夕日の沈んだオフィスにて
●某県、海に臨む古いオフィス
「アルバイト募集! 経歴不問! 知力体力の自信のある人、大歓迎!」
地元のアルバイト情報誌やwebに、そのような求人が現れた。地方であることを考えれば、時給は破格にいい。しかし、そのはっきりしない仕事内容といい、おそろいの黒スーツを着込みピシッと同じポーズをとる「先輩」たちの写真といい、どうにも……。
「くだらん」
吐き捨てるように呟き、情報誌を投げ捨てる。悪の組織「朧魔機関」の首領・朧魔鬼神である。それが死んだヒーローを元にした怪人に宿った姿が、この【怪人態】であった。
「そうは言っても。戦闘員をかなり失ってしまったのだから、仕方がないのではなくて?」
幹部である妖狐怪人・朧魔妲姫がため息を付いた。高飛車な性格は、首領を相手にしても隠しきれない。
「今後の作戦のためにも、必要だわ」
ここは町外れにある小さなオフィスである。コンクリートの壁のあちこちにヒビが入っている古い古い建物だ。事務所、と呼んだほうが雰囲気にあっているか。なに、しょせんは仮の根城。
朧魔妲姫の周りでは、スーツ(背広という意味の)を着た戦闘員たちが応募への電話応対に忙しい。
「……幸い、それなりに数は集まりそうだけれど」
「ふん……√能力者め」
朧魔鬼神にしてみれば、そのようなことは些末なことであった。
とにかく戦えれば、それでよい。特に、不完全燃焼に終わった戦いの続きができれば……!
屋上に出た朧魔鬼神は、とっくに夕日の沈んでしまった海を見やった。
●作戦会議室(ブリーフィングルーム)
「こんなものを見つけたぞ」
綾咲・アンジェリカ(誇り高きWZ搭乗者・h02516)が作戦卓に投げ出したのは、アルバイト情報誌だった。
付箋のついたページに注目すると、件の求人が載っている。
「これだけでも十分に胡散臭いが、どうやら本当にきな臭い。これは悪の組織が正体を隠し、戦闘員や怪人となるべき者を勧誘しているのだ。
いくら物価高の昨今とはいえ、このようなものに飛びつく者がいるのは由々しきことだな……」
悩ましげに呟いたアンジェリカは「んッんッ!」と咳払いすると、
「ははは、ようこそ我が社へ! 君も家族のようなものだ! 何でも相談してくれ!」
「なかなかに筋がいいぞぉ! 幹部候補生間違いなしだな!」
「我が社は実績を上げれば、バイトからも正社員になれる! そのときは社長からも直接お褒めの言葉がもらえるぞぅ!」
などと、妙に暑苦しい声を張り上げた。いかにもな口調も、実に鬱陶しい。
あっけにとられる一同をよそに、アンジェリカはため息を付く。
「……などと言い出すに違いないのだ。
その実、連帯感を持たせて逃げないように洗脳したり、怪人へと肉体改造したり、首領直々に指令を下されたりと、そういうことだろう。
しかし!」
作戦卓に両手をついて、アンジェリカは立ち上がる。
「このような悪事を、見逃すわけにはいかない! こちらが募集に応じたアルバイトだと思えば、敵も油断するだろう。まずはオフィスに向かい、信用を勝ち取ってくれ。
さぁ諸君、栄光ある戦いを始めようではないか!」
マスターより

こんにちは、一条です。
√能力者と戦う機会を得ず、戦場から去った朧魔鬼神【怪人態】がいたことをご存知でしょうか?(シナリオ「夕日の沈む臨海道路」)
この敵は皆さんとの再戦を望み、機会を窺っています。
しかし敵は戦力を失っているようで、まずはその拡充に努めているようです。戦闘狂である朧魔鬼神にとっては、どうでもよいことなのですが。
とはいえ、一般人を狙った事件を起こす前なのは幸運ともいえます。こちらから敵の組織に潜入し、敵の目論見をくじくとともに朧魔鬼神を撃破しましょう。
「第1章⛺『悪の組織に潜入』」
アルバイト、その実は怪人見習いとして求人に応募します。「先輩」である戦闘員どもには熱烈に歓迎され、指導されたり(悪の理念を)、トレーニングをしたり(戦闘のための)、ご飯を奢ってくれたり(怪人に改造する下準備として薬物入りの)するでしょう。もしかすると、他にも応募してきた一般のうっかりさんもいるかもしれません。
「第2章A👾『戦闘員』」
「第2章B👿『朧魔妲姫』」
戦闘員はスーツ(戦闘員の)の上からスーツ(背広という意味での)を着ています。覆面姿にはぎょっとするかもしれませんが、「我が社は服装規定はないんだ!」ということですから、それでよいのでしょう。
実務を取り仕切っているのは朧魔妲姫です。狐の尾と露出の多い服に驚くかもしれませんが、(同上)。
どちらを狙うかは、第1章のプレイングに書いてください。あるいは、その場の状況によります。
このふたつは、あまり広くはないオフィス内での戦いとなります。
「第3章👿『朧魔鬼神【怪人態】』」
戦いに飢えた戦闘狂です。アルバイトの募集などどうでもよく、朧魔妲姫に丸投げです。
自身は屋上(2階建てに過ぎませんが)で海を見つめつつ、√能力者との戦いに思いを馳せています。
では、皆さんの燃えるプレイングをお待ちしています。感想なども、よろしければぜひ!
23
第1章 冒険 『悪の組織に潜入』

