肉欲とはこれいかに
●肥えた肉より
どこにでもある焼肉屋。備長炭を使った炭火焼を個室で食べられる。高級感を味わえるとかなんとか。
街から離れ、ひっそりと佇む店を見つけた。まだ距離があるというのにいい匂いがここまで届いて来る。力なく腹の虫が鳴いた。これは我慢できん。
外見は屋根からダクトが何本も伸びている。何の変哲もない焼肉屋らしい外観。いささか小振りな店舗である。入り口を示す赤い暖簾をくぐり店内へ入り込む。
じゅぅ……パチ。
中は5つの個室と奥にキッチンへ続く扉があるのみ。受付もレジスターもない。かわりに脂が落ち、炎が燃え上がる音がそこかしこから聞こえてくる。店内BGMがピアノの演奏というのは珍しい。違和感なく受け入れられるのは演奏者の腕がいいからか。
香ばしい匂い、ニンニクの食欲を誘う匂いも漂ってきた。ホイル焼きをしている席があるらしい。
不意に生唾を飲む音が響いた。どこからか、自分からだと少し遅れて気づく。無意識に唾液がこぼれていたらしい。
入口すぐの席が空いている。ここにさせてもらおう。席にはタブレットと水のピッチャー。埋め込み式の焼き台。中にはすでにおきとなった炭があり、いつでも準備ができていた。
『いらっしゃいませ。心行くまでお楽しみください』
お通しを持ってきた店員が異様に蠱惑的な気がした。
●予知夢でも胃もたれはする
「……い、ぐすり」
水上・雪華は口元を右手で抑え、掴まる物を探すように左手を伸ばしていた。ゾディアック・サインが降りるのを待っていた能力者達は慌てて彼女を助ける。
胃薬と水を差し出された。ふらつく身体を支えられながら、彼女は薬を飲み込んだところで少し落ち着いたらしい。
「……お見苦しい所を、ありがとうございました。この度は√EDENにて事件が起きます」
未だに喉元をさする様子から、胃もたれのような状態だろうと周囲は察しを付けた。夢を見ただけで胃もたれするとは、どういう事だろうか、と疑問は深まるばかり。
「人間災厄による事件なのですが……えっと、その、皆様は焼肉というものはお好きですか?」
好き嫌い、どっちでも、熱量の差はあれどそれぞれの答えが聞こえてくる。これが胃もたれに繋がっているようだ。
「焼肉を餌に人間を集め、慰安をしています。いえ、ここまでなら平和なのはわかっているんです。ですが……来店した方が行方不明となったまま、なのです」
大変満足度の高い焼肉屋の利用客が行方不明となれば、警察が介入するはず。だが、それが起きていない。
帰りたくないのか、帰れないのか、どちらにしても碌なことにはなっていないだろう。
「元凶は人間災厄『グノシエンヌ』という音楽に連なる存在です。彼女を信奉している取り巻きが焼肉屋の方を運営しています。これ以上の犠牲者が出ないよう、両者の撃破をお願いします」
建物に関しては更地にする勢いで暴れても問題ない。山の麓にある為、山火事にだけ気を付けてもらえればそれでいい。
「用心しているのか、いきなり戦闘を仕掛けると逃げられてしまいます。最初は客として訪れ、油断を誘うのがよろしいかと」
心行くまで焼肉を味わい、食後の運動に戦うだけ、というシンプルな話だ。肉が苦手でも魚介や野菜も用意している為、誰でも楽しめるらしい。
「必要であれば胃薬もお持ちくださいね。備えあれば憂いなし、ですから」
見送るために頭を垂れ、そのままソファーに倒れ伏した。薬を飲んでも、肉が苦手な彼女には辛かったらしい。
マスターより

お久しぶりです、初めまして。紫雨です。
焼肉を楽しんでから、腹ごなしをしてもらう形となっております。
予知夢に出てきた人物はすでに犠牲となってしまったため、救出対象ではありません。
のんびりペースで執筆させていただこうと思っておりますので、よろしくお願いします。
皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
4
第1章 日常 『焼肉の時間だ!』

POW
どんどん焼いてどんどん食べる
SPD
丁寧に焼いてもぐもぐ食べる
WIZ
それはそれとしてアイスクリームとか食べる
√EDEN 普通5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●満たされた上質な脂
焼肉屋の厨房のさらに奥。この店を支配している女性、人間災厄『グノシエンヌ』がピアノを奏でていた。
離れた場所に食べごろの焼かれた肉が置かれている。
コロコロとしたホルモン、カリカリに焼かれた肉と香ばしい焼き色がついた状態の脂身。多種多様な部位が並んでいる。
「今日もぼくの演奏を楽しんでくれて、いい子だね。そのまま心も頭も開いてごらん」
足元で眠る人間に微笑みかけ、優しく撫でる。常識に凝り固まっていては楽しさを感じられない、というのが彼女の考えだ。
「きみはどんな味がするのか、楽しみだね」
ホルモンを口に運び、とても満足そうに微笑んだ。
彼女の元へ行くには焼肉を満足するまで楽しむのが早そうだ。油断を誘えれば行動もしやすいだろう。

「焼肉ねぇ…確かに美味しいし嫌いじゃないよ?――だけども、この歳になると脂ものは次の日がキツくなっちゃうんだよねぇ……だから、タン塩とホルモンだけ貰えれば十分かな。」
タンはサッと両面焼いて塩胡椒のみで。ホルモンは、壺系。味噌系をじっくり脂を落としてからゆっくり頂きます。
「あとはビールか、プレーンサワーがあればおじさんは満足しちゃうけど大丈夫かな?ダメかな……まぁ、一応仕事中だものね…。ぁ、ウーロン茶おねがいします。」
おじさんが、孤独に焼肉グルメを楽しみたいです。
他所の方々は、横目で見ながら心中で感想とか述べれれば…。
胃薬は、食べる前に飲む漢方系で万全態勢で挑みます。
指定無い部分はお任せします。
辺鄙な所にある、運営側に問題ありってところ以外は普通の焼肉屋と変わりない。
周囲をざっと見渡してから嵯峨野・伊吹(|警視庁異能捜査官の昼行燈《ナマケモノ》・h05558)は店へと入っていく。
(焼肉ねぇ……確かに美味しいし嫌いじゃないよ?――だけども、この歳になると脂ものは次の日がキツくなっちゃうんだよねぇ)
30超えると体にガタが出始め、40を超えると内臓にも不調をきたす、とはよく聞く話だろう。徹夜はできなくなり、脂物で胃もたれを起こす事はざらではないだろうか。
「タン塩とホルモンだけ貰えれば十分かな」
あっさりとこってり、これだけあれば充分となる。カルビやロースももちろん旨い。だが、胃が受け付けるかは別の話。
『お待たせいたしました』
注文が早かったからか、お通しも一緒に運ばれてきた。
軽くつまめるようにと塩昆布と和えたキャベツと共に、タンが並んだ皿と壺漬けされたホルモンが提供される。
ホルモンは味噌の一本漬けされており、焼きながら鋏で切る方式だ。これはやや遠火でじっくりと焼き、余計な脂を落し、表面をカリっとさせるのがいい。脂身がある裏面から焼くと脂が落ちすぎる、火が上がる原因となる為、表から焼くのだ。
ホルモンを育てている間に、タン塩を焼く。こちらは汗をかいたらひっくり返すのを数回、片面に焼き目がつけば食べごろ。塩胡椒をかけ、一口で頬張る。
「……」
(タン独特の程よい弾力に噛むほど溢れる肉の旨味。あぁ、これだよ。これ)
肉を噛みしめ、良質な脂を受け止める。塩胡椒のみだからこそ、味わえる旨味を飲み込んだ。
次は育てたホルモン。表面がカリッ、裏面の脂が透明になったところで一口大に切る。食べごろまで育ったホルモンは味噌の香ばしい香りが食欲を煽る。誘われるまま口に運んだ。
「……うん」
(これだよ。ホルモンの甘い脂に味噌の塩気がよく合う。嚙みしめるたび、脂が溢れて、たまらんなぁ)
ホルモンの脂を流すようにキャベツも齧る。あっさりとしたキャベツもいいが、この場で更に美味くする飲み物と言えば。
(あとはビールか、プレーンサワーがあればおじさんは満足しちゃうけど大丈夫かな? ダメかな……まぁ、一応仕事中だものね………)
欲望を抑え込んで、タブレットでウーロン茶を注文。もし、アルコールを頼んだのがバレたら……なんて思ったわけではない。
なお、胃もたれ対策は入店前にしていたことをここに記しておく。ホルモンの脂を舐めてはいない。
🔵🔵🔵 大成功

