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#√ウォーゾーン

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 #√ウォーゾーン

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●別離
「ええ、ええ。私は、もう良いんですよ。死ぬときは、せめてこの街で死にたいんです」
 重く、鉛色に沈んだ分厚い雲の下。度重なる爆撃で半ば廃墟と化した街の一角に、嗄れた声が響いた。
 ――ああ、またこのパターンか。
 防寒具をいくら重ね着しても突き刺すような北海道の冬の寒さに晒されながら、神崎蓮奈は心中で大きなため息をつく。
 身体的、或いは精神的な理由で、この半ば死体のようになった街から離れられない者達。蓮奈が今まさに向き合っている老婆は、まさにそういった人間の一人であった。
 蓮奈が――正確には、彼女が所属する中隊が――ここ数日従事している避難支援で、蓮奈はそのような人々と幾度となく話してきた。
 自力で身動きができぬ者。身内が死に絶えどこにも身寄りが無い者。この苦痛に満ちた世界で生きることに疲れてしまった者。共通項があるとすれば、例外なく死を受け入れている――或いはそう思い込んでいる――という点であろうか。
 耐え難い無力感が寒さとともに心を突き刺す。今すぐにでもこの場から離れたいという欲求を、蓮奈は何のためかも分からない義務感で抑え込む。みすぼらしい玄関先に立つ老婆の陰に隠れるようにして、5、6歳ほどの少女が蓮奈を見上げていた。
「だけれどね、この子を私の我儘に付き合わせる訳にもいきませんから。連れて行って上げてくださいな」
 娘夫婦の忘れ形見なんですよ。老婆は枯れ木のような手で、しがみつく少女の頭を優しく撫でなでた。この後祖母と別れなければならない事に薄々感づいてはいるのだろう。まるで人攫いをみるような目で、少女は蓮奈を睨みつけている。
「学生さん。どうか、この子だけは。よろしくお願いします」
「……わかりました。最善を、尽くします」
 口調に頼りなさを感じたのだろう。老婆は失望したような表情を浮かべたあと、それを恥じるように顔を下に向けた。
 死を受け入れている老婆に、どんな言葉をかけるべきだったのだろう。蓮奈にはわからなかった。彼女は大人でも、正規の軍人でもない。緊急招集された学徒兵に過ぎないのだから。
 老婆はぐずる少女をなだめ、苦労して蓮奈へと引き渡す。
「学生さん、気をつけてね。まだ若いんだから」
 先程の態度を詫びるように差し出された気遣いに、蓮奈はぎこちなく笑って頭を下げる。心の内では、自分の寿命も眼前の老婆と大して変わらないのだろうなと、暗い考えを弄んでいる。ある意味現実逃避に近い思考だった。
 学徒兵の平均生存時間は、日々悪い方向に記録が塗り替えられている。おそらく、その中央値が既に24時間を切っているであろうことを推測できてしまう程度には、蓮奈は優秀な学生であった。

●|全般状況《何をどうしたって無理なものは無理》
「状況を、説明いたしますね」
 真冬の陽ざしのように暖かく、冷たい声が響いた。
 星詠み役の人形は、集った者達の視線を受けてややはにかんだ様に微笑むと、胸の前で手を軽く打ち鳴らした。パン、という小気味の良い音。次の瞬間には、居合わせた√能力者の手に、各人が扱いやすいであろう形状の情報端末が出現している。ぼんやりと光を発する画面に目をやれば、「O市放棄に関わる全般状況及び集成第二戦闘団の任務概要」と題された資料が表示されていた。
 各々が手にした資料を読み進めるにつれ、周囲の空気が張り詰める。√能力者たちがこれから赴くであろう戦場に関わる情報が記された資料には、人間の心を上向かせる類の情報は記されていない。第三次世界大戦がはじまって以来数限りなく発生しているであろう人類の敗北と、それらに付随して発生する数多の悲劇的な出来事。資料が齎す現在と未来に対する暗示は、まさしくそのようなものであった。
「先日、S市跡に築かれた大規模戦闘機械都市を拠点とする戦闘機械群が、人類生存圏の一部であるO市に向けて進攻を開始しました」
 人形曰く、S市跡の機械都市は長らく休眠状態であった。突如として活性化した背景は定かではない。機械同士の内部抗争に区切りがついたのか、或いは純粋にS市攻略時に喪失した戦力の補充が完了したのか。どちらにせよ、か細い生存圏で土を食むように生きている大多数の人類には関わりのない話であろう。
「無論、現地軍はS市とO市間で迎撃を試みました。結果として、敵主力に一定の損害を与える事には成功致しましたが、友軍主力はその戦闘力の大半を喪失しています」
 現在、O市周辺でまともに動ける戦力と言えば、後方支援要員として招集された学徒兵数個中隊とWZ部隊のみ。かかる状況にあって、抵抗組織はO市の維持を断念。収容可能な避難民とともに後退し、戦力の再編を決断した。
「以上が、全般状況となります。率直に申し上げて、O市の失陥は確実です」
 たとえ、我々が介入したとしても。
 そう断言する人形の声は、どこまでの温和で、どこまでも冷たかった。

●敵の状況
「先ほど申し上げた通り、敵主力は友軍主力との戦闘で消耗していますが、未だ一定以上の戦闘力を保持しています。重装甲の大型機械兵器、砲火力、防空システム。それらすべてが戦力を維持しているとお考え下さい」
 S市とO市間にある緊要地形はほぼ敵に確保されており、相当程度の火力がO市に指向されていると考えるべきだろう。
 敵の編成は標準的な戦闘機械群のそれ。企図は少なくともO市及びその周縁部の確保であると思われるが、敵がどこまでの戦果拡張を考えているかは不明である。
 中、小型機械兵器と少数の大型機械兵器を主体とする戦闘偵察斥候は既にO市内外縁に到達しており、高規格道路を使用して主力の進路を確保せんとしている。
 標準的な編制とは言え、友軍よりはるかに強力である事は言うまでもないだろう。

●我の状況及び目標
「現在、O市では集成第二戦闘団と呼ばれる部隊が臨時編成されております」
 頼りない名を頂く戦闘団の基幹を成すのは、後方支援任務にあたっていた無傷の二個学徒兵中隊及び一個WZ中隊である。
「学徒兵中隊を構成するのは|非装甲型の歩兵《ソフトスキン》ですが、適性のある者は半自律砲台を装備している他、主力の後段から多数の携帯型対大型機甲兵器を受領しています。これに重迫もつくわけですから、書類上はそれなりの規模と評し得るでしょう」
 あくまでも、書類の上では。√能力者たちは人形の迂遠な表現をどのように解釈するだろうか。
 現在、戦闘団所属の各中隊は現在O市内の高規格道路沿いに展開している。彼らに与えられた任務は、主力の後退援護及び避難民の護衛。つまることろ、その身をすりつぶしながら時間を稼ぐことであった。
「闇雲に戦ったとしても一定程度の持久は可能でしょうが、位置を特定され次第、敵火力によって薙ぎ払われるでしょう」
 これについては√能力者であっても、常人であっても区別はないと、人形は警告する。
 戦場における大抵の問題は、火力によって解決される。√能力者の存在も、今のところはその範疇に含まれているのだから。

「O市の失陥は不可避ですが、主力と避難民の後退を支援することは出来ます。皆様は如何なる手段を用いてでも敵戦力を漸減させ、O市以西への進出を妨害してください」
 如何なる手段を用いてでも。この過酷極まる世界において、数限りなく繰り返されてきた言葉。
「それでは皆様、良い戦場を。どうかご無事で帰還なされますよう」

マスターより

あーるぐれい
●ご挨拶
 ごきげんよう皆さま。あーるぐれいでございます。
 √ウォーゾーンのよくある日常を表現したシナリオとなります。
 オープニングは若干硬いですが、あくまでも雰囲気ですので、お気軽にご参加くだされば幸いです。

●地形について
 小樽市及び札幌ー小樽間の地形とほぼ同一です。
 大部隊が展開可能な地形はそこまで多くないため、大戦力を展開する能力を使用する場合は戦闘効率が極端に低下したり、戦闘そのものが困難になる場合もありますのでご注意ください。

●天候について
 現在周辺地域では大雪が続いています。
 陸上の敵味方の行動に大きな制約はありません。が、分厚い雲に戦域が覆われている都合上、高高度からの航空支援には困難が伴います。

●第一章
 基本的に、O市に展開する集成第二戦闘団と敵の戦闘偵察斥候が接触する直前からの開始となります。
 開始時点では避難住民を乗せた車両は未だO市内を走行中であり、敵の脅威から守るには相当程度の時間を稼ぐ必要があります。
 敵の拘束、遅滞、漸減に利する行動であれば、√能力者たちの行動に制限はありません。
 友軍主力が保有する火力は後退済みのため、集成第二戦闘団の他に配当されている直協火力は存在しませんが、戦闘団自前の重迫及び各中隊が保持する軽迫からの支援を受けることは可能です。
 また、敵支配地域内では、ごく少数のハイエンド人形から構成される友軍特殊部隊が少数活動しています。
 また、市内には逃げる意思のない住民が残っており、彼らは自宅等防護が難しい場所で息をひそめています。建物から出てくる心配はありませんが、敵の間接火力はおそらく都市全域を更地にするまで降り注ぎます。

●第二章、第三章
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第1章 冒険 『絶望的撤退戦ヲ支援セヨ』


POW 敵軍に突撃して撹乱し、撤退時間を稼ぐ
SPD 撤退する人々の移動を支援し、撤退速度を上げる
WIZ 救出対象を取捨選択し、確実に人々を救う
√ウォーゾーン 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●人形達の分隊
 既に忘れ去られた雨量観測所の廃墟。かつては細々とした人の往来があった林道は、観測所と同様に忘れ去られ、今や踏みしめる者も居ない。獣の足跡すらないこの場所に、かつて道であったことを示すのは打ち捨てられた観測機の残骸のみであった。
 錆にまみれ朽ちかけた残骸を、4つの華奢な影が覆う。常人であれば歩くこともままならない程の積雪で遮られた道を音もなく歩くその様は、影の主が人間ではないことを示している。
 少数で敵支配地域深くに潜入する影の正体は、ハイエンド人形のみで構成される長距離偵察部隊であった。
 先頭を歩く少女が片手を挙げて合図を出す。その手に握られている|小銃《SCAR-L》が微かに揺れる。同時に、微かに響いていた雪を踏みしめる音が止まった。
「各機、セカンダリレベル障壁及び装具の最終点検を行え」
 雪の静寂に沈むように凛とした声が響いた。彼女の指示を受け、後に続く三体の人形はそれぞれ微細な動作で装備のチェックを開始する。雪の降り積もる闇の中、チ、チ、チと微かな電子音が周囲の樹木の軋みに紛れて消える。
 先頭の少女の傍らに控える機体が、手袋越しに|小銃《SCAR-H》のストックを叩く。凍りついた銃身から、かすかな霜が剥がれ落ちた。
「みんな、メンタルバックアップも忘れずにね。次に送れるのは、多分この任務が終わった後だろうから」
 SCAR-Hを持つ人形の言葉に、また別の|小銃《XM7》を持つ小柄な少女が不満げに鼻を鳴らした。
「ええ、ええ、わかってるわよ。でもさ……」
 XM7を持つ少女は、O市方向を見つめている。人工的な瞳がせわしなく揺れた。
「市街の残置部隊、学兵なんでしょう? 持ちこたえられるのかしら」
「……それは、我々の任務とは無関係だ」
 SCAR-Lの返答はにべもなかった。まったくの正論でもある。それを認識しつつも、XM7の心中は穏やかではなかった。返す言葉にも棘が混じる。
「|隊長《アンタ》はいつも通りね。安心したわ」
「まあまあ……。私たちが展開している敵火力の位置を特定できれば、学兵さん達が後退できる余地も生まれるでしょう? 隊長も分かっているのよ」
 SCAR-Hが穏やかな口調で宥めるように言う。|隊長《姉》の言葉に人間味を付加して伝えるのも、彼女の務めだった。
 むすっとした表情でそっぽを向くXM7。その様を見た最後の人形、|分隊支援火器《XM250》を手にした少女が耐えかねたようにくすりと笑う。
「学兵さん達のためにも急ぎませんとね。彼らには、メンタルをバックアップする術が無い訳ですから」
 皮肉めいた口調。しかし、それは純然たる事実の適示でもある。XM7は唇を噛んだが、それ以上言葉を発することは無かった。
 全員の装具点検とメンタルバックアップの送信が終わったことを確認したSCAR-Lは、再び視線を前方へと向ける。
「前進を再開する」
 粉雪が舞い上がる。四体の少女人形は、深く降り積もった雪にその身を沈めながら、音のない行軍を再開した。

●学兵部隊
 天のすべてのようにも思える灰色の雲が、O市の空を低く覆い尽くしていた。雪は静かに、しかし絶え間なく降り続けている。乾いた雪が、砲爆撃によって形成された建物の死骸を埋める様に積もっていく。
 集成第二連隊隷下、第一中隊第二小隊。国道沿いを流れる川付近に布陣した学徒兵の集団は、現在の所そのように呼称されている。
 不本意にも第二小隊を率いる立場にある神崎蓮奈は、急ごしらえの監視壕に身を潜め、深く息を吐いた。握りしめた小銃の冷たさが、彼女に不快感と共に現実を認識させる。
 人の声は勿論、鳥の声も、獣の声も絶えた市街は、降りしきる雪によって気の狂うような静寂に支配されていた。
 蓮奈の様な学兵にとって、この半ば死んだ都市は、ただ黙って敵を待ち受けるには過酷に過ぎる環境であった。
 彼女はたまらず傍らに控える少女人形に視線を向け、口を開く。白く染まった息が自身の鼻にかかり、眉を顰める。ここ数日まともに歯を磨いていなかったことを忘れていた。
「サクラ、後志自動車道の爆破って、続報来てる?」
 サクラと呼ばれた人形は、微笑みながら小さく頷いた。
「無事、トンネルの爆破が完了したそうです。今の戦力であそこまで手を回すことは出来ませんからね」
 敵の攻撃軸は一軸に絞られたという事か。これを喜ぶべきかどうかは微妙な所かな。蓮奈はサクラに頷きながら思考する。後志自動車道が使えないとなれば、敵は札樽道と国道沿いに殺到する。札樽道のトンネルも頃合いを見て爆破する手筈であるから、敵の圧力は自分達が布陣している国道沿いに集中する事になるだろう。
 塹壕に伏せる学兵たちは、皆じっと息を潜めている。蓮奈にとっては知る顔ばかりだった。同じ学校に通い、同じ教室で授業を受けていた彼ら。それが今は、頼りない装備と共に陣地に張り付いていた。
 市街地の中には、幾つもの廃墟や建物を頼りにした予備陣地が存在する。この川沿いでの迎撃が限界を迎えた後は、あれを頼りに後退しながら持ちこたえる算段であった。自分たちは、擦り切れるまで戦わねばならない。
「蓮奈さん、寒くありませんか?」
 暗い思考の海に沈みかけた蓮奈を引き上げる様に、サクラの声が監視壕に響く。量産型とはいえ、彼女の声は人間と何ら遜色ない柔らかさを持っていた。
 蓮奈は彼女を一瞥し、頷く。第三次世界大戦がはじまってから今日に至るまで、彼女は同一のメンタルを保ちながら生き延びている人形であるらしい。それがどれくらい凄いのかは分からなかったが、中隊長を務める学年主任は、それが正規軍が出来る数少ない心遣いだと言っていた。
「サクラ」
「はい、指揮官殿」
「頼りにしてる」
 蓮奈の言葉を受けて、サクラは微笑む。人間と何ら遜色ない柔らかい表情だった。
 傍らに置いていた無線機から声が響く。中隊指揮系に繋がっている無線機だった。
「潜伏斥候より、敵部隊接近との報があった。大型機甲二、中型六を確認するも詳細は不明。各小隊、対機甲戦闘準備」
 蓮奈にとって予想通りと言えば予想通りの内容であった。彼女はため息をつき、銃を握り直した。
駒門・クレイ
さて、初の実戦参加といきましょうか。敵軍への突撃という事ですね。
最前線で求められる機甲戦力としての特性は付与されていますが、どの程度機能するかは試してみないと分かりませんね。

地図で確認する限りでは、朝里ダムの方から小規模の機動戦力は来るかもしれませんが、主力は札幌自動車道沿いとなるでしょう。
自動車道沿いの足止めが充分であれば、ダム側の警戒を行いましょう。逆も然りです。

迫撃砲は弾着観測があって初めて効力を発揮します。
無線の周波数を合わせて前線での弾着観測に従事するとしましょう。観測射撃の座標を元に効力射に移行できるよう計算式を復習しておくのが良さそうです。
エンネア・ノウェムノイン
集成第二戦闘団へ、此方は第999懲罰連隊、戦闘に参加す。
俺達がまず敵陣を引っ掻き回してすり潰される役をやる。
貴隊はその次だ。今のうちに覚悟をしておくといい。
我々の銃声が聞こえなくなった時は私達の分まで死んでもらう必要がある。

市街戦であれば防塁や遮蔽になるような建築物もあるだろう。
が、僕らには必要ない。第999懲罰連隊は死ぬための部隊だからだ。
正面から敵先行部隊に突撃し、可能な限り死に続けて敵の火力を引き付ける。
我が連隊の提供する死が、生者の寿命を数秒程度は伸ばすだろう。贖罪には十分だ。
クラウス・イーザリー
(もう、こういう状況にも慣れてしまったな)
全てを救うことはできないけど、少しでも多くの人を助けるために頑張ろう

初動は敵の斥候部隊へ攻撃しに行く
避難車両を攻撃される訳にはいかないし、戦闘団の戦力を少しでも温存させたい
ランチャーによる無差別攻撃とグレネードによる爆破、WZでの弾幕で敵戦力を削る

以降は隠の徒で隠れながら移動
敵部隊を発見したら隠密を解いて攻撃を仕掛け、撹乱したらまた隠の徒で逃亡する
小型ドローンを飛ばしてのジャミングやハッキングも併用し、無差別攻撃や爆破で派手に攻撃
油断できない戦力が潜んでいると思わせることができたら、少しでも敵の侵攻を遅らせることができるだろうか

※アドリブ、連携歓迎です

●|戦闘前哨《COP》
 今や死骸となりつつある廃墟の街を埋葬する様に、冷たく乾いた雪が静かに降り積もっていく。
 生者はなく、ただ雪花がひらひらと舞い落ちる。見る者に堪えがたい寂寥を惹起させるこの美しい光景は、第三次世界大戦が作り出した数限りない情景の一種であり、人類が辿り着くであろう結末の一つでもあった。
 静寂を切り裂くのは、遠方より響く不気味な金属音。大小様々な機甲兵器が全く規則的な速度で奏でるそれは、戦闘偵察斥候の行軍音である。O市に迫る戦闘機械群の最前衛を務める部隊であった。
 戦闘偵察斥候は、敵の装甲兵器の排除を目的とする一機の大型機甲兵器と、その後方を固める三機の中型機甲兵器。そして、その足元で蠢く対歩兵用の小型機甲兵器群を一小隊とした、計三小隊によって構成されている。三機の大型機甲と九機の中型機甲という戦力は、単独で学兵からなる一個中隊程度の戦力を撃破可能な陣容である。そのような戦力が、文字通り敵の尖兵として縦隊をとって迫っていた。
 戦闘偵察斥候の目的は至極単純。友軍が防衛線を敷く|戦闘地域の前縁《FEBA》の特定である。
 防御側がどれほど周到に陣地を構築したとしても、戦闘偵察斥候にその位置を割り出されてしまえば、その後に待つのは後方に展開した絶大な火力と、それに支援された敵主力による蹂躙である。どれ程市内に予備陣地を設けたとしても、それは死の先延ばしでしかない。
 もっとも、O市内に残置された学兵たちにとっては、自らの死を如何に先伸ばしにできるかが、最大の関心事であったのだけれども。

 先頭を行く大型機甲が長く重厚な砲塔を巡らせ、その後方を中型機甲が覆う。彼らの足元では、無数の小型機甲が廃墟の影を縫うように蠢き、センサーを鋭く走らせながら目標を探している。
 彼らの|視界《センサー》に、未だ敵の主抵抗線は映らない。事実として、第二中隊が待ち受ける陣地は1キロほど前方に存在する。しかし、なんの前触れもなく、戦闘偵察斥候の先頭集団がその規則的な歩みを止めた。
 敵が本来は停止するはずのない場所。組織的な防御を行うのであれば真っ先に候補から外されるであろう、周囲が開けた国道の中央に、一つの影が現れる。
 降り積もる雪の帳の中で、黒い継ぎはぎの装甲に身を包んだ女。長い白髪が凍てついた潮風に流れ、頼りない陽光を受けて微かに銀光を放っている。
 色素の薄い、しかしこれ以上ないほどに鮮烈な殺気を放つ女が、機械たちの進路を塞ぐように立っていた。
 その女の名は、|エンネア・ノウェムノイン《第999懲罰連隊》。
 彼女は動かない。大小の機甲兵器の射撃管制レーザーに捉えられたにもかかわらず、一切の遮蔽を取ろうとはしない。むしろ、機械の進軍を真っ向から迎え撃つように、開けた国道の真ん中でその身を晒していた。
 果たして、これは如何なる意図をもった行動なのだろうか。合理の内に存在する機甲兵器の判断に、一瞬のラグが生じる。一人の人間として、エンネアが選択した行動はあまりにも常軌を逸していた。
 エンネアの背後。彼女の足元から、曖昧な形状の影が立ち上がるように動き始める。瞬く間に分裂し、一体一体不定形でありながらも曖昧な人の形をとったそれらの手には、エンネアと同種の超重量型ライフルが握られていた。その様は明らかに生者のそれではない。死ぬことを許されず、エンネアを依り代として現世に縛り付けられた罪人たち。第999懲罰連隊の名の下に捕らえられた彼らが、再び銃を取り、戦場に立つ。
「此方は第999懲罰連隊。我、戦闘に参加す」
 底冷えする様に冷たいエンネアの宣言と共に、罪人の群れは一斉に銃口を敵群へ向ける。対面する意思なき機械達と同様に、一糸乱れぬ動き。
 ブローバック・ブラスター・ライフルの重く容赦のない発砲音が、O市における戦闘開始を宣言した。

 銃火が走り、無数の大口径ライフル弾が白に支配された空間を引き裂き飛翔する。銃弾は物理法則に従い直進し、大型と中型機甲兵器の足元に群がる小型機甲の群れを襲う。
 行軍に最適化するため密集していた小型機甲は、回避行動を取る間もなく射線に捉えられていた。個体というより群体と化していた小型機甲が連鎖的に爆発し、最前衛が瞬く間に無為な鉄塊へと変換される。
「敵部隊をこの場に拘束する。第999懲罰連隊、前へ」
 指揮官、或いは依り代の号令と共に、死者の群れは前進を開始する。そこに如何なる感情も介在することは無い。死者達は巡礼者のように躊躇なく、機械の形を取った死に相対し、引き金を絞る。
 突如として出現した奇怪な敵集団に対して、戦闘偵察斥候の先頭集団は何処までも合理的な戦術を選択した。一瞬で無力化された最前衛の補充として後方の小型機甲を展開すると同時に、三機の中型機甲が前進し、傘型に散開する。
 機甲兵器に装備された大小の機関砲と、大型、中型機甲の主砲が一斉に火蓋を切る。第999懲罰連隊に対し、彼女らが放った物と同等、あるいはそれ以上の密度を持った火力が殺到する。
 機関砲弾が雪を弾き、榴弾が空中で熱と弾殻の華を咲かせる。圧倒的な火力と火力の応酬が、第999懲罰連隊と戦闘偵察斥候双方に甚大な被害をもたらしていく。
 崩れ落ちた死霊は、無残に倒れることすら許されない。彼らは再び立ち上がる。撃ち抜かれた四肢を引きずりながら、あるいは足を失いながらも、そのまま匍匐で前進を続ける。
 開けた国道の真ん中を圧倒的な火力に晒されながら進むエンネアと死霊たちの姿は、死を顧みない狂人のそれ。あらゆる生者にとって、或いは機械にとってすらも悍ましい戦闘であると言えるだろう。
 大口径ライフル弾を集中的に浴びた一機の中型機甲が、脚部から大量の火花と煙を吐き出しながら擱座する。まずは一機。しかし、エンネアがその光景を確認すると同時に、残った機甲兵器が放った榴弾が連隊の上空で相次いで炸裂する。複数の霊体が弾け飛んだ。
 損害の大きさなどは、もとより問題ではない。第999懲罰連隊は、生者よりも先に地に伏せるためにこの場に在る。真っ先に敵陣に飛び込み、すり潰される役を演じ切らなければならないのだ。まだ足りない。まだ今少し粘らなければ。少なくとも、敵部隊が移動用の縦隊から完全に戦闘隊形への展開を終えるまでは。
 大型機甲の砲塔が小刻みに動き、再び連隊の直上を指向する。自らもライフルの引金を引き絞りながら、エンネアがその様を睨みつけたその時。部隊の側面から一条の閃光が瞬き、大型機甲の砲塔側面へと突き刺さった。
 
 鋭い轟音が、雪に覆われた戦場を貫いた。
 虚空に現れた120mm滑腔砲から吐き出されたAPFSDSは、あらかじめ定められたかのように第999懲罰連隊へと向けられた大型機甲の砲塔側面へと突き刺さる。主力戦車の装甲を1000メートル以上先からでも貫徹せしめる事を期待されていたタングステン合金製の侵徹体は、果たしてカタログ通りの性能を発揮してみせた。分厚い砲頭部の装甲を完全に貫徹した侵徹体は砲塔内部侵入し、貫徹時に生じた自らの破片と装甲の破片を、熱と運動エネルギーによる凶器に変えてまき散らす。
 大量の破片が大型機甲内部に存在した制御装置の悉くを破壊すると同時に、破孔部から噴き出す高圧高温のジェットによって砲塔内部に存在した榴弾が誘爆する。諸々の物理現象によって生じた破壊効果によって、大型機甲は砲塔の内側から破裂する様な形で飛散し、完全に沈黙した。
 突如として出現した、極めて強力な火力。降り積もる炎に照らされるようにして、死霊とは異なるもう一つの影が現れる。
 特徴的な迷彩柄のジャケットを羽織った、学生服姿の少女。そして、その背後に浮かび上がるように現出した砲塔と、彼女を護るように囲む装甲の群れ。
 90式戦車型機甲|少女人形《レプリノイド》、駒門・クレイ。それが、人類にとって恐怖の象徴である大型機甲を一撃で破壊して見せた少女の名であった。
「まずは一機。初陣の相手としては、これ以上ない程の相手ですね」
 派手に弾け飛んだ大型機甲の装甲が周囲に飛散し、周辺の小型機甲を薙ぎ払う。第999懲罰連隊に食らいついていた戦闘偵察斥候最前衛の隊列は、明らかに乱れている。その様は。自らの機甲兵器としての性能を確かめんとしていたクレイにとって、一定の成果を感じ取るに十分な光景であった。
 敵がこちらの位置を特定する合間に、砲塔へ砲弾を再装填する。次弾、HEAT-MP。目標敵中型機甲兵器。照準用に照射したレーザーに反応したのか、目標となった中型機甲の砲塔がこちらへと指向し始める。確か、過去の戦訓では敵のネットワーク戦能力はこちらを上回っている筈。アドレナリンによって引き延ばされた時間で思考がめぐる。発砲。
 発射された砲弾は初弾と変わらぬ精度を発揮し、こちらへの照準を完了しかけていた敵中型機甲を捉える。着弾した多目的対戦車榴弾は中型機甲の正面装甲を容易く食い破り、再び炎と複合装甲で形作られた歪な花を戦場へと咲かせた。血液の代わりに飛び散ったオイルと煤が、周囲の雪を醜く染め上げる。
「残りは二機。――ッ!」
 敵の撃破を確認した次の瞬間、クレイが射点として使用した廃墟付近で複数の榴弾が炸裂する。残った二機の中型機甲による応射である。先ほどまでエンネアの部隊に集中していた砲火力が、一斉にクレイの方向へと転じたのだ。
 衝撃波によって飛散した大量の瓦礫が彼女の躯体へと降り注ぐが、即座に反応した装甲部分が彼女を護る。損傷を確認することもなく、クレイは潜んでいた廃墟を飛び出し、次の射点へと駆けだした。
 先ほどの射撃地点は、もはや敵の標的となっている。次弾を放つには、より有利な位置を確保しなければならない。
 戦闘偵察斥候の最前衛部隊の反応は素早いが、クレイの射撃によって明らかに陣形が乱れている。その乱れに付け入るような形で、エンネアもまた部隊を運動させている。クレイに向けられた注意を引き戻すかのように、第999懲罰連隊の攻撃はその苛烈さを増していた。
「間違いない、戦闘前哨だ。戦い方はめちゃくちゃだけど、あの人はやっぱり……」
 全力で駆けながら死霊たちの戦いを観察したクレイは、自らの仮説が正しいことを確信した。この戦いは彼女にとって初陣ではあったが、自身のルーツである90式戦車はこの戦い方を知っている。最も早く敵と接触し、激烈な抵抗を行うことで、敵の偵察戦力から友軍の|戦闘地域の前縁《FEBA》を欺瞞することを目的とする部隊。エンネアとその配下の死霊たちは、その役割を担おうとしているのだ。
 もし戦闘偵察斥候がここを主抵抗線と判断すれば、後方の敵砲兵はこの座標を主目標として砲撃を行うことになる。そうなれば、真の防衛陣地は無傷のまま、敵の初撃を躱すことができる。それを成り立たせるには、この場が強力な抵抗拠点であると誤認させねばならない。
「なら、簡単に後退するわけにもいきませんね」
 エンネアの援護のもと、次の射点への遷移を完了したクレイは再び砲身を顕現させる。
 再びHEAT-MPを装填。敵がこちらへ砲口を向ける前に照準用レーザーを照射し、発砲。
 正面装甲上部へと命中した砲弾は再び装甲を貫徹し、中型機甲の周囲が一瞬閃光に包まれる。機体と砲塔の間から大量の煙と火を噴き出しながら、中型機甲がまた一機膝を折るように沈黙する。
 敵の前衛小隊に残された強力な機甲戦力は、もはや中型機甲が一機のみ。今この瞬間、エンネアとクレイは数的に優勢となりつつある。
 しかし、その優位を打ち砕くように、敵前衛小隊の後方から、新たな機甲兵器の駆動音が響く。
 戦闘偵察斥候を構成している残りの二個小隊。さらに二機の大型機甲と六機の中型機甲を含んだ部隊が横隊への隊形変更を完了し、眼前に立ちはだかる障害を粉砕するべく前進を開始したのだった。
 
 雪と炎が舞う。瓦礫が粉砕され、空気が振動する。今までとは比較にならない圧倒的な火力が、エンネアの死霊部隊とクレイへと降り注ぐ。
 一瞬の優位は瞬く間に逆転した。しかしそれは、敵の戦闘偵察斥候にこの場所こそがFEBAであると誤認させることに成功しつつある事を意味する。
 しかし、喜びを感じる時間はない。単純な計算として、先ほどに比して二倍に迫るの圧迫が、エンネアとクレイに加えられる筈である。
 これまで以上の苦戦を覚悟する二人。しかし、ある一時を境に、敵の火力による圧力が不可解な程に軽減する。より正確に表現するのならば、敵機の照準精度が明らかに低下しているのだ。
 真っ先に異変を察知したのは、敵火力に直接晒されているエンネアであった。部隊直上で炸裂するはずの榴弾が大きく外れ、衝撃波が空を掠める。中型や小型機甲の機関砲がばら撒く弾幕は、こちらに対して正確に収束していない。
 同様の違和感を、クレイもまた感じ取っていた。敵の照準が甘くなり、砲撃の精度が低下している。いままで確実に彼女の行動を追随し、射撃位置を補正していた敵機甲のセンサーが、まるで霧の中に迷い込んだかのように、意図しない僅かなブレを見せている。
 戦闘偵察斥候は高度なネットワーク戦闘を前提に動いている。その機械的な照準精度が、突然揺らぐなど本来ありえない。単なるシステムの誤作動ではなく、何者かが意図的に介入している証拠だった。
 戦場の一角、爆煙の帳の奥。そこに一つの影が姿を現す。装甲を纏った人型の機動兵器。ウォーゾーンである。
 機体を駆るのは、クラウス・イーザリー。√能力の発現から数か月という短期間で数多の戦場を渡り歩き、今や最も熟練した能力者の一人であると目されている兵士である。
(もう、こういう状況にも慣れてしまったな)
 幾度となく繰り広げられてきた過酷な戦闘。小型ドローン越しに戦況を見守るクラウスにとって、今回のような状況は特段珍しいものではなかった。その良し悪しは別として、彼はこのような状況に慣れ切ってしまっている。
 それが避難民にせよ学兵にせよ、この世界において戦火に巻き込まれた者すべてを救うことなど出来はしない。
 しかし、それでも。希望も絶望も無くした少年は心中で付け加える。それは諦観の理由にはならない。今できることを成し、少しでも多くの命を救うことは、決して無駄な事ではないと、クラウスは確信している。
 彼はウォーゾーンの操縦桿を握りながら、正確な手つきで側面のコンソールを操作し、追加の小型ドローンを放出する。妨害に強い思念波を用いて制御されるドローンは廃墟や建物の影を縫うように飛び、展開した敵部隊を囲うように散開した。
 敵機甲部隊の小隊単位ネットワークは、クラウスが小型ドローン越しに仕掛けた電子妨害によって、徐々に齟齬をきたし始める。情報の伝達速度と正確性が低下し、小隊単位であれば即時に各機のセンサー情報を共有するはずのネットワークが機能不全に陥りつつあった。
 正確無比な情報によって統制される筈の機械兵器部隊に齎された、一瞬の、しかし致命的な混乱。緒戦における最も困難な役割である戦闘前哨を引き受けた√能力者達は、不意急襲的に戦場へと出現したクラウスによって齎されたこれ以上ない程の好機を最大化すべく、各人が取り得る最善の行動を選択する。
 決戦型ウォーゾーン「蒼月」を操るクラウスは、極限まで機動力を高めた機体の能力を十全に発揮させ、軽快な動きで瓦礫の上を跳躍すると、未だ原形を保った三階建てのビルの屋上へと遷移する。
 蒼月に装備されたプリズムランチャーを構え、混乱から立ち直りつつある敵部隊へと砲口を向ける。目標は敵右翼小隊、中型機甲。エネルギーパックから急速供給された電力を用い照射された熱線は、凍てつく冬の大気を急速に膨張させ、発生した衝撃波と共に敵部隊へと到達する。
 照射された熱線によって中型機甲の装甲は瞬間的に融解・蒸発し、瞬時に気体と化した装甲は見えざる刃となって中型機甲と周囲に展開する小型機甲に致命的な損傷を与える。右翼小隊正面を薙ぎ払う形で照射された熱線は、ほんの数秒の間に二機の中型機甲兵器と多数の小型機甲兵器を無力化する事に成功していた。
 撃破された中型機甲が擱座するその瞬間。辛うじて照射点に砲口を向けつつあった右翼小隊の大型機甲に、APFSDSが突き刺さる。射手は語るまでも無い。敵の混乱に機敏な反応を見せたクレイである。
 右翼小隊の最後に残った中型機甲も、それから間もなく僚機と運命を共にする。深刻な損害を受けてなお未だ戦力を維持する第999懲罰連隊の幽鬼たちによって至近距離から大口径ライフル弾を大量に浴びせかれられた中型機甲は、装甲に生じた微細な亀裂を絶え間なく抉られ続け、外観上は最も悲惨な最期を遂げるに至った。装甲が無秩序に千切れ飛び、大量のオイルをまき散らしながら、原型を留めぬ鉄塊となって、雪中に倒れ伏したのだ。

 三名の√能力者によって実施された戦闘偵察斥候との交戦は、僅か二〇分にも満たぬ短時間で終結するに至った。
 軽微な部隊であれば一蹴できるほどに強力な火力を保持した敵部隊は、短期間で二機の大型機甲と四機の中型機甲を喪失し、その単独での継戦能力を喪失。主力との合流を図るべく後退を開始する。
 能力者たちは友軍のFEBAを欺瞞することに成功すると同時に、後退戦闘の主軸となる学兵部隊の戦力を温存させることに成功したのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

ラピス・ノースウィンド
(【第435分隊駐屯地】各員との連携で参戦)
ラピスは撤退支援に回りますです。
所有する輸送車の護衛をメイン任務として迎撃にあたります。
輸送車を庇うような形で戦闘、完全破壊よりは速やかな追随能力の不能化を目指しますです。
ただ市内住宅地に入った折には声を大にして呼びかけます。
「命を繋いでください!私達と共に!!」
これに反応する姿あれば、ジェットパックやグラップリングフック等移動手段をフル活用し
輸送車まで連れ戻ります!

