きんぎょ救い
夏の海で私が目を惹かれたのは、ふわり、ふわりと宙を泳ぐ金魚の群れ。ぱちり、瞬きしてもそれは消えることがなくて、その群れを追いかける。
賑やかな浜辺からすこし離れた岩場の隅っこ、中性的な雰囲気のお兄さんがスマートフォンに語りかけている。
「今日は珍しく海に来てまーす。といっても、ちょっとばかしいわくつきではあるけどね」
くるりとまわした和傘は海の彩に似た深い青色で、ハイビスカスの赤い花が咲いた羽織りをおしゃれに着こなしていた。
そんな彼の傍でふんわりと漂う金魚は透明で、時たま手をかざしたお兄さんの身体を通り過ぎていく。
きれいだな、と思ったのは、金魚だったのかもしれないし、お兄さんのことだったのかもしれない。あるいは、両方。
「――いいな」
思わずこぼれた、ひとりごと。胸元であわい光を放つペンダントも、やわらかな口調なのにどこか自信ありげな雰囲気も、不思議と私の心を惹きつけて離さなかった。
ああ、話しかけてみようかな。でも、嫌がられてしまうかも。
ふいに彼の隣で泳ぐ金魚と、しっかり視線が合う――そっか、そうなんだ。
私も仲間に入れてもらえるんだ、なんて思えばうれしくて、お兄さんの傍で泳いでみたくなった。
「――ん?」
柳・依月が岩場に居る理由、それは配信チャンネルの夏休み特別編だった。すぐ傍の海水浴場では人々の賑やかな声が聞こえるのに、そこはひそかな自殺の名所と呼ばれていて。
ふと気づけば、己に纏わりつく金魚のインビジブルが一匹増えている。
「……そうか」
すこしばかり悲しそうな表情をして、けれどそれきり。金魚に触れたゆびさきは、やっぱりその幽体を通り抜けていった。
🔵🔵🔵🔵🔴🔴 成功