シナリオ

1
BLITZ

#√ウォーゾーン

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 #√ウォーゾーン

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●電撃的侵攻
 突然の侵攻だった。
 戦闘機械都市ニューフロント-3は戦闘機械群の襲撃を受け混乱の渦中に叩き落とされたのだ。ニューフロントは近隣の人類側戦闘機械都市にとっての前哨拠点、すなわち駐留する戦力も有事の備えも万全である。通常の襲撃であれば小動もしなかっただろう。
 だが、戦闘機械群はこと破壊と殺戮に関しては人類の想定を上回るものだ。
 都市外周を囲う堅牢な防御壁の切れ目、戦闘機械群得意の物量戦による強行突破を警戒し多くの戦力が駐留していたメインゲートへの突撃を陽動に、大型機甲兵器による大火力投射で防御壁を破壊し側面より侵入した戦闘機械群の特殊部隊は予備部隊を各個撃破し指揮系統や市内の補給路を寸断し、これによって後背を脅かされ統率の乱れた人類のメインゲート守備軍はゲート前での戦線維持を断念、市内にまで後退を強いられた。
 しかし、前方には大量の量産型戦闘機械群による圧力がいまだ健在。さらに側撃によって既に都市中枢部に特殊部隊の浸透を許し、さらには防御壁を破壊せしめた大型機甲兵器が市内に向け前進を開始しつつある。
 状況は極めて最悪に近く、このまま前後からの挟撃で人類軍主力が磨り潰され、ニューフロント-3が失陥するのは時間の問題であった。

●救援作戦発動
「以上が本作線における現地状況概略となります」
 星詠みの少女人形、スペクトラ・ワン・サーティはその背後に掲げられたニューフロント-3市の地図、外縁部を囲う防壁のうち二箇所ををレーザーポインタで示して、集まった一同を一度見回した。
「状況は極めて逼迫しています。人類の駐留軍主力は既に挟撃下にあり、後方から予備戦力を抽出してこれを救出する試みは敵の特殊作戦部隊による各個撃破で頓挫するでしょう」
 そして主力はじわじわと削り取られるように壊滅し、敵は戦力の多くを喪失したニューフロント-3に堂々と入場して勢力図を再び彼らの色に塗り替える。それだけは阻止せねばならない最悪の未来だ。
「各員にはまずメインゲート付近から市内に進出、敵正面戦力の排除による人類軍主力の救出を。しかる後に都市中枢へ侵入した特殊作戦部隊の掃討、最後に大型機甲戦力の撃滅を実行願います」
 メインゲート、壁の破損箇所、そしてその外側。三箇所を示したレーザーポインタが消灯すると、スペクトラは踵を揃えて敬礼を送った。
これまでのお話

第2章 集団戦 『強襲型機甲兵器』


POW 敵陣急襲
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【エネルギーライフルやグレネードランチャー】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【電磁波吸収型熱光学迷彩】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
SPD 前線擾乱
【煙幕または閃光手榴弾とエネルギーライフル】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【戦闘機械が主導権を握った戦域】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
WIZ 爆撃要請
X基の【爆撃要請を受けて展開した航空戦闘機械部隊】を召喚し一斉発射する。命中率と機動力がX分の1になるが、対象1体にXの3倍ダメージを与える。
イラスト 鹿人
√ウォーゾーン 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

 メインゲートを巡る人類軍主力部隊の攻防戦が決着を迎えていた頃、ニューフロント-3の後方、市街区では別の戦いが繰り広げられていた。
 都市外に陣取り防壁を粉砕せしめ、今もなお不定期に砲撃を続けている大型機甲兵器。その脅威も無視できないが、それよりも危険な存在が市内を跳梁していたのだ。

『アルファ、行政タワー18層まで制圧。敵の抵抗は軽微』
『ブラボー、工業ブロック集配センターを制圧。残敵掃討に移行』
『チャーリー、人類軍基地施設を攻撃中。デルタ、エコーの応援を乞う』
『デルタ了解。支援砲撃の必要は?』『チャーリーよりデルタ、座標を送る。"ザトウムシ"への中継頼む』
『エコー了解。300秒以内に現着する。こちらは南側より攻撃をかける。チャーリー、デルタは支援砲撃の座標指定に配慮を願う』
『チャーリー了解』『デルタ了解』

