√マスター・サーヴァント『リレーションシップ』
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弥生。
ますます生い茂る。
故に弥生。
季節を現す言葉である。それは他者との関係性が育まれる季節であるとも言えるだろう。
花が芽吹く卯月にはまだ早い。
しかし、芽吹く絆というものもある。
それが主従の契りであったとしてもだ。
天國・巽(同族殺し・h02437)と冬厳北帝・玄冥(霊亀神仙・h08326)は、文字通り主従関係にある。
旅団まよひが。
その本館にて巽は玄冥に何か必要なものはないかと尋ねた。
主が巽で従が玄冥である。
ならば、主である巽がしなければならないのは従僕たる彼女の身の回りのことであった。主従というから言葉面が悪いのかもしれない。
どうあってもネガティヴに捉えられがちな言葉でもある。
「特にない」
なので、というわけではないが玄冥は、うん、と頷いた。
「いや、必要ないわけではないだろ。生活用品。いくら野良玄武だったからと言っても限度がある。俺を主と思うのなら、これが主としての最低限の務めだ。その最低限の務めさえ、果たせないでは面目が立たん」
その言葉に玄冥は少しだけ悩んだ末――。
「で、買い出し、と」
「違う。食べ歩き、いっぱいしたい」
「食欲じゃねーか」
巽は呆れながらもショッピングモールへと買い出しに出かけたのだ。玄冥を連れて、というか、引っ張って、というのが正しいかもしれない。
けれど、彼女は買い出しというよりも食べ歩きの方に主眼をおいているようだった。
この生活感のなさ。
これからしっかりしつけていかねばならないのかと巽は少しばかり頭痛がした思いであった。
「まあ、かまわんか」
諦め半分に呟けば、玄冥の尾……白蛇が左右に揺れる。
√妖怪百鬼夜行。
ここでなら、彼女の尾蛇も見た目以上に目立つこともない。もとより√能力者である。ある程度の違和感は周囲に影響を与えないが、巽には考えがあった。
「主、お金はどうする? 玄冥、ちょっぴりおサイフ心もとないかんじ」
「金ェ? 馬鹿云え、どこの世界にしもべに金出させる主がいるよ」
「いるかも」
「いねーの。いるわけねーの。少なくともお前の主はそうじゃねーの」
涼しげ気な麻のジャケットが揺れてサンダルが地面を踏み鳴らして、巽は言い張った。
「おお……それなら」
玄冥の視線はしっかり、クレープ屋に釘付けだった。
話聞けよ。
巽はそう思ったが、まあ、彼女の希望であるのならば、少しは叶えてやらねばならないと思った。
「だが、生活用品の類は必須だからな」
「うん。クレープは必須」
「クレープと添い寝でもするつもりか?」
「それもアリ」
「なし。クレープはかじるもんだ」
そんなやり取りをしながら、二人はクレープを片手にモールをプラプラとする。
初めにベッドなどの大物を買い、配送を頼みながら小物の類を買い込む。
ここぞとばかりに玄冥は荷物持ちを買って出るのだ。
「んで、次は……うん。一張羅でいるわけにもいかんわな。玄冥、どんなのが好きだ?」
そう尋ねられて玄冥は首を傾げる。
「いや、服だよ服。いつまでも、そのコートとインナーだけではいかんだろう。見た目だけなら妙齢の婦女だぞ。着飾れなどとは言わんが、好みというか、嗜好というか、方向性はほしい」
「……?」
よくわからない、というふうにやっぱり玄冥は首を傾げていた。
「あまりそういうことは考えたことがなかった」
あ、と玄冥は顔を上げた。
「前にメイド服きたときは、大変だった。なんであんなに騒がれたのかわからない」
「そりゃ」
そうだろ、とは巽は言葉を飲み込んだ。
恐らく、察するに彼女の特徴である尾蛇がメイド服のスカートを持ち上げてしまったのだろう。そうなると見えるは、その、あれである。
敢えて言葉にしないでおくが、あれである。
「それじゃあ、やはりこの√で正解だったな」
服飾の関係もそうだが、人以外にも対応しているのだ。
であれば、諸々と条件が絞られてくる。
「それで、あるだろ。好みが」
「上はあんまりない。下は……蛇たちが顔を通せるスリットが欲しい」
「だろうな。まあ、その手の問題は、この√ではどうとでもなるだろ」
じゃあ、いくぞと巽は玄冥と共にアパレルショップに足を踏み入れる。見るからに女性ものばかりを扱う店であったが巽はまるで気にしない。
抵抗がまるでないのだ。
むしろ、選ぶのは楽しい。楽しめる、というのは違うかも知れない。
「これは涼しそう」
「ホットパンツの類か。足出しすぎじゃないか?」
「肌出した方が涼しいから」
「うーん、確かに似合うような気がするが……これ似合うよなァ? 店員さん」
店員は巽の言葉に同意を示す。
とは言え、玄冥はぼんやりとしている。
そこまで主張がないからかもしれない。
「お二人はご兄妹ですか?」
その言葉に玄冥は事もなげにいう。
「従者だ。従僕ともいう」
おい、と巽は己の一瞬の迷いなど彼女には意味がないことを理解して、彼女に微笑む。
「そう、自慢の従者さ――」
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴 成功