細石が苔むすまで
●もういいかい?
もういいかい? まぁだだよ!
もういいかい? まぁだだよ!
モウイイカイ? マァダダヨ!
もゥいいかヰ? モうイヰよォ!
かくれんぼってさ、あんまり時間が経つと、誰が参加していたか、忘れちゃわない? なんだかみんなの顔ってちゃあんと覚えてなくて、服の色とか模様とかで「みぃーっけ」っていうものでしょ?
だからさ、思うんだ。
誰かが友達とおんなじ服着て、入れ替わっていたらさ、
わかンなクなルト思わなイ?
●フリーランスと組織たち
指定されたのは、寂れた教会だった。祭壇の向こうで、セルマ・ジェファーソン(語らうもの・h04531)が死霊と何かを語らっている。
死霊の方が√能力者に先に気づいたらしく、ぱっと姿を消したと思うと「バァ!」と√能力者たちを脅かした。
「こら。……戻りなさい」
「アハハ、面白イカオォー。セルマモスレバイイノニ」
「……さて、星が囁いた話でもしましょうか」
大方の予想通り、セルマが星を詠んだらしい。死霊はケラケラ笑いながら消えていく。
「まず、今回の最終目的は、『クヴァリフの仔』という怪異の回収よ。まあ、怪異というより、怪異の幼生ね」
あまり興味なさそうな素っ気ない語り口。まあ、セルマの「いつも通り」と言われてしまえばそれまでだが。
「名前から察せられる通り、『仔産みの女神『クヴァリフ』』が噛んでいるわ。狂信者に『仔』の呼び出し方を教えたみたい。怪異らしく、混沌が生まれゆくのを愉しんでいるのでしょうね」
どこか他人事のような語り口で、セルマは続ける。
「あの『クヴァリフ』の『仔』よ。召喚方法を与えられた狂信者はもちろん、怪異だって取り込めば更なる力を手に入れられるし、|新物質《ニューパワー》の期待値も高い。『クヴァリフ』という|新物質《ニューパワー》の実績ある個体から産まれたのだもの、当然よ。
それはつまり、人間側もこぞって『クヴァリフの仔』を求めるということ。フリーランスの怪異専門家には解剖機関、羅紗の魔術塔、そして連邦怪異収容局などが依頼を出している。この機会に我が組織の正式な職員にならないか? 今回の任務に成功すれば、それなりの地位を約束しよう……なんて、ありふれたやり口だけれど、断る理由がないわ」
セルマはこれで、汎神解剖機関に所属はしていない。フリーランスで生計を立てているゴーストトーカーだ。
それなら当然、スカウト等もあったことだろうが、それでもセルマは組織に属することを嫌った。
「隙あらばこの子たちを解剖しようとするから。……怪異と死霊は違うわ。確かに、邪悪なインビジブルで、強力な個体だけれど」
私の話はいいの、とセルマは続ける。
「ひとまず、私は星詠みの力を振るうときは『中立』の立場を示さなければならない。だから、あなたたちに行ってもらう。
それに今回は連邦怪異収容局が特に張り切っているみたいだから、尚更」
場合によっては『リンドー・スミス』とかち合うこともあるわね、とのこと。それくらい、躍起になっているということだ。
「まず行ってもらいたいのは、ここから程近い交差点から√を移動した先にある自然公園。子どもが遊べる遊具もあるし、子どもが実際に遊んでいるわ」
けれど、おかしいと思わない? とセルマが投げかける。
「今時の子どもは、外でなんて遊ばないわ。スマートフォンやパソコンがあれば、娯楽は湯水のごとく湧いている。外を見る必要なんてない。
それなら、何故外で遊ぶか。……『クヴァリフの仔』が、子どもたちの輪に入り込んでしまったからよ。たまたまかくれんぼをしていただけの子どもが、『クヴァリフの仔』のせいで、かくれんぼをやめられなくなっている。
これが儀式の一部だとしたら、子どもたちに紛れた『クヴァリフの仔』を突き止めることで、次に進めるはず。もちろん、手引きした輩がいるでしょうけれど。偽物の子どもを突き止められれば、遊びはかくれんぼじゃなくてもいいわ。さながら『おかしな日常のまちがいさがし』みたいなものね」
そこから先は、いくつもの未来に分かれ、星の定まりがなかったらしい。怪異が来れば、『仔』との融合を狙い、√能力者が来れば、『仔』の取り合いだ。
後顧の憂いを断つのに、狂信者の炙り出しを優先しなければならない場合も出てくるだろう。まあ、狂信者なんて、いくらでも湧いて出てきそうな気はするが。
「激しい取り合いになるとは思うけれど、よろしく頼むわ。
リンドー・スミスに会ったらよろしく」
しばらくはオフになれそうもないわね、とセルマが中空を見上げて呟いていた。
マスターより

九JACKです。
スミスさんのお話を書かねば!!
そう思い立ったのです。
分岐についてはこう、あんまり意識しなくて大丈夫です。まずは自分の思ったプレイングを。
敢えて言うなら、一章はみなさんがどういった遊びを選ぶのかによって二章が分岐します。三章はよほどのことがなければスミスさんです。
一章は断章をつける予定ですが、断章は話の繋ぎとかちょっとした演出のフレーバー程度なので、投下前でもプレイングくださって大丈夫です。
それではどうか、楽しんで。
32
第1章 日常 『童心に帰ろう』

POW
じゃんけんでできる遊びをしよう!
SPD
鬼ごっこや缶けりなど、「走る」要素がある遊びをしよう!
WIZ
カルタや知育菓子など、「道具」を使う遊びをしよう!
√汎神解剖機関 普通5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
●かごめ、かごめ
子どもたちが公園で遊んでいる。平成の半ば頃までは普通だった光景。親、もしかしたら祖父母くらいの世代の者たちが見たら、懐かしさが込み上げるのではないだろうか。
だが、時代とは移ろい変わりゆくもので、令和となった現在において、子どもが外で元気に遊んでいる姿は、健全なはずなのに、異様に映る。スマートフォンを凝視して、少し俯いて歩く方が自然なのだ。
おかしいのが「今」なのか「現代」なのかの議論も興味深いところではあるが……耳を傾けると耳慣れた童歌。
セルマが「かくれんぼ」をやめられなくなったと言っていたのに、「遊びならなんでもいい」と言っていた理由はわかった。確かに、かくれんぼでない遊びも、子どもたちはしている。
かくれんぼだけをしているわけではない。これなら、「珍しく外遊びをしている子ども」くらいの認識で、一般人は見過ごしてしまうだろう。
だが、√能力者たちは、どうしようもない違和感を覚えた。目にも明らか、というほどではないけれど、細かな可笑しさの集積が、何か大きな引っ掛かりを発生させている。
√能力者の目にさえ、まだあからさまに映し出されない違和感。『クヴァリフの仔』が既にそれほどの力を持つのか、もしくは。
手っ取り早いのは、子どもたちと触れ合うことだろう。怪異を刺激しないのもそうだが、今時の子どもたちの警戒心もなかなか侮れないものなのだ。
……まあ、子どもたちが正常なままかどうかもわからないが。

★アドリブ、連携歓迎。
一般人の子供には危害を加えないようにします
まずは子供の顔、服装を把握しておくか。
ちと、そういうのは苦手だが(皆同じに見える)面白い儀式だ。偽物を見つけるためにもそこは努力してやろう。
(主人格の)碧流、お前も覚えておけよ。まぁ、お前の方が人間の外見なんか興味ないよな。
鬼ごっこなんてどうだ?
最初は普通に走って捕まえよう。
捕まえた子供は最初に覚えた特徴と照らす。
さぁ、そろそろ本番だ。
影移しでインビジブル共と入れ替わりながら瞬間移動の様に走る。
偽物はどう出る?
紛れる為に目立たないようにしているのか…それとも俺に追い付かれたく無いか?
そんな競争心がある偽物なら見つけやすいんだけどな

アドリブ連携歓迎
あの仔産みの女神クヴァリフか! 仔を産んで面倒ごとを引き起こすとは、許せないぜ、怪異は人を傷つけるためのものじゃねぇ!
子供達に紛れ、鬼ごっこに興じる。《世界の歪み》で足場を歪ませて、走る力を拡張、うまく逃げ続けるぜ。
同時に√能力を使用だ。「いけ、怪異、『輝くトラペゾヘドロン』! 君に決めた!」。
輝くトラペゾヘドロンに、洗脳に対する抵抗力を下げてもらい、「俺を捕まえるのは無理だ」という弱めの洗脳を行う。
恐らく紛れてる怪異には効かないはずだ。効けばそれで確保だが、恐らく効いてる振りをするだろう。
だから鬼ごっこを続ける。追いかける意志の力が最も感じられる奴が怪異だ!