 強襲型機甲の部隊が我が物顔で街を駆け抜ける。
 彼らは生まれながらの特殊部隊。こういった任務に投入されるべくして製造されたプロフェッショナルだ。故に違えない。任務目標は目についた人類を手当たり次第に襲う殲滅掃討戦ではなく、ニューフロント-3と名付けられた戦闘機械都市の中枢の占拠、そして進駐する人類軍の戦闘能力を喪失させることである。
 すでに都市総司令部たる行政タワーは地上階から半分以上が制圧され、補給の要所である工業区の集配センターは陥落。
 予備戦力の集結地点であった人類軍基地は軍事施設だけあってまだ持ちこたえているが、それも時間の問題だ。
 そして、ベテランや強力な装備を保持した部隊をメインゲート防衛に当てていたフロンティア-3にとって。それら後方を守っていたのは休暇でメインゲートを離れていた少数のベテランを除いて、ほとんどが二線級の少女人形と、そして学徒兵だった。

「落ち着いて、落ち着いてください! エレベーターの破壊が間に合った今、敵は階段から上がってくるしかありません。この狭い階段を守り抜くだけなら、私たちの戦力でも不可能ではありません!」

 行政タワーの警備隊長を務める拳銃の少女人形が怯える非戦闘員を宥めるように、そして自らに言い聞かせるように叫ぶ。
 それでも、下の階で遅滞戦闘を仕掛けた仲間たちが突破されたという事実が彼女自身の発言に「本当にそうだろうか?」と投げかける。

「だ、誰か助けて……ミナちゃん、班長、先生、お父さん、お母さん……!」

 集配センターのコンテナの陰、短機関銃を抱きしめて小さく身をかがめた学徒兵の少女が残敵を探す強襲型機甲の足音に、そしてどこかから響く断続的な銃声に怯え、友の、大人の助けを乞うて涙を浮かべる。

「市庁舎ともメインゲートとも連絡が取れん。どうも完全に孤立してしまったようだな……さて、ここからどう戦うべきか。いや、敵はそもそもこれ以上我々の戦いに付き合ってくれるものか」

 非番の兵と集結中の各個撃破を免れ基地にたどり着くことができた予備部隊が防衛する基地で、基地司令は戦場がまったく見通せない霧に包まれていることに渋面を隠せない。もしやこの基地以外は既に……という嫌な想像が来ない増援、来ない補給からはっきりとした輪郭を彼の脳裏に結んでゆく。

 都市内3ヶ所の重要拠点を巡る、敵特殊作戦部隊による強襲・制圧作戦。
 メインゲート攻防が彼らの想定外の介入によって比較的早期に、それも人類側勝利という大番狂わせで決着したこの時こそ窮地を覆す最大にして最後の好機となる。
ボルト・スミス
アドリブ連携歓迎
楽観的思考欠落

急ぎ行政タワーへの応援へ馳せ参じるであります。

敵が階段からしか登れないなら好都合。
√能力「諜報プロトコル:第六種」で9体の小型ドローンを展開。硬度と弾力を調整して足場とし、階段上方へ順に配置します。

ドローンを連続して踏み跳躍。敵は無視して合流最優先。階段を制圧する敵部隊の頭上を飛び越え、その先の防衛部隊との合流を目指すであります。

合流後はドローンの硬度を高めて階段前へ展開。即席の盾として敵の進路を塞ぎ、警備隊が射撃に専念できる防衛線を構築します。

随伴ドローン「BLT38SMTH」による【弾幕】とバースト・マグナムの【クイックドロウ】で当方も加勢するでありますよ。

 足音を殺して身を屈め、戦闘機械群・強襲型機甲アルファチームの各機は行政タワーの非常階段を駆け上っていく。
 下のフロアで迎撃を試みた警備隊の|少女人形《レプリノイド》部隊との交戦は彼らに僅かな弾薬消費を強いるに留まった。あくまで対人用に過ぎない自動拳銃や機関拳銃で相手取るには強襲型機甲はあまりにも相手が悪かったのだ。
 彼女たちは放り込まれたスモークで視界を封じられ、構えたポリカーボネート製のライオットシールドやスチール製の事務机ごとエネルギーライフルで撃ち抜かれた。相手が人間の工作員や暴徒の類であれば十分な迎撃体制であったが、浸透強襲を仕掛けてきた”戦争装備”の機甲兵器に対して彼女らの装備は力不足だったのだ。

