シナリオ

Regress for Regret

#√汎神解剖機関 #クヴァリフの仔

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 #√汎神解剖機関
 #クヴァリフの仔

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『そこ』に至れば、すべてを忘れられるという。
『そこ』に至れば、すべてをやり直せるという。

 あらゆる過ち、あらゆる失敗、あらゆる後悔。
 すべて無かったことにして。
 はじまりから、やり直そう。

 そう、『すべて』の『はじまり』から。



「なんて噂が、最近この街に流れてるの」
 ここは、√汎神解剖機関のとある地方都市。
 呼びかけに応えて集まった√能力者達を前に、星詠みのイルフィリーズ・メーベルナッハ(止まぬ闇と病める夜・h01239)、通称リズは己の見た予知を語る。
 曰く、この街の何処かに『すべてをやり直せる場所』というものがあり。其処へ至れば、あらゆる物事を無かったことにして最初からやり直すことができる、という噂が流れているのだとか。
「人間、やっぱり生きてればやり直したいコトのひとつふたつはあるモノなのかな。噂を信じた人達の何人かが、もう行方不明になっちゃってるのよ」
 つまりは何らかの事件が疑われる事態。そこで√能力者達に話が流れてくるということは。
「この噂は、街で活動してる怪異の狂信者さん達が流してる噂なの。それも『クヴァリフの仔』の召喚手法を授かった、ね」
 クヴァリフの仔。
 √能力者達の中にも遭遇した者がいるだろう怪異『仔産みの女神『クヴァリフ』』の産み落とす怪異の総称であるが。
 リズ曰く、一部の人間に対し、当のクヴァリフが『仔』の召喚手法を授けているらしく。其によって『仔』の召喚に成功した件の狂信者達が、更なる活動の為に噂を流している、というわけだ。
「このまま放っておいたら、どんどん被害が大きくなっちゃうのは間違いないの。皆の力で、この狂信者さんをやっつけてくれないかな?」
 成程、捨て置けば更なる行方不明者が出ることは想像に難くない。頷く√能力者達。
「狂信者さん達の活動拠点は、噂で言われてる場所も同じのはずだから。街で噂を集めていけば、その拠点も分かると思うの」
 充分に情報が集まれば、直接拠点へ襲撃を仕掛けることも可能となる。或いは、噂をばら撒いている狂信者を見つけ出し、その後をつけることによっても、拠点に踏み込むことができるだろう。その辺りは√能力者達の集めた情報の内容次第となる。
「どちらにせよ、最終的には怪異か、クヴァリフの仔を授かった狂信者さん達との戦いにはなると思うから気をつけてね」
 また、リズはこれに際して√能力者達に頼みたいことがあるとも言う。
「このクヴァリフの仔なんだけど、|新物質《ニューパワー》を取り出せる可能性が高いから、出来るだけ回収してきて欲しいのよ」
 緩やかに破滅へと進みつつある√汎神解剖機関、その延命に欠かせない|新物質《ニューパワー》。多くは怪異の肉体を素材とするだけに、このクヴァリフの仔からもそれを得られることが大いに期待されているのだという。怪異との対決に際して、覚えておいた方が良いだろう。

「わたしからは、こんなところかな。それじゃあみんな、よろしくお願いね」
 説明を終えたリズは、そう言って√能力者達を送り出す。
 不穏な噂の漂う街へと。

マスターより

五条新一郎
 忘れたくても思い出せない。
 五条です。

 さて此度のシナリオは√汎神解剖機関より。
 不穏な噂を流す狂信者達を制圧し、|新物質《ニューパワー》獲得の為の怪異回収をお願い致します。

●目的
 狂信者集団の制圧。
 『クヴァリフの仔』の回収。

●舞台
 √汎神解剖機関のとある地方都市。
 近隣大都市のベッドタウンのようで、住宅街が多めです。

●第一章
 街に流れている噂を集める「冒険」です。
 噂の概要はOP冒頭通り。
「何処へ行けば良いか」の情報を得るか、噂の出所を突き止められれば成功です。

●第二章
 第一章の結果により変化します。

●第三章
 第二章での行動により変化します。

●プレイングについて
 第一章はOP公開直後から、第二章以降は章移行後に断章を投稿しますのでそれ以後からプレイングを受け付けます。
 受付期間はタグにてご案内致します。

 それでは、皆様の悔いなきプレイングお待ちしております。
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第1章 冒険 『奇妙な噂を辿れ』


POW 片っ端から聞き込み調査
SPD ネットでアングラな情報を収集
WIZ 別の噂で上書きを試みる
√汎神解剖機関 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

クラウス・イーザリー
(全てを忘れて、やり直すか……)
もしそれができたとしても、やり直した俺は俺じゃないと思う
辛い記憶も失敗も後悔も、全部今の自分を形作るものだから

街の人達から地道に噂を聞いて回る
噂の『場所』は何処なのか、誰から噂を聞いたのか
その辺りを聞いて向かうべき場所や噂を流し始めた狂信者を探る

住人から話を聞くのと並行して、√能力『穏やかな対話』でインビジブルからも話を聞こう
インビジブル達に聞きたいのは、噂に惑わされた人達がどこへ向かったか、或いは噂を流している者が集まるような場所を知らないか、辺りかな

情報が集まったらその場所へ向かおう
これ以上行方不明者を出さないためにも、急がないと

※アドリブ、連携歓迎です

 閑静でありつつも、何処か不穏な空気を孕む街。その一角で、高校生と思しき数名の男子と会話を交わす青年が一人。クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)、此度の噂について調査する√能力者の一人だ。
「俺らの知ってるのはこんなトコ。後は知らね」
「そうか、だがとても有益な情報だ。話してくれてありがとう」
 やがて、男子生徒達は知ってること全て話したとして話を切り上げる。クラウスは頷き、情報提供への礼と共に彼らを送り出す。
(――しかし。全てを忘れて、やり直すか……)
 男子生徒達を見送りつつ、クラウスは改めて、此度の仕事の鍵となる噂へと思いを巡らせる。
 過ち、失敗、後悔、その全てを無かったこととして、やり直すことができる。成程、それ故に苦しむ者にとっては、魅力的と映るのかもしれない。
(もし、それが本当にできたとしたら……)
 クラウスにも、失敗や後悔の覚えはある。辛い記憶だってある。もし、それを捨て去ることができたなら――そう考えて、首を横に振る。
(……そうしてやり直した俺は、きっと俺じゃないだろう)
 その試みを否定する。失敗、後悔、そうした辛い記憶もまた、今の己を形作るもの。もし、それを捨て去ってしまえば、其処に在るのは己ではない己だ。そして、他者においても其は変わりあるまい。故にこそ、己は此度の仕事に参加しているのだから。
 改めて、此処までに得られた情報を整理する。先の男子学生の他にも、道行く住民達へ声をかけては、噂について地道な聞き込みをして回っていたクラウス。その成果もあり、幾つかの情報に関しては確度の高い情報が得られていた。
 曰く、噂が流れ始めたのは一月ほど前。駅前の予備校に通う学生や浪人生から聞いたという情報が多かった。そして、行方不明者にはそうした予備校生も含まれている、とも。
(駅前の予備校か。その辺りに向かえばより出処に近づけそうだ)
 頷き、クラウスはその足を駅の方向へと向ける。勿論、目指す先は件の予備校だが――その途上、人通りの無い裏路地へと入ったところで。
(彼らからも話を聞いてみるとしようか)
 目の前を横切る、朧気な魚めいた浮遊存在。即ちインビジブルだ。通常ならば意思疎通など叶わぬ存在だが、クラウスには其を可能とする手段がある。
「――少し、話を聞いてもいいかな」
 そう声をかければ、インビジブル達はゆらりとクラウスの方へ向き直り――同時に、見る間にその形を変えてゆく。人間そのものと言って良い姿へと。
 其はクラウスの励起せし√能力の恩恵。インビジブルに生前の姿と知性を齎す業。そうして人間の形を得たインビジブルが、改めてクラウスへと視線を向ける。
「はい。何についてお話しましょうか?」
 彼らの物腰は至って協力的。自ら聞きたいことを訪ねてくる様に有難みを覚えつつ、早速クラウスは用件を告げる。
「三日前から、この先の予備校に通う学生が行方不明になっている。見ていないか?」
 件の予備校生の名前と簡単な容姿を伝えつつ、クラウスは内心で安堵する。この√能力でインビジブルから得られる情報は三日前までが限度。件の学生の失踪からちょうど三日後に此処まで至れたことは、まさに僥倖と言っても良いかもしれない。
「ああ、彼でしたら――」
 質問を受けたインビジブル、視線を予備校とは別の方向へと向ける。曰く、数年前に閉鎖された元映画館の建物が其処にあり、彼がその中へと入ってゆくのを見ていたらしい。
「――それだ」
 これは決定的な情報かもしれない。クラウスが礼を告げると、インビジブルは微笑み――人の形を失ってゆく。√能力の効果が切れたらしい。
(急がないと。これ以上、行方不明者を出さないためにも)
 其を皆まで見届けることなく、クラウスは歩みだす。件の、かつて映画館であった建物の方へと。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

御倉・キンコ
アドリブ歓迎
判定:POW

全てをやり直したい…気持ちはわからんでもないが、噂に縋るほど世の中駄目になってるとは思いたくないねぇ。ま、それはともかく。いつの世も情報は足で稼ぐってのが基本だな。ネットやらは他の人に任せるとしよう。

住宅街多めのベッドタウン…派手な歓楽街はないだろうけど、人が集まる場所には必ず影ができるものさね。繁華街の路地裏とか電車の高架下みたいなとこを根城にしてるホームレスを中心に人がいなくなった場所がないか聞き込みをやっていこう。酒やツマミなんかを振舞ってもいいかもしれないね。
「世の中辛いことも多いけど、まだ全てを無かったことにする時でもないはずだぜ…」

 閑静なベッドタウンといえど、人の集まる場所であるからには影が生ずるもの。この街であれば、駅前の繁華街、その路地裏がそうであると言えた。
 其処へ踏み入れば、段ボールやトタン板、ブルーシートを組み合わせて作った粗末な小屋が幾つか。其処から出入りするのは、ボロボロの衣服を纏う見目にもみすぼらしい男達。即ちホームレスである。
「おお、いるいる」
 その環境ゆえに女性の近寄ることなど殆ど無い此処に、若干呂律が怪しい女性の声が響く。居合わせたホームレス達が視線を向けた其処には、警官の制服と思しき服を纏った女性の姿。
 だが、その制服は豊かな胸元を大胆に露出していることに加え、メリハリの利いたボディラインを存分に強調する煽情的な代物。加え、赤く染まって弛緩した表情は、酒が入っていることが明らかな有様。真っ当な警官とは到底思えぬその様相は、それ故に彼らへ警戒の意志を与えることが無い。
 御倉・キンコ(泥酔警官・h01055)――真昼間から酒の入った汚職警官なれど、この場に於いてその在り方は吉と言えた。
「よう兄さん達、元気してっかい?」
 ホームレス達が自分に気付いたのを認めるや、キンコはにこやかに挨拶してみせる。片手に酒瓶と、ツマミが入ってるらしきビニール袋を掲げてみせながら。
「ちょいと聞きたいコトがあってねえ。一杯|飲み《やり》つつでいいんで、聞かせておくれよ」
 言わば情報提供の見返り。頻繁とは言えぬ酒盛りの機会とあり、ホームレス達も彼女を拒むことなく招き入れた。