反応が無ければ落ち込みません。生きることは押し付けられませんです。
今乗せている人を、望みを繋いでいくのです。ドライかもですが、これも少女人形だからでしょうか?
ヨシマサ・リヴィングストン
【第435分隊・POW】旅団5人参加
ボクと京介さん、エルヴァさんの3人は敵の偵察斥候を迎撃、遅滞させることを目的に動きます。ボクのレギオンで索敵、情報をスミカ隊長含む仲間たちに共有しつつ、周囲の環境を利用して足止めすることを優先します。レギオンのビームで枯木を倒したり、岩を落としたり、条件が良ければ雪崩を起こしたりですね。レギオン操作を優先しますがスナイパーライフルも所持していきます。
O市の方々は…状況的に助けるのは難しいでしょうから今回は諦めます。ボクたちにもご本人たちにも大きな負担になりますし、心情的にも無理にとは言えませんから~…ま、もし誰かが無理やり連れてきたら~…その時に考えます。
エルヴァ・デサフィアンテ
【第435分隊】
アドリブ連携歓迎
ヨシマサ、京介と共に迎撃、遅滞行動へ

良い寒さだな~、冷却効率がダンチじゃんか! これならオーバーヒートの心配は要らないな。

熱センサー対策に高強度表皮の温度を気温にし、タイミングを合わせて側面から吶喊し一撃離脱。
いつもの様に全力ダッシュしつつ「アデランテ」を|速射《狙撃》。
「トルエノ」をばら撒きパルス地雷に。

予備弾薬なら心配ご無用! CASフロートに3トン位は入ってる。継戦能力は十分さ。

そーら、走れ走れー! 反撃が来るぞー!
突撃、攪乱、殲滅はアタシの十八番なんでねー。
未だ退避は続いてるんだ。派手に暴れて消えてを繰り返して、少しでも敵戦力を漸減! 引き留めねーとな!
スミカ・スカーフ
(第435分隊駐屯地・団員との連携で参戦します)
【心情】
雪の中での撤退戦です。本心としてはすべての敵を撃ち滅ぼしたいところですが、人々の救出が優先、すべて救えないのは力不足を痛感しますが。
友軍についても、ハイエンドだろうと人類は劣勢勢力であり敵を圧倒できるだけの能力はないと判断します。…友軍に告ぐ、生き残ることをあきらめるな。行動を開始します。
【行動】
所有している兵員輸送車を使用して、撤退中車両の後ろに追随して撤退を援護します。敵機が接近するようであれば線上に立ち守りつつ、撃破します。想定した撤退が完了したことを確認したのち、味方の団員や戦闘中の残存友軍を収容しに戻り撤退を援護します。
神代・京介
(第435分隊駐屯地・団員との連携で参戦)
撤退支援をしているメンバーの時間を稼ぐ為に、敵の攪乱をしにいく。
【影鴉】を展開しレーダー周辺の情報収集を行い敵の位置を把握。
攻撃メンバーのヨシマサ、エルヴァと通信しながら情報を共有。
敵斥候に見つからない様に慎重に後方に回り込み、敵集団に向かってレインで攻撃。
攻撃後は補足される前に即座に離脱を繰り返す。

O市を守り切れない以上、逃げる意思のないやつらを守ることはできない。
ちっ、仕方がないとは言え、こういう時はもっと力があればと思わずにはいられないな。

●戦闘指導
 戦闘偵察斥候の残骸は、短時間のうちに雪に埋もれつつある。
 熱を失いきらぬまま残るもの。既に凍てつき、ただ無機質な影と化したもの。全てが平等に、しんしんと降りしきる柔らかく乾いた雪によって埋葬されていく。
 しかし、その束の間の静寂は、空を引き裂く轟音によって粉砕される。
 √能力者たちの奮戦によって偽装された戦闘地域の前縁。即ち、現在学兵たちが籠る陣地の数キロ前方に、圧倒的としか形容のしようのない火力の雨が降り注いだのだ。
 榴弾が連続して爆ぜ、戦闘偵察斥候であった戦闘機械の残骸を更なる破砕へと追いやる。火制領域に存在するありとあらゆる存在が崩れ去り、砕け散る音が戦場全体に重く響き渡った。
 もし、あの砲撃がこの陣地に降り注いでいたならば。戦闘偵察斥候が解明した――と、敵が誤認している――戦闘地域に降り注いだ攻撃準備射撃は、後方の陣地に籠る学兵たちを震撼させるに十分であった。
 直接の被害こそないものの、爆轟の余波は即席の塹壕の奥深くにまで響き、耳鳴りと震えを残す。大気そのものが引き裂かれるような轟音に、陣地に籠る者たちは思わず身を竦ませる。
 赤黒い爆炎に染まり、今や地獄の扉のような様相を呈する地平から、大小無数の影がゆっくりと迫りくる。移動用の縦隊ではなく、大型機甲と中型機甲を前面に押し出した傘型を形成し、敵との接触を前提とした陣形で迫りくるは、敵主力の露払いを務める尖兵部隊。
 機械の形をとった死が、未だ避難が完了しきらぬO市に到達しようとしていた。

「これで、尖兵ですか」
 第一中隊が最初の防衛線と定めた小高い丘の頂上。そこに未だ原形を保って聳える旧海上技術学校の屋上に集合した√能力者の集団、第435分隊を率いるスミカ・スカーフは、陣地戦の前方1キロの地点まで迫った敵集団の陣容を確認し、半ば呆れたように呟いた。
 視界の先、赤黒い光に照らされた戦場の地平線を埋め尽くす影が、ゆっくりと移動している。
「ひぃ、ふぅ、みぃ……。大型だけでもざっと10機はいますです」
 額に指をあててスミカと同様の方向を眺めるラピス・ノースウィンド。指を折って数えながら軽く息を吐く。花壇を進む蟻の行列を眺める様な口調とは裏腹に、状況の深刻さが彼女の言葉の端々から滲んでいる。
「丘に遮られてここからは見えませんが、後方からはさらにその倍近い数がゾロゾロ向かってきてますね~。中型はさらにその倍。小型に至っては――」
「数える気も失せる。そんなところだな」
 ヨシマサ・リヴィングストンが放った20機以上のシーカーには、それぞれに光学・赤外線・電磁波といった情報を収集するパッシヴセンサーが搭載されていた。
 統制された動きで空を舞い、異なる高度と角度から敵陣を包囲するように展開するスウォーム・シーカーから齎された情報が、ヨシマサへとフィードバックされ敵の規模や陣形、移動速度と言った意味のある情報に加工される。それこそが、彼が持つジェネラルレギオンとしての能力の一端である。
 ヨシマサの言葉を継いだ神代・京介もまた、精度の差こそあれヨシマサと同様の情報を得ている。彼が操る影鴉は光学迷彩機能を持ち、その隠密性を生かした位置取りと高い光学処理性能を持つカメラによって、戦場に蠢く小型機甲の一機一機の動きを詳細に監視する事すら可能であった。
 ヨシマサと京介。共に優れたジェネラルレギオンである二人の分析結果を疑う習慣を持つものは、435分隊に存在しない。
「ま、苦戦はもとより織り込み済みってね。やるだけやってやろうじゃんか」
 エルヴァ・デサフィアンテが背負った対WZライフルを軽く叩く。彼女が楽し気に放ったその言葉は、この場にいる全員の総意を代弁したものであった。
 楽観せず、しかし悲観もせず。√ウォーゾーンに浅からぬ縁を持ち、実戦経験を重ねてきた人員によって構成される435分隊にとって、この場は数ある戦場の一つに過ぎないのだから。
「敵戦力は想定以上ですが、事前の手筈通りに動きます。皆さん、よろしいですね」
 スミカの言葉に、分隊員は各々の方法で合意を示す。すでに各員は配置につく準備を整えていた。
「私とラピスさんは、予備陣地線への退路の確保と浸透した敵戦力の排除。可能であれば逃げ遅れた避難民の収容を行います」
「は~い! お任せくださいです!」
 スミカはラピスの快活な返事に微笑みながらも、胸中を針で刺されたような感覚を覚える。
 迫る敵をすべて撃滅できればと、どれほど願ったことか。しかし、SCAR-Hの側面を宿す兵器としての彼女は、どれだけ手を伸ばしても救えない命があることを知っていた。
 せめて、自分にもっと力があれば。彼女の胸中の針は、人形としての理性と少女としての感情の相克だった。
「スミカさん、ラピスは今できることを精一杯頑張りますです!」
 スミカの僅かな表情の変化を感じ取ったラピスは、明るい口調のまま、スミカに向けて親指を立てる。
 同じ人形である彼女の心遣いに感謝する様に頷いたスミカは、続けて残るる三人へと顔を向ける。
「ヨシマサさん、エルヴァさん、京介さんは、学兵たちと協同して敵尖兵の遅滞を。一時的にでも敵を押し戻せなければ、段階的な後退戦闘すら儘なりませんから」
 「まぁ、そうなるよね~。隊長、ダミーを何体か残してもらっていいかな。人形のリンクは敵の電子妨害にもある程度対抗できるだろうし」
 ヨシマサの口調は軽いが、その裏では戦術的な配慮を欠かさない。エルヴァと京介もまた同感とばかりに頷く。
 劣勢下での後退戦闘は、殿と後退支援戦力との連携にすべてがかかっていると言っても過言ではない。過酷な|電子戦《EW》環境に置かれることにまず間違いない前線において、確実な通信手段を確保する思考に至った事それ自体が、彼ら能力を言外に物語っていた。
「わかりました。それぞれに一体ずつ配分します」
 決めるべきことは決まった。あとは、ただ覚悟あるのみ。悠然とすら表現できる敵の隊列は、丘に陣取る第一中隊が設定した|最初の火力集中地点《KP1》の直前に至ろうとしていた。
「435分隊、行動を開始します」
 指揮官の号令のもと、歴戦の能力者たちは一斉に崖を駆け下りていった。

●キルポイント
 大小の戦闘機械は正確に、そして合理的に進軍する。速度、距離、展開位置、その全てが高度かつ強力な部隊内ネットワークによって統制され、一切の慈悲なく戦場を制圧する。
 崩れかけたビルが並ぶ廃墟の街並み。かつては人々が行き交い、車が走り、賑やかな日常があった場所であり、今はただ瓦礫と沈黙が支配する都市の残骸。そこを埋め尽くすように、機械の群れが進む。
 尖兵部隊の前衛が朽ちかけた国道のある一点に到達した次の瞬間、轟音と共に数多の機甲兵器が爆炎に包まれる。周囲の廃墟や放置された車両に仕掛けられた高性能爆弾が、一斉に起爆したのだ。第一中隊が辛うじて構築したキルポイントが、巨大な敵に対して精一杯の顎を開こうとしていた。
 残骸に仕掛けられた爆薬が弾け飛び、鋭利な破片が国道へと飛散する。莫大な運動エネルギーを得た破片は機甲兵器の装甲を切り裂き、センサーを破壊し、推進機構を狂わせる。直撃を受けた小型機甲は瞬く間に四散し、中型機甲の脚部が粉砕された。
 連鎖的に発生した爆発が収まらぬうちに、学兵たちが籠る陣地から相次いで携帯型対機甲兵器が発射される。白煙を靡かせながら中型機甲へと命中したそれらは、武骨な装甲を爆炎で包むと同時に機甲兵器を意味のない骸へと変貌させていく。
「おーおーおー、学兵連中も中々派手にやるじゃねぇか! こりぁ、こっちも負けてらんねぇぜ」
 爆轟を背景に、エルヴァは敵部隊側面を射角に収められる地点まで一息に駆け抜ける。その手に愛銃たるアデランテをひっさげ、未だ原形を残す病院跡の屋上に飛び移った。
 一見すれば学兵部隊が敵の尖兵部隊を圧倒しているかのように見える情景だが、それは決して長続きするものではない。後数分もすれば、擱座した中型機甲を押しのけた機甲兵器が友軍の火点を特定し、榴弾の猛射を加え始めるだろう。
 エルヴァはそのような予定調和の未来を許容する程お行儀のよい能力者ではなかった。あえて友軍陣地から離れ、かつ|それなりに《・・・・・》目立つ射点に遷移した彼女は、手近な目標へとアデランテの銃口を向ける。今まさに砲門を友軍陣地に指向し始めた大型機甲。そうだ、あれが良い。エルヴァは獰猛な笑みを浮かべ、躊躇なく引き金を絞った。
 アデランテから発射された超高温の大口径弾が、音速を超える速度を発揮しながら凍てつく空気を切り裂く。莫大な熱エネルギーと運動エネルギーを持った徹甲弾は、大型機甲の砲塔側面へと命中。その重厚な装甲を綿菓子の様に引き裂きながら貫徹し、砲塔内部に高熱のプラズマを撒き散らす。内部の機器類は一瞬にして溶解し、吹き荒れるエネルギーは弾薬庫内に存在した大量の榴弾を誘爆させる。
 装甲の隙間から、はじめはゆっくりと、次第に猛烈な勢いで炎が噴き出す。ある一点に達すると同時に大爆発を起こした大型機甲はそれ自体が巨大な榴弾と化し、周囲に蠢いていた大量の小型機甲を薙ぎ払う。
「よぉし、一丁上がりぃ! さぁ走るぞ!」
 上々の戦果にさらに笑みを浮かべながら、エルヴァは次の射点へと駆ける。彼女が屋上から飛び降りた次の瞬間、後方で警戒していた大中の機甲兵器が放った榴弾によって、病院跡は原型を残さぬ瓦礫の山と化した。
 敵の砲弾を間一髪のところで回避すると同時に、エルヴァは置き土産も忘れない。小型機甲が浸透可能な小路地を抜ける際には複合型グレネードをばら撒き地雷がわりに設置しながら、彼女は廃墟から廃墟を渡り歩き、一機一機確実に機甲兵器の数を減らすことに成功しつつあった。

『エルヴァのやつ、相変わらず派手にやってるな』
『おかげで、ここまでは楽に済みましたからね~』
 エルヴァが盛大に敵の注意を惹いた結果として、その恩恵を受けたのは学兵部隊だけではなかった。敵の混乱を利用して、ヨシマサと京介の二名は敵後方への浸透を成功させつつある。
 淡々とした口調の京介と、どこか楽し気なヨシマサ。二人の能力者は無線越しに会話を交わしながらも、敵小型機甲の位置と動きを的確に把握し、悟られることなく良好な視界を確保可能な後方地点に進出していた。
『ここまで好条件を揃えても、行動後は即探知されると思った方が良いだろうな』
 受動的な索敵を除くジェネラルレギオンの行動は、その能力の性質上極めて大規模であり、かつ致命的である。大量のドローンを操る都合上、自らが盛大な電波の発生源となる都合上、電子戦に秀でる戦闘機械群の目から逃れることは原理上難しい。
『ま~、そこは刺激的なスパイスという事で』
 自らが発した言葉に対して、ヨシマサは我が事ながらと苦笑する。常人から見れば極めて危険な、絶望的とすら状況にあっても、どこかそれを楽しんである自分がある。それが良いことなのかどうかはわからない。過酷な環境への過剰適応と言われてしまえばそれまでであろうが、この性格が齎す行動や戦果が他人の寿命を伸ばすことに繋がるのならば、決して悪い気はしなかった。
『行動、即離脱を徹底だ。まぁ、お前なら上手くやることは分かっているが』
 あくまでも自らの置かれた状況を楽しむヨシマサとは対照的に、京介の言葉はどこまでも淡々としている。多くの、多すぎる程の戦場と死。数多の経験を経て培われた冷静さは、このような極限状態にあっても京介に氷のような冷静さを与えている。それを心の摩耗と感じることもあるが、同じく心中で燻る熱がある事も確かだった。
『京介さん、さっきの隊長と同じような表情になってますよ』
『……言ってろ。 決戦兵器の起動まで5秒。上手く合わせろよ』
 はいは~い。無線越しに響くヨシマサの声に、京介は僅かに唇をほころばせた。自分にもっと力があれば。確かに、摩耗しきった心からは出てこない思考なのかもしれない。やや気恥ずかしさはあるが、決して不快な感情ではなかった。
 刹那の思考の後、京介は自らの感情を再び熱の無い物に切り替える。奇襲と速度がすべての攻撃。スウォーム・シーカーと影鴉が連携して集めた敵の位置情報にすべての思考リソースを集中する。数センチのずれ許さない極限の集中の後、京介は自らのもう一側面。森羅万象を一時的にせよ操るレインメーカーとしての能力を発現させる。
 氷点下に凍てついた大気が瞬時に数千度にまで加熱され、膨張した大気が轟音と共に周囲のあらゆるものを薙ぎ払う。京介の能力によって敵尖兵部隊の中衛から後衛にかけての空間に発生した無数の熱線は、友軍陣地から放たれる熾烈な突撃破砕射撃によってやや詰まり気味となっていた隊列の只中に大量の破孔を生じさせる。
 突如として発生した熱線は、小型機甲の薄い装甲を紙のように切り裂き、大型と中型機甲の装甲脆弱部――特に、致命的な損傷は脚部関節部分であった――を融解させる。
 移動する術を失った大型機甲と中型機甲は、陣地に籠る学兵の対大型機甲班の標的となると同時に、存在そのものが部隊の前進を阻む障害と化す。動きのある目標の、さらに命中が難しい関節部分に対してかくも的確な熱線照射を成功させしめたのは、京介の√能力者としての実力の高さを示すと同時に、ヨシマサの支援能力の高さを示す物であった。
『さーて、こっちも今のうちに仕事をしますか~』
 京介の攻撃による戦果を確認すると同時に、ヨシマサもまた自らが操るスウォーム・シーカーに本命の命令を下す。
 目標は、国道から枝分かれするいくつもの市道。大型や中型の機甲兵器は通れずとも、小型機甲であれば容易に通行可能な低規格道路は、ともすれば戦力に乏しい味方にとって致命的な敵勢力の浸透を招く元凶ともなり得る。どこまでも状況を楽しむ余力を持ちながらも、ヨシマサの戦術眼はどこまでも冷静で、的確であった。
 パッシブ探査を停止し、攻撃用のアクティブ探査波を放出したシーカー達の目標は、機甲兵器ではなく市道周囲に存在する廃墟である。
 道路を塞ぐよう瓦礫が飛散する角度を計算した後、ヨシマサはシーカーに対して攻撃命令を発する。大量のドローンから一斉に放たれた粒子ビームの奔流は、脆くなった廃墟の外壁を容易く両断し、いくつもの建物を崩壊させる。図られたように市道側へとなだれ込んだ大量の瓦礫は、ヨシマサの狙いに違わず枝道への流入路の殆どを閉塞するに至った。
『完璧とは言えませんが、まぁ、こんなものですかね』
 ヨシマサの言葉通り完全とは言い難いが、これで枝道から後方に浸透する敵の相当数を押させこむことが出来るだろう。
 最小の行動で望みうる最大限の戦果。ヨシマサと京介は即座に踵を返し、友軍陣地へと合流するために走り出す。
 逃走経路の確保に抜かりはない。彼らのジェネラルレギオンとしての能力は、一連の戦火によって十分以上に証明されているのだから。

●少女たちの戦線
「敵集団の殲滅を確認。周辺に新たな敵影無し」
「こっちもクリアしましたです!」
 連射によって熱を帯びたSCAR-Hのバレルに雪が触れ、音を立てて蒸発する。銃口の先には、奇怪な翼をはやした姿の小型機甲の骸があった。
「空挺機甲、やはり浸透していましたね」
 空挺機甲。スミカがそう呼称した特殊な機甲兵器は、全天候に対応した飛行能力を持ち、一般的な小型機甲に準じる火力を備える。ごく少数の存在が確認され、人類が運用する特殊部隊と同様の役割を果たしている。
 即ち、空挺機甲のその任務とは、後方への浸透、偵察、そして襲撃である。
 S市における攻防戦において人類側に大打撃を与えた空挺機甲は、スミカの予想通りO市への侵攻にも投入されていた。
 今まさにスミカとラピスが打ち倒した敵は、まさにそのような存在であった。
「後退路の確保に動いて正解だったです! 放置していたら、学兵さん達が下がってくるときに挟み撃ちですもんね」
 ラピスの言に、スミカは静かに頷く。大型や中型程の火力は無く、一般的な小型機甲の持つ数の猛威はなくとも、一般市民や補給段列にとって空挺機甲は致命的な脅威となり得る。そこかしこに存在する建物や廃墟にむ陣取られれば、学兵達にとっても同様だろう。
 スミカとラピスが一通りの空挺機甲排除に成功した時、学兵たちが籠る陣地方向から猛烈な爆轟が市内全域に響き渡る。偽装された戦闘地域前縁に向けて放たれた敵の攻撃準備射撃だろう。
「始まりましたね。あと数十分もしないうちに、主線陣地での戦闘も開始されるでしょう」
 戦術的な心得があるスミカとラピスですらも、僅かに眉を顰める程の爆轟。経験のない一般市民にとっては、さぞや恐ろしい響きである事だろう。改めて、スミカは国道沿いに点在する戸建てや集合住宅の窓に視線を巡らせる。空挺機甲が隠れ潜んでいることを警戒して、という意味も勿論存在するが、また別の目的も存在する。半ばあきらめている目的でもあるが、それでも探さずにはいられなかった。
「スミカさん! あそこ、集合住宅の三階! まだ人が居るです!」
 ラピスの叫ぶような報告に弾かれるように、スミカは視界を集合住宅へと向ける。
 確かに、その姿が確認できた。枯れ木の様にやせ細った老夫婦が、不安げに窓の外を眺めている。死を受け入れているのであれば、あのような行動は起こすまい。砲声に怯えるという事は、未だどこかに生への望みが存在するのだ。少なくとも、スミカとラピスはそう信じていた。
「ラピスさん!」
 お願いします。そう言い終わるよりも早く、ラピスはジェットパックを閃かせ、集合住宅の正面へと降り立っていた。
「皆さん!」
 高く透き通った声が、砲声が轟く灰色の世界に響いた。ラピスが発する蒼白のように美しく、そして切迫した声は、不安げに窓の外を窺う人々の耳を介し、心へと訴えかけるように響く。
 一時は死を受け入れ、今この時死への恐怖へと怯える人間たちは、逡巡するように小さな人形へと視線を向けた。
「どうか、命を繋いでください! 私達と共に!!」
「皆さん、生き残る事を諦めないでください。あなた達の退路は、我々が確保して見せます」
 彼女達の言葉が、惑う人間達に差し伸べられた一筋の糸となった。幾つかの人影が窓際から離れ、ゆっくりと、しかし確固たる意志をもって集合住宅の出口へと集まる。
 スミカは兵員輸送車の扉を開け、新たな避難民を受け入れる。全員の収容が完了すると同時に、前線からは再び爆轟が響く。スミカが咄嗟に上空を見上げれば、空挺機甲の分隊が再び市街への浸透を図りつつあった。
「ラピスさんは先行して、避難民及び友軍の退路の偵察を。脅威を確認し次第、これを拘束、可能であれば排除してください。兵員輸送車の護衛は、私が受け持ちます」
「任されましたです! 合流地点で待ってるですよ!」
 スミカの指示を受け、ラピスは会心の笑みと共にジェットパックを閃かせる。天を覆い尽くすような鈍色の雲に、蒼白の尾が美しく輝いていた。
 その様を見届けたスミカは、覚悟もあらたにSCAR-Hを構える。ダミーたちが兵員輸送車を護るように円陣を形成する。
「これより、友軍の退路及び避難民の離脱支援を再開する」
 |少女分隊《レプリノイド・スクワッド》、前へ。
 戦況は悪く、護るべきものも増えた。だが、スミカのメンタルはこれ以上ない程に軽く、戦意に満ちていた。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
|人工未知霊体《タルパ》であり本体は人々のイメージ。|依頼参加時には星詠みのイメージを元に仮初の肉体を構築している。《地の文様のイメージしたセカカラちゃんをよろしく♪》

|運命調律《料理、サバイバル》、いつの間にか學兵部隊に混ざっているけど誰も不自然には思わないわ。學兵のイメージからさらに仮初の肉体を構築して部隊員を水増ししておくけど、まぁ焼石に水でしょうね。それでも肉盾が増えた分生存率はあがるでしょう。
料理とは物事を上手く処理すること、ならばこの状況もいい感じに料理してみせましょう。
ジュヌヴィエーヴ・アンジュー
戦場の、懐かしい空気ですね。
感傷に浸ってもいられません。マインドセット。

蓮奈指揮官、支援に参りました。戦力は猫の手でも欲しいでしょう?
では、レーダー『ミネルヴォワ』を「範囲攻撃」化して起動。「戦闘知識」でこの周辺の彼我の状況を把握し、共有しましょう。
劣勢のところには、私のドローン『ホーネット』の群を飛ばし、「ドローン操縦」によりビーム攻撃で敵の注意を引きます。
こちらは、浮遊砲台群『アルテミシア』を主体に、敵が射程に入ったところで「弾幕」を張ります。一定ラインより踏み込んできた敵機には、味方と合わせた「牽制射撃」。状況が悪化しても、私は|殿《しんがり》として隊長やサクラと共に陣地を支え続けます。
機神・鴉鉄
POWを選択。
心情:依頼完遂のためには、学兵部隊の多数の生存が不可欠と考える。
可能であれば、学兵部隊を戦闘に参加させない形で、任務を遂行したい。

パワードスーツに搭乗し、迅速に戦場へ突入。集成第二戦闘団に友軍の説明をする時間はないと判断。【空中ダッシュ】にて布陣の上を飛び越え、高規格道路を駆ける。敵部隊と遭遇した瞬間、√能力【星火降りて原野灰燼に帰す】を発動し、着弾の爆風で敵の視界を攪乱する。次に道路沿いの遮蔽物を利用しながら【ダッシュ・空中ダッシュ】にて動き回り、搭載する銃火器で攻撃を重ねる。状況に応じ、敵勢力に押されるようなら後退して、学徒兵部隊の援護射撃との連携を図る
綺羅星・スピカ
うへぇ、今回のルートはウォーゾーンかぁ。
とりあえず……状況は大体わかった。
ボクができることは囮になって避難中の住民に敵が行かないことみたいだね。

そうは言っても注意をこっちに引かなくちゃ意味がないな。よし、雷砲・リンドヴルムの出番だね。スナイパーで爆発物を優先的に撃って誘爆を狙ってみよう。ド派手に花火を上げればこちらに気づくでしょ。
街の残骸と積雪がいい感じ、地形の利用ができるね。魔法攻撃ユニット(ステラー)を設置、弾幕を形成するよ。これがボクの√能力『分身攻撃』さ。本物はどれかな?
レナ・マイヤー
なるほど、絶対絶命大ピンチですね。
我々は殿で敵戦力を押し止め、撤退を支援すべしと。
了解しました!
レナ・マイヤー、任務を遂行します!

まずは【レギオンネットワーク】に友軍の皆さんを接続。
レギオンから得た情報を共有できるようにします。
で、レギオンを飛ばして適当な物陰に配置しまして…
敵の座標や侵攻経路、行動パターンや地形など諸々確認。
どこに撃つべきかか、いつ攻撃が来るから避けるべきか。
そういった情報を、友軍に共有します。
致命的な攻撃は、レギオン・ガードに防いでもらって被害を軽減。
立て直しが必要なら、レギオン・グレネディアに煙幕弾や閃光弾を焚いてもらいましょう。
そんな感じで、支援に徹して時間稼ぎです!