 その戦闘痕を見て、ボルト・スミス (負け犬讃歌・h13250)は思わず立ち止まった脚に改めて力を込めた。
 クラスタ・パレードへの遅滞攻撃に参加し、主力部隊反攻の礎となって死んだ彼女たちの顔が浮かぶ。
 そして今、ここで盾やバリケードの裏で半ば焼け焦げて破壊された彼女たちの姿もまた、ボルトにとって忘れ得ぬものとなった。
 これ以上の犠牲は出せない。出したくない。
 戦術的に判断するならば、彼女たちが上で敵の注意を惹いている間に後ろから奇襲し、各個撃破を仕掛けるべきだ。

「でも、それをすれば犠牲が増えるであります」

 彼は常に最悪に縛られる。楽観的思考というものを持たざるボルトは、自分がちまちまと敵機を背後から削った結果上にたどり着いた頃には要救助者が全滅していた、という未来を鮮明に想像させる。今しがた下のフロアで見た警備隊の末路がその想像に重なった。

「なら、当方が為すべきことは」

 決まった。強襲型機甲の排除より、要救助者の生存可能性の最大化、これがボルトの任務となる。
 |諜報プロトコル:第六種《インテリジェンスプロトコル・シックス》に基づいて彼の指揮下に入った9機の小型ドローンを先行させ、一気に階段を駆け上る。もし後方警戒のために残った敵機がいたとて、ドローンが先んじて接敵しカナリア役になってくれるのだから、臆病なまでに慎重な彼であってもドローンを信じて大胆に走ることができる。
 16階、敵影なし。17階、敵影なし。警備隊の戦闘痕あり。18階――|接敵《コンタクト》。

『アルファ6よりアルファチーム、後方より|所属不明《アンノウン》、ドローン9、ヒト型1』
『アルファ6、アルファ8、アルファ9の援護に向かえ。残りは24階の敵部隊と交戦する』
『アルファ6了解』『アルファ8了解、迎撃開始!』

放り込まれたグレネード――ドローンが身を挺して体当たり、榴弾ではなく発煙弾。ドローンこそ喪失しなかったが噴出したスモークで視界が奪われる。だが、この場においてそれはお互いに影響を及ぼさない。ボルトは自ら使役するドローンの配置を完璧に掌握しており、そして強襲型機甲は高性能赤外線センサで白煙を透視する。

「ここで足を止めている場合ではないのであります!」

 白煙を引き裂き飛来するエネルギーライフルの熱光学プラズマ弾を掻い潜り、浮遊するドローンを足場に敵の頭上を、手摺を飛び越えショートカット。かすめたプラズマが手摺を溶かし、髪を焦がして壁や天井を穿つのを無視してボルトはひたすらに上へ上へ――!

『アルファ6よりアルファチーム、突破された。こちらの損害は無し。敵を追撃し合流を試みる』

 後ろから敵が追ってくる。大丈夫だ、逃げ切れる――はずだ。
 前に敵の背中が見える。大丈夫だ、飛び越えられる――できた。
 即座にボルトはドローンを敵との間に積み上げ、道中で撃たれたプラズマビームに耐えうるように防御パラメータを調整。間一髪、バリケードごと警備隊を焼き払おうとしていた斉射を受け止める。

「――あ、あなたは?」
「当方は救援でありますよ。メインゲートでは人類軍が勝ったであります。じき、救助部隊が来るであります。それまで当方が時間を稼ぎますから、ご協力願えますか?」
 それは楽観的思考でも、希望的観測でもない。それらを持ち得ぬボルトだからこそ言える、信じるに足る「事実」だ。だからこそ彼の目を見て、警備隊長の瞳に力が戻る。