POW
悪っぽく肉体改造されたり
SPD
悪っぽい立ち振舞を教わったり
WIZ
悪っぽい思想を教わったり
√マスクド・ヒーロー 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

戦に勝つには敵を知ることから…だっけ。
なので潜入して戦闘員の人たちと戯れてくるよ。
ということで《魅了》を駆使して可愛い新人後輩を演じつつ敵情を探る。
(後でやっつける時に心が痛まないよう)先輩方からしっかり悪の理念を学び、
ついで|トレーニング中の事故を装っ《たぶん天然でやらかし》て怪我をさせたり、
ご飯も《大食い》と《魅了》を使っていっぱい奢ってもらって
懐事情にもダメージをあたえていくよ。
あ、盛られた薬品は《毒耐性》で無効化しとくね。
「十枯嵐・立花だよ……いや、です。よろしく」
申し訳程度の敬語で自己紹介した十枯嵐・立花(白銀の猟狼ハウンドウルフ・h02130)を、戦闘員どもは好意的に迎えた。
「よく来てくれた! バイトとはいえ、君も我が社の一員だ!」
「よろしくな!」
暑苦しい連中に囲まれるのは、些か閉口するが。
「戦に勝つには敵を知ることから……だっけ」
「社員教育」と称して悪の理念をすり込んでくる指導係。その言葉に、立花は「なるほどー」と、わりあい熱心に聞き入っていた。後でやっつけるとき、せめて心が痛まないようにと思って。
その思いに気づきもせず、指導を続ける戦闘員。
「立花くん、次は実戦を意識したトレーニングだ! まず、この鉄パイプをだな……こうだ!」
おそらく「本番」では剣か何かになるのだろうか。戦闘員はそれを手にして、振り上げる。そして、ビュッと振り下ろした。たかが鉄パイプとはいっても、かなり重い。それを軽々と振り回すあたり、戦闘員といえども常人ではない。
「さすがに立花くんでも、これは難しいだろ……」
「えい」
「ぐはぁッ!」
「……ごめんなさい、すっぽ抜けた」
「ぐ、ぬぬ、ぬ……は、はは、気にするな! 新人には失敗が付きものだ!
それより、そろそろ昼飯の時間だな! 立花くん、一緒にどうだ!」
俺も俺もと他の戦闘員どもが手をあげた。立花の右目が激しく燃え上がる。その狩猟本能が、右目に集中したのである。
「その隙、見つけたよ……!」
敵の懐にかなりのダメージと負わせることになる、その隙を。
薬物? そんなものはものすごい悪食かつ【毒耐性】を持つ立花にかかれば、さほどの悪影響があるものではなかった。
🔵🔵🔵 大成功

こっちの√にもあるんだな、闇バイトってヤツ
ま、きちんと摘発しねーとな
しかし潜入、ね
改造は検査されて元々マトモな身体じゃないってバレそうだし
立ち振舞は清廉潔白なおまわりさんだから(!?)向いてないだろうし
思想で適当に演技でもするか
面接で思想っていうと、志望動機は大事だよな
アレだ、世直しの為の破壊活動とでも言っておくか
真実味をもたせる為に、実際にムカついたことで恨み節言っとくか
ほら、滅ぼしたほうがいいものっていっぱいあるだろ?
クソ上司の嫌味とか、圧力とか、パワハラとか、徹夜残業とか、報告書の山とか……ッ!
やべぇ、ちょっとガチになっちまった
一瞬マジで悪の組織側になりそうになったぞ、おい