うげぇ…怪異の幼生…?
厄ネタの気がするぜ。スミスってあの予兆のオッサンだろ?人間味のない眼差し。従えてる薄気味悪い『何か』。関わると絶対ロクな事にならない。アレが出張って来る前に退散しねぇと…。
遊ぶのはサッカーさ。
ボールはとりあえず自前。後でボールの代金はセルマ――汎神解剖機関に請求。
ルールは俺からボールを奪い取れたら勝ち。こっちは俺一人。そっちはちびっ子全員で掛かってくりゃいい。
|身体能力《SPD》はそこそこあるつもりだ。俺からボールを奪うなんざ普通のちびっ子には無理だろう。普通なら、な。
√能力は刀は降らず。怪しい子供の確信を得る為に闇を纏う。それでも迫ってくるならそりゃ、もう普通じゃねぇよ
●手の鳴る方へ
「うげぇ、怪異の幼生……?」
久瀬・千影(退魔士・h04810)が指定の自然公園への√を歩きながら、思わずそう顔を歪めたのも、無理のないことだ。感情に関わる欠落を持たない√能力者のほとんどが、千影と同じ思いを抱いたことは確実である。
「厄ネタの気がするぜ。スミスってあの予兆のオッサンだろ? 人間味のない眼差し。従えてる薄気味悪い『何か』。関わると絶対ロクな事にならない。まあ、ロクなことにならんのは怪異も同じだが、怪異もその幼生を狙ってるって話だろ? いずれにせよ、妙な輩が出張って来る前に退散しねぇと……」
はあ、と深く息を吐く千影。そこに「なあ」と声をかけてくる高校生くらいの少年がいた。
「あんたも聞いてきたんだろ? あの仔産みの女神クヴァリフの話! 仔を産んで面倒ごとを引き起こすとは、許せないぜ」
そう熱く義憤を語るのは越路・敏史(暴走怪異バトラー・h05902)である。「怪異を蒐集している者がいる」という噂から生まれた人間災厄の彼は、事実、怪異を手持ちの攻撃手段として使う。
が、きちんと信念は存在する。曰く、
「怪異は人を傷つけるためのものじゃねぇ!」
とのこと。
千影は細かい事情を知らないため、怪異は人を襲うだろ、とは思ったが、まあ、いちいち突っ込むのも野暮というものだ。言葉を飲む。
それに、徒に脅威をばらまくクヴァリフにむかっ腹が立っているのは同じだし。
「おーい、こっちでサッカーやらねえか?」
「お、サッカーするのか?」
子どもたちより先に食いついてきたのは敏史だった。敏史の朗々とした声に、子どもたちも何人か千影の方に視線を注ぐ。
その手には自前のサッカーボールがあった。ちゃっかり領収証を取っているので、代金は星詠みか汎神解剖機関にでも請求しよう、と考えている。まあ、あのフリーランスの仕事人も、解剖機関に請求を立てるかもしれない。ちゃんと『クヴァリフの仔』の捕縛に成功すれば。
「お兄ちゃん、サッカーできるの?」
「ああ。身体能力には自信があるぜ? 大人と子どもだからな。全員でかかってきていいぜ」
と、自信満々に告げる千影だったが、子どもたちに目を向けると、思ったよりわらわらと集っている。
(……こんなにいたか?)
十人も二十人も集まってきて、焦る。身体能力に自信があるのは本当だし、|√能力《チート》だってある。が、さすがに何十人という子ども相手は想定していない。
増えて見えるのも『クヴァリフの仔』の仕業か、と思っていると、「おー、たくさんいんなぁ?」と新しい声がした。
少し柄の悪い青年は天霧・碧流(忘却の狂奏者・h00550)。一応、任務に応じて来たため、子どもたちの顔や服装を覚えるなりして、怪異を見分けようと考えていたのだが。
(そもそも覚えんの苦手なのに、この人数はさすがになあ)
碧流だって無理だろ? と碧流は自身の中に存在する主人格に語りかけた。
返事はない。それでもやるべきことは変わらない。
「じゃあ、俺とそこの兄ちゃんは普通の鬼ごっこするから、この辺の子たちはこっち来て! サッカーは順番な」
「別に全員一気でもかまわねーぜ?」
「ははっ、強がんなって」
碧流が千影の肩に手をかけ、耳元で囁く。
「サッカーはできるかもしんねえけど、怪異? 見つけんのは手分けした方がよくね?」
「それもそうだな」
敏史のフォローと碧流の提案に頷き、千影は残った子どもたちを見る。
別れるときと言い、いやに聞き分けがよかった。今時の子はそういうもの、と言ってしまえばそれまでだが、果たしてそれだけで片付けていいのか。
「さ、かかってこいよ」
「にーちゃんは何すんのー?」
「俺はボール持ってないからな。鬼ごっこだ」
敏史は子どもたちに答えながら、子どもたちの顔を確認する。見た目明らかにおかしい子どもはいない。
それなら、√能力で見分けるまで。
「お? お前が鬼役? えーっと、なんだっけ、名前」
「敏史。俺は越路・敏史だ。逃げる側をやろうと思っていたけど、そっちは?」
「俺は天霧・碧流な。鬼役をやろうと思ってたぜ?」
ニタァ、と碧流が笑う。そもそもの人相が悪く、どこか不気味な雰囲気を宿す碧流が「鬼」を名乗り笑うと、子どもたちもぞっとしてしまったようで、軽く悲鳴を上げる者もいた。
(ん、こんくらいで怯えるやつは、怪異じゃねえだろ。顔覚えとくか)
そんな見分け方をするつもりはなかったが、覚えるチャンスを逃すわけにはいかない。ただでさえ同じ顔にしか見えず、覚えるのは苦手なのだ。碧流は、脳内で、ピンクの服の女、緑のパーカーはペケ、と唱えた。
「へえ、じゃあ、鬼やりたい人と、逃げたい人に分かれようぜ! 鬼やりたい子は碧流んとこ行きなー」
「敏史にーちゃんのこと絶対捕まえてやるんだ!!」
「お、負けないぞ?」
鬼役の方がやや多めだ。敏史は√能力【トラペゾヘドロンの光】を発動させる。洗脳への抵抗が減った子どもたちに、「俺を捕まえるのは無理だ」という弱めの洗脳をかける。碧流も効果範囲だが、√能力者なら、まあ大丈夫だろう。
鬼ごっこが始まる。碧流が「ぎゃはははははは!」と笑いながら追いかけてくるので、なかなかの迫力だ。「鬼」役がはまりすぎている。
√能力者なだけあって、身体能力は高く、ひょいひょいと子どもを捕まえていく碧流。オレンジのポシェットペケ、野球帽ペケ、と捕まえた子どもを怪異候補から外していった。
碧流が追いかけない分、子どもは敏史に集中している様子。碧流についていっている子どもたちは洗脳で諦めたか、碧流に興味があるかだろう。弱い洗脳が効くようなら、怪異の可能性は低い。
「行くぜ! 怪異、『輝くトラペゾヘドロン』! 君に決めた!」
叫びながら、駆け出す敏史。降り注ぐ昏き光が、少し強まった。
洗脳は、怪異には効かないだろう。だが、子どもたちに紛れる頭脳があるなら、効かないフリくらいはするはず。敏史は自分の持つ【世界の歪み】を駆使し、足場を歪ませ、走る力を拡張したりして走っている。洗脳がなくとも、普通じゃまず追いつけない。
それでも、諦める様子を見せない——敏史を捕まえようとする意志が最も強い子どもが、怪異である可能性が高い。
碧流が他の子どもをなかなかのハイペースで捕まえている。だが、同じくらい、鬼側の子どもも減っていた。
敏史は少しアクロバティックに飛び退き、様子を伺う。
追いかけ続けているのは、短髪の女の子と、背の低い男の子。ここまで絞れれば、まずまずだろう。
碧流の方は、子どもが五人を切ったあたりから、【|影移し《シフトシャドウ》】を用いての転移で子どもたちを捕まえていた。
が。
「おっと」
「うお」
千影とニアミスする。千影は【闇纏い】で隠密状態だったため、碧流でなければ大惨事になっていただろう。
「っえい」
「と、やらせねーよ」
そこに割って入ってきた、紫のシューズの子ども。ボールを捕られそうになり、蹴り上げてかわす千影と見ていた碧流が同時に察する。
(こいつか)
√能力者でも見抜くのが難しい【闇纏い】による隠密の直後に的確に突っ込んでくるのは普通じゃない。
が、見た目は普通の子ども、他にも疑いのある子どもはいる。敏史が絞った子どもも含めると、嫌疑があるのは三人となった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴 成功

フリークスバスターよ。
普段から√汎神解剖機関で賞金稼ぎをしている。
連邦怪異収容局の事も知ってるわ。何度も邪魔されたしね。
生まれ育ちは√EDENの都心部。
女の子なのもあって、友達とショッピングモールで買い物に行ってたのよね。
ハンバーガー食べて門限まで駄弁ってた。
なので遊びは良く判らないけど、子供達が興味をもって近づいてくれれば良いのよね?
スマホでAR起動。
ご当地キャラマスコットを取り込んで、立体映像にして表示します。
動かしたり、引き延ばしたりして、注目を集めるよう努めます。
傍らに調査を。
√能力「秘跡」。
周囲を彷徨うインビジブルに√能力を使う。
ここ3日以内で知ってること『すべておしえて』。

偽物の、違和感のある子供を探せばいいんですね、了解
怪異、怪異ねえ……ウン、他所の世界には知らないモノが沢山だ
妖怪とはまた違った存在なのかなー?と考えながら子供たちの輪に近づいていきます
あーそーぼー
おネーさんも仲間にいれてー
と、ハイパーなヨーヨー遊びしている集団に近づきます
ウン十年前から流行してる遊びですね、私もできますよそれ
なんなら直撃世代です
車輪的なヤツの操作はお手の物、火車ですから
予備を持ってた子にひとつ借り受け、シュパァーンとお子様たちにヨーヨーのトリックを見せ付けます
ひとりひとりにヨーヨーバトルを挑み、純粋な子供っぽくない子、腕増えてるとか影がヤバいとか違和感出てる子を探します

デスゲームか何かなの??
怪異と生身とでは流石に体力差が有りすぎる。でも幻覚効果なんだろうが、無理矢理動かされてるんだろうか
どの子も真っ青というか土気色になってるぞ…俺走り回るのもあんまり好きじゃないし
所謂『親指ゲーム』で勝負しないか?地域性があるから呼び名はまあなんでも良いだろう
ジャンケンで勝った人から時計回り、最初は両手で宣言した数が立てた親指の数丁度なら上がりで片手を外し、両手が片付いた人が1位のシンプルな遊びだ
クヴァリフの仔は模倣が出来ても高度な知性を備えているわけではない
繰り返し遊びながらルールの破綻した動きをしだした子供が当たりだろう
それはそれとして勝つのは俺だ!
せーの0!0!0!!
●たすケて
橘・あき(人間(√EDEN)のフリークスバスター・h00185)は頭を悩ませていた。
25歳の彼女にとって子ども時代を「学生時代」までと考えるのであれば、つい先日まで彼女は「子ども時代」だったといっても過言ではない。今はフリークスバスターとして自営で生計を立てている立派な大人だが、充分現代っ子と言っていい年代である。
更に言うなら、あきは女性。女の子が「外で遊ぶ」というと、ショッピングや気軽な食事などの方が馴染み深い。そのため、「外で遊ぶ」それも「公園で遊ぶ」にはいまいちぴんとくるものがない。けれど、子どもたちの気を引き、集めたところで聴取なり何なりをすればいいだろう、と考えたあきは、スマホでARを起動する。
いくらか操作すると、どこかの適当に引っ張ってきたご当地マスコットキャラクターがぽわん、と浮かび上がる。立体映像となったずんぐりむっくりな頭身のゆるキャラは、拡大されながら虚空に手を振っていた。
「あ、『きらるちゃん』だ」
女の子が一人、マスコットに反応する。きらるちゃんというのは聞いたことがない。あきと同様、知らないらしい女の子が「なぁに、それ?」と聞き返す。
「よくわかんないけど、いとこのお姉ちゃんが持ってたの。かわいい!」
「えー? おなかぽよぽよなのはちょっと」
ゆるキャラって、絶妙に「万人」には受けないけれど、万人に近い人数は虜にしているので、この女の子のコメントはあきにも新鮮だった。
「すっげー、これスマホから出してんの?」
「おねーさん機械とか強い?」
「ゲームとかやってる?」
「メアド教えて!」
「メアドはさすがにアウトよ」
「うむうむ」
あきの元にわらわらと集い始めた子どもたちに混じって、一人の妖怪が相槌を打つ。
「あーそーぼー。おネーさんも仲間にいれてー。特にあなた、イイもの持ってるじゃない」
九途川・のゑり(灼天輪・h00044)が肩を叩いた子どもの手にはヨーヨーが握られている。大手会社のハイパーなアレだ。
「え、おねーさん、ヨーヨーやるの?」
「もちろん! 何ならバッチリ世代です」
「え、見せて見せて!」
のゑりはヨーヨーを借りると、ひょい、とトリックの一つ「ロング・スリーパー」を披露する。そこから三角形を作り、間を潜らす「ブランコ」に移行。
おお、と子どもたちから歓声。
「フェニックス・ホイールやってよ!」
「タイムワープできる!?」
「バトルしようよ」
「順番にやりますよ。まずはフェニックス・ホイール」
思ったより今も根強い人気のようだ。一人でもできる遊びだから、現代っ子も触れやすいのだろう。
しかし、『フェニックス・ホイール』を要求してくるあたり、いつの時代も子どもの中には中二心が存在するらしい。お前、語感だけで頼んだだろう。
のゑりは火車という妖怪だ。とてもさっくり説明すると、車輪の妖怪である。車輪の扱いならお手の物。『フェニックス・ホイール』も『タイムワープ』もそこそこの難易度だが、難なくこなして見せる。
ヨーヨーに熱い眼差しを注ぐ子どもたちを微笑ましく思いつつ、子どもたちを観察した。腕が増えたり、影の形がおかしかったり、普通じゃない子どもがいないかを確認する。
怪異は妖怪と違うかもしれないけれど、あからさまな異常が出たら、わかるだろう。
「おー、かっこい」
ヨーヨートリックを眺める子どもの輪にすっと紛れた獣人がいた。二階堂・利家(ブートレッグ・h00253)である。
(クヴァリフの仔に操られてるのか、顔色ヤバい子もいるからデスゲームか? とか色々思ったけど、普通に遊び楽しんでる子もいるのね、良いこと良いこと)
利家は走り回る子どもたちを見ていたので、こうして比較的静かな遊びをしている姿に安堵を覚えた。
とはいえ、蒼白を越えて土気色になっている子どもを止めてやらねばならない。けれど、ただ止めたなら、怪異に警戒を与えるだろう。
利家も、走り回るのはあまり好きではない。そこで、シンプルながら体をあまり動かさず、誰でもできる遊びを考えた。
「親指ゲームで勝負しないか?」
「おやゆび?」
「色々呼び方があるらしいが……指スマとか、いっせーのせとか言ったらわかるか?」
それでほとんどの子どもはわかったらしい。まだ首を捻っている子どもには、ルールを教える。立つ指の本数を当てたら、片手を下ろしてよいゲーム。両手をはやく引っ込められた人が優勝だ。
「ばるちっちだ!」
「珍しい呼び方のタイプ……」
呼び方は地域性が大きいらしいが時折地域性だけでは説明できないエキセントリックな呼び方があるので、その面においては不思議と言える。
単純だが、生まれたばかりの怪異の『仔』。そう知能が高いとは思えない。何度もゲームを繰り返し、ルールから破綻した行動をした子どもが『クヴァリフの仔』と見ていいだろう。
「それはそれとして勝つのは俺だ! せーの、0!」
各所、盛り上がりを見せる中、『きらるちゃん』と戯れる子どもたちにスマホを預け、あきは子どもたちには見えていないだろうインビジブルたちに『要請』する。
「ここ3日以内で知ってること『すべておしえて』」
すると、あきの【|秘跡《パースウェイド》】でインビジブルが生前の姿を取り戻す。
生前の姿に少し感動してから、インビジブルは語り出した。
「ええと、怪異をお探しなのですか? それっぽいのは見てないですけど……そういえば、私、何人かの子どもと『目が合った』気がするんですよ。子どもだから、そういうこともあるかもしれない、とは思うんですけど」
「その子ども、この中にいる? いるならどの子か教えて」
インビジブルが見える、というのは、√能力者の素質があるか、怪異である可能性が高い。
生前の姿を取り戻したインビジブルはヨーヨーをしている一人を指差した。のゑりに「タイムワープ」を要求していた黒いヨーヨーの持ち主。他には、利家と親指ゲームをしているうちの、白い花のヘアピンの女の子。
近くにはいなかったが、紫のシューズの子、青い帽子の子、赤いズボンの子が挙げられた。
ピースは揃いつつある。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【WIZ】※連携&アドリブ歓迎
『クヴァリフの仔』を巡って連邦怪異収容局が積極的に介入してくるとはね。協力し合うべき人間側も一枚岩とは行かないのは難しいね。
取り敢えずは件の自然公園に向かい外で遊ぶ子供達にお姉さんが声を掛けようか。公園で遊んでるとは言っても、中にはスマホじゃないTCGで遊ぶ子供も居ると思うんだよね。
ボクも机に仕舞っていたカードを持って来たから遊んでくれるかな?基本ルールは変わってない筈だけど版も変わってるから知らないカードもありそうだけど。
(遊びながら【ゴーストトーク】を使い近くのインビジブルに尋ねる。)
ねぇ、矢鱈と強かったり不思議なカードを使ったりする子供を見かけてない?