「……はい! 聞きましたか警備隊各位! あと少しの辛抱です、見事耐えきって軍の同胞たちに自慢してやりましょう」
「――私たちだって守り抜いて見せたぞ、って!」

 息を吹き返した警備隊。火力が足りぬなら、倒すのではなくこれ以上進ませぬために。防御力が足りぬなら、それをボルトのドローンに頼ることで。
 彼女たちとボルトは、即席ながら充分に機能する連携をもって、24階に立てこもる行政タワーの生存者を守り抜く。
🔵​🔵​🔴​ 成功

コルヴス・ペネグリーヌ
あの散兵共も本命の陽動か。
厄介だな。手堅い上に抜け目ない。

まずは各所の防衛部隊にメインゲートでの勝利を伝える。
√雷素忍獣に手紙や小型通信機を持たせ、伝令をさせる。
奴らの体長なら通気ダクトのような閉所も通れる。各所の防衛部隊と難なく合流できるだろう。
伝達事項はメインゲート奪還成功と援軍派遣。最低限に留める。
防衛戦に必要なもの。それは希望だ。
援軍の保証さえあれば、理不尽にも抗える。

俺自身は援軍に向かう。
挟撃。あるいは救助か。
戦況と√能力者の人員配置を鑑みて臨機応変に判断する。
技能と装備を活用し最善を尽くす。

負傷は覚悟の上だが、仲間に迷惑をかける行為は「非効率的だから」しない。

【アレンジ、連携歓迎】

「あれもすべて本命のための陽動か。厄介だな」

 メインゲートへのクラスタ・パレードによる大規模攻勢。人類軍主力と真っ向から競り合い、一時は壊滅寸前にまで追い込んだ物量による圧迫と、自身が阻止したとはいえ側面への迂回機動という二段構えの攻撃のそれ全てが、後方に浸透した特殊作戦部隊によるニューフロント-3の戦略的要所を押さえるための囮に過ぎなかった。
 戦闘機械群の手堅く、そして物量という人類に圧倒的に優越したリソースを効率的に消費した戦術にコルヴス・ペネグリーヌ(放蕩鴉・h09224)は眉根を寄せた。

 メインゲートを奪還した主力部隊は今、ゲートに備蓄され破壊を免れた物資を用いて補給中だ。市内の窮状を知ったとて、今すぐに取って返せば特殊部隊による各個撃破の脅威に晒されることは間違いない。
 また、ゲートの防衛火器が再起動したお陰で安心できる状況ではあるが、ゲート外にはまだクラスタ・パレードの残存が展開しており、散発的な攻勢を継続している。
 主力部隊を今あの場から引き抜くことはできない。ゲートの確保を盤石とし、消耗した戦力の再編が終わるまで彼らを戦力として数えるわけにはいかない。
 しかし、だ。実利と合理を重んじるコルヴスだからこそわかる。今、市内各所で立てこもり抵抗を継続している人類軍の後方部隊は救援を切望していて、それが来ないかもしれないという絶望の淵に踏みとどまっている。そういう兵は不安定だ。絶望に押し込まれれば容易く瓦解する一方で、希望さえあれば思いの外粘ることもできる。

「希望を届けてやらねば。援軍を保証してやれば、理不尽にも抗える」

 すぐには来られない、という点を伏せてメインゲートでの勝利と救援部隊派遣のふたつを簡潔に纏め、召喚した雷素忍獣.exeに託す。9匹の獣が素早く街中に散り、強襲型機甲に捕捉されづらい通気ダクトや側溝の中を通って√能力者たちが急行している3箇所の重要拠点以外で通信を断たれ、友軍の気配を感じられぬ戦場で孤立奮闘しているはずの人類軍部隊の下へ駆けてゆく。

「……さて」

 伝令は出した。ニューフロント-3駐留軍への|サービス《恩売り》は十分に果たしただろう。
 頼まれた仕事ではないが、生還した部隊が多ければそれだけ戦力補充のコストが減り、つまり報酬の上乗せにも期待ができる。窮地に希望を携えてやってきた雷獣の飼い主となれば、感情的にも好印象を持たれやすかろう。

