After Credits『FLORALIA』
「花は黙って咲くけれど、私まで黙っている必要はないでしょう?」
――庭師エヴァ、月花祭の夜にて
▸ 𝗚𝗲𝗻𝗿𝗲
ファンタジー/ミュージカル/冒険
▸ 𝗦𝘁𝗼𝗿𝘆
世界中の草花が集う空中都市《フローレリア》。
そこでは、《庭師》たちが花に宿る記憶を歌として記録し、守り継いでいる。
好奇心旺盛な見習い庭師エヴァは、立入禁止の温室で、誰にも名前を知られていない銀色の花を発見する。
しかしその翌朝から、街中の植物が少しずつ色と香りを失い始めた。
エヴァは相棒の小鳥とともに、風車庭園や雲上温室を巡りながら、消えかけた花々の歌を集める冒険へ出る。
やがて辿り着いたのは、街の地下に封じられた巨大庭園。
そこには、誰にも名前を呼ばれなくなった花々が眠っていた。
最後はエヴァと住民たちが失われた花の名を歌い継ぎ、フローレリアに再び色彩が戻る。
▸ 𝗧𝗮𝗴𝗹𝗶𝗻𝗲
忘れたくないものには、名前をつけよう。
▸ 𝗦𝗰𝗿𝗲𝗲𝗻𝗶𝗻𝗴
リリィ/映画館・最後尾のプレミアムシート
▸ 𝗔𝗳𝘁𝗲𝗿 𝗖𝗿𝗲𝗱𝗶𝘁𝘀
「銀色の花。あの青い蔓。十二曲目の歌詞……」
スタッフロールが流れる暗い館内で、リリィは小さく指を折っていた。
膝には空になった塩味のポップコーン。
カップに残ったコーラの氷が、からんと鳴る。
「……これは、大変ですね」
ぽつりと呟く。
感動した。
とても良かった。
それは間違いない。
問題は――記録したいことが多すぎる。
銀色の花。空中都市の植物。庭師の衣装に刺繍されていた花紋。
劇中歌は全十二曲。地下庭園の壁画。
最後に一瞬だけ映った、名前の分からない青い蔓植物。
「……あれ、何でしょう」
もう、気になって仕方がない!
スタッフロールが流れる間にも、頭の中では項目が増えていく。
帰ったらまずパンフレットを開こう。それから『観た映画ノート』。
ストーリー、楽曲、衣装、植物、魔法体系。
監督の過去作も調べたい。主演俳優の経歴も。美術監督は、おそらく植物に詳しい人なのだろう。
館内が明るくなると、リリィは大事そうにパンフレットを抱え直した。
「今日は、眠るのが遅くなりそうですね」
名前をつけて、書き留めて。
綺麗だったものを、もう一度ページの上で咲かせる。
映画は終わったけれど――リリィの中では、これからが本番だった。
🔵🔵🔵🔵🔴🔴 成功