よ、おねーちゃんもまざっていいー?
親しみやすい感じで子供たちに近づいて、遊びに入れてもらえるよう交渉してみる
必要に合わせて、優しさや魅了で子供たちを丸め込んで間に挟まってみる
あたし、囮なんだとよ
遊びを知らないから代わりにってこんなとこに連れてこられて……
急に正体現したクヴァリフっこに頭から喰われたりとかしないよね……?
本人もどっか消えていねーし
とりま、情報収集としてなんで外で遊んでるのかは聞いてみよ。誰かに誘われたりとか?
遊びはどーしよ
あー、かごめかごめって、後ろの人が誰か当てるやつ?
これなら全員の名前もさり気なく聞き出せるし、いいかも。体力の差も関係ないし。うん、あと仲良くなるついでにルールおさらいしてもらお
ここはどこの細道じゃ、って……
それとおりゃんせじゃね?
●わらべうた
「『クヴァリフの仔』を巡って連邦怪異収容局が積極的に介入してくるとはね。協力し合うべき人間側も一枚岩とは行かないのは難しいね」
人間同士で争うのは馬鹿馬鹿しいとか言いつつ、そもそも歩み寄りの姿勢が見られないのも問題とは思うけど、と土方・ユル(ホロケウカムイ・h00104)は呟いた。
その手にはTCGのカードが。スマホで充分なほどの娯楽はあるし、スマホにもカードゲームはある。が、こういう現実に実物があるカードもまだ廃れたわけではない。
公園で運動を伴う遊びをする子どもの姿は少なくなったが、カードゲームをする子どもは珍しくない。ユルのカードは少し古い版だが、それをジェネレーションギャップと嘆くよりは、新しい世代を知る交流のきっかけとする方が、よほど生産的だ。
「ねえ、このカード、やってる子いる?」
「あ、僕持ってる!」
「私もやったことないけど、カードだけ持ってる。天使とかアイドルのキャラクターの絵がかわいくって」
「ソレガシ、サムライニンジャデッキの使い手にゴザル」
「あはは、ツトムくんおもしろーい」
きゃらきゃらと盛り上がり、笑い合う子どもたち。思いの外、この状況を楽しんでいるようでよかった。
しばらくカードの話で盛り上がり、仲睦まじくしていた。
真昼が過ぎて、太陽が頂点から西方へ傾き始める。もう少ししたら、空も赤らんでくることだろう。
わらべうたが響く。√能力者の調査も、大詰めに入っていた。
「よ、おねーちゃんもまざっていいー?」
その中で、少し毛色が違って感じる人物が一人。まあ、違って見えるのは、槍木・千彩(イ・ヨハンのAnkerのオタクに優しいギャル・h05001)が√能力者ではなく、Ankerだからなのだが。
「いーよー。おねーさん名前は?」
「あたしは千彩。かごめかごめって、確か最後に名前呼ぶ遊びだったよね。みんなも名前教えてよ」
ギャル特有のコミュ力で、子どもたちから名前を聞き出していく千彩。千彩は√能力者ではない。だから、この件に関わる必要はないのだが。
(囮なんだとさ)
千彩をここに連れてきた男が言っていた。
遊びはよく知らないから、代わりに子どもに混じってくれ、と。そうとだけ残して、いつの間にか当の本人はどこへやら。
『クヴァリフ』とやらが突然現れて、頭から食われたりしないだろうかと怯えたりもしたが、まあ、何もしないよりは動くべきだろう、と千彩は子どもたちに話しかけていた。
ここに至るまで、どうしてここで遊んでいるのだとか、誰かと一緒に来たのかだとか、色々聞いてみた。最初はあまり口を開かない子どもたちだったが、千彩が魅了や優しさを駆使して、話しかけ続けたことで、徐々に心を開いていき、要領を得ないとしても、応じてくれるようになった。
一人一人、名前まで教えてくれて、やっぱりコミュニケーションって大事だよなあ、と思う。
あたしにばかり任せず、あの人も一緒に混ざって知らないなら覚えたらよかったのに。
「ちさちゃん、わたしのお姉ちゃんみたいな名前!」
「ちさとりさだもんね! 隣よろしく」
白い花のヘアピンの女の子はりさというらしい。黒いヨーヨーの子はたけし、青い帽子の子があすむ、赤いズボンの子がみどり、紫のシューズがしゅうや。なんと偶然にも千彩は、怪異の嫌疑がかかった子ども全員から名前を聞き出していた。
かごめかごめを始めようとする輪の中に、ユルも合流する。
「ボクも混ぜてもらえる?」
「いぬさん?」
「狼だよ。ボクはユル」
「ユルちゃんよろしくね!」
ユルはちら、と千彩の方を見やる。誰のAnkerかは知らないが、Ankerも守るべき一般人である。怪異の疑いが強い子どもたちの中に一人放置するのも良くない、と混ざったのだ。
「ええと、ここはどこの細道じゃー、だっけ」
「ちさちゃん、それ『とおりゃんせ』だよ」
「あは! 間違えちゃった」
からからから、と子どもたちが笑う。笑いながら、真ん中には赤いズボンのみどりを置き、くるくる回り始める。手を繋いで。
ユルは歌いながら、す、と目を細めた。
情報共有をしてくれた他の√能力者、そして【ゴーストトーク】で証言をくれたインビジブル。
「短髪の女の子と背の低い男の子、あたりが怪しいと思うぜ」
「紫のシューズの子どもがあからさまに√能力に反応できていた」
「私が聞いた話では、白い花のヘアピン、青い帽子、赤いズボン、黒いヨーヨー、紫のシューズの子がインビジブルと目が合ったと」
「強いカードってことはなかったけど、こないだ予告が出たばかりのカードを持ってる子がいた」
それらを総合して、見極めると、怪しいのは——
「うしろのしょうめん、だぁれ?」
「この声は、しゅうやくん?」
みどりが呼ぶと、紫のシューズの子どもはにこぉっと笑い、
「……現れたね」
子どもたちと繋がろうとしていた影を、ユルが切り払った。
「当たり。僕さ」
「みんな、逃げて!」
ユルの鋭い声に、察した千彩が、他の子どもたちを連れて離れる。
紫のシューズから伸びた影が、けらけらと嗤い声を立てた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴 成功
第2章 集団戦 『ヴィジョン・ストーカー』

POW
影の雨
指定地点から半径レベルm内を、威力100分の1の【影の雨】で300回攻撃する。
指定地点から半径レベルm内を、威力100分の1の【影の雨】で300回攻撃する。
SPD
影の接続
半径レベルm内の味方全員に【影】を接続する。接続された味方は、切断されるまで命中率と反応速度が1.5倍になる。
半径レベルm内の味方全員に【影】を接続する。接続された味方は、切断されるまで命中率と反応速度が1.5倍になる。
WIZ
影の記憶
知られざる【影の記憶】が覚醒し、腕力・耐久・速度・器用・隠密・魅力・趣味技能の中から「現在最も必要な能力ひとつ」が2倍になる。
知られざる【影の記憶】が覚醒し、腕力・耐久・速度・器用・隠密・魅力・趣味技能の中から「現在最も必要な能力ひとつ」が2倍になる。
√汎神解剖機関 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
●影踏み鬼
しゅうや、という子どもが、本当に存在したかはわからない。事実としてあるのは、紫のシューズの子どもが、怪異の依り代とされていたこと。
怪異が正体を現すと、紫のシューズだけ残し、子どもの姿は消えていた。シューズから伸びる影が、√能力者たちを迎えるように手を伸ばす。
「ただの子どもと遊ぶのは飽きたし、今度はあんたたちが遊んでくれよ。おにーさん、おねーさん?」
伸びた影は手の形をし、言葉を操る。
「怪異を収集する割に、素っ気なくて構ってくれないヤツらとかもいたけどさ、ここまで子どもたちと遊んでくれたお優しいみなさんなら、俺にも付き合ってくれるよなぁ? 人数が必要な遊びでも全然かまわないぜ。何せ、俺たちは」
「僕たちは」
「わたしたちは」
「たくさんいるからなあ!!」
輪唱のように、影たちの嗤う声が響く。
集団敵『ヴィジョン・ストーカー』
発言から察するに、連邦怪異収容局の者と接触があったと思われるが、与しているかどうかはわからない。ただ、行く手を邪魔する気であることは確実。
子どもたちの安全確保も必要だ。倒すしかないだろう。
午後三時の時報だろうか。「むすんでひらいて」のメロディが流れてくる。
朗らかなメロディに合わせ、ヴィジョン・ストーカーは鼻歌を歌い、上機嫌。けれど、場の緊張は途切れない。
ヴィジョン・ストーカーは影。これから夕方にかけては、影が長く伸びる時間。
遊ぼうよ、とゆらゆら、ナニカの影が揺れた。

おっと違和感の塊、お出ましになりましたね
数の相手には数で対抗、ということでのゑりちゃんもババンと増えますよ
√能力で分身~
一部の|私《のゑり》は子供たちを安全な場所へ移動させてください
こっちの|私《のゑり》たちは火車に乗って公園内を走りまわり、敵の行動を阻害
アチラの影の雨だって炎で消し飛ばし、とことん邪魔してやります
炎を煌々と燃やし、影の伸びる向きをある程度操作してコチラの攻撃を当てやすくし、有利に事を運びます
灼熱の炎をブチ当てて光源の中に閉じ込め、周囲の影を消し去ってやりましょう
燃え尽きちまいな~~?

