緊急事態!? ちいさなわたし
──チュン、チュン。
朝日が窓から差し込み、外では小鳥が囀っている。
もぞり、と身動ぎ一つ。何やら、妙に息苦しさを感じて見下・七三子は目を覚ました。
「むぐ、っ……んん?!」
ぷはっと酸素を取り込もうと起き上がる──が、妙に視線の高さがいつもと違う。
抱いて寝てたぬいぐるみも心なしか大きく感じる。七三子は不思議に思いながらベッドから降りようとして、足が床に届いてない事に気付いた。
「あれ……?」
よく見れば、着ていたワイシャツとショートパンツの丈が合っていない。
頭の中でハテナをいっぱい浮かべながらベッドから下りるけど、袖を踏んでしまいべしょっと転んでしまった。
「わっ! えっ、なに? えっえっ? 何が起きて……!?」
一人で混乱してるのを聞き付けて、戦闘員さんが慌てて駆け付ける。七三子の姿を見るなり目をまんまるにして驚いた後、全身鏡の方を指差した。
不思議に思いながら七三子は全身鏡を覗いてみると、そこには小さくなった自分の姿が。
「えっ、小さくなってる!? うわああん! えぅ、えええ……なんでええ……」
変なもの食べた? 夢で大きくなった時があったような気がするけれど、小さくなるなんて当然ながら想定外なわけで。原因が分からず混乱していたが、戦闘員さんはもしかしたらと七三子に耳打ち。
「えっ、メンテナンス? あ、そういえば……そっか、あの日から出来てないですね……」
|故郷《√マスカレード・ヒーロー》が無くなってしまい、それと同時に組織も消えてしまったことから体のメンテナンスは出来ていない。
彼氏からもメンテナンスした方が良いと言われていたのもあったが、まさかこんな形で不具合が出るなんて予想していなかった。
「こ、こんなんじゃレオンに会えません。隠れ、隠れないと……」
この姿を見られてしまえば、間違いなく心配かけてしまう。いや、可愛いと言ってくれる可能性もありそうだけれど、心配かけたくないという気持ちが七三子の中で勝っていく。
「隠れながら……少なくとも、今日は大人しくしないと……。戦闘員さん、色々助けてぇ……!」
見た目は10歳ほど。
大人の姿に比べれば、不便な事も多いわけで。ましてや今は、着るものすらも子供サイズは持ち合わせていない。移動すらも困難だと判断すれば、申し訳なさそうに七三子は戦闘員達を頼る事に。
▽
ともあれ、戦闘員に抱えてもらいながらキッチンへ。
まずは何か食べてから考えようと思うけれど、届くものにも限度があって。派手な音を立てて恋人にバレたくないしと、あれこれ手伝ってもらいながら朝食タイム。
「椅子一つ座るにも、少しだけ苦戦するなんて……こんな時期があったんでしょうけど、全く覚えてない……」
感情が抑制されていた時の記憶は曖昧で。
子供って無邪気で可愛いけど、こんなに不便な部分も多いのかとしみじみ。今では愛犬も人に化けれるようになったため、なるべく不便にならないようにしてあげたいなと改めて思った。
「ちゃんとメンテナンス出来そうなところ、探さないとですよね……。どうしよう、どこをアテにするのが良いのかから始まるんだけど」
改造人間に詳しそうという意味で√マスクド・ヒーローに足を運ぶのも良いだろうか、もしくは他に詳しそうな人がいるのか。その辺の情報収集もしなきゃと考えれば、戦闘員何人かにはメンテナンス出来そうなツテ探しをお願いする事に。
やれる事はやった、あとは元に戻るのを待つだけ。けれど、どのタイミングで戻れるのかまでは分からない。もし戻れなかったら、と考えただけで不安が込み上げてくる。
「……戻れないままで、レオンにも皆にも顔出せなくなるのは嫌だなぁ」
事情を話せば分かってくれる人ばかりだとしても、それでも不安は込み上げる。傍にいた戦闘員は大丈夫というように微笑んでくれれば、落ち込んでてはダメだと気持ちを切り替えて。
「そうですよね! きっと明日には戻りますよね! よし、この姿はこの姿で今日は乗り切……っ、わわっ!」
気合を入れて歩き出そうとして、また袖を踏んでべしょっと転んでしまう。慣れない、「やっぱり早く戻りたい!」と思わず叫んだ。
何だかんだと戦闘員達の助けを借り、ようやく一日が終わりを迎えた。明日には戻りますようにと祈りながら、ぬいぐるみを抱いて夢の中へ。
▽
──翌朝。
目を覚まして体を起こせば、慣れ親しんだ目線になっていて。
いつもと同じようにベッドから下りて、鏡を見るとそこには元通りの姿が映し出されていた。
「良かったぁ……元に戻った。メンテナンスはちゃんとしよう……」
一日人と会うのを我慢した分、今日はいつもの笑顔で外に出る。大好きな彼と、親しい友人達と、楽しい時間を過ごすために。
元気で過ごしたい。
当たり前だけど、大事な事だから。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴 成功