シナリオ

きっと、水平線の向こうまで

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🕒️
 心地良く手足を広げ、ゆったりと水をかく。
 海面から顔を出すと、川西・エミリーは息をついた。頬を撫でる風が、少し涼しい。
 ──続いての部門賞は……。
 シーサイドももち海浜公園の、賑やかなアナウンスが遠く届く。 
 今年の水着コンテスト、エミリーは友達のヨーキィちゃん……ヨーキィ・バージニアと同じ、|少女人形《レプリノイド》部門に登録。票数も近くて、部門賞では続けて名を呼ばれた。素敵な想い出だ。
 そのヨーキィの姿は少し先。迷いのないクロールで、海面をぐんぐんかいている。
 二人がゴールに設定した、海浜公園の|離岸堤《ていぼう》まで、あと少し。

「ねぇ、エミリーちゃん」

 すぃ、と。平泳ぎで近づくエミリーを待って、ヨーキィが振り向いた。お日様みたいな金髪に、水滴をきらきら飾って。
「折角だから、ここからはちょっと競争と行こうよ!」
 言うが早いか、ヨーキィはイルカのように跳ねた。エミリーは水飛沫を浴び、慌てて顔をぬぐう。
「ちょっと、ヨーキィちゃん!?」
 突然の宣言には驚いたものの、すぐに応じて、海水をキック。
「競争なら負けません、水の中だって全速力です!」

🕐️
 それはまだ渚でのこと、コンテスト真っ只中の話。
「エミリーちゃんの水着、可愛いね!」
 隣を歩くヨーキィが、あまり自然に褒めるものだから。エミリーはぱっと頬を染め、遅れて表情を綻ばせた。
「この水着、雑誌で見かけていいなって思って⋯⋯」
「うん、ヨーキィちゃんと同じ競泳水着風のスタイルだけど、側面が空いているのがなんだかセクシーな感じがする」
 モノキニというのだろうか。正面はワンピース、背面はビキニにも見え、デザイン性と機能性を兼ね備えている。
 嬉しいと、エミリーが一礼すれば、頭上のバイザーもぴょこりと揺れて。
「そのサンバイザーも可愛らしいし、透明なラッシュガードもとっても似合ってる!」
 褒め言葉のシャワーにくすぐったくなってくる。ありがとうと応じつつ、エミリーもお返しを始めた。
「ヨーキィちゃんのもよく似合ってるよ! 黒い競泳水着に、流れるようなラインが入っててスポーティで格好いい」
 ヨーキィの水着は、機能美を追求したような造形で、流れるラインは空と海、そして光と風を感じさせた。航空母艦をベースとした、彼女のために誂えたようだ。
「スタイルもいいから、白い上着と合わせて爽やかだよね。あと、並ぶとちょっとお揃いみたいで嬉しいかも」
 きょとり。ヨーキィは互いの姿を見比べて。確かにそうかも!と相好を崩した。
「ヨーキィちゃんもエミリーちゃんとお揃い、嬉しいな、えへへ」
 ヨーキィが笑うと、周囲がぱっと明るくなる。胸が浮き立ったエミリーは、考えるより先にこう誘っていた。
 ──ヨーキィちゃん、泳ぎませんか?
「せっかく海水浴に来たんだし、思いっきり楽しみたいです!」
「うん! 是非一緒に泳ごう!!」
 ──行けるだけ遠く、堤防まで!

🕒️
『え、この泳ぎ方? ヨーキィちゃんは遊ぶための泳ぎはあんまり知らないからね』
 海へ飛び込んですぐのこと。ヨーキィが見せたのは、力強く本格的なクロールだった。さすが軍艦ベースだけある。
『エミリーちゃんの平泳ぎは、なんだか優雅で素敵だね。よかったら今度教えてよ』
 なんてウインクしてくれたけど、今はその速度が羨ましい。
「ヨーキィちゃん、結構速い……!」
 唸りながらも食らいつく。エミリーだって飛行艇の少女人形で、浮くのはちょっと得意なはず。
「ローリングもチョットデキル!」
 何故かカタコトで気合を入れ、クロールで追随。
「やるね、エミリーちゃん」
 息継ぎの合間にちらと振り向き、ヨーキィが笑った。お互い競泳水着で条件はイーブン。なら、先手を取れば有利と思ったが。
「平泳ぎで体力が温存できてたんだね!」
 ひとかき、水を掴むごと。一足、水を蹴るごとに、二人は少しずつ距離を縮めてゆく。近づいて、追いついて──。

「でも一歩! 勝った!!」

 先に堤防の壁をタッチしたのはヨーキィだった。ほんの僅か、及ばなかったエミリーと共に、ぜえ、はあ。
「はあ。ふふ。悔しい。ヨーキィちゃん、すごいです!」
 肺は空気を求めているのに、笑い出したくてたまらない。二人でどうにか堤防に登り、改めて称え合う。

🕓️
「普段は泳ぐこと少ないから、ヨーキィちゃんと一緒に泳げてよかったです」
 正直、堤防が見えてきたとき。エミリーはちょっと残念だったのだ。
 ──堤防までの距離そのものより。ヨーキィちゃんと、泳いでる時間の方が印象に残りそうなくらい、楽しくて。
 終わることが、寂しくて。
 だから、突然の勝負が嬉しくて。
 知ってか知らずか。ヨーキィは濡れた髪を絞りながら、満足げに頷く。
「色々出店とかもあるみたいだし、折角来たんだから、沢山、海を楽しもうよ!」
 ──また一緒に泳ごうね!
 堤防から共に水平線を臨めば、海原はどこまでも、広かった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

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