●後退援護
 雪は絶え間なく降り続けている。
 乾いた雪が荒れ果てた廃墟の街並みを覆い、戦場の上に静かな死のベールをかけていた。
 先程までの熾烈な戦闘によって、学兵たちの陣地線から見える市街のほとんどはその原型をとどめていない。建物のほとんどが瓦礫と化し、破壊された車両や折れた電柱が無造作に転がる。彼ら彼女らが段階的に後退していくにつれて、市街すべてが似たいような情景になるのだろう。
 小さな丘陵に構築された学兵たちが築いた即席の陣地からは、小川を挟んでO市街に続く国道全体を管制できる。今やその国道は、敵の尖兵部隊が破壊された機械の死骸で埋め尽くされていた。
 尖兵部隊との戦闘が始まってから、僅かに30分。
 国道沿いに侵攻する戦闘機械群の尖兵部隊は、学兵たちと√能力者の抵抗によって一時的に動きを鈍らされていた。撃破された大小の機械が、鉄と油の混じる焦げ臭い残骸となって雪の中に転がっている。爆発で破損した電子部品が微弱なスパークを散らし、破れた装甲の隙間からは血液の様に炎がくすぶっている。
 一時的に尖兵を押し返したことによる、束の間の静寂。しかし、それは決して長く続くものではない。この30分間で撃退した敵戦力は、尖兵部隊の前衛に過ぎないのだから。
 後続の戦力が、次なる突撃のために陣形を整えつつあった。敵尖兵の任務は、主力のO市突入を援護するため、主侵攻路に存在するあらゆる障害を排除する事。この任務が果たされるまで、機械の群れは決しと止まることは無い。
 陣地に籠る学兵たちは、震える手で小銃を握り、視界の彼方にぼんやりと浮かぶ敵影を見つめながら、次に押し寄せる鉄の津波を待ち構えていた。
 空は、無慈悲な灰色の雲で覆われている。雲の切れ間から時折、朧げな光が射し込むが、それは戦場を照らすにはあまりにも弱々しい。雪は降りしきり、その勢いは次第に強くなってきた。
「ふむ、やはり視界が悪いですね」
 青髪の少女が、学兵たちが築いた即席の塹壕に姿を現す。髪色と同色の澄んだ瞳が、塹壕から見える国道の様子を静かに観察していた。
 肩までの青髪は降り積もる雪と冷たい風に煽られながらも整然としている。身に纏う学生服を彩る深紅のリボンが微かに揺れていた。
 淑やかではあるが、どこか鋭い雰囲気を纏った彼女。周囲の学兵たちとは明らかに異なる。つまるところ、彼女は√能力者であった。
 視界を遮る雪の帳は、敵の動きを捉えることを困難にする。敵にとっても学兵たちの正確な配置を見極めることを難しくしているのだが、戦闘機械は人間のように肉眼に頼ることはない。彼らには光学センサー以外にも熱源探知や振動センサーを駆使しした索敵方法があり、むしろこの悪条件こそが戦術的優位を高める要因となるのだ。
 レナは監視壕に設えられた窓から前線を見据える。
 瓦礫の影を縫うように、何かが蠢く気配があった。かすかな駆動音、雪を踏みしめる金属音。視界を遮る吹雪の向こうで、戦闘機械たちが着実に布陣を進めつつあるのを、レナは感じ取っていた。
 軽く指先を動かす。その動きに呼応するように、事前に配置されていた無数の小さな影が、戦場の各地で目を覚ました。
 その正体は、レナによって使役されているレギオンである。廃墟の影に潜み、倒壊した建物の内部に滑り込み、瓦礫の隙間に息を潜めるようにして展開されている。彼らの目的は、ただ一つ。敵の動向を把握し、戦場を見渡す目となること。
 レナの視界に、レギオンが捉えた情報が流れ込んでくる。
 瓦礫の影から進む中型機甲兵器の群れ、残骸の間を這う小型機甲、ゆっくりと前線を圧迫する大型機甲。
 それらがどのような陣形を組み、どの経路を進もうとしているのか、どのタイミングで攻撃を開始しようとしているのか。それらすべての情報が、リアルタイムで解析され、彼女の手の中に落ちてくる。
 彼女の指が、自身を護るように肩に留まったレギオンリーダーを撫でる。主の意図を察したリーダーを介して伝えられる新たな指令を受けたレギオン・スカウトたちは、敵の進軍ルート、死角となる地点、味方の火点と交差するラインといった情報を友軍の将校――と言っても、中隊長以外はそのほとんどが学生なのだが――に送信する。
 彼ら彼女らは頭の中に流れ込む情報に混乱しながらも、最適な火点配置を構築していく。
 吹雪による視界の悪化は、敵味方双方にとって厄介な事象である。しかし、レナ・マイヤーとレギオンは、それを優位な味方にとって優位な状況に変えるだけの能力を保持していた。
「さて、やるだけはやってみましょう」
 隊形を再形成した敵尖兵は、再び陣地線を突破するために前進を開始しつつあった。

 遠雷のような砲声が響いた。次の瞬間には、学兵たちが籠る陣地、否、陣地が存在する丘陵全体に敵の砲撃が降り注ぐ。
 連鎖する爆発。砕け散る雪と土砂、そして木材。塹壕を構築するありとあらゆる素材が砕け散る。学兵たちの間から悲鳴が上がるが、気にする者はいない。耐え忍ぶしか方法の無い時間の中で正気を保つには必要な行動であると誰しもが理解していた。
「わかってはいても、これは中々……」
 監視所の天井から、パラパラと土と木片の混合物が舞い落ちる。レナは不快感に眉をひそめながら、敵の攻撃前進の様子を観測し続けている。
 陣地に榴弾の雨を降らせているのは、敵の後衛だろう。S市方向に存在する別の丘陵に隠れ、肉眼では観測できない位置に展開した大型機甲と中型機甲が、即席の砲列を形成している。
 敵中衛はそれに紛れる様に陣地線へと接近している。肉薄される前に何らの手を打つ必要があるが、学兵たちは完全に砲撃によって制圧されている。この状況では頭を上げる事すらできないだろう。
 だとするならば。レナは同じく陣地に展開する一方の√能力者に思考を同調させる。
『……状況は分かったよ。なんとか、引っ掻き回さないとね~』
 声の主は綺羅星・スピカ。おそらくは砲撃の最中に交通壕を全力疾走しているのだろう。爆轟に交じって届く声は、過酷な戦場には似つかわしくない程に柔らかかった。
 
 長く伸びた蒼銀の髪が風を裂き、砲火に揺らめく。双尾の先が雪煙を振り払い、コートの裾が翻る。
 肌を刺す吹雪と榴弾の余波にも構わず、細身の肢体が躊躇なく交通壕ょ駆ける。短く乱れた呼吸が、白い霧となって宙に消えていった。
「それにしたって、ちょっと激しすぎない~?」
 跳ねる土塊と木片を踏み、身体を投げ出すようにして退避壕へと転がり込む。次の瞬間、砲弾が着弾し、彼の背後を爆炎が包んだ。強烈な爆風が彼の身体を押し、膝を突いた足元の雪を弾き飛ばす。
「指定された射点まではもうちょっとよ! 大丈夫、大丈夫。美少年に砲弾はあたらないわ!」
 スピカの脳内に女性の声が響く。スピカの愛銃である星銃・アストライアーの物であった。あまりにも能天気な発言に根拠を問えば、星々がそう言っています! といつもの通りのごり押し返事。まぁ、全く根拠がないよりかは良いのかなぁ。スピカは立ち上がり、再び交通壕を走る。
 あいも変わらず砲撃は激しかったが、不思議とルート上に熱と弾殻が降り注ぐことは無かった。スピカは星々の導きへの評価を密かに上方修正する。調子に乗ることは分かり切っているので、アストライアーには内緒である。
 指定された掩体へと滑り込んだスピカは、背負っていた雷砲・リンドヴルムを構える。飛竜を素材とした長大なレールガンは、この世界に存在する規格化された小銃とは異なる異彩を放っていた。
『指定掩体に到着~。レナ、射撃誘導よろしく』
『わかりました。敵は先ほどの前衛と同じ陣形を保ち、|第一火力集中点《KP1》を突破しつつあります。先頭の大型を狙って下さい』
 銃身を射撃掩体の縁に依託し、砲煙の隙間から見える敵の隊列に狙いを定める。レナからの支援によって、立ち込める炎と煙越しにも目標である大型機甲の機影がうっすらと浮かび上がっていた。一つ息を吐き、引金を絞る。
 雷鳴が轟き、蒼光が吹雪を引き裂いた。炸裂する雷光が空間を焼き、凄まじい衝撃波が雪を弾き飛ばす。
 電磁投射機構によって放たれた弾丸は、莫大な運動エネルギーによって大型機甲の分厚い装甲を破砕する。命中した躯体中央側面から伝わった衝撃は大型機甲を大きく仰け反らせると同時に、内部に存在するあらゆる制御機構を粉砕した。
 機体が激しく揺れ、大型機甲を支える多脚が痙攣するように震えると、糸の切れた人形のように擱座し、オイルと煤によって汚れた地面へと擱座する。
『敵大型沈黙。反撃が来ます、可能であれば周辺で敵の注意を惹いてください』
『りょうかい~!』
 レナの警告が終わるや否や、射撃掩体の周りに無数の榴弾や小型機甲の機関砲弾が突き刺さる。スピカは掩体の縁から慌てて頭をひっこめた。
「一発撃ったら百発返って来るわね」
 アストライアーの言葉は決して大げさではない。現状反撃を試みるている火点がスピカのそれしかない以上、ある種当然の反応であった。
「それじゃ、こっちは三〇〇発でお返ししよう」
 幸いなことに、敵の位置は小型機甲に至るまで頭の中に入っている。レナの支援の賜物であった。
 スピカは周囲の射撃掩体に自らの分身を展開し、敵の反撃が収まったタイミングで意を決したように再び顔を出す。
 敵尖兵二個小隊と一人の√能力者が、正面切った火力戦を展開しようとしていた。

 敵は再構築された|火力集中点《KP1》を突破しつつあり、陣地直前の川を流れる橋に達しようとしている。突撃破砕線にも設定されている橋を突破されれば、残る抵抗の手段は至近距離での白兵である。そうなれば組織的な後退どころではない。陣前に迫る敵尖兵の中衛を是が非でも押し返す必要があった。
 幸いにして、敵中衛はスピカが形成した弾幕への対処のために散開し、注意を彼が形成した火点へと向けている。不意を突くには絶好の機会であった。
『鴉鉄さん、敵の側面が空きました。敵集団の攪乱をお願いします』
『任務了解。|W.E.G.A《ウェーガ》、吶喊する』
 丘陵の背後、吹雪の帳の向こうから、一筋の黒影が跳躍する。決戦仕様WZ、|W.E.G.A《ウェーガ》。機神・鴉鉄が操るその機体は轟音と共に戦場へと飛び込んだ。
 推進機関の咆哮が大気を裂き、圧縮空気と燃焼ガスの爆発的な排出が降り積もる雪を吹き飛ばす。W.E.G.Aは地を蹴ると、地形の高低差を無視するかのように、学兵たちが籠る丘陵を一息に乗り越えた。高度を上げた機体の背面に、乱気流が発生し、空気を震わせる。
 眼下には、スピカが形成した火点を制圧すべく猛射を加える敵部隊中衛。吹雪の帳に閉ざされている筈の視界は、レナの支援によって敵部隊の機甲一機一機の影が浮かび上がっている。
 機体が降下に転ずると同時に、鴉鉄は連装誘導弾発射機を起動。機体に搭載された火器管制装置が照準用レーザーを敵部隊全体に照射し、大型と中型の機甲兵器の位置をミサイルへと入力する。射撃諸元の入力が完了されたことを特徴的な電子音によって知らされた彼女は、躊躇なく操縦桿と一体化した引金を引き絞った。
 発射機からミサイルが次々と射出され、赤い粒子をなびかせながらを敵部隊へと殺到する。部隊の先頭を陣取る機甲兵器へと吸い込まれるように突き進むそれらは、着弾の瞬間、凄まじい爆発を引き起こした。
 ミサイルの弾頭を形成していた徹甲炸裂焼夷弾は、分厚い装甲を貫通し、その内部で炸裂することで広範囲を焼き尽くす。敵機甲兵の装甲が破裂し、内部構造ごと燃え上がった。大型機甲は砕けた足をもがきながら倒れこみ、中型機甲は胸部を貫かれ、炎を噴きながら沈黙していく。
 赤い粒子が、爆炎の中に舞う。
 ミサイルの炸裂とともに飛び散ったそれは、炎の中で不規則な軌跡を描きながら宙に舞い、白に支配された世界に不吉な程の美しい情景を作り出す。
 人工的に形成された地獄の只中に着地したW.E.G.Aを躍動させ、鴉鉄は生き残りの大中機甲兵器を狩るべく行動を開始する。
 鴉鉄はさらに推進機関を噴射し、地面を滑るような機動で敵部隊中央へと切り込む。徹甲炸裂焼夷弾の着弾によって混乱した敵部隊の陣形は乱れているが、それは決して長続きするものではない。その証拠として、新たなる敵手を認識した大型機甲の一機が、巨大な砲塔を回転させ、鴉鉄とW.E.G.Aを捕捉せんとしていた。
「反応が早い。だけど、所詮は――」
 センサーによって齎された情報を基に、W.E.G.Aの機動を予測した大型機甲は、標的の未来位置に向けて徹甲弾を放つ。しかし、その砲弾が鴉鉄とW.E.G.Aを捉えることは無い。彼女は直前で重力慣性制御装置を起動することで、機体の運動ベクトルを急激に変更させていたのだった。
「自動制御の機械。そういう動きだ」
 ほぼ直角に近い軌道変更で敵大型機甲へと機体を肉薄させた鴉鉄。W.E.G.Aが腕部を機甲の装甲へと叩きつけると同時に、炸裂加速式杭打機が敵の装甲を文字通り粉砕する轟音が響き渡る。
 まずは一機。即座に離脱し、廃墟を盾に敵部隊の応射を回避する。鴉鉄の行動に呼応する形で友軍陣地からは対機甲兵器が相次いで発射され、彼女に気を取られた大中の機甲兵器を爆炎で包んでいく。
 敵部隊の足は完全に止まった。これは、学兵部隊にとって後方の陣地へと後退する絶好の機会であることを意味していた。

 スピカと鴉鉄によって敵部隊の足が止まったことを好機として、陣地に籠る第一中隊は後方陣地への後退を決断した。
 このまま陣地に籠って交戦する事も可能ではあったが、相次ぐ敵の砲撃によって半ば崩壊した陣地は、この先展開されるであろう機械群との白兵戦等に耐えられるものではない。即座に後退要領に沿った命令が発せられ、隷下の小隊が順に後退を開始する。
 崩壊しかけた中隊陣地に最後まで残る部隊、即ち最も危険な殿を務める部隊は、神崎蓮奈率いる第二小隊であった。
『敵部隊、小型機甲が突撃破砕線に差し掛かりつつあります……!』
 やや切迫したレナの思考が蓮奈の脳内に流れ込む。先ほどまでの戦闘で、彼女の小隊からはおおよそ一個分隊単位の人員が損失している。負傷者は中隊の後退にあわせてなんとか後送したものの、陣地に横たわる亡骸は放置するしかないだろう。
 戦闘開始当初は恐怖に麻痺していた思考は、今や澄み渡っている。人間意外と順応するものだなと思いながらも、小隊員に着剣を指示した時は流石に声が震えた。小隊が保有する軽迫と各分隊の火線を集中させ、なんとか敵尖兵の小型機甲を押しとどめる。
 それに失敗した時は? まぁ、そういう事だ。意識した瞬間、蓮奈は胃の奥で虫が動き回るような悪心を感じた。
「蓮奈指揮官」
 蓮奈は声をかけられた方向へと振り向く。見慣れたサクラの顔ではない。ジュヌヴィエーヴ・アンジュー。人形のように無機的な欠点を介した顔がそこにはあった。劣悪な塹壕の中で活動していたにもかかわらず、雪の様に白い肌には汚れ一つない。
「アルテミシアの配置が完了しました。各射撃掩体に複数。陣地前縁に置いていますから、弾避けにもなるかと」
 どこまでも冷静なアンジューの声が、蓮奈の思考を現実へと引き戻した。
「ありがとうございます。アンジューさんは私と同じ小銃掩体についてもらいますか? その、レーダーでしたっけ。離脱の頃合いを図りたいので」
 心中でもしもすべてがうまく行ったならば。という言葉を付けたしながら発せられた蓮奈の問いに、アンジューは肯定の意思を込めて頷いた。
「サクラさんは?」
「ああ、各分隊を最後に見て回っています。分隊長はいるんですけど、学生ですから。彼女に監督してもらう方が色々と」
 安心できるという事か。アンジューは得心すると、蓮奈と共に割り振られた小銃掩体へと移動する。
 砲撃によって半ば崩壊した交通壕には、動かなくなった学生の亡骸が――あるいが亡骸と思しきものが――横たわっていた。
 戦場の、懐かしい空気。返ってきたのだなと、アンジューは遠い過去に思いを馳せる。
 あの頃に比して能力は比べるまでも無いけれど。感傷に浸ってしまったことを自覚した彼女は首を振り、現実に意識を戻す。
 小隊が突撃破砕線として設定していた橋に、小型機甲の群れが足を踏み入れようとしていた。

『小隊、対小型機甲、FPL。侵入し次第射撃!』
 無線越しに、蓮奈の射撃命令が小隊無線に響き渡った。小型機甲がは市へと足を踏み入れると同時に、半ば土に埋もれた中隊陣地から無数の火線が殺到する。
 レナの支援によって、雪と煙によって閉ざされた視界の中でも敵の輪郭が確認できるため、射手のほとんどが学兵である事を差し引いても命中率は悪くない。小型機甲は学兵が手にする小銃と自律砲台、そしてアンジューが配置したアルテミシアから相次いで放たれる銃弾は、迫りくる小型機甲をなぎ倒していく。
 しかし、恐怖を知らぬ機械兵器たちは残骸と化した機体を乗り越え、じりじりと陣地線へと迫る。小隊に残された軽迫が急射を開始し、敵の隊列最前方を叩き続けるが、機械の濁流は止まらない。
『二分隊、三分隊は予備陣地に後退、一分隊は援護』
「ホーネット、展開します」
 アンジューが操るホーネットが陣地上空へと飛翔し、予備陣地に後退する分隊に迫る敵群を薙ぎ払う形で高エネルギー粒子の奔流を照射する。
 一瞬にして超高温に熱せられた小型機甲の装甲は飴のように融解し、雪と土との混合物と化して坂道を転がり落ちる。後続がホーネットを牽制するために対空射撃を加え始めるまで敵の動きをせき止めたドローン群が徐々に後退すると同時に。|既に分隊が放棄した掩体《・・・・・・・・・・・》から、再び無数の火線が小型機甲の群れへと殺到した。
『二分隊、三分隊、状況知らせ』
『両分隊とも予備陣地まで後退を完了しています』
 些か混乱したような蓮奈とサクラのやり取りを聞きながら、アンジューはその正体を察していた。戦場全体を管制するレナもまた同様であった。
「陣地の穴を埋めたのは、おそらく私たちと同じ√能力者です。だとするならば」
 アンジューはミネルヴォワから得た陣地正面の情報と、レナから共有された情報を統合する。後退を可能とする目が出てきた。瞳に希望が戻りつつある蓮奈の様子を認め、同じような考えに至っていることを確認した彼女は、蓮奈に向かって改めて口を引いた。

「まぁ、焼け石に水でしょうけど。こんな状況なら使い道もあるってことね」
 雪と硝煙に包まれた戦場に立つ少女。ピンクと白を基調とした可憐な衣装を纏い、フリルのついたエプロンドレスの裾が風に揺れている。戦場の陰鬱な景色の中で、長く波打つ髪は非現実的なまでに美しく、光をはなっている。
 タルパとは、本来人々のイメージが形作る人工の霊体。学兵たちのイメージから肉体を構築し、空になった射撃掩体に再構築したアリス・セカンドカラーは、自身の思いつきが思いのほか上手く型にはまった様を見て満足げに息を漏らした。
 陣地に出現した学兵のイメージは、あくまでも仮初の肉体に過ぎない。|身体能力《スペック》は本来の学兵にも及ばないものの、小銃が握れればそれでよい。肉壁としての役割を果たせればそれで充分。その程度の割りきりで構築した急造部隊は、陣地全体を統制しているレナの情報支援と、アンジューの射撃管制レーダーから齎される情報をつまむことで、当初の想定以上に有力な火点としてその役割を果たしていた。
 仮に小型機甲との白兵戦になったとしても、失われるのは人命ではない。イメージ形成に利用した食材は、お世辞にも決して良いものとは言い難かったが、出現させるタイミングと運用の仕方。そして少しの味付けによってかくの如き働きを示すに至ったのは、アリスの混沌魔術師としての妙技を示している。どの世界においても、アリスはアリスであった。学兵たちの精神に不可逆的なダメージを負わせない戦い方を選んだのは、彼女なりの気遣いであろう。
「ここで終わらせるのも面白くないものね。彼女達には、もうちょっとかんばってもらいましょう」
 過酷な戦場を見下ろし、アリスは嫣然と微笑む。第二小隊は、能力者の支援の下、後退に成功しつつあった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

ビッグ・タイガー
『任務了解』
『時間的猶予の獲得に務める』
『武運を』
(手短な文章通信またはラジオ音源の継ぎ接ぎで友軍とやり取り)

いつも通りの仕事だ
おれにヘイトを向けさせ、友軍の盾となる
その為の|重甲《ヘヴィーメタル》だ
融合装甲なら、そこらの瓦礫や撃墜した敵機を取り込む事で修復も可能
継戦能力を盾に攻撃を受け止め、その威力を再現する長い腕部を再構築
推進力と遠心力に任せて全力で叩きつける
足を止めたら蜂の巣だ
敵機を文字通りに掻き分けながら移動していく

心情
(死に場所を選ぶのも人間の〝自由〟だ)
(そいつに口出しする権利も義務もおれは待ち合わせちゃいねぇ)
(なら、精々全うさせてやる)
(最後に残った〝自由〟まで奪わせるかよ)
テクニカル・一三七四
任務了解です
かなり厳しい状況の様ですが私も後退の支援に加わります

私は一応の装甲型の兵力であるWZ中隊を中心に援護し可能な限り長く持たせます
最終的に押し込まれるであろうとはいえ彼等の生存時間が伸びれば多少は後退にも余裕が出来るはずです
その為に【前線拠点】を使用、自身と同型少女人形で構成される小部隊を派遣して貰いWZ中隊の随伴として動きます

私達は使い潰しても問題は無いので、可能な限り彼らの生還に力を尽くします

●歩戦協同
 既に主が去った第一中隊の陣地正面。つい先ほどまで熾烈な戦闘が行われていた国道沿いには、第一中隊が後退するまでに撃破された機甲兵器の残骸が散乱していた。
 引き裂かれた装甲板や爆散の衝撃で廃墟に突き刺さった砲塔。道路を埋め尽くすかのように小切れの断片となった小型機甲の骸。訓練も不十分な学兵と√能力者達が、死力を尽くして戦った証。それらが無秩序に積み重なり、銃壁の如くO市街へと至る道を封鎖している。
 第一中隊と√能力者達が最初の防衛陣地で行った戦闘は、おおよそ一時間に及んだ。
 多くの者にとって永遠にも感じただろう一時間の戦闘によって、敵尖兵はその戦闘力の大半を喪失したものの、未だ数機の大型機甲とそれに随伴する中型機甲を残している。後退する第一中隊を追撃し、捕捉するには十分な戦力であった。
 第一中隊が突撃破砕線として設定した橋を乗り越え、先頭を進む大型機甲が、砕けた装甲板を地面へと押し潰しながら進む。後続する中型機甲もまた、機械の屍を気にも留めることなく通過していく。主を失った陣地は小型機甲によって制圧され、崩れかけた交通壕や掩体には黒い影が群がっていた。
 丘を迂回する様に曲がる国道を進み、無傷の大型機甲は第一中隊の殿、即ち第二小隊の車列を捕捉するに至った。
 大型機甲はゆっくりと砲塔を旋回させる。吹雪に霞む光学センサーの先には、丘陵を越えてなお後退を続ける第二小隊の車列が映し出されていた。撤退中の学兵たちは、すでに限界に近い。装甲を持たないトラック群が無防備に晒されている以上、ここで砲撃が加えられればひとたまりもない。
 砲塔の旋回が停止し、榴弾が装填される。照準用レーザーと連動した射撃管制装置から発射信号が送られようとした、まさにその時であった。
 倒壊した住宅の残骸から、突如として巨影が躍り出た。
 瓦礫を跳ね飛ばし、武骨な機体が大型機甲へと急接近する。機体表面は戦場の廃材を取り込み、既存の装甲と融合させながら形を変えていく。
 そのような能力を持つ√能力者は、この戦場において唯一無二。旧型の改造重戦車そのものが意思を持った闘志。即ちビッグ・タイガーである。
 大型機甲の近接警戒センサーが最大限の警告を発する。高脅威の接近対象。砲塔を旋回する余裕はない。巨影はすでに射程内にいた。
 都市に散らばる瓦礫がタイガーの装甲へと巻き込まれ、融合する。大きく、あまりにも大きく形成されるは、鉄と瓦礫の巨槌。直撃すれば大型機甲ですら粉砕し得る、質量の怪物であった。
 吹雪を裂き、僅かに差し込む陽光に輝く鉄塊が振り下ろされる。巨大なメイスが装甲を捉えた瞬間、分厚い金属の塊が波打ち、砕けた。
 砲塔が根元から歪み、接合部が悲鳴を上げて裂ける。機体全体に衝撃が波及し、内部機構が連鎖的に崩壊。駆動部が千切れ飛び、脚部の油圧機構が制御を失う。
 圧倒的な質量の暴力の前に抵抗する事も出来ず、大型機甲は膝を折った。もはや兵器の形を保っていない。瓦礫の山と化した巨体が、吹雪の中で沈黙する。
 あまりにも非現実的な有様をトラックの荷台から眺める学兵たちは、ただただ唖然としてタイガーの雄姿を眺めている。先ほどまでの戦闘によって身も心も消耗しきった少年少女たちの姿を、タイガーは光学センサー越しに見送った。
『武運を』
 学兵たちが分隊単位で装備する無線機を介して、ただ一言。機械的な音声が響き渡る。自分達に向けて鉄塊を掲げる鋼鉄の巨人の姿を見れば、音声の主がタイガーであることは誰であっても察する事だろう。
(死に場所をどこに定めようと、それは人間の"自由"だ)
 車列が敵の射程から逃れたことを確認したタイガーは、S市方向へと振り返る。学兵たちが次の陣地で準備を整えるまで、この場に踏みとどまる事。それが、〝彼〟が、自らに課した任務であった。
(精々、全うさせてやる)
 かつて陸戦の覇者と呼ばれた戦車。その威風はいまだ健在である。タイガーの存在そのものが、敵の注意を引きつける盾としての役割を果たしていた。
 鉄塊を肩部に担ぎ上げ、強力な敵を包囲せんと散開する敵機甲をタイガーの砲塔が睥睨する。次なる得物に向けて重戦車が吶喊を始めると同時に、彼の光学センサーは敵部隊の側面に突き刺さる無数の白煙を捉えていた。
 
 吹雪の中、鋼鉄の獣を標的とした敵機甲部隊の側面。そこへ向けて、無数の白煙が自ら意思を持つかのように飛び込んでいく。次の瞬間には、戦場全体を震わせるかのような破裂音が鳴り響いた。
 敵部隊がタイガーへの包囲を完成させると同時に実施された、WZ搭載型対装甲兵器ミサイルによる一斉攻撃。第一中隊の後退を援護するために機動したWZ中隊から放たれたミサイルは、絶妙と表現すべきタイミングで敵部隊に到達する。
 その部隊行動は、学兵たちのそれと異なり明らかに洗練されている。WZ中隊を構成するのは、専門的な訓練を受けた正規兵であった。
「なんとか、間に合いましたか」
 WZ各機に随伴する様な形で並走していたピックアップから、複数の人形達が降車する。その先頭に立ち、全機がほぼ同一機種の人形部隊を率いるのはテクニカル・一三七四。その名が示す通り、この世界でも多用される即席の戦闘車両を基にした少女人形であった
 敵機甲部隊の側面を撃破し、陣形を崩した後も、WZ部隊の攻撃は途切れることなく続いていた。敵の懐で暴れまわるタイガーの動きに呼応する形で部隊を運動させる。瓦礫を盾にしながら、相互に援護し合うように火力を展開し、機動と射撃を繰り返しつつ敵を逆包囲せんと試みている。
 しかし、戦闘機械群もまた高度な部隊内ネットワークを十全に生かし反撃を続けていた。擱座した中型機甲の一部が砲塔を旋回し、火線を構築。さらに、散開した小型機甲群がタイガーやWZの死角を利用しながら機動し、攻撃の妨害を試みる。
 一機一機の火力はタイガーやWZにとって脅威とならずとも、その数と隠密性は時に致命的な影響を与える。その脅威を排除すべく動いたのが、一三七四率いる少女人形部隊であった。
「各分隊、WZ部隊との間隔に注意。機動兵器の死角に回り込む脅威を排除します」
 彼女たちは、前線拠点を用いた即時展開により、WZ部隊とタイガーに対する随伴支援を実施すべく駆けつけていた。
 機動歩兵として調整された一三七四とその部隊は、装甲戦闘車両ほどの耐久性を持つ軽機甲装備を着込み、機動力を活かした戦闘を展開する。彼女達にタイガーやWZ程の装甲は無いが、純粋な歩兵ほど脆弱でもなかった。
 一三七四と彼女が率いる部隊の目的は、自らの特性を生かした迅速な配置転換によるWZ部隊への追従と、小型機甲の掃討。
 WZ部隊の射線に沿うように前進していた彼女たちは、散開する小型機甲の位置を即座に把握し、瓦礫と瓦礫の合間を駆け抜ける形で柔軟に部隊の位置を調整する。
 それぞれが手に持つ標準的な――そして信頼性のある――機関砲が各所で火線を形成し、タイガーや友軍のWZに接近する小型機甲の群れを薙ぎ払う。正確無比な射撃によって次々と制御を失った小型機甲は、機甲兵器に取り付くという目的を果たせぬままに降りしきる雪の中へと沈んでいく。一三七四率いる少女人形部隊は、機甲戦力が欲する随伴歩兵としての役割を粘り強く果たしていた。
 タイガーの大胆さと一三七四の冷徹さ。共に人ではない√能力者の活躍は、友軍部隊の限定的な反撃を大いに助けると同時に、学兵部隊に再編の時間を与えたのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

丹野・脩里
あぁもう気が滅入る……!
(自身が死んだ時を思い出す。と言っても、戦闘の規模感は段違い。戦況は嘗ての方がキツかった――まかりなりにも生前からエリートだ、投入される作戦は相応に過酷かつ重要だった――
しかし、此方はコチラで嘗てには無かった『悪さ』がある。ソレは閉塞感に他ならない
もう、どうにもならないという諦観
出来ることと言えば『逃げるための行動』だけ、ソレもうまく行くかといえばどうにも……といった感)

潰したいなぁ間接火力
けどその前に、差し迫った脅威――戦闘偵察斥候を片付けないことには最低限の時間稼ぎすらままならなさそうです

とにかく間接火力にコッチの位置とかを気取られたらアウトです、派手になる技は露見しやすそうなので今回はNG
となれば、今回は敵をちまちま捜して確実に叩いて減らすのが正解ですかね?
ウォーゾン着用して、探索。憑依覚醒を使っておけば不意打ちもしやすいですね。見つけさえすれば、コッチから行かんでも引き寄せて叩けばOKですから
あと、ウォーゾーンのダメージは工兵の領分でパパッと自前修理です

●死人でなく、悪魔憑きでなく
 眼下に見える都市は、もはや都市と呼べる形をしていなかった。
 戦火によって焼かれ、風化するよりも早く破壊された街。今この場で戦っている人間達と戦闘機械群が去れば、ただ雪に埋もれていくだけの運命が待っているのだろう。或いは、S市と同様、あの趣味の悪い機械都市へと作り替えられていくのだろうか。
 WZの装甲越しに、再び轟音が響く。友軍の重迫から吐き出された榴弾が、未だ原形を保っていた市営団地へと着弾し、周囲の小型機甲ごと生活の後を瓦礫へと変えていった。
 かつては活気に満ちていた筈の店も、家も、ただの崩れたコンクリートと金属片の塊となり、細かく砕かれた破片が雪と混じって沈んでいく。
「――あぁもう、気が滅入る……!」
 戦闘工兵仕様のWZ、カルキノスの冷え切ったコクピット。薄い肢体を前傾させたような姿勢で、丹野・脩里は忌々し気に吐き捨てる。
 彼女にとって、このような光景は見慣れている筈であった。むしろ、より救いのない光景が、彼女の継ぎはぎの――しかし、明らかに彼女の物である筈の――記憶の中からフラッシュバックする。思い返すだけでも胸が悪くなるような、死という安息に縋りつきたくなるような光景。しかし、眼前の光景は、それらとは違う明確な『悪さ』がある。
 脩里の記憶の中の戦場では、後方があり、側面を固める友軍があり、反撃のための予備戦力があった。精鋭と評して間違いない自身と仲間達が投入される戦場。自分たちの戦果によって、或いは死によって、友軍は幾許かの勝利を手にする余地があった。
 O市における戦闘には、それがない。
 彼我の戦力差は圧倒的で、O市は確実に失陥する。この戦場に勝利や希望などと言った光を感じさせる言葉は存在しない。あるとすれば、ただ死への時間を先延ばしたという事実だけ。
 誰もがそれを薄々と感じている。降り積もる雪の様に堆積した絶望と、空を覆う曇天のような閉塞感。避難民たちにしても、この場で踏みとどまる学兵たちにしても、すべてが同じ結末へと向かって流れているような気がしてならなかった。
 生来決して明るくはない性格が故だろうか。これ以上思考を巡らせても碌な考えが浮かんできそうにない。やや自嘲に近い思考を最後に、脩里は意識を再び敵情の観察へと向けた。
 重迫の着弾が敵尖兵と主力を遮断する様な場所から、敵尖兵の頭を叩くような場所に変わっている。瓦礫や建物の合間を火点として抵抗を続けていた友軍のWZ中隊が、急速な後退へと転じつつあるのだ。友軍の支援射撃の状況から友軍の意図はおおむね理解できる。脩里はその自己認識に違わぬ精鋭であった。
 重迫の急射によって頭を押さえられながらも、恐れを知らぬ機械の兵士達は整然と前進を再開する。√能力者と友軍の奮戦によって尖兵部隊はほぼその戦闘力を喪失しているが、後方からそれに倍する兵力が合流しつつあった。
「……あんなのに単独で挑みかかるなんて、英雄志望もいいところですね」
 生前の脩里であれば、決して実行に移さぬであろう行動。しかし、√能力者となった彼女であればやりようはある。決して望んで得た能力ではないが、持ってしまったものは仕方がない。
 瓦礫の影を利用しながら、脩里は慎重にカルキノスを敵部隊へと接近させる。敵も主たる脅威であるWZ中隊の後退は認識しているだろうが、少なくとも戦闘機械たちの辞書には"油断"などという文字は記されていない。
 目標は、敵部隊の中核を成す大型機甲。装甲は極めて厚く、生半可な火力では直撃させてもその装甲を貫徹しえないが、決して無敵の存在ではない。駆動部、関節部、冷却機構の排熱口。狙うべき場所を狙えば、対装甲ミサイルのような高価かつ補充の難しい兵装ではなくとも撃破は可能である。脩里はそれを知識と経験双方で理解していた。
 脩里の身体が一瞬、名状しがたい感覚に捕らわれる。自らに練り込まれた存在が、体の一部を作り変える感覚。筋肉が変異し、体の中を蟲が這い回るような感覚が脩里の正気を蝕んでいく。
 決して愉快ではない過程を経た対価として、脩里の意識と感覚は一時的に拡張される。空間そのものを引き裂く腕を得た彼女は、大型機甲とカルキノスの間に存在する物理的な距離を、文字通り|引き裂いた《・・・・・》。
 周囲の空間が歪み、数百メートル先の大型機甲がわずかに揺らぐ。不可視の力によって引き寄せられた大型機甲は、次の瞬間には脩里の至近距離へと転移していた。大型機甲の光学センサーが、物理法則を無視した現象に戸惑うかのように揺れる様が見える。脩里は即座に射撃用のトリガーを引き絞った。
 高圧炸薬が炸裂し、カルキノスの装備していた対WZライフルから放たれた大口径弾が大型機甲の装甲に衝突する。しかし、脆弱部と言えど厚い装甲は、直撃を受けながらも容易には貫かれない。装甲が削れ、金属片が飛び散った。
 脩里は表情を変えることなく再びトリガーを絞る。何度も、何度も、何度も。WZの装甲越しに伝わる振動によって痺れることを意に介さず、執拗に同一点へと大口径弾を浴びせかける。
 撃ち込まれるたびに装甲に亀裂を発生させていった弾丸は、遂に大型機甲の関節部を打ち砕いた。油圧機甲から噴き出したオイルが血液の様にカルキノスの装甲を汚す。制御維持を担っていた脚部に深刻な損傷を追った重厚な機体は次第に制御を失い、自らもまた瓦礫の一部と化した。
 衝撃音が轟き、周囲の機甲兵器が一斉に砲門を新たなる挑戦者へと向ける。脩里は再び空間を引き裂き、今度は自らの機体を百メートル程離れた瓦礫の影へと退避させる。瞬間、数秒前まで彼女が存在していた位置は無数の榴弾によって破砕されていた。
 先ほどの射撃で無理をさせ過ぎたカルキノスの腕部が警報を上げている。どうやら駆動部に障害が発生したらしい。
「へ、へへ……なんとかなるもんですね。この調子でもう少し、削りませんとね」
 例え定められた死を先延ばしにするだけの戦闘であっても、彼女が手を抜く理由にはならない。
 彼女は|死人《デッドマン》であり、|悪魔憑き《ディーモンホスト》である前に、一人の兵士であるのだから。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 集団戦 『ナイチンゲール』