■意気込み
「えー、御社の将来性に大きな可能性を感じまして……」
■行動
SPDで攻略。
ベニイは緊張していた。だって√ウォーゾーンには就職活動とかなかったし。
人類皆兵。失業率0%。
なんか秘密結社よりひどい気がしてきましたが、それは悪の陰謀です。騙されてはいけない。
バイトの面接に伊達眼鏡&リクルートスーツ(クラフト・アンド・デストロイで自作)で来ちゃったのも緊張のせいですし、ピンク色の髪は心象が悪いのではと、会場に着いてから動揺したのも緊張の…… 服装規定は無い。あっ安心しました。
妙に勤勉な戦闘員の先輩の話を、メモを取りつつ聞いてたりします。
何しに来たか覚えてる? 大丈夫?
二章は朧魔妲姫希望です。
妙に達筆で「面接会場」と張り紙がされた部屋の中を、風見・正人(怪異捜査官・h00989)は見渡した。なんの変哲もない会議室である。
「こっちの√にもあるんだな、闇バイトってヤツ」
眉間に皺が寄ると、眼光は一層鋭さを増す。
ふと隣を見ると、ベニイ・飛梅(空力義体メカニック・h03450)が全身を緊張で強張らせていた。
「……どうした?」
「いえ、その。緊張してまして」
声をかけられたベニイはびくりと身を震わせてから、ゆっくりと正人の方を振り返った。
「だって、√ウォーゾーンでは就職活動とかなかったので。人類皆兵、失業率0%」
「……秘密結社よりひどくないか、それ?」
「……そんな気もしてきました。
いえ! それは悪の陰謀です。騙されちゃ駄目」
事情が事情だけにやむなし、というところだろう。
そんなやり取りをしているうちに、ドアが開いて面接官が入ってきた。これもまた、スーツ(戦闘員の)の上にスーツ(背広)を着ている。
「やぁ、お待たせしたね!」
「は、はいッ! ベニイ・飛梅です! えー、御社の将来性に大きな可能性を感じまして……」
リクルートスーツを着たベニイは呼ばれてもないのに席を立ち、自己アピールを始めた。その勢いでパイプ椅子が倒れ、ベニイはあわあわと狼狽えつつ椅子を起こす。伊達眼鏡がずり落ちた。
それをかけ直した拍子に、自分のピンク色の髪に気が付き、
「あッ、これは心証が悪いのでは……!」
と、またしても慌てたが、面接官はその様子もなく、
「ははは、やる気が溢れているな! いいぞう!
心配ない、我が社には服装規定はないから安心していいぞう!」
と、ベニイの肩を叩く。
「……そのスーツが制服みたいなもんじゃないのか」
正人が小声で呟く。一見すると人当たりがよく寛大なあたりまで、闇バイトと酷似している。
「ま、きちんと摘発しねーとな」
そんな正人にも、志望動機が問われた。清廉潔白なお巡りさんとしては答えにくいが、そういうわけにもいくまい。
「適当に演技しておくか……。
えー、アレです。世直しのためには、破壊も必要かと思いまして」
「ほうほう?」
「ほら、クソ上司の嫌味とか、圧力とか、パワハラとか、徹夜残業とか、報告書の山とか……ッ! 滅ぼした方がいいものっていっぱいあるだろ?」
始めは適当にムカついたことを口にしていただけだったのだが、いつしか演技も忘れて素が出ていた。
「いいねぇ! 実にいい!」
面接官の声に、我に返る正人。
「それも人間社会の闇なのだ! 社会構造が愚かで誤っているからなのだ! それを叩き壊し、愚かであるにも関わらずふんぞり返っている者どもを滅ぼすのだ!」
「おぉ……」
熱く語る面接官の言葉を、感心しつつ熱心にメモを取るベニイ。
「何しに来たか、わかってるか?」
まぁ、そう言う正人の方も恨み節がガチになってしまっていたし、
「一瞬、マジで悪の組織側になりそうだったぞ、おい」
面接官の言うことにも一理はあるかもしれないが、しょせんは悪の組織の言うこと。言葉通りには受け取れないし、その方法は当然ながら間違っている。
即座に採用されて部署へと案内されるふたり。
「肉体改造されるときマトモな身体じゃないってバレる前に、始めようぜ」
「そうですね」
怪異を移植された異能捜査官と全身を義体化したサイボーグは、それを隠して社内へと潜り込んだ。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第2章 ボス戦 『朧魔妲姫』

POW
朧魔解放
【朧魔鬼神から与えられた邪悪な闘気 】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【朧魔狐爪撃】」が使用可能になる。
【朧魔鬼神から与えられた邪悪な闘気 】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【朧魔狐爪撃】」が使用可能になる。
SPD
狐妖尾乱舞
【鞭のように伸縮する狐の尻尾 】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
【鞭のように伸縮する狐の尻尾 】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
WIZ
朧魔覇獣:災餓天金狐
【邪悪な力を纏った焔 】のブレスを放つ無敵の【災餓天金狐】に変身する。攻撃・回復問わず外部からのあらゆる干渉を完全無効化するが、その度に体内の【朧魔鬼神から与えられた邪悪な闘気】を大量消費し、枯渇すると気絶。
【邪悪な力を纏った焔 】のブレスを放つ無敵の【災餓天金狐】に変身する。攻撃・回復問わず外部からのあらゆる干渉を完全無効化するが、その度に体内の【朧魔鬼神から与えられた邪悪な闘気】を大量消費し、枯渇すると気絶。
√マスクド・ヒーロー 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
「さて……新しくやって来た新人ども、少しはものの役に立てばいいけれど」
戦闘員から渡された履歴書などろくに目を通さず、安いオフィスチェアに腰掛けた朧魔妲姫はため息をついた。肘をつきたいところだが、安い椅子には肘掛けもない。
「まぁ、いいわ。そろそろ次の洗脳と怪人への改造に取りかかる頃かしら」
欠伸を、ひとつ。すでに日付を過ぎた。戦闘員どもはまだ外で新人教育に励んでいるようだが、それに付き合うつもりはない。
事務室から出ようとドアノブに手を伸ばした朧魔妲姫であったが……ドアは、外の方から勢いよく開かれた。