アドリブ・連携お任せ
うにゅ……お腹いっぱいになって眠くなったり、動いたらお腹が痛くなったりしたところを襲う算段でしょう?
まぁ……美味しそうなので食べますけど
(√能力を使用。なんとなく『フリヴァく』を呼び出してみて一緒にご飯を食べることに)
う~ん……とりあえずさっき見て美味しそうだったホルモンとカルビと……えっと(以下大量に)
ふにゅ……では、焼いて食べていきましょうか
(大量に届いた肉達を順番に焼いていき、焼けた端からお腹に収めていく。時々『フリヴァく』と育てているお肉の取り合いになりながらものんびり楽しそうに食べていく)
うにゅ……では、次の注文を……
(店のキャパでも調べているのかという領域へ…)
「うにゅ……」
(お腹いっぱいになって眠くなったり、動いたらお腹が痛くなったりしたところを襲う算段でしょう?)
席に着き、タブレットを操作しながら神咲・七十(本日も迷子?の狂食姫・h00549)は思案する。注文を迷っている様子にも見えて警戒されることはないだろう。
「まぁ……美味しそうなので食べますけど……」
彼女の隣には一緒に食事をしてほしいと彼女のアイドル『フリヴァく』も呼び出してみた。どこか見たことがある姿かもしれないが気にするものはいない。
『ふふ、私も誘ってくれて嬉しいわ』
「一緒に食べたいと思ったので……二人の方が楽しいですから……う~ん……とりあえずさっき見て美味しそうだったホルモンとカルビと……えっと……」
『食べ放題なら野菜関係も頼みましょう? お肉だけじゃバランスが悪いわ』
フリヴァくも隣からタブレットを覗き込み、野菜やご飯等注文を足していく。一般人であれば食べきれない量の注文がされていた。彼女達であれば問題はないだろう。
程なくして注文した品が運ばれてきた。本来は1種類ごと提供されるのだが、3、4種類ずつ乗せられた大皿が次々とテーブルにのせられていく。大皿と大皿の隙間にサラダやナムル、二人分の白米が置かれていった。
「ふにゅ……では、焼いて食べていきましょうか」
『そうね。全種類制覇しましょうか』
届いた順番に端から少しずつ焼いていく。最初は上カルビから。なお、しっかり焼かねばいけない内臓系は焼くスペースを決めて焼いていくようだ。
どの肉も基本は強火の場所に置き、汗をかくまでじっくりと火を通す。脂が炭に落ち、弾ける音が食欲を煽る。じんわりと肉が汗をかいてきたら、裏返す合図。次は中火の場所へ移動させ、裏返した側に焼き色がつけば食べ頃。
上カルビは噛むほど閉じ込められた肉汁が溢れ出す。肉の旨味、脂の甘みを味わい、白米を一口。肉の旨味と白米の甘みが合わさり、食が進む。
「お肉も甘いんですね……」
『アイスを頼んだから、口直しになると思うの』
極度の甘味中毒者なのを知っている為、フリヴァくが用意をしていた。一緒にいる時間が長い分、七十の事をよく知っている。
「ありがとう……隙ありです……」
『あぁ! 食べ頃だったのに……でも、こっちを貰うわね』
「うっ……」
フリヴァくが育てたホルモンは七十の皿へと攫われていった。彼女の無念の悲鳴が零れるも、代わりにと七十が育てたロースをいただく。これも焼肉の醍醐味なのかもしれない。ただ、やりすぎはほどほどに。食べ物の恨みは恐ろしいのだ。
「うにゅ……では、次の注文を……」
『まだ食べれるものね』
一通り頼んだ肉を堪能したら、次の注文を。どれくらい在庫があるのか、試すかのような注文の仕方であるが、本人たちは楽しく美味しく食事をしているだけ。
彼女達が満足するまで肉の宴は終わらない。
🔵🔵🔵 大成功