POW ナイチンゲールドライブ
【超高速飛翔突撃】で近接攻撃し、4倍のダメージを与える。ただし命中すると自身の【背骨】が骨折し、2回骨折すると近接攻撃不能。
SPD オプショナルメカニック
移動せず3秒詠唱する毎に、1回攻撃or反射or目潰しor物品修理して消える【小夜啼鳥型ロボット】をひとつ創造する。移動すると、現在召喚中の[小夜啼鳥型ロボット]は全て消える。
WIZ ナイチンゲールライド
事前に招集しておいた12体の【ナイチンゲール部隊】(レベルは自身の半分)を指揮する。ただし帰投させるまで、自身と[ナイチンゲール部隊]全員の反応速度が半減する。
イラスト 稲咲
√ウォーゾーン 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

●我々が我々であるために
 火力支援型の機甲兵器が行う砲撃。その轟音に紛れる様な形で、急な斜面を描く雪山にごく短い発砲音が連鎖した。
「……せっかく掌握したユニットにはあててないでしょうね」
「当然です。無駄な労働はしたくありませんからね」
 XM250が発した皮肉交じりの返答を受け、XM7は憤然と鼻を鳴らす。彼女は無傷の小型機甲に向けてずんずんと雪をかき分けながら接近していく。発砲前にXM7が制御を完全に掌握したその機体は、この場において唯一損傷の無い機体でもあった。
 周囲には、同型の小型機甲が哨戒用の隊形を保ったまま雪面に倒れ伏している。その有様は、小型機甲によって構成される哨戒部隊が、完全な奇襲の内に無力化されたことを示していた。
 XM7の動きに合わせて、残った三体の人形が周辺警戒を実施する。再び連鎖する様な砲声。SCAR-L率いる長距離偵察部隊は、O市に向けて展開している戦闘機械群の砲兵陣地の至近まで進出する事に成功していた。
 決して豊かとはいえない生産基盤しか持たない人類にとって、長射程の対地ミサイルは一発たりとも無駄には出来ない貴重品である。彼女たちは、その射撃誘導を実施するため、敵砲兵の位置座標を特定すると同時に、友軍に対して通報する任務を与えられていた。
「うん、大丈夫。ネットワークモジュールはまだ生きてるわ。隊長、こいつを介して侵入できそう」
「よろしい。XM7、その機甲を介して敵ネットワークに侵入しろ。SCAR-Hはセカンダリレベル上での電子戦をサポート。XM250は私と周辺警戒」
 無論、一介の歩哨に過ぎない小型機甲は火力調整を行うためのネットワークへのアクセス権限を持たない。部隊内部で最も高度な電子戦モジュールを装備するXM7は、手始めに歩哨がアクセス可能なネットワークを介し近距離警戒監視を指揮するユニットへと侵入する。
「……入った。思ったより指揮系統はシンプルだけど、座標の通報以上の事をすると逆探されるかも」
「歩哨の展開位置を共有しろ。離脱経路を算出する」
 警戒監視指揮ユニットから護衛部隊の部隊間ネットワークへ。部隊間ネットワークから護衛部隊指揮ユニット、そしてさらに上位の指揮ネットワークへ。末端の歩哨ユニットから戦闘機械の指揮系統という電子的な大木を駆け上っていく。数分もかからぬうちに、XM7は敵砲兵を統括する火力分配ユニットの制御を一時的に掌握する事に成功していた。
「敵の通信用アンテナから、最大出力で部隊の位置座標を送ってやったわ!」
「O市の部隊も、まだ頑張っているみたいよ」
 XM7とSCAR-Hからの報告に、SCAR-Lは一瞬躊躇するような表情を見せる。しばしの沈黙の後、何かを決断した様子で彼女は再び口を開いた。
「XM7、O市に展開する敵の戦術ネットワークに枝は張っているな?」
「いくつかは。……もしかして――」
「欺瞞情報を送っておけ。可能であれば指揮ユニットへの電子攻撃も許可する」
 SCAR-Lの指示に、XM250が驚いたように振り返った。
「O市に残った学兵さん達は、それほどのリスクを取ってまで収容する価値のある目標なのでしょうか」
 敵の火力アセットを攻撃するという戦術上の価値は言うまでも無い。しかし、敵の戦術ネットワークに電子攻撃を仕掛けるという行為は、どう楽観的に考えたとしても、O市に残置された学兵部隊を支援する以上の効果を産むことは無いだろう。学兵より遥かに高価なアセットであるハイエンド人形で構成された部隊が、積極的に取るべき行動とは言えない。XM250はその事実を遠回しに指摘していた。
「彼らそのものに、特段の価値はない。彼らは、ひいき目に見積もっても欠編制の連隊戦闘団にすぎない」
 それで? 続きを促す言葉とは裏腹に、XM250の表情に棘はない。ただ純粋な興味の色のみがあった。敵への電子攻撃を終え、セカンダリレベルから復帰したSCAR-HとXM7もまた、周囲を警戒しながらSCAR-Lが次に発する言葉を待った。
「価値のない部隊を救うという行為は、それそのものに価値がある。|人類《われわれ》が、|人類《われわれ》であり続けるために」
 他に言いたいことは? SCAR-Lの口調は何処までも淡々としている。XM250は降参した様に肩をすくめながら再び口を開いた。
「この作戦が終わったら、高技能人形の労働組合を組織しようと思います」
「残念だけど、人形に団体行動権はないわよ、XM250」
「では、権利運動からですね。XM7もどうです? シュプレヒコールの先導とか、得意そうですけど」
「ちょっと、それどういう意味よ」
「無駄口はそこまでにしろ。 各機、準備は良いな? 回収部隊との合流地点まで離脱する」
 少なくとも、この場における任務は果たした。四体の少女人形は、再び音もなく後退を開始する。
 火力支援型の機甲兵器によって構築された砲兵陣地に、クラスター弾の雨が降り注いだ。

●対空戦闘
 敵部隊の前進にじりじりと押し込まれるような形で、蓮奈率いる第二小隊を含む集成第二戦闘団は、O市内の建物や廃墟を即席の火点として活用しながら辛うじて抵抗を続けていた。
 戦闘開始から、おおよそ四時間。そう、僅か四時間なのだ。頑丈なだけが取り柄の支給時計を見遣った時の衝撃が忘れられない。一時限目から四時限目が終わる程度の時間で、集成第二戦闘団の基幹を成す学兵二個中隊は、双方を足し合わせてやっと一個中隊が充足されるという程度にまでその戦力を喪失していた。
 √能力者たちの支援がなければ、とうの昔に壊滅していたことだけは間違いない。少なくとも蓮奈はそう確信している。
 もはや予備は無く、中隊本部を含め全小隊が横並びに壁を形成する様な形で展開しているらしい。最後に聞こえた中隊指揮系からは、そのような内容を|中隊長《学年主任》が話していた。第二中隊を率いていた中隊長は、本部ごと敵の砲撃でやられたそうだ。
 隙間から漏れ出た機甲兵器はWZ中隊が処理しているらしいが、それにしたっていつまで続けられるかわからない。小隊が保持する弾薬だって、底を突きつつある。WZ部隊だって似たような物だろう。
 蓮奈は恐怖が完全に麻痺した思考を抱きながら、後退していく敵部隊を見送った。幸いなことに、√能力者たちはまだ頑張ってくれるつもりらしい。朝から執拗に降り注いでいた砲撃が弱まりつつあるし、敵部隊の攻勢もやや散発的になりつつある。悪いことばかりではないな。彼女は自らを強引にそう勇気づけ、小隊本部とは名ばかりの廃墟の影から這い出した。
「分隊の状況を見てくる」
「指揮官殿、よろしければ、私が引き受けますが」
「いいよ、気晴らしにもなるから。サクラはここで周りを見ていて」
 そうですか。サクラの気遣わしげな視線を察せられる程度に、自分にもまだ人間性が残っているらしい。僅かな安堵と共に、蓮奈は火点の一つであった洋服店の残骸へと足を踏み入れた。
 まだ屋根はあるから、辛うじて廃墟と言えるかな。そんな益体の無い思考は、折り重なるように倒れる二つの影を見た瞬間霧消していた。嫌な予感が頭をよぎる。できることならば目を逸らしたいが、指揮下の分隊は掌握し続けなければならない。固まって動ける人数が減れば減る程に、生き残れる確率もまた減っていくのだから。
 蓮奈の悪い予感は、半分当たっていた。顔の潰れた男子生徒の遺体に、女子生徒が縋り付いている。
 榴弾の破片に裂かれたのだろう。男子生徒の脇腹からは、押さえるものを失った臓器が飛び出ていた。吹き込んだ雪が赤く柔らかいものに当たる度に溶けて、湯気をたてながら塹壕の地面に落ちる。内容物が周囲に散乱しているからだろうか。冷たく埃っぽい空気に、汚水のような臭いが混じっていた。
 既に動かない身体に縋り付いていた生徒を強引に引き剥がす。同じクラスの日向だった。そうか、じゃあこの死体は安井だ。顔が判別できないけれど、日向が縋り付いていたということはそう言うことだ。
 錯乱したように叫びながら再び死体にすがりつこうとする日向の身体を強引にこちらに向け、頬を思い切り平手で打つ。無性に腹が立った。彼氏の死体に縋り付いている日向も、もう戦えなくなった安井も、こんな場所で生きるか死ぬかと言う状況になっている自分たちの運命も。何もかもが腹立たしい。
「帽子かぶって。二分隊の場所は分かるでしょ? 合流して」
 魂が抜けたように立ち尽くす日向に、泥と雪塗れの鉄帽と小銃を押し付ける。もう一度平手打ちしてやろうかと思ったが、精神を現実へと戻した彼女が銃を受け取るのが先だった。その表情は憎悪に満ちている。どちらを恨んでいるんだろう。機械兵器か、それとも私か。
 仲のいい者同士を同じ分隊に置いておくのは良い考えだと思うけど、恋人同士はだめだな。日向の視線を受けながら思う。息を吐いて感情を落ち着かせた。
 三分隊、戦死1。残余は二分隊と合流。メモに書き込んだ蓮奈の頭上から、甲高い音が響き渡る。また敵の砲撃だろうか。咄嗟に身をかがめて空を見遣れば、砲弾より遥かに恐ろしい存在が、分厚い曇天の下を泳いでいた。
 幾つかの白煙が、空へと向かって伸びる。隣の三小隊だ。あの位置から撃っても射点を曝露するだけなのに。そう考えた瞬間、反射的に携帯無線機を手に取り、小隊指揮系に向けて押し殺した声を発していた。
「対空射手、下手に撃たないで。対空戦闘要領、おぼえてるでしょ?」
 対空戦闘。小隊に残っていた携行型対空ミサイル発射機の数は――。
 絶望と恐怖を紛らわすように、蓮奈は再び思考を回転させる。三小隊が籠る建物周辺には、無数の小夜啼鳥が殺到していた。
ジュヌヴィエーヴ・アンジュー
POW判定

敵は地上機甲戦力での侵攻から空戦戦力による掃討戦に切り替えたようですね。「戦闘知識」があれば分かりますよ。一機でも多く墜としてきます。
マインドセット。
さて、こちらはあまり高度を出せないからな。自分から来てもらうぞ。

建物の屋上で『アルテミシア』を直衛として置き、『ハニカム』から『ホーネット』を放出。迎撃戦力として『クイーンビー』で操作する。
『ミネルヴォワ』を通し戦場の彼我の状況を把握。私を指向する敵機を目視も込みで捕捉し、『ホーネット』の群で一機ずつビームとブレード、自爆で処理する。ドローンで自律機械に一対一は荷が重い。相手も文句を言う手合いでもなし。
数こそ力だ。それは身に染みている。
クラウス・イーザリー
(……どうしようもないな)
その想いは何に向けたものだろう
今の状況か、この世界そのものか、そんな自分の思考か
……余計なことを考えている暇は無い、と思考を切り捨て武器を構える

小隊が籠る建物の屋根に登り、ナイチンゲール部隊をできるだけ多く視界に捉えて決戦気象兵器「レイン」を発動
弾道計算を合わせ、敵の飛行ユニットを重点的に攻撃して落下を狙う
破壊寸前の敵はスナイパーで積極的に撃ち落として数を減らす

ハッキングで適当な信号を飛ばして敵の行動を乱しつつ、気力と生命が続く限り限り敵を撃ち続ける
全てを救えなくても、少しでも多くの生命を続けさせるために
たとえ、続いた先に絶望が待っていようとも

※アドリブ、連携歓迎です
機神・鴉鉄
「敵飛行ユニット多数確認」
「空中戦を仕掛ける」
「主推進機関、出力最大」
「推力増強装置、点火」
「|戦闘拡張機械化鎧《パワードスーツ》『|W.E.G.A.《ウェーガ》』発進する」
技能【空中ダッシュ】で空中戦を展開し、√能力【暗黒の森の番犬】にて
飛行中の移動速度を増加する。
航空機戦闘に倣い、戦場を立体的な機動で旋回し、敵後方に回り込み、
アサルトライフル及びマルチミサイルランチャーにて撃墜を狙う。
防御は【エネルギーバリア】を使用。
また、敵機に後方を取られた場合は、人型兵器の利点を生かし、
飛行方向は維持しつつ機体を捻り、アサルトライフルで後方に射撃を行う。
弾薬が切れたら、接近攻撃を叩き込む。
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

さてさてスカウトポルカといきますか。夜明けを告げる騒々しき足音なんてね。
あー、対空戦?じゃぁ印地打ちで対処しましょうか。(しゅるりとリボンを解きつつ)残弾ならそこらの瓦礫からいくらでも調達できるしね。竹槍でB29墜としたって都市伝説もあるし、石でも十分いけるいける。ゴルフで全滅した戦闘機とか|運命調律《多重詠唱、料理、幸運》するためのネタも十分よ。バドスト対策は十分かしら?
さぁ、不運と踊りなさいな。
レナ・マイヤー
相変わらずの殺意の高さです!
もー!これだから機械兵団は!
…まぁ、愚痴っても仕方ありません。
友軍の人的被害を抑えるために、改めて頑張りましょう。
レナ・マイヤー、引き続き任務を遂行します!

今回も【レギオンネットワーク】で支援に徹しますね。
潜ませていたレギオン達を空に放ちまして…
センサーにより敵の状態を把握します。
骨折してるのと、詠唱してるのと、指揮してるのと。
敵機をそれぞれタグ付けして、仲間に連繋です。
狙うべき敵、撃つべき時、潜むべき場所。
味方の射線、敵の行動パターン、攻撃予測と警告。
そうした情報を逐一伝えて、仲間が戦いやすいようサポートしましょう。
細かい計算はレギオン・リーダー頼りで!

●決壊しかけのダム
 僅かに明るさを取り戻した空。しかしそれは事態の好転を意味しない。むしろ、悪天候によって機械群側の航空兵器の投入が遅れているという事実にわずかな勝算を見出していた集成第二戦闘団にとって、この場に差し込む陽光ほど呪わしいものは無いだろう。
 廃墟の上空を、甲高い音を響かせながら金属の翼が舞う。美しい蒼光を煌めかせながら曇天を舞う|夜鳴鶯《ナイチンゲール》の群れ。限定的な対空装備しか持たない学兵たちにとって、それは死そのものであった。
 獲物を求めて上空を徘徊する数十機のナイチンゲールに最初に捕捉されたのは、恐怖によって拙速な対空戦闘を行った第三小隊である。
 第二小隊と第一小隊に挟まれる形で、学兵部隊の中央に展開した第三小隊の役割は、私立高校の廃墟から旧南市場跡に至る領域の防御である。即ち、第三小隊の壊滅は、辛うじて一本の線で繋がっていた学兵部隊の防衛線が、中央から断ち切られる事を意味していた。高校の校舎跡や病院、銀行跡など比較的堅牢な建造物を火点としていたため、第三小隊が他の小隊に比べて広い戦闘正面を受け持っていたという事実も、状況の悪化に拍車をかけていた。
 防衛線の中央を突破されてしまえば、残った第二小隊と第一小隊は統制の取れない後退を強要されるだろう。最悪の場合、後退する間もなく側面や後背に機動した機甲兵器によって成すすべなく壊滅する可能性すらある。
 戦場に投入された航空戦力は、ごく短時間のうちに人類側の防衛線を崩壊の縁へと誘いつつあった。
 
 敵部隊の全容を掴めぬまま開始された第三小隊の対空戦闘は、結果として火点の位置を露呈させるだけに終わった。
 闇雲に放たれた携行型地対空ミサイルは敵部隊に損害を与えるには至らず、獲物を探していたナイチンゲールの群れが一斉に散開する。制圧すべき火点の位置を特定した美しい機械の群れは、即座に抵抗を粉砕せんと行動を開始した。
 先陣を切る数機が翼を折り畳みながら急速に加速し、ミサイルの白煙とすれ違う形で火点へと突入する。機体が音速を超えたことによって生じる衝撃波を後方へと置き去り、莫大な運動エネルギーと共に繰り出された鋼鉄の蹴撃は、未だ崩れずに残る建造物を易々と粉砕した。第三小隊の対空射手が潜む建物が、次々と大量の粉塵に包まれながら崩壊していく。
 第三小隊は恐慌状態に陥りつつあった。学兵たちは任務のためではなく、己の生存のために散発的な射撃を繰り返している。すべてが崩壊しつつあったその時、ナイチンゲールの飛翔音を吹き飛ばすような轟音が、戦場全体に響き渡った。
 曇天の雲間から注ぐ僅かな陽光に装甲を煌めかせながら、市街地の空を一つの影が切り裂く。その正体は、ナイチンゲールとは別種の、死をもたらす戦闘機械としての機能美を持つ鋼鉄の猟犬。機神・鴉鉄の駆る|戦闘拡張機械化鎧《W.E.G.A》であった。
「主推進機関、最大出力」
 ナイチンゲールの機体センサーが、新たなる反応を捉える。戦場に新たな脅威が突入しつつあることを知覚し、第三小隊を食い破りつつあった機体群が上昇を試みる。だが、敵の反応が完了するよりも早く、W.E.G.Aは最大加速をもって襲い掛かった。
 体を押しつぶすような加速に耐えながら、鴉鉄はW.E.G.Aを機械群の中央へと切り込ませる。一直線に空間を切り裂き、機体をナイチンゲールの群れへと急接近させた鴉鉄は、上昇が完了する前の敵前衛に向けて不意急襲的にミサイルを叩き込む。
 機体が稼いだ莫大な加速度に、自らの推進剤によって齎される速度を上乗せさせた対空ミサイルは、発射とほぼ同時にナイチンゲールの群れの只中に飛び込んだ。近接信管によって弾頭内部の炸薬が起爆し、爆轟と共に重金属ペレットをまき散らす。
 最も被害を受けたのは、第三小隊の火点に取り付き制圧を試みていた機群だった。彼女たちは上昇と同時にミサイルの爆轟に呑み込まれ、音速を超えた衝撃波と重金属ペレットによって形成された死の雨を全身に浴びる。ある機体は推進装置が誘爆し、ある機体は華奢な躯体を無数の弾殻に砕かれる。美しい機影は燃え盛る破片となって地表へと落下し、瓦礫の山に突き刺さる。狩るものと狩られるものの立場が、一瞬にして逆転した。
「敵ユニット群、散開。第一次目標達成」
 鴉鉄の鮮やかな奇襲によって、ナイチンゲールの攻勢が鈍った。部隊内ネットワークによって統制される戦闘機械群に生じた混乱は、決して長続きする類のものではない。しかし、それは、第三小隊を崩壊の縁から救い上げるに十分な時間であった。
 崩れかけた建物の影で、瓦礫に埋もれかけた学兵たちが顔を上げる。彼らの視界には、一機のWZが敵の群れを引き剥がすように立ち回る姿があった。
 新たなる敵手に狙いを定め、上空で旋回していた別の群れが、鴉鉄を追い詰める様な運動を開始する。ナイチンゲール達は鋼鉄の翼を唸らせながら、猛烈な速度でW.E.G.Aへと殺到する。
 急速旋回。重力慣性制御力場によって可能となった常識外の機動によって機首を敵正面へと向けたW.E.G.Aは、突撃してくるナイチンゲールの真正面にアサルトライフルの銃口を向ける。
「空中戦を仕掛ける」
 夜鳴鶯と鴉が、廃墟と化した都市の空を舞う。
 第三小隊を潰走寸前にまで追い込んでいた敵の圧力は、明らかに軽減していた。
 
「……踏みとどまったか」
 鴉鉄の突撃が開始されたと同時に戦域へと到着したジュヌヴィエーヴ・アンジューは、戦場の様子を観察し、僅かに息を吐いた。
 鴉鉄の攻撃があと数秒遅れていれば、今頃第三小隊は組織的な抵抗力を喪失していただろう。敵の後詰が残った火点に止めを刺し、防衛線の中央が崩壊するのは必然だった。首の皮一枚であるが、まだ挽回する余地はある。
 アンジューは自らに一瞬の安堵を許した後、再び意識を引き締める。辛うじて"持ちこたえている"状態では、どのみち後は無い。さしあたっては、曲芸を繰り返して前線を安定させつつ、一つ一つ積み木を積み重ねる様に優位を構築する以外に道はない。
 一度失った主導権を手繰り寄せなければ、敵の再編成が完了した瞬間に第三小隊は壊滅する。√能力を失う前の経験と記憶が、アンジューにそのような思考を抱かせていた。
 鴉鉄が前線に立ち、機動戦を展開しているのは、おそらく敵の攪乱を狙ってのことだろう。彼が動き続ける限り、ナイチンゲールの群れは先程のような蹂躙を実施できない。しかし、今なお散発的に続く火点への突入を止めなければ、第三小隊は統制を回復しえないだろう。先程の対空戦闘一つとっても、彼らの練度は決して高いものではないのだから。
「ホーネット、全機発進」
 その名の通りハニカム構造をもった母機から這い出すように、無数の|小型ドローン《ホーネット》が戦場へと展開する。個々の性能ではナイチンゲールに及ぶべくもないが、その数の理は圧倒的だった。
 戦場における大抵の問題は火力が解決するが、それを期待しえない場合の代替手段として挙がるのは数である。高度なネットワーク制御によって統制される戦闘機械との戦闘において、数的優位の獲得は有力な対抗手段の一つであった。
 蜂群は流れるように拡散し、戦場の空に一種の防壁を形成する。一定の規模で集団を形成し、第三小隊に残存する火点を護るように布陣する。一部の群れはアンジューを護るアルテミシアと共に、機動予備として主の周囲を旋回していた。
 できる限り敵の意図を妨害し、まずは時間を稼ぐ。主導権を再び得るためにも、決定的な瞬間まで友軍の戦力を維持する必要があった。
 ホーネットの展開が完了すると同時に、|火器管制レーダー《ミネルヴォワ》の捜索レーダー波が上空へと照射される。現在の高度、速度、進路。照射範囲内に存在するナイチンゲール達の状況が明らかになると同時に、捜索レーダー波を感知した敵機が一斉にアンジューへと迫る。
「こちらはあまり高度を出せないからな。来てもらうぐらいがちょうどいい」
 敵の動きを察知したホーネットは、ミネルヴォワの導きとクイーンビーの管制のもと実に機敏に運動した。予測されたナイチンゲールの進路上――つまりは、アンジューへの最短経路――へと滑り込み、まずは壁となって敵の突撃を受け止める。敵機の進行方向を読み切り、あらかじめ複数の機体で待ち構えるように迎え撃つホーネット。個体性能では勝るナイチンゲールも、こうなれば機動の自由を奪われる。
 先陣のホーネット数機がビームを放ち、回避行動に入ったナイチンゲールの旋回方向に別の群れがブレードを突き出す。命中を期待した攻撃ではなく、回避先を制限するための攻撃。ナイチンゲールがホーネットの群れから逃れ得る唯一の進路を塞ぐように、本命の群れが殺到し、相次いで自爆する。無数の火球に包まれたナイチンゲールは、華奢な躯体を飛散させながら地上へと墜落していった。
 数こそ力。アンジューは、それを身に染みて理解している。
 第三小隊に立ち直る時間を与えるため、数の利を生かして戦うアンジューは、今この時万金を賭してでも獲得するべき時間を稼ぐことに成功しつつあった。

 ナイチンゲールの群れは統制を崩されながらも、依然としてその戦力を保持し続けている。鴉鉄の奇襲とアンジューの防戦によって敵前衛と思しき機体群が撃破されたものの、戦場の主導権は未だ敵にあり、その全容は解明しきれていない。
 レナ・マイヤーは全力で走ったことで乱れた息を整えながら、第三小隊が首の皮一枚で崩壊を免れたことに対する安堵と、戦闘機械群に対する戦慄を覚えていた。
 第三小隊が当初構築した火点は、大半がその機能を喪失しつつある。予備の火点は未だ存在するにしろ、学兵たちは身動きすら取れない状態にあった。鴉鉄の攻撃が数十秒遅れていたら、或いはアンジューによる曲芸的な防御線の構築が成功していなければ、第三小隊は確実に壊滅していただろうし、レナ自身がこの場に間に合う事もなかっただろう。
「まったく……相変わらずの殺意の高さです!」
 レナは辟易としたように呟くと、上空で巴戦に移行しつつある鴉鉄とナイチンゲール達の戦闘を観察すべく視線を上空へと向ける。
 鴉鉄のものと同様に、ナイチンゲール達の戦闘機動にも一切の躊躇が感じられない。まるで一つの意識の元動く単一の生物の様に、ナイチンゲール群れは鴉鉄とW.E.G.Aを包み込むように機動していた。生半可な機体とパイロットであれば、瞬く間に退路を断たれ、撃墜されていただろう。
 アンジューが操るホーネットに対しても同様であった。おそらく、撃墜された機体の情報は即座に共有されているのだろう。ホーネットの群れの隙間を縫うように、別の機体がより最適な回避ルートを構築しようと試みている。戦闘機械群にとって、個々の損耗は最適化のための誤差にすぎない、という事なのだろう。
「もー!これだから機械兵団は!」
 嫌になる程強力で、容赦のない戦闘機械の群れ。その力の源泉は、高度かつ洗練された部隊内ネットワークと、それに支えられた状況認識能力にある。仮に個々の機甲兵器を撃破できたとしても、情報的な優位を突き崩せない限り戦術的な勝利すらおぼつかない。
 愚痴の一つも零したくなる状況ではあるが、敵の優位を蹴り飛ばせるだけの能力をレナ・マイヤーという√能力者は保持していた。
「レギオンネットワーク、再起動」
 彼女の意思を受けて、無数の|小型無人機《レギオン》が飛翔する。未だ見えぬナイチンゲールの群れの全容を解析すべく灰色の空を舞う。
 ナイチンゲールの編隊は高度なネットワークによって統制され、まるで一つの意思を持つかのように動く。撃墜された機体の情報は即時に共有され、新たな戦術を構築するための礎となる。彼女たちにとって、個々の機体レベルの損耗は最適化のための誤差に過ぎないのだ。
 敵の優位性を崩すには、敵の指揮基盤を一撃で粉砕する必要がある。鴉鉄とアンジューの奮戦は、ひとえにその時間を稼ぐための物であると言っても過言ではない。
 光学と赤外線センサによって敵の位置関係を解析し、電磁波探査が機体ごとにどの程度頻繁な通信を実施しているか監視する。レギオンに内蔵されているセンサーを介して集められた膨大な情報は、|定位置《レナの肩の上》に鎮座するレギオンリーダーへと送られ、ノイズ処理と必要な計算が施された意味のある情報として主の頭脳へと届けられる。
 レナの目標は、あくまでも戦場に潜む指揮ユニットの特定である。しかし、その副産物として、敵の情報をレギオンネットワーク越しに友軍へと共有することにより、味方全体の戦闘効率を向上させることに成功していた。
 今や敵の指揮ユニットと同様の役割を果たしつつあるレナに向かって、敵の注意が向かうのはある種の必然であった。
 彼女に殺到すべく急降下の態勢に移ったナイチンゲールの企図は、突如として突入進路上から飛来する無数の飛礫によって挫かれる。
 戦闘機械の探知能力を嘲笑うかのように、レナの周囲には不定形の影が揺らめいていた。
 
「鳥を相手にするなら、やっぱり印地打ちが有効よね」
 おぼろげな影が再度人の輪郭を象り、優雅なシルエットを作り出す。軽やかな声と共に、戦場の闇から姿を現したのはアリス・セカンドカラーだった。
 周囲に散らばる瓦礫の山を見渡しながら、アリスはエプロンドレスのリボンに手をかける。滑らかな手つきでリボンを解いた彼女は、凍てつく風を受けてたなびくそれを指に絡め、投石紐の形状を作り出す。
 議論の余地なく、即席かつ原始的な武器ではある。この場において空を支配するナイチンゲールに対抗するには、あまりにも心もとない。
 しかし、アリスはそのような客観的な事実など気にも留めぬ様子で周囲を見渡し、あたりに転がる瓦礫を拾い集めた。
 敵機が再び降下を開始する。音速を超えて繰り出される鋼鉄の蹴撃は、建造物すら容易く粉砕する。人間の肉体がまともにそれを受ければどうなるか、わざわざ述べるまでも無いだろう。
 通常の人間であれば、空から突撃してくるナイチンゲールに対抗する術はない。携行火器では、その装甲を貫通することは困難であり、対空装備も整っていないこの状況では、回避する以外の選択肢はなかった。
 しかし、アリスにとって、武器の物理的な威力など考慮に値する要素ではない。大切なのは、運命を引き寄せるために必要なほんのひと匙の|調味料《エピソード》。夜鳴鶯を落とすのにミサイルが必要か? 答えはもちろん否である。
「頑張れば竹槍で爆撃機も落とせるんでしょう? なら、鳥ぐらい石でもいけるいける」
 リボンが、唸りを上げる。
 瓦礫の破片を納めたリボンが、アリスの腕の動きに沿って大きな弧を描く。振り回される瓦礫は遠心力を帯びながら加速し、アリスの指先が紐を離した瞬間に射出された。
 当然、投擲物の速度は決して速くない。現代戦の基準で言えば、弾丸のように音速を超えるわけでも、ミサイルのように推進機関を持つわけでもない。ただただ、石くれが回転しながら宙を舞う。
 果たして、何か得体のしれないものに導かれるかのように、何の変哲もない飛礫はナイチンゲールに命中した。
 ナイチンゲールの装甲は硬度の高い合金によって形成されており、単なる飛礫が命中した程度では損傷を負うことは無い。
 装甲にわずかな傷が刻まれるだけの、微細な衝突。しかし、飛礫が命中した瞬間、ナイチンゲールの機体が大きく揺れる。揺れは徐々にその大きさを増し、機体が異常を検知した時には手のつけようもない程にその姿勢は崩れていた。
 僅かな衝撃を受けただけのはずの機体が、まるで何かに絡め取られたかのようにバランスを崩し、機動が意図しない方向へと逸れる。音速を超えて突撃する機体にとって、それは致命的であった。
「残念でした。 精々不運と踊りなさいな」
 空中で軌道を逸脱した哀れな夜鳴鶯は、制御を取り戻す前に地上へと衝突し爆散する。その様に一瞥しながら、アリスは次の瓦礫を拾い上げた。
 合間を置かず次々と瓦礫が放られ、極限の集中状態にあるレナを抹殺すべく突入を図るナイチンゲールに対して命中する。何かの冗談のような光景が淡々と続いたのち、護衛対象の意識が現実へと舞い戻った事を確認したアリスは、手のひらを軽く打ち付けてほこりを払う。
「まぁ、こんなところでしょうね。さてさて……、最後の役者は感情の整理を付けられたのかしら」
 ひと仕事を終えた満足感と共に、彼女の姿は再び闇に溶ける。最後の光景は、きっと特等席で見た方が面白いだろう。そのような考えを抱きながら。