■意気込み
「失礼しまーす……っ!」
(※ドアの外からヴィークルで突入)
「服装規定は無いと言うお話でしたが、その(朧魔妲姫の)格好は流石にちょっと…… 無理と言うか……
ともかくお世話になりました! 撃破!」
■行動
SPDで攻略。
ヴィークル・巡航単車イロタマガキごと事務所に突入。
服装はリクルートスーツのまま。
「狐妖尾乱舞」の範囲攻撃は、狭い戦場では特に脅威。
√能力「天神ロマンチカ」で、両腕の義肢から強化エネルギーバリアを展開。
尾の攻撃を逸らして味方を守りつつ、テンジンブレークの属性攻撃(指先からの電撃)で攻撃。
無敵状態になったら、ヴィークルごと窓の外に一時離脱。無敵時間切れを狙う。

悪の心得その1、部屋に押し込むときは大きな声で恫喝!
…などと|先輩方《戦闘員》の教えを実践しつつ《殺気》《威圧》《恫喝》を
使いながらドアを蹴破って銃を突きつけながら突入。
うん、さっそく学んだことを活用する機会ができたね。
相手の変身中は攻撃利かない様子だけど
体力を削ることくらいはできそう。
なので《ジャンプ》《逃げ足》《スライディング》等や
【獣の縮地】で近場の適当なインビジブルと入れかわる等で
回避行動をとりつつ《咄嗟の一撃》で《カウンター》を仕掛けていく。
朧魔妲姫がドアノブに手を伸ばしたとき、ドアは外の方から開かれた。
いや、正しくは。
「失礼しまーす……ッ!」
「死ね~ッ!」
ベニイ・飛梅(空力義体メカニック・h03450)の駆る『巡航単車イロタマガキ』の前輪と十枯嵐・立花(白銀の猟狼・h02130)の靴底によって、ドアは無残にへし折れながら突き破られた。
「な……何事ッ!」
さすがにたじろぐ朧魔妲姫。立花はどこかしら満足げに、
「部屋に押し込むときは大きな声で恫喝! ……うん、さっそく『先輩方』に学んだことを活用する機会が出来たね」
と、大きく頷いた。
「く、戦闘員どもめ! √能力者に入り込まれるなんて!」
罵る朧魔妲姫であったが、戦闘員どもに履歴書も面接も研修も丸投げしていたのは当人である。
リクルートスーツ姿のままのベニイは女怪人の全身を上から下まで眺めたのち、
「服装規定はないというお話でしたが……なんというか、その格好は、ちょっと。無理というか……」
と、眉を寄せた。
「はぁ? なにか文句があるって言うの?」
「いえ、文句というか……ともかくお世話になりました! 撃破ッ!」
ベニイがスロットルを全開にすると、古めかしく埃臭さが消しきれないオフィスに白梅の香りが満ちる。立花も古めかしい軍用小銃……『熊殺し七丁念仏』と呼ぶそれのストックを肩に当てて構えた。
排気音を響かせ、前輪を大きく浮かせた『イロタマガキ』は敵に突進していく。
朧魔妲姫は尾を翻して横っ飛びに避け、後輪をスライドさせて方向を変えたベニイを睨みつけた。
その幾本もの尾が激しくうねり、まるで鞭のようにしなりながら襲いかかってくる。【エネルギーバリア】を展開して防いだベニイだが、幾度も叩きつけられる激しい衝撃に、顔をしかめた。バリアが弾け飛ぶ。
尾はさらに襲いかかってきたが、それが届くよりも速く。ベニイの指先から放射された電流が、女怪人の全身を貫いた。
「ぎゃッ!」
悲鳴を上げた朧魔妲姫であったが、
「戦闘員どもの仕事が増えるわね。焼け焦げたお前の死体を片付ける、床掃除が!」
その全身が禍々しい焔に包まれていく。
立花の狙い澄ました弾丸が女怪人の眉間に襲いかかったが、それは災餓天金狐へと変じた女怪人に届くことはなく、コトリと地に落ちた。
「……すごい」
立花が呆然と呟く。話には聞いていたが、これほどとは。
「さすが、首領様からいただいた力でしょう? わかったら死ぬといいわ!」
「これはまずいですね……ッ!」
焔を避け、窓を突き破っていったん外へと逃れるベニイ。
立花にも焔は襲いかかってくるが、
「攻撃が効かなくても、体力を削ることくらいは……!」
と、事務机の上に跳び上がってブレスを避け、机上の書類が燃え上がることなどお構いなしに室内を逃げ回る。ときおり敵の足を払うが、とても効いているとは……。
それでも逃げ回る立花ではあったが、いつまでも逃げられるものではない。襲い来る尾が立花を打った……かと、思えたが。
「その位置……いただきだよ!」
立花は瞬時にしてインビジブルと位置を入れ替えていた。尾が打ったのはその残像に過ぎなかった。災餓天金狐はそれに触れてさえなんの手傷も負いはしなかったが。
凄まじい力を持つ朧魔鬼神から与えられた邪悪な闘気であったが、これを放出し続けては朧魔妲姫自身の身体が保たない。
立花が狙ったのはまさにその隙で、女怪人が変身を解いたその時を狙い、【カウンター】気味に銃床をその横ッ面に叩きつける。
「ぐぅッ……!」
朧魔妲姫はあられもない姿を晒し、床に仰向けに倒れ込んだ。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