「……で、聞きてぇことってなぁ何だ?」
 酒を酌み交わし、乾杯した処で。ホームレスの一人が改めて問う。キンコが此処に来た用件について。
「いやね、最近この街で何件か行方不明事件が起きててさ。その少し前から流れてる噂が関係してんじゃないか、って話なんだけど」
 やり直しの噂と、伴う行方不明事件。どうやらホームレス達にも噂への聞き覚えはあるようで。
「あぁ、あの噂かい。やり直しったってなぁ……」
「そんなにやり直してぇコトなんてあるモンかねぇ」
 口々に各々の感じたことを口にする。彼ら自身は特にやり直したいとは思っていないようではあるが。
「まあそいつは兎も角だ。最近、何かこの辺りで変なコトが無かったかい?」
 彼らのそんな見解はさておいて。キンコは彼らに本題たる質問を向ける。人がいなくなった場所とかはないか、と。
「人がいなくなった、ねえ。まるでどっかのホラーみてえだなぁ」
「そういうのは分かんねぇが……変に人が入ってく場所ならあったな」
 首を傾げては酒入りのグラスを傾けるホームレス達であったが、やがてその内の一人が思い出したように手を打った。詳しく、と食い気味にキンコが問えば。
「駅前通りの外れに、何年も前に潰れた映画館があるだろ? 最近、あそこに入ってく奴をちょくちょく見かけるんだよ」
 それも、明らかに業者の類とは思えない者達だったという。不思議には思っていたが、変に首を突っ込むものでもないと見過ごしていたのだという。
「おお、そいつぁ確かに怪しいねえ。調べてみる価値はありそうだぜ」
 礼とばかり、答えたホームレスの手のグラスに酒を追加しつつ。快哉の笑みを浮かべるキンコであった。

 暫しの酒宴を終え、ホームレス達の元を去ったキンコ。そのまま、件の映画館の方へと足を向ける。
(世の中辛いことも多いけど、まだ全てを無かったことにする時でもないはずだぜ……)
 そうまでして、全てをやり直したかったのか。誰ともなく心中にて問う表情は、先程までよりも引き締まって見えた。
🔵​🔵​🔴​ 成功

餅竪・れあぬ
■方針
・アド/絡◎

■行動
惹かれる方が出るのも、理解出来る内容ですわね。

最近のこのような噂でしたら、ネット上に情報が有りませんかしら?
「地方都市の名前」「噂」「やり直し」等の文言で検索、[情報収集]してみますわね。
SNS等で「確実に噂の流れているコミュニティ」が判別出来ましたら、【妖異変化「百鬼」】で『|覚《サトリ》』と融合、瞳が虹彩の無い漆黒に変化した姿で尋ねてみまして、コミュニティに出入りする方々の思考を読み、また会話を聞いて知っている方を探しますわ。
或る程度絞れましたら、『妖異発現:豊饒母胎』の魅惑の香気で友好的な反応が得られる状態にして話しかけ、『覚』の能力で補助しつつ聞き出しますわね。

 都市の一角、人通りを妨げぬ位置にて、スマートフォンを操作する少女。艶やかな黒髪に、あどけなくも美しく整った顔立ち、何よりも其に不釣り合いな程に熟れ実った双房が印象的な少女。
 |餅竪・れあぬ《もちたて・れあぬ》(とある豊饒の女神の使徒:餅・h00357)、此度の事件を解決するべく参じた半人半妖の√能力者は、スマートフォンを以てネット上の情報を検索している処であった。
 この都市の名前に、『噂』『やり直し』。それらの文言を以て検索を行った結果、ヒットしたのはとあるSNSのアカウント。どうやらこの街のある県に住んでいる大学生のものらしい。
『○○市の何処かに、失敗したことを何でもやり直させてくれる人がいるんだって』
『先週から見ないあの先輩も、やり直しに行ってるんだっていうけど……』
 名前が出ている市は、まさしく今れあぬがいる街だ。どうやら、此度の事件に関わる話題と見て間違いなさそうだ。つまり、この人物の属すコミュニティでは確実にこの噂が流れている。
 ログを辿った結果、この人物の通う隣の市の大学で噂が流れているようだ。頷き、れあぬは早速大学へと向かってゆく。

 隣市、某大学。その校門を見張れる路傍の木陰に、れあぬの姿はあった。その瞳は先程までとは異なる、光彩の無い漆黒。√能力を以て妖怪『|覚《サトリ》』と融合した結果だ。
 その瞳に行き交う人々の姿を映すたび、様々な思考がれあぬの脳内へと流れ込む。融合せし妖怪『覚』の持つ、思考を読む力の恩恵。以て、大学の人々の思考と会話から更なる情報を得んとしているのだ。
 流れ込んでくる情報は、大半が噂と無関係な内容ではあったが。それでも時々、噂に関する情報が流れ込んでくる。やり直しの噂への興味、或いは自分もやり直したいと言う願望。そんな思考が、れあぬの脳裏へと浮かび上がってくる。
(惹かれる方が出るのも理解はできますわね)
 人間、誰しもやり直したいことのひとつやふたつはあるものだ。ならば大なり小なり、やり直しの噂への興味を示すのは無理のないこと。れあぬはそう考える。
 なれども、それに怪異が関わっており、故に人的被害が出るというなら。それを認めるわけにはいかないとも考える。故にこそ、れあぬは此処に在るのだ。
 そんな考えを頭の内に巡らせること暫し。漆黒の瞳が、また一人の学生の姿を捉える。一見、地味めな見目の女子学生だ。
(――っと、あの方は……)
 過ぎりゆく思考は、やり直しという文言と、何処かへ行くことを算段するかのような内容。この人物ならば色々と知っていそうだ。頷き、れあぬは彼女へと声をかけにゆく。
「ごめんくださいませ。少々、お尋ねしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
 唐突なその声かけ。相手を驚かせ、悪くすれば警戒させてしまう可能性もあったが。女性の表情にも思考にも、僅かな驚きが浮かぶのみ。
「……あ。はい、なんでしょうか?」
 そして返答は至って穏やかで、友好的なもの。まるで、れあぬに魅入られたかのように――否、実際に魅入られていた。れあぬがその身に纏う、魅惑の香気によって。
「隣の市で流れている『やり直しの噂』について、お話を伺いたく」
 そう問われれば、女性は素直に洗いざらいを喋ってしまう。己の生活環境、やり直したいという感情を得るに至った動機まで。
「隣の街の潰れた映画館まで行けば、何もかもやり直せるって聞いて。そういうことなら、わたしも行ってみたいなって思って……」
 そうして、向かうべき場所についての情報も得られた。裏付けも充分。ならば後は赴くのみか。れあぬは頷いた。
🔵​🔵​🔴​ 成功

明星・暁子
アドリブ&野良連携歓迎
身長170㎝の少女の姿で事に当たる。

SPD ネットでアングラな情報を収集する。
「最近にわかにクヴァリフ関係の事件が増えてきましたわね。ここらで押しとどめないと」
ネットの海は広大ですから。アングラ情報の中に真実が含まれているかも?

特注のハッキングツール(アイテムです)を使い、情報サイトで情報を見て回る。
カタカタカタ、ターーン!(ENTERキーを叩く)

√能力《疾風怒濤》を使用して、能力値3倍、技能も3倍。キー入力も3倍速い。

「それにしても、奇妙な噂ですね。すべてをやり直せるなんて」
「人生にリセットスイッチは無いでしょうに」
カタカタカタ、ターーン!(ENTERキーを叩く)

 市内のネットカフェ、その個室スペースに、カタカタとキーボードを叩く音が絶えず響き渡る。衝動のままに打ち続けている――そう感じられる程に、その打鍵音は嵐めいた速度を伴っていた。
 キーボードを叩くのは、身長170cm程の黒髪の少女。あどけなさの残る見目だが、昏いその瞳は油断なくディスプレイを見つめている。
(最近にわかにクヴァリフ関係の事件が増えてきましたわね……)
 |明星・暁子《あけぼし・るしふぇる》(鉄十字怪人・h00367)は思案する。ここ最近、何人もの星詠みから類似の事件についての話題を聞く。人的被害が出ているものも少なからず存在するが故に、どうにか事件の拡大は食い止めたいところ。そんな意志のもと、此度の事件にも参加を決めた。
 彼女が現在実行しているのは、ネットからの情報収集。それも、アングラサイトからの。如何やら会員制のサイトだったようだが、予めパソコンに接続しておいたハッキングツールの助けもあり、容易くセキュリティをすり抜けることに成功。こうして、見て回ることが可能となっていた。
 アングラサイトだけに、取り扱う情報は表のサイトではまず見られない、オカルトじみていたり犯罪的だったりする内容がずらり並ぶ。中には、殺人依頼などという物騒極まりない求人も見られる。
(流石にこれを全部見て回るのは骨ですわね)
 情報量は極めて多く、ひとつひとつを精査するには時間があまりにも足りない。検索を試みた方が良さそうだ。
 カタカタカタッターン! っとキーボードを叩きENTERキーを押せば、候補となる項目が絞り込まれて表示される。これくらいならひとつひとつ見て回る形でも大丈夫だろう。

『取り返しのつかない失敗、忘れたい昔の出来事。そうしたものがあるなら、此処へおいでなさい。全てをなかったこととして、はじめからやり直させてくれるでしょう』
 やがて暁子が行き着いたのは、そんな文言が掲げられたトピックスだった。まさしく、此度の仕事に関わるトピックスと見て間違いなさそうだ。
(改めて見ても、奇妙な話ですね。すべてをやり直せるなんて)
 其を前として、暁子は思う。星詠みから此度の事件について聞いた時にも思ったことだが。
(人生にリセットスイッチなんて無いでしょうに――)
 あるとすれば、其は何らかの罠の類に他ならぬ。暁子はそう考える。故にこそ、事件の元凶は確実に排さねばならぬ。改めて心中に思う。
 さて、トピックスには具体的に向かうべき場所の情報が無い。どうやら、興味を持った者にのみ詳しい目的地を伝える形式を取っているらしい。
 そういうことなら、と。暁子は再度キーボードを素早く叩き、トピックスに記された連絡先フォームへ、接触を望む旨のメッセージを投稿しにかかる。
 程なく記述しきって、ENTERキーを押下。メッセージを送信して程なく、返信が届けられた。
(ふむふむ、あの街の繁華街外れの廃図書館――)
 記された情報に従えば、どうやら向かうべき場所はそこで良いらしい。真相に何処まで迫れるかは兎も角、向かってみる価値はあるだろう。
🔵​🔵​🔴​ 成功

ディラン・ヴァルフリート
全てを……無かった事にして、やり直す
自我や主観の連続性を思えば、自殺行為と大差無く思えますが……
……今の自分を後腐れなく消せるなら消してしまいたい、という方は
この√にも少なくないのでしょうか

此度は【仁刻】を思考能力の自己強化にも利用しましょう
風属性にした装備[錬気竜勁]《属性攻撃》を広域展開
センサー代わりに噂の追跡能力を向上させます

√能力の影響で相手の助け合う心も増幅されれば
親切心で話を聞かせて頂ける可能性も高まるかと
全てを忘れ、やり直すという噂について知りたい……という
目的自体は明かした方が手早いかもしれません