 空を覆い尽くしていた鉛色の雲がわずかに割れ、都市の死骸へと頼りない陽光が差し込みつつあった。雲間から差し込む冬の頼りない陽光が、凍てついた空気をわずかに温める。
 男が立つ崩れかけた私立高校の屋上。かつては未来のある学生たちが日常を送っていたこの場所も、今では血と瓦礫に塗れた廃墟に過ぎない。
 クラウス・イーザリーは、無造作に崩れたコンクリートブロックの上に腰を下ろし、戦場の全景を見渡していた。
 その視界には、瓦礫と化した都市の廃墟の間を必死に駆ける学兵たちの姿が映る。崩壊寸前の防衛線。或いは死の先延ばしでしかない状況にあって、必死に戦う学兵たち。そして、空を覆い尽くす蒼い金属の翼。ナイチンゲールの群れ。
(……どうしようもないな)
 耐えがたい無力感と虚無感が思考を支配する。
 この思いは、何に対するものなのだろうか。今この時身を置いている戦場の絶望的な状況に対してか。似たような光景が数限りなく繰り返されるこの世界そのものに対してか。或いは、未だにこのような思考を巡らせてしまう自分自身に対してか。
 生きるはずであった無数の命が、戦火の中に消えていく。その事実に対して、何の感情も抱かなくなって久しい。果たして自分はなんのために戦っているのか。戦いと日常が癒着し、それすらもわからなくなっている気がした。
「……特定完了。タグ付け、開始」
 ぐるぐると渦巻くように下降していたクラウスの思考を、レナ・マイヤーの声が形而下の世界へと引き戻した。冷たい風が叱るように頬に突き刺さる。我ながら余計な思考をしてしまった。彼は壁に立てかけていた愛用の狙撃銃を手にする。グローブ越しに伝わる銃の冷たさが、クラウスの意識を完全に現実へと引き戻した。
 視界の端に、三つの赤いマーキングが浮かび上がる。これまで巧妙に群れの影に潜み、多数の護衛機によって存在を秘匿していた指揮ユニット。その正確な位置の特定を、レナが遂に成し遂げたのだ。クラウスの視界を上書きされる形で、目標である指揮ユニットが赤く浮かび上がっている。
 戦場を統制する中枢。これを破壊すれば、今この場に展開するナイチンゲールの群れは統制を失い、一時的にでも人類側に主導権をもたらすことができる。
 しかし、その目標はナイチンゲールの群れによって完全に護衛されていた。単独での突入は不可能に近く、三機を同時に撃破しなければ敵の指揮統制基盤の破壊という目的を達成できない。
 クラウス・イーザリーという名の√能力者は、そのような状況を打開するために用意された、人類側最後の大駒であった。
「――起動」
 ただ一言。レギオンネットワークを介して戦場のあらゆる情報を認識したクラウスは、ナイチンゲールの群れにとってもっとも致命的な位置で|決戦気象兵器《レイン》を起動させる。次の瞬間、ナイチンゲール達の光学センサーは強烈な光に包まれた。
 凍てついた大気を膨張させるほど高い熱量を持ったレーザーが、ナイチンゲール達の頭上から雨のように降り注ぐ。護衛のために密集していた機体はまともに熱線の照射を受け、表面装甲が瞬時に気化する。熱膨張と気化した金属の圧力によって内部構造が歪み、胸の悪くなるような音を響かせながら、ナイチンゲールたちの鋼の躯体が上空で弾け飛んだ。
 幾重にも重なった熱線は熱と光の檻と化して機械の群れを包囲し、その内部に捕らわれた存在を溶断していく。
 もはや籠に捕らわれたナイチンゲール達に、逃げ場は無かった。レナの完全な解析によって位置を特定されているため、たとえ回避機動を取ったとしても、次の瞬間には退路を塞ぐ形でレーザーの網が展開されている。
 空を支配しつつあった夜鳴鶯の群れは、光の斬撃によって翼を溶断され、次々と地上へと叩き落とされていく。クラウスは、その光景を無言で見つめていた。
 レインによって形成された突破口を、鴉鉄が駆るW.E.G.Aがこじ開ける。その後を追って突入するホーネットの群れを見送ったクラウスは、静かに狙撃銃の銃口を最後の指揮ユニットへと向ける。
 少なくとも、この行動によって第三小隊は持ち直すだろう。果たしてそれが意味のある事なのか、クラウスにはわからない。
 ただ確かなことは、少なくともこの場で消えるはずだった多くの命が、√能力者たちの活躍によって生きながらえたという事実のみであった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

ヨシマサ・リヴィングストン
【第435分隊】旅団6人参加
あはは!ラピスさんたらやってくれましたね~。作戦の難易度が上がりましたが、ボクがこういうの好きなのは皆さんご存じだと思うんで~…せっかくだからもう一段階難易度上げちゃいましょうか。学徒兵の皆さんを助けに行きましょう~。
まず先行してボクがライフルを【分解再構築プロセッサMk-II】で改造してチャフを制作、デコイとジャミング目的でナイチンゲール達に向かってぶっ放します。
相手が混乱したタイミングで分隊の皆に攻撃を仕掛けてもらいましょう。
…あ、でも向こうの連絡系統はすでに混乱してるっぽいっすね。誰かがもう仕掛けてたのかな?ま、邪魔はいくらしてもいいっすよね!
エルヴァ・デサフィアンテ
アドリブ連携歓迎
【第435分隊】
ナイチンゲールの本体、端末含め迎撃を継続。撤退を支援。

ん? 学徒兵部隊を助けに? ソイツはまた……面白れーじゃんか! やろうぜ!

ジャミングに合わせて突入! 「CASフロート」のセンサーを対空監視に割り当て、観測次第「アデランテ」での対空砲火を浴びせる。
距離はバイザーユニットで分かってる。それにちっこいのをチマチマやるのは性に合わねぇな……それじゃ、派手に行くか!
トルエノやマガジンを投げて撃ち抜き誘爆させたりバースト2で纏めて焼こう。誤射に注意。
ま、近づき過ぎたら銃剣で切り払おうか。

アタシも元はM82A2の少女人形。地対空戦は慣れてるぜー。
良いスリルになりそうだ。
ラピス・ノースウィンド
【第435分隊】の6名にて参戦
避難民の方々の離脱はなんとかなりましたが、一難去ってまた一難です…。
ただここまで来たら可能な限り取り零したくないです!
もう失ったものもあるかもしれないけど、やり直した身としてはまた立ち上がるチャンスを!

まあそんな訳なので学徒動員兵さん達の撤退や防衛フォローに回ります!
皆さんの射線の邪魔にならないよう、弾幕やジャミングを抜けてきた小夜啼鳥ロボの撃墜に努めます。弾が無いなら拳でカバーです!
鳥ロボが消えてナイチンゲール分隊が来た場合には空中戦にて撹乱、グラップリングフックを絡めたり動きをロックして皆さんの射撃のスキを作るように立ち回るです。ラピスも撃たれたくはないので!
駒門・クレイ
【第435分隊】の6名にて参加します。
対空戦闘ですか……苦手な部類というか戦車にとっては天敵に近い相手です。上面装甲は薄いんです。
敵が対戦車ヘリやA10のような対地攻撃機でない分多少はマシですが。

学徒兵の撤退支援を行う以上、後は歩兵より圧倒的に目立つ戦車中隊で囮を担うといった所でしょうか。
主砲は普通に撃っても当たりそうにないので、機銃による牽制射撃と発煙弾による支援がメインになるでしょう。
ナイチンゲールドライブのような特攻に対しては再度動くまでなら狙えるでしょうね。
学徒兵に限らず味方を煙幕で隠せばそう簡単には狙えない筈です。MLRSのような面制圧兵器が無ければという限定条件は付いてしまいますが
神代・京介
【第435分隊】旅団6人参加
俺たち√能力者の介入があったとは言え、流石に戦況は良くないな。
O市を守り切るのが不可能なら、少しでも多くの戦力を撤退させたいところだな。

【影鴉】を展開し学兵中隊が展開している戦場の情報を収集し、【冥刻】で分析したデータを分隊各メンバーに転送。
ジャミングで敵が混乱してる隙に√能力のレギオンによるミサイルで敵の数を減らしていく。
「先手を取ったこの隙に出来る限り数を減らすぞ!」
以降は学兵達を狙う敵を優先して攻撃していき、なるべく学兵達に被害が出ない様に立ち回る
スミカ・スカーフ
【第435分隊】旅団員6人で連携参加
【心情】
非戦闘員の撤退は完全とは言いませんが成功したとみてよいでしょう。各員の奮闘により友軍の損害も想定よりは軽い、人を命を数字で数えてしまうのは隊長職だからでしょうか。さて、学徒兵を囮に敵主幹を、…え?学徒兵を助けたい?その意気やヨシ!言ったからにはやっぱ無しはできませんよ!

【行動・WIZ】
仲間から友軍が囲まれている旨の情報を得て、車両に少女分隊を乗せた兵員輸送車で急行します。味方のジャミングに合わせて、ライフルを車からにょきっとしてハリネズミ弾幕特攻です。三小隊が籠る建物から敵の視線と攻撃をひきつけます。仲間の援護があれば少しはもつでしょう。

●高難度目標
 重編制の機甲兵器群を相手取って、今のところ我の損耗はおおよそ学徒兵一個中隊のみ。
 想定以上に被害が少ないな。友軍の現状を把握し終えたスミカ・スカーフが最初に抱いた感想は、そのような物であった。
 無論、一個中隊分の命――しかも、その大部分が年端もいかぬ学兵である――が失われたという事実は、議論の余地のない悲劇である。しかし、本来であれば集成第二戦闘団という集団そのものが潰滅していてもおかしくない状況にあっては、少ないとしか表現のしようがないし、するべきでもない。戦場において、部隊の損害に数値以上の意味を見出すべきではないことを、スミカは今までの経験から理解していた。
 学兵たちと共に当初構築されていた陣地線から後退した435分隊の面々は、彼我の状況を再整理するために再集結している。
 これが人形のみで構築されている部隊であればネットワーク上のやり取りだけで事足りるが、様々なルーツを持つ人員で構成される435分隊が統一された意思のもと行動するためには、どうしても対面での意思疎通が必要不可欠であった。
「現状、敵基幹戦力は後退。飛行ユニットは一定規模の部隊単位で、残存する友軍部隊に対する平押しを仕掛けています」
 スミカが行った戦況の要約が、自身の収集した情報と合致していることを示すように、神代・京介とヨシマサ・リヴィングストンが揃って頷く。
「戦闘機械が取る戦術としては、奇妙な程に非効率だな」
 辛うじて部隊の体裁を維持している友軍を掃討するには、平押しでも十分と指揮ユニットが判断した可能性も無い訳ではないが、それにしてもこの攻撃には違和感があった。学兵たちが交わす無線――正確には、中隊本部とその隷下小隊間でのやり取りが行われている中隊指揮系――で交わされているやり取りからスミカと京介が推察するに、敵飛行ユニット部隊の攻撃開始時刻には数分単位の誤差が生じている。小さな違和感ではあったが、それを無視する習慣を二人の√能力者はもたなかった。
「油断してくれるほど戦闘機械は優しくないでしょうし、もしかすると連絡系統に混乱が生じているのかもしれないっすね」
 ヨシマサの推察は、概ね事実の通りであり、スミカの考えとも合致していた。敵の指揮系統に何らかの乱れが生じており、敵前衛の注意は廃墟と化した火点に籠る友軍部隊に向けられている。だとするならば。
「どんな行動をとるにせよ、この状況を生かさない手はないだろうな」
「ええ、今ならば、敵主幹の側面を突けます」
 戦術的には最も合理的な選択を口にするスミカと京介。
「それが一番確実っすよね。でも、折角なら、二兎を追ってみませんか? 学兵さん達を助けながら戦果を挙げることも、今ならできると思うんですよね」
 まぁ、純粋に敵を叩く事と比較すると、難易度は跳ね上がると思いますけどね! そう楽し気に発せられたヨシマサの提案には、この場にいる誰しもが無視しがたい要素が含まれていた。
「悪癖ですね」
「悪癖だな」
 あくまでも状況を楽しむというスタンスを保ったヨシマサの発言に、スミカと京介は顔を見合わせ、苦笑を浮かべながら応じる。その口調に棘はない。ヨシマサが提案する学徒兵の救出は、二人にとっても魅力的な選択肢であった。
「あはは! ええ、悪癖です。ボクの嗜好は皆さんご存じだとは思いますが、たまには欲求に従ってみるのも悪くはないと思うんですよ」
 特に、こんな戦場ではね。或いは、ヨシマサが最後に付け加えたその一言が、彼の本意であったのかもしれない。
 極端に評してしまえば、学徒兵たちの喪失はあらかじめ予定されていた。彼ら彼女らを救出することは、合理性だけで考えれば決して最善の行為ではない。しかし、その行いが決して無意味であるとも思えなかった。この場に集った435分隊の面々にとって、それは共通した見解である。
「はいはい! ラピスもヨシマサさんに賛成です! みんな、ここまで頑張って来たんです。ラピスはこれ以上命をあきらめたくありません!」
 ラピス・ノースウィンドが、真っ先に、そして躊躇なくヨシマサの提案に合意を示したのは、ある種当然の事と言えよう。
 もう失ってしまったものは、決して戻ることは無い。しかし、皆等しく傷を負っていたとしても、生者には再び立ち上がるチャンスがある。その可能性を諦めることを、彼女のルーツと生来の性格が拒絶していた。
「ソイツは、単に敵を叩くよりも面白そうだな。 学徒兵の救出、いいじゃんか! やってやろうぜ!」
 エルヴァ・デサフィアンテもまた、ラピスと同様にヨシマサの提案に同意を示す。スリルを楽しむという点においてヨシマサと同様の気質を持つ彼女ではあるが、学徒兵を護りながら戦うという点もエルヴァの気質には合っている。
 なによりも、戦場を共にした者達がみな斃れたのでは夢見が悪い。エルヴァにとって、リスクを冒す理由はそれだけで十分であった。
「戦車は、味方の前衛を務めるための物ですから」
 あくまでも淡々とした口調ではあるが、駒門・クレイもまた学徒兵の救出という方針に肯定的な姿勢を示した。
 歩戦協同を第一とし、味方の前衛となるべく設計された|少女人形《レプリノイド》である彼女にとって、友軍の支援は常に一定の意義を持つ行動である。仮に|人形《主力戦車》として方向付けられた思考であったとしても、それを否定する必要をクレイは感じなかった。
 機甲兵器は強力な存在ではあるが、それ単独では十分な能力を発揮しえない。クレイにとって、歩兵である学徒兵を支援するのは、ある種当然の行いであった。
 仲間の反応に、京介は降参した様に肩をすくめる。
 たまには欲求に従ってみるのも悪くはない。確かにその通りだ。言葉や態度にはあらわすことは無いが、ヨシマサの提案に仲間が示した態度は、京介の心に幾許かの光を齎していた。
「……だ、そうだ。隊長、少しでも多くの戦力を撤退させることには、俺も一定の意義があるように思う。どうだろうか」
「大変結構! その意気やヨシ、です!」
 言ったからには、やっぱナシは出来ませんよ? スミカの挑戦的な言葉に、435分隊の面々は思い思いの反応を返して見せる。
 ヨシマサの言の通り、敵の横面を殴りつけるのではなく、正面から敵の圧迫を受ける役回りを果たすのは極めて難易度の高い行為である。しかし、この場に集った√能力者達であれば決して不可能ではない。
 兵器としての冷徹さと人間としての心を併存させるスミカは、現在の状況と仲間の能力を勘案し、猛烈な速度で部隊の行動方針を組み立てる。自身の戦術モジュールが通常以上の演算効率が発揮されているのは、決して気のせいではないのだろう。奇妙な程に晴れやかな気分だった。
「435分隊は、第三小隊が籠る区画の前縁に進出します。敵飛行ユニットの注意を誘引し、三小隊の抵抗を援護。爾後、状況が逼迫した部隊の支援に回ります」
 よろしいですね? 他の√能力者達によって壊滅を免れた第三小隊ではあるが、依然として危機的な状況にある事に変わりはない。まずは、彼らに再編の時間を与えること。自らが成すべきことを理解している能力者たちにとって、それ以上の説明は不要であった。
 再集結した435分隊は、スミカの指揮のもと再び最前線へと進出する。
 戦果ではなく、一つでも多くの命を繋ぐこと。それを第一の目的として。
 
 廃墟と化したビルや建物の影を縫うようにして、435分隊の面々は第三小隊の陣地前縁へと迅速に展開する。
 過度に接近せず、かといって孤立もしない絶妙な位置関係。分隊員が各々確保した位置は、戦場に対するそれぞれの理解と経験の賜物である。分隊を構成する人員がそれぞれの能力を把握し、かつ信頼する事によって、かくの如き絶妙な位置取りを可能とさせていた。
「さて、言いだしっぺになったからには、きちんと仕事は果たさなきゃっすね」
 ヨシマサは変わらず軽快な口調でライフルを構えた。√能力者が扱う武器としては珍しいことに、その外観自体は一般的な小銃のそれ。特殊なのはマガジンに装填された弾薬である。愛用の工具箱を用いて手早く特殊な金属繊維が込められた弾薬を作成したヨシマサは、それらを即席の電子妨害弾として用いる張らず盛であった。
 ヨシマサは、軽く銃口を上下させ、照準を調整する。遠方から再び飛来しつつあるナイチンゲールの群れは、戦闘機械らしく一糸乱れぬ編隊を組みながら友軍の火点目掛けて接近しつつある。このまま何の障害もなく進めば、未だ再編が終わらぬ第三小隊の陣地を直撃するだろう。
『ヨシマサさん、タイミングはお任せします』
『りょーかいっす。まぁ、見ていてください』
 通信機越しに響いたスミカの声に短く応えたヨシマサは、手慣れた動作でトリガーを引いた。閃光と共に放たれたライフル弾は冷たい大気を切り裂きながら直進し、ナイチンゲールの群れの只中で相次いで炸裂する。瞬間、鈍色の空に無数の金属片がきらめいた。
 頼りない陽光を反射させながら煌めく無数の金属繊維は上空の大気に巻き上げられる形でナイチンゲールの群れ全体を包み込み、彼女達が索敵と航法用に使用していたレーダーをかき乱す。誤差に気付いたのか、群れの動きがわずかに動揺する。鋭角に描かれていた編隊の軌道が、わずかに歪んだ。
『435分隊、交戦開始。 京介さん、対空戦闘を!』
『レギオン第一陣、攻撃はじめ』
 京介の命令に反応したレギオンが、周囲の瓦礫や掩体の隙間から一斉に地対空ミサイルを射出する。複数個所から連鎖的に放たれたミサイルは白煙をたなびかせながら飛翔し、赤外線誘導によってナイチンゲールの排熱を正確に捕捉していく。
 ヨシマサが展開したチャフの影響を受けない赤外線誘導方式によって導かれたミサイルはナイチンゲール達の只中で相次いで炸裂した。空中で発生した閃光に一拍遅れる形で轟音が響き渡り、鋼鉄の夜鳴鶯の身体から翼を引き裂いていく。次々と撃ち落とされていくナイチンゲールたちは、鋼鉄の塊が風を切る音を断末魔として、凍てついた大地に墜落していった。
 しかし、ナイチンゲールもまた、なす術なく無力化されたわけではない。数体のナイチンゲールは、即座に発射地点の特定に成功する。鋭利な金属の翼が一斉に向きを変え、反撃のために急降下を開始した。しかし、チャフによって部隊内部のネットワークが妨害されているせいか、残存機体の反応はわずかに鈍い。連携もままならない状態で、各機がバラバラに射点を目指して突っ込んでくる。
『第二陣、撃て』
 射点の特定に成功した優秀な――そして不運な――ナイチンゲール達は、京介の罠に自ら飛び込む形となった。第一陣としてミサイルを放ったレギオン群の上空を射角に収めたもう第二陣のレギオン群が、急降下に移ったナイチンゲールを標的として地対空ミサイルを発射する。ナイチンゲールから見れば、突撃方向に置かれるように放たれた第二陣のミサイルは、発射とほぼ同時に炸裂。重力加速度と爆轟の衝撃によってその躯体を四散させたナイチンゲールは、意味のない鉄塊となって地表へと叩きつけられる。飛び散った破片が雪を焦がし、廃墟の壁に突き刺さる音が響き渡った。
 難を逃れた残存機は、辛うじて機能を回復しつつある部隊間ネットワークの指示に従う形で方向を転換し、突如として出現した脅威の全容を解明しようとしていた。
 敵の群れの動きを高校跡の屋上から観察していたスミカは、再び無線機を手に取る。
 敵に対する情報的な優位。435分隊はヨシマサによる妨害と京介による奇襲によって、戦場における死活的な優位を獲得する事に成功しつつある。しかし、それは永続的に続くものではない。一分一秒でも長く、敵の混乱を助長させ、確保した比較優位を維持する必要があった。
『エルヴァさん、押し込んでください』
『了解! そら、まだまだエサはたんまりあるぜ!』
 CASフロートから放たれた射撃管制用のレーザーがナイチンゲールを捉え、射撃諸元をバイザーユニットへと送る。射線の先、空に広がるチャフの煌めきが徐々に薄れ、切れ目が見え始める。敵部隊の指揮系統が復旧し、反撃の兆候を示しているのがはっきりと分かった。
 エルヴァは健気に立て直しを図る敵の群れへとアデランテの銃口を向ける。CASフロートとバイザーユニットによって算出された射撃諸元に従い、射撃管制モジュールが自動的に目標を追尾する。トリガーを引いた瞬間、鈍い衝撃と共に放たれた対WZ用大口径徹甲弾は、即座に音の壁を突き破って目標へと飛翔する。
 放たれた弾丸は、迷いなく敵の装甲を貫き、内部で炸裂。炎と煙が空中に舞い、直撃を受けたナイチンゲールは内部から破裂する様な形で火球へと変じた。
『チマチマ狙い撃ってもいいが、どうもガラじゃねぇな。 連中を混乱させるなら、おあつらえ向きの物がある』
 エルヴァは腰に吊るされた|複合型グレネード《トルエノ》を引き抜いた。見た目は何の変哲もない黒い円筒形だが、内部にはEMP(電磁パルス)と炸裂弾が仕込まれている。ニヤリと口角を歪めたエルヴァは、渾身の力を込めてグレネードを上空へと投げ放った。
『ダメ押しを喰らいなッ!』
 放り投げられたトルエノは、放物線を描いてナイチンゲールの群れの只中へと飛び込んでいく。空を漂うチャフの残滓と、回復しつつある戦闘機械の統制。その狭間を突くかのように放たれたグレネードは、まさに敵の部隊の中央へと達した。
 エルヴァは再びアデランテのトリガーを引き絞る。大気を裂く轟音と共に放たれた徹甲弾は、宙を漂うトルエノに正確に着弾し内部の電磁パルス発生機構を強制作動させた。膨大な電磁パルスが空間を駆け抜ける。ナイチンゲールたちの電子装備が一時的に麻痺し、再び制御を失った機体が空中でバランスを崩す。統制を取り戻しかけたばかりのネットワークに、再び動揺が走った。
『敵の陣形が乱れました! ラピスさん、今です!』
『はいです! ラピス・ノースウィンド、吶喊します!』
 曇天を蒼光が一閃する。
 ラピスは、ジェットパックの推力を限界まで高め、硝煙にまみれたた息を引き裂き、一直線に空へと飛翔する。音速をも上回る加速。青白い閃光を尾に引き、彼女は凍てついた戦場を駆け抜ける。
 目標はただ一つ。敵ナイチンゲール群の指揮ユニットである。指揮系統の要を一部でも破壊できれば、敵の統制に再び打撃を与えることができる。それが叶えば、再編を続ける友軍の救援も現実味を帯びるだろう。
 エンジンの咆哮が耳を突き、視界は流れ去る。凍り付いた都市の死骸が一瞬で後方に遠ざかり、ラピスの視界は曇天に覆われる。
 指揮ユニットに向けて全速で吶喊するラピスの進路を遮るかのように、辛うじて反応する事に成功した数機のナイチンゲールが進路に割り込んだ。
『押し通ります――ッ!』
 機竜兵器の装甲を活用した重装甲ガントレットで握りこぶしを作り、ラピスは迫りくるナイチンゲールの一機へと叩き込んだ。圧倒的な運動エネルギーが衝突点に集中し、鋼鉄の装甲ごと敵機の頭部を粉砕。瞬間、ナイチンゲールの躯体はバランスを失い、空中で爆ぜるように崩壊した。飛散する破片と爆炎が視界を埋め尽くすが、ラピスは速度を緩めない。蒼光を曇天に轟かせ、少女は突き進む。
 指揮ユニットが、咄嗟に回避運動を図る。しかし、全ては手遅れであった。ラピスは指揮ユニットの至近にまで肉薄する。|パイルバンカー《サンダーフェロウ》が指揮ユニットへと叩きこまれた。
 空気を引き裂く爆音。装甲を穿つ杭が指揮ユニットの胸部装甲に突き刺さる。その瞬間、莫大な運動エネルギーが一箇所に集中し、指揮ユニットの装甲を内部から圧砕した。
 轟音と共に、指揮ユニットの躯体が四散する。ラピスは炸裂する火の粉と破片の隙間をすり抜け、蒼い閃光を残して空中を舞う。彼女の一撃は、敵の指揮系統の一部を粉砕する事に成功した。
『一次目標の達成を確認しました! 後退します。クレイさん、後退援護はお任せしました』
『了解。中隊全車前進』
 地を這う鉄の咆哮が戦場に響き渡った。
 雪に覆われた廃墟の街路を、12機の90式戦車が統制された動きで前進を開始する。その中央に立つのは、駒門・クレイ。その堂々たる姿は、轟音に満ちる戦場只中にあっても揺るがない。彼女の指揮下で戦車部隊は一糸乱れぬ編成を維持し、分隊の後退を援護すべく進撃していく。
 彼女の指示によって統制された各車から、一斉に煙幕弾が放たれ、上空からの視界を一時的に遮る。その隙に、435分隊の構成員たちは次々と瓦礫の影へと撤退していく。
『対空戦闘は本分ではありませんが、やり様はあります』
 全車に向けて新たな指令が下される。煙幕の向こうから迫りくるナイチンゲールの編隊に対して、90式戦車の主砲が相次いで火を吹いた。
 射撃管制システムが砲塔の動きを補正する。煙幕を貫いた榴弾は、ナイチンゲールの只中で炸裂した。爆発と共に巻き上がる破片。金属の翼を持つ鋼鉄の夜鳴鶯たちは、衝撃に煽られて軌道を逸らす。
 しかし、榴弾の破片を潜り抜けたナイチンゲール数機が降下し、煙幕の隙間を縫うようにして90式戦車を狙う。無機質に統制された戦車群は一斉に対空機銃を起動させ、雪煙を巻き上げながら上空に向けて弾幕を放った。
 対空機銃の速射は、高速で接近するナイチンゲールたちを次々と捕捉し、その装甲を貫く。敵機がバランスを失い、制御を失ったまま墜落していく。爆炎と黒煙が雪原に黒い影を落とし、地表に鋼鉄の屍を散らした。
 戦車群は前進を続けながら煙幕を展開し、後退中の435分隊を守るように縦横無尽に火線を走らせた。
 迫りくるナイチンゲールたちは煙幕と対空機銃、そして榴弾の連撃に阻まれ、次々に装甲を焼かれて墜落していく。
 後退する435分隊と、それを援護する戦車群。
 435分隊が実施した鮮やかな戦闘は、ナイチンゲールの群れに多大な損害を与えると同時に、第三小隊に対して再編の時間を与えたのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

丹野・脩里
※他の方との絡み等歓迎!※

うわぁい敵影たくさんだぁ(泣
……とはいえ、懸案事項の1つだった敵の砲兵陣地がヤられてますね?これは幾らか風向きが変わったかもしれません。
こっからは幾らかハデなことをしても……良いかもしれない!

数を相手取るには、こちらも数を用意する or 数が問題にならない火力で薙ぎ払うの2択が安直な回答になりますけど。
此処は安直な回答――つまり火力でいきましょうね。へへ。
具体的に言うとコレです、決戦魔焔妖術。コレ生前から使えりゃどれだけ良かっただろうと何度思ったか……!
まぁそんなおいしいオイシイ話はないんですけどね。
ま、兎に角。迅速かつ確実に焼いちゃいましょう!
テクニカル・一三七四
敵航空戦力を確認、各員対空戦闘用意、近距離防空を行い味方を援護します

【少女分隊】を使用し戦力の補充を行い対空迎撃を行い友軍を援護します
それぞれ市街地の残骸や廃墟を遮蔽にし、ヘヴィバンパーを防楯として運用して機関銃による対空射撃を行い小夜鳴鳥による味方の被害の軽減に務めます
たたそれだけでは数で押し込まれるだろうと予想されるため防御の為の対空射撃は指揮下人形に任せて私自身は小夜鳴鳥を展開する為に停止しているであろうナイチンゲールを索敵し機関銃による対空射撃で攻撃を行います
当然撃破を狙いますが撃破出来なくとも回避運動を取らせる事で小夜鳴鳥の展開を妨害する事が可能な筈です

●決意と代償
「……うわぁい、敵影たくさんだぁ」
 冷え切った鉄筋コンクリートの廃墟。崩壊したたコンクリート壁の亀裂から外の様子を伺う丹野・脩里の視界には、灰色の空に無数の影が浮かび上がっていた。
 未だ距離は遠く、甲高い推進器の音が微かに耳に入る程度ではあるが、脩里はそれらが複数のナイチンゲールで構成された群れであることが理解できる。理解できてしまう。陣地――といっても、それは廃墟とこれから廃墟になる建物の別称でしかないのだが――に籠る学兵たちを狩りだすために、鋼鉄の夜鳴鶯が再び戦場に進出しつつあった。
「……見てくれだけは良いんですけどね」
 ナイチンゲールの群れは一糸乱れぬ編隊を組み、優雅に上空を旋回している。雲間から差し込む弱々しい陽光が彼女たちの機影を照らす様は脩里から見ても美しさをおぼえる光景ではあったが、それによって感情が上向くことは無い。頭上で行われているナイチンゲールの機動は、決して脩里や学兵たちを楽しませる為のものではなく、鳥が地を這う獲物を探し出すための索敵行動に過ぎないのだ。
 しかし、辛い要素ばかりでもないか。群れの規模を図るために上空を観察する脩里は一つの考えに至る。
 これだけ上空を取られ、悠長に索敵を許しているにもかかわらず、敵の主幹戦力と殴り合っていた時のような砲弾の雨が降ってこない。希望的な観測ではあるが、後方に展開している筈の敵火力に何らかの問題が生じたのだろう。
 正直、建物を盾にいくら踏ん張ったとしても、あの火力に晒されてはどうにもならなかった。それが取り除かれたかもしれないと考えるだけでも、幾許かの希望は抱ける。脩里は戦闘開始から強張るばかりであった自らの身体が、幾分か楽になるのを感じた。どうにも悲観的な思考に陥りがちではあるが、たまには楽観するのも悪くないかと思う。
「マイナスとプラスで、どうにかトントン……くらいですかね」
 目立っても降ってくるのが砲弾ではなくナイチンゲールの群れであるのならば、今まで封じていた目立つ手管を使う余地もある。学兵の被害を抑えるためにも、安直かつ目立つ手段に訴えるのが最適であろう。
 進んで使いたいかと問われれば、決して肯定は出来ないのだけど。脩里は自嘲と笑いとが綯交ぜとなったようなため息を吐きながら、冷たい廃墟の床から立ち上がる。
 亀裂から吹き込む冷たい風に、身体を震わせる。これでいくらか風向きが変わればいいな。そのような思いを抱きながら、脩里は監視哨代わりの廃墟を後にした。

