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はないちもんめ

#√汎神解剖機関 #ノベル #連邦怪異収容局員『リンドー・スミス』

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 #連邦怪異収容局員『リンドー・スミス』

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セルマ・ジェファーソン
オフのセルマが『連邦怪異収容局員『リンドー・スミス』』と街でばったり会って、雑談をしながら、ドーナツを食べる話をお願いいたします。
「休暇中に仕事の因縁は持ち込まない主義なの」ということで、交戦はしません。
あわよくばドーナツを奢ってもらおうとするセルマですが、断られたら、自分の分は自分で払います。
雑談の内容はおまかせ致します。死霊を喋らせてもかまいません。

 簡単なお仕事だと――容易な肚の晒し方だと――クライアントは囀る。
 重要視すべきは己の存在だ。優先すべきは己の在り方だ。頭蓋の内に孕んだキムラヌートへ贈るべきは――送るべきは数多の物語性である。その色がたとえば、土留のような汚らしい沙汰であっても濯ぐ必要などない。何もかもは種なのだ。種子を蒔いて水をやり、肥料をやって育む事こそが|自由人《フリーランス》の良いところとも考えられよう。いや、しかし、お休みの日に限って……オフの日に限って……わざわざ、脳内反省会とやらを反芻する必要など、所以など皆無と謂えた。それこそ、最もな、尤もな話である。客席から眺める景色に酔い痴れながら|死神《かみ》のケタケタ嗤いに共鳴する。あの男はやってしまった。ならば、私はいったい何をやってしまえば良い。薄らボンヤリだったあの頃の事、脳裡に映した昔々の己の|小ささ《すがた》――誑かされたのか、囁かれたのか、邪悪な何者かに手の繋ぎを強制させられる。……我ながら杞憂がひどいと思うべきか、或いは、寝惚けていると苦笑すべきか。こんな、ナーバスな背景に横入りさせるべきは甘いものだ。嗚呼、そうだ。思い出した。何処かの誰かさんと奢る、驕らないの約束をしていたのだ。何もかもはオマエからの一方的だったようにも視えるのだが、そんな文句を『敗者』は口に出来ないだろう。それに……そもそも、そんなにも、簡単に会えるものなのかしらね。空気を舐るかのように、虚空を啜るかのように、じゃらりと数珠が謳った。こういうのって、あれよね。ダウジング……? ふらふらと、ゆらゆらと、重たくなった頭、まるでクヴァリフ器官を容れられたかのような不安定さ。……最近、働きづめだっらから、その所為かしら。とん、と触れたのは壁である。それも――ヤケに、枯れ枝のような、されど巨木を想わせる壁であった。おっと、大丈夫かい? 貧血でも起こしたのかな……? 最初に気づいたのは『彼』の方だ。想定外も想定外、いいや、これは神が投げたサイコロの仕業だろう。予定調和――機械仕掛けの神――大団円……最後の三文字に関しては、おそらく、かなりの時間が必至だろうけども。やはり、君達も人間だ。人間なら人間らしく、自分の身体の変化には気を付けるべきだね。……そこまで気を遣ってくれるなんて、吃驚してるわ、私。それで? ここで『はじめる』つもりかしら、ムシュー。目の前の壁は――男は――連邦怪異収容局員『リンドー・スミス』はカラカラと笑った。いや、私は他の簒奪者とは違って正気なのだ。加えて、君も『休暇』なのだろう? ええ、休暇中に仕事の因縁は持ち込まない主義なの。文字通り『あぶら』を差す事などしない。お互い様だ。人類サマにはいつだって呼吸をする時間が不可欠であった。