 その上でコルヴスは自らの仕事を開始する。バイクを降り、見上げるはニューフロント-3行政タワー。地上24階建ての高層ビルは、事前の偵察では少なくとも18階まで掃討されているという。
 先行した仲間の気配を感じながら、遠い戦闘音に耳を澄まして彼我の距離を確認し――ふと、開け放たれたエレベーターのドアが目に留まる。
 覗き込めばエレベーターは破壊され、シャフトの一番下で拉げている。警備隊が敵に挟み撃ちされるのを阻止するためにやったのか、あるいは戦闘機械が逃げ道を断つべく破壊したのか……ともあれこれは使えるとコルヴスは判断した。伝令を放つためにやや出遅れたのだ、階段をちんたらと駆け上がっていく時間すら惜しい。シャフトに垂れ下がるワイヤーロープを何度か引っ張り、破壊工作を受けてなお強度が保たれていることを確認。コルヴスはシャフトに飛び込んだ。
 跳躍、壁を蹴り、ワイヤーロープに掴まる。そしてまた跳躍、壁を蹴り、ワイヤーロープ。

 何度かこれを繰り返し、最短距離で上階へ。そうして24階。分厚いエレベーターの扉のすぐ向こうで戦闘音。このフロアに居るという確信をもって、コルヴスは身を揺らしドアを蹴破った。飛び出したのはちょうどドローンの壁に身を隠しつつ後退を開始した警備隊と、彼女らの低火力は脅威たりえずと認識し大胆に距離を詰め始めた強襲型機甲アルファチームの中間、24階エレベーターホール。
 破壊され動くはずのないエレベーターの扉を蹴破ってやってきた突然の乱入者に警備隊が一瞬判断に迷い、アルファチームが味方ではない=敵性個体と瞬時に判断しエネルギーライフルを向けるのを視線を左右に走らせ視認すると、コルヴスは『黒雷』を指切りで射撃。たん、たたんとエネルギーライフルを射抜いた銃弾は、その雷素でもって回路を破壊しエネルギーの収束を阻害、射撃を強制中断。

『――閃光弾!』

 先頭に立つアルファ3がフラッシュバンのピンを引き抜く。その腕を、狭いビル内で振り回せる長さ――大ぶりのナイフ程度に錬成された『Azoth-Replica ver2.2』の刀身が切り落とす。
 床に落ちる腕、衝撃で指がフラッシュバンを離し閃光――その頃にはコルヴスは既に間合いを詰めている。敵が見えていなくとも関係ない。
 強襲型機甲がサイドアームの大口径リボルバーを握った副腕を展開――胴体を切り裂かれまずは一機。

『アルファ3ロスト! アルファ5、アルファ11カバー!』
「遅い」

 コルヴスが廊下を駆ける。銃声が響き、剣が空気を切り裂く。そのたびにアルファチームの強襲型機甲が破壊される。
そうして階段に通じる防火扉までを一息に。後詰めの一機を仕留めたコルヴスの背後で重なる銃声がふたつ。
 振り返れば殺しきれていなかったアルファ3が硝煙くゆるリボルバーをこちらに向けていた。
 ぱらり、コルヴスの頭のすぐそこで弾丸がめり込んだ壁から破片が肩に落ちる。

「――救援、感謝します! お怪我はありませんか!?」

 そしてアルファ3の傍ら、上半身と下半身を分断されてなお仰向けで拳銃を構えている戦闘機械の傍らに立つのは警備隊長の少女人形だった。
 アルファ3の頭部に銃弾を叩き込み、コルヴスを狙う凶弾の照準を逸らした少女人形はぜえぜえと肩で息をしながらコルヴスの負傷を心配して視線を上下に。

「いや……問題ない。こちらこそ援護に感謝する」

 強襲型機甲特殊作戦部隊アルファ分隊による行政タワー制圧作戦は、ここに全機の喪失をもって失敗に終わった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

不破・鏡子
私も一応はヒーロー、少しは戦い方を知ってる。
でもこんな規模の戦争となると、やはり勝手が違うわね……!
でも、だからって立ち止まれない。
最適解でなくとも、今すぐ動くしかない!