「各機、対空戦闘用意。|重装甲《ヘヴィバンパー》展開。これより陣地前縁に進出し、学兵部隊を掩護する」
 テクニカル・一三七四の命令が彼女の同系機によって構成される少女人形部隊の指揮ネットワークに伝達される。バックアップ送信機能が欠落し、躯体の喪失がそのまま存在の消滅に直結しているにも関わらず、一三七四の命令に一切の怯懦や躊躇はない。ただ淡々と、成すべきことを成すために。それが自らの存在意義であると主張するかのように、一三七四は自らが率いる部隊を学兵たちが籠る陣地前縁に進出させた。
 一三七四の指示に従い、陣地前縁に展開した同系機たちが一斉に行動を開始する。無数の瓦礫が散らばる国道沿いに進出した彼女達は、腕部に装着した|大型装甲板《ヘヴィバンパー》を掲げ、ながら躊躇なく前進を開始した。
 上空を旋回していたナイチンゲールたちは、光学センサー上で攫えた少女人形たちの姿を確認すると、獲物を見つけた猛禽のような素早さですぐさま旋回半径を狭める。
「敵の注意を可能な限り引きつけます。各機、各個の判断で射撃開始」
 一三七四の指揮に応えるように、同系機たちが手にした重機関銃を構え、一斉に射撃を開始する。滝のように連続した発砲音と共に吐き出される曳光弾の光が、鈍色の空に輝きながら直進し、ナイチンゲールの群れへと殺到する。
 ナイチンゲールは回避機動を行いつつ、挑戦者達に向けて上空から突撃を敢行する。恐怖を煽る独特な風切り音を響かせながら、猛烈な速度で急降下を開始したナイチンゲールは、数秒後には一三七四達の眼前へと迫った。足に力を籠め、ヘヴィバンパーを掲げる。冷たく乾いた空気を媒体として、轟音が響き渡った。
 突撃の衝撃は凄まじく、一三七四達が掲げる装甲板が鈍い音を立てて変形する。しかし、辛うじてその衝撃を外へと逃がした少女人形達は、敵機が高速移動からの衝撃で一瞬停止するその瞬間を逃さず、機関銃による射撃を浴びせかけた。
 敵機の装甲を弾丸が穿ち、幾つかの機体が激しい火花と共に空中で爆散する。しかし、ナイチンゲールたちもまた、一三七四と同様の――あるいは彼女よりもより兵器として特化した――思考を持った戦闘機械である。即座に隊形を再構築し、再び突撃体勢へと移る。
 幾度となく続く突撃と射撃の応酬。激しい攻撃に晒されながらも、一三七四が率いる少女人形部隊は果敢に反撃を試みる。莫大な運動エネルギーに晒され続けるヘヴィバンパーは、衝突の度にその破損を拡大させ続けるが、彼女達はそれでもなお、後方の学兵たちに向かう攻撃の一切を許さないよう、自らが楯となり続けている。
 その奮戦に応えるようにして、建物の残骸や廃墟の物陰に潜む学徒兵たちも動き始めていた。廃墟や瓦礫の隙間から、小型対空ミサイルが次々とナイチンゲール編隊へと向けて放たれ始める。やや遅れて、学兵たちが装備している自走型の小型砲座や小銃による射撃もそれに加わりはじめる。鋭利な炸裂音が上空で相次ぎ、敵機の機動が乱れ始める。一三七四率いる少女人形部隊と学兵たちの抵抗は、数的な優位にあったナイチンゲールの群れと拮抗しつつあった。
 ナイチンゲールの群れは戦況を分析し、最大の脅威である一三七四とその配下の少女人形を撃破すべく最適な隊形を形成すべく動き始める。敵機は空中での旋回を止め、密集するように隊形を変更させながら、少女人形部隊が構築する防御線を崩すべくさらに激しい突撃を敢行し始めた。
 装甲板が次々と砕け散り、強烈な衝撃に耐えきれず崩れる機体が続出する。しかし、一三七四は怯むことなくその場その場で最適な配置となるよう部隊を運動させ続けた。
 一三七四の粘り強い抵抗の果てに、遂に敵部隊は完全な密集状態となり、もはや幾度目かもわからなくなった突撃を敢行せんとする。あと一息で、敵を突き崩すことができる。そのような確信に満ちたナイチンゲール達の機動を観察しながら、一三七四もまたこの場での勝利を確信する。
 彼女の頑強な意思によって継続された戦闘は、まさにこの瞬間を作り出すために行われたものであったのだから。
 
「へへ……やっぱり、頼れる味方がいると安心できますね」
 一三七四率いる少女人形部隊が奮戦する様を観察していた脩里は、思わずと言った様子で感嘆の声を上げた。
 廃墟の亀裂越しに見える戦場は壮絶なものであった。幾度となく繰り返されるナイチンゲールの突撃によって破損した装甲板が拉げ、破損した少女人形の躯体から人間と同様に赤い血液が飛び散る。一三七四達の周囲には、ナイチンゲールであった残骸と少女人形であった破片とが地面へと飛散していた。
 一三七四の統率を受けた少女人形部隊は、隊形を巧みに修復しながら戦闘を継続している。彼女達の統率力と機械的な正確さは、数多の戦場を駆け抜けた脩里をして頼もしく映る。
 ナイチンゲール達が一三七四達の抵抗を完全に粉砕せんと、より効率的な陣形を構築している。精密に連動し、高度を下げながら徐々に密集し始めるその動きを見た瞬間、脩里は自らが動くべき時が来たことを確信した。乾いた唇を開き、大きく息を吸うことで覚悟を決める。全身に熱が迸る感覚に耐えながら、脩里は空中へと魔焔を解き放った。
 |決戦魔焔妖術《インフェルノ》。その名称の通り広範囲を魔焔によって滅却することを目的とする妖術が発動した瞬間、密集したナイチンゲールの群れの中心から、真冬の空気を焼け焦げさせるほどの高熱を伴った焔が夜鳴鶯たちを飲み込みながら拡散する。禍々しいの焔が、ナイチンゲールの群れを跡形もなく焼き尽す。驚く間もなく数機が炎に呑まれ、もがく様な機動を取った後に次々と爆散した。
「いっ……ぎいっ……」
 しかし、脩里自身にもまた、能力の代償として悍ましい苦痛が襲いかかる。まるで自らの体が内部から灼け爛れるような激痛に全身が苛まれ、苦悶の叫びを押し殺しきれず、泥と雪が入り混じる冷たい地面へと崩れ落ちた。焼け付くような痛みが全身を駆け巡り、視界が明滅する。雪の冷たさと身体中を這う熱が入り混じり、不快な脂汗が噴き出した。
 しかし、強靭な意思の力で意識を保ち続ける脩里は、辛うじて姿勢を仰向けに転じさせる。上空では、自らが巻き起こした炎の嵐の中で炎上するナイチンゲールの姿が見えた。美しい躯体を炎で包みながら、夜鳴鶯たちが地面へと堕ちていく。
「へ、へへ……へ……。こ、コレを生前から使えりゃ、どれだけ、よかったか……」
 脩里は泥と雪に汚れた相貌に満足げな表情を浮かべ、再び冷たい地面へと沈み込む。
 一三七四と脩里による連携によって、また一つナイチンゲールの群れが地へと堕ちていくのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​ 成功

ビッグ・タイガー
引き続き、こちらでヘイトを受け持つ

先ほど(一章で)撃破した敵機の残骸を自分の外部装甲へと融合し、新たな戦車砲として再構築する
ホントなら、ハリネズミみてぇに増設しまくった火砲でブ厚い弾幕を張りてぇトコだが
ずっと足を止めてるワケにも行かねぇし
場合によっちゃ増設すんのは少ない本数に留めて、ある程度の機動力は確保しとかなきゃならねぇかもな
状況をみて適宜対応する

心情
(戦況は相変わらず)
(9回裏2死どころかコールドゲーム目前ってところか)
(それでも)
(諦めねぇ、諦めたくねぇってのは大事な原動力動機だ)
(誰もが敗けると思ってた結末を覆した、55年や88年のドジャースみてぇに)

●九回裏二死であっても
『二分隊、対空射手。群れの真ん中に陣取っているヤツを狙って撃って。撃ったら即離脱』
 レシーバーから聞こえる蓮奈の命令を受け、崩れかけた民家の陰に身を潜めた対空射手は、震える手で携行型地対空ミサイルの照準を空に向けた。わずかな躊躇いの後、トリガーを押し込む。一拍間をおいてミサイル内部に搭載された射出用モーターが起動し、白煙を引きながら赤外線誘導式の地対空ミサイルがナイチンゲールの群れへと飛翔する。射手はその戦果を確認する事もなく、一目散に退避先の廃墟へと駆けだしていた。
 ミサイルの白煙を確認したナイチンゲールの群れは即座に回避機動を取りつつ、ミサイルの方向と白煙から射点を特定する。即座に反応した数機の機体が、猛禽のような鋭さで急降下を開始する。瞬時に標的の上空へと到達し、哀れな挑戦者を血煙へと変換するはずであったナイチンゲールの突撃。しかし、その突撃は、既に射手が離脱済みの民家を廃墟へと変えるだけに終わる。
『小隊、各個に打て!』
 攻撃を終え、一瞬動きの止まったナイチンゲール達に対し、周囲の廃墟に散開していた第二小隊の火力が一斉に集中した。崩壊した壁や破壊された車両の陰に潜む兵士たちが手にする小銃と、彼ら彼女らに随伴する自律砲台が、執拗に敵機へと銃弾を叩き込む。即座に離脱を試みるナイチンゲール達であったが、離脱機動をよりも早く、その装甲に小銃や機関砲弾の雨を浴びる事となる。激しい衝撃に耐えきれず装甲が割れ、安定性を失った敵機は軌道を保てず、飛び上がった次の瞬間には周囲の建造物に激突した。轟音と共に機体は炎を上げて崩壊し、その破片が周囲に飛散する。
 多くの犠牲を出しながらも、学兵たちはナイチンゲール達との戦闘に適合しつつあった。
『サクラ、煙幕弾! 各分隊単位で次のブロックまで後退!』
 学兵たちは、命令に従って次の陣地へと後退を開始する。彼ら彼女らの後退を援護するかのように、煙幕を引き裂くようにして現れたのは、規格外の巨体を持つビッグ・タイガーであった。
 戦場を埋め尽くす瓦礫を踏み砕きながら堂々と前進するその姿は、敵味方問わず圧倒する迫力を放っている。先ほどまでの戦闘で撃破した敵の大型機甲兵器から剥ぎ取った装甲板をその機体に融合させたタイガーの外観は、すでに通常兵器の範疇を超えていた。異形とも評し得るその巨体には、装甲の破片や突き出た主砲が所狭しと配置している。
「戦況は相変わらず。だが、学兵の動きは悪くねぇ」
 タイガーの意識――或いは、そのように表現すべき思考回路――の中には、先ほどまで必死に戦闘を続けていた学徒兵たちの姿が鮮明に刻まれていた。このような絶望的な状況にあっても、学兵たちは未だ生存の望みを捨てず、粘り強く戦っている。タイガーにとって、己が戦う理由はその一事だけでも十分であるように思われた。
 コールドゲーム目前。どれほど状況が悪かろうとも、雪と泥に塗れながら足掻き続けるその姿は、敗北を確信されながらもそれを覆してみせた往年のメジャーリーガー達を連想させる。悪くない。悪くない姿だった。
 追撃のために急降下しつつあったナイチンゲールの群れに対し、タイガーはあえてその進路を塞ぐように正面から前進する。ナイチンゲール達のセンサーが一斉に巨体を捉え、その攻撃対象を新たな挑戦者へと修正する。
 夜鳴鶯たちの殺意に反応するかのように、タイガーの巨体を覆う多数の砲塔が一斉に旋回した。撃破した敵大型機甲兵器から鹵獲し、自らの躯体に再構築した主砲が一斉に火を噴く。巨大な砲口から榴弾が空中高く射出され、空を舞うナイチンゲールの眼前で次々と炸裂した。空中に撒き散らされた爆轟と弾殻が彼女たち進路にまき散らされ、一糸乱れぬ機動に僅かな綻びが生じる。
 今や敵の殺意と照準は、完全にタイガーへと向けられている。彼の背後では、学兵たちが次の火陣地へと必死に駆けている。戦車として生まれ、兵器として在り続けてきたタイガーにとって、成すべきことは明確であった。
 ナイチンゲール達は後退する学兵を捕捉するための機動から、正面に出現したタイガーを葬り去る為の機動へと移る。甲高い推進音と風切り音を響かせながら、彼女たちは一斉に異形の兵器へと向けて急降下を開始した。
 タイガーは、それに怯むことなく前進を続ける。敵機の急降下が迫るなか、タイガーの砲塔群が旋回し、再び榴弾を放つ。数機が突撃から脱落するが、爆轟を掻い潜った機体がタイガーの装甲へと接触した。
 猛烈な衝撃と轟音が冷たい大気を震わせる。音速を超えた速度で取り出されるナイチンゲールの突撃は、猛烈な運動エネルギーと共にタイガーの外装を抉り取ろうとする。しかし、彼が外部装甲へと融合させていた敵機の装甲板は、辛うじてその衝撃に耐え切って見せた。幾つかの装甲が歪み、金属が悲鳴を上げる音が周囲に響くものの、致命的な損傷には至らない。
『構わねぇから、俺ごと撃て!』
 小隊指揮系につなげている無線から、タイガーが生成した機械音声が響き渡る。彼の狙いは明らかであった。学兵達が攻撃を受けるリスクを一身に引き受けると同時に、学兵たちの火力を誘導する的なること。それは、重厚な装甲を保持するタイガーだからこそ実行可能な行動であった。
 一瞬の躊躇の後、蓮奈は決断する。彼女はこれまでの戦闘でのタイガーの戦いぶりを知る学兵の一人でもあった。彼女はハンドマイクを手に取り、轟音に負けぬ様な声量で叫んだ。
『小隊、正面の機甲兵器を基準として各個に射撃! 敵の群れに向けてありったけぶち込んで!』
 そうだ、それでいい。タイガーの装甲に癒着したライトが、満足げに数度瞬く。次の瞬間には、後退を完了させた第二小隊の発揮可能な火力が、彼と彼に群がるナイチンゲールの群れに向かって放たれた。
 集中砲火を受けたナイチンゲールの一機が耐えきれず、制御を失ったまま地面へと叩きつけられる。それを切っ掛けとして、次々と敵機が炎と破片を散らしながら地上へと墜落し、その破片がタイガーを中心に降り注ぐ。爆風と衝撃波が立ち込める煙幕と絡まり、タイガーの巨体を覆い隠した。
 爆炎が収束し、戦場に静寂が訪れる。学兵たちが湯気を上げる銃口を下に下ろし、正面の様子を伺う。
 果たして、煙と炎を引き裂き、なお堂々と戦場に戦場を闊歩するタイガーの姿がそこにはあった。
 タイガーの装甲は焦げつき、砲塔には小さな傷跡が刻まれているものの、その威容を損なうほどの損傷はない。彼が学兵たちに向けて腕部に相当するパーツを掲げた時、陣地からはこの戦場では聞きなれない類の歓声が響き渡った。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

エンネア・ノウェムノイン
戦況は悪い。√能力者が強力であっても、集成第二戦闘団という数の防壁が瓦解しては後方の安全を確保できないだろう。 つまり集成第二戦闘団の戦死者はこの破滅的局面をもたらした罪人である。 死は戦闘をやめる理由にあらず。死んだ程度で銃を手放すのは敵前逃亡だ。 かつて俺達がそうであったように。かつての私達のように裁かれねばならない。 連隊司令ドゥーエ・ドヴァーズィーヴェン中佐を招聘。 集成第二戦闘団戦死者を被告として甲種臨時軍法会議の開催を要請する。 彼らを我々に加えたうえで、集成第二戦闘団前面に進出。敵航空部隊を迎撃する。 ――新入り。安井といったか。 最後に言い残すことがあれば伝えてやる。それが最後の慈悲だ。

●醜の御楯
 灰色の空から降りしきる雪と戦塵が、今や都市の死骸とかしたO市を覆い隠していた。
 視界の向こうでは、いまだ学徒兵たちが必死の抵抗を続けている。小銃の連続的な射撃音と自律型随伴砲台が立てる重い発砲音が入り混じり、時折ナイチンゲールの群れによる急降下攻撃の甲高い音が空間を引き裂いている。廃墟のあちこちからは炎と煙が立ち昇り、破壊された装甲車両や倒れ伏した兵士たちの遺体が、温度を失い凍りついていた。
 その様な光景を、第999懲罰連隊長であるドゥーエ・ドヴァーズィーヴェンは静かに煙草を咥えながら見下ろしていた。眼前では若者たちが血を流しながら叫び、倒れていく。その顔に感情はなく、少なくとも外観上は苦渋や同情を抱いている様には思えない。そこにあるのは鉄面皮の冷徹さだけだった。
「連隊長殿」
 エンネア・ノウェムノイン。ドゥーエが率いる連隊の象徴である彼女の言葉に促されるように、彼は紫煙を吐き出した。
「犯罪者や臆病者の次は学生と来たか」
 静かな呟きは、どこまでも淡々としていたが、その背後に立つエンネア・ノウェムノインはただ黙して司令官の様子を見守るのみである。
 ドゥーエは咥えていた煙草を雪の降り積もった地面に落とし、軍靴で静かに踏み潰した。彼がその灰を丁寧に踏み消す仕草にも、苛立ちや感傷めいた気配はない。ただ鋼のような瞳が、遠方で死に続ける学徒兵たちを再び捉えた。
「……まぁいい。この世界にあって、無能は罪だ。死は免責の自由にはならない」
 無慈悲な審判が凍てついた空気を媒体として響き渡った。傍らのエンネアはその言葉に、やはりただ沈黙をもって肯定の意思を示す。
 この世界にあって、死は戦いを逃れるための免責事由にはならない。それは、ドゥーエの傍らに立つ|エンネア《第999懲罰連隊》の存在が事実であると証明している。悍ましくありながらも、追い詰められた人類にとっては否定のしようのない現実でもあった。
 ドゥーエは天に向かってゆっくりと手を掲げる。淡々と、しかし聞く者にどこか厳かさを感じさせる口調で宣言した。
「第999懲罰連隊長としての権限に基づき、集成第二戦闘団の戦死者を第999懲罰連隊へと編入する」
 その瞬間、エンネアの背後には朧げな人影が次々と姿を現した。それらの影は荒廃した景色を背景に実体を帯びると、完全な兵士の形となって整列を始めた。その新たに顕現した兵士たちは、誰もが若く、顔には戦場で散ったばかりの生々しい記憶と恐怖、そして驚愕が浮かんでいる。彼らは乙型装甲服に身を包み、第999懲罰連隊の象徴とも言える|MG6《国民軽機関銃》を、すでに冷たくなった両手に握りしめていた。
 新たな兵士たちを眺め、ドゥーエは満足げな頷きを見せた。その様は、兵士達の姿に対する満足というよりは、計画通りに進んだ手続きへの確認に過ぎないようであった。
 彼は整列した死霊たちへと向かい、再び口を開く。
「戦友諸君、我が連隊にようこそ」
 ふたたびこの苦しみに満ちた世界に実体を得た若者達に、第999懲罰連隊の指揮官は無慈悲に宣告する。
「貴君らが生前に犯した罪は、等しく人類への裏切りである。貴君らの罪は、ただ奮戦をもってのみ清められる。再び人類に対する義務を果たせ」
 短い訓示を終えると、ドゥーエ・ドヴァーズィーヴェンはその場を後にした。連隊という戦闘単位を生かすために、これ以上彼の時間を罪人たちに費やすことは許されなかった。
 残されたエンネア・ノウェムノインは静かに前へと歩み出ると、新たに第999懲罰連隊の兵士となった若者たちを鋭い眼差しで見据える。沈黙はやがて重く低い声へと変わり、エンネアは新兵たちへ連隊の方針を伝え始めた。
「連隊は直ちに前進し、集成第二戦闘団の陣地前縁に進出する。貴様らは自らの死した地で、生者のための盾となり敵航空兵器を迎撃するのだ」
 死は戦いの免責にはならない。エンネアは再びその事実を強調する。再び果たすべき義務が存在することに感謝せよ。その一言によって、方針の下達は完了した。
 エンネアの命令が終わるや否や、死霊たちの連隊は動き始める。新たに編入された兵士たちはすぐに古参の兵士たちに迎えられ、中隊単位で戦場へと散る。雪の上を踏む軍靴の音が、死霊の行軍は不気味な統一感と共に戦場へと染み入っていった。

 再び動き始めた第999懲罰連隊の群れを見送りながら、エンネアはふと、本部付きとして残された死霊兵士たちの姿を見回した。その兵士たちの中に、彼女には見覚えのある顔を見つける。顔に泥と血がこびりついたその死霊は、生前と同じ若々しさを保っている。エンネアは彼の傍に静かに歩み寄り、その名前を短く呼んだ。
「――新入り。安井といったか」
 若い死霊は静かに頷いた。彼の表情からは生前の恐怖や苦痛が消え、ただ残酷な現実を受け入れようとする諦念だけが浮かんでいた。
 エンネアは無表情のまま、淡々と問いを投げかける。その言葉は、第999懲罰連隊に編入された死霊兵士に許される、たった一度だけの慈悲であった。
「最後に、言い残したことはあるか」
 安井と呼ばれた死霊は、迷うように一瞬の沈黙を挟んだ後、静かに首を横に振った。死者が第999懲罰連隊を通じて遺言を伝えることは、生者にとって決して救いにはならない。それは、生者に対し「死は決して終わりではない」という冷酷な真実を突きつける行為に他ならないのだ。彼はその現実を、この都市でなおも戦い続ける、生き残った恋人に伝えることをよしとしなかった。
 代わりに、彼はエンネアに自身の遺書が隠されている場所を短く告げた。その遺書を恋人が見つけ出せるようにとの、死者のささやかな願いだった。
 エンネアは無表情のまま、その願いを静かに頷いて受け入れた。彼女は言葉を返さず、それ以上の慰めも与えることはなかった。それが第999懲罰連隊における人間性の限界でもあった。再びエンネアは振り返り、雪と炎が舞う戦場を見据える。死者たちが、罪の赦しを求めて戦闘を再開していた。
 醜の御楯として、彼ら彼女らは生者たちに代わり死に続ける。
 自らの罪、或いは人類がこれまで犯してきた数多の罪を雪ぐために。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​ 成功

第3章 ボス戦 『レールガンアンドロイド『ズムウォルト』』


POW 狙撃モードレールガン
【狙撃モードに切り替えたレールガンから音速】属性の弾丸を射出する。着弾地点から半径レベルm内の敵には【ソニックブームを発生させるほどの衝撃波】による通常の2倍ダメージを与え、味方には【援護射撃】による戦闘力強化を与える。
SPD 連射モードレールガン
指定地点から半径レベルm内を、威力100分の1の【連射モードに切り替えたレールガン 】で300回攻撃する。
WIZ 接射モードレールガン
【接射モードに切り替えたレールガン 】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【放電地帯】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
イラスト かすみ
√ウォーゾーン 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●職員室
「サクラ、私は報告にいくから。周りの情報を集めておいて」
「はい、指揮官殿。何かあれば呼んでください」
 蓮奈は校門をくぐり、未だ辛うじて校舎の形を維持している母校の校舎へと足を踏み入れた。
 今や高等学校としてではなく、蓮奈が所属する第一中隊の本部施設という役割以外を果たさなくなった校舎の中には、つい先日までは保たれていた日常の痕跡があまりにも生々しく残っている。冗談にしても、趣味が悪すぎる。何もかもが変わってしまった状況にあって、校舎の内部は見慣れたものに満ちていた。
 深く息を吐きながら、慣れ親しんだ廊下を足早に歩く。戦闘が小康状態に入ったこのタイミングで、|中隊長《学年主任》とこの後の動きを詰めておく必要があった。
 古びた職員室のドアを、いつもの調子で数度叩く。
「神崎です、入ります」
 中隊長は、彼が教師時代に使っていた席に座っていた。元から不健康な程に痩せがちであった彼の身体は、疲労と心労とでさらにやせ細って見える。ゆっくりと立ち上がってこちらを迎えた中隊長の横腹からは、薄汚れた包帯越しに血がにじんでいた。
「大声を出すと痛むんだ。神崎、悪いがこっちまで来てくれ」
 血を失った顔でそう言われては否応も無かった。そこら中に散乱するガラス片を踏み砕きながら、蓮奈は学年主任の座席まで歩を進めた。
「……第二小隊の状況を教えてくれ」
「戦死5、重症2です。重傷者は合流地点まで後送しています。車両は健在ですが、対大型機甲用の残弾が不足しています」
「戦死者の名前は」
「大崎、立花、安井、藤田、加藤です」
 そうか。中隊長という役職が似合わぬ教師は頷き、拳を額へと当てた。
 正直に言って、あれだけの戦闘を経た後の損害としては少ないほうだ。しかし、目の前の教師は生徒の犠牲をそのような尺度で割り切れるような人間ではないのだろう。
 彼は学生の動員や人体のサイボーグ化など、社会の行き過ぎた軍事化を辛辣に批判する絶滅危惧種のような教師だった。そのせいで、同僚の教師たちからは勿論、生徒たちからも煙たがられていたのだけど。
「神崎、よく頑張ってくれた。お前は大丈夫か」
「……はい。私の小隊は、まだマシな方ですから」
 明らかに死相を浮かべた相手からの気遣いに、たどたどしく答える。学年主任の顔には脂汗がにじんでいた。真っ青になった唇が再び開かれる。
「連隊本部から、知らせがあった。避難民たちは友軍主力に収容された。戦闘団は、当初の目標を達成した」
 つまり、自分達がこれ以上この街で戦う理由は無くなったわけだ。だが、明るい気分にはならない。後退命令か出たからと言って、煙のように消えてなくなれるわけではない。誰かが最後まで残って、他の部隊の後退を援護しなければならないのだ。そして、今この街に残る戦力で最もまともなのは、ほぼ弾切れのWT中隊と自分が率いる第二小隊だった。
「私たちが最後なんですね」
「私も残る。先んじて後退する部隊の指揮は、本部付の人形に任せる」
「先生は、どうして――」
 自身も負傷者として先に後退する部隊と共に下がれば、少なくともこの場で死ぬことも無いだろうに。理由を問おうと口を開いた瞬間、世界は轟音と共に暗転した。

●電磁投射砲
「……殿! 蓮……さん!」
 ここ数週間ですっかり聞きなれた声が、蓮奈の意識を暗闇から引き戻した。未だに視界はぼやけ、思考が混濁している。途切れ途切れに聞こえる声と甲高い耳鳴りだけが薄暗い世界に響いていた。
 自分は学年主任と何を話していたんだっけ? 混乱する意識の中で必死に思考をまとめようとする。埃が気管を塞いでいて息ができず、思い切りせき込んだ。やっと思考がまとまりを帯びてきた。多分、砲撃か何かが職員室を直撃したんだろう。身体じゅうが痛いが、耐えられない程ではない。幸いにして、腕も脚もまだついているようだった。
 奇跡的に自分の身体を避けて崩れ落ちた瓦礫をかき分け、蓮奈は辛うじて瓦礫と化した職員室から這い出す。不用意に手を突いた場所にあったガラス片が皮膚を突きさす。認めたくはないが、これは悪夢でも何でもないらしい。つい数分前まで自分がいた場所は、天井が崩れ落ち、もはや元の姿をとどめていなかった。
「蓮奈さん!」
 駆け寄ってきたサクラが、安堵した表情を浮かべながら手を差し伸べてくる。反射的にその手を握り返した。人間と同じように暖かい体温が伝わる。動転していた思考が、少しずつ落ち着き始めていた。
「中隊長は?」
 崩落直後の記憶は曖昧で、中隊長がどうなったのかは把握できていない。サクラは蓮奈の問いに答えず、ただ静かに首を横に振った。
「……そう。じゃあ、どんな攻撃だったかは?」
「砲弾が落下する様な音はありませんでしたが、複数個所で猛烈な閃光と音の後に爆発が発生しています。恐らくは――」
 電磁投射砲の直接射撃。どのようにして見つけたのかは分からないが、指揮所が置かれていそうな場所を狙ったのだろう。或いは、怪しい場所を片っ端から潰していったのかもしれない。
「隊に戻ろう。後退中の部隊には、そのまま後退を継続するように伝えて」
 学年主任は、中隊長は死んだ。しかしそれは、戦闘の終了を意味しない。中隊にいる数少ない大人が死んだのならば、誰かが役割を引き継がなければならない。そうしなければ、なす術も無く自分も死ぬことになるのだから。
「指揮官殿、WZ中隊が状況の報告を求めています」
「うん、私から話す。サクラは本部に残ってる対装甲火器を集めて車両に乗せて。ありったけね」
 結局、残ろうとした理由は聞けなかったな。蓮奈は最後に一度だけ崩壊しかけの校舎を振り返る。つい先日まで通っていた母校の校舎は、瓦礫の山へと姿を変えていた。
 再び視線を前へと向ける。一つ息を吐き、心を落ち着かせた後、携帯無線機に向けて口を開いた。
丹野・脩里
電磁投射砲……!コレはとんでもないですね
破壊力と狙撃力を併せ持つ兵器、次はアレの排除or妨害・時間稼ぎが次の目標となりそうです

自殺願望なんて有りゃしないです、むしろ死ぬのトラウマになってますよ
ましては『何度も死ぬ』なんてね
まぁでも、何度も死ぬことで他が少しでも助かりやすくなるのなら……何度だって死んでやる
死ぬなんて経験、しなくて済ませられるんならそのままやり過ごして欲しいですから

じゃ、さっきぶりですけど……もういちど、憑依お願いしますね
で、引き寄せて叩く。基本はこれだけ。
引き寄せられたら照準ブレるでしょうから、そういうコトができるコッチを優先して狙わざるを得ない筈。
だから……その間に逃げてね?

●昔日の姿
 猛烈な閃光が、火が傾き始めたO市全域を覆う。赤く染まり始めた空を一瞬真っ白に照らし、続いて耳を貫くような轟音が辺り一帯を震わせた。
 丹野・脩里は反射的に対爆姿勢を取る。目を開けることさえ困難なほどの眩しさの後に訪れたのは、崩壊する音と、すべてが制圧されたかのような静寂であった。
「また、とんでもないものを持ち出してきましたね……!」
 閃光と轟音の正体を理解するまでに、さして時間はかからなかった。脩里は先程の閃光と破壊が電磁投射砲によってもたらされた物だと反射的に理解する。心理的な衝撃は未だ晴れた訳ではないが、これまでの経験と文字通り血の滲む様な訓練が、彼女に状況の認識を強要していた。
 脩里は高鳴る心拍を抑えるよう大きく呼吸しながら立ち上がる。電磁投射砲の異質な破壊力がもたらした本能的な恐怖を意識の隅に押し込む。
 通常兵器とは桁違いの弾速と射程、威力を持つそれが戦場に投入されたという事実は、戦闘がまた次の段階へと至った事を意味している。自身の周囲や学兵たちが籠っている区画にさほどの被害が出ていないことを考えるに、先程の攻撃は戦力その物ではなく、その指揮系統を狙った物であると考えるのが妥当だろう。その証拠として、中隊指揮系以上の階梯にある無線周波数は、未知の攻撃があったにもかかわらず沈黙を貫いている。
 下手をすれば、友軍の指揮系統が先程の攻撃で根こそぎ壊滅した恐れすらある。このような状況で陣地に攻撃を加えられれば、籠る学兵たちはなす術も無く蹂躙されることだろう。
「これは、ちょっとマズいかな」
 発射時の閃光と砲声から、脩里は射手のおおよその位置を特定する。すぐさま通信機を取って低く静かな声で味方に状況を伝え始めた。仮に中隊なりその上の戦闘団なりの本部に生き残りがいたとすれば、状況を掌握させる必要がある。我ながら希望的観測ではないかと思わずにはいられなかったが、どれほど絶望的な状況であっても、味方のために必要な行動を省略する習慣を脩里は持たなかった。
 しかし、それは同時に、自分がこれから相対することになる敵の実力を冷静に認識する瞬間でもある。脩里の脳裏には、電磁投射砲の破壊力が鮮明に焼き付いている。建物を一瞬で瓦礫の山に変える程の火力は、これまで撃破してきた機甲兵器たちとは文字通り別次元のものである。
「間違いなく何度か死ぬだろうなぁ……」
 自ら進んで死を望む人間などいない。特にそれを一度ならず何度も経験している脩里であれば猶更である。彼女は死の冷たさと苦しみを幾度となく味わってきた。決して心地の良い経験ではない。
 しかし、トラウマとして脩里の心にこびりついている恐怖は、彼女の行動を妨げなかった。もう一度大きく呼吸し、さすように冷たい大気を身体へと取り込む。身体の熱を奪う冷たい空気は、気付け薬のように脩里の思考と覚悟とを鮮明にさせた。
 友軍の指揮統制が回復するまでの間、出来る限りの時間を稼ぐ。そのために成すべきことは明白であった。
「じゃ、さっきぶりですけど……もういちど、憑依お願いしますね」
 次の瞬間、脩里が感じたのは骨が内側から砕かれ、筋肉が無理矢理に引き伸ばされるような耐え難い激痛だった。
 肉体の主導権は悪魔に委ねられ、彼女の薄い肢体の輪郭が異様なほどに膨れ上がり、筋骨隆々の、しかし否定しがたい妖艶さを持った肢体へと変貌していく。
 何度経験しようとも、慣れるどころか記憶が恐怖を増幅させる感覚。脩里ができることは、歯を食いしばって耐え続ける事のみであった。死ぬことにも決して慣れることはないが、この悪魔に肉体を譲り渡す不快な感覚にもまた、決して慣れる日は訪れないだろうと脩里は激痛を耐えるための思考を弄んだ。
 痛みと共に訪れた変異が完了し、かろうじて残った理性で眼前の敵を確認する。再び発射準備に入っていたズムウォルトの電磁投射砲が、蒼い光を纏い輝きを増していた。その光景に、変異を終えた脩里の身体は反射的に反応する。隆々と盛り上がった異形の腕を振り上げ、強大な腕力で空間そのものを引き裂いた。
 空間の亀裂がズムウォルトを絡め取ると、砲撃を寸前に控えたアンドロイドは瞬時にその位置を強引に引き寄せられ、脩里の目前へと強制的に転移させられた。間髪入れずに、魔焔妖術により生み出された禍々しい焔が彼女の手中から溢れ出す。それは激しい熱波となり、ズムウォルトの機械の身体を一瞬にして包み込んだ。
 魔焔が美しいアンドロイドの人工皮膚を焦がし、強固な装甲を赤熱させていく。並の機甲兵器であれば一瞬にして機能停止する程の攻撃。しかし、ズムウォルトはそれを意に介する素振りすら見せず、電磁投射砲の砲口を脩里へと向けた。
「……ッ!」
 冷たい殺意を受けた脩里は咄嗟に回避行動へと移るが、ズムウォルトの照準はあらゆる行動を許さぬほどに早く、正確であった。
 脩里の視界が閃光に包まれる。衝撃の感覚すら感じる間もなく、電磁投射砲の放った弾丸が脩里の肉体を血煙へと変換する。
 脩里を排除したと判断したズムウォルトは、陣地への砲撃を再開しようと身を翻す。その所作に一切の歪みは無く、ある種の貞淑さすら感じる。能力者たちがこれまで戦ってきた機甲兵器など問題にもならぬ程に、ズムウォルトの戦闘能力は圧倒的である。見る者にそのような認識を強要するに足る光景であった。
「へ、へへ……まだ、終わりじゃありませんよ」
 しかし、丹野・脩里という√能力者、或いは歴戦の兵士は、ズムウォルトの絶対性を誇示する為の存在に甘んじることは無かった。
 周囲に飛散していた肉片と血飛沫が空中で収束を始め、瞬く間に異形の肉体へと再構成されていく。悪魔と融合することにより得られた禁忌の能力。即座の肉体再生を可能にするという、敵味方を問わず見る者すべてに恐怖を与えるであろう異能であった。その名状しがたい光景は、ズムウォルトの発揮した戦闘力に匹敵し、或いは凌駕するほどの悍ましさを見る者に与えることだろう。
 息も絶え絶えに再び立ち上がった脩里は、苦笑に近い歪んだ笑みを浮かべながら、擦れた声で言葉を吐き出す。
「一発撃って終わりだなんて、つれないじゃないですか。まだまだ、アテクシと踊っていただきますよ」
 死などという経験は、しなくて済むならそれに越したことは無い。特に、昔日の自身と似たような立場にある少年少女たちにとっては。
 美しき異形の姿へとなり果てたかつての少女は、眼前の美しく無慈悲な機械生命に向けて再び魔焔を放つ。昔日の姿を残した少年少女たちが後退する時間を稼ぐために。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