よう、美人さん
ちょいとお付き合い願えるか?
残念ながらデートのお誘いじゃぁないけどな
軽口叩いて挑んだはいいが…さすが幹部級ってことか
やべーな、この機動力は正攻法じゃ追いつけねぇ
だったらこっちも腹を括るしかないな
奴が近接攻撃を仕掛けてきた時を狙って《警視庁異能捜査官式制圧術》を仕掛けるぜ
意図を悟られないよう、回転式拳銃で牽制射撃
そいつを掻い潜って近づいてきたら、そこを手錠で捕縛して警棒でぶん殴るってわけだ
最初に言ったろ、付き合ってもらうってな
打撃のフルコースを奢ってやるぜ!
無論、キツい一撃は貰うだろうが…そこはまぁ、気合で耐えるか
泥臭いやり方しか、知らないもんでね
「よくも、私の顔に……!」
朧魔妲姫は赤く腫れ上がった頬を押さえながら立ち上がる。奥歯を噛みしめるギリギリという音は、風見・正人(怪異捜査官・h00989)の耳にもはっきりと届いた。
それでも正人は泰然とした素振りで、
「よう、美人さん」
と、声を掛ける。
「ちょいとお付き合い願えるか? 残念ながら、デートのお誘いじゃあないけどな」
「そんなもの、こちらから願い下げよ!」
「そりゃ、残念。傷つくぜ」
軽口を叩きながら、正人は『霊圧炸裂式特殊警棒』を腰から抜いて打ちかかった。しかし朧魔妲姫はそれを迎え撃ち、幾度も振り下ろされる警棒を、素手で弾き返す。
「ひ弱な男ッ!」
邪悪な闘気を纏った朧魔妲姫の踏み込みは速い。正人が仕切り直そうと下がったところに、瞬時にして間合いを詰めてきた。
「うおッ!」
肩口に振り下ろされた鋭い爪。とっさに警棒を差し込んで致命傷は避けたが、
「……骨にヒビくらいは入ったかもしれないな。
軽口叩いて挑んだはいいが、さすが幹部級ってことか」
やべーな、と正人は口元を曲げた。
「身の程を知るのが遅かったようね!」
なおも襲い来る狐の爪。しかし正人とて、敵が強いとなればそのぶんだけ腹をくくっている。
警棒を構えるのとは逆の手に拳銃を構え、撃つ。
敵はそれを易々とかいくぐってくるが、それは計算のうち。撃ち尽くした銃を、正人はあっさりと投げ捨てた。
「な……ッ!」
「最初に言ったろ、付き合ってもらうってな!」
代わってその手の内にあったのは、『魔導合金製特殊手錠』である。霊力を込めるとその鎖は自在に伸び、朧魔妲姫の両手に枷をかけた。
「要するに、逮捕術と似たようなもんさ。こんな泥臭いやり方しか、知らないもんでね」
肩の痛みに耐えながら嘯いて、正人は敵の頭に警棒を振り下ろす。額が割れ、赤い血が床を濡らした。
🔵🔵🔵 大成功

アレンジ改変等歓迎です
「依頼の対象みたいね、悪いけどここで消えてもらうわ」
「依頼達成よ、マスター」
戦闘前に、メインシステム 戦闘モード起動という機械音声と共に(WZスマイルジーン)、(WZペインキラー)等の薬物をWZから血管内へ注入され、ルーシーを戦闘をするための機械に作りあげます。以後基本無口です。
戦闘方法、軽量機体の利点を生かして近接戦に持ち込みます。使用武器は(”WZ”パルスブレード)を使用して近接戦をします。使用√能力は【一閃】を使用します。 また(サブマシンガン)(レーザードローン)を使用し、援護射撃を行います。窮地に陥った場合("WZ"パルスアーマー)を使用して窮地を脱します。
「了解。依頼の時間ね、マスター」
第四世代型・ルーシー(独立傭兵・h01868)が力を込めると、量産型WZ「ブッタ」は鈍い唸りとともに足を踏み出す。
それと同時に「メインシステム、戦闘モード起動」という機械音声がコックピットに響き、ルーシーと接続されたチューブから、血管内に戦闘強化剤が注入された。
事務所の扉はすでに破られ、中では激戦が繰り広げられている。
「依頼の対象ね、悪いけどここで消えてもらうわ」
「く……好き勝手言うじゃない!」
血塗れになった朧魔妲姫は羅刹の如くに顔を歪ませ、ルーシーへと襲いかかってくる。ルーシーも素早く応じて『”WZ”パルスブレード』を構え、振り下ろされる爪を受け止めた。
「死になさいッ!」
女怪人が『災餓天金狐』へと変ずる。ルーシーが振り下ろした刃に手応えはなく、焔がWZを焼いた。
しかしルーシーは、いくつも灯る警告ランプにも構わず幾度もパルスブレードで打ちかかった。
音を上げたのは朧魔妲姫の方であった。
朧魔鬼神から与えられた邪悪な闘気は残り少なく、女怪人はよろめきながら元の姿へと戻る。
「消えろ、イレギュラー!」
そこを見逃さず、ルーシーはパルスブレードを振り下ろした。敵は咄嗟に爪を交差させてそれを受け止めようとするが、刃はそれを断ち斬り、女怪人の肩から胸までを深々と斬り裂く。
その代償として、過剰な力のかかったWZの腕部は損傷している。
しかしルーシーは表情を変えず、
「依頼達成よ、マスター」
と、通信機に向かって話しかけた。
🔵🔵🔴 成功
第3章 ボス戦 『朧魔鬼神【怪人態】』