いやな予感したンでメシだけ食いにきましたチーッス。
いや食ったら帰る。顔合わせたくねぇからなァ、あの|「厄い」オンナ《グノシエンヌ》に
ま、存在を察されようが構わん!
元から一人焼肉好きだし、せいぜい楽しんで帰ってやらァ
よし!クソデカステーキ焼こうぜ!バカなサイズの!!ニンニクチップ乗せて!!
でもなんか混ざってるとイヤなんで……だってなあ?
一応『最後の晩餐』で警戒はしとく。刃物通せばなんでも食える!
あとは何にしよっかね〜
カルビと〜なんかちょうど良さげな肉盛り合わせと……ホルモン食いたい。マルチョウ
とりま全部三人前くらい。
見た目通りよく食うんでよろしく♡
ついでに生ビール大ジョッキな!!だっはっは!!
入店した際、室内に視線を飛ばし、様子を伺う巨漢が一人。表情を変えぬようにしているが、雰囲気に嫌悪が滲み出ていた。
(顔合わせたくねぇからなァ、あの|「厄い」オンナ《グノシエンヌ》に)
監視カメラらしきものがあるな。だからと言って下手に隠すなんて性に合わない。気配でバレるだろうが関係ない。ただ一人焼肉を食いに来ただけと 六宮・フェリクス(An die Freude・h00270)は笑う。
「よし! クソデカステーキ焼こうぜ! バカなサイズの!! ニンニクチップ乗せて!!」
(でもなんか混ざってるとイヤなんで……だってなあ?)
√能力『最後の晩餐』を使用して、ナイフや鋏で切った物を安全に食べられるようにした。
あのオンナが何か仕掛けていないとは限らない。特にフェリクスの存在に気付ているのであれば、だ。長い付き合いだからわかる。こちらの食事に何かしら手を加えてくる可能性が高い。
「あとは何にしよっかね〜」
迷っている口ぶりとは裏腹にタブレットを操作する指に迷いはない。カルビ、名物五種の盛り合わせ、マルチョウとそれぞれ三人前ずつに大ライス。がっしりした体躯の通り大食漢なのだ。
「おっと、忘れるとこだったぜ。ついでに生ビール大ジョッキな!! だっはっは!!」
最初に届くのは生ビール。飲食店では飲み物を先に出し、食事を待ってもらうのが一般的である。お通しとしてキャベツの塩昆布和えも一緒に届いた。
「カンパーイ!!」
ハイテンションのままジョッキをあおる。喉を流れ落ちていくビールの冷たさと口腔内に拡がるスッキリとした味わいと仄かな苦み。食事前の胃が喜ぶやつである。
続いて提供されたのは厚み10cmのサーロインステーキ。網の大部分を占拠する大きさのそれを焼き始める。ステーキの場合は表面を焼き固め、肉汁を閉じ込めるのが肝心。焼き色がついたところで裏返し、反対側も焼き色をつける。大部分に焼き色をつけたら、側面も焼いていく。全体的に焼き色がついたら完成。
ナイフでざっくりと切り分け、オニオンチップと共にかぶりつく。レアステーキ特有の弾力のある食感と溶けた脂の旨味にニンニクのパンチが合わさって満足感を刺激する。噛み締め、口に広がる肉汁の余韻をビールで流し込んだ。
「生ビールお代わり!!」
ゴクッゴクッと、喉を鳴らしながら飲み干した。美味い肉には生ビール、よく聞くフレーズだが、間違いない。
√能力のおかげか、特段体に不調は出ていない様子。警戒はしつつも食べる手は止まらない。
彼の晩餐は誰にも邪魔されることなく、彼が満足するまで続いた。
🔵🔵🔵 大成功

【ディスアーク】
「紅:っしゃ! 食べるぞー!
藍:|店を潰して《食べきって》も問題ないのでは?」
食べ放題の一番高いやつを選んで全品10品ずつ頼む。
肉を焼く役をかってどんどん食べる(両手利き)。肉とか生でも平気ではあるけど、焼くのがルールだしちゃんと焼く。皿でテーブルで埋まりそうになったらフタクチのほうに放り込んで(フタクチに味覚も歯もない)、どんどん皿を空ける。
酒はこの後のことを考えて70杯くらいに抑えてほろ酔いよりちょっと酔ったくらい。
あとは肉とか野菜をひたすら注文して食べる(店の在庫が無くなるまで)
「紅:で、あとは生きのいいナマモノかー
藍:腹の二か三分目ってとこか」

【ディスアーク】
ヒャッハー!焼肉パーリィーデース!大量に焼いて食うデース!
メニューを眺めてとりあえず高いやつから順番に頼んでいくデース!
肉が来たらまとめて焼きはじめ、レアからウェルダンまでいろんな焼き加減を楽しむ
三色がお酒を飲んでるのを見たら
「真綾ちゃんも飲んでみたいデース!」
それなりに食べて満足した後も店の在庫をなくすまで食べ続ける三色を見て
「三食、あれだけ食べて飲んでどこに消えていってるデース?」
人体の神秘デース
「ヒャッハー! 焼肉パーリィーデース! 大量に焼いて食うデース!」
「紅:っしゃ! 食べるぞー!
藍:|店を潰して《食べきって》も問題ないのでは?」
秘密結社ディスアークに所属する二人。ハイテンションで喋る少女、白神・真綾(|白光の堕神《ケツァルコアトル》・h00844)は単価の高い肉から注文をしていく。
その隣で左手がやる気満々に動いている女性、冥道・三色(一頭ケルベロス・h00943)は早くも食欲全開だ。
二人とも店の在庫を食い尽くすつもりらしい。食べ放題と聞いたら元を取るまで食べたくなるのが心理なのだろう。
「紅:あ、酒も酒も。とりあえず生だろ。他にも頼んでおかないと。
藍:飲み物はどれにしますか?」
「真綾ちゃんはコーラにしマース!」
左手で生ビールから始まってサワーやワイン、焼酎等端からアルコール類を注文していく三色。右目を真綾の方へ向けて注文を伺う。一つの身体に三人分の人格が宿っている都合、左右別々の動きが可能となっていた。
パーティーと言えばコーラだろう! という感覚かもしれない。刺激的な味と脂物の相性はとてもいい。キャッチコピーでもよく聞く奴である。
飲み物はすぐに届いた。生ビールとコーラの大ジョッキがテーブルに置かれ、その隣に赤と白ワインのデキャンタ、焼酎や日本酒の小ボトルと並べられる。サワー系が後にされたのは未成年が同伴しているからか。意外とその辺り厳しいのは世の流れかもしれない。
「紅:乾杯!
藍:乾杯」
「乾杯デース!」
二人がグラスを合わせる甲高い音が響く。グラスを傾け、勢いよく飲み込む。外は寒くとも温かい室内でキンキンに冷えた飲み物を飲むのは小さな贅沢だ。
「三色、お酒美味しいデース? 真綾ちゃんも飲んでみたいデース!」
美味しそうにビールを飲み干す三色の姿に真綾の好奇心が刺激されたらしい。並んでいるボトルの方に視線を向けて、目を輝かせている。
「紅:美味しいよ。私はこっちの方が好みだけどね。
藍:二十歳をなってからですよ」
左手が視線の先にあるボトルから日本酒の辛口を手に取り、別のグラスへと注ぐ。右目を細めやんわりとたしなめるのも忘れない。未成年の飲酒は法律で禁止されている。秘密結社と言えど守らねばならない。
「ぶー! その分、食べればいいデース!」
やり取りの間に、10人前ずつ盛り付けられた大皿も配膳される。ステーキや牛タン、ザブトンに壺が20個と一度に食べるのはかなりの量である。壺の中身は味噌漬けされたホルモンと10cm近いカルビがタレに付け込まれていた。
「紅:んじゃ、焼こうか
藍:追加で頼めばいいから、こっちはフタクチで食べましょう」
三色が率先して焼いていく。網の上にステーキ肉が置かれ、その周囲を牛タンが取り囲む。ステーキはじっくり火を通す必要がある為、しばらく放置。牛タンはさっと両面を炙るだけで食べられる。焼きあがった端から左手でお互いの取り皿にのせていく。
一度に焼ける量には限度がある。一部を残し、空中に呼び出した人間大の口に肉を食べさせる。フタクチと呼ぶ、三色のもう一つの口。味覚を感じる事はないが、彼女の胃に直接つながっている。三色が食べる分には生でも問題はない。地獄犬獣人である為、胃は丈夫なのだ。
「フー!! ステーキはレアもミディアムもウェルダンも食べたいデース!」
最初のステーキはレア。表面だけ焼き固めた状態で網から上げる。ナイフで切り分ければ綺麗な赤い肉が顔をのぞかせ、肉汁が一番多く溢れる。噛むほど肉の弾力と奥の方で血の風味を感じられる。
次はミディアムレア。半分ほど火が通った状態。こちらは切り分けるとレアより肉汁が少ない。先程とは違った肉本来の旨味と脂の甘みが溶け合い、また違った味わいを感じられる。
最後はウェルダン。中心部まで火を通した状態。切り分けた際に肉汁はほとんど出てこない。上質な肉の為、硬すぎる事もなく、噛み切りやすいのが特徴だろう。またしっかり加熱されている分、血の風味は一切ない為、全体的に食べやすい。
じっくりとステーキを楽しみつつ、合間に他に注文した肉も堪能する。どの肉も美味しい。味わって食べると次第に満腹になっていく。真綾はそれなりに満たされたところで箸を置いた。
「紅:で、あとは生きのいいナマモノかー
藍:腹の二か三分目ってとこか」
「三色、あれだけ食べて飲んでどこに消えていってるデース?」
もう何十杯目となるかわからないサワーを飲みながら、三色は呟く。宙に浮いているフタクチもどこか満足そうに見える。
途中から真綾は三色が食べている様子を見ていた。特にどこか変わることなく、最初と変わらないペースで食べ続けていたことに首を傾げる。
「紅:どこって、腹の中。
藍:まだ満腹には遠いですけどね」
飲み干したグラスを置いて、奥へと視線を向ける。まだ在庫が残ってるかもしれないし、もっと生きの良いものを食べられるかもしれない。
次の獲物はなんだろうか。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