※連携&アドリブ歓迎
怪異に正々堂々を求める方もアレなんだろうけど黄昏時に影鬼とは随分な年の入り用だね。
もしかしたらしゅうや君もこんな風にナニかに浚われて鬼になってしまったのかな。
さて鬼が沢山居る上に子供達を巻き込む訳には行かないから
ボクがすべきことは動きを止める事かな。
……と言う訳で使うのは警察手帳を見せて【|Freeze!《フリーズ》 】。
捜査第零課だよ、大人しくしなよ!ってね。
悪い事をしてなくても警察に声を掛けられると動きが止まるよね、
本当に悪い事をしてる鬼なら言うまでもないかな。
反応速度が上昇して効果的に足止め出来たなら居合わせた仲間が好機を掴んでくれると思うしね。

千彩と同行
不意打ちで姿を現し、Ankerにとって脅威となっているヴィジョン・ストーカーを暗殺する
先ほどまでのやり取りはすべて監視していた
娯楽はよくわからないんだ、怪しまれてターゲットに逃亡されたら遂行に支障が出る
危害が及べば俺が助けた
サージカルプロトコルを発動
俺を攻撃対象にさせるためにも、Ankerは俺の背に。行動に影響はない
動くぞ、振り落とされないよう気をつけろ
千彩の閃光手榴弾……つまりスタングレネードで、ヴィジョン・ストーカーに隙を作る
そこに適正な武器改造を終えた銃で、弾幕による制圧射撃を一斉発射する
狙うは影が伸びてくる先、その根源だ
……どうやら、一連を監視していたのは俺だけではないらしい

ヨハンと同行
う、急にかわいげのない喋り方になっちゃって……
とにかく、これであたしの役目は終わりだよね
なんだよ、全然危険じゃん……!
ヤバ、追いつかれ――
怪異に追い詰められたとき、自分の√能力者とやっと合流
ちょっと!ハラハラさせなくていいから!
今までどこに行ってたの……
ま、いいや、じゃあちゃんと守ってよ頼むから
合流後はヨハンにくっついて、護ってもらいながら場を乗り切る
もうちょいゆっくり動けし……おぇっ……お前に殺されるんだが
ついでに持たされてたスタングレネードを出して、それを渡す形で使う(というか取られる)
そっか、影か。光が強すぎたら伸ばせなくなるんだね
●【|だるまさんがころんだ《トマレ》】
影がすうっと伸びる。紫のシューズがころん、と転がり、伸びた影だけが走り出す。
その光景に顔がひきつるのを抑えられないながらも、前向きに頷き、槍木・千彩(イ・ヨハンのAnkerのオタクに優しいギャル・h05001)は踵を返す。
「しゅうやくんがどうなってんのかはともかく、これであたしの役目は終わりだよね」
ひしひしと押し寄せてくる危機感。脳内に谺し、鳴り止まない警鐘。千彩は素直にそれに従い、走る。
だが、影の手は早い。
(やば、追いつかれ——)
スタンッ
ハチェットが、影の手を切り落とす。それは不意に現れたと感じるくらい、音も気配もなく、唐突に存在を示した。影は、ヴィジョン・ストーカーは、反撃の暇すらなく消滅する。
更に千彩を襲おうと手を伸ばし始めた周辺のヴィジョン・ストーカーたちには、銃弾が飛ぶ。複数の銃弾が飛び、影たちを貫いていくが、乱射されることは一切なく、全ての弾が無駄なくヴィジョン・ストーカーたちに当たっている。
そっと腕を掴み、引き寄せてきた相手の顔を千彩は確認する。認めるなり、安心と苦笑が綯交ぜになった表情をした。
「ちょっと! ハラハラさせなくていいから! 今までどこ行ってたのよ、ヨハン」
「どこにも行っていない。ずっと監視していた」
能面のように表情を一切変えることなく、イ・ヨハン(人間(√EDEN)の職業暗殺者・h00988)は自らのAnkerに応じる。
「見てないで一緒に遊べばよかったじゃん!」
「だめだ。不自然な行動をして、ターゲットに逃げられるわけにはいかない」
きっぱりとヨハンは告げる。
千彩の考える通り、慣れないことは経験を積み重ねて慣れていくのが一番だ。が、ヨハンも一理ある。真の狙いが標的に透けては困るし、慣れないことをしていると、いざというときの反応が遅れてしまうことがある。
暗殺者にとって、一瞬だろうが刹那だろうが、隙を生じさせたら、それが致命的な結果をもたらす可能性は大いにあるのだ。
「危害が及べば、俺が助けた。……それはいい。ターゲットが現れたんだ。動くぞ。振り落とされないように」
「へ」
千彩を抱え、ヨハンは駆け出した。
そのタイミングで、
「警察だよ!」
ヴィジョン・ストーカーの群れの前に飛び出し、警察手帳を見せながら土方・ユル(ホロケウカムイ・h00104)は声高に叫ぶ。
すると、ユルの視野の範囲にいるヴィジョン・ストーカーたちはぴたりと動きを止める。
「悪い事をしてなくても警察に声を掛けられると動きが止まるよね、本当に悪い事をしてる鬼なら言うまでもないかな」
「く、くぎぎ……」
ユルの√能力【Freeze!】による麻痺効果で、自由を奪われたヴィジョン・ストーカーたちは各々呻きながら、麻痺から逃れようと試みる。
が、そんなことを√能力者が許すはずもなく。
「はいはーい、数の相手には数で勝負。妖怪『燻黒峠の火車』が通りまーす」
そんな声と共に現れたのは無数の九途川・のゑり(灼天輪・h00044)だった。ヴィジョンストーカーに向かってきているのは15人ほど。他の分身のゑりは子どもたちを安全な場所へ避難させていた。
動くことができないながらに、影たちはむざむざやられまい、と【影の雨】を発動するも、のゑりの炎でかき消される。【影の接続】をしたところで、動けないのだから、反応も命中もあったものではない。
それに、炎の明かりの影響を受け、長く伸びていた影が短く、ずんぐりとしたものになる。そう、『影』が怪異としての本質であるヴィジョン・ストーカーは光を伴う攻撃と相性が悪いのだ。
「怪異に正々堂々を求める方もアレなんだろうけど黄昏時に影鬼とは随分な念の入り用だね。もしかしたらしゅうや君もこんな風にナニかに浚われて鬼になってしまったのかな」
語りながら、ユルが目を閉じる。それは【Freeze!】の効果終了を意味した。
動くことができず、見ているだけだったヴィジョン・ストーカーが、この好機を見逃すはずもない。ユルの能力再発動にはクールタイムが必要だ。その隙にこの女を……!
「無駄だ」
かっと強い光が発生する。それはヨハンの放ったスタングレネード。強すぎる光は、影をかき消す。ユルが目を閉じたのは、この光に目を焼かれないため。
いつか闇が影を嘲笑って言った。所詮、影は|光《それ》の眷属だ、と。
改造銃による無慈悲な制圧射撃がヴィジョン・シャドウたちを刈り取っていく。
それを眺めていた千彩が呟いた。
「そっか、影か。光が強すぎたら伸ばせなくなるんだね」
「そうだ。影の伸びてくる先を狙うぞ。
俺の他にも、ここを監視していたやつがいる」
ヨハンの声に応じ、ユルとのゑりも並び立った。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴 成功

怪異のくせにニンゲンを語るじゃん?
念の為に付け足しておくけどこれヘイトスピーチじゃないからね?(重要)
似姿を真似たのか、喰ったのかは本題では無いから|まあ良いけど《良くないけど…》。粛々と始末する。それとも回収するんだっけ?俺としてはどちらでも?
臓器さえ残ってれば原形は留めてなくても大丈夫だよな
これはねえ差別じゃなくて|区別だから。来世に期待!《害虫に掛ける情けは無用なれば》
◆√戦闘
地摺る大剣を怪力任せに引き摺りながらダッシュ+切り込みで早駆け
公園に張り巡らされた影を切断しつつ疾走し、レベルダウンで弱体化させる。影切ったー
殺到する影の手をジャストガード+爆破で跳躍して躱し、重量攻撃を突き立てる

アドリブ・連携歓迎。
最優先は、子供の安全の確保!
「みんな、私の傍から離れないで!」
√愛雨霰。
thunder*をレベル×10本生成、発動地点は私。
とにかく数を用意して、盾を作る!
230本の槍を召喚。
念動力で縦8本/横8本(計16本使用)の簡易盾を形成。
簡易盾を8つ(計128本使用)を自身と子供の周囲に展開。
残りの100本前後の槍を敵に仕向ける。
敵の攻撃を盾受けの要領で押し留めつつ、念動力で背後から攻撃を狙う。
連携を組める人がいるならサポートに回るわ。