POW
朧魔超越
【インビジブルとしての力を一部解き放った姿】に変身する。自身の【全能力】が2倍になり、新武器【身の丈以上の大剣「朧魔覇刃」】を入手する。
【インビジブルとしての力を一部解き放った姿】に変身する。自身の【全能力】が2倍になり、新武器【身の丈以上の大剣「朧魔覇刃」】を入手する。
SPD
朧魔解放
【自身に宿る邪悪な闘気】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【朧魔覇闘撃】」が使用可能になる。
【自身に宿る邪悪な闘気】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【朧魔覇闘撃】」が使用可能になる。
WIZ
朧魔夜行
【支配下にある邪悪な闘気を纏うインビジブル】を召喚し、攻撃技「【朧魔突撃】」か回復技「【朧魔放出】」、あるいは「敵との融合」を指示できる。融合された敵はダメージの代わりに行動力が低下し、0になると[支配下にある邪悪な闘気を纏うインビジブル]と共に消滅死亡する。
【支配下にある邪悪な闘気を纏うインビジブル】を召喚し、攻撃技「【朧魔突撃】」か回復技「【朧魔放出】」、あるいは「敵との融合」を指示できる。融合された敵はダメージの代わりに行動力が低下し、0になると[支配下にある邪悪な闘気を纏うインビジブル]と共に消滅死亡する。
√マスクド・ヒーロー 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
実のところ。階下で行われる戦いの音が、朧魔鬼神【怪人態】の耳に届いていないはずはなかった。
しかし朧魔鬼神にしてみれば、戦闘員募集などどうでもよい。朧魔妲姫や戦闘員たちがあれこれとやっていれば、√能力者どもはそれを嗅ぎつけて現れるに違いない。だからやらせていただけだ。
朧魔妲姫の命とて、たいしたことではない。あれに敗れるような√能力者ならば、拍子抜けだ。
「さぁ、朧魔妲姫を殺し、ここまで上がってこい√能力者……!」
朧魔鬼神が愉しげに笑う。

■意気込み
「朧魔鬼神! 貴方の陰謀…… いえ、野望……? ええと…………?
(ぽん)貴方の待ち時間もここまでです! 大変お待たせしました!」
■行動
SPDで攻略。
この人こないだも何もしてなかったなとは思いつつ。
それはそれとして強敵なので侮りません。
巡航単車イロタマガキ(ヴィークル)で屋上に突撃、そのまま空中機動に移行。
格好はリクルートスーツのまま。
「天神ロマンチカ」で能力を増強。空中ダッシュ+空中移動で敵の意識を空中に振り向ける。エネルギーバリアには頼らず回避に専念。
テンジンリボルバーの一斉射撃と、義肢の属性攻撃(雷)で、朧魔夜行で召喚されたインビジブルを撃退。相手の攻撃手段を潰していく。

部下がブチのめされてるってのに呑気しやがって
それだけ厄介かつ強力な敵ってわけか
こりゃ、一筋縄じゃいかねぇな
それなら、俺も本気で向かうぜ
《憑依顕現・告死鳥》――化け物には、化け物をぶつけるもんだ
単純なスペックでは勝負にならない
それならこっちは、飛翔能力による三次元戦闘に告死鳥の速度を乗せた、スピードスタイルで仕掛けるぜ
とはいえ、それでもなお俺の蹴りがヤツを捉えるか怪しいもんだ
だから、最後に切るカードは――俺の命
√能力で得た、死後即時に蘇生するこの怪異由来のタフネスで、泥臭く何度でもぶちあたってやる
「命がけの闘争がお望みなんだろ、付き合ってやるよ。ただし、泥仕合は覚悟しな……!」

