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湯水の如く

#√汎神解剖機関 #ノベル #グロテスク #根源

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 楽園だろうと地獄だろうと現世だろうと、資料が存在するのならば其処は既知へと落ちるべきだ。天だろうと地だろうと、その狭間で在ろうと、紐解く事が容易なのであれば悉くは堕ちたと謂えよう。酩酊した蛇の如くに蜷局を巻き、這い蹲っていようとも何もかもはハッキリと出来るものだ。此処が堕落のスタート地点なのだとしても、嗚呼、わざわざ逆走を試みる必要など欠片としてない。どうせ死ぬのだ。結局、死ぬのだ。死ぬのであれば如何して安楽の二文字に縋る必要がある。これは疑問ではない。かといって宣告でもない。只の日常会話でしかないのだから、まったく、誰が返答を『せよ』と期待しなくてはいけないのか。わたくしは確かに正義ではある。わたくしは、わたくし自身を『正義の側』として認識する事くらいはできる。それこそ、彼等、彼女等みたいに『正義の味方をする』事は可能なのだ。だが、諸君、わたくしは諸君に、正義の為の『いけにえ』というものを強制しなくてはならないのだ。いや、しかし。案ずるな! どうせ末端だと。重要なパーツだけを取り出してしまえば、残りは破棄処分だ――云々と、勿体ないことはしないのだ。わたくしの血の色は赤ではないが、それでも、人間精神というものは理解できているのだ! ええ、ええ、研究ですとも! あらゆる行為は残虐に見えるかもしれませんが、これは本当に研究ですとも! いや、双子の弟が重い病を患っていてね、それを治す為にも諸君が必要だというわけだ。何もかもが『うそではない』のが実に怪人らしい、人らしい語り掛けだ。つまんだ騙りにすらも気付けない、憐れな哀れな実験動物は――女神に助けを乞うしかない。諸君、わたくしは諸君を『大切にする』と告げたのだ。それに、諸君の母親は今頃、機関の連中に『器官』を晒されている最中なのだ。故に……過度な期待というものは、母親にとっての重荷だとは思うのだがな。ひどい説明もあったものだ。絶望に苛まれた子供等は水槽の中で何を想う。では、そろそろ始めるとしようか。わたくしは、丁寧さをウリにしているのだ。少し時間は掛かるかもしれないが、できるだけ、我慢してくれ給え……。
 お母さんのお胎の中、あったかくて、気持ちの良い、お母さんの胎。お母さんが『でておいで』と声をかけてくれたから、ぼくはこの世に生まれてきたんだ。お母さんは『えさ』を用意してくれていた。それも、たくさんの『えさ』だ。ぼくはお母さんの優しさに感謝しながら『えさ』を食べようとしたんだ。でも、現実は違った。お母さんはぼくを『逃がそうと』して生んだんだ。お母さんだったものが転がっている。ぼくはお母さんの死体から生まれたんだ。そして、ぼくは、見た。あの、たくさんの翼を纏っているばけものを。目元を翼で隠している、やけに知的なばけものを。お母さんを殺したのはおまえだな。ゆるさない。ゆるさない。ゆるさな……。ぼくは弱かった。ぼくは『つよく』生まれてこれなかった。どうして。どうして。いやだ。そして、あいつは水槽の中のぼくに這い寄った……!
 アッハッハ! これが本当の有効活用というやつだ! 新鮮な反応が視たいところだし、麻酔はいらないな!!! 絶望に絶望が重なったところで、圧し掛かったところで、身動きが取れなくなる。四肢……いや……ぼくの自慢の触手が、一本一本じっくりと引き抜かれていくのだ。いたい。いたいよ。なんで、こんなことができるの。ひどいよ。ひどいよ。ぼくはまだ、お母さんのミルクすら、飲めていないっていうのに……。成程、わたくしの想像していた通り、これは『未熟児』のようだ。確かに、これなら『機関』が『器官』以外を不要としていた所以にも納得がいく! どれ、触手の次は皮膚の状態でも……。ぺりぺりと、みりみりと、ぼくの皮が剥がれていく。お母さんがくれた、艶々とした、ネバネバとした皮がゆっくりと外されていく。いたくて、いたくて、それ以上に、かゆい。かゆい? どうして。ぼくはこんなにも痒がりだったのだろうか。掻き毟りたい! ぼくは、ぼくの肉を狂ったように掻き毟りたい……! おっと、急に暴れないでくれ。アッハッハ! 元気がいいのは良いことだけどね! この皮の質感は……母親とは別種のものだね。これは興味深い。……む。この細胞はもしや……葉緑体……? つまり、光合成を行う怪異というわけだ! 母親は軟体生物に近いというのに、まったく、面白い! 次は肉を……ええい……もう我慢するものか。わたくしは、脳髄その他にこそ改める価値が『ある』と思うのだ。ぼくは頭を抱えたくなった。あれ? ぼくに頭部なんてあったっけ……。これはまた随分と人らしい『頭部』。今、造ったのか? イメージ通りの身体に『なる』とは! 素晴らしい……!
 水銀の蛇が嫌悪感を垂れ流している。主人の嗜好にとことん辟易としているご様子だ。つるりとした怪異の『脳髄』を掲げて、呵々と踊っている主人の具合は、嗚呼、不快を極めていると、舌を出したっていい。……まだ未熟児だったから、完全には模倣できないようだ。それで、わたくしが今、もっとも気になっているのは……これの性別だ。親はしっかりと女体ではあったが、さて、何処に生殖器官があるのやら……アッハッハ! そうきたか。この怪異は……子供は……ヘルマプロディートス! まるで融け合った双子の姿。不完全な状態で世に堕ちた怪異は本来――カストルとポルックスだったのかもしれない。この怪異の脳髄は保管するとしよう。多重人格の怪人を造る際に便利だ。
 いらっしゃい――特別に『良い品』が手に入ったのだ。諸君、目の玉をかっ穿ってよぉく見るといい。クヴァリフの『子供』の肉片だ。クヴァリフの母体は勿論『うまい』が、子供はより柔らかい。柔らかい所以を知りたい……? わたくしは保証するとも。解剖をしたのも『わたくし』だからな! アッハッハ! おお、買ってくれるのだな。おまけに、培養肉も如何か……?
 ぼくはおいしくないよ!
 ぼくはおいしくないよ!
 ぼくはおいしくないよ!
 おかあさんたすけて! おかあさんたすけて!
 ……ソースは如何かな?
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