アドリブ連携歓迎
シャドウ・ストーカー、なかなか面白い怪異じゃねえか。
なら、俺と怪異バトルで勝負だ!
なるほど、味方同士で影を接続して強化し合うわけか。
「よし、怪異腹腹時計、君に決めた!」
√能力を発動。敵の中心に腹腹時計を投げ込み、疑心暗鬼を引き起こさせるぜ。
「あんたが接続してるその味方、果たして本当にあんたと一緒に戦うつもりがあるのかな?」
多少強引な理屈でも、腹腹時計に惑わされたら、流石に少しは動揺するだろう。
その隙を逃さず、《シリンジシューター》で攻撃だ!
蒐集した怪異の肉片から作った霊薬を込めた注射針は、怪異によく効くはずだ。
相手が弱ったら、カラの注射針を発射し、蒐集するぜ
●貨物列車、しゅっしゅっしゅー
「怪異のくせにニンゲンを語るじゃん?」
大剣を引き摺りながら、二階堂・利家(ブートレッグ・h00253)は平坦な目をする。
「あ、ヘイトスピーチじゃないよ? 念のためね」
「怪異がニンゲン騙るのはよくあるコト、よくあるコト! おにーさんだって『人間』ではないじゃん? でも『人間側です』みたいな顔してる」
ヘイトスピーチじゃないよ? と返してくる個体に、む、と利家は真顔になる。
確かに、利家は獣人であり、厳密に言うと「人間」ではないのだろう。だが、それは揚げ足とりというやつだ。そもそも|異形の怪異《ヒトのかたちをしてないヤツ》に指弾される謂れはない。ヘイトスピーチじゃないにしても、だ。
それを聞いていた越路・敏史(暴走怪異バトラー・h05902)がからからと笑う。
「ヴィジョン・ストーカー、面白い怪異じゃねえか! 怪異って色々いるけど、ここまで言葉で人間と張り合おうとするヤツは珍しいぜ。
さあ、俺と怪異バトルで勝負だ!」
「なんか始まった」
ボールに|怪異《モンスター》でもゲットしちゃう感じ? と利家は敏史を見る。なんかのアニメのオープニングテーマでも流れ出しそうなノリと勢い。√汎神解剖機関の人間にあるまじき明るさと朗らかさ。怪異バトル云々の下りは√ドラゴンファンタジーっぽい。
が、敏史のノリが√汎神解剖機関の「人間」と違うのは無理もない。彼はあくまで人間の形をしているだけの災厄。「怪異蒐集家」という名のままに、クヴァリフの仔すら|蒐集《ゲット》するつもり……なのかは知らないが。
少なくとも、存分に興味をそそる目の前の怪異「ヴィジョン・ストーカー」は蒐集したいと考えていた。
「おにーちゃんたちが遊んでくれるの?」
「嬉しいなあ! 遊ぶなら、大人数の方が楽しいもんね」
「じゃんけん列車しよ!」
子どもに擬態していたからか、単にそういう趣向なのかは知らないが、ヴィジョン・ストーカーはそんなことを述べながら、影を接続する。「じゃんけん列車」はじゃんけんをして、負けた方が勝った方の後ろに連なっていく遊びだ。その様子を【影の接続】に見立てたのかもしれない。
「みんな、私の傍から離れないで!」
橘・あき(人間(√EDEN)のフリークスバスター・h00185)が子どもたちを庇いながら叫ぶ。子どもたちを列車に加えようとする影たちに、槍が降り注いだ。
√能力【|愛雨霰《アイ・アメ・アラレ》】。あきのレベル×10本の槍が生成され、子どもたちを守る盾を形成、残りの槍が影たちに攻撃しているのである。
「痛いよお」
「おねーちゃん、イジワルしないでよお」
「うっわぁ……」
子どもの声を演じながら、あきに媚びるヴィジョン・ストーカーに、思わずドン引きの声をこぼす利家。生き延びるために手段を選ばない、というよりは、遊んでいるのだろう。
引き摺る大剣を怪力任せに持ち上げ、ダッシュでヴィジョン・ストーカーに肉薄、重量のある大剣を影に叩き込む。
浮遊しながら迫り来る影の手は|ぴったり受け止め《ジャストガード》、爆破の花束をプレゼント。ぶん、と大剣を叩き込む。
「よし、怪異腹腹時計、君に決めた!」
敏史の宣言により、出現するのは√能力【愉快犯爆弾魔】により生み出された【怪異腹腹時計】。ヴィジョン・ストーカーたちをいくつか巻き込んで爆発を起こす。といっても、見た目には害のない爆発だ。——そう、見た目には。
「今度は右行こう」
「やだ! おねーちゃんと遊ぶの!」
「えー?」
「あはは、楽しく遊ぶのに仲間割れしてやんの」
敏史が揉め始めた列車の列を見て笑う。みんなで一体とならなければ、じゃんけん列車は成立しないのに、というのもそうだが。
人間災厄は子どものような好奇を宿した真ん丸い目を見開いて、妖しい輝きを灯しながら問いかける。
「あんたが接続してるその|味方《オトモダチ》、果たして本当にあんたと一緒に|戦う《あそぶ》つもりがあるのかな?」
波紋のように、広がる。動揺が走った。疑心暗鬼の波。些細で、ちっぽけな一滴が、致命的な毒として、伝播していく。あるいは、感染か。
「ま、まさかお前、√能力者が作った幻影とか?」
「そんな能力者いねーよ!」
「わかんないだろ。なんで決めつけるんだよ」
「もしかしてお前が紛れたニセモノとか?」
「落ち着いて、顔を確認しよう」
「——いや、顔ないでしょ! っと」
【|破壊魔剣《ブレイク》】! 重量のある強烈な一撃と共に、ヴィジョン・ストーカーたちにレベルダウンが付与される。
それが、槍の雨に晒されれば、じゃんけん列車は千々となり。
「あ、全部消えないうちに、ほい」
風前の灯の一体は、敏史のシリンジシューターに蒐集され、【そして誰もいなくなった】——なんて。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

★アドリブ、連携歓迎。一般人の子供には危害を加えないようにします
俺の事を本当の鬼と思っている子供もいるからなぁ…避難とかは他の√能力者に頼みてぇ。
まぁ鬼っていうのは間違っちゃいないか。
結構キレイに溶け込んでいたじゃねぇか、面白いな!
まだ帰る時間じゃねぇだろ遊ぼうぜ!
影踏み鬼ってか?じゃあまた俺が鬼をやってやるよ!
引き続き、影移し使用でインビジブル共と入れ替わりながら瞬時に移動していき、朱華(メス)やデスクリーヴ(ハチェット)で、影を切断していく。
今度はどんどん鬼(10秒間呪われた影状態になったインビジブル)も増えるんだぜ?
沈みゆく陽が俺の影たちを一層美しく彩っていく…クク、最高じゃねぇか!

九JACKマスターにおまかせします。かっこいい継萩・サルトゥーラをお願いします!
アドリブ歓迎。
「やったろうじゃないの!」
「まぁ焦んなや、楽しいのはこれからだ」
√能力は指定した物をどれでも使用ます。
戦うことが好きで好きで楽しく、戦闘知識や勘を活かしてハデに行動します。
楽しいからこそ冷静でいられる面もあります。
多少の怪我は気にせず積極的に行動しますがヤバいときは流石に自重します。
仲間との連携も行えます。
軽口を叩いたりやんわりと皮肉を言ったりしますが、他の√能力者に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!

子供依り代にして、子供と遊んでるんじゃねぇよ。
その姿だと仲間に入れてくれなかったから、寂しかったのか?ハッ。ご丁寧に数だけは揃えやがって。太陽が完全に沈む前に決着付けてやるぜ。
この怪異は何回か戦った経験がある。
ほら、俺、退魔士だし?怪異退治の仕事は命を危険に晒すから、極力避けるんだけど。
避けられねぇ戦いってあるもんな?
頭の中で【戦闘知識】を思い出す。厄介な行動とか、効果的な行動とか。知ってるワケだ。
√能力、無銘刀で影を【切断】。闇を纏い、【闇に紛れる】ことで俺の影に手出しはさせない。片端から影の接続、繋がりを斬る事でバフ効果を消去するのが狙い。
むすんでひらいて?これがお気に入りのメロディかい?
●光結ぶ先
「ハハッ結構キレイに溶け込んでいたじゃねぇか、面白いな!」
しゅうや、という子どもの実在、非実在を気にせず、素直な感想を口にしたのは天霧・碧流(忘却の狂奏者・h00550)だった。
夕焼けが、様々な影を照らし、照らされたものたちは、ヴィジョン・ストーカー以外の者もゆらゆらと手招くように揺らめいている。
「もっと遊ぼうぜ! まだ帰る時間じゃねぇだろ?」
碧流は誘うように手を伸ばす。無邪気な子どものようでいて、狂気じみた笑みを宿らすのは、そう、碧流もまた、影の眷属と呼べるから。——だって、|影なる私《シャドウペルソナ》だ。
「オレもまーぜて!」
そんな言葉と共に、銃弾の雨が降り注ぐ。そこから息つく間もなくドロップキックが炸裂した。ヴィジョン・ストーカーが一体、豪快に吹き飛ぶ。
近くで見ていた久瀬・千影(退魔士・h04810)がぴゅうっと軽快に口笛を吹く。碧流も「爽快だなぁ!」と笑った。
「よっしゃ、キマった!」
蹴りの主、継萩・サルトゥーラ(|百屍夜行《パッチワークパレード・マーチ》・h01201)が軽くガッツポーズをする。ちなみに【|危険地帯《デンジャーゾーン》】という√能力で、当たらなかったら、サルトゥーラ以外全員の行動成功率が半減するところであった。
千影が苦笑する。
「いい蹴りだったな。サッカーにも参加してほしかったぜ」
「えー、サッカー終わったのか?」
「お子さまたちは一般人だったからな。巻き込めねえだろ」
「人数のことなら、気にすることねーのに」
ヴィジョン・ストーカーがぞろぞろと集いながら言う。
千影はそれを見て、うげえ、と思った。まあ、確かに言う通り、数だけはぞろぞろと出てくる連中なのだ。千影がこの影たちと遭遇するのは果たして何度目のことか……と数えると遠い目になりそうだが、それだけ戦闘知識が豊かになっているのだ。
数を誇示したいのか、お手手繋いで、わいわいはしゃぎ始める影たち。それに肉薄、千影は【接続】を【切断】し、ふっと姿を眩ます。
「サッカーもいいが、今は影踏み鬼だ。俺たちが鬼」
「なーる。影を踏めばいいんだな? よっしゃ、やったろうじゃないの!」
心得た! と手慰んでいたソードオフショットガンをぱしり、と握り直し、サルトゥーラが駆け出す。
碧流も【|影移し《シフトシャドウ》】を発動させる。今回は怪異相手だ。遠慮はいらない。
姿の見えない鬼に対応するために、ヴィジョン・ストーカーたちは懲りずに【影の接続】をし、【影の雨】を展開する。
「そのやり口は見飽きたよ」
影色の驟雨。その隙間を縫い、無銘刀の銀閃が影の手を切断していく。数いるヴィジョン・ストーカーたちが、影を接続して互いの能力を補い合うのは常套手段だ。
それに、影を切り裂くのは、千影だけではない。短い一閃が瞬いては影を裂いて消えていく。
「ほらほら、おてて繋いでると、影が繋がって、全員アウトになっちまうぞ? ハハハ!」
瞬間移動を繰り返す碧流。その手には|朱華《メス》。切り裂くのは影なので、朱い華を咲かすことはできないが、怪異を切り裂く効果のある優れもの。
(それに、|影ども《アイツら》は数のアドバンテージが自分たちにあると思ってるようだが……)
にたり、と鬼が笑う。瞬間、影は別な影にぶつかった。
「うああああ!?」
体内を駆け巡る衝撃。彼らは影であり、肉体など存在しない。だが、痺れるような、焼かれるような「痛み」と呼ぶと仰々しい、けれど確かに存在する苦しみが貫いていく。
「ぎゃっははははは! ほらほら、もたもたしてるから、鬼が増えちまってるじゃねえか」
ゆらり、ゆらり。
|誰彼《たそがれ》と問いたくなるような、ぼんやりした影法師。ヴィジョン・ストーカーたちと違い、はっきりとした形はなく、境界の曖昧なそれは、碧流が【|影移し《シフトシャドウ》】で入れ替わったインビジブルたちだ。√能力で、彼らは【呪われた影】となり、触れた者に無差別にダメージを与える。
それが、影であろうと。
つまり、碧流は追いかけながら、|鬼《なかま》を増やしていたのだ。10秒という時間制限はあるが、それだけあれば、対処にはじゅうぶん。
数なんて、能力でどうにでもなる。ヴィジョン・ストーカーがアドバンテージと思っていたそれは、最初からあってないようなものだったのだ。
「あっはは、愉快だな、怪異さんよぉ!」
サルトゥーラが碧流の影に触れないよう、ひらひらと身を翻しながら、合間でソードオフショットガンを放ち、回し蹴りや足払いを決める。派手髪が影の合間を舞うのは、高揚を覚える奇妙な魅力があった。
その口角が吊り上がり、ニヒルな色を灯す。夕暮れのオレンジが今のサルトゥーラにはよく似合っていた。
「こういう足の掬われ方、なんて言うか知ってるか? 『人を呪わば穴二つ』だ!」
「はっ、うまいこと言うじゃん、アンタ」
現れた千影がサルトゥーラと並び立つ。戦闘の高揚のまま、軽くグータッチをかわすと、正反対の方向を向き、ヴィジョン・ストーカーに飛びかかる。
呪われた影に触れ、動けなくなっていたヴィジョン・ストーカーに一方ではドロップキックが炸裂し、もう一方では鋭い【切断】の一閃が走る。
「ふっ……はっはははははは!! 沈みゆく陽が俺の影たちを一層美しく彩っていく……クク、最高じゃねぇか!!」
むすんで、ひらいて、の規則的なリズムが、ずっと繰り返されている。もうそこに佇む影の主は碧流をはじめとした√能力者しかいない。
——そう、√能力者しか。
影の怪異が散らされた先には、もう一人、√能力者がいた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『連邦怪異収容局員『リンドー・スミス』』