私は集配センターへ向かう。
人助けが最優先だけど、もしまだ補給物資が残っていればきっと役に立つはず。
隠れて近付くのも時間が惜しい、バイクで派手に乗り込んでやるわ!
敵が攻撃の素振りを見せたら野生の勘で察知して、すぐに飛び掛って先制攻撃を仕掛けよう。
私の武器はこの蹴りと拳、そして破壊刃。
高速思考でその瞬間に最適なものを選んで攻撃する。
後は隠れて高速移動しつつ、次々不意打ちをかけよう。
とにかく攻撃優先、なるべく主導権は取らせない!
クラウス・イーザリー
蒼月を飛ばして集配センターに向かい、辿り着いたら蒼月から降りて生身で行動
機械仕掛けの瞳を使い、呼び出したドローンを周囲に飛ばしてジャミングで敵同士の連携や探知を妨げる
俺自身はコンテナを隠れ蓑にして接近し、最大出力のスタンロッドを思い切り叩き付ける
一体を倒したら囲まれないようにすぐ移動しよう

ドローンは半分くらい周囲の探索に回し、戦闘と並行しながら味方の生き残りを探す
もし発見したらジャミングを使い、俺が周囲の敵を倒すまで見つからないように隠しておく

「もう大丈夫だよ」
敵が片付いたら生き残った人に声をかける
全員を助けるのは間に合わないだろうけど、一人でも多くの人を助けられたらいいな……

 学徒動員兵であるミナ・ヨランドは、学校指定の短機関銃を握りしめてコンテナとダンボールがうず高く積まれた巨大なラックの森である集配センターを駆け抜ける。
 思えば異変の予兆はあった。|輜重《しちょう》科の実習で訪れたこのニューフロント-3の集配センター。引率の先生の後ろに並んで兵站将校としての学びを得るため施設内を見学していたときに鳴り響いた何かとんでもない轟音と、立っていられないほどの振動。地震か、いや爆撃かと騒然とするクラスメートたちを先生がどうにかなだめすかし、ひとまず積み上げられた物資が落ちてこないところまでと施設内の開けたところに移動し、整列した。
 そこまでは良かった。そう、その後突然煙が流れ込んできて、そして眼の前で先生は――

「うっ……」

 エネルギーライフルのプラズマビームを浴びて半身を松明のようにして息絶えた先生の最期を思い出し、ミナは吐き気をこらえて壁により掛かる。
 ちょうどそこにあった窓から外をうかがうと、無防備に開け放たれた正門とその手前で血溜まりに横たわる守備隊の兵士たち、そして門の遥か彼方ではぽっかりと大穴を空けた防壁と、市内各所で立ち上る黒煙が見えた。

「おええっ! ……なんで」

 なんで今日なのよ、と呪詛がこぼれる。
 せめて昨日なら私たちはこんなところに来なかったのに。せめて明日なら、私たちはもう帰ってこんなところにいなかったのに。
 言ってもどうしようもないなんてわかっている。運が悪かった、それだけのことなのだ。撃ち殺された先生も、今なお追い回され狩られている級友も、みんなみんな運が悪かった。でも。
 運が悪かったから死ねなんて、そんなの絶対嫌だ……!
 胃液を吐き出してなお痙攣する胃を殴りつけ、ミナは再び歩を進める。せめて死ぬなら、死がどうしようもなく避けえないのなら、あの怖がりな親友の隣に居てやりたい。

「けほっ……待っててね、ユミカ……!」

 走るミナの頭上、コンテナの上から無機質な赤い眼光とエネルギーライフルのスコープが彼女の背中を追う。



「この規模の戦争となると、やはり勝手が違うわね……!」

 艶消しの銀に塗られた小型バイクを巧みに操り、乗り捨てられた車両や破壊された兵器の残骸を巧みに躱して不破・鏡子(人間(√マスクド・ヒーロー)のマスクド・ヒーロー・h00886)は集配センターに急ぐ。後方に浸透した敵の特殊部隊が的確に要所を押さえにかかるならば、補給の要である此処を押さえにいかないはずがない。それを断たれれば、メインゲートを取り戻したとて主力部隊は万全の戦力を回復できないからだ。
 それに。