私がこの仕事を続けているのは、√能力者としての使命、怪異解剖士としての好奇心、そして何より私の胃袋を満たしてくれる“タダ飯”にありつけるからだ。いつもごちそうさまです。
とりあえず、白米と……カルビ、サガリ、ジンギスカン……メニューを見ながら上から順番に注文しよう。おお、もちろん生ビールも。仕事中? 堅苦しいことを言うな。これもほら、敵の油断を誘うためだよ。
……肉は良い。私にとって肉の味は勝利の味だ。まあ、これも前祝いみたいなものだな。同席する仲間がいるなら乾杯でもしたいものだが……さすがに気が早いか。一応、取り巻きの人数と配置の確認はしておこう。あとは……酒の飲みすぎには注意しよう。
真上・モニカ(ハラペコ博士・h05524)は神妙な顔つきで入店し、自然な様子で様子を伺う。店員からは初めて焼肉店に来た少女に見えているかもしれない。
(私がこの仕事を続けているのは、√能力者としての使命、怪異解剖士としての好奇心、そして何より私の胃袋を満たしてくれる“タダ飯”にありつけるからだ)
席に着くまでにすれ違う店員は二人。忙しそうに大皿を持って厨房と往復している。
「いつもごちそうさまです」
タブレットを操作しながら小さく呟いた。何でも食べたい彼女のエンゲル係数を考えたら……末恐ろしい事になるだろう。
「とりあえず、白米と……カルビ、サガリ、ジンギスカン……」
白米は大サイズ、肉もまずは一人前ずつ頼んでいく。上から全部頼んでいく為、一人前と言えどかなりの量になるだろう。
「忘れるところだった。これも頼まねば」
(焼肉と言えば生ビール。食事にアルコールは必須だ。これも敵を油断させるため)
誰に対してか言い訳をしながら生ビールも注文。脂物とアルコールの相性が良い為、どうしても欲しくなる。
「……うまい」
提供された生ビールのジョッキを煽る。仕事の成功の前祝いも兼ねていた。モニカにとって、肉は勝利の味。
網の上ではすでに肉が並べられており、じっくりと焼かれている。
サガリは牛の腰椎側の横隔膜であっさりとした脂に柔らかな肉質が特徴。焼いても硬くなりにくく、脂っこくなりにくい為、食べやすい。
焦げ目のついたサガリを頬張る。噛むたびに肉がほどけ、香ばしさと肉の旨味が口の中に溶け出した。
次の肉に箸を伸ばしながら、動き回る店員へ再度視線を投げる。食事に夢中になっているふりをしながら、相手の様子をうかがっていた。
(ホール側は二人のままか。奥にいる人数も多くはなさそうだな)
慌ただしく動いている店員の顔が変わっていない。厨房の人数が足りていないから、ホールのフォローができていないのだろうと推測できる。
(取り巻きの数は少なと言ったところか……飲みすぎないように気をつけねば)
勝利の前祝いをしているが、油断して負けたとならないように節制はしておかねばならない。追加で頼もうとしていたビールは烏龍茶へと変更される。万が一ということがあるからだ。
注文したものを食べきり、誰も彼もが空腹を満たされた頃、やっと相手側が動き出す。
ここからは腹ごなしの運動のお時間だ。
🔵🔵🔵 大成功
第2章 集団戦 『堕ちた討魔忍』

POW
討魔忍法・|滅殺の陣《キリングコンビネーション》
【苦無投擲】や【銃撃】による牽制、【鎖分銅】による捕縛、【各々が得意な属性の遁術を付与した忍者刀】による強撃の連続攻撃を与える。
【苦無投擲】や【銃撃】による牽制、【鎖分銅】による捕縛、【各々が得意な属性の遁術を付与した忍者刀】による強撃の連続攻撃を与える。
SPD
討魔忍法・|隠れ身の術《ステルスモード》
【隠密】の体勢を取る。移動力と戦闘力を3分の1にする事で、肉眼以外のあらゆる探知を無効にする。嗅覚・聴覚・カメラ・魔術等、あらゆる探知が通用しない。
【隠密】の体勢を取る。移動力と戦闘力を3分の1にする事で、肉眼以外のあらゆる探知を無効にする。嗅覚・聴覚・カメラ・魔術等、あらゆる探知が通用しない。
WIZ
討魔忍法・|影分身《ファントムミラージュ》
半径レベルm内にレベル体の【分身】を放ち、【隠密行動】による索敵か、【忍者刀】や【苦無投擲】による弱い攻撃を行う。
半径レベルm内にレベル体の【分身】を放ち、【隠密行動】による索敵か、【忍者刀】や【苦無投擲】による弱い攻撃を行う。
√EDEN 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
楽しい宴の時間は唐突に終わりを告げる。店員に扮していた『堕ちた討魔忍』達が次の工程へ移るために動き出した。厨房担当もホールへと移動し、誘導に加わる。合わせて5人。
『お客様、お食事はご満足いただけましたか? この後は主による演奏会となります。最奥の間にて主がお待ちです』
一般人相手でも警戒しているところは堕ちたと言えど戦う者。奇襲を仕掛けるのであれば何か策をたてる方がいいだろう。
『ご移動を。極上の音色による癒しがあります』
恭しく振る舞いつつ、会釈程度に頭をたれる。主と決めた者の元に不埒者を連れていくことはできない、という覚悟の現れだろう。
誘導に従い奥へ向かいつつ仕掛けるのも、この場で仕掛けるのも能力者達の自由だ。
どんな手段であれ、彼女達を倒し、この奥に潜む存在を討伐せねばならない。