POW
武装化攻性怪異
【肉体融合武装と化した怪異】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
【肉体融合武装と化した怪異】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
SPD
トランパー・オブ・モンスターズ
騎乗する【怪異の群れ】から跳躍し、着地点の敵1体に【荒れ狂う怪異の群れ】による威力3倍攻撃を放つ。また、跳躍中に【さらなる怪異を解放】すると命中率半減/着地点から半径レベルm内の敵全員を威力3倍攻撃。
騎乗する【怪異の群れ】から跳躍し、着地点の敵1体に【荒れ狂う怪異の群れ】による威力3倍攻撃を放つ。また、跳躍中に【さらなる怪異を解放】すると命中率半減/着地点から半径レベルm内の敵全員を威力3倍攻撃。
WIZ
怪異制御術式解放
自身の【蟲翅】がA、【刃腕】がB、【液状変異脚】がC増加し、それぞれ捕食力、貫通力、蹂躙力が増加する。ABCの合計は自分のレベルに等しい。
自身の【蟲翅】がA、【刃腕】がB、【液状変異脚】がC増加し、それぞれ捕食力、貫通力、蹂躙力が増加する。ABCの合計は自分のレベルに等しい。
√汎神解剖機関 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●君が代は
「影が煙に巻いてくれればいいと思ったが……管理下にない怪異では、こんなものか」
どうやら、ヴィジョン・ストーカーを唆すなり何なりして、ここに差し向けたのは、彼だったらしい。
蟲の羽ばたき。蠢く影。鈍色に煌めく刃。それらを従える眼帯の男は、隠れていない方の碧眼を細め、√能力者たちの顔を確認する。
それなりの人数の能力者、その上一般人のAnkerまでいるのを見、呆れたような溜め息を、紫煙と共に一つ。
「どこぞのフリーランスのゴーストトーカーの差し金だろう。星が詠めるばかりに、彼女も立場が難しいはずだが……私が来ると知っていて、きみたちを差し向けたのなら、|連邦怪異収容局《われわれ》との敵対も辞さないという意思表示と見て、間違いないだろう。
元より、手加減する気などさらさらないが」
懐から取り出した携帯灰皿を開き、煙草の火を消す。こちらからすれば、簒奪する側の悪人だが、彼はこれでも人の世のためという大義の下に活動する組織の人間。一般常識やエチケットを守るくらいの良識を持ち合わせている。
連邦怪異収容局員「リンドー・スミス」。
黄昏の世界に生きる人間らしく、彼の佇まいは、どこかくたびれて見えた。しかし、怪異も刃も、収める様子はない。
「まったく。人間同士で争うなど、馬鹿馬鹿しいとは思うのだがね」
それでも、やらねばならぬことは、やらねばならない。日本の国歌で言うだろう? 『あなたの命が、細石が大岩となり、その大岩が苔むすほどの時を経るまで永くあるように』と。
そう謳っているだけなのさ。
そう謳いたいだけなのさ。

※連携&アドリブ歓迎
組織の方針に相違があれば衝突も止むを得ないんだろうけど
同じ人類と言う事で共闘しなくちゃいけない事態は起こりうるのかな。
リンド―氏はその辺りどう思う?
√能力者は死に戻り出来るから短絡的に結論を出しがちだけど……考えたことあるかな?
融合型怪異と言うのも中々の見た目だね、一般人が見たら正気を喪うんじゃないかな。
人数では優位を取れない彼の能力だから、今回は手数で優位を取るのが良策。
神速の第一の太刀と自在の第二の太刀で、怪異とリンド―氏の手札を曝したら
無防備になった彼を必殺の第三の太刀で討とう、これぞ【天然理心流・無明三段突き】なり。
致命傷は逃れたとしても録に動けないんじゃないかな。

これが俺の役割だからだ
お前も自分の役割を果たしに来るといい。こちらは、全霊を以てそれを打ち墜とすだけだ
弾道計算に跳弾を組み合わせ、弾幕にしてリンドー・スミスへと放つ
銃火器による制圧射撃や、カガシブレードによる受け流しつつの切断で、リンドーの攻撃に応戦する
ならば、こちらも手数で競おう
サンダープロトコルを発動し、弾の雨によってリンドーを、奴を取り巻く怪異ごと攻撃
そして空中ダッシュやスライディングを組み合わせ、まだ攻撃が止まぬうちにリンドーに肉薄。自傷は激痛耐性や電撃耐性で緩和
リミッター解除したカガシブレードでリンドーを斬る
お前も√能力者だ、そのうち復活するだろう
ああ、また会おう。リンドー・スミス

なんか眼帯とか以外は普通の人っぽいじゃん
前言撤回。全然普通の人じゃなかった……!
変なのがいっぱいついてるー
戦闘に巻き込まれなさそうなところまで下がって、みんなの邪魔にならないようにする
人間同士で争うなんて馬鹿らしいって言ってるし、一般人を積極的に巻き込まないタイプならいいんだけど
うぅ、皆みたいに魔法的なの出せたらよかったのに
あたしにもできること、なにかないのかな
皆が頑張ってくれてるんだから
勇気を出して、リンドー・スミスの隙を作ってみる
スタングレネードは使っちゃったけど、一部始終を見てたならそれっぽい物も警戒するかも
例えば、そう、缶蹴りみたいにそこら辺の空き缶をあいつに蹴り飛ばしてみる
缶踏んだ!
●普通であることの仕合わせ
「組織の方針に相違があれば衝突も止むを得ないんだろうけど……同じ人類と言う事で共闘しなくちゃいけない事態は起こりうるのかな。√能力者は死に戻り出来るから短絡的に結論を出しがちだけど……
リンド―氏はその辺りどう思う?」
土方・ユル(ホロケウカムイ・h00104)が口にした問いに、リンドーはそうだな、と軽く顎を撫でる。
「あるだろう。目的が一致しているのなら、本来そうあるのが自然とさえ言える。そうならないのは、短絡的、というのもあるが……」
リンドーは微かに瞑目する。思うところがあるのだろう。
「口に合わないのだろう。とても食えたものじゃない、と吐き捨てている。きみたちも、私も」
思うところがあろうと、今、対立している現実が変わることはない。そう切り捨てるように、リンドーが肉体融合武装となった怪異の刃を振るう。
その一閃をユルは避けるが、それは二回攻撃になり、範囲攻撃となる。
(まあ、こうなるよね)
気づかれない程度の小さな小さな溜め息。√能力者は短絡的に答えを出しがち、というのは、どうやらこの男にも当てはまるようだ。
怪異と比べて、言葉に脈絡があり、会話が成り立つだけに、話が通じないのでなんとも言えない。
(なんか眼帯とか以外は普通の人っぽいじゃん……って思ってたけど!! 前言撤回。全然普通の人じゃなかった……!!)
槍木・千彩(イ・ヨハンのAnkerのオタクに優しいギャル・h05001)は悲鳴を上げたくなりながら、急いでリンドーから距離を取っていた。√能力者でないのだ。賢明な判断と言えよう。
リンドーもそれに対する配慮なのか、わざわざ一般人のAnkerに攻撃を飛ばすことはしない。それでも、繰り出されているのは範囲攻撃。余波はどうしても生まれる。
だが、その余波は千彩には届かない。
「きみもそうだから、ここにいるのだろう?」
「俺がここにいるのは、それが役割だからだ」
能面のように変化のない眼差しで、真っ直ぐにリンドーを見据えたのはイ・ヨハン(人間(√EDEN)の職業暗殺者・h00988)。その藤紫は揺らぐ様子もなく、カガシブレードで攻撃を受け流し、銃火器で鈍色を砕き、落とす。淡々と、着実に。
それは責任でもあった。Ankerをこの場に連れてきた責任。連れて来ざるを得なかったのなら、決して死なせないという、覚悟。
リンドーが曲がりなりにも「人間」であることが幸いし、千彩へ向かう攻撃はなく、所謂「流れ弾」もほとんどない。ちら、と目の端で千彩がじゅうぶん離れたのを確認し、弾幕を広げていく。
リンドーも、Ankerを殺して√能力者にダメージを与えるという悪辣な手段をわざわざ選ぶことはしない。だから、千彩がじゅうぶんに離れたところで、【怪異制御術式解放】を行い、無数の刃腕、蟲翅、液状変異脚を伸ばし始める。
(数で来るなら、こちらも数で応じるまで)
ヨハンは告げる。
「お前も自分の役割を果たしに来るといい。こちらは、全霊を以てそれを打ち墜とすだけだ」
「そうだな」
そもそも、これらは全て、お互い、「与えられた役割」だ。歯車はただ動くことしかできない。それが人なら、働くことしかできない。
ただ、それだけのこと。
伸びた刃腕がヨハン目掛けて飛びつく。鈍色の切っ先が、ぎらりと牙を剥いた。
けれど、届く前に、チリチリとした音に焼かれ、千々に散っていく。
【サンダープロトコル】のエネルギー弾だ。威力は100分の1だが、爆発を伴う攻撃が300回。いくら怪異が固かろうと、耐久性には限度がある。
そこに合わせ、繰り出される剣閃。——神速の一の太刀。
肉体と融合した怪異武装は、その速度に反応できなかった。一部が裂かれる。だが、それを放ったユルに組み付こうと腕を伸ばす。
そこに、飛来する物体。先のヴィジョン・ストーカーとの戦いを監視していたリンドーは、反応せずにいられなかった。
早くに逃げたから、思考の外に追いやっていた一般人。ヨハンのAnkerである千彩は、ここに連れてこられた責任感からか、しっかり歯車の一つとして、役割を果たそうとしていた。その結果、ヨハンに渡された【スタングレネード】が、影を消すのに大きな役割を果たしたのは、あまりにも記憶に新しい。
だから、弾こうと、刃腕を飛ばした。が、手応えが軽い。
「……空き缶?」
「ナイスショット!」
虚を衝かれるリンドー。好機とばかりに二の太刀を繰り出したユルが、怪異武装を絡め取りながら、千彩に賛辞を送る。
無防備になったリンドーの腹に、必殺の三の太刀が叩き込まれる。
「【天然理心流・無明三段突き】……お味はいかがかな?」
「くふっ……なかなか刺激的で強烈な味わいだ」
「融合型怪異ほどじゃないと思うけど」
まったくの減らず口に、リンドーは苦笑を禁じ得ない。
休息の暇も与えることなく、蠢く蟲翅ごと叩き斬るようにして、カガシブレードをリンドーに振るうヨハン。リミッター解除により、通常より数段威力の上がった一撃。
袈裟懸けに斬られたリンドー。よろりと揺らぐ彼の体を立たせている融合型怪異。
「融合型怪異と言うのも中々の見た目だね、一般人が見たら正気を喪うんじゃないかな。……Ankerの子は大丈夫? そばに行ってあげて。あと、空き缶の御礼も」
「ああ」
油断なく愛刀たちを構えるユルと千彩の元へ下がるヨハンを眺めながら、男は一歩、退いた。
こわかったよぉ、無茶をするな、と交わされる言葉たちを聞きながら、何を思うのだろうか。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

