ふみぬけ! とらっぷとらっぷ!
●わくわくどきどき冒険譚!
――が、したいというのもまあ有りはする。
√ドラゴンファンタジー。出身は√EDENだが、とある筋で仕入れた情報をもとに、彼女はその『ダンジョン』の近くにある街へと訪っていた。
内部のトラップは潜入者が少し把握している。その内容に強く惹かれたというのもあるが、それ以外にも!
占有すれば自分だけの|ダンジョン《場所》にできる!
ワンチャン改造できるレリックなんか引き当てれば、自分の王国! チャンスを逃すわけにはいかない!
冒険者用の装備やアイテムを扱う店。棚に陳列された様々な品を眺めながら、ゼーア・アストラ(星々の名・天使の力・h00110)はまだ見ぬ秘境に心を躍らせ、買い物をしていた。
さて準備をしっかりと整え、アストラはダンジョンの入り口前へと到着する。
中は罠まみれ。まともに進めば面倒だが手段は既に用意してある。
「よしっ。まず一本!」
ぐいっと飲むは15分に1回|状態異常《デバフ》を解除する小さなポーション。味はよろしくないがこれから挑むダンジョンには効果もコスパも丁度良い。15分ごと飲み直す手間はご愛嬌。数も用意したし万全!
周囲に漂うインビジブルを取り込んで、アビス・フォールンへと変身する。√能力で得た翼を用いて、あからさまな罠を踏み抜かないように飛んでいく。
目指すは中枢。本来身体的に負荷がかかる『アビス』の力は、彼女の前では気楽なものだ。
……しばらく飛んで移動していれば、目前の通路に何かがある。
周囲に血痕など物騒なものはない。となれば、踏んでみるのもわるくない!
「ふきゃっ!?」
パシャリと光る何か。……理解できぬうちに、身動きが取れなくなった。
何が起きたのかと周囲を見回そうとしたが、視線すら動かせない、瞬きすらも――ただ、目前にあるものは見えた。
鏡と、何かの生き物を模った彫像。その目はまるでガラスのように輝いており、先ほどのフラッシュはこの目から放たれたものだろう。
そして鏡に映るは。
「(わ。わー!! これは……壁画〜!?)」
――壁には、驚いた表情でこちらを見る自分自身の姿があった。まるで写真のように、壁に焼き付けられている!
なるほどこういう罠も。視線は動かせないが、この壁に封じられているのは自分だけではない。不用意に挑んでしまったものの末路だろう。
「(普通は厄介なんだろうな〜。うらやま……あっ、かわいそ……)」
ちょっとそんな思考に侵食されながら。
さてそこから数分。|状態異常《デバフ》解除のポーションが発動した。
ぺらり剥がれるかのように体が浮遊感を得たと思えば、肉体の感覚が戻ってくる。次のトラップが発動する前に、急ぎ石像の背後へ回る。後ろから観察したところ、どうやら犠牲者は「シール」のようなものにされているようだ。
これは使えるぞ〜……なんて思いながら、ふふんと鼻を鳴らし。ポーションをひとつ飲んで、ゼーアは再度翼を広げた。
安全ならばと踏み抜くトラップ。
「みゃっ!?」
驚きはするが困惑はしない。たとえ体がすんごい四角いボディになろうとも!
「ゲームのアレだー!」
体がシルエット状になり、その中に骨格が浮いていようとも!
「電撃受けたらなるやつ!」
周囲のものが大きくなったと思ったら自分が縮んでいただけだったりしても!
「廊下が長い〜……」
大抵のものはなんとかなるし、おもしろーい! と興奮するのがアストラちゃんである。
さてそうして辿り着くはダンジョンの中枢部。
祭壇の上に、美しく輝く水晶のようなものが浮かんでいる……これを封印してしまえば、あとは、自由!
だがアストラが水晶に触れようとした、その瞬間。
「あ……!」
最後の罠。指先がぱきり銀色に染まる。反射的に手を引こうとするが遅かった。
銀の光沢はすぐに体へ広がり、彼女の体を包み込む。表面だけだったものが、内側へ――。
「(あ……息……できな……)」
内臓まで硬質な銀色に。丈夫な√能力者だ、すぐには死ねない。いや。殺すことを目的としていない罠。
バランスが崩れ、がこんと音を立て倒れた銀色のアストラ像。そのまま思考も沈黙し、物音ひとつしない空間が出来上がった。
それから――時は流れ。
「……っぷ、はぁーっ! 死ぬかと思ったぁー!」
きちんと効いた|状態異常《デバフ》解除! 意識を取り戻したはいいが、まだ足は固まったまま。だが立つことはできる。念のためポーションをもう一つ飲み下し、今度こそ中枢へと対峙する。
「ちょーっと、気をつけて……!」
しっかりと魔力を込め……輝いていた水晶が光を失っていくのを見て、アストラはふうと息を吐いた。
さて占拠は完了! 改造するならどうしよう!
せっかくだ。時期も良いし、ここでバレンタインパーティを開くのも良いかもしれない。お菓子の空間とか作って!
……チョコレートやクリームに、とか……できないかなぁ〜?
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴 成功