アドリブ・連携お任せ
う~ん、奥……ですか
あっちに行く前に人数を減らしたいところですね
『フリヴァく』ちゃん、ちょっとお願いが……
(√能力を使用。引き続き『フリヴァく』を呼び出した状態にして個室に寝かせた状態で待機させて置き)
あの~、すいません
連れの『フリヴァく』ちゃんが食べ過ぎて少し動けなくなっているので手を貸して貰ってもいいですか?
(そう言って一人を個室に誘導する。食べ過ぎで動けない様に見せている『フリヴァく』とテーブルの上の皿で説得力を持たせて警戒を解いてから、起き上がらせようと『フリヴァく』に近づく討魔忍に前後から挟んで、左右の耳から直に攻撃曲『アイズ』を聞かせて隷属化してしまおうとして)
「う~ん、奥……ですか」
(あっちに行く前に人数を減らしたいところですね)
案内のアナウンスに神咲・七十(本日も迷子?の狂食姫・h00549)は思案する。奥にいるボスを含め6人、少しでも減らした方が後の戦いが楽になるというもの。
「『フリヴァく』ちゃん、ちょっとお願いが……」
『どんなお願いかしら?』
満足げに口元を拭いていたフリヴァくの耳元に七十は顔を寄せる。ヒソヒソと可愛らしくお願いを伝えた。
彼女に隷属していてもフリヴァくはアイドル。愛しいファンに請われたら喜んで手を貸す。
「あの~、すいません」
フリヴァくは個室の椅子へ横になる。できるだけぐったりと具合が悪く見えるように。それが七十から頼まれた事。
彼女を心配した七十が店員である堕ちた討魔忍を呼んだ。弱っているところを見せ、油断を誘う作戦のようだ。
「連れの『フリヴァく』ちゃんが食べ過ぎて少し動けなくなっているので手を貸して貰ってもいいですか?」
『動けなくなる方は多いですから。お任せください』
七十に呼ばれた堕ちた討魔忍はいつもの事と個室へ入る。慣れた手つきで横になっているフリヴァくを抱き上げようと屈んだ。
身体を起こそうとしてフリヴァくは手を伸ばし、彼女の首へと回して、左側の耳元で囁く。それは魅力的な声音でアイドルらしく軽やかに。
『心を込めて歌うわ』
「私たちのデュエット、聞いてください」
堕ちた討魔忍の背に身体を預けるようにして七十も反対、右側の耳元へ顔を寄せる。油断した堕ちた討魔忍は気付かない。これが致命的であるという事実に。
アイズ、それは七十へ隷属させる攻撃曲。熱狂的な熱を孕んだ歌は聞く者すべてに影響を与える。
堕ちた討魔忍が異変に気づいたが、振り払えなかった。二人の歌声が脳を直接揺さぶり、思考を、意思を書き換えていく。グノシエンヌを心酔する意思ごと掌握され、次第に彼女の身体から力抜けていった。
動けなくなった一般人と油断していたせいか、抵抗する為の用意ができていなかったのもあるだろう。
『……何なりとお申し付けを』
仮面で表情は見えないが、堕ちた討魔忍は二人の前に膝をついた。主からの命を待つ従者のように、静かにそこにいる。
「まずは一人ですね。『フリヴァく』ちゃん、ありがとう」
『どういたしまして。愛しいファンの為だもの。当然だわ』
二人は顔を見合わせ、微笑む。相手の手勢を削るのもまた大事な戦略なのだから。
🔵🔵🔵 大成功

【ディスアーク】
お肉美味しくてお腹もいっぱいになったしそろそろ食後の運動したいデース!
「ここの主による極上の音色による癒しデース?痛みの叫びや恐怖の悲鳴や後悔の鳴き声や絶望の嘆きとかデース?真綾ちゃんとっても楽しみデース!」
うっきうきで席を立つデース!
店員が邪魔をするようならさっさと片づけるデース
「メインディッシュの前の前菜デース!食い散らかしてやるデース!」
歯応えあるといいデース!
「それじゃぁ、真綾ちゃんのクッキング教室始めるデース!まずは食材を強火で芯まで徹底的に焼き焦がすデース」
驟雨の輝蛇で灰になるまで焼き尽くす

【ディスアーク】
「紅:肉ってまだある? あんたらで良いけど
藍:ここで戦うならこのまま閉店かな」
二人のうち紅の時は鎌、藍の時は槌とどちらが戦闘の主軸を取るかで使い分ける。
|武器《歯》による範囲攻撃で店のモノを|壊してフタクチに放り込んで《噛んで飲み込んで》いく。
放り込むのが店のモノであればなんでも良い。残った肉でも皿でも机でも。まあ店員だったモノは踊り食いにはならないようトドメ刺してから食べるけども。
「紅:これであとはメイン?
藍:さっきのが口直しで次のはデザートじゃない?」
平和に無力化している一方、こちらは物騒な雰囲気。アナウンスに対して白神・真綾(|白光の堕神《ケツァルコアトル》・h00844)の考えからも伺えるかもしれない。
「ここの主による極上の音色による癒しデース? 痛みの叫びや恐怖の悲鳴や後悔の鳴き声や絶望の嘆きとかデース? 真綾ちゃんとっても楽しみデース!」
勢いよく席から立ち上がる。両手を打ち鳴らしたり、上げたり、心から楽しみにしているようだ。
『あの方の演奏は何物にも代えがたいモノ。悲嘆にくれることなどなく癒しを与えていただけます。他の野蛮な存在と同じと思わないでいただきたい』
こちらは苛立ちを隠そうとせず、真綾の言葉に反論を口にした。堕ちた討魔忍にとって心酔する切っ掛けが音楽だったらしい。落ち着きを払った店員としての態度が崩れている。
「紅:肉ってまだある? あんたらで良いけど
藍:ここで戦うならこのまま閉店かな」
ハイテンション真綾の横では冥道・三色(一頭ケルベロス・h00943)がまだ物足りないと唾液がついた犬歯の大鎌を向けていた。その様子に堕ちた討魔忍は呆けた表情を浮かべるも、すぐに切り替える。
『追加のご注文はお受けできません。ここからは演奏の時間ですから』
『なんと野蛮な! あの方の前にお連れできません。ここで始末します』
二人の言葉に血相を変え、堕ちた討魔忍の二人は印を結んだ。その場に20を超える分身が忍者刀を構え、現れる。
「わお! メインディッシュの前の前菜デース! 食い散らかしてやるデース!」
「紅:その気になるの早くない?
藍:それだけ大事なんでしょ」
真綾は好戦的に笑い、三色は当然と言わんばかりに大鎌を構えた。邪魔立てするモノ全て壊して、平らげてしまおう、と。
「それじゃぁ、真綾ちゃんのクッキング教室始めるデース! まずは食材を強火で芯まで徹底的に焼き焦がすデース」
粒子状のレーザー発生装置であるレイン砲台を起動。雨霰のようにレーザーが発射されていく。広いとは言えない店内だ。20数人となれば身動きが取りにくく、回避行動も難しい。複数人まとめてレーザーに貫かれ、塵へと姿を変えていく。
「紅:|切り刻んで《よく噛んで》食べないとねー
藍:|粉砕して《しっかり噛んで》食べないと」
レーザーの間を潜るように三色が前に出る。机も壁も邪魔なものはすべて壊してフタクチで食べていく。壁がバターのように切り裂かれ、クッキーのように噛み砕かれている姿は圧巻だろう。
レーザーを逃れられた敵に肉薄、大鎌を振るい、首をはねる。どんな物も無駄にしない、と倒れゆく体はフタクチが受け止め、のみ込んだ。
堕ちた討魔忍は仕留めてからでなければ食べられない。敵とは言え、踊り食いをするわけにはいかないからだ。
動く敵が居なくなるまで、二人の攻撃が途切れることはない。やるなら徹底的に、だ。
「上手に焼けましたデース!」
「紅:これであとはメイン?
藍:さっきのが口直しで次のはデザートじゃない?」
残っていた分身も綺麗に焼き尽くし、上機嫌な真綾。軽口を叩きながら、周囲を警戒しているのが三色である。いまだに彼女の空腹が完全に満たされることはないが、フタクチは満足げに吐息をこぼしていた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

