? 殺やったるわコラ? 適者生存、適者生存だ。ダーウィンだってそう言うさ!」
  嘯祇・笙呼(人間(√マスクド・ヒーロー)のマスクド・ヒーロー・h01511)が啖呵を切った。憎々しげにそちらを睨み付ける赤鬼熊。ほらほら、来いよ、と挑発する笙呼は距離を取ったまま√能力のチャージに入る。赤鬼熊が近づこうとする度に弓矢で牽制する笙呼。赤鬼熊はいらいらを募らせながら笙呼を睨んだ。
「こっち見んな化物」
「ガァァァ!!」
 突進する赤鬼熊の横でボンっと言う音がした。那奈璃が霊能波で足下の石を砕いた音だ。足場を失って転がる赤鬼熊。そこに氷の槍が突き刺さる。背中から吹き出た血液が一瞬で凍る。
「あー、そこの赤いクマさん。人間災厄たる私が言うのも何だが、あまり周囲に迷惑をかけないことだ。人間と共存するのも悪くないぞ。この世界はなかなかに興味深い。そんなに眼を血走らせて怒ってみても、良いことはないと思うのだが……」
 攻撃したのは成り行きだ。悪く思うなと氷志・ライラ(世界氷結の伽・h05308)は悪びれもせずに言った。
「確かおぬし、以前も槍に貫かれたのだったろう? 思い出せ。恣に暴れれば封じられるしかない運命を」
 諭すようにライラは言ったが、いやなことを思い出さされ、気持ちを逆なでされた赤鬼熊はなおのこと怒り狂っただけだった。殺気を纏わせ、一気に距離を詰めてくる赤鬼熊にライラは言った。
「納得できんか? それならまあ仕方ないな」
 赤鬼熊の怒りがライラだけに集中するその瞬間、にやりと笑った者がいた。笙呼だった。いつの間にかライラと赤鬼熊の間に立っていた笙呼は黒い喜びを隠さしてはなかった。
「クックックッ体中に凄え魔力が駆け回ってるみてーだぜ…ま~るで負けるって気がしねぇ!」
 飛び込んでくる赤鬼熊に狙いを定め、タイミングを見計らう。敵の力も使い、威力が最高になる瞬間、自分に爪が突き刺さる寸前を。
「ほらよ!」
 【肢体爆弾】。強烈な爆発が赤鬼熊の目の前で起こった。一瞬の沈黙のあと響き渡る爆殺音。赤鬼熊の腹がズタズタに切れ、焦げた匂いがする。笙呼は目を輝かせて不敵に笑った。赤鬼熊はもう、自分が倒されるだけだと言うことを悟った。自分がしたかったことは何かを考えた。そして一声吠えた。
「グゥゥガァアァァ!!!」
 地面が揺れはじめる。全てを巻き込もうとするかのような揺れがあたりを包む。地割れが広がり、達明とホウを飲み込もうとする。ホウを庇う達明。でもホウは達明の手の間をすり抜けた。黒い大きな目が笑った、今度は自分の番だと。地割れが近づく。
「――乱れ舞え、我が眷属」
 ライラがホウの前に立つ。冷気が地面を凍てつかせると、地割れの動きが鈍くなった。
「二人の邪魔です、疾く逝ってくださいませ」
 この日最速と思える速さで那奈璃が赤鬼熊に迫る。横薙ぎに霊剣を振るうと赤鬼熊の首が切り裂かれた。ばったりを倒れる赤鬼熊。揺れは止まり、赤鬼熊の姿は木の中に消えていった。
「うん? クマさんの咆哮? たぶん私の周囲の『歪み』に飲み込まれたよ」
 ライラは自分のまわりで地割れが止まった理由をそう説明した。

「さて、私の役目は終わったな。川原殿も達者でな」
「氷志さん、ありがとうございました。あなたのおかげで僕は友達をなくさずにすみました」
 深々と礼を言う達明。ライラは満足そうに笑った。達明はホウに話しかけた。
「ホウ、きみのことを思い出せて良かった。僕に勇気をくれたのはきみだったんだね。子供の頃、どうして急に勇気が出るようになったのか不思議だったけど、忘れていただけだったんだな。ありがとう」
 達明は那奈璃に尋ねる。
「伏見さん。僕はホウのことをあなたたちのことを憶えてられるだろうか」
 那奈璃はその問いに答えず、ただ笑顔で一礼した。
(達明さんの記憶はまた失われることとなるのでしょうけど、せめて大切な友が居たという事実だけは心のどこかに残って欲しいと思います)
 1人と1匹はそこで別れた。達明は家族の元に、ホウは住処の山に。ホウは願う、もう一度達明と縁がないように、自分は彼のことを忘れないようにと。那奈璃は2人を見送るとどこかへと帰って行った。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

挿絵申請あり!

挿絵申請がありました! 承認/却下を選んでください。

挿絵イラスト