話を伺った方には、忘れるが吉の不審な噂だと
冷静な思考で察して頂ければ猶良いのですが

 夕刻、この地方の中心都市と繋がる鉄道駅に接した広場にて。電車を降りて家路につく人々は、誰もが疲れと共に漠然とした不安感を表情に滲ませる。この√汎神解剖機関においてはよくある光景。眩い明日を見失い、行き詰った人類。その一端。
(今の自分を後腐れなく消せるなら、消してしまいたい……という方は、この√にも少なくないのでしょうか……)
 そんな人々の歩む様を、金色の双眸に映しつつ。ディラン・ヴァルフリート(|虚義の勇者《エンプティ》・h00631)は心中独りごちる。全てを無かったことにしてやり直すなど、自我や主観の連続性の観点からすれば、自殺と大差無いように思えてならぬが。
 いずれにせよ、蠢く怪異は討たねばならぬ。その為にも、必要な情報は集めねば。ディランが此処に在るのはそれが故。可能な限り多くの人々から情報を得る為に。頷き、ディランは歩みだす。
「――もし。皆さん……ひとつ、お尋ねしたいことが……あります」
 駅前通りの歩道を歩いてゆく人々。彼らの前へと歩み出たディランはそう声をかける。訥々としたハスキーボイスで以て。
「何だ、あんた……?」
「どうしたのかしら……?」
 突如現れ出て、声をかけてきた少年。其を前に、人々は困惑の表情を浮かべるが――声音にはネガティブな感情は感じられない。感じられるのは、自分達に何かを尋ねたい様子のディランに対する、純粋なる協力の意志。
 其はディランが励起せし√能力の発露。人々は其を以て助け合う心を増幅され、困っている者が在ればその力になりたい――という気持ちを強く抱くようになっている。|生命《いのち》の本質は善である――そんなディランの信念、或いは願望だろうか。その具現とも言える√能力。
「はい。……全てを忘れ、やり直す……という、噂について。……ご存知のことを教えて欲しいのです」
 ディランの言葉を待っているかのような人々。彼ら彼女らに対し、本題を切り出す。その目的を、率直に。
「うん? あの話か。そういや少し前に、この辺で妙な宣伝っぽい事してる奴らが言ってたな」
「妹から学校の噂になってるって聞いたわね。教えてくれた同級生が、何日か前から学校休んでるとも」
 其を受ければ、人々は口々に己の知る噂に纏わる事柄を語り出す。いつ、どこで、誰が語っていたのか。統一感の無い情報は、各々が様々な経路で、それらの噂に触れていたことを窺わせる。
「妙な宣伝……その人達が、何処から来たか……知っていますか?」
「うーん、通りすがりに見ただけだからなあ。何処から来てるのかは分からん。悪いな」
「同級生の方は……お休みしだす前に、何処に行くとか……言ってたでしょうか……?」
「その辺は知らないっぽいのよね。妹もその子と特別仲がいいってワケじゃないし……ごめんなさいね」
 然し糸口は多くとも、なかなか決定的な情報には繋がらない。だがディランは焦ることなく、一人一人に情報の詳細を尋ねて回る。やがて。
「ああ、なんか駅前通りの外れの、閉鎖された映画館。其処に行けとか何とか聞いたな」
「映画館……ですか」
 具体的な場所についての情報が得られた。曰く、数年前に閉鎖されて以来、誰も寄り付かなくなっていた場所とのことで。まさに真っ当でない者達が根城とするには最適な場所と言える。
「其処に行ってみれば……少なくとも、何かは分かりそう……です。皆さん……ありがとうございます」
 調査は大きな進展を見せたと言える。手応えを覚えるディラン、一方で情報提供者達へ頭を下げて謝意を示すことは忘れない。
「いやいや、礼には及ばねえよ。……けど、何もかも忘れられる……かあ」
「よく考えたら、普通有り得ないわよね。何されるのかしら」
 ディランに応えた人々は、ふと、そもそもの噂の内容について疑問を呈する。それもディランの√能力によって一時的に与えられた恩恵。荒唐無稽な噂に疑問を抱き得る、冷静な思考力。
(この様子なら……遠からず、忘れてくれる……でしょうか)
 であれば、自ら何もかもを捨てるような行いには走り得まい。小さな安堵を覚えつつ、ディランは歩き出す。件の映画館の方へ。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

夜久・椛
すべてをやり直せる、か。
…そういう救いを求める人は多そうだね。

「だが、その救いは怪異によるものだぞ」

ん、碌なことにならない気がする。
まずは噂を調べてみようか、オロチ。

まずは噂の情報を集めていこう。
目立たないように、耳と尻尾は【幻影使い】の幻影で隠しておくよ。

御伽を使い、インビジブルを妖精さんに変えて聞き込みするよ。
目立たないように、幻影で妖精さんを隠してこっそりとね。

妖精さん、妖精さん、少しお話良いかな。
すべてをやり直せるっていう噂を話してる怪しい人達を見なかった?
噂で言われてる場所も、知ってたら教えて欲しいな。

噂の情報が集まったら、情報を整理。
【野生の勘】も活用して、場所を推測してみよう。

 街の中心部、駅前へと向かう通りを歩む少女が一人。その頭からは猫の耳が生え、スカートからは尻尾のように蛇が覗く。彼女――|夜久・椛《やどめ・もみじ》(御伽の黒猫・h01049)が半人半妖である故の、尋常の人間では有り得ぬ姿。
 なれども、すれ違う人々はそんな彼女の姿に何らの反応も示さない。椛のそれら特徴を、認識できていないかのように。――否、実際に認識できていないのだ。彼女の纏う幻影によって。
「――すべてをやり直せる、か」
 歩みを進めつつ、椛はふと呟く。すれ違う人々は誰もが、漠然とした不安や、苦悩の色をその表情に滲ませていた。現在への行き詰まり、過去への悔い、そうしたものを感じさせる色。
「……そういう救いを求める人は多そうだね」
 故に実感する。其に縋りたいと願う者は、決して少なくはないのだろう、と。後悔ゆえに、回帰の可能性へ縋る者達の多かろうことを。
『だが、その救いは怪異によるものだぞ』
 そんな椛の認識を嗜めるかのように。何処からか声がする。その源は椛の腰。尻尾のように生える蛇こそが、発されたる声音の主だ。椛自身とは別に其処へ宿る人格、名を『オロチ』と云う。
「ん、確かに碌なことにならない気がする」
 元々が尋常の事象たりえない処に、怪異の絡むことはほぼ確実。どう考えてもまともな結果とはなり得ない。成程、捨て置くことはできないだろう。実感と共に頷く椛。
「それじゃあ、まずは噂を調べてみようか」
 仕事をこなす意志を新たとした処で、椛は本格的な調査行動に入る。視線を上空へ向ければ、ふよふよと空を泳ぐ朧な魚めいた姿が幾つか見える。インビジブルだ。それらを目に留め、椛は呼びかける。
「妖精さん、妖精さん。少しお話いいかな?」
 インビジブルはインビジブルであり、妖精ではない。そもそも、基本的には能動的な意志を持つ存在でもない――が。呼びかけを受けたインビジブルは見る間にその姿を変えてゆく。背に蝶やトンボの翅を有する、小さな人型の存在へと。今この場において、インビジブルとはまさに妖精であった。
『なになに? どうしたの?』
『何のお話をしたいの?』
 妖精達は、あどけない姿に見合った子供のような声音で、椛へと応えながら降りてくる。その声音、表情は一様に、椛への友好的な意志を示す。彼女達には能動的な意志もまた、宿っているのだ。
 尤も、これは飽くまでも√能力の効果。椛が行使した、インビジブルに一時的な仮初の姿と知性を与える力の恩恵だ。尚、彼女達にも椛の生んだ幻影が纏われているため、彼女達自身と椛にしかその姿は見えていない。
「うん。最近、この辺で『すべてをやり直せる』って噂を離してる怪しい人達がいるらしいんだけど、そんな人達を見なかった?」
 そんな妖精達に、早速椛は用件を告げる。噂を流した張本人についての問い。
『ああ、いたいた。何だか怪しいお兄さんとかお姉さん達』
『色んな人に、何かお誘いするようなことを言ってたみたい』
 妖精達は然程の思案もなく、率直に己の見たものを語る。余程印象に残っていたようだ。手応えを感じ、椛は更に問う。
「その人達が何処から来たか、とか、何処へ行くように言ってたかとか、知ってたら教えて欲しいな」
『うーん……』
 然し、これに関しては妖精達の反応が少し鈍い。思い出すのに少し難儀している様子。
『あっちの方へ行ったのを、見た気がするかも』
『えっと、映画館がどうとか、って言ってた気がする』
 そうして返ってきた答えは、若干曖昧なもの。飽くまでこの辺りを漂っていただけなのか、決定的な場面は目撃していないようだ。
「ん、分かった。ありがとうね」
 とはいえ、有力な情報であることには違いない。椛は妖精達に礼を告げ、彼女達の示した方向へと向かってゆく。

「ええと、こっちの方で、映画館……」
 やがて歩むうち、駅前エリアの外れに当たる通りへと出て来た椛。妖精達の情報の手掛かりで大きいのは、映画館だが。
『あれではないか?』
「え?」
 思案する椛へ、不意にオロチが呼びかける。椛が、彼の示した方向を見ると。
「……なるほど、映画館だ」
 其処に建つのは、閉鎖された大き目の施設。周囲の設置物などの特徴と合わせて考えれば、成程、映画館だ。
 間違いない、何かがいる。椛の野生の勘もまた、この中に只ならぬ存在の気配を感じ取っているようだった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

十六夜・月魅
アドリブ・他PCさんとの絡み歓迎。

一見ゆるふわ系女子高生。中身は歩く魅了テロリスト。
でもちゃんとやることは弁えています。
台詞の語尾が、ですねえ。ですよお。と間延びします。

WIZ「別の噂で上書きを試みる」を目標とします。

『愛と戦の女神(嘘)』発動状態で、魅力と魅了技能を2倍にし、目立つ場所(駅前とか)で行動します。
引き寄せた方々を魔眼や吐息、声で魅了。
噂の情報を集めつつ、悩みや懺悔を聞き出し、甘やかし、慰め、勇気づけ。篭絡します。

「頑張ったのですね。偉いですよお」
「大丈夫ですよお。やり直せますよお」
「私は皆様を愛していますもの。ご自分を信じてくださいねえ」

『やり直せる場所がある』を『やり直すための愛を授けてくれる人がいる』にすり替えを狙います。

また『傭兵少女分隊』を街に分散させ、中学生新聞の取材と称し噂の情報を集め。
「その噂でしたら、駅でそれらしき人がいるみたいですよ」と、月魅のいる場所を伝えて次の被害者の誘導も。

狂信者さんが釣れたら、口づけによる『魅了支配』で洗いざらい喋って貰います。

 √能力者の一人が、駅前で情報収集に取り組んでいた頃。駅前の別方面では、何やら人だかりができていた。その中心には、一人の少女の姿。一見は、緩やかかつ柔らかな雰囲気を醸す女子高生といった印象だが――その身から溢れる言いようのない魅力は、最早魔性の領域に到達しているとさえ言えるものだ。
 彼女の名は|十六夜・月魅《いざよい・つきみ》(たぶんゆるふわ系・h02867)、時に心霊テロすら引き起こす程の凄まじい魅了能力をその身に宿した少女である。
「必死に練習してきたってのに、緊張しすぎて大会じゃ散々な結果になっちまって……」
「頑張ったのですね。偉いですよお」
「私の不注意で彼の大事なバッグを……。もう、おしまいなのかな……」
「大丈夫ですよお。やり直せますよお」
 そんな月魅に対し、彼女を囲む人々は口々に、様々な悩みや、過去の過ちを打ち明ける。初対面でありながら其処までの話をしてしまうのは、偏に月魅の魅了能力の賜物。その視線、その吐息、その声音。全てが、老若男女を問わず人々を魅了する力を宿す代物ゆえに。まして、今は√能力による魅了能力強化状態。能力者ならぬ者が抵抗することは、極めて困難と言えた。
 加えて、月魅はそんな彼らに対し、甘い慰めや勇気づけの言葉を返してゆく。心の弱った者にとって、そうした肯定や共感、励ましの言葉はこの上なく心に沁みるもの。故にこそ、そうした心を月魅に捕らわれ、篭絡されてゆくのである。
「私は皆様を愛していますもの。ご自分を信じてくださいねえ」
 ハグするように両腕を広げ、微笑みと共に告げれば。人々は皆一様に、恍惚としながら返事を返す。皆、すっかり彼女の術中と見えた。
(うーん、まだまだ情報は足りなさそうですねえ)
 そんな月魅だが。この場の雰囲気はさておき、取っている行動は全て、此度の事件解決に必要と彼女が判断したもの。即ち人々を魅了し、その上で噂に関しての情報を集めているのだ。魅了の力もあって、集まった人々は皆一様に、快く己の知る情報を話してゆくが。どうやらまだ確信的な情報は伝わっていない様子。
 と、そこに。
「あのー……」
「おやあ、どうなされましたかあ?」
 囲いの外から聞こえる声。月魅が視線を向ければ、女子大生と思しき数名の女性がそこにいた。
「えっと、ここに『やり直すための愛を授けてくれる人がいる』と聞いてきたのですけど……」
 件の噂とは似て非なる噂。なれど月魅は驚かない。それこそが彼女の狙いだからだ。『やり直せる場所』に行ってしまえば、そのまま帰ってこなくなる危険がある。ならば噂を別の形に捻じ曲げてしまえば、少なくともそうした危険からは遠ざけられるのではないか、というのが彼女の考えだ。
 故に、√能力で呼び寄せた少女人形の傭兵達に、中学生新聞の取材と称しての情報収集と噂の拡散、加えて月魅のもとへの誘導も担わせ。以て噂の定着を試みんと試みているのだ。
「ああ、それなら私ですよお。どうなさいましたかあ?」
 策は今のところうまくいっている。手応えを感じつつ、やってきた女性達との会話を始めようとする月魅。だが、その視線は。
「ど、どういうことなのです……? やり直すためには、その為の場所へ行かないといけませんのに……」
 噂についての見解のずれに、困惑の呟きを漏らす女性。悩み苦しみをそのように解決されては、己らの求める結果には至り得ないから。即ち。
「その辺、もっと詳しく聞かせて貰えますかあ?」
 動揺する女性に、穏やかな微笑を向けると共に、徐に、その唇へ自らのを重ねてみせる。驚き目を見開く女性、なれどその表情は見る間に緩み蕩け。より深く、月魅の魅了に心を奪われた状態へとなり果てた。
 後は彼女――怪異の狂信者たる女性に、自らの知る情報を余すことなく話してもらうのみ。手応えに微笑む月魅であった。

