シナリオ

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夏色あいすくりん

#√妖怪百鬼夜行 #受付期間→9/10(木)8:31~9/13(日)23:59

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 #√妖怪百鬼夜行
 #受付期間→9/10(木)8:31~9/13(日)23:59

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●√妖怪百鬼夜行:町外れの“あいすくりん屋”
 夏の日差しに焼かれた往来を、風鈴の涼やかな音が渡っていく。
 硝子戸の向こうには三種の“あいすくりん”。
 やさしい甘さのバニラ、ちょっぴりビターなチョコ、まろやかな味わいのあずき。
 安価で食べきりサイズ。涼を取るのにぴったりの一品。
 けれども、客の姿はまばら。
 若い店主は溶けかけの氷菓よりも頼りなく肩を落としていた。
「このままじゃ……お店、なくなっちゃうかな……」
 祖母から受け継いだ小さな店。
 昔のように賑やかにしたい。もっと沢山の客に来てほしい。
 しかし努力は実を結ばず、募るばかりの想いは“情念”となって――。

 店の奥。
 もう長らく使われていない氷室の、さらに奥から声がした。
 店主はふらりふらりと吸い寄せられるように近づき、神棚めいた祠の封を剥がす。
「……結構。貴女の望みは、私が叶えて差し上げましょう」
 現れた古妖は慇懃というほど恭しく一礼すると、穏やかな声で囁いた。
「ご安心ください。すぐにやってきますよ……大勢ね」

 かくして、店主の願い通り、店は往年を凌ぐ勢いで賑わうのだが――。

●星詠みの語るところによれば
「それは同時に、古妖の望みを叶えることでもありまして」
 |獺越《おそごえ》・|雨瀬《あませ》(行雲流水・h05081)は、渋い顔で語った。
「|古妖《やつら》は人や妖怪の強い情念に付け込み、その願いを叶える代わりに封印を解かせることがあります。正体と企みの深いところまでは星も報せてくれませんでしたが、今回もその類で間違いありません」
 封印を解いてしまった店主も、事の重大さに気付いて狼狽え、自責の念を抱いているが――しかし、後悔先に立たず。一介の店主に古妖をどうこうできるはずがない。
「ここは皆様の力で古妖を撃破し、その目論見が果たされる前に再び封印すべきでありますが……とはいえ、それを為すだけでは片手落ちというところでございまして」
 そもそもの発端は、あいすくりんの店を守りたいという店主の情念。
 古妖を封じても、その悩みが消え去るわけではない。
 根本的解決に至らなければ、いずれまた同じことを繰り返すかもしれない。
「ならばひとつ、古妖なんぞに頼らずとも繁盛させてやろうじゃありませんか」

 老舗のあいすくりん屋。
 聞こえはいいかもしれないが、裏を返せば古臭い。代わり映えしない。
「まずは店主に新商品を提案しましょう。あいすくりん……アイスクリームのフレーバーといえば、それこそ星の数ほどあるでしょう。√EDENの最新流行を持ち込んだり、或いは妖怪ならではの珍味めいたものでもいいかもしれません。材料、盛り付け方、商品名に至るまで、皆様で知恵を出し合い、新しいあいすくりんを作るのです」
 開発を終えたら、今度は売り出しだ。
 EDENたちも店に立ち、調理から給仕、会計などを手伝うことになる。
「古妖の力で集められた賑わいを、皆様自身の力で生まれた賑わいへと塗り替えていくのです。それが再封印の儀式と同義になるようですので」
 そうして、店が大いに賑わった頃。
「古妖は己の望みを叶えるべく姿を現すでしょう。どうぞ皆様、アイスクリームディッシャーを得物に持ち替え、古妖を全力で叩きのめして、再封印してくださいませ」
これまでのお話

第3章 ボス戦 『『花巻喰道楽』花巻・九朗』


POW グラットンタイム
【妖術で具現化した巨大なナイフとフォーク】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
SPD カービングミート
【妖術で具現化した巨大なナイフとフォーク】が命中した部位を切断するか、レベル分間使用不能にする。また、切断された部位を食べた者は負傷が回復する。
WIZ ディナーコール
「【いただきます】」と叫び、視界内の全対象を麻痺させ続ける。毎秒体力を消耗し、目を閉じると効果終了。再使用まで「前回の麻痺時間×2倍」の休息が必要。
イラスト 音七香
√妖怪百鬼夜行 普通11

「――いやはや、お見事」

 静かな拍手が、店内の音を切り分けた。
 いつから其処にいたのだろう。
 店の一角に立っていたのは、仕立てのよい洋装に身を包んだ、猫の貌の男。
 端正に結ばれた蝶ネクタイ。白い手袋を嵌めた指先。
 長く太い縞の尾を、ゆるりと揺らす立ち姿には、晩餐会へ招かれた紳士の如き優雅さがある。
 けれども、その背後に浮かぶものは禍々しい。
 妖術によって具現化されたと思しき、銀色の巨大なナイフとフォーク。
 殺気を漂わせて揺らめくそれは、触れてもいない硝子の器を細かく震わせていた。

「ご挨拶が遅れました。私は、花巻・九朗と申します」

 九朗は胸元に手を添え、恭しく一礼する。
「さて、店主殿。お約束どおり、大勢のお客様をお招きいたしました」
 細められた瞳が、店内に集う人々を一人ずつ吟味するように撫でていく。
「これだけ賑わえば充分でしょう。そろそろ代償の方をお支払いいただかなければ」
「代償……」
 青ざめたすずが、あいすくりんのショーケースに身体を預けながら呟く。
「何を……払えというのですか……?」
「簡単な話です。貴女は店を満たしたかった。そして私は――腹を満たしたかった」
 九朗の双眸が邪悪な光を宿す。

「人の肉は、手間を掛けるほど味わい深くなるもの。喜びに弾む心、甘味に満たされた身体……ええ、実に素晴らしい仕上がりです。それを幾ばくか頂ければ、と」

 一瞬の静寂。
 次いで、椅子の脚が床を擦る音と、取り落とされた匙の硬い響きが重なった。
 我先にと硝子戸へ殺到する客。卓上の器が揺れ、戸が大きく開け放たれ、悲鳴と足音が夏の往来へ流れ出していく。
 その逃げ惑う姿を前にしても、九朗はまったく慌てない。
 まるで獲物を追うことすら、晩餐を彩る余興とでも言うように。
「……あ……あぁ……」
「嘆くことはないでしょう。貴女は立派に給仕役を務められました。ならば、私も客として礼を尽くさねばなりません。存分に味わい、平らげてみせましょう。……なぁに、今更何処へ逃げようと、丹念に仕込んだ|彼等《にく》の匂いは隠せませんよ」
 すずに向いた九朗の視線が、再び人々の背を見据え、そしてEDENへと渡る。
「どうぞお構いなく……とは、いかないのでしょうね。仕方ありません、人であればオードブルということにしましょうか。勿論、それ以外はコンポスト行きですが」
 巨大なナイフとフォークが交差する。
 優雅なる古妖の晩餐。
 その皿に盛られるものは、あいすくりんではない。
 九朗は微笑むと、白手袋に巨大なカトラリーを掴んだ。
「では、皆様――いただきます」