アドリブ連携歓迎
「難しいことはよく分からねぇけど、あんたから怪異の匂いがたくさんするぜ。ってことは、あんた、俺と同じ、怪異バトラーだな? なら、俺と怪異バトルで勝負だ!」
へぇ、怪異の群れか。景気がいいな。じゃあ俺は、蒐集したばかりの怪異を使うことにするぜ。
俺は、跳躍するリンドー・スミスの動きを見据えつつ、地面に手をかざす。その影が揺らぎ、暗闇の中から無数のヴィジョン・ストーカーが滲み出る。
「ヴィジョン・ストーカー! 君に決めた!」
呼び出した影の怪異が俺の影と、周囲の仲間と接続し、その反応速度を上昇させる。
向上した反応速度で怪異の群れを回避しつつ、《シリンジシューター》で怪異を蒐集するぜ

●連携希望(どなたでも)
リンドーの姿を見て舌打ちをする。
フリークスバスターを生業にしている身だもの、仕方ないわよね。
覚えてないでしょうけど、あなたに会うのは二度目よ。
でも、今回も忘れてくださって結構。前回同様、私達が勝つだけだから。
●POW
「そこを動くな!」
殴り棺桶coffin*を振り回し、近接攻撃。
なぎ払い技能を用いて大きく振り回しながら攻撃する。
当たればダメージ1.5倍。
当たらなくてもいいの。相手の動きは止められるから!
外れた場合、半径レベルmを移動禁止エリアになる。
能力負けで動かれる可能性は理解してる。
けれど、お前の成功値は半減できる!
私が仕留める必要はない。トドメは任せた!

達観した様な口振りだけど、あんた割とケツに火が付いてるんだぜ?
うちらの界隈だと「リンドー・スミス」には最重要指名手配が掛かっている
どいつもこいつもあんたの首を狙ってる
|連邦怪異収容局《ステイツ》と事を構える事になろうが、それは副次的なものなんだ
先進的な考え方が、この√と多数の星詠みには相容れないって事なのさ
かと言って趣旨替えする様な惰弱な主義主張で流されてるわけでも無いんだろうが
その|冷笑主義《シニシズム》は生け好かねえな
◆√戦闘
怪力の両椀でブラスターキャノンとブラスターライフルの乱れ撃ちを放って切り込み
怪異攻撃をダッシュ+ジャストガードで受け流す
爆破+重量攻撃で度肝を抜く様な風穴開けてやる!
●ひとでなし
融合怪異の支えとはいえ、倒れず、まだ臨戦態勢を取るリンドーの姿にちっという舌打ちが隠されることなく響く。
橘・あき(人間(√EDEN)のフリークスバスター・h00185)がリンドーの姿を忌々しげに睨み付けていた。それを目に留めたリンドーが軽く肩を竦める。
「おや、お嬢さん。舌打ちとはずいぶん、ごあいさつだね」
「こっちはフリークスバスターをしているからね。嫌でもあなたの噂は耳にするの。それに。あなたと会うのはこれで二度目よ」
「覚えていないな。申し訳ないね、レディ」
「覚えてなくて結構。それに、今回も忘れてくれてかまわないわ」
ばっさり切り捨てるあきの後ろから、猫耳をひょこりとさせながら、二階堂・利家(ブートレッグ・h00253)が顔を出す。
「げえ、あんた、あいつとやりあったことあんの?」
げえ、とはこちらもごあいさつである。
ブラスターライフルを担いで、歩み寄りながら、利家は滔々と語った。
「達観した様な口振りだけど、あんた割とケツに火が付いてるんだぜ? うちらの界隈だと『リンドー・スミス』には最重要指名手配が掛かっている——どいつもこいつもあんたの首を狙ってる」
「傍迷惑な話だ」
「自分のやったこと見てから言おうな」
子どもを巻き込んだ。子どもと呼べる年齢の√能力者だって存在するが、今回集まっていた子どもたちは違う。誰も彼も、普通の子どもだった。少し個性的なところはあるかもしれないが、それで人に迷惑をかけることのない無垢な子。怪異に操られていたとしても「遊び」を楽しんで、意識を繋ごうとする、無辜之民。
それは本来、汎神解剖機関も、連邦怪異収容局も、羅紗の魔塔でさえ、守ろうとしていたものではなかったか。
兎に角、今回、リンドー・スミスはその一線を越えた。大義として充分すぎる。
難しいことはよく分からねぇけど、と場違いに朗らかな声がする。シリンジシューターを構えた少年、越路・敏史(暴走怪異バトラー・h05902)。無邪気な男の子にしか見えない彼は、明朗快活としていて、二人とはまったく違った様子で、リンドーに迫る。
「あんたから怪異の匂いがたくさんするぜ。ってことは、あんた、俺と同じ、怪異バトラーだな? なら、俺と怪異バトルで勝負だ!」
版権大丈夫? と利家が呟く。大丈夫だ、問題ない。……が、そう呟きたくなるのも無理はない。それくらい、どこかのアニメで見たような言い回しだ。
怪異バトルってなんだ、と普通ならなるが、リンドー・スミスは幸か不幸か情報を知っていた。人間災厄「怪異蒐集家」の情報を。
ひと昔前ならありふれていたであろう「子どもらしい子ども」「普遍的な無邪気」。こういうのが失われたからこそ、人類は進化の歩みが止まってしまったのかもしれない。
少し、思考が明後日の方角に逸れたところで、それなりの殺意を湛えていたあきと利家は顔を見合わせる。それから少し笑んで、リンドーに目を戻した。敏史の登場で、程よく肩の力が抜けたようだ。
「怪異の群れとは景気がいいぜ」
「そうね、全部獲った場合、報酬はいくらになるのかしら」
「オッサン自身も懸賞金があるわけだし、こりゃ歩く金蔓だな」
無礼千万である。が、その方がいっそ、やりやすいかもしれない。リンドーはどこか諦めたような吐息と共に、【武装化攻性怪異】を繰り出す。
「よし、ヴィジョン・ストーカー! 君に決めた!」
それに応じるように、敏史も【|召喚《サモン》・|影の怪異《ヴィジョン・ストーカー》《|接続《コネクト》》】を発動する。するすると伸びた影があきや利家にも接続された。おそらく、ヴィジョン・ストーカーの【影の接続】がそのまま応用されているのだろう。
リンドーはうぞうぞと蠢く怪異たちに乗り、まずは敏史を潰すべく、跳躍、荒れ狂う怪異の群れを解き放った。【トランパー・オブ・モンスターズ】だ。
だが、「怪異蒐集家」の前に「怪異の群れ」を放る意味を、この男は、あまり考えていなかったのだろう。
敏史がシリンジシューターを投げ、怪異を蒐集する。
「な」
「連邦怪異収容局員の怪異なんて、|蒐集《コレクション》にうってつけだ。いっちゃん見映えのいいところに飾ってやるよ」
「面白い坊やだ」
不完全燃焼となった【トランパー・オブ・モンスターズ】を諦め、リンドーは素直に着地するが、そのタイミングを狙い澄ましたように、凶悪な殴り棺桶が飛んでくる。
怪異諸ともリンドーを薙ぎ払うべく殴り棺桶coffin*を繰り出したのはあき。√能力【|探偵活劇《レミイ》】による1.5倍ダメージ。
けれど、リンドーは避けた。避けてしまった。
「そこを動くな」
【移動禁止エリア】が展開され、足が縫いつけられたように動かなくなる。
「トドメは任せた!」
「オーライ」
移動禁止エリアの外から、ブラスターキャノンとブラスターライフルを乱れ撃ちし、肉薄する利家。あきの鋭い叫びに軽快に応じ、疾風迅雷のごとく駆け抜ける。
移動禁止エリアに入れば、彼の移動能力も奪われ、更に範囲内では行動成功率が半減する。
しかし、敏史の√能力による命中と反応速度の補填があり、既に発動中のものは何も半減はしない。
そもそも、行動成功率以外、何も半減しないのだ。
ダッシュ、切り込み、怪力を乗せた重量攻撃——からの、爆破!
成功するかどうかは賭け。だが、行動を起こさなければ、成功もしない。そんな一縷の望みに対し、女神は微笑みを浮かべた。
「ぐっ……」
リンドーの纏う怪異が吹き飛ばされ、リンドー自身も軽くはないダメージを負う。
「これで死なないのはいよいよ化け物では」
「安心しろよ、オッサン。オッサンが怪異になったら、俺が蒐集して、怪異バトルに使ってやるぜ」
「面白いこと言うわね」
油断なく武器を構えたまま、今度は倒れたリンドーを見据える三人。まだ立ち上がろうとする彼を化け物と評しつつ、利家は余裕のなくなったその顔を見てこぼした。
「生け好かない|冷笑主義《シニシズム》の仮面が取れたようで何よりだ。
簡単に趣旨替えする様な惰弱な主義主張で流されてるわけでも無いんだろうが、その先進的な考え方が、この√と多数の星詠みには相容れないって事、よく覚えといた方がいいぜ」
死に戻った後もな。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

★アドリブ、連携歓迎。碧流の倫理観は壊れていますが√能力者に迷惑をかける行為・公序良俗に反する行為はしません。
あ?なんだ、おっさん。人が気持ちよく遊んでたっていうのによ。
別に人間同士で殺りあっていいだろうよ。つまらないやつは殺す。それだけだろ?
まぁ、お前が使役しているその怪異達には興味がある。そんなおっさんに付き合わされて可哀想だな。一緒に葬ってやるよ。
無敵の破滅使用。
範囲攻撃をしてくるならどこにいたって同じだ。素早く突っ込んで攻撃しまくれば良い。
(※痛みは感じないがダメージは蓄積されるので、そこは気をつける)
鞭で身体を打ち据え、縛り上げて、棘を食い込ませて肉を引き裂く。
死ぬ準備は出来たか?