 それから暫く後。
 人々はその場を去り、月魅の望む形の噂を広めるべく散っていった。後に残るは月魅と、彼女が自らの√能力で呼び寄せた少女人形の傭兵達。丁度帰投を果たしたところであるのだ。
「なるほどお。やはり、その廃映画館が一番怪しいですねえ」
 集めた情報を纏めた結果、此度の噂の出処は、駅前通りの外れにある元映画館の建物という結論が見出された。当の狂信者からも類似の情報が得られているので、まず間違いないだろう。
 ならば後は、その場所へと向かうのみだ。手応えに微笑みつつ、月魅はひとつ頷いた。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 集団戦 『ヴィジョン・ストーカー』


POW 影の雨
指定地点から半径レベルm内を、威力100分の1の【影の雨】で300回攻撃する。
SPD 影の接続
半径レベルm内の味方全員に【影】を接続する。接続された味方は、切断されるまで命中率と反応速度が1.5倍になる。
WIZ 影の記憶
知られざる【影の記憶】が覚醒し、腕力・耐久・速度・器用・隠密・魅力・趣味技能の中から「現在最も必要な能力ひとつ」が2倍になる。
√汎神解剖機関 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

 駅前通りの外れにある、かつて映画館だった建物。数年前に閉鎖されてそれきりである筈の建物に、最近人の出入りがある――経緯は異なれどその情報に行き当たった√能力者達は、件の廃映画館へと足を踏み入れる。
 営業を終了して久しい館内は静寂に満ち、非常灯の光のみが光源の薄暗い空間が広がっている――と、その時である。
 空間に砂嵐じみたノイズが走ったかと思うと、そこから滲み出すかのように幾つもの黒い影めいた腕が伸び出てくる。見ればその腕の根元には、同じく真っ黒なブラウン管テレビらしき構造物。一瞬にして、館内にはそれら怪異――『ヴィジョン・ストーカー』の群れが溢れ出していた。
 √能力者達を脅威と見て迎撃せんと現れたのか、或いは単純に彼らを餌食にせんとでもいうのか。いずれにせよ、この廃映画館が此度の事件において重要な意味を持つ場所であることは間違いなさそうだ。怪異の群れを蹴散らし、先へ進むとしよう。

※『ヴィジョン・ストーカー』を殲滅しつつ廃映画館の奥を目指す章です。
※戦場は廃映画館の館内、主に通路。館内は薄暗く、広さもあまりありません。
餅竪・れあぬ
■方針
・アド/絡◎

■行動
映画館に、古いテレビの怪異ですか。
捉え方次第では意味深ですわね。

『姫魚』の能力を用いて怪異達の行動を高精度で予測、【妖異変化「影女」】を発動しますわ。
命中率が上昇しても、攻撃に呼応しての『先制攻撃』で攻撃機会自体を潰せば問題ありませんし、この薄暗い環境であれば『影纏い』での隠密もし易いですの。
更に【影の接続】で利用されている『影』自体を利用しての『影渡り』による転移も含めれば、『接続』で味方を強化している個体を『銃剣』で優先的に狙うことも出来ますわ。
『影渡り』を警戒し死角を作らない様一箇所に集まったら、『アサルトライフル型の精霊銃』をフルオートにして一気に狙いますわね。
クラウス・イーザリー
(狭いな……それに薄暗い)
自由が利き辛い場所での戦闘だ、気を付けて戦おう

常にゴーグルを装着し、暗視で薄暗さに対応しながら戦闘
初手で視界内の見える範囲に向けて決戦気象兵器「レイン」を起動し、ヴィジョン・ストーカー達を纏めて攻撃

以降はレーザー射撃やクイックドロウで手の根元のテレビを破壊しながらダッシュで前に進む
敵が集まっていたら再度レインで範囲攻撃
敵から攻撃されたらジャストガードで防御して腕に絡みつかれそうになったらスタンロッドで振り払う

この先にクヴァリフの仔や狂信者が居るのなら、足止めを食らっている暇は無い
焦らない程度に急いで進もう

※アドリブ、連携歓迎です
御倉・キンコ
アドリブ歓迎
判定:SPD

ふん、ザコのお出ましか。ここに何かあるのは間違いないってわけだ。だがお前さんたちにゃあ用がないんでね。さっさと潰して押し通らせてもらうよ。

仲間同士で密集すればするほど強いってわけか…数で押してくると面倒だが、一人一人は大したことないね。それじゃ、まずは集まれないようにしてやろうか。

√能力『狐火』を使用し、おおよそ集団の中心にいる敵に向かって発砲します。集団になっている敵にまとめてダメージを与えつつ、範囲外に向けて出てきた敵を近接攻撃で撃破します。

「雑魚どもがあたしの前に立つんじゃないッ!」

 瞬時に湧き出たヴィジョン・ストーカーの群れ。見目にはテレビから伸び出る腕、といった形をした怪異であるが。
「映画館に、古いテレビの怪異。捉え方次第では意味深ですわね」
 この場と怪異との共通点を見出した|餅竪・れあぬ《もちたて・れあぬ》(とある豊饒の女神の使徒:餅・h00357)は、ふと思案気に首を傾げる。
「まあ、何かあるのは間違いないってコトだろうね」
 ふん、と鼻を鳴らしつつ応えた御倉・キンコ(泥酔警官・h01055)は怪異を鋭く睨み据える。朱の差す顔は未だ酒の残っていることを感じさせるが、身構える所作に揺らぎは無し。
「こんなザコ共はさっさと潰して押し通らせてもらおうか」
「ああ。けれど……」
 やる気十分といった様相のキンコに対し、クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)は同意を示しつつも、戦場となった一帯へ視線を走らせる。然程大きいと言えない映画館の通路は、戦闘を行うには少々心許ない広さ。加え、非常灯以外の照明が無い為に、視界にも少々難儀する。
「自由が利き辛い場所での戦闘だ、気をつけて戦おう」
 キンコと、れあぬにも告げて。クラウスは戦闘用ゴーグルを装着。暗視モードを起動すると共に、その視界へ光の嵐が巻き起こる。
 其は戦闘準備の間に展開していたレイン砲台の一斉射撃。レーザーの雨に晒された影の群れが奇怪なダンスの如く悶え跳ね、受けたるダメージの大きさを物語る。
「ええ、きっちり仕留めて参りましょう」
 クラウスに応え、れあぬが構えるはアサルトライフル型の精霊銃。トリガーを引けば練色の魔力弾が速射され、悶えるヴィジョン・ストーカー達を次々と撃ち抜いてゆく。
「初手から随分と派手にやるねぇ! そんじゃ、あたしも一発やるとするかね」
 そんな二人の攻勢に快哉を上げるキンコ。なれども彼女もまた、其処へ追撃をかけるべく己の業を構えていた。その手の自動拳銃を向ける先は、影の群れの中心と思しき位置。
「コイツも喰らっていきな!」
 そしてトリガーを引けば、発射されるは弾頭の紅く輝く一発の銃弾。其が狙い通りの位置へと着弾すれば――直後、爆発的な勢いで炎が一帯へと広がってゆく。
 其は只の炎ではない、術者の焼きたいものだけを焼く狐火である。故に影魔達が炎に巻かれ悶えるとも、館内設備に炎が燃え移ることはなく。
「――これは」
「力の漲る感じがしますわね」
 クラウスとれあぬは其々に、己の身の力の高まりを覚える。其を齎したるもまた、今し方放たれた銃弾。味方には霊力による恩恵を齎すもまた、キンコの行使せし業の効果だ。
「さぁて、残った雑魚どもを蹴散らしてやろうじゃないか」
 二人へと笑みを向けつつ、呼びかけるキンコ。一連の攻撃でヴィジョン・ストーカーの群れは大きなダメージを負い、消滅に至った個体も多いが。それでも残った影達は次々とその手を伸ばし、一矢報いんとばかりか三人へ襲い掛かろうとする。
「ええ、確と退けて参りましょう」
 れあぬが応えるや否や、その姿が消失。直後、ヴィジョン・ストーカーの一体の真横へと現れたかと思えば、精霊銃に装着された銃剣で伸ばされた手を切断している処であった。
「手早く片付けるとしよう」
 残ったテレビ部へと拳銃から弾丸を叩き込み、これを消滅へと至らしめつつ。クラウスもまた応える。その間にも、レイン砲台がレーザーを放ち、弱った影魔達へとトドメを刺してゆく。
 渦巻く狐炎は戦域の只中を占め、ヴィジョン・ストーカー達を容赦なくその外へと追いやってゆく。そうして散り散りになってしまえば、待っているのは√能力者達による殲滅だ。
「思った通り、一人一人は大したことないね」
 キンコは大太刀を振るい、傷ついた影魔を殴り倒す。鞘から抜けない刀ではあるが、鈍器としてならばこの状態でも十二分だ。
 この怪異は、他の個体と影で繋がることで以て相互に強化を図ることが可能。それが叶う状態であれかなりの脅威であるが、今このように分断されてしまえば、最早√能力者達の敵ではない。
「ええ、やらせは致しませんわ」
 影を纏い隠密裏に動くれあぬが、銃剣を以て影魔達の虚を突く斬撃を打ち込み仕留めてゆく。薄暗い廃映画館の通路という戦場は、彼女の隠密能力を大いに助ける環境である。故にこそその隠密能力は最大限に発揮され、影魔達は彼女の存在を全く捉えられぬまま仕留められてゆく。
 苦し紛れの反撃を繰り出す個体もいるが、まともに受けてしまう者はこの中にはいない。クラウスはガントレットを嵌めた腕で其を容易く防ぎ弾くと、もう一方の手の中の拳銃を以て、攻撃を試みた個体の腕の根元――テレビを撃ち抜き。更にレイン砲台からのレーザーの追撃を重ね、確実な殲滅を成す。
「――これ以上足止めを喰らっている暇は無いな」
 呟くクラウス。敵の数は随分と減ったが、目的は飽くまでも奥に在るという狂信集団だ。敵に時間を与えればどうなるか分からぬ、叶う限り迅速に先へ進みたい。
「そうですわね、先を急ぎましょうか」
 焦る必要は無いが、悠長にしていて良いわけでもない。同意を示したれあぬが、精霊銃をフルオート掃射する。其は奥側に残るヴィジョン・ストーカー達を薙ぎ倒し、先への道を切り開く。
「おう、行くとするかね」
 キンコも応え、奥へと駆け出す。辛くも生き残った影魔が、影の手を伸ばし足を引かんとするが。
「雑魚があたし達の前に立つんじゃないッ!」
 鞘に納めたままの大太刀を振るったキンコによって殴り飛ばされ、消滅の憂き目を見る。そのまま奥へと向かうキンコに続き、れあぬとクラウスもまた駆け出していった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

