本の少女と書架の家

ノベルリクエストは初めてになります。どなたかのお目に留まりましたら描写を頂ければ幸いです。
●概要
過去、付喪神として人の形になりかけの少女がシェア型本屋の店主おじーちゃんに拾ってもらう時の話。
ふんわりとでも設定の補強ができればうれしいなと思っております。
●シチュ詳細
出身であるはずの√妖怪百鬼夜行での記憶や思い出はなく、たまたま流れ着いた√EDENをふらつくフランキスカとおじーちゃんの出会い~ちょっとお世話するくらいの場面を想定しています。アドリブや捏造も大歓迎です。
●キャラ設定
☆フランキスカ・ウィルフレア(キャラ本人)
本の付喪神。8歳頃の見た目をしていて精神年齢もそれと同じくらい。
子供のような興味と本へのそこそこの探求心を軸に行動する。引っ込み思案なところもあるため突飛な行動は取らないものの、少女らしいお転婆さはある。
口調は「~の、~なの、だね、かな?」と語尾に「なのorの」を付けがち。「~なのね、~なのだわ」などはあまり言いませんが口調が難しい場合は言っても大丈夫です!一人称は「フラン」、相手のことは年齢関わらず「~ちゃん」が多め。老人のことは「おじーちゃん」と呼ぶ。
☆シェア型本屋の店主
フランキスカを√EDENの街中で拾った60歳ほどの男性。今は所有する建物の住居兼シェア型本屋(※本棚をオーナーに提供するタイプの共同型書店)の中にフランキスカを住まわせているし旅団(書架『一等星』)で使用する個室も提供している。不器用であまり表情を変えない老人だがフランキスカには甘め。奥さんは居たが子供のいなかった家庭のため。
フランキスカのことは縮めずフランキスカと呼ぶ。
名前は特に決めておらずAnkerでもない人。
とある暖かな日の昼下がり、用事を済ませた帰りにいつもの近道を通ると、そこに一冊の本が落ちていた。思わず足を止めた私は、近くに落とし主が居るのではないかと周囲を見回すが、あいにくこの時間は人通りも少なく、静かなもので、それらしい人物は見当たらなかった。
仕方なしに拾い上げて、表紙についた砂埃をそっと払う。本とはいってもそれは随分古いもので、紙片をただまとめただけ、といった簡素な作りをしており、扱いを間違えればすぐに破損してしまいそうな危うさがあった。
一体いつの時代のものだろう。そして誰の書いたものだろう。何が書かれているのだろう。道端に立ち尽くした状況ながら、職業柄そんなことが気になってしまう。
「ねえ、おじーちゃん」
考え込んでいたところに声を掛けられ、驚いて顔を上げる。声の出所を追って後ろを振り向くと、そこには小学生くらいの少女が立っていた。
先程周囲を見回したはずだが、こんな子供は居ただろうか? 戸惑い、記憶を手繰っていると、少女はおずおずとこちらに右手を差し出す。
「その本、返してほしいの」
「……ああ、お前さんのだったのかい。すまないね」
年若い少女にこの古びた本はいかにも似つかわしくないように思えたが、それを胸に抱いた彼女の姿は、どこかしっくりくるものがあった。だから、というわけでもないのだが、本を抱いて駆けて行こうとする彼女の背に、私は声を掛けていた。
「その本、もうぼろぼろだろう」
立ち止まり、こちらを見上げた少女は、まるで自分の悪口を言われたかのようにむっとしていた。
失敗したか。怒らせるつもりはなかったのだ。次は、ゆっくりと言葉を選んで。
「直してやった方が良いんじゃないか?」
きょとんとしていた彼女だが、こちらの言いたいことは、ちゃんと伝わってくれたようだ。
「おじーちゃん、本のお医者さんなの?」
「そんなようなものだな」
専門家というわけではないが、まあ嘘は言っていないだろう。
「用事がないならうちに寄っていくと良い。すぐそこだ」
普段ならば、道端で出会ったばかりの子供にこんなことは言わないはずだ。そもそも呼び止めることすらなかったに違いない。だがこの時は、不思議と気にならなかった。
「……ここ、本屋さん、なの?」
「そうだ。ただの本屋じゃないがな」
普通の書店や古本屋と違うのは、本棚の規格が全く揃っていないところだろうか。蔵書自体もジャンルや作者で分類はされておらず、雑多に見えるが、よくよく見れば本棚のひとつひとつに傾向……趣味や好みといった個性が読み取れるだろう。
本棚をオーナーに提供するタイプの共同型書店、それがここ、書架『一等星』だ。
「すごいの、本がいっぱい……」
「待っている間、好きに見ていて良いからな」
本に囲まれたここの様子が気に入ったのか、少女は目を輝かせている。道すがら話を聞いていても、どうにも身の上がはっきりしない子供だったが、少なくとも本が好きなのは確からしい。
共用スペースで本を捲り始めた彼女のためにお茶を淹れて、店の奥から補修に使う道具を見繕って。戻ってくると、積み重ねた本の間で彼女はすっかり寝入っていた。
「少ししたら起こしてやるか……」
少なくとも、暗くなる前には。起きたらどこの子か聞いておかねばなるまい。
机に置いていた老眼鏡をかけて、件の書物を手に取る。擦り切れ、乾いた繊維を指先でそっとなぞり、本の状態を確認していく。最初に手に取った時からわかっていたことだが――こうした挑戦は、自分にとってはむしろ喜ばしい。年甲斐もなく声が弾む。
「随分と、手間のかかりそうな子だな」
そう、少しばかり、長い付き合いになりそうだ。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴 成功