ジュヌヴィエーヴ・アンジュー
POW判定

|電磁投射砲《レールガン》遣いが指揮官機ですか。逆に言えば、脅威はそれだけ。
マインドセット。
大艦巨砲主義の亡霊、ここで討滅しよう。

『ハニカム』から『ホーネット』展開。『クイーンビー』で制御し、敵機を包囲して「レーザー射撃」を集中する。
損傷した機体は「特攻」させ自爆で「捨て身の一撃」を浴びせよう。抜けた穴は、また『ハニカム』から補充すればいい。
狙いは両腕と得物だな。特攻自爆の他に、『シュレッダー』で腕狙いの切断攻撃も命じる。遠近両面からの、間合いの異なる攻撃だ。避けづらかろう?
腕を落とせれば、得物の取り回しも難しくなろう。
そもそも機械が「武器を手に持つ」時点で、設計思想が間違っている。
クラウス・イーザリー
着弾箇所から砲撃地点を逆算してバイクで急行
折角避難民達の後退がある程度成功したんだ、これ以上の被害は少しでも減らしたい

ガントレットのワイヤーでの捕縛を活用して常に近接戦闘の間合いを保ちながらスタンロッドで攻撃

狙撃モードレールガンの発射態勢になったらレールガンに右掌で触れてルートブレイカーを発動し発射を止める
止め切れない時は武器落としの要領で銃口の向きを逸らしたり、ハッキングでシステムに割り込んで非√能力者に向けて攻撃が放たれることを防ぐ

この世界で生き残っても苦しいだけかもしれないけど
少しでも多くの人の生命が助かるように全力を尽くす
そこからどうするかは、その人達次第だ

※アドリブ、連携歓迎です

●僅かな、或いは永遠にも等しい時間
 夕焼けに照らされた戦場を見渡しながら、ジュヌヴィエーヴ・アンジューは上空で繰り広げられる状況に皮肉にも似た感情を抱いていた。
 戦場に出現した敵部隊の戦術的中核、ズムウォルト。機械生命たちがどのような意図でその名を用いているのかは知る由もないが、おそらくはかつて世界を席巻していた米海軍のイージスシステム搭載艦の最高峰、ズムウォルト級から取った物なのだろう。
 かつて大量の対艦ミサイルを用いた飽和攻撃から艦隊を護るべく設計されたイージスシステム搭載艦。その極北の名を冠する兵器が、奇しくもミサイルの代わりに無数の|蜂型ドローン《ホーネット》による飽和攻撃を受けている。
 その光景は、かつて冷戦の末期に生み出された兵器思想が、場所を変え、時代を越えて再演されているかのようであった。機械化され、高度に自律化された現代の兵器群が、再び数と質との熾烈な戦いを繰り広げていた。
 ズムウォルトはその手に握った巨大な電磁投射砲を縦横無尽に操り、接近を試みるホーネットを大遠距離から次々と撃墜している。戦場に眩い閃光と特徴的な砲声が轟く度に、空を埋め尽くさんばかりに展開している蜂の群れに大穴が穿たれる。今の所、無人機による突撃はその大半が迎撃されつつあった。
 しかし、そのような状況にあってなお、アンジューの瞳には焦燥よりもむしろ冷静な分析が宿っていた。
「あの|電磁投射砲《レールガン》は確かに脅威だが、それだけであるとも言える」
 こと戦闘に関しては何処までも合理の徒であるアンジューにとって、ズムウォルトの外観は理解に苦しむものであった。
 確かに、航空目標に対する高い探知能力と電磁投射砲の組み合わせによって発揮される防空能力は、圧倒的としか表現しようのない。しかし、それをわざわざ人型の躯体に搭載し、単一武装への過剰な依存を行わせる必要性がどこにあるというのか。
 兵器としては非合理的な、あまりにも人間の形を模倣しすぎている設計。意図は兎も角として、アンジューはその歪さに致命的な欠陥と状況を打開し得る活路を見出していた。
 どれ程強力無比な物であったとしても、単一の防空システムは必ずその処理能力を超える時が来る。アンジューが展開したハニカムから絶え間なく放出され続けるホーネットの波状攻撃は、この理論を実地で証明しようとしていた。
「冷戦の亡霊、この場で討滅して見せよう」
 アンジューの意を酌んだ|女王蜂《クイーンビー》が、ホーネットへと新たな指令を下す。半包囲の陣形をとったホーネットの群れが、再びズムウォルトに向かって殺到する。
 一切の損害を考慮しない突撃。しかし、それでもなお敵への接近は困難を極めた。ズムウォルトは電磁投射砲を連射モードに切り替え、猛烈な勢いで迎撃を開始する。電磁投射砲から次々と極超音速の弾丸が吐き出され、ホーネットの機体が冷たい空へと散っていく。
 しかし、その様に眉一つ動かすことなく、アンジューは補充を続ける。ハニカムから即座に新たなホーネットが群れへと加わり、大量のホーネットが撃墜されたとしても、後続の機体は躊躇なく突入を継続した。
 アンジューの冷徹な眼差しは、上空で繰り広げられている戦闘の苛烈さに惑わされることなく、状況の推移を正確に捉えていた。ホーネットの大群は完全な包囲を形成する寸前まで到達したが、ある一定距離でその前進は停滞し、ズムウォルトの防空火力にじりじりと押し戻されつつある。
 その光景は即ち、ズムウォルトの圧倒的な防空能力の証明に他ならない。しかし同時に、アンジューにとって意図通りの状況でもあった。
 ズムウォルトの索敵および火器管制システムは飽和状態にまでは至っていないものの、確実にその大半のリソースを防空戦闘へと費やしている。かかる状況こそが彼女が待ち望んだ物であり、他の√能力者に対してアンジューが絶好の機会をもたらしたことを意味していた。
 
 低く唸るエンジン音を響かせ、クラウス・イーザリーが駆るバイクが死体と化した都市を疾駆する。
 一連の戦闘から、敵の索敵能力はその大部分をレーダーに依存していると推察できる。だとするならば、市街地という環境はまさに格好の隠れ蓑だった。都市という環境は、レーダー波を乱反射させるコンクリートや鉄骨、複雑な構造物が密集するため、本来なら精密な索敵能力を持つ機械兵器にとっても対応が難しい場所である。彼はその特性をフルに利用し、ズムウォルトの警戒網の内側に入るまで、敢えて複雑な経路を選んで接近を試みていた。
 慎重に市街を進むクラウスの頭上で、ホーネット群が夕空に爆炎の花を咲かせる。鉄馬の鞍上からその光景を観察したクラウスは、アンジューが企図する所を正確に看破して見せた。容赦なく撃墜され、補充され続ける無人機群の様子から、アンジューの目的が敵の防空能力を飽和させることにあるのだと理解したのである。
「この状況、使えそうだね」
 対空戦闘に全神経を集中させられているズムウォルトは、地上戦闘への対応が著しく困難となっているはずだ。アンジューの展開する飽和攻撃は、クラウスのために用意された最上の援護射撃でもあった。
 この好機を逃してはならない。心中で静かな感謝を覚えつつ、クラウスは当初の計画を変更した。
 多少のリスクを負ってでも、アンジューの飽和攻撃が続いているうちに、最短ルートを取るべきである。そのように決心したクラウスは、握りしめたスロットルを一気に回しバイクを加速させる。彼は細道から広い国道へと飛び出すと一直線にズムウォルトへと進路を取った。
 高速連射を繰り返すズムウォルトの電磁投射砲の轟音が耳を劈くように鳴り響き、無人機の残骸が雨のように降り注ぐ。アンジューの目論見とクラウスの推察の通り、ズムウォルトは対空戦闘にそのリソースの大半を集中させていた。クラウスの視界に、正確無比な射撃を繰り返す美しいアンドロイドの姿が映る。相対距離はおおよそ数百メートル。現在の速度ならば、数十秒後にその懐へと潜り込める。
 バイクのハンドルを握る彼の手に、微かな緊張と明確な意志が宿った。
 クラウスの背後には、自らがかつて置かれたのと同じ境遇にある学兵たちがいる。彼ら彼女らには死以外の選択肢が与えられなければならない。たとえ、この世界で生きるという事が苦しみに満ちたものであったとしても。
 希望を失った青年は、自らの矜持を頼りに強大な敵へと突入する。ズムウォルトは未だ迫りくるクラウスに一切の反応を示していない。状況は理想的。しかし、歴戦の能力者であり兵士でもある彼は、戦闘において妥協を行う習慣を持たなかった。
 これほどまでに圧倒的な対空戦闘能力を保持する兵器が、索敵をレーダーのみに頼っているとは考えにくい。必ず近接センサーなどの短距離探知手段を併用しているはずだ。クラウスは敵の至近距離で何らかの探知が作動することを想定した上で、バイクを限界速度まで加速させた。
 冷たい空気を切り裂きながら突進するバイクが、美しく無慈悲なアンドロイドの懐に向かって一直線に突き進む。
 アドレナリンによって時間の流れが引き延ばされた世界で、ズムウォルトが電磁投射砲の砲口をバイクへと向ける。感情のない瞳がクラウスを見据えている。彼は迷いなくバイクから身を躍らせ、宙を舞った。
 一瞬の無重力感を味わった後、凍結したアスファルトの上を滑り、クラウスはズムウォルトの懐へと至る。もとよりチャンスは一度きり。彼にとってはそれで充分であった。
 自らの腕が電磁投射砲が放つ熱に焼かれる事にも構わず、クラウスはズムウォルトが持つ長大な砲身に右掌を叩きつけた。音を立てて彼の皮と肉とが焼け爛れる。ズムウォルトは無謀な挑戦者を肉塊に変えるべく、電磁投射砲のトリガーを引き絞った。
 果たして、クラウスの肉体を血霧へと変換するはずであった電磁投射砲の接射は不発に終わる。クラウスの右掌に宿った能力殺しが、√能力が集中するズムウォルトの電磁投射砲を一時的な機能不全へと陥らせたのだった。
 突破不可能とすら思われたズムウォルトの防空網に開いた、時間にして数分にも満たぬ隙。しかし、近代戦における数分は永遠を意味している。
 クラウスの勇戦を称えるかのように、命なき蜂たちの羽音が周囲の空間を満たしていった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

機神・鴉鉄
前章に引き続きパワードスーツに搭乗して参戦。

心情:損耗した主力部隊および避難民の撤退を確認
 当初の目的を達成…あとはこちらも撤退するだけですが…
 まだ、戦っている人がいるようですね
 死ぬまで時間稼ぎをするのか、攻撃の手が緩めば撤退するのか
 一度、連絡を取ってから方針を決めようと思います
 時間稼ぎの依頼があれば、引き受けます
 傭兵なので費用はいただきますが(報酬は何でもいい)
 すぐに撤退したいのであれば、パワードスーツで2~3人は担いで
 安全地帯まで移動の支援をしますが、どうしますか?

戦闘:√能力【暗黒の森の番犬】を使用、移動速度と
 攻撃力の増加をする
 市街地戦なので、遮蔽物に身を隠して移動、
 近距離から【技能:ダッシュ】で一気に距離を詰め、
 接近戦に持ち込み敵のレールガンを押し退け
 パイルバンカーを胴に打ち込む。または【技能:空中ダッシュ】
 で上空から降下して、敵の不意を突くのも戦術として
 考えておきます
 その他、退路の状況や確保にも注意を払いたいですね。
 一人で何でもはできませんが…
 
レナ・マイヤー
ぬぁー!
暴力で数の有利を粉砕してくる系の苦手なヤツが来ました!
逃げ切れたかと思ったのにー!
おのれうぉーぞーん!
…つまり、追撃はこれが最後ってことですかね。
任務の達成にむけて、もうひと頑張りです。

さて、ひとまず敵を捕捉しない事には話にならないですね。
戦場に散らしていたレギオンを総動員します。
【レギオンパレード】開幕です。
電磁投射砲の連射で大分削られそうで悲しいですが……必要経費です!
射角から敵の大まかな位置を特定し、そちらにレギオンを差し向けます。
そのまましらみつぶしに周辺を捜索。
各種センサーを用いて、敵の居場所を突き止めます。
で、見つけた敵を大量のレギオンで取り囲み、集中砲火です。
レギオンの火力では倒せないでしょうが…
まぁ、時間稼ぎにはなるでしょう。
その間に【レギオンネットワーク】を仲間に接続。
敵の居場所とか、逃走経路とか、行動パターンとか。
諸々連携して、仲間の√能力者に何とかしてもらう方向で!
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

で、撤退戦ね。んー?そうね、ここは|エナジードレイン《多重詠唱、料理》でなんとかするとしましょうか。
運動エネルギーを失えば音速もソニックブームを出すほどの衝撃波も出せないし、どれだけ連射しようとも豆鉄砲になりさがる。
接射されたら流石に痛いんで|生存技法《サバイバル》で回避するけども。放電地帯?そんなエネルギーの塊なんてエナジードレイン主体の今の私にはボーナスステージもいいとこよ。
で、吸収したリソースで敵の進軍予想地点に|魔法のワイヤーを形成して張り巡らせましょ。《インビジブル融合、ロープワーク》

●悪戦奮闘
「ぬぁー!」
 戦場を駆け巡るレギオンの視界を通じて被害状況を目の当たりにした直後。レナ・マイヤーは思わずと言った調子で憤然と叫んだ。
 敵の大ゴマたるズムウォルトが放った電磁投射砲の砲撃は、まさに正確かつ苛烈。戦闘団や中隊の本部施設が置かれていた建物群は既に跡形もなく吹き飛ばされていた。中隊以上の指揮系は軒並み沈黙しており、組織的な抵抗の根幹となる指揮統制が吹き飛ばされたことは明白であった。
 なによりも相手が悪すぎる。ズムウォルトは明らかに、機械兵器のハイエンドモデルであった。損耗がない状態の戦闘団全力で当たれるのならまだしも、その残骸に等しい戦力で相手が出来る存在ではない。レナ自身の能力との相性を考えても、単騎で数の猛威を粉砕し得る性能を持つズムウォルトの出現は悪夢以外の何物でもなかった。
 しかし、そのような存在が最後の最後に立ちはだかったということは、逆説的に敵にとってもこれが最後の駒ということになる。事実上、これがO市における最後の戦闘となることを、レナは直感的に察していた。
 状況は厳しいが、ここを凌げば本当に撤退戦は完遂する。この、長く悲惨な撤退戦が。
 レナはぐっと唇を引き締めると、もうひと踏ん張りと心の中で意気込んだ。
 事前に市街地に散開させておいたレギオン群に、レナは総動員をかける。予備も残さずに活用する、文字通りの総動員。小型ドローンの無数のカメラやセンサーが、一斉に彼女の指揮下で動き始める。
 敵の電磁投射砲の連射に晒され、撃墜される機体も少なくない。しかし、それでも彼女は構わず指示を続け、レギオンたちは敵の索敵網の隙間をかいくぐって周囲の戦場を虱潰しに捜索した。
 決して少なくない損害を甘受した結果として、指揮系統が消失した混沌が、敵の布陣状況や友軍の残存戦力という形となってレナの脳裏に描き出されていった。
 やはり、友軍の残存部隊は辛うじて統制を維持しているらしい。後退する友軍を援護すべく、殿として残ったのは、WZ中隊の残余とO市に残存している中では最も戦力を維持していた第二小隊であった。未だ組織的な抵抗を続けようとしている姿は健気と評し得る線を大幅に逸脱し、もはや悲劇的とすら表現すべき有様であった。
 しかしその彼らの周囲には、ズムウォルトだけでなく、大小様々な機甲兵器が展開し、じわじわと包囲網を狭めている。
「……これは、手が足りませんね」
 圧倒的な戦力差のもとで部隊が受ける圧迫は苛烈を極め、このままでは殿の部隊が完全に包囲されるのも時間の問題だった。レギオンによる妨害射撃を加えたところで、到底対処できる量ではないと判断せざるを得ない。
 焦燥を抱きかけたレナの心中を察したのか、レギオンリーダーが気遣わしげにセンサーアイを明滅させる。その健気に気が付いたレナは、自身の心を落ち着かせるべく、小さく息を吐き出した。
 レナが打開策を模索しながら再び神経を研ぎ澄ませようとしたその時、彼女の構築したレギオンネットワークが、戦場に見覚えのある二つの特異な反応を捉えた。彼女自身が戦いの中で何度か目にしてきた√能力者の存在である。
 レナは思考を巡らせる。あの二人ならば、あるいは劣勢を覆すことが可能かもしれない。そう考えた彼女は一も二もなく決断を下す。
 レナは即座に、展開中のレギオン達の能力の大半を索敵と通信基盤としての用途に集中させることを選択すると、二人の√能力者、そして殿として戦い続ける部隊へ向けてリンクの構築を開始した。レギオンが接続点となり、急速に相互の通信ラインが形成されていく。戦況を打開しうる最後の可能性に賭けて、レナは全力で通信ネットワークを張り巡らせていった。

 W.E.G.A.を操る機神・鴉鉄は、機体の各種センサーが映し出す断片的な情報から、おおよその戦況を辛うじて掴みつつあった。
 避難民の脱出は既に完了し、学徒兵部隊の大半もまたO市の外縁へと離脱を図っている。そのような状況で未だ残り、絶望的な抵抗を試みている部隊も存在しているが、それが死守命令であるのか後退援護の殿なのであるのかまでは判断できない。中隊規模以上の指揮通信系統は例外なく完全に沈黙し、精度の高い情報が得られないためであった。
 わずかな情報から自ら状況を推測しつつ、鴉鉄はW.E.G.A.の加速を制御して瓦礫と建物の影を縫うように飛翔させる。その動きは注意深くも確実に敵の注意を引く類の物であり、事実として鴉鉄は敵の攻撃を誘引する事を企図していた。
 死守にせよ殿にせよ彼ら彼女らが置かれた状況が過酷であることに変わりはないが、殿であった場合損害は少ないほうが良いだろう。鴉鉄の中にある薄い感情が、学兵たちに下された命令が死守でない事を前提とした行動を彼女自身に行わせていた。
 敵の中枢たるズムウォルトから放たれる電磁投射砲の射撃は、照準精度と火力双方を両立させたものであった。重力慣性制御力場を最大限に展開し、物理法則を嘲笑うような不規則機動を試みても、紙一重の回避を強要される。
 一瞬の判断ミスが即座に死に繋がる綱渡りの機動を続ける中、砲撃によって粉砕された瓦礫や建物の破片が次々とW.E.G.A.の装甲を叩き、鈍い衝撃を内部へと響かせる。鴉鉄はそれを意に介することなく、自身の意思を鋼のように固く保ち、絶え間なく、そして機械の様に精密に機体を操り続けた。飛来する砲弾の隙間を縫い、友軍の陣地へと接近を試みる敵機甲兵器を次々に捕捉すると、パイルバンカーの強烈な一撃を放つ。一機、また一機と機甲兵器を葬っていく鴉鉄の曲芸じみた戦闘。重力慣性制御をもってしても負荷を殺しきれないほどの急減速と急加速の連続は、彼女の身体を少しずつ、しかし確実に蝕み始めていた。
 義体の骨格が軋み、生体部品が苦悶の叫びをあげる。かすかな頭痛と狭まりつつある視界が、肉体が限界に近付きつつあることを否応なく知らせてくる。
 鴉鉄の身を削る悪戦に報いるかのように、転機は唐突に訪れた。
 機内のディスプレイに新たな情報が次々と展開し始める。それは、レナがレギオンネットワークを用いて臨時に構築した指揮統制基盤が本格的に稼働を始めた証左であった。
 ネットワーク支援によって敵味方の正確な位置が友軍全体に伝達され始め、鴉鉄は狭まっていた視界が一気に冴えわたる感覚を覚えた。
『鴉鉄さん、遅くなってごめんなさい! ご無事ですか!?』
『……戦闘続行に支障はない。 戦況は?』
 通信回線を通じ、レナから詳細な戦場の様子が伝達される。戦場に残った第二小隊とWZ中隊の残余は死守を目的としているのではなく、あくまで後退援護の殿であるという事実が、鴉鉄の感情を僅かに上向かせた。
 殿として残る第二小隊の指揮を執る蓮奈との通信も遅れて確立し、彼女らを突破すべく圧迫を強めていた敵機甲戦力への対処が迅速に開始される。明瞭になった敵味方の位置情報を用いることで機体の機動は一段とその鋭さを増し、鴉鉄が展開する一撃離脱戦術がより一層の猛威を振るい始めたことで、敵の進行速度は明らかに鈍り始めた。
 紙一重の回避と撃破を繰り返してきた鴉鉄にとって、レナによるネットワーク支援と蓮奈率いる第二小隊との連携は天祐であった。あくまで時限的なものであるにせよ、今この時、鴉鉄と第二小隊は戦術的な優位を確立しつつあった。
 敵の一隊を撃退し、鴉鉄が自らに一瞬の休息を許した時、ふと強烈な違和感を覚える。
 猛烈な速度で戦場を飛び回る中で、気付けば背後から放たれていた電磁投射砲の砲撃がその頻度を落としていたのだ。あの正確無比な射撃が一時的にでも沈黙している。一体何故なのか。
 その疑問への答えは、ネットワークに響く楽し気な声によって齎された。

「後ろの友軍は、機械仕掛けの鴉さんがいればどうにかなるでしょう」
 なら、私はあの厄介な砲撃を何とかする事にしましょうか。レナが構築した指揮統制基盤によってズムウォルトの射線を把握したアリス・セカンドカラーは、凍てつく風にエプロンドレスを靡かせながら楽し気に微笑む。
「さてさて、いったいどう料理したものかしら」
 アリスが言葉を紡いだまさにその瞬間、ズムウォルトが再び眩い閃光とともに電磁投射砲を発射した。
 猛烈な運動エネルギーをまとった砲弾は、冬の乾燥した大気を震わせ、狙い澄ましたように周囲の建物を容易く粉砕し、灰色の粉塵を高く巻き上げていく。戦場に立つアリスは、頬を歪めながら砲弾の通過した痕跡を観察した。
「要は、運動エネルギーの塊ってことよね」
 だとするならば、それを奪えばいいだけの話じゃない。アリスはレナが提供する敵味方の位置情報から次の射撃の目標に目星を付けると、ぽんと手を打ち鳴らし、その射線上に運動エネルギーを吸収するための力場を何重にも展開した。
 再び閃光と轟音が戦場を揺さぶる。しかし此度の砲弾は、アリスの形成した力場を通過するたびに運動エネルギーを急速に失い、やる気のない画家が描いた無様な放物線を辿って地面へと落下する。
 先ほどの物とは異なり控えめな着弾音が響き、それを見届けたアリスは小さく満足げに頷いた。
「うんうん、いいカンジじゃない?」
 莫大な運動エネルギーを伴う砲撃であっても、自分のエナジードレインが十分に有効であることを確認した彼女は、さらなる射撃に対しても同様の要領で対処を続ける。
 ズムウォルトの猛烈な射撃を完封する事こそ叶わなかったものの、それでもアリスの魔術は砲撃の大半を無力化することに成功した。
「ただ防ぐだけじゃ芸がないと思わない?」
 折角奪い取ったエネルギーである。有効に活用しなければ相手への礼を失するというもの。
 アリスはレナから送られてくる敵の進軍経路情報を利用し、敵の侵攻路に目星を付けると、吸収した莫大なエネルギーを凝縮させた超硬度の魔力線を張り巡らせる。
 鋼以上の硬度を持つ不可視の糸は、敵部隊の運動を妨害し、一時的とはいえ進路を完全に封鎖する事にすら成功するのだった。
『さぁて、機械仕掛けの鴉さん? 今なら本命を殴りに行けると思うのだけど、どうかしら』
『敵部隊の動きは完全に止まっています。 今なら確実に、少なくとも一撃は与えられます!』
 アリスはネットワークを通じ、遊ぶような調子で鴉鉄に促す。これまでの鬱憤を晴らすかのように、レナもまたアリスの提案に同調した。
『――確かに、悪くないかな』
 鴉鉄は短く応じると、W.E.G.A.を夕焼けに染まった空へと飛翔させる。
 彼女達全員の殺意を象徴するかのように、|炸裂加速式杭打機《パイルバンカー》が起動する鈍く重い音が、血のように赤い空に響き渡った。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

エンネア・ノウェムノイン
これより我が第999懲罰連隊は敵砲兵に対する陽動、及び友軍の撤退支援を開始する!
慈悲深き連隊長閣下より賜った棺桶をくれてやる。WZ操縦技能兵は迅速に騎乗し3機分隊を編成せよ。2機は私に続け!

麾下のWZ中隊を最前衛で進出。視界の開けたルートを選定し、敢えてマトにさせる。
名誉の撃墜は当然の前提だ。回避など赦さん。死んで友軍の礎となれ。
各機からのデータリンクと射線の逆算で敵狙撃手を発見次第、友軍に座標を共有しつつ我が隊は複数方向から接近。敵の潜伏予想地点一帯を火炎放射器で掃討する。

敵の砲狙撃、あるいは自ら放った炎で我々が全滅しようと友軍の脅威となる射点だけは焼き払う。
人類万歳。生者に栄光あれ。

●存在意義
 O市はすでに原型を留めないほどに荒廃していた。
 積もった雪は煤で汚れ、焼けた機甲や破壊された火砲が散乱している。散乱する瓦礫の中では、無数の学兵達の亡骸がが埋葬されることもなく横たわっている。
 それでも学兵部隊がなお崩壊の縁に踏みとどまっているのは、戦線の最前衛を第999懲罰連隊が引き受けているからに他ならなかった。
 彼らは遮蔽物のほとんどない場所を意識的に選び、敵砲火を己が身に集め続けている。
 連隊の兵士たちは損害を一切厭わず、それどころか敢えて死線へ飛び込んでいった。未だに生者達が組織的な抵抗を実施できているのは、この狂気じみた戦術を取る懲罰連隊の存在が故であった。
 特に、最近加わった死霊兵士たちの大半はO市にゆかりのある若者ばかりである。
 焼け落ちた故郷を、奪われた日常を思う死者たちの怒りは、その無言の戦闘に異様な迫力を与えていた。
 彼ら彼女らは生前と変わらぬ姿で、しかし生前とは似ても似つかぬ虚ろな眼差しをして、死を恐れることなく戦闘機械に銃弾を撃ち込み、迫り来る敵を屠り続ける。無表情のまま猛然と戦闘機械に肉薄し、装甲服が溶け、砕け散るその瞬間まで銃口の引き金を引き続けた。
 しかし、そうした懲罰連隊の献身的な防戦も、ズムウォルトの戦闘加入によって危機的な状況に陥っていた。
 比類なき砲撃精度と圧倒的な火力の前に、懲罰連隊の隊列が引き裂かれる。ズムウォルトの射線はほほ璧な精度で部隊の位置を読み、連隊は甚大な被害を受けつつあった。
「WZ操縦技能兵は迅速に騎乗し、3機分隊を編成せよ! 二機は私の直掩だ、かかれ!」
 状況を打開スべく、エンネア・ノウェムノインの号令が通信機を震わせる。状ンネアは連隊が保有する十数機のWZを三機一個分隊として臨時編成し、新たな中隊を急造した。
「これより我が第999懲罰連隊は敵砲兵に対する陽動、及び友軍の撤退支援を開始する!」
 エンネアは新編されたWZ中隊を連隊の最前衛に押し出し、敢えて敵の砲火が集中しやすい国道沿いを選択して前進を開始した。
 開けた道を進むWZ中隊は、まさに敵にとって絶好の標的である。閃光と轟音。ズムウォルトのレールガンが雷鳴のような射撃音を響かせ、隊列の機体が一機、また一機と爆散していく。
「名誉の撃墜は当然の前提だ。回避など赦さん。死んで友軍の礎となれ」
 WZを操る死霊達はエンネアの命令に従い、その破壊の瞬間まで自機の位置や敵弾道のデータを詳細にデータリンクへと送信し続けていた。WZの被撃墜を前提とした索敵によって、ズムウォルトの正確な座標や戦闘機械群の展開状況が部隊内データリンクへと逐次送信されることとなる。
 エンネアは送られてきた敵部隊の展開状況を確認すると、生き残ったWZを散開させ、敵が布陣する地点を包囲するよう前進を命じる。
 各機が火炎放射器をはじめとする火器による制圧射撃を開始すると、機械群の隊列に少なくない混乱が生じる。同士討ちを厭わぬほどに苛烈な射撃は、敵部隊の動きを鈍らせ、攻撃ではなく防御のための運動を強要する。
 後方へと放たれていたズムウォルトの砲撃が懲罰連隊に集中し、学生部隊に対する戦闘機械群の圧迫が弱まる。懲罰連隊のWZは次々と撃破されていくが、その穴は即座に死霊兵士たちによって塞がれていった。
「人類万歳。生者達に栄光あれ」
 O市で斃れた学兵を含む死霊兵士たちは、戦死を繰り返しながらも再び立ち上がり、淡々と戦闘を継続していく。
 激烈な犠牲を払いながらも、第999懲罰連隊はついに、ズムウォルトのそれを含む敵火力を大きく削ぐことに成功していた。
 払われた犠牲が膨大であったことは語るまでもない。しかし、それは懲罰連隊がその本分を果たしている証左でもある。
 生者達が支払うはずの犠牲を引き受けることこそが、懲罰連隊の存在意義であるのだから。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

テクニカル・一三七四
戦域の友軍は一部を除き後退中の様ですね
彼等に電磁砲での射撃が行われないように射手のズムウォルトへの襲撃を行います

ヘヴィバンパーを構えて【轢殺】を使用し道中の残骸を撥ね飛ばしつつ電磁投射砲の射点へ急行します
迎撃もあるでしょうが盾を構えたまま強行突破します
可能であればズムヴォルトも勢いのまま撥ねたい所ですね
接近後は後退中の部隊を狙わせない、残っている味方よりも私を狙わせる事を意識し近距離での射撃戦及びヘヴィバンパーでの轢殺を狙い圧をかけます

この任務も彼等の後退完了で終了です
可能な限りこちらで敵戦力を引き受けます

●量産機、高級機と相対す
 後退を開始した友軍部隊が廃墟の市街地を縫うように撤退を続ける中、唯一その戦闘力を維持している歩兵部隊である第二小隊のみが、取り残された形で戦場に展開していた。
 彼ら彼女らは廃墟と化した建物を盾にすることで、辛うじて敵機甲群の圧迫を受け止めている。神崎蓮奈は瓦礫の陰から部隊を統率し、機械兵器群の浸透を阻止せんと試みていたが、その努力はズムウォルトから放たれる電磁投射砲の着弾によって阻まれていた。
 敵部隊後方にズムウォルトが展開していることは明らかではあるが、重迫の支援すら断たれた彼女らの武装では、その排除など望むべくもない。
 学兵たちは分隊単位で廃墟を点々と移動しながら、綱渡りのような後退戦闘を強いられている。√能力者たちの支援があったとしても、その限界は間近であった。
「小隊指揮官殿、一三七四です。これより戦闘へと加入し、敵電磁投射砲を此方で引きつけます」
 その隙に其方は機甲兵器を。今や蓮奈と√能力者のみによって使用されている中隊指揮系を通して、テクニカル・一三七四の抑制された声が響く。蓮奈の了解を取り付けた一三七四は、先ほどまでの砲撃から敵の火点を特定すると、強大な性能を持つ敵機に対して躊躇なく行動を開始した。
 彼女は|重厚な大型装甲板《ヘヴィバンパー》を正面に構え、ズムウォルトが砲身を掲げる地点へと向けて最短経路を疾走する。
 戦場には破壊された機甲兵器の残骸が乱雑に転がり、その周囲には敵の中型機甲や大型機甲といった主力級の機甲兵器が幾重にも展開している。
 ズムウォルトの盾であり、学兵部隊を突き崩すための矛でもある機甲兵器は、一三七四の接近を感知すると一斉に砲口を彼女へと指向させる。機甲兵器たちはその全火力をもって無謀な挑戦者を殲滅せんと一斉に発砲を開始した。
 無数の榴弾が一三七四の周囲で炸裂し、弾殻と接触したヘヴィバンパーが火花を散らす。一三七四は重厚な装甲板を己の身体の一部のように操り、自らに襲い掛かる無数の砲弾を時に受け流し、時に回避する事によって前進を継続した。
 進路上に立ち塞がる小型機甲はヘヴィバンパーによって蹴散らされ、加速によって生じた運動エネルギーは中型機甲すらも弾き飛ばす。一三七四は怯懦とは無縁の精神と。兵器としての集中力とを迫りくる敵火力を跳ね除けるだけの衝撃力として変換し、あらゆる障害を粉砕しながら|目標《ズムウォルト》へと接近する。
 一三七四の突撃を探知したズムウォルト。彼女は迫りくる一三七四の姿を無感情に一瞥すると、躊躇なく電磁投射砲の砲口を向けた。
 次の瞬間、閃光と共に極超音速の砲弾が発射され、着弾と共に強力な衝撃波が周囲を薙ぎ払った。一三七四は巧みに残骸や破壊された車両を障害物として利用し、ヘヴィバンパーによる防御と組み合わせることで、辛うじて衝撃波による損傷抑制する事に成功する。
 電磁投射砲の着弾によって生じた衝撃波すら自らの突進速度へと変換した一三七四は、目標との距離を急速に詰める。この段階に至って、一三七四が発揮しうる速度は、ズムウォルトの迎撃可能速度をわずかに上回っていた。
 電磁投射砲の装填に要する僅かな時間を用いて、一三七四はズムウォルトに肉薄する。振りかぶったヘヴィバンパーがズムウォルトの機体に激突し、先ほどまでの砲撃とは全く性質を異にする轟音が戦場へと響き渡った。
 一三七四は敵を打った衝撃の勢いを利用して素早く体勢を整えると、ズムウォルトに密着する様な形で再び距離を詰める。強大な敵を打ち据えた大盾には深刻な損傷が見られたが、戦闘続行に支障はない。
 後退する部隊のために、自らを囮として敵火力を拘束する。これ程までに自身の性質と適合した任務が他にあろうか。
 強大な機甲兵器を相手に一歩も引くことなく、即席兵器をルーツに持つ少女人形は再び大盾を構えるのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

エルヴァ・デサフィアンテ
アドリブ連携歓迎
【第435分隊】
回収をヨシマサと隊長に任せ、殿へ。

さーて、カシラが出てきやがったか! あいつのコアに一撃ブチかましたいトコだけど……一発くらい良いか?
ま、撤退完了まであと少しだろー? ココが踏ん張りどころってね~。撤退完遂、やってやろうぜ!