さて、仕事の時間だな。人数はそこまで多くはないが、警戒しているようだ。不意打ちはあまり得意ではないから、奇襲を仕掛ける者がいるなら、その攻撃に合わせて、シリンジシューターで制圧射撃を行おう。仕掛けるタイミングは他の仲間次第だが、親玉にたどり着く前には倒しておきたいな。
一度戦闘が始まれば、隠密も、一般人のフリも必要ないので、鬼切包丁で暴れさせてもらおう。最悪、更地にしても良いとのお墨付きももらってるしな。√能力も使用し、多少周囲のものを壊しても、敵を確実に仕留めておきたい。
『行儀の悪いお客様が来ていたとは……あちらは大丈夫だろうか』
二人組が大暴れをし始めた時、機を伺っていたもう一人も行動を起こす。不意打ちが苦手な彼女、真上・モニカ(ハラペコ博士・h05524)は喧騒に気を取られた堕ちた討魔忍に、シリンジシューターを向けた。
「さて、仕事の時間だな。大人しくしておくれ」
一般人のふりを止め、冷静に対処すべくトリガーを引く。敵の足止めを兼ねて毒薬入り注射器を放った。直撃すれば致命傷、掠っても四肢の動きを阻害される強力な毒が込められている。
『っ、貴女もですか。今回はとんだお客様ばかりですね』
注射器が空を切る音を聞き、咄嗟に忍者刀で注射器を切り払う堕ちた討魔忍。落ちた毒薬は強力なようで床を溶かしている。
「そう簡単にはいかないか。確実に倒すまでのこと」
身の丈ほどある中華包丁の形をした万能霊刀、鬼切包丁に持ち替える。遠距離がダメなら近距離で。
『援護を。これ以上好きにさせるわけにはいきません』
奥に控えていた仲間に声をかけ、2人がかりでモニカを倒す算段らしい。苦無投擲による援護を受け、彼女は炎の遁術を纏わせた忍者刀を構え、踏み込む。ここで引くわけにはいかないからだ。
「当たるも八卦当たらぬも八卦」
それはモニカも同じ。倒すべき相手はまだいるのだ。ここで止まるわけにも倒されるわけにもいかない。
投擲された苦無を見切り、迫る敵に集中する。炎をまとっていようと相手より先にこの一撃が当たれば問題なく倒せるのだ。
小柄な体躯をさらに小さくするように両足に力を込め、飛び込む。互いの間合いが重なる刹那、構えていた鬼切包丁を飛び込んだ勢いを上乗せして横薙ぎに一閃。
忍者刀から炎が消え、腹部から両断された堕ちた討魔忍が倒れた。その身体が塵となり、朽ちていく。
奥にいた堕ちた討魔忍も戦闘の余波なのか、倒れていた。建物自体が大変もろくなっているせいかもしれない。
「これは更地にするほうが早いね。問題ないって言っていたし」
建物の奥にいるというボス諸共、自分達も生き埋めにならないか少し心配にもなる。きっと大丈夫だろうと信じるしかない。
配下であり、店を回していた堕ちた討魔忍達はすべて無力化することに成功した。
🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『人間災厄『グノシエンヌ』』

POW
第1番
自身の【幻影の鍵盤】を【蒼白】に輝く【ピアノ線のようなレーザー鞭】に変形させ、攻撃回数と移動速度を4倍、受けるダメージを2倍にする。この効果は最低でも60秒続く。
自身の【幻影の鍵盤】を【蒼白】に輝く【ピアノ線のようなレーザー鞭】に変形させ、攻撃回数と移動速度を4倍、受けるダメージを2倍にする。この効果は最低でも60秒続く。
SPD
第2番
【幻影の鍵盤を演奏して放つ音波】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
【幻影の鍵盤を演奏して放つ音波】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
WIZ
第3番
【幻影の鍵盤】から【洗脳効果のある音楽・音波】を放ち、命中した敵に微弱ダメージを与える。ただし、命中した敵の耐久力が3割以下の場合、敵は【発狂】して死亡する。
【幻影の鍵盤】から【洗脳効果のある音楽・音波】を放ち、命中した敵に微弱ダメージを与える。ただし、命中した敵の耐久力が3割以下の場合、敵は【発狂】して死亡する。
√汎神解剖機関 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
鳴り響いていた破壊音も戦闘音も止まり、静寂が室内に降りる。見るも無残となった内装では今後の活動はでいそうにない。
『案内が遅いから出向いてみれば、これはこれは』
厨房の方から妖艶な女性、『人間災厄『グノシエンヌ』』が姿を現した。やんちゃをして仕方ないなという様子で笑っている。
『食欲を満たし、破壊欲を満たしたところかな? 常識に囚われていないのは良いことだ』
鍵盤を呼び出し、音の確認をするよう静かに指を走らせた。奏でられる音に問題はなく、調律は完璧である。
『ふふ、ぼくの音に頭を開いてごらん。大丈夫、怖いことなんてないからさ』
ただただ音楽を聴いてほしい、幸福に導きたいだけではないだろう。か弱く見えても音楽由来の人間災厄。見た目に惑わされてはいけない。