ディラン・ヴァルフリート
事態の解決という意味では……実行犯である狂信者以上に、
元凶の怪異を討つ方が有効という事もあるでしょうか
双方とも、とは中々いかないのが歯痒いところですが。

「ともあれ、前座に時間を掛けては……いられませんね」

民間人にはこの一体一体が脅威
【猟刻】、取り零す事なく殲滅しましょう
連続攻撃が途切れないように装備[蝕竜外装]《異形化》及び
[断界絶覇]《オーラ防御》の《受け流し》で防御性能を向上

破壊力を強化する重力属性の追尾斬撃で纏めて薙ぎ払う合間に
発生の早い《早業》や[錬気竜勁]《属性攻撃》の雷電、
動きを封じる《念動力》金縛りや強行突破の《怪力》を織り交ぜ
|主導権《イニシアチブ》掌握を意識して一掃しましょう

(――然し)
 先行した猟兵達の切り開いた道を駆けるディラン・ヴァルフリート(|虚義の勇者《エンプティ》・h00631)は、ふと考える。此度の事件、その落着の形について。
(事件の解決という意味では……実行犯である狂信者以上に、元凶の怪異を討つ方が有効……という事もあるでしょうか)
 狂信者達は飽くまでも尋常の人間。なれば、怪異を討てば一先ずは無力化も叶うだろう。それでも怪異を呼び寄せ得る危険な存在には変わり無いが、双方共に対処が叶う状況ばかりでもない。歯痒い処です、とディランは眉根を寄せつつも、通路の角を曲がり――
(何にせよ、前座に時間を掛けては……いられませんね)
 見据えたその先、薄暗闇から滲み出るように浮かび上がるは、幾つものテレビめいた形状の影。ヴィジョン・ストーカー。そのテレビ画面から放たれるは、多様なる形状を持つ夥しき数の影。それらが驟雨を成して、ディランを目掛けて降り迫り、その身へ浴びせかけられんとする。
「そうはいかせません」
 無論、黙して捕らわれるディランではない。対抗の意志を示すと同時、その肉体が一回り膨れ上がると共に、全身を竜の鱗が覆ってゆく。其は己が肉体を侵すが如く顕現せし竜鎧。その身を竜へと変じせしめるが如き蝕竜外装。
 降り迫る影の雨は、ディランの目の前で弾かれるが如く退けられる。害意を拒む概念障壁が、ディランの意志に応えてその眼前へと展開されたのである。その守り、一撃の軽い影の雨では抜くこと叶わぬ堅牢さ。ディランの身には一滴とて浴びせられることは無し。
 以て初撃を凌げば、次は此方の番。判じたディランは両手を広げて構える。四肢にも及んだ竜鎧の侵食、竜爪じみた刃の備わる両手へと力を籠めれば。
「……狩り立てます」
 右腕を大きく、前方の空間を薙ぎ払うかの如く振り抜く。直後、怪異の群れの只中に、空間の裂け目じみた漆黒の斬痕が発生。其は影を吸い込むが如く引き寄せ、これを押し潰し。引き込まれぬよう抗うものも、引力によって思うように動けぬ。
 その隙を突き、ディランは一気に肉薄を果たす。踏み込むが早いか数度立て続けに連続しての爪撃を繰り出せば、正面のヴィジョン・ストーカーがテレビも影の腕も纏めて引き裂かれ、崩壊してゆく。
 其を皆まで見届けず、ディランは左手を横合いに突き出す。掌から生じた紫電が、左方より迫り来ていた影魔を貫き、焼き焦がし。以て塵へと還してゆく。
 やがて最初に繰り出した重力場が消失すれば、怪異の群れは散開し、ディランから距離を取りにかかろうとする。引き込まれることを嫌ったのだろうか。
「逃がしは……しません」
 だが、それよりディランが再度腕を振るうが早かった。裂けた空間の裂け目が超重力と引力を生み、まともに巻き込まれた影魔が次々と潰れ砕け、消滅してゆく。
 それでも引力に抗う影もあるが、あるものは突如凍り付いたかのように動きを止め、またあるものはディランに掴まれ、裂け目目掛けて投げ飛ばされ。共に裂け目に喰らいつかれ、そのまま潰れ拉げ砕かれていった。
 この戦域の|主導権《イニシアチブ》は、完全にディランのものであり。一帯のヴィジョン・ストーカーの群れが全滅するまでに、長い時間はかからなかった。

(……取り零しは、ありませんね)
 ディランは軽く一帯を見回し、討ち漏らしが無いかを確かめる。時間はかけておれぬとはいえ、一体でも力無き一般人には充分すぎる脅威。確と全滅させておきたかった。
 程なく、全滅を確かめれば、小さく頷いて。廃映画館の更なる奥を目指して、再び走りだした。
🔵​🔵​🔴​ 成功

夜久・椛
ん…どうやら当たりみたいだね。

「そうだな。だが、簡単には通れないようだ」

邪魔するなら、蹴散らして通るだけだよ。

まずは朧の刀身を砲撃形態に変形させ、風の魔弾を放って【先制攻撃】。
着弾地点に烈風を発生させ、周辺の敵を巻き込んで【範囲攻撃】するよ。
影で接続しようとしても、烈風で影を切り裂いて妨害。

この隙に、風の中に入って先に進むよ。
敵が攻撃してきたら、【野生の勘】で見切り、【幻影使い】で生成した残像を囮に使って回避。

避けきれないなら、【オーラ防御】に烈風の護りの風の【属性攻撃】を組み合わせて吹き飛ばすよ。
更に【2回攻撃】で、雷の属性攻撃を付与した弾丸を【錬金術】で生成して、朧から発射して追撃。

「どうやら、当たりだったみたいだね」
 廃映画館、湧き出した怪異の群れ。|夜久・椛《やどめ・もみじ》(御伽の黒猫・h01049)は頷きながら、映画館の奥を目指し通路を駆ける。
『そうだな。だが、簡単には通れないようだ』
 然し。尻尾の蛇――オロチが告げるのとほぼ同時、通路にノイズめいた歪みが生じ。テレビめいた意匠の影と、其処から伸びる無数の腕が、椛の行く手を阻む。
「邪魔するなら、蹴散らして通るだけだよ」
 なれどもこの程度の妨害は想定の内。焦ることなくその手に刀を抜く。其は柄のみで刀身の無い刀。なれども紛いなく椛の武器たる刀だ。
 椛が力を籠めれば、内に充填された液体が素早く伸び出し、瞬く間に筒状の形を取る。即ち、砲身である。
「生成完了……吹っ飛べ」
 狙い定め、その意志を示すと共に。砲口から放たれるは、高密度の大気を凝縮せし風の魔弾。其が怪異の群れの中心へと着弾した、その直後。一帯の大気が、唸りを上げて荒れ狂う。
 其は敵するものを斬り刻む、激しき烈風。その猛威の前に、影達は抗うこともできず、只々引き裂かれ消滅してゆくのみ。斯様な風の中では、影同士を接続しての強化も侭ならぬ。
「よし、今のうち」
 以て道は開かれた。烈風荒れ狂う只中へと椛は飛び込み、先へと進んでゆく。辛うじて生き残っている影の群れ達が、椛を捉えんとその手を伸ばし掴みかかってくるが。
 掴もうとした手は、まるで何もない空間を掴もうとしたかのように空を切る。そのまま、尚も荒れ狂う烈風によって影の腕は斬り刻まれ、消滅してゆく。
「危なかった、かな」
 かの影達が掴もうとした椛の姿は只の幻。動物的な勘で残存のヴィジョン・ストーカーが攻撃を仕掛けて来る可能性へ気付いた椛が、敵の意識を逸らす為に生成したものだ。僅かでも時間を稼げれば、後は烈風で斬り刻まれるのみ。なれば一度狙いを逸らせれば充分、というわけだ。
 そうして烈風渦巻く領域を抜け、その先へと踏み出そうとした椛。だがその直前、前方より迫る黒き腕の存在を察知する。烈風の範囲を逃れたヴィジョン・ストーカーが在ったか。
「!」
 咄嗟に椛は意識を集中、己の身へ気流の護りを展開する。元々荒れ狂っていた烈風の護りと合わせれば、その防御は十全。伸び来た腕を見事に弾く。
 防ぎ止めたら反撃だ。再び砲撃形態の刀を構えれば、その銃口から撃ち出されるのは激しい電荷を帯びた雷の魔弾。其が影の根元のテレビめいた影へと着弾すれば、其は激しい痙攣の後、爆散。そのまま消滅へと至った。
「この先も、気をつけて進まないとね」
『油断するなよ』
 そうして前方のヴィジョン・ストーカーを排除した椛。オロチの忠告に頷きつつ、更なる奥を目指して再び進みだした。
🔵​🔵​🔴​ 成功

十六夜・月魅
アドリブ・他PCさんとの絡み歓迎。

一見ゆるふわ系女子高生。中身は魅了大好き困ったさん。
台詞の語尾が、ですねえ。ですよお。と間延びします。

「廃映画館ですねえ。こういう場所も好きですよお。皆の力と私の愛で攻略しますよお」
「「「はーい!」」

『愛と美の女神(仮)』で魅了系効果ブーストと回復キス獲得。
『愛の弾丸』を撃ち、支給装備で武装した『傭兵少女分隊』を強化。

月魅は戦闘が苦手なので、傭兵ちゃんたちと集団戦術。
月魅を中心とした陣形を組んで目指せ最深部。

「さあ、一緒に頑張りましょうねえ(ねっとり甘き声)」
「「「ふぁ~い…」」」
傭兵ちゃんたちを魅了して戦意高揚!(してる。たぶん)

傭兵ちゃんたち。
銃器によるスナイパー(狙撃)、範囲攻撃(掃射)、一斉発射(一点集中)でヴィジョン・ストーカーを排除。
鉄壁(防具の盾)で攻撃を受け止めます。

「最前列目標に一斉発射!」
「「「ラジャー!」」
「攻撃来るよ!盾構えて!」

月魅。
回復キスで傭兵ちゃんたちを回復。
ラブライフルと愛の弾丸で傭兵ちゃんたちを援護。

「痛いの痛いの飛んでけ~」
「私も攻撃できますよお。そおれぇ」
「愛の弾丸、受け取ってくださいねえ」

途中の小部屋などは確認して行方不明者などがいたら保護(魅了して隠れて貰うか、退路確保済みなら脱出してもらう)