「実習に来た他所の学生が居るなんて聞いたら、放っておけるはずがないじゃない……!」

 集配センターの無機質な壁とその裏門が見える。その奥で倒れている兵士たちは――もう助かるまい。彼らの亡骸を轢かぬようハンドルを切って、勢いのままにバイクごと鏡子は窓から建物に突入した。

「……っ!?」
『――――ッ!!』

 うずくまる学生服の少女。そして反対側にはミニガンを構えた敵の機械兵士。その間、きらめくガラス片を伴って突っ込んだ白銀のバイク。
 蜂の羽音を伴って発砲された弾丸の嵐がバイクを穿つ。鏡子は座面を蹴ってバイクを飛び降り、勢いのまま棚に突っ込んだ車体は派手にクラッシュする。
 愛車の犠牲に内心で手を合わせながら着地、機械兵士の顎に掌底を叩き込み、続けざまに側頭部を刈り取る回し蹴り。クラスタ・パレードであれば首がちぎれ飛んだであろう必殺の連撃を受けてなお、強襲型機甲はたたらを踏むも耐えてのける。

『……ブラボー2よりブラボーチーム、侵入者と接敵。交戦開始する』

 この間合いで銃は不利と判断したか、主腕に構えたミニガンを投げ捨て腰のナイフを抜くブラボー2。
 徒手空拳とナイフの激しい応酬が始まった。鏡子の目にも止まらぬ連打をブラボー2は持ち前の耐久力で耐えながら、四本の腕を巧みに振るって揺さぶりを掛けナイフを突きこんでくる。
 鏡子は確信した。こいつは戦闘員ではなく怪人クラスの敵だと。そしてそれが隊伍を組んで軍隊として人類を襲っているのだと。
 恐ろしい。それ以上に許せない。決意を込めて踏み込んだ鏡子の顔を狙ったブラボー2の拳打、ストレート。手を使ってそれを受け流し――違う、ブラボー2の手には大口径のリボルバー拳銃が握られている。そして自分の後ろには、まだ――

「避けなさい!」

 少女に退避を促しながら鏡子はブラボー2の出を捻り上げる。そのままめしりとそれを折り取って、続けざまに展開したナノメタルの刃を腕の付け根、胸部装甲との隙間に突き立てた。

『こちらブラボー2……敵は……』

 動力部を破壊され崩れ落ちたブラボー2の残骸を放り出し、鏡子は少女に駆け寄った。

「大丈夫、撃たれていない!?」

 少女はふるふると首を横に振る。ほぅと一息。

「あいつが仲間を呼んだかもしれないわ、此処を離れないと。歩ける?」
「は、はい……えと……」

 なんと呼べばいいか戸惑う少女の怯えを拭い去るように鏡子は笑いかけた。

「私は――名無しのヒーローよ」
「わ、私は……ユミカ・タカオカです。ありがとう、ございましたっ」



 集配センターの正門に降着した蒼月から飛び降り、クラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)は急ぎその扉を押し開け施設内に滑り込んだ。
 血腥い鉄の臭いと、何かが焼け焦げたような灰の臭いが鼻を突く。およそ物資集積拠点でしていい臭いではないそれが、ここで何が起こったのかを鮮明に想起させる。

「いや、それよりも生存者の救出だ」

 自分が感傷に足を止めれば、まだ助かるはずだった生存者が死ぬかもしれない。クラウスは意識を集中し、目を閉じてドローンと感覚を同期する。
 天井付近まで舞い上がったドローンからの視覚共有。9つの目のうちのひとつが動くものを捉えた。身を隠しながら走る学生服の少女。彼女に意識を向ければ、その背中を狙う冷徹な狙撃手もまた視認できた。