親玉のおでましのようだな。……お肉は美味しかったよ、ありがとう。ただ、勘違いしているようだが、食欲についてはまだ満たされているとは言い難い。君を倒して、食事の続きをしたいな。
基本的な戦術は変えないで行こう。√能力を使用しながら、鬼切包丁で戦う。攻撃が当たるようなら、そのまま力押しで、外れても敵の手数を減らせれば、こちらのダメージも軽減できるだろうか。
さすがに店の下敷きになっては、出るのが大変だし、お肉ももったいない。多少は気を遣うつもりだが、相手を倒すことを優先しよう。

アドリブ・連携お任せ
ふにゃ……では、美味しいお肉と綺麗な音楽のお礼といきましょう
と言うわけで、お願いしますね『フリヴァく』ちゃん♪
(√能力を使用。引き続き『フリヴァく』を呼び出し続けて、回復曲『チル・マイ』を歌って貰いながら、先ほど隷属化した討魔忍含めた隷属者達と共にエルデを持って突撃。防御は全て再生力で補って、隷属者達と連携しながら攻撃して弱らせていく。注意を自分と隷属者に釘づけにし、近づいてくる『フリヴァく』に気付かせない様にして)
さて、では私達からのお礼も貰ってください
(十分近づいたら隷属者達に動きを制限させて、グノシエンヌの至近距離から攻撃曲『アイズ』を聞かせて隷属化しようとして)
「親玉のおでましのようだな。……お肉は美味しかったよ、ありがとう」
真上・モニカ(ハラペコ博士・h05524)は鬼切包丁を構えたまま素直に謝意を示す。無限の食欲を有する彼女にとって腹八分にも満たない量だったかもしれない。敵であれ、食に関して誠実であろうとするのが彼女だ。
「ただ、勘違いしているようだが、食欲についてはまだ満たされているとは言い難い。君を倒して、食事の続きをしたいな」
満たされぬ食欲に忠実なのもまた彼女である。油断なく相手と隣室から現れた能力者の様子を伺っている。
「ふにゃ……では、美味しいお肉と綺麗な音楽のお礼といきましょう。と言うわけで、お願いしますね『フリヴァく』ちゃん♪」
『ふふ、もちろんよ。美味しいご飯のお礼はたっぷりしなくちゃ、ね』
神咲・七十(本日も迷子?の狂食姫・h00549)と寄り添うようにフリヴァくは微笑む。彼女達の足元には隷属化された討魔忍が膝をついたまま微動だにしない。また、彼女達の背後にはこれまで隷属化した者達も控えていた。
『おや、ぼくの可愛い子を手懐けたのか。困った子達だ』
グノシエンヌは微笑み、幻影の鍵盤に指を滑らせる。途端、鍵盤はピアノ線のようなレーザー鞭にその姿を変えた。
『聞き分けの無い子を手懐けるのも楽しいからね。可愛い子達、遊ぼうか』
いささか嗜虐的な笑みを浮かべ、遠慮会釈なく彼女は鞭を振るう。かつての配下であろうと敵体したのであれば躾直しの対象らしい。
「情があろうと一切考慮しないか。こちらもやることは変わらない」
鬼切包丁に霊力を流し、モニカは床を強く踏み込む。一撃でも当てられればいい。外れてもこちらが有利になるよう狙いを定める。
「手筈通りに」
『えぇ。貴女も気を付けてね』
浸食大鎌『エルデ』を手に七十も駆け出す。その後を隷属者達が続く。
フリヴァくが見送り、静かに息を吸いこんで、歌った。それは再生を促し、隷属者を生み出す歌、チル・マイ。彼女の歌声は室内に響き、次第に彼女の姿を隠すように隷属者達が増えていく。
『ぼくの為に歌ってくれるのは嬉しいものだ。手加減はしないけれど』
|彼女自身《グノシエンヌ》でなくても音楽から生まれた|グノシエンヌ《彼女》は音楽を愛する。フリヴァくの歌声を堪能する余裕があるようだ。
「余所見していていいのかね?」
小柄な体躯を生かしてモニカがグノシエンヌの懐まで飛び込む。下から鬼切包丁を下から振り上げた。
『ぼくは全員を愛するよ。だから、きみの事も見ているさ』
その一撃は鞭に受け止められた。金属がぶつかり合う甲高い音を立て、拮抗する。慈愛をにじませた微笑みをモニカへと向ける。
「私、『フリヴァくちゃん』に愛してもらっているので結構です」
やや不愉快ような表情で七十がグノシエンヌの上から大鎌を振り下ろす。追撃のようにグノシエンヌを左右からも苦無や銃弾が襲いかかる。
『つれない子だ。そういう子はたくさん聞かせてあげないとだ』
後方へ飛び退き、挟撃と頭上からの一撃を回避。更に踏み込んで追いすがる影が一つ。
「そう簡単に手懐けられると思われるのは心外だな」
姿の通り可愛らしい存在だと思われたのが嫌だったのか、追いすがり、肉薄したモニカの鬼切包丁が再度振るわれた。
上から下、袈裟に斬られ、白い肌に黒い服に鮮血の赤が花開き、艶やかな肉が断面から窺い知れる。脈打つ要まではまろびでることは無かったが、致命となり得る深手を受けてしまった。
『じゃじゃ馬ばかりかな? あまりおいたが過ぎるのは良くないんじゃないかな』
「さて、では私達からのお礼も貰ってください」
傷を抑えることなく、鞭を構えるグノシエンヌへ花が綻ぶような笑みを七十は向ける。その視線の先、グノシエンヌの背後に愛おしいアイドルがいたから。大量の隷属者達の影に隠れ、移動をしたようだ。
『力を抜いて、受け取ってくださいな』
彼女は背伸びし、グノシエンヌの耳元で呟き、歌いだす。隷属を促す歌、アイズを。
甘美で従いたくなる魅力を、魔力を、直接耳から流し込んでいく。深手を負っている今なら、手に入れる事ができるかもしれない、と。
事実、グノシエンヌの瞳から光が消えかけていた。
けれど、彼女は膝をつかなかった。何故なら、|グノシエンヌ《彼女そのもの》が奏でられたから。
『っ……危ない危ない。あまりにも可愛らしい歌声に惑わされそうだった』
ふらつく身体に力を入れ、幻影の鍵盤を手元に呼び出す。軽やかに滑らかに、|グノシエンヌ《彼女自身》を奏でる。自らを奮い立たせるように、隷属の歌をかき消すように。
『ぼくが欲しくてもあげられないな。ぼくはぼくだけのものだからね』
光が消えかけていた瞳には再び活力が宿る。痛手を負いつつ、精神を蝕まれてもなお、グノシエンヌは笑っていた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