 七日目の安息日、神すらも横たわってテレビを視ていたのだから、それをやるのに躊躇などない。ひとりの女とひとりの男が歩いている。まるで、蛇に唆された最初の人間をなぞるかのように。……で、此処が君の謂っていたお店かな。君のような人間が来るにしては、随分と、賑やかなところだけれども。声色は悪戯をするかのよう、ぐるりと目の玉を動かし、悉くを見通していく。ぎゃあぎゃあと騒いでいる子供達、それを眺めている父と母、学校帰りの女子高生、ちょっとだけ食べてみたいお年寄り……。ええ、賑やかだとは思うわ。でも、こういう場所だからこそ、私達は『隠れられる』と、そうは思わない? 香ばしいものが鼻腔を衝く。そうとも、お約束だ。お約束の地と謂うべきだ。でかでかと掲げられた看板にはシンプルなドーナツの絵。……おじさんの胃袋には限界があるからね。そうなのね、ムシュー。あなた、まんじゅうを怖がってお茶をねだるタイプではなかったのかしら? 並んでいる。並んでいる。妖艶な褐色お姉さんとイケメンなおじさまが並んでいる。ちらちらと視線を感じるが――成程――男子中学生と女子高生の『もの』だろう。ムシュー、女たらしとか、そういうふうに呼ばれたりしてね。そういう君こそ、男の子の脳味噌を焼いていそうだ。ああ、焼くといえば、このドーナツ、焼き立てらしい……。おっと、列が動いたようだ。それで……合計で幾らかね? そうだ。私は珈琲をいただくよ……。山のように積んだドーナツ、これを見ながらもオマエはちゃっかりと添える事にした。店員さんがおそるおそる切り出してくる。あの、此方もご一緒に……。ねえ、ムシュー? 約束したわよね。……勿論だとも。此処は私が『奢る』さ。ああ、店員さん。すまないが、彼女の分の飲み物もお願いしても良いかな。……何か飲みたいものはあるかな? 私は……ムシューと同じもので。なかなかに素敵な二人組ではないだろうか。もしも、敵対していなければ――。「ラブラブ! セレマトオジサンイイコンビ!」からかいの類ではない。おふざけの類ではない。きっと死霊はそんなイメージを――想像をしていたのだろう。世界は何処までも残酷である。
 二人席を見つけたので――それも、外にある、人気のない――テキトウに腰を掛ける。戯言を散らかすには丁度良い機会だとしてシンプルなドーナツを手に取った。ほう……甘い物を食べるのは久しぶりだが、どうしてこうも、美味なのだろうか。ムシュー、もしかして仕事に追われ過ぎていないかしら。普段、どのような食生活をしているのよ。答えを聞く必要などない。リンドー・スミスの食生活などズタボロ以外にありえないのだ。怪異は確かに栄養満点だが過剰に至るほどに違いない。それでも『あの体型』を維持出来ているのは体内の『怪異』の仕業だとも考えられる。食生活に関してはシークレットさ。しかし、君に過労を心配されるとは……君こそ、先程までフラフラしていたのではないかね。……誰の所為だと思っているのよ、誰の。ははは……お互い様さ、お互い様……。この会話こそが、この日常的な会話こそが、非日常への階段であると同時に『強さ』の象徴である。リンドー・スミスの『言の葉』は間違いではない。彼が言っている事に嘘はない。されど――それが正しいのか否かなどは神で在ろうとも解りはしないか。ムシュー……私の事を予想していた以上に買っているのね。私はハイエナだ。君が望むなら、セルマ・ジェファーソン、連邦怪異収容局は全力でお迎えしよう。君なら直ぐに出世できるだろうし、私よりも上の立場になる事だって……。知ってる筈よ、ムシュー。私はフリーランスなのよ。フリーランスで、このまま、居たいの。ドーナツを奢ってもらえたからって、優しくされたからって、靡かないわ。ははは……気に入ったよ。私は、君のような女が、君のような人間が、大好きなのだよ。君は強い。強くて……気高くて……それこそ、頂点にある花のようだ。「オジサン! セレマニハボクガイルカラネ! アゲナイヨ! アゲナイ!」ああ、そうだった。君には彼が憑いていたのだったか。これでは、君を無理やり連れていく事は難しそうだ。ズコ、と、紙製のコップが悲鳴を上げる。すっかりと満たされた胃袋を抱えて二人ともが席を立つ。おしまいだ。おあとが『ない』のであれば、これにて閉幕だ。それじゃあムシュー、ご馳走様。また、何処かで遭いましょうね。楽しい時間だった、『良い返事』期待しているよ。
 唇についた砂糖のざらつき、ねぶる……。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

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