他の参加者さんとご一緒出来た場合は能力強化と回復で支援します。
助けられたら。
「ありがとうございます。好きですよお」

 廃映画館のシアターホール、その一つ。かつて此処が映画館として営業していた頃は多くの人々が様々な映画を楽しんでいただろうこの空間も、今や影の如き怪異の蔓延る領域と化している。
「目標、正面上方の怪異群! 一斉発射!」
「「「ラジャー!!」」」
 其処へ響くは、甘さを残しつつも凛とした号令の声。続いてあどけなくも勇ましき少女達の声が唱和すると同時、アサルトライフルが一斉に火を噴き、彼女達へ襲い掛からんとする怪異の群れを銃弾で以て撃ち砕き、消滅せしめてゆく。
「敵は全滅しましたねえ。みんな、お見事ですよお」
 怪異の生き残りがいないことを確かめ、号令を発した|十六夜・月魅《いざよい・つきみ》(たぶんゆるふわ系・h02867)は己の周囲へ布陣する少女達――人形少女の傭兵達を労う。その甘い声音に、少女達もはにかむやら照れ臭そうにもじもじするやら、其々に好意的な反応を示すが。
「それじゃ、此処のクリアリングを終えたら次に行きましょうねえ」
 続いての指示が出れば、瞬時に表情を引き締めホール内を慎重に、然し迅速にクリアリングしてゆく。其を終えれば、12名の少女人形全員が戻った処で廊下へと出て、先へと進む。
 月魅は先行した√能力者達の後詰めを行うかの如く、道中のシアターホールなど脇道に当たる部屋へと順次踏み入り、其処に現れた怪異を掃討して回っていた。それは、怪異を確と全滅させることで今後この場所へ足を踏み入れた者が危険に晒されぬ為の配慮でもあり、同時にもう一点、重要な目的があった。
「次は此処ですねえ」
 廊下を歩くこと暫し、次のシアターホールの扉の前で一行は足を止める。少女人形達のうち二人が扉に手をかけ、残りは月魅の周りでライフルを構え。そして扉が開かれると同時――
「これを受け取ってくださいねえ」
 月魅が構えたライフルから、桃色に煌めく銃弾が射出される。其は開放された扉から飛び出してきた影――ヴィジョン・ストーカーへと命中。一帯へ桃色の輝きを拡散させる。其は直撃した影を消し飛ばすと共に、後から現れ少女達へ襲い掛からんとしていた影を怯ませて。
 続けて、構えていた少女人形達のアサルトライフル一斉射撃。放たれる弾丸は桃色の煌めきを纏い、先程の交戦以上の威力で以て影の群れを撃ち据え、散々に消し飛ばしていった。
「それじゃ中へ――と、盾構えて!」
 迫っていた怪異の全滅を確かめ、ホール内への進入を促そうとした月魅だが。直後に前方から迫ってきた更なる影を見て、少女達へ防御を指示。常より反応速度の遅い己らでは、敵より先に攻撃して殲滅するのは現実的でないとの判断。
 指示に応え少女達の構えた盾に、怪異の打撃が打ち当たる。敵はどうやら√能力で腕力を底上げしているらしく、其は防いだ少女達を守りごと吹き飛ばす程。
「――っ! 反撃を!」
 少女人形が吹き飛ばされ壁へ叩きつけられる様に動揺しかける月魅だが、今の己の立場への意識で以て其を抑え込み。残る少女人形達へ攻撃を指示すれば、少女達はライフルを斉射。煌めき纏う銃弾で以て、打撃を齎した影群を殲滅せしめた。
「ふう……。大丈夫ですかあ?」
 今度こそ全滅である。一つ息をついた月魅は、吹き飛ばされた少女達へ向き直る。彼女達は既に立ち上がってこそいるが、人形であれど痛覚はあるのか、少し顔を顰めている。何処か痛むらしい。其を見て取った月魅は、少女達のうちの一人へと近づくと。
「痛いの痛いの飛んでけ~……ちゅっ♥」
 なんて唱えながら、少女の頬へ口付けを落とす。なれども、其は只のおまじないではない。発現済みの√能力によって、実際に回復の力を得ている口づけだ。
 少女は身体を苛む痛みが引いていくのを実感し、月魅へ謝意を示すように頭を下げる。月魅は微笑で応えると、同様に負傷した少女達へ同様に口づけを与えていった。
 そうして治療を終えた後は、先程と同様にクリアリング――と、ホールの片隅に小さな扉を発見したと少女人形の一人から報告。
「其方も確かめておきましょうかあ」
 月魅の意志に応え、少女達も扉の前へ集結。敵の急襲を警戒しつつ、扉を開ければ。
「……! むぅぅ! むぅぅぅ!」
 其処には、四肢を縛られ猿轡を噛まされた数名の男女。街で情報収集を行った際に聞いた、行方不明者の特徴に一致した姿の者も何人かいる。噂を信じて此処へ来たところを、狂信者達に捕まってしまったものと思わしい。
「もう大丈夫ですよお。私達が、助けに来ましたからねえ」
 必死でもがく彼ら彼女らに対し、安心させようとばかり微笑みと甘く優しい声をかける月魅。其に伴う魅了の力ゆえか、彼らはすぐに動きを鈍らせる。そうなった処で、少女人形達が拘束を解いていった。
 解放された彼ら彼女らは、数日此処に閉じ込められていたらしく衰弱と憔悴が見られるが。月魅が投げキッスしてみせれば、先の癒しの力が放たれて。ひとまずある程度回復はしたようだった。
「廊下へ出て右へ向かえば出口ですよお、気をつけてくださいねえ」
 そんな行方不明だった者達へ、出口の場所を伝えれば。彼ら彼女らは何度も月魅達へ頭を下げつつ、言われた通りに脱出路へと向かってゆく。此処までの経路の安全は、月魅達が確保済み。道中で怪異に襲われて、ということはないだろう。
 其を見送れば、月魅は立ち上がって少女人形達へ視線を巡らせる。仕事の続きだ、と告げるように。
「さて、一番奥まではもうちょっとですよお。頑張っていきましょうねえ」
「「「ふぁ~い……」」」
 戦意高揚を期して魅了の力を振り撒いたせいか、少女達の返事は微妙に浮ついていたが。それでも戦意は高まっている――はずだ。多分。

 ともあれ。
 月魅と彼女が率いる傭兵少女人形達は、その後も各部屋の怪異を殲滅して回りつつ、着実に最深部へと歩みを進めていった。道中、行方不明者と思わしき者達を保護し脱出を促していきながら。
 そうして、辿り着いた施設最奥の扉。その先で待ち受けているものは、さて――?
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第3章 ボス戦 『仔産みの女神『クヴァリフ』』


POW クヴァリフの御手
【無数の眼球】による牽制、【女神の抱擁】による捕縛、【触手】による強撃の連続攻撃を与える。
SPD クヴァリフの仔『無生』
【その場で産んだ『仔』】と完全融合し、【『未知なる生命』の誕生】による攻撃+空間引き寄せ能力を得る。また、シナリオで獲得した🔵と同回数まで、死後即座に蘇生する。
WIZ クヴァリフの肚
10秒瞑想して、自身の記憶世界「【クヴァリフの肚】」から【最も強き『仔』】を1体召喚する。[最も強き『仔』]はあなたと同等の強さで得意技を使って戦い、レベル秒後に消滅する。
√汎神解剖機関 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

 ヴィジョン・ストーカーの群れを殲滅し、最深部への道を切り開いた√能力者達。道中を捜索した√能力者達により、行方不明になっていた者達の何人かは救出も果たした。これで全員であったかは兎も角、幾人かでも助け得たのは幸いと言えよう。
 通路を進み、地下へと降りた先。突き当たりの扉を開いた向こうが、かの狂信者集団の本拠たる場所――だが。

 元は何の為の空間だったのか、広々としたその空間には、仰々しくも禍々しい祭壇が築かれ、壁面や床に魔法陣じみた奇妙な文様が描かれ。如何にも儀式の場と言わんばかりの様相が其処にはあった。
 だが、此処で儀式を為していたのだろう者達――狂信者と思しき者の姿はひとつとして見られず。代わりに在るのは、床に幾つも散乱する漆黒のローブと、祭壇の前に鎮座する一人の女だけ。
「おや……未だ妾を崇める者が残っておった――という訳ではないか」
 √能力者達に気付いたその女が向き直ると共に、彼女の背から青黒いタコの触手が幾つも伸び出し、蠢きだす。よく見れば、その姿は豊艶なる肢体に薄布一枚だけを纏った、瞳を除けば殆ど全てが白一色の様相。
 √能力者達の中には、その女が何者であるか察した者も居よう。『仔産みの女神『クヴァリフ』』――この場で活動していたのだろう狂信者集団に己が『仔』の召喚手法を授けた怪異、そのものだ。
「道理で、急に彼奴らが妾に泣きついてきおった訳よ。もう時間がない、己らに救済を、とな」
 相対せし√能力者達を認め、得心いったように女神は頷く。よくよく見ればその背後、奇妙な肉塊――触手の塊というべき物体が幾つか蠢いている。あれが『クヴァリフの仔』――彼女の産み落とした怪異である。
「すべてを忘れることこそ救済、とは良く言ったものよ。己がヒトであったことさえ忘れ、我が『仔』となることに、斯様な意味を見出すとはの」
 何処か感心したようにクヴァリフは語る。その生における後悔ゆえに、回帰――ヒトの形を得るより前の状態から『やり直す』とは。その口ぶりは皮肉るようでも、率直なる賛辞とも取れるが。
「まあ、折角こうして罷り越して来たのだ。汝らも、妾へと還してやるとしようぞ。すべてを忘れ、妾の『仔』として生まれ直すが良かろうて」
 などと騙り、触手を伸ばすクヴァリフ、その手を受け入れるわけにはいかぬ。かの女神を退け、やり直しの噂に終止符を打つべし。

 尚、当初に星詠みから依頼があった通り、クヴァリフの仔は回収対象である。可能な限りの数を、生きた状態で回収して貰いたい。

※『仔産みの女神『クヴァリフ』』とのボス戦です。
※戦場は儀式場。それなりの広さがあり、暗いですが視界に不自由する程ではありません。
※クヴァリフの仔は戦場の奥、祭壇のある辺りに纏まって存在しています。
餅竪・れあぬ
■方針
・アド/絡◎

■行動
最期に自らも『やり直す』のは、一応筋は通っていると言えますかしら?

『無生』による引き寄せが有る以上、距離を取り続けるのは困難ですわね。
【妖異変化「雷獣」】を発動、『雷獣』と融合した|姿《獣耳&尻尾付》に変化しますわ。
引き寄せには『姫魚』の行動予測から『雷速』での回避で対処、『雷操作』による『近距離雷撃』と『精霊銃』の零距離射撃を主体に攻めましょう。
『雷の檻』で動きを止められれば最良ですわね。

回収要請の有った『仔』は、交戦中『万色乳仙衣』で回収出来れば最良、難しければ『釣瓶火』の障壁で保護を。
回収出来たか、保護が不要と判明した際は『釣瓶火』の炎弾と障壁も交戦に加えますわ。
クラウス・イーザリー
「お断りだよ」
忘れることが救済だという考え方は理解できる
だけど俺がそうなりたいとは思わないし、救いを餌に無関係な人を巻き込むのも許すことはできないよ

クヴァリフの仔を攻撃に巻き込まないように気を付けながら戦闘
序盤は距離を取ってレーザーライフルで射撃
弾道計算を合わせ、クヴァリフの御手に使う眼球や触手を撃ち抜いて接近できる隙を作るよ

眼球や触手が少し減ったらダッシュで踏み込んで、√能力猛襲を発動
拳での攻撃の間に2回攻撃や居合、鎧無視攻撃やクイックドロウ、喧嘩殺法を挟んで連続攻撃で畳み掛ける
敵からの攻撃は盾で受け流し、抱擁や触手での攻撃を居合で斬って凌ぎながら短期決戦を目指すよ

※アドリブ、連携歓迎です
夜久・椛
ん…やっぱり、碌な事にならなかったね。

「怪異の救済など、そんなものだ。今は元凶の排除と行こう」

ん、了解。
…じゃあ、語ろうか。

まずは、周囲を妖精のランタンで照らし、影の怪の一文を語るよ。
敵の足元の影を操り、鮫の形にして食いつかせ、【不意打ち、先制攻撃】。
瞑想させないように妨害するよ。

影に潜むは、何者か?それは影鰐、影の怪魚。

更に、周囲の影を操って影鰐を増やし、攻撃しつつ撹乱。
ボク自身も【幻影使い】の幻影に紛れ、【武器改造】で刀身を蛇腹剣にした朧を【念動力】で操って攻撃。
敵の攻撃は【野生の勘】で見切って残像で回避。