私はクアドラ。偶然居合わせたデッドマンの少女よ。私もお手伝いするわ。
戦闘で使用する武器はマルチツールガンかパルスブレードで、何か手頃な材料があれば武器・防具改造も出来るわ。工作は得意なの。
私のレギオンの武器はミサイルとバルカン砲で、状況に合わせて援護射撃と制圧射撃を使い分けるわ。ロボットアームで物も持てるけど、めいっぱい頑張って50kg位までが限界かしら。
あと、公序良俗に反する行動や他の参加者の迷惑になるような事はシナリオを成功させる為でもやらないわ。それが守られていれば、アドリブも連携も歓迎よ。
諸々そんなに細かい設定はありません。お好きに動かしていただければ幸いです。よろしくお願いします!
ツギハギが目立つ少女、クアドラ・キューブ(人生は続く・h01230)は状況を確認し、構える。彼女の背後には小型無人兵器『レギオン』を率いていた。
「私もお手伝いするわ」
建物の損壊状況から制圧攻撃可能と判断。レギオンコントローラーから命令を伝達する。バルカン砲をグノシエンヌに向け、銃声が鳴り響いた。
『おや、これはまた可愛らしい子がいらしたね』
心身共に深手を負ってなお、グノシエンヌは微笑む。どんな相手であれ音楽は平等だから。
幻影の鍵盤に指を滑らせた。クアドラへと|グノシエンヌ第3番《彼女自身》を奏で、傅くようその精神を蝕む。鍵盤から生み出された音波にて弾丸を撃ち落としている。
「動きの阻害を優先。長く聞きたくないわね」
適宜、レギオンに指示を出しつつ、クアドラはマルチツールガンを握り、狙いを定めた。近くに寄るのはより危険と判断。
胸部に深手を負っている、手を使っての攻撃、それだけ分かればどこに追撃すべきはすぐに出てくる。
彼女は引き金を引いた。光線は音波の障害を乗り越え、グノシエンヌの手と鍵盤を狙撃。
甲高い音を立て鍵盤は砕け散り、肉を焼く妙に鼻につく臭いがする。
『店だけではなくぼくまで……おいたがすぎるね』
被弾した手を庇い、グノシエンヌははじめて怒りをあらわした。
🔵🔵🔴 成功

【ディスアーク】
アドリブ歓迎
ヒャッハー!メインディッシュのお出ましデース!食い応えがありそうで楽しみデース!
「真綾ちゃんリクエストするデース!痛みの叫びと、恐怖の悲鳴と、後悔の泣き声と、絶望の嘆きを聞きたいデース!真綾ちゃんとっても楽しみデース!」
崩れた室内戦ではプロテクトビットの防御シールドを自身の足元に展開して足場を固定しつつ、サプライズボムで相手の足元を更に崩したり背後に展開させたマルチプルビットによる砲撃で体勢を崩させて攻撃や防御を妨害しつつ、フォトンシザーズで斬りかかる
ある程度弱らせたら√能力で首を刈りに行く
「その首貰ったデース!」

【ディスアーク】
「紅:こうゆう時なんて言うんだっけ?
藍:花より団子……じゃなかった?」
まあ食べることしか考えてないし。
臼歯の大槌──藍主体の戦闘に切り替える。
こちらに飛び道具はないので、やることはただ一つ。
大槌を敵目掛けてぶん投げる。√能力で攻撃範囲が広がっているから少し避けた程度では避けられない。加えて大槌に意識が集中するからその間に距離を詰めて後ろから新たに生成した大槌で叩く噛む!
あとは距離を取られないように大槌を振り回してその槌で攻撃すると見せかけて横からの攻撃は拳や蹴りで攻撃して、槌で上から叩く。
倒したら残さず食べる。それが目的かつ自分の思想的に大事なことなので。
『なんで、受け入れてくれない。ぼくはきみ達を|満た《幸せに》したいだけなのに』
怒りを滲ませながら、グノシエンヌは訴えかける。腹を頭を満たす事で幸福の内に|終わる《眠る》事は悪くないだろう、と。
「紅:こうゆう時なんて言うんだっけ?
藍:花より団子……じゃなかった?」
犬歯の大鎌から臼歯の大槌に持ち替えた冥道・三色(一頭ケルベロス・h00943)は呟く。ここまで食欲を優先している彼女、花より団子が良く似合う。
「真綾ちゃんリクエストするデース! 痛みの叫びと、恐怖の悲鳴と、後悔の泣き声と、絶望の嘆きを聞きたいデース! 真綾ちゃんとっても楽しみデース!」
来店時より白神・真綾(|白光の堕神《ケツァルコアトル》・h00844)のテンションは更に上がっていた。足元にプロテクトビットを展開し、すでに殺る気充分。
『血気盛んな子達だね。まだ満たされていないというのであれば、ぼくが満たしてあげよう』
グノシエンヌは幻影の鍵盤を撫でる。その鍵盤は彼女の頭上へ、そして独りでに第3番を奏で始めた。新たに呼び出した鍵盤をレーザー鞭として構える。
腕が使えなくなったとしても、音楽を奏で続けるのが彼女なのだ。
「お上品すぎデース! 真綾ちゃんのリクエストと違うデース!」
奏でられる音楽をかき消すように、グノシエンヌの周囲が爆発した。先の戦闘時に真綾が仕掛けたサプライズボムが起爆したから。粉塵が舞う中に三色は大槌をぶん投げた。
『いつの間に。ぼくの演奏の邪魔をしないでもらおうか』
突然の爆発に足を取られ、飛んでくる大槌を鞭を両手に構え受け止める。あまりの重さに膝をついてしまった。だが、それだけでは|彼女《グノシエンヌ》を止める事はできない。
「紅:畳み掛けるべきだよね。
藍:逃がしはしないよ」
「これも追加デース!」
グノシエンヌの狙いを一つに絞らせないように二人は立ち回る。
壁を蹴り、グノシエンヌの後方へ回った三色は新たに生成した大槌を振り下ろす。
マルチプルビットを指示し、左側から仕掛ける真綾。グノシエンヌの回避先を減らすように追い詰める。
『っ……まだ、だ』
一発目の大槌を弾き、後方へ意識を向けるも身体がいう事を聞かない。無理やりに左腕を上げ、鞭を振るい、大槌の直撃を防ごうとするも、叩きつぶされる。
動けない身体は電撃ワイヤーに絡め取られ、これ以上、動く事が出来ない。奏でる音楽にも陰りが出てきたのか、二人の精神が揺らぐ様子が見えない。
「その首貰ったデース!」
「紅:|切り刻んで《よく噛んで》食べないとねー
藍:|粉砕して《しっかり噛んで》食べないと」
身動きが取れないのであれば、ここまで。フォトンシザーズを構えた真綾も飛び込んできた。グノシエンヌの首を切り落とす為に。
残さず食べる為に叩きつぶす。食べる事を大切にしている三色だからこそ、そこには敬意が宿っていた。
『ここまで、なんて……』
斬られ、押しつぶされ、麗しき体躯は見る影もない。首を刎ねられて尚、言葉を呟けるのは彼女が音楽から生まれたからか。
それもすぐに途切れた。消えゆく体躯を三色が胃袋におさめたから。
「紅:ご馳走様。
藍:いただきました」
「これでお仕事完了デース! 真綾ちゃん達の大勝利デース!」
満足げな二人が店を後にする。最期の退店を見届けて、店は崩れた。
最期まで音楽から生まれ、音を奏で、音と共に消えた人間災厄『グノシエンヌ』此度の演奏はこれにて終演となった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功