んじゃ、攪乱兼防衛線の穴埋めと行こうか。
バースト1を変則活用。ズムウォルトへ砲撃した後に高速で駆け位置を欺瞞、形成された防衛線にて敵位置を把握しだい急行。すれ違いざまに「アデランテ」で切り裂き、撃ち抜き、吹っ飛ばす!
足の速さには自信あるぞ。…空は飛べねーけどな。

連射はまだしも狙撃モードには耐えきれねぇ。一々止まってらんないな~。
神代・京介
【第435分隊】計6名
ふむ、避難民は無事退避できたのか、これは朗報だな。
だが、こちらの戦闘団はほぼ壊滅状態、せっかく後退出来るようになったんだから、生き残ってる奴らは可能な限り後退させてやらないとな。
大物狙いより、助けれる命を助ける方が俺たちらしいだろ?

「今回は出し惜しみ無しだ。」
【夜天・鬼装機陣】で大型機を中心とした打撃部隊を召喚し、大型機はズムウォルトに突撃させ陽動を、随伴の中小型機には撤退支援の為の防衛線を形成させる。
「いきなり同族に攻撃されたら多少なりとも混乱するだろ?」
【影鴉】で戦場を把握しつつ、撤退中の部隊側に抜ける敵が居たら仲間に知らせる。
「防衛線を抜けたやつは任せた!」
駒門・クレイ
【第435分隊】の6名にて参戦
今回課せられた任務は「敵戦力の撃退」ではなく「主力の後退援護及び避難民護衛」であり、目的が達成されたならばこれ以上の戦闘は不要です。
残存する学徒兵の撤退を支援しつつ、こちらも後退しましょう。

殿軍として【無人戦車中隊】を主軸に敵に応戦しつつの後退を実施します。
戦車正面装甲は厚いので敵と正対しながらの後退が有効でしょう。たとえレールガンで装甲を抜かれても、重要部でなければ無人車両なら即座に行動不能になる訳ではありませんしね。
連射に対しては装甲以外に特に対策は取れませんが、狙撃に対しては「弾道予測」による「高出力レーザシステム」が役に立つかもしれません。
ヨシマサ・リヴィングストン
【第435分隊】計6名
ふふ~、大将が出てきましたね。ここからが撤退の正念場っすね!
ボクたちはスミカ隊長の装甲車とボクの装甲車での二手に分かれます。これで各々生き残っているWZ中隊と第二小隊を拾って完璧な撤退としましょう!殿は他の隊員の皆さんがやってくださる手筈です。
ボクは第二小隊(※変更可)の運搬を担当します。車を運転してる間はボクは敵に攻撃することは出来ませんので防御は小隊の皆さんにお任せします!【神経過駆動接続】で皆さんの反応速度を上げてもうひと踏ん張りしてもらいましょう。
さあ、戦線離脱はもうすぐです。命をあきらめちゃダメっすよ。いい言葉でしょ?うちの隊員の言葉のパクリなんすけど。
ラピス・ノースウィンド
【第435分隊】の6名にて参戦です。
隊の任務はあくまで【撤退戦】です。文字通りの逃げるが勝ちです!
…ほんとはぶっ壊したいけどソレは今じゃないのです。助けると選んだ以上は初志貫徹なのです。

と、いうわけで皆さんの収容が完了するまでは陽動としてグラップルワイヤーでちょっかいかけて煽ります!
速射についてはガントレットレッド内蔵バリアで受けますです。
狙撃モードは撤退支援してる皆さん側には撃たせないように誘導、極力中空に撃たせるよう飛び躱します。
脅威判定が低い、無視されるようなら1回だけ機砕雷をぶちこみます!

収容完了次第ラピスも退いて、撃破は他部隊に任せます!
次あった時は、徹底的にぶちのめすです!
スミカ・スカーフ
【第435分隊】旅団6人参加
【心情】
本中隊の隊長は…そうですか、RIP。超長距離からの電磁砲でした、敵もなりふり構わず焼き払う方針に変更したようですね。主幹をとられるのは失態ですが、こんな戦況です。もっと早くてもおかしくなかった。悲しんでいる暇などはありません。動けるものは疾く行動を。死んだ者の生き様と魂は、皆の”ここ”にあるのですから。
【行動】
所有している兵員輸送車を使用して、撤退する中隊を援護します。必要に応じて√能力でWZ中隊を強化します。撤退が完了したことを確認したのち、味方の団員を援護しにUターン、√能力を魔道具とライフルで遠距離から敵足元を狙い撃ちし爆発に巻き込みます。

●殿軍
 地平線に消えつつある太陽が赤く空を染め上げている。疎らに降り続く雪を引き裂くように、二台の装甲兵員輸送車が市街地の一隅――或いはかつてそのように表現できたであろう瓦礫の山――の傍に停車した。携行型対機甲兵器を担いだ学兵たちが慌ただしく行き来するそこは、殿軍を務める第二小隊が籠る地点だった。
 第二小隊を率いる神崎蓮奈は、疲労によって耐えがたい程に重くなった頭をかろうじて持ち上げる。前方の兵員輸送車から降り立ったスミカ・スカーフと、後方の車両の運転席からこちらに向けて手を振るヨシマサ・リヴィングストンの姿が見えた。
 蓮奈は苦しげな面持ちでスミカの方へと歩を進める。
「第二小隊、神崎小隊長ですね? 435分隊、スミカ・スカーフです」
 スミカが短く名乗ると、蓮奈は姿勢を正し、小さく礼を返した。435分隊。その名を聞いた学兵たちの表情には、僅かに安堵の表情が浮かんでいた。
 中隊長のみならず、連隊本部までもが砲撃で沈黙したという一報は既に各所から漏れ聞いており、ただでさえ潰えかけている学兵たちの士気をさらに奪っている。蓮奈が率いる第二小隊はその唯一の例外であったが、指揮官である彼女の表情には、隠しきれぬ疲労と痛々しいまでの気丈さが滲んでいた。
 スミカは言葉を続ける前に、軽く周囲を見回す。負傷者や死体を運び出しきれず、放置されている様が目に留まった。軽く息を呑みながらも、すぐに思考を切り替えるように蓮奈へ向き直る。
「貴女の部隊の状況も含めて、戦況は、ある程度把握しているつもりです」
 簡潔な言葉ながら、スミカの声には僅かな痛ましさが混じっていた。蓮奈は一度うつむいて深く息を吐くと、自分に言い聞かせるように状況を説明する。学年主任、すなわち中隊長の戦死。重迫を含む戦闘団本部の壊滅。敵第一波の撃退。そして、第二小隊は今少しここに踏みとどまる必要があるという現実を。
 スミカは蓮奈の説明に頷きながら、435分隊として取りうる手段を検討する。機甲兵器の圧迫はもとより、特にズムウォルトによる超遠距離砲撃が数度繰り返されれば、第二小隊は抵抗を続ける間もなく薙ぎ払われるだろう。
「必要なのは、ズムウォルトとその他の機甲兵器群を分離する事でしょうね」
 ズムウォルトとその他の機甲兵器の連携を乱す策を講じなければ、少なくとも殿としてここに残った者達は全滅を免れない。蓮奈もまたスミカと同様の考えに至っていたらしい。苦しげな表情で頷いて見せた。
「では、435がズムウォルトと大型機甲を引きつけ、何とか揺動します。その間に、第二小隊は中型以下を処理してくれれば。……いかがですか?」
 スミカの落ち着いた声色は、蓮奈が酷使されてきた心身に微かな安堵を呼び起こしたようだった。彼女は微かに微笑みを作り、多少生気の戻った表情で頷いて見せた。蓮奈は学兵であったが、実戦という業火によって確実に鍛えられている様であった。それが良いか悪いかという判断は別として、彼女はスミカが言わんとしている内容を正確に理解している。435分隊と第二小隊との役割分担こそが、まさに生存に直結する道標であるということを。
「小隊には、まだ多数の対装甲兵器が残っています。市街の地形を活用すれば、中型主体の群れ程度なら跳ねのけられます。……皆さんにおんぶにだっこ、というわけにもいきませんから」
 蓮奈の決意に同調するように、彼女の周囲で待機していた学兵たちが小さく頷く。銃を持つ手は未だ心許ないが、その瞳は折れていないようであった。
「大変結構。私も、私たちも最後まで付き合います。後退するときは一緒に。生きて帰りましょう」
 かくのごとくして、殿軍として奮闘する第二小隊の元に435分隊が合流し、各々が役割を遂行するための体制が整った。
 蓮奈とスミカの会話の様子を見守っていた435分隊の分隊員達は素早く散開し、蓮奈の率いる学徒兵たちも慌ただしく迎撃準備を整える。ごく短時間の打ち合わせで、皆が示し合わせていたように行動を始める。しかし、そうせざるを得ないほどに、時間は残されていない。都市に吹きつける冷たい風音の合間にさらなる砲撃音が響き渡り、√能力者と学兵たちを本格的な戦闘へと駆り立てようとしていた。

 ヨシマサ・リヴィングストンは、崩れかけた廃墟の一角で待機していた装甲兵員輸送車のハッチを開け放ち、第二小隊から担がれてきた負傷兵を次々と収容していた。
 装甲車内部では、焦げ付いた肉のにおいと薬品の刺激臭とが混ざりあっている。気が滅入るような空気を紛らわせるように、ヨシマサは負傷者たちに冗談めかした口調で語りかけた。
「戦線離脱はもうすぐです。まだ、命をあきらめちゃダメっすよ」
 良い言葉でしょ? まぁ、これってうちの隊員の言葉のパクリなんすけどね。
 ヨシマサの言葉によって、土気色になった学兵たちの顔にほんの少しだけ生気が戻ったように見えた。無論、その言葉が楽観論に近い物であることを、彼自身も理解している。しかし、この場にいる学兵たちに最も重要なものは希望や労りであることもまた事実であった。
 ヨシマサは兵員輸送車に負傷者を収容する作業と並行して、周囲の学兵たちにニューロリンクを接続する。必ずしも練度が高いとは言えない学兵であったとしても、ヨシマサが提供する神経接続による支援を受ければ、状況に対する対応能力は格段に向上するだろう。
「これでみんなの反応速度とバイタルをちょいと底上げします。|戦闘機械《アイツら》より先に動けるようになる……かもっすよ!」
 外では轟音が絶え間なく響き、砲弾の衝撃で装甲車の側面がわずかに揺れるたび、車内の誰もが呼吸を詰まらせる。だが、ヨシマサの軽口は途切れなかった。わざと大きく笑い声をあげることで、彼は少しでも死の匂いを遠ざけようとしていた。
 
 ヨシマサが学兵たちを激励している時を同じくして、神代・京介は廃墟と化した建物の一室から冷たい風の向こうに散在する敵影を鋭い瞳で追っていた。
 京介の視線の先では光学迷彩を展開した影鴉が機械兵器のセンサーを欺きながら軽やかに飛び回っている。彼の脳裏には、影鴉から送られてくるリアルタイム映像が幾重にも重なっていた。影鴉が映し出す映像には、道道の隙間を縫うように展開する中型機甲や、国道沿いに展開する大型機甲の砲塔。さらには、後方で佇むズムウォルトの姿までもが映し出されている。
 京介は映像で得た情報を射撃や部隊展開のために必要な情報に変換した上で、ヨシマサが構築したニューロリンクを介して部隊全体へと送信する。敵は既にこちらの拠点を狙って動き始めている様子が見て取れた。
「ズムウォルトの位置と脅威度の高い戦闘機械の群れをマークした。そのうち、大型機甲を含む群れは3つ。第二小隊側に抜けてきそうなら迎撃頼む」
 電磁投射砲の一撃。あるいは、複数の大型機甲を含む敵部隊の同時攻撃を受ければ、学兵の大半は耐えられない。戦力の薄い現状では、どれをとっても致命傷となりうる。神代の鉄面皮から感情を読み取ることはできないが、脳裏には建物にこもる学兵や負傷兵の姿が映し出されていた。
 
 駒門・クレイは第二小隊が守る区画のさらに前縁。第二小隊が形成している阻止線の第一線となる位置へ、落ち着いた足取りで歩を進めていた。
 彼女の周囲には無数の無人戦車が連なり、凍てついた道路の上でキャタピラを軋ませている。いずれも人類がかつて主力戦車として製造し、現在では少女人形たるクレイの制御下で動く無人の90式戦車である。各車両の砲塔は前方の開けた空間を睨み、対大型機甲兵器としての威圧感を放っていた。
『無人戦車中隊は、KP1やや後方に展開し火点を形成します。大型機甲はこちらで押さえますので、皆さんは中型を優先して狙ってください。無人戦車の動線を送りますので、そちらの対機甲チームと射線が被らぬようご注意を』
 第二小隊の小隊指揮系に繋がる無線へと声を吹き込みながら、クレイは背後の無人戦車へ命令を送る。中隊各車は国道を管制できる位置に分散して配置されている。敵大型機甲兵器を効率的に撃破するための配置であると同時に、ズムウォルトの砲撃を受けた際に生じる被害を最低限に押させるための物でもあった。無人戦車であるが故に、直撃を受けたとしても一撃で戦闘不能になる可能性は低いが、決して楽観し出来る火力でない事も確かであった。
『各車、APFSDSを装填。友軍の動きに注意』
 人形特有の落ち着き払った声が電子ノイズに載って響き渡り、ささやかな秩序をもたらす。その秩序が長く続くかは未知数だが、少なくとも第二小隊の学兵たちにとっては、このわずかな秩序と戦車砲の火力こそが命綱になるはずだった。

 鋼鉄の足音が凍った地面を踏み固めるように響く。それは、再編を完了させた戦闘機械群が再度本格的な攻撃前進を開始した証左であった。
 空には偵察を目的としているであろうナイチンゲールの残余が旋回し、地上部隊の中核を担う大中機甲兵器の砲塔が第二小隊が籠る陣地を捉えるべくゆっくりと動き始めた。都市の死骸と化した市街のあちらこちらで、金属が軋む異音が不気味に響き渡った。
 戦闘機械群の後方、ズムウォルトの周辺は無機質な殺気に満ちている。青白い光を纏う巨大なレールガンを保持する極めて強力な戦闘機械は、ナイチンゲールが齎す情報に基づき第二小隊と435分隊の企図を分析している。
 最も早く敵へと突入を開始したのは、ズムウォルトと同様に蒼光を放つラピス・ノースウィンドであった。彼女は恐るべきアンドロイドの視界に割って入るかのように細身のワイヤーを勢いよく投げ放つ。生身の人間であればおよそ真似できない軌道を描き、戦闘機械の車体や倒壊したビルの骨組みにピタリと喰いつくグラップルワイヤー。ラピスはそれを敵への妨害を行う武器としてだけでなく、急激な機動変更を行うための道具として活用し、赤く染まった空で美しい空中機動を繰り返してみせた。
「さぁ、こっちですよ! ぼーっと突っ立ってないで、かかってくるです!」
 ラピスの快活な声が冷たい空気を震わせ、ズムウォルトの意識を惹きつけた。彼女の意思と連動するかのように中型機甲たちが一斉に砲身を振り向け、ラピスに照準を合わせる。しかし、ラピスは機甲兵器の鈍重な動きを嘲笑うかのように次々とワイヤーを射出し、重力を無視するかのような飛行で敵の射線を大きく乱す。その機敏な陽動に引きずられるかのように、ズムウォルトが持つ電磁投射砲の砲口も、わずかにラピスの方へ指向を始める。
 ズムウォルトのレールガンに蒼光が宿る。眩い閃光と共に撃ち放たれた極超音速の砲弾は、ラピスの躯体を捉えられこそしなかったものの、空気そのものを裂く強烈な衝撃波を巻き起こした。周囲の建物の壁面が砕け散り、塵と破片が吹き上がった。
 ラピスはワイヤーを巧みに掛け直して加速と軌道変更を繰り返す。撃たれた弾丸はラピスが誘導した軌道へと外れていき、味方陣地から大きく逸れた建築物の残骸に着弾する。
 不規則な機動を描いて飛翔するラピスを叩き落とすべく、ズムウォルトは電磁投射砲の発射方式を狙撃から速射へと変更する。その動作を見てとったラピスは、すかさずワイヤーを掛け替え、回転しながら勢いよく建物の上部へと着地し、間髪入れずにすぐさま次の跳躍へ移る。二連、三連と甲高い発砲音が廃墟の街並みを震わせる。
 次々と音速に匹敵する砲弾がばら撒かれ、破砕されたコンクリート片と鋼鉄の破片が舞い上がる。ラピスはグラップルワイヤーを次々と繰り出しながら、綱渡りのような回避運動を繰り返している。敵弾が掠める度に爆ぜる衝撃波は凄まじく、遠方のビルの窓ガラスが砕け散るほどの衝圧がラピスの身体を殴りつけた。痛烈な空気の振動で肺から息が抜け、わずかに体勢を崩しそうになるが、彼女はスラスターの推力とワイヤーの機動を組み合わせ、粘り強くズムウォルトの注意を惹き続けた。
 ズムウォルトの狙いが完全にラピスに固定されはじめる。その刹那を狙ったかのように、エルヴァ・デサフィアンテが廃墟の陰から疾風のように跳び出すと、凄まじい加速を伴う高速機動でズムウォルトの側面を強襲する。バースト1。彼女に設けられた出力制限を一時的に解除する事によって齎される圧倒的加速は、ラピスの撃墜に集中していたズムウォルトの不意を突くことに成功した。
 その恐るべき探知能力によってエルヴァを探知したズムウォルトは即座に砲口を新たな敵手に向けて指向させるが、一瞬の後れを取ったままエルヴァの突撃をまともに受ける形となった。
「まずは一撃ッ!」
 エルヴァ手にするアデランテにマウントされた銃剣から繰り出される斬撃が、ズムウォルトの美しい躯体を引き裂く。手ごたえはあった。エルヴァは笑みを浮かべると、さらにもう一撃とばかりに振りかぶるが、ズムウォルトが咄嗟に放った電磁投射砲の接射がこれ以上の深追いを妨げていた。
「ちいっ! 物足りねぇが、深追いも出来ねぇな」
 自分達の目標はズムウォルトの撃破ではなく、友軍の撤退支援である。手段と目的をはき違えることを良しとしないエルヴァは、これ以上の追撃は無益と判断し、即座に離脱機動へと移る。ズムウォルトへの揺動が一定の成果を上げた以上、優先すべきは第二小隊の援護であることを彼女は理解していた。
「ま、ココが踏ん張りどころってね」
 突撃の速度を保ったまま、廃墟の壁面を一息に駆け上り残影を伴いながらエルヴァはズムウォルトの射程から一時離脱するのだった。

「ここまでは何とか計画通り。だが、今回も出し惜しみが許される状況ではないな」
 ラピスの揺動とエルヴァの奇襲によってズムウォルトに生じた隙。その僅かな猶予を、戦況を見守る京介は見逃さなかった。
 彼はあらかじめ都市の各所に展開していた鹵獲兵器を一斉に起動させる。
 再び戦場へと現れた機甲兵器の軍勢は、かつての"同族"へと砲口を向け、直ちに囮行動を開始する。ズムウォルトがエルヴァの攻撃によって崩れた体勢を整えるのに要するわずかな時間を狙って、その軍勢のうち最も装甲が厚い個体が真正面から突撃を敢行した。
 前衛となる大型機甲がズムウォルトの照準を奪う間に、随伴する中小の小型機甲が散開し、通りや建物裏手をカバーするように展開していく。
「いきなり同族に攻撃されたら多少なりとも混乱するだろ?」
 友軍として復活を遂げた戦闘機械の動きは、ヨシマサが構築したニューロリンクを介して第二小隊の学兵たちと共有されており、学兵たちは新たに生まれた盾を活かして中型機甲の足を止め、対装甲兵器で確実に仕留める。京介と第二小隊が望んだ理想的な連携のかたちが、現実のものとなりかけていた。
 いまやズムウォルトの火力はラピスと京介によって完全に誘導され、凶悪な電磁投射砲の脅威は第二小隊を脅かすことは無い。殿を務める優秀かつ不運な小隊が無事に生き残る可能性は、少しずつ増しつつあった。
 
 市街地の奥から響く一際重い駆動音が、冷えた空気をいっそう張りつめたものへと変える。ズムウォルトの砲撃支援を受け前進するはずであった本命の敵大型機甲と中型機甲の混成部隊が、ついにクレイ率いる無人戦車中隊の阻止線へと到達しつつあった。
 瓦礫や廃墟がひしめく国道を進むその様は見る者に恐怖を与えうる光景であったが、クレイは隷下の戦車に淡々と命令を与える。彼女にとって大型機甲は脅威ではなく刈り取るべき獲物である。獲物に恐怖を覚える筈もない。
『国道二時方向、戦車、徹甲、各班集中。前へ!』
 市街地戦線という制約は、味方にとっても敵にとっても一長一短である。遠距離から砲撃を加えられれば学兵など吹き飛ばされる危険が高いが、敵もまた建物や瓦礫の死角を縫うようにしか前進できず、そこが逆に罠となる。とりわけ無人戦車群が待ち構える至近距離に入れば、重装甲を誇る大型機甲ですらAPFSDSによる貫徹を免れがたい。重く唸る推進音が至近まで迫り、やがて交差路の先でちらりと巨大な砲塔が姿を現した瞬間、クレイは無線へと鋭く叫んだ。
『全車撃てッ!』
 次の瞬間、複数の無人戦車から一斉にAPFSDSが放たれた。衝撃音が廃墟の壁面を反響し、路面に降り積もった雪が一斉に吹き上がる。僅か数百メートルの距離で放たれた砲弾が敵大型機甲の砲塔や上部装甲へ突き刺さり、浸徹体が一瞬で大型機甲の内部へと到達する。一撃で大型機甲の主砲システムと内部機構を破壊し尽くされた大型機甲は、巨大な鋼鉄の塊と化して炎を吐き、甲高い音を立てながら擱座した。
『LAM手、前へ! 前へ!』
 無人戦車の圧倒的な火力に呼応するように、第二小隊の学兵たちも携行型対装甲兵器を発射する。先ほどからヨシマサが構築したニューロリンクが彼らの感覚を研ぎ澄ませており、射撃の速度も精度も格段に高まっていた。学兵の対装甲射手が一斉に引き金を絞るたびに中型機甲の装甲板は爆煙に包まれ、あるいは関節部を砕かれて崩れ落ちていった。

「いまならば……!」
 クレイと第二小隊が一息に敵機甲の主力を打ち破ったことを認識したスミカ・スカーフは、すぐさま蓮奈へ後退を進言する。蓮奈の表情には一瞬躊躇の色が浮かんだが、次の瞬間には小隊指揮系に声を吹き込んでいた。
『第二小隊、分隊単位で車両に搭乗! 各分隊長は乗車完了後ただちに合流地点まで後退!』
 蓮奈の鋭い声が小隊無線を貫き、学兵たちが素早く動き出す。間髪入れず、重傷者や負傷者たちを運んでいたヨシマサの装甲車と、スミカの装甲兵員輸送車へも、学兵が続々と搭乗を始める。
 やがて装甲車とトラックのエンジンが一斉に唸りをあげ、第二小隊が段階的に陣地を捨てていく様が見られた。蓮奈は小隊の真っ先に退くのではなく、最後尾に位置する車両へとサクラを伴って乗り込む。視線を走らせれば、まだ敵は完全に引き下がったわけではない。瓦礫の向こうには生き残った機甲兵器の一部が、明らかに追撃を狙って前進を始めているのが分かった。
 列の末尾に、スミカとエルヴァが合流する。エルヴァは先の突撃で赤熱したままのアデランテを再び握り、口元に笑みを湛えていた。
「さて、最後にもうひと働きしようじゃねぇか!」
 軽口の裏に荒ぶる戦意を宿すエルヴァは、殿役を自ら買って出るかのように車列の後方へと向かう。スミカも自らが操る兵員輸送車を車列後方まで移動させ、運転をダミーに任せると窓から身を乗り出し、SCAR-Hを構えた。
『435各員、これより第二小隊と共に後退します!』
 敵の小型機甲が数に任せて詰め寄ってくる。その俊敏さを生かして細い道道に回り込み、再び車列の横腹を捉えようとしている気配があった。スミカはニューロリンクを介してヨシマサや神代たちが送ってくる敵情報をすばやく確認すると、国道と道道との合流地点に発砲した。
 単純な小銃弾ではなく、暴走寸前まで魔力が込められ、淡い燐光を纏った魔弾と化した弾丸は、大気を切り裂きながら飛翔する。魔弾は小型機甲の群れの只中に着弾すると同時にそのうちに込められた魔力を開放し、衝撃波と化して形而下の世界へと影響を生じさせる。スミカが一息に1マガジン分の魔弾を放ち終えた時、交差路に残っていたのは原型を留めぬ程破壊された小型機甲の残骸であった。
 こうして車列は排気と鉄錆びの臭いを撒き散らしながら廃墟の街路を抜けはじめる。車列が生み出す轍を追うように、機甲兵器の一団が追いすがるが、スミカが放つ魔弾と、エルヴァの射撃がそれらを牽制する。さらに京介とヨシマサから共有された位置情報は、ラピスとクレイが相互に援護し合いながら敵の大型機甲やズムウォルトからの追撃を遮断していることを示していた。
 この後もどれほど追撃が続くかは予測できない。あの蒼光を纏った脅威、ズムウォルトは未だ健在である。
 薄暗くなった空の下、殿軍として後退援護に徹する435分隊と、最後列に蓮奈を含む学兵が乗り込んだ車両とが、瓦礫の街路を進んでいく。
 決死の後退は、今まさに最終段階へと移り始めていた。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

ビッグ・タイガー
当初の目的は達成、こっからは延長戦だ
『チームメイトを置き去りにはしない』
『|Show your guts《気合い入れろ》!』
(手短な文章通信またはラジオ音源の継ぎ接ぎで友軍とやり取り)

瓦礫なんかを融合装甲に取り込み継戦能力を底上げしながら前進
攻撃を喰らう端から装甲を造設
奴に接近して外装を|切り離す《パージ》
|反応装甲《リアクティブアーマー》みてぇに吹っ飛んだ外装で弾丸を弾く
次弾を撃たれる前に、右腕のパイルバンカーを叩き込む

(|勝ち目無し《NO WIN SITUATION》とでも言うつもりか)
(クソ喰らえだ)

(決意した人類の強さは確率では測れない)
(だから一緒に戦うのがなにより楽しい)

●結末
 第三次世界大戦の戦況をそのまま体現したかのような荒廃した市街地。その中を、複数の装甲車が全速で疾駆している。この荒廃した都市で、最後まで戦闘機械と対峙し続けた第二小隊の車列であった。
 装甲車とは名ばかりの半壊寸前の脆弱な車両ばかりが繋がる車列。その最後尾にあって、神崎蓮奈は助手席に身を沈めながら無線機に口を寄せ、各分隊へと撤退経路の最終指示を下した。小隊員はみな例外なく深い疲労に浸りきっていたが、ようやく安全圏へと退避できるという安堵が、彼ら彼女らの意識を現実へとつなぎ留めていた。
 しかし、戦闘機械の群れはなおも追撃をあきらめたわけではない。車列の後方からは小型と中型らしき機甲兵器がその躯体を軋ませる音が迫っている。蓮奈は舌打ちをしながら装甲車の上部ハッチを開き身を乗り出すと、後方に向けて小銃を構える。隊列を追い立てるように、小型機甲と中型機甲からなる一群が迫っていた。
「全車、このまま速度を維持。発砲可能な者は後方から接近する機甲兵器を迎撃して」
 頬を割くような寒風に顔をしかめながら、蓮奈は小銃の引金を絞る。彼女の発砲に促されるように、第二小隊の車列から後方に向けて小銃弾と機関砲弾の雨が降り注いだ。
 群れの先頭を進む小型機甲が火花を上げながら擱座し、敵の機動が僅かに鈍る。その様を見て蓮奈が一瞬の安堵を抱いた次の瞬間、学兵たちの希望を嘲笑うかのように雷鳴にも似た轟音が頭上を切り裂いた。
 幾度となく耳にしていた電磁投射砲の砲声。それを認識するよりも早く、装甲車のフロントガラスを突き破るかのような衝撃が車体を襲った。車体が浮き上がり、視界が大きく反転する。現実離れした光景が、一秒が何倍にも引き延ばされたかのようにゆっくりと蓮奈の視界いっぱいに広がっていた。
 
 煙が目に滲みる。周囲に音は無く、耳の奥では甲高い耳鳴りだけが響いている。倒れたままの蓮奈は、自分がまた意識を失いかけていることをぼんやりと感じていた。
 自分を揺さぶる人影を感じると同時に、身体をはしる鈍い痛みが蓮奈の意識を現実へと強引に引き戻した。
 視界の中心にはサクラの姿があった。彼女の瞳には明確な安堵と焦燥が入り混じった光が宿っている。助け起こされるのは今日だけで二回目だなと思わず苦笑しかけるが、遠くから響く機甲兵器の駆動音がそんな思いを打ち消した。
 幸いなことに、車両ごと吹き飛ばされた蓮奈達を除いて、第二小隊の大半が既に離脱に成功しているようであった。蓮奈は荒い呼吸を整えながら、小隊指揮系に繋がる送話機にそのまま本隊と合流する様にと指示を送った。
「サクラ、ごめんね」
「いいえ、いいえ蓮奈さん。私は大丈夫です。最後までお供をさせてください」
「……ありがとう。じゃあ、動けるヤツを掌握しよう。少しでも追っ手を食い止めないと」
 多分、ここで自分は死ぬんだろうな。無論、こんなところで死にたくは無かったが、心身の疲労は蓮奈に諦観を抱かせていた。サクラから渡された銃を受け取り、戦闘機械の形をとった迫りくる死に向けて発砲する。蓮奈が手にする小隊指揮系の無線機から、耳慣れた機械音声が響いたのはまさにそのような時であった。
『|Show your guts!《気合い入れろ》』
 まるで鼓膜を打ち鳴らすかのようにはっきりと、しかし懐かしい響きをもって伝わる言葉。蓮奈は一瞬、自分の耳を疑った。けれど、その独特のノイズ交じりの口調には、確かに聞き覚えがあった。蓮奈の目尻に自然と涙が滲む。周囲の雪や瓦礫にかこまれながら身を屈めていた数名の学兵も、その声に覚えがあるのか、絶望に伏せていた顔を上げた。
 次の瞬間、目に映る異形の機影を目にすることによってより大きな確信へと変わる。砲声と轟音。迫っていた中型機甲を蹴散らすように姿を現したのは、キング・タイガーであった。
 瓦礫や残骸を取り込んだ融合装甲から伸びる複数の砲身が、一斉に徹甲弾を放つ。
 発砲の度に鋭い衝撃波が広がり、中型機甲の装甲を容易く引き裂いていく。その一撃の凄まじさに、これまで猛威を振るっていた機甲兵器の隊列が乱れた。
「彼を援護する。周囲に群がる小型機甲を狙って!」
 タイガーの登場と急襲によって与えられた猶予を生かし、瞳に希望を取り戻した蓮奈は、サクラと共に残った学兵たちを掌握し、即席の火線を形成する。
『そうだ、それでいい。俺たちは決して、チームメイトを置き去りにはしない』
 機甲兵器の群れの中に突入したタイガーは、蓮奈たちの動きに大きな満足を抱いていた。主砲の砲声と主機関の唸りが、タイガーの不敵な笑い声と化して戦場を振動させる。
 瓦礫の山を身に纏い、無数の砲身を突き立てたキング・タイガーが、再びゆっくりと前進を開始する。その姿はまさに歩兵を護る