|ボス《社長》のお出ましだね。
いや、こっちが出向いたんだからちょっとおかしい…?
ともかく部下はやっつけたし今日で営業終了だね。
屋上ということで遮蔽物とかはなさそうだから
《ジャンプ》や《逃げ足》で機動力を生かしながらの戦闘。
召喚されたインビジブルは【狼神の尾斬剣】でまとめて迎撃しつつ
胸に空いた穴めがけて《スナイパー》と《部位攻撃》で
銃弾を撃ち込んでいくよ。なんか古傷っぽそうだし。
朧魔鬼神【怪人態】は腕組みをしたまま、屋上から彼方に視線を送っていた。その先には、かつて戦機を失った臨海道路がある。夜の闇の中では所々の外灯が存在を知らせるだけだが、怪人の目にははっきりと映っていた。
「……来たか、√能力者」
爆音が響くとともに、白梅の香りが漂ってくる。
「東風よ、吹け!」
内階段と壁の角に『巡航単車イロタマガキ』のタイヤを当てながら駆け上ってきたベニイ・飛梅(空力義体メカニック・h03450)が、扉を突き破りながら屋上へと飛び出してきた。
「朧魔鬼神! 貴方の陰謀……、いえ、野望……ええと……?」
口上を決めようとするがなんとも様にならない。ぽん、と手を打ったのち、
「貴方の待ち時間もここまでです! 大変お待たせいたしました!」
アクセルを全開にして突っ込んでいく。バイクはその勢いのままに空を翔け、ベニイは左手に銃を構えた。
見た目はリボルバーだが、機構は電磁式である。放たれた金属片が怪人に襲いかかる。
しかし朧魔鬼神も邪悪な闘気を纏い、バイクに遅れを取らない速さで駆けた。ベニイの弾丸は屋上の手すりで弾け、繰り出された敵の拳を、ベニイはタンクにうつ伏せになるようにしてかろうじて避ける。
「ははは、一撃で終わっては面白くない!」
怪人は外したことを気にもとめず、再び襲いかかろうと体勢を整え直す。
その足元に、弾丸が弾けた。
「面接の態度が抜けきってねぇぞ、ベニイ」
硝煙の立ち上る拳銃を構え、風見・正人(怪異捜査官・h00989)は苦笑する。ベニイはリクルートスーツのままでもあった。
十枯嵐・立花(白銀の猟狼ハウンドウルフ・h02130)も姿を見せた。
「いよいよボスのお出ましだね。いや、こっちが出向いたんだから、この言い方はちょっとおかしい……?」
首を傾げつつ、愛用する『熊殺し七丁念仏』を構える。古めかしい単発式の小銃。そのボルトをガシャリと動かして弾丸を装填した。
「ともかく部下はやっつけたし、今日で営業終了だね」
「部下、だと? 部下などどうでもいい。俺は貴様らと戦いたいだけだ。奴らが好きなようにすれば、貴様らが現れるだろうと思っただけのこと!」
「ちょっと、部下がかわいそうにもなってきますね」
ため息を付いたベニイは、「このひと、こないだもなにもしてなかったな」などと思う。
「だから、部下をブチのめされても呑気してやがったのか」
「ふん。死ねッ!」
『朧魔覇闘撃』が、口を歪めた正人に襲いかかる。
「ぐッ……!」
咄嗟に警棒を差し出して勢いをわずかに殺したが、打たれた胸はズキズキと痛んだ。もしかすると、折れたかもしれない。
「こりゃ、一筋縄じゃいかねぇな」
「一筋縄も、なにも。せいぜい俺を楽しませて、死んでいけ!」
邪悪な闘気を纏ったインビジブルが、立花に向けて襲いかかってきた。
跳躍してそれを避けた立花だが、インビジブルはなおも襲いかかり屋上の端に立花を追い詰める。
「だったら私は尻尾を……こう使う!」
狼の尾が鞭のようにしなる。ひび割れたコンクリートを蹴って飛び込んだ立花。その尾にインビジブルが打たれる。
「攻撃手段を、ひとつひとつ潰していかないと……!」
戦いのことしか考えていないとはいえ、いやそれだからこそ強敵である。侮れない。ベニイは義肢から電撃を放ち、インビジブルを消滅させる。
その横を駆け抜けた立花は、尾を朧魔鬼神にも激しく叩きつけた。
「うぬッ!」
両手を交差させて受けた怪人であったが、あまりの衝撃にその足は数歩、たたらを踏んだ。
「ははは! これだ、これくらいには楽しませてくれねば、ここまで来た甲斐がない!」
しかし怪人はかえって楽しげに、拳を振り上げて襲いかかってくる。立花はかろうじてそれを避けた。だが、その拳は内階段の壁を易々と突き崩した。
「単純なスペックじゃ、勝負にならないな」
『告死鳥』と融合する正人の腕が、翼を備えた異形なものへと変じていく。飛翔した正人は上空から急降下しつつ蹴りを放ったが、敵はそれさえも避けた。
「だろうな。だから、最後に切るカードは……俺の命」
敵の拳が正人を打つ。それでも正人は前進を止めず、異形化した腕を叩きつけた。
「ぐぬッ……!」
顔をしかめた怪人は『朧魔覇闘撃』を放ち、正人は吹き飛ばされて血反吐を吐いた。
追い打ちをかけてこようとする怪人だったが、ベニイは空中を駆けて再びコイルガンの引き金を引く。
さらに空中のベニイに気を取られた怪人の、もともと砕けていた胸の装甲に弾丸が命中した。
「ぐぬッ!」
「効いた? なんか古傷ッぽそうだし」
素知らぬ顔の立花が、再び弾丸を装填する。
金属片によって腕を裂かれ、胸からは血を流して、よろめく朧魔鬼神。
その間に、正人は立ち上がっていた。たとえ死んだとしても、なお。
「命がけの闘争がお望みなんだろ、付き合ってやるよ。ただし、泥試合は覚悟しな……!」
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