「っ……!」

 即座にドローンの半数をジャミングに回す。強襲型機甲のデータリンクを阻害し、通信網を寸断。すぐさま|ECCM《カウンターメジャー》を起動し抵抗してきた辺りは流石の特殊作戦部隊だが、新手からの電子攻撃に応対した一瞬で狙撃手は絶好の機会を逃した。その一瞬は短いながら、クラウスにとって十分な一瞬だ。
 観測機からの視覚共有で敵に見つからないよう移動し、まずは狙撃手の背後に音もなくラックを登って忍び寄る。

『――ブラボー2、どうした? ブラボーリーダー、こちらブラボー10。通信状況が悪い、ECCMのパターンを解析されている恐れが――』

 ばちり。押し付けられたスタンロッドから流し込まれた致死量の高圧電流が、ブラボー10の電子頭脳を焼き切った。ガシャガシャと棚から滑り落ち、床に叩きつけられ部品を四散させたブラボー10の傍らに着地すれば、強襲型機甲の墜落音に目を丸くして振り向いた少女と目があった。

「やあ、大丈夫かい?」
「誰? 味方ですか?」

 短機関銃を向けて誰何する少女にクラウスは両手を上げて微笑んだ。

 少女はミナ・ヨランドという名で、別の都市から補給将校課程の実習でこのニューフロント-3に訪れていたこと。
 引率の教師を眼の前で殺害され、恐慌状態に陥った仲間たちは散り散りに逃げたこと。
 そして、何人かの死体を見てしまったこと。その中に親友の骸がなかったことに安堵してしまい、自己嫌悪の最中にあることを、安全そうな死角を探し出しそこへ移動する道中で聞いた。
 強い少女だと思った。もちろん正規兵のようにはいかないが、日常から突如実戦、それも最悪に近い戦場に叩き込まれたにしては心も足取りもしっかりとしている。

「でも、もう大丈夫。ここからは俺達に任せて」

 だからこそ、これ以上無理はさせたくない。そんなクラウスの優しさにミナは否を返す。

「親友が、ユミカがどこかで震えてるかもしれないんです。あの子は私が守るって約束したから、だから私だけ一足先に隠れて待つだなんて。邪魔はしません、クラウスさんと一緒に……いえ、未熟で邪魔だって言うなら、囮だってやります。私が逃げ回ってる間にクラウスさんがみんなを、ユミカを……」

 饒舌で自己犠牲的な言葉の羅列に、クラウスはやはりミナも限界に近いのだと認識を改めた。
 このまま言う通りに一人で行動させればきっと彼女は死ぬ。だが、身を隠させて置いていっても彼女の心は耐えられず折れてしまうだろう。仕方がないと小さく息を吐いて、彼はミナの同行を許可したのだった。



 ある時から――ブラボー2を仕留めて少し後から、ブラボー分隊の強襲型機甲たちの挙動が少しだけ違和感を感じさせるものになった。鏡子はそれを知覚し、誰かの干渉が彼らの戦術行動を乱しているのだと認識した。
 ならば最大限に付け入るべし。ユミカを抱えて物陰から物陰へと飛び移り、強襲型機甲の背中を見かければ彼女を隠して敵に飛びかかり組み伏せ踏み抜き、あるいは殴打して頭部を破壊して回った。
 そうして6体目か7体目かの機甲を始末したところで、鏡子は敵とは違う気配を感じ取る。

「誰かしら? 人間よね?」
「ああ、俺たちは人間だよ」

 棚の陰から現れたのはスタンロッドを握ったクラウスと、その後ろで短機関銃を構えるユミカと同じ制服の少女。

「どうやらお仲間のようね。こっちは6体か7体くらい殺ったわ、そっちは?」
「こっちも同じくらい――」

 鏡子とクラウスがお互いの撃破数をすり合わせ、残敵の数を予測しようとするその脇を少女たちが駆けていく。

「ユミカ!!」
「ミナちゃんっ!!」

 抱きしめ合い、涙を流して生存を喜び合う親友ふたり。彼女たちを見守って、二人はどうやら残党狩りと慢心し分散していたブラボー分隊が全機各個撃破されたであろうこと、そして見つけた死体の数と二人の学徒兵から聞き出したクラスの人数の差異から彼女たち以外にも生存者が居るだろうことを知り、決して多くはないが少なくない命を救い出せた喜びを噛みしめた。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功