出ましたねー悪の首魁
怪異だのなんだのは正直別世界出身の私にはようわからん存在ですが、ヒトに害をもたらすヤツらをそこら辺にのさばらせたままにしては置けないので
マ、方向性の不一致ということで
祖霊の御加護を身に纏い、敵の顔面めがけて拳を振り下ろします
羽だの腕だの脚だのが向かってくるようですが、炎の爪で焼き焦がし無力化させて一点突破
アチラが纏う怪異を貫き本体にダメージをあたえてやります
ア、思い出しました
怪異をおさめるには炎が有効な場合もあると
蝋燭の火で引き寄せられる妖怪もいりゃ、浄化の炎で消し飛ばされる悪霊ちゃんもいる
複雑怪奇な存在ですねえ、我々も、アンタたちも

……アンタの手引きした怪異のお陰でお子様達は最悪の状況一歩手前だったワケだが。あの気色悪いモンがそんなに大事なのか?洩れかかってる異形もそうだが、センス最悪だな。
問いかけの下らない答えってのは予想済みなワケで。
なんせ子供の中に怪異を紛れ込ませたのはこのオッサンだろ?あのお子様達がどうなるか、最悪の想像がつかなかったワケじゃないだろ。要するに。欲しいモンの為なら、手段なんざ選ばねぇってことさ。やだやだ、こういう大人にはなりたくないねぇ。
『五月雨』にて蟲翅、刃腕、液状変異脚を【切断】する。増加分含めて全部叩き斬ってやるよ。ベテランエージェント、リンドー・スミス。その実力を考えりゃ、俺が死ぬ可能性だってあるだろうけど。
今は死の恐怖より怒りが勝るぜ。何も知らねぇガキ共を巻き込んで、平気な顔してんじゃねぇよ。
騎乗する怪異の群れから跳躍——跳躍中なら逃げ場ねぇだろ。
『闇纏い』にてオッサンより、より高く跳躍。
アンタの言うフリーランスのゴーストトーカーが言ってたぜ。アンタによろしくってな!
【切断】するぜ
●千代に八千代に刻まれよ
人間には、様々いる。
例えば、そう。
「あ? なんだ、おっさん。人が気持ちよく遊んでたっていうのによ」
鬼ごっこに精を出していた、ヒトの形の鬼とか。
鬼は面に狂気を宿す。日が沈み、濃くなり始めた夜闇が、彼の業を表すように、深く、深い色を成していく。
よろよろと立ち上がるリンドーに、不満を宿した声が続ける。
「別に人間同士で殺りあっていいだろうが。つまらないやつは殺す。それだけだろ? どんなにおキレイな大義とやらで飾ったって、好き嫌いして食いもん吐き出してんのは変わんねえのさ!」
一理あった。
リンドーは一つ咳払いする。ごぽりと口の中を満たしたなまぐさい赤は、不味かったので吐き出した。鬼の言う通り、おキレイを気取るのは、今更だ。
鬼の顔でも覚えてやろう、と鬼を——天霧・碧流(忘却の狂奏者・h00550)の顔を見た。爛々とした琥珀の目はギラギラとして、金にも見えた。
|金《きん》は人を狂わす色だ。今しがた自分を痛めつけた能力者も、|金《かね》のことばかり話していたように思う。だが、この|金《きん》を宿した青年は人を狂わせるというよりは、そう、自ら望んで、狂っているようだ……。
「それで? もう夜だ。子どもが遊ぶような時間ではない」
「だなぁ。まぁ、お前が使役しているその怪異達には興味がある。そんなおっさんに付き合わされて可哀想だな」
「言うじゃないか」
「誰が好き好んでくたびれたおっさんと遊ぶかよ。でも、あれか? そんなにくっついて、守ってやるなんてさ、実は仲良しこよしとかか? ふはっ、それなら、一緒に葬ってやるよ」
影が形を成す碧流の左腕が、鮮血のような緋色を灯す。輝き、揺らめき、蠢いて、ソレはやがて、棘の鞭へと変貌した。
それに応じるように、リンドーの中から、怪異が沸き出す。肉体と融合した怪異が、その牙でもって、鬼を討たんと向かってくる。
「出ましたねー、悪の首魁」
碧流の佇まいもなかなかのものなので、パッと見はどっちが正義かわからないが、タイミングは違えど、ずっと共に戦っていた九途川・のゑり(灼天輪・h00044)は、リンドーを悪と断じた。
リンドーを正確に、明確に「悪」と断じるには、のゑりは√汎神解剖機関の事情を知らない。見ようによっては、この男が、この男の所属する機関が、正義という可能性は大いにある。
が、その辺の正確で精密なところは、事情通に判断を任せればいい。のゑりはそう結論づけていた。
「ヒトに害をもたらすヤツらをそこら辺にのさばらせたままにしては置けない。今回で言うンなら、そう……」
「……アンタの手引きした怪異のお陰でお子様達は最悪の状況一歩手前だったワケだが」
のゑりの言葉を次ぐような形で、久瀬・千影(退魔士・h04810)が事実を述べる。いつものどこか飄々とした雰囲気はなりを潜め、声には怒りが滲んでいる。
子どもを巻き込んだ。助かったからいいものの、怪異の力か、無理矢理遊ばされていたらしい子どもの中には、顔面蒼白となっている者もいた。紫のシューズの「しゅうや」の実在非実在は定かではないが、最悪の想定で行くと、しゅうやという子どもだけは、確実に助かっていない。
√能力者たちが間に合わなかった、取りこぼしてしまった命? ——否、これは、怪異をけしかけ、その行いを容認したお前が悪い。
直接手を下したのでなくとも、お前が「しゅうや」を殺したのだ。それだけは、逃れようのない罪だと知れ。
……そこまで言葉にすることはないが、それくらいに沸々と、沸き立つ忿怒があった。
「口ではああだこうだと謳いながら、やってることがロクでもねえんだよ。あの気色悪いモンがそんなに大事なのか? 洩れかかってる異形もそうだが、センス最悪だな」
「さすがに具体的な被害者がいるのに、放置することはできない。それなら、怪異も妖怪も、そう変わらんでしょう? そういうことで——マ、方向性の不一致ですかね」
宣告すると、千影は無銘刀を構え、のゑりは【旧き祖霊|九灯禍《くとうが》様の加護】を纏う。焦れたように飛んできた棘の鞭がリンドーに絡みつこうとしたところで、リンドーの姿が場から消える。
蟲翅の羽ばたきにより、飛翔し、難を逃れつつ、液状変異脚による変則軌道の攻撃で、三人を翻弄しようとする。刃腕は碧流の方へ飛ばし、棘の鞭を切り裂いて無力化させようとしていた。
同時、刃腕の攻撃に織り交ぜ、【武装化攻性怪異】も発動させる。
誰かの言った通り、常人なら正気を失くすような禍々しく気色の悪い冒涜的な見目のそれ。しかし、碧流は一切怯むことはしない。
(範囲攻撃をしてくるならどこにいたって同じだ。素早く突っ込んで攻撃しまくれば良い)
ただし、相手は飛翔している。叩き落としてやる必要があった。
そこに千影の【五月雨】が飛ぶ。飛ぶための蟲翅は千々に切られ、切断を追うようにのゑりの【|加護之五・禍津猫《ワレラガフルキソレイノゴカゴアレ》】でもたらされた炎が舐める。
予期していたのか、素早く地に降り立ち、蟲翅を0にする代わり、刃腕を増やし、攻撃を始めるリンドー。だが、それを巻きついた棘の鞭が許さない。
ぎりぎり、ぎちぎち、ぎしぎし。次第に、鳴ってはいけない音色を奏で始めるリンドー・スミスの肉体。碧流は愉しげに、ともすれば鼻歌でも歌い出しそうなほど上機嫌に、リンドーを締め上げる。
そこに、炎の拳が一撃! 顔面にクリティカルヒット。あまりに綺麗で素早い顔面パンチに、緩んだ鞭から解放されたリンドーの体が、面白いように吹き飛ぶ。
チリチリ焼け焦げて落ちていく、羽虫のような怪異の残骸たち。少し鼻をつく臭気に、ひく、と鼻を動かすと、のゑりがア、と声を上げる。
「思い出しました。怪異をおさめるには炎が有効な場合もあると。蝋燭の火で引き寄せられる妖怪もいりゃ、浄化の炎で消し飛ばされる悪霊ちゃんもいる。複雑怪奇な存在ですねえ、我々も、アンタたちも」
「……そうだな」
まだ、立ち上がる。リンドーの中の怪異はまだ尽きていない。
「複雑怪奇だからこそ、詳細を把握したいのだろう。利用するために」
「安心するため、の間違いじゃねえかぁ?」
碧流がくつくつ笑う。
自分が覚醒してから、それまで【表】にいた碧流は彼のことを【漣】と呼び、怖がるようになった。【漣】の抱える残虐性を怖がるように。
——元より俺はお前だってのに。なあ、碧流?
シャドウペルソナの複雑怪奇さを怖がるのは、それが「自分と同一でない」と思い込むことで「自分はマトモ」だと安心したいからだ。それをこの場の誰より、碧流はよく理解していた。
もし、そうだとしたら、この男も、人類さえ、憐れと言えるかもしれないが……残念ながら、今回は確りとした大義もこちら側にある。
「子供の中に怪異を紛れ込ませたのはこのアンタだろ? あのお子様達がどうなるか、最悪の想像がつかなかったワケじゃないだろ。要するに。欲しいモンの為なら、手段なんざ選ばねぇってことさ。無辜之民を守るだとか、御大層な名目を掲げていても、そういう欲を隠しきれてなきゃ世話ないよ」
「耳が痛いね」
「そりゃそうだ。痛めつけてんだから」
千影がさらりと返す。憎まれ口を叩くのも、叩かれるのも、これがおそらく最後の場面。
「大義の前には多少の犠牲も已む無しってのは、おっさんみたいなタイプの悪人がよく嘯くことだ。まだ口にはしてねえけど。あーあー、やだやだ。こんな大人にはなりたくないね」
千影の口上が終わるか終わらないかくらいで、耳障りな蟲翅の羽ばたきが辺りに充満した。千影は顔をしかめ、のゑりは思わず耳を塞ぎ、碧流はまだそんだけ残ってたのかよ、と関心する。
蟲の怪異に騎乗し、跳躍、加えて変異脚の蟲、刃腕の蟲、融合武装となっていた怪異と豪勢に解き放っていく。
大盤振る舞い、総力戦といっても過言ではないだろう。リンドーに今できる全身全霊がこれなのだ。
他の√能力者たちが、大幅に使える怪異を減らし、リンドー自身のことも削った。だからこの程度で済んでいるのだと思うと、千影は身震いを覚える。——万全の状態のリンドー・スミス相手に、タイマンでも張ろうものなら、死は確実。
だが、今は、憤りが先に立つ。ヴィジョン・ストーカーは単純に「オアソビ」として子どもを使っていた。それでも子どもが「無事」と言えるかは怪しいところだ。それなのに——怪異が人間にとって危険だ、と誰よりもわかる立場で、誰よりも理解できる組織に身を置きながら、それをけしかけた。子どもを見捨てた。
「ガキ共を巻き込んで、平気な顔してんじゃねぇよ!」
許してはならない。
断絶しなければ。
断たなければ。
絶たなければ。
命を。
【闇纏い】にて、千影は跳躍し、リンドーに迫る。空中なら、逃げようがない。老体? 既に死に体? 知ったことではない。今回ばかりは慈悲などいらない。
「アンタの言うフリーランスのゴーストトーカーが言ってたぜ。アンタによろしくってな!」
「そうか」
微苦笑を描く唇。空気ごと切り裂くように、刀は男を切断した。
男の体は消え、命の消える音はしなかった。
子どもたちが集まっていたのは、学校が近いからというのもあるらしい。ドヴォルザークの「家路」……というとわかりづらいが「遠き山に日は落ちて」という歌詞でお馴染みのメロディラインが流れてくる。小学生の下校には遅く感じるので、中学か高校があるのだろう。
ひとまず、危難は去った。……そういえば、『クヴァリフの仔』の回収が目的だった気がするが、と頭を巡らすと、ちゃっかり戦闘の合間に回収していた能力者がいるので、そいつに任せればいいだろう。
中立だというフリーランスのゴーストトーカーが、素直に解剖機関に提出するかはともかくとして。
この任務は終わりを告げた。
こうして、今日も刹那的に平和が守られる。
千代に八千代に、この脆くも愛おしき日々が苔むす大岩となるまで、続きますように。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功