SPDで攻略。
前回に引き続き、巡航単車イロタマガキ(ヴィークル)に騎乗。
朧魔鬼神の上空に位置取る。
頭上に陣取る事で、朧魔鬼神の注意を、地上と空中で分散させようと言う意図。
言葉を投げかけて、注意を引こうとする。
「部下の人達、プラグマですし悪人ですし、みんな変な格好でしたけれど。
『どうでもいい』とまで言われると、ちょっとかちんと来ます! 無理!」
空中移動+空中ダッシュによる回避と、エネルギーバリアで敵の攻撃を凌ぐ。
ただ攻撃は行わず、√能力・超天神応報のためのチャージを行う。
「無理を通します、√能力重ね当て!
戦術飛梅、重ねて、超天神応報!」
「天神! 天誅! 『超天神螺旋』ッ!」
チャージ完了後、上空で攻撃の機会を伺う。
地上の味方の攻撃で、朧魔鬼神の動きが止まる瞬間があったら、上空のヴィークルから自らを射出。
垂直落下キックの「戦術飛梅」を敢行した後、足の爪先から「超天神応報」を放出。
√能力の重ね当てで、大ダメージを狙う。
「風見さんも! 皆さんも!
死なないからって、死なせる訳にはいきません!」
「それでこそ、よ。これこそ俺の待ち望んでいた戦いというものだ!」
ルート能力者たちが朧魔鬼神【怪人態】に負わせた傷は、決して浅いものではないなずなのである。
その証拠に、その腕からも胸からも、おびただしい血が流れ落ちている。全身の打撲は数えることもできぬほどである。
それでも、怪人は愉しげに笑いながら邪悪な闘気を噴出させた。
「朧魔妲姫も回りくどい策を弄したものだが、集まってきた√能力者がこれほどならば、褒めてやらねばならんな!」
「褒める……?」
ベニイ・飛梅 (超天神マシーン・h03450)は眉間に深い皺を刻み、空を駆ける『巡航単車イロタマガキ』のハンドルを急に切った。バイクは地上と同じような挙動を見せ、スライドして空中に止まる。
「朧魔妲姫も、それに戦闘員の人たちも。プラグマですし悪人ですし、みんな変な格好でしたけれど……『どうでもいい』とか『褒めてやる』とかまで言われると、ちょっとかちんと来ます!」
再びスロットルを開き、一気に加速するベニイ。
「無理!」
「くだらんことに神経を回さず、俺との戦いに集中するがいい!」
朧魔鬼神は笑いながら、地を蹴った。邪悪な闘気を纏った拳が襲いかかる。
「く……ッ!」
ベニイは【エネルギーバリア】を展開してそれを防いだが……凄まじい衝撃である。ただの一撃でエネルギーは大きく削り取られ、辺りに閃光が散る。
「どうした、どうした! かかってこないのか? もっと俺を楽しませてみせろ!」
朧魔鬼神は幾度も幾度も拳を叩きつけてくる。懸命に耐え続けるベニイだったが、ついにバリアは破られ、弾け飛んだ。
その衝撃を浴び、顔をしかめるベニイ。
「そら、避けねば死ぬぞ!」
「言われなくても……!」
ベニイは拳をかいくぐり、アクセルを握る手に力を込める。バイクは再び急加速し、前輪を持ち上げながら急上昇した。
「風見さんも! 皆さんも! 死なないからって、死なせるわけにはいきません!」
「おう、そうだ! 貴様がここで俺を倒せねば、皆が死ぬ。わかっているならかかってこい!」
怪人は、ベニイがこれからしようとしていることを承知しているかのように、空を見上げて笑う。
敵は、こちらを待ち構えている。しかし……。
「無理を通します! 『戦術飛梅』ッ!」
『巡航単車イロタマガキ』のステップを踏みしめて、ベニイが跳躍する。
朧魔鬼神もそれを迎え撃たんと、邪悪な闘気を解放し、全身を包みながら飛び込んできた。
しかし、クルリと空中で回転して体勢を整えたベニイの方が、速い。
「グオオッ!」
電撃を帯びた強烈な飛び蹴りが、朧魔鬼神の胸板を貫いた。さすがの怪人と言えども、これにはたたらを踏んでよろめく。それでも敵は拳を叩きつけてきたが、
「√能力重ね当て! 重ねて……超天神! 応! 報!ッ!」
さらにベニイの爪先から、凄まじい電撃が放たれた。
「ぐおおおおおおおッ!」
敵の攻撃に耐えに耐え、蓄えたエネルギーは凄まじい。電撃は恐るべき怪人の全身を貫き、あらゆる筋肉と神経を寸断した。
「はは、は……! おのれ、俺を倒すとは!」
悔しげに、しかしベニイたちを称えるように笑ったのち、怪人は爆散する。
今頃になってダメージがやってきた。ストンと腰を落とし、ベニイは怪人の最期を見送った。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功