後、撹乱してる隙に、祭壇近くの影を操って、自分の分身を作り、『仔』を回収させるよ。

 儀式の間めいた広間でクヴァリフと対峙する√能力者達。かの女神の背後、祭壇の元には幾つもの肉塊――『クヴァリフの仔』らが蠢くのが見える。
「ん……やっぱり、碌な事にならなかったね」
 あの肉塊が、此処で活動していた狂信者達の成れの果てであろうことは、広間の至る処に彼らのものだろうローブや、その他着衣の類が散乱している状況からも明らかだ。|夜久・椛《やどめ・もみじ》(御伽の黒猫・h01049)はそれらを眺め眉を顰める。
「最期に自らも『やり直す』のは、一応筋は通っていると言えますかしら?」
 己らもまた教義に殉じたと思われる彼らの結末。自らも信仰者である|餅竪・れあぬ《もちたて・れあぬ》(とある豊饒の女神の使徒:餅・h00357)としては一定の理解を示し得る処であったようだ。
「然様。彼奴らは今以上の救済の流布を諦め、己が身への救済を受け入れた」
 そんな二人の見解をクヴァリフは肯定する。語りながら√能力者達へ向ける視線は、彼らにも救済を齎さんとする意志を示すかの如く。
「理解はできる。――けれど、俺はお断りだよ」
 忘却を以て救済と成す、その思想には理解を示しつつも。クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)は其を拒絶する。己が其を望まぬ以上に、救いを餌として無関係な者達を巻き込む事が許せぬ故に。
『怪異の救済など、こんなものだ』
 椛の腰からその身を伸ばしたオロチが、女神の齎せし救済を切って捨てる。なれば、為すべきはひとつ。
『今は、元凶の排除と行こう』
「ん、了解」
 オロチに応えた椛は、その手にランタンを掲げる。炎の精霊により灯を宿す魔法のランタン。広がる光が、その場に在る者達の足元に影を投げかける。
「――影に潜むは、何物か?」
 其処へ語るは、椛の識る御伽の一文。その名を『影の怪』。その意味する処は――
「ぬぐ……っ?」
 直後、クヴァリフがその唇より小さく苦鳴を漏らす。足に走る痛み。見れば、ランタンの形作る影が鮫じみた形を取り、その顎で以て女神の足元へ食いついていた。
「成程、救済を拒むと言うか。だが――」
 慌てることなく触手を振るい、影の鮫を弾くクヴァリフ。同時にその身へ纏う眼球を展開、√能力者達を牽制せんとばかりにそれらが視線を巡らせる。
「させない!」
「!」
 其処へ迸る光条が、眼球のひとつを撃ち抜いた。その発射源にはクラウス。彼の構えたるライフルより放たれたレーザーだ。
「救済を求めるならば、より良き御方がおりますので」
 更にはれあぬが、アサルトライフル型の精霊銃を連射する。練色の魔力弾が幾つも放たれ、怪異女神の上半身に着弾しては傷を穿つ。
「拒まずとも良い、妾に身を委ねるは至上の救済ぞ」
 なれどもクヴァリフも黙ってはおらぬ。太く強靭な触手を振り回して弾丸を弾きレーザーを防ぎ止めつつ、別の触手で仔の一体を引き寄せて。
「妾の更なる力、汝らにも感じさせてやろう――」
 そして其と融合を遂げれば、肉体からは更なる複数の触手が生じ、其に紛れて無数の肉腫らしきものが形成される。それらは女神から切り離されると醜怪なる口吻を広げ、√能力者達へ食らいつかんと迫ってくる。
「思い通りにはいかせないよ」
 なれどそれらには椛が対応する。小怪異の群れが形作る影から何匹もの影鰐を生み出し、其々に影の主へと食らいつかせる。更にはクヴァリフの足元にも新たな影鰐を形成、再び攻撃させる。
「確かに強大な力だ――けれど!」
 クラウスも地道にレーザーライフルを撃ち続け、着実に眼球を撃ち抜き、新たな触手を根元近くから焼き切る。元からの触手は焼き切るに難いが、新たな触手は然程丈夫ではないようで有効に作用していた。
「ぬう、やってくれるではないかえ」
 クヴァリフは再び触手で影鰐を叩き潰すが、思い通りにいかぬと眉を顰める。これでは瞑想などしている暇は無い。√能力の励起を事実上封じられた形だ。ならば、と女神はれあぬへ視線を向けるが。
「――変化『雷獣』!」
 れあぬの身に宿る妖怪『姫魚』の能力の片鱗は、敵の狙いを見通す。先んじて励起せしめる√能力は、更なる妖異の力をその身へ宿すもの。『雷獣』、以て雷電の力を行使せる能力。
「汝、近う寄れ――ッ!?」
 そんなれあぬへとクヴァリフが行使せるは、己の間近へと彼女を引き寄せる力。以て女神の眼前へ引寄せられたれあぬは――直後、雷電を女神目掛けて放射した!
「迂闊ですわよ!」
 更に精霊銃の至近射をを叩き込めば、反撃の触手を雷の速度で以て回避、距離を取り直す。其と入れ替わるように、クヴァリフへと近づく影がひとつ。
「今だ……!」
 其はクラウス。女神が明確に怯んだ今を好機と見て、接近攻撃をかけんと踏み込んできたのだ。
「一気に行くよ……!」
 以て振るうは拳の一撃。大振りの拳打が女神の身を捉えるや続けざま逆拳とのコンビネーション、打ち下ろす拳の直後に荒々しさもある蹴り、再び逆拳でのボディブローを入れたと思えば素早く拳銃を抜いての近接射撃。猛然たる連撃の嵐をクヴァリフの身へと叩き込んでゆく。
「ぐぅっ! っく、やってくれるのう……だが」
 其に苦悶を漏らしつつも、クヴァリフはその手と触手をクラウスへと伸ばす。以て抱擁をかけ、その身へ忘却を齎さんとばかりに。
「「「そうはいかない」」」
 なれど其処に割り込む幾つもの影。クヴァリフを包囲するかの如く現れた、椛の姿が複数体。一斉に女神を目掛けて飛び掛かる。
「ぬう、分身か。然しこの程度なれば」
 包囲攻撃を前に僅かに眉を顰めるクヴァリフ、背の触手を振るい椛の姿を纏めて薙ぎ払うも、それらをクラウスへの反撃へ用いることは叶わず。それでも両手を伸ばし彼を抱擁せんとするが。
「有難い、お陰で対応が間に合った」
 椛への対処で攻撃動作を一時停止したが故に、クラウスに対処行動の隙を与えてしまった。そのまま飛び退き、女神との距離を取るクラウス、その手には光の刃を伸ばす剣が握られていた。
「――ぐっ!」
 胸を抑えて呻くクヴァリフ。飛び退き際にクラウスが抜き打った光剣の斬撃で斬られたものだ。更に。
「これはおまけだよ」
 椛が操る蛇腹剣の刃が襲い来る。念動力で動きの補助されたセグメント刃は正しく蛇の如きうねりを見せ、踊るが如き軌道の斬撃を立て続けに女神へと刻み込む。
 総じて、小さからぬダメージをクヴァリフへと齎した√能力者達。同時に、れあぬによる結界展開と、椛が影より生み出した自らの分身での回収により、クヴァリフの仔の回収も滞りなく行われていった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​ 成功

ディラン・ヴァルフリート
狂信者の成れの果て
その末路には憐憫を抱くべきなのでしょうが……
さて。
怪異を討てばこの件については一件落着……という事ですね

装備[蝕竜外装]《異形化》継続
敵√能力には[断界絶覇]《オーラ防御》や《気合い》、
牽制を払い除け万全の動きを維持する事で続く捕縛や強撃にも対処

【叛刻】を敢えて外す事で
敵のリソースとなっている邪悪なインビジブル含め支配権を掌握
敵の弱体化と此方の出力強化を兼ね行動成功率を半減させます

回収対象を巻き込まぬよう《怪力》吹き飛ばし位置取りを調整
反撃への警戒は絶やさぬまま
[錬気竜勁]《属性攻撃》纏わせた連撃で葬りましょう

忘れ、目を逸らしたところで得られるものなど……
……いえ。雑念ですね

「ううむ、以前よりもやるようになったではないか。やはり侮れぬな」
 √能力者達との交戦で浅からぬ傷を負った女神クヴァリフ、なれどもその声音には未だ余裕が見える。その口ぶりは、過去にも幾度か√能力達に打ち倒された経験ゆえのものだろうか。
 そんな怪異と対峙するディラン・ヴァルフリート(|虚義の勇者《エンプティ》・h00631)は彼女の背後、祭壇の下で蠢く『クヴァリフの仔』らへと数瞬、視線を移す。忘却に救いを求めた結果、ヒトであったことさえ忘れてしまったモノ達。
(これが、狂信の成れの果て……か)
 その末路には、憐憫を抱くべきなのかもしれない。だが、少なくとも今はその時ではない。視線を女神へと戻す。今この場において、確かなことはひとつ。
「――|怪異《あなた》を討てば、この件については一件落着……という事ですね」
 竜の爪めいた刃を、女神へと突きつける。対するクヴァリフはくつくつと笑う。
「そのようであるな――其が、可能であるならば」
 女神の身へ幾つも連なった眼球群が本体から分離し、ディランを凝視しながら飛び回る。その視線には圧力が伴い、ディランを縛めにかからんとするが如し。
「無論、可能と確信していますとも」
 表情は平静を保ったまま、女神の言に応える。周囲へ展開される概念障壁が凝視を跳ね除け、其より外れた視線に対しても気合いで十全の機動を維持。
 以て駆け出すディラン、竜爪を振るいクヴァリフへと斬りかかる。払い退けんと振るわれる触手に籠手を構えて力場を展開、打撃を逸らしつつ振り抜けば、女神の蒼白い肢体に爪痕が刻まれ蒼き血が漏れる。
「――ッ。やりおる……が」
 呻きながらもクヴァリフは退かぬ。この距離で打撃戦に応ずるか――否。
「!」
 ディランは己への視線の集中を直感する。展開された眼球群が、一斉に此方を向いてきている。これ程の数、流石に障壁でも防ぎきれず気合いでも振り切るには至らぬ。
「案ずるな。汝もまた、忘我のうちに幸福を得るが良かろう」
 其処へ、両手を広げて接近してくるクヴァリフ。このままディランを抱擁にて捉え、触手を以て打撃を加えんとする狙いか。距離を取らなかったのは、その好機と判じたが故であろう。なれども。
「――そうはいきません」
 女神の誘いを跳ね退けるディラン、その意志は行動にても示される。その肉体が瞬時に膨張、常の倍以上の巨体と化したかと思えば、爪持つ手を思い切り女神目掛けて振り下ろす。技巧など無き力任せの一撃。
「何の。この程度なれば」
 クヴァリフは横へと跳躍することで叩きつける一撃を回避。巨大化した彼へ抱擁は仕掛け得ぬと判じたか、今度こそ距離を取って仕切り直す。
「ええ。……避けてくれる、と思っていました」
「何? ……ぬ、これは」
 攻撃を加えられぬまま、元通りの大きさへと戻ってゆくディラン。なれど、口にする言は其を狙い通りと称するが如し。訝しむクヴァリフ、直後に状況の変化を悟る。己の身を巡る力が、衰えている……?
「この一帯のインビジブルは……今や、僕の掌握下です。あなたに力を与えていたものも含めて……ね」
 其処へディランからの種明かし。今の一撃は、最初からクヴァリフへ攻撃するのが目的ではなかった。外すことによって周辺のインビジブルを掌握する力を発現せしめること、それこそが本来の目的。
 儀式の間には、かつても何かがあったが故なのか、少なかぬず悪しきインビジブルが存在し、クヴァリフへと力を与えていた。ディランの行使した√能力は、それさえも掌握し、支配するもの。以て、クヴァリフへの力の供給を断ち。
「……この力の差、覆すと……しましょう……!」
 逆に己へと力の供給を促す。以てより一層高まる力にて、ディランは地を蹴り、クヴァリフ目掛けて疾走する。最早眼球群の視線も、何らの枷ともなり得ない。
「成程、やってくれるわ……!」
 何処か愉快げなクヴァリフは再度抱擁を試みるも、その手の先のディランは忽然と姿を消す。否、瞬時に女神の左側面へと回り込んでいた!
「一気に……決めます!」
 竜爪がオーラを纏う。常よりも一層強い力の滾るオーラを。以て振るえばその速度は凄まじく。嵐の如き連続斬撃が、女神の反撃も意に介さぬばかり斬り刻んで。
「はあああああ!!」
 よろめく女神へ、渾身の拳の一撃。膂力を最大限に乗せた拳打が、女神を広間の壁へと叩きつけた。祭壇とは別方向ゆえ、仔らへの影響も無し。
(忘れ、目を逸らしたところで得られるものなど……)
 更なる追撃を為さんと身構えたところへ、脳裏へふと過ぎる思考。どんなに忘れようとした処で、己は所詮――
(……いえ、雑念ですね)
 振り切るように頭を振れば、姿勢を立て直さんとする女神へ向け走りだす。振り返ることに意味など無し、ただ、前へ。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

十六夜・月魅
アドリブ・絡み歓迎。

一見ゆるふわ系女子高生。中身は魅了悪用女子。
台詞の語尾が、ですねえ。ですよお。と間延びします。

「美々しい女神様。クヴァリフ様と仰るのですねえ」
仔(犠牲者)を見て一瞬悲し気に。
「是非、お茶でもと思いますのに。…私は人の世を守らねばなりません」
『恐るべき戦いの女神(虚)』で『傭兵少女分隊』のレベルと戦闘力2倍、ミニガンとバリアを追加装備。
「皆さん、お仔さんには当ててはいけませんよ」

『愛と戦の女神(嘘)』となり魅了能力を強化。
「女神様は私の愛を受け入れて下さるかしら。嗚呼、楽しみ!」
…多重女神化で頭がちょっとあっち側です。

集団戦術で陣形を組んだ傭兵たちが『傭兵少女分隊十字砲火』で攻撃。
一斉発射で各々がクヴァリフ様の触手を切断、目をつぶして能力発動を阻害。
足や腕、頭にも当てて使用不能まみれに。
さらに千切れた触手はアカイイトを伸ばし、盗みで月魅が回収し。
「いただきまぁす」
……食べて回復に使用。
魅了状態傭兵ちゃんも食べて自己回復し戦闘維持(素面だと嫌がる)
「ああ、これが女神さまのお味…。濁っていて透き通って…!」

やば目な言動と魔眼(月)と甘キ声で陣形の後ろからクヴァリフ様の精神に魅了攻撃を続けながら、集団での十字砲火と触手回収、鉄壁と盾受けとバリア。
攻撃・防御・回復のサイクルを維持。数の暴力!

引き寄せで陣形崩れたら、アカイイトで引き戻したりで素早く修復。

「女神さま自ら来てくれるだなんて」
接近されたら状態異常「魅力支配」の口づけで短時間でも思考を止め、(傭兵ちゃんたちが)距離を取り陣形再構築。
仔は魅了支配して味方に。

復活時。
「嬉しい。もっと下さるのですね。愛しています。女神様。嗚呼、壊したい!」

「またお会いしましょうね。女神様」
最終的に魅了した仔と女神の触手を持ち帰り。

「――クク、全く大した者達よ。妾を此処まで追い詰めるとはな」
 此処までに交戦した√能力者達の攻撃により、深く傷を負った女神クヴァリフ。なれどもその声音に焦燥は無く、己の置かれた状況にも何処か喜悦を覚えているかのよう。
 と、そこに。
「傷ついてなお美々しい女神様。クヴァリフ様と仰るのですねえ」
 12名の少女傭兵達を率いて、|十六夜・月魅《いざよい・つきみ》(たぶんゆるふわ系・h02867)が踏み込んできた。広間の中心に浮かぶ女神の姿を認めれば、緩やかな微笑みと共に賛辞を口にする。
「如何にも。愛らしき娘子らよ、汝らが望むは忘却か、それとも別の何かか」
 確認めいた月魅の言葉を肯定し、女神は問う。彼女達の求めを。月魅へ向けられる視線は、何処か彼女への興味を滲ませる。
「―――――」
 月魅の表情が、一瞬だけ悲しげな色を帯びる。その時視線の向いていたのは、女神の後ろ、祭壇下に蠢く触手塊。ヒトであったことさえ忘れてしまったモノ達。怪異へ救いを求めた末路。
「是非、お茶でも――そう、思いますのに」
 続いて浮かんだ表情は、名残惜しげとも、決然たる様にも見える形。この禍々しくも美しき女神と友誼を交わしたい、そんな思いもある。なれども。
「……私は、人の世を守らねばなりません」
 この怪異を捨て置けば、忘却の禍は何処まででも広がりかねぬ。未練を断つように、決然と告げた――その直後。月魅の纏う雰囲気が、魅惑的かつ神々しくありつつも、剣呑さをも伴うものへと変化。伴う少女達の携えるライフルが、重厚なるミニガンへと変化を遂げ。その背には何らかの機構が背負われる。
 其は√能力の発露。|愛と戦の女神《アスタルト》及び|恐るべき戦いの女神《ドゥルガー》の如き神威を励起させることで、月魅自身の魅力と、少女傭兵達の能力と装備を強化したのだ。
「けれど――ええ、それは間違いないのですけれど――」
 改めて女神へ向けられる視線は、熱と湿度を増したもの。其を察したクヴァリフは、何処か愉快げに眉を跳ねさせる。その情念も心地良い、とばかりに。
「――女神様は、私の愛を受け入れて下さるのか……嗚呼、楽しみ!」
 感極まったかの如き声、何処か恍惚とした笑みと共に宣う月魅。多重女神化を果たした故にか、思考がヒトの枠を外れかかっていた。
「さあみんな、作戦通りに一斉射撃ですよお! くれぐれもお仔さん達には当てないように!」
 そんな状態なれども、傭兵少女達へと指示を下せば。応えた少女達が、一斉に構えたミニガンを斉射し始める。
「ぬ――うおおおおお!?」
 月魅の異様な様子と物言いに、然しクヴァリフは思わず引き込まれていたのか。轟音と共に襲い来る無数の機関銃弾に対する反応が遅れ、鋼鉄の驟雨をその身へまともに浴びせられる。
 浮遊する眼球は次々と砕け潰れ、触手も立て続けに銃弾を叩き込まれれば千切れ飛んでしまい。身体にも余すことなく弾丸が叩き込まれ、その肉体を容赦なく削り飛ばしてゆく。
「ぐおぉぉ……っ! このまま、やられはせぬぞ……!」
 弾丸の嵐に晒され傷つく四肢がまともに動かぬ中でも、クヴァリフは反撃を試みる。周囲の空間から光線や禍々しき魔力弾が撃ち出され、傭兵少女達を襲う。
 なれども前衛を担う少女達の背負った機構がバリアを展開、光線や魔力弾を防ぎ止める。全ては防ぎきれず、一部が少女達数名の四肢を抉るが、戦闘続行に障りは無し。
「……っ。でしたら……此方を回収させてもらいますねぇ」
 自らも軽く四肢を削られた月魅、なればとばかりに腕を振るえば、その小指に巻きつけられた赤い糸が伸び出し、千切れた触手を捉えて彼女の元へと引き寄せる。其を、どうするのかといえば。
「嗚呼、これが女神様の……。……いただきまぁす♪」
 無造作に齧りつき、咀嚼し始めた。つまりは食べ始めたのである。√能力を伴う一斉砲火によって千切り飛ばした身体部位は、食することで回復に使える。それでも、怪異の触手を口にするというのは中々に思い切った行為、とも見えるが。
「あは……♪ これが、女神様のお味……。濁っていて、透き通っていて……!」
 月魅は恍惚としていた。味の良し悪しではない。かの女神の味である、その事実こそが彼女にとっては重要なのだ。そして、傷ついた四肢が再生していく、その効果もまた。
「ほら、みんなも食べてくださいな。女神様のお味がしますよぉ……♪」
 更には負傷した少女達にも触手を食べさせる。普段ならば流石に抵抗を示す彼女達だが、今は魅力を増した月魅の虜。故に抵抗なく其を食し、傷を癒してゆく。
「もっともっと、女神様に私達の愛を捧げるの! 壊れるくらいの愛を!」
 何処か箍の外れたような月魅の声が響く中、ミニガン掃射を続ける者、バリアで守りを担う者、触手を食し回復を行う者。傭兵少女達はそれら役割をサイクルしつつ、攻勢を維持してゆく。まさに数の利を存分に活かした戦術だ。
「うぐ、っく……! 大した攻勢であるな……だが」
 月魅の声に思考を乱され、止まぬ鋼鉄の嵐に深く傷つくクヴァリフだが、尚も反撃を試みる。産み落としていた仔の一体と合体すれば、月魅へと視線を向け。直後。
「っ……あぁぁぁっ!?」
 一瞬の後、月魅の姿はクヴァリフの眼前へ。直後、傭兵少女達の放っていた機関銃弾が彼女の全身へと浴びせられ、全身を貫き引き裂いてゆく。突然の引き寄せに、反応速度の落ちていた傭兵少女達は射撃の停止が遅れてしまったのだ。
「クク。汝さえ倒れれば、残る者達は烏合の衆。元よりこうすれば――」
 指揮官たる月魅を仕留めるのが最適解、その上で彼女達の攻撃を逆利用できれば尚良し。そう判じたクヴァリフの策であったが。
「……ぁ、は。嬉しい……♥ 女神様が、私をお招き下さるなんて……♥」
 一方の月魅は、それでも。女神を見上げる視線も、漏らす声音も恍惚として。力を振り絞り、クヴァリフへと飛び掛かれば。
「な――んむぅっ!?」
「女神様ぁ……愛しています……♥」
 重なる唇。睦言と共に押し付ければ、溢れんばかりの魅了の力と相まって、怪異たる女神の思考にも月魅の存在が深く刻み込まれ。暫し、その思考が停止する。
「はぁ、ふ……っ。みんな、攻撃再開ですよぉ……!」
 その間に距離を取った月魅、再び触手を喰らい回復に努めながら、少女傭兵達へ再度の攻撃を指示。一連の行動の間に陣形を変更、左右前方から狙う位置を取った傭兵少女達が、一斉にミニガンを斉射する。文字通りの十字砲火となって襲い掛かる弾幕の嵐が、思考の戻ったばかりのクヴァリフをまともに呑み込み。
「がっ! っぐぁ、ぐおぉぉぉ……!」
 既に消耗しきっていた女神に、それ以上の反撃を試みる力は無く。そのまま打ち砕かれ、倒れてゆく――と思いきや。
「――ク。だが妾は未だ倒れぬ。まだまだ、付き合ってもらおうぞ……!」
 仔との融合により、復活可能な身となっていたクヴァリフ。同時に回復した触手を振るい、少女傭兵達を吹き飛ばさんとするが。
「嬉しい、もっと下さるのですね! 嗚呼、愛しています、女神様……♥」
 其をバリアで防ぎ止め勢いを削ぐ傭兵達、その後ろで回復を果たした月魅は恍惚と笑う。もっと愛したい、もっと壊したい。月魅の想いは尚も止め処なく溢れ続けていた。

 そうして、月魅達とクヴァリフの間で攻防が繰り返されること暫し。
「――此度の妾は、此処までか」
 全身をボロボロに砕かれた無残な姿を晒しつつも、何処か満足げに笑うクヴァリフ。その姿は朧に薄れ、今まさに消えてしまおうとしていた。
「ええ。ですが、またお会いできる時も、そう遠くはないと思います」
 微笑みながら応える月魅。その視線と表情は、恋人との逢瀬を終えたかのように、満足感と寂しさを伴っていた。
「――また、お会いしましょうね。女神様」
 そんな月魅に見送られながら。仔産みの女神『クヴァリフ』、己の仔の召喚儀式を齎して都市に混乱を招いた怪異は、消滅を遂げたのである。



 斯くして、この街における怪異事件は収束へと至った。
 狂信者達はその全員が姿を消し、召喚儀式の詳細は不明のままとなったが、この街でこれ以上の事件はもう起こることはないだろう。
 行方不明になっていた者達のうち、多くは救出を果たせたものの、発見に至らなかった者も何人か。狂信者達共々、忘却へ至ってしまったのだろうか。
 残されたものは只、そうして生み出されたのだろうクヴァリフの仔が何体か。それらは全て√能力者達によって回収され、汎神解剖機関へと提出された。
 願わくば、後悔故に回帰へ至った彼らの身より生まれた|新物質《ニューパワー》が、未来を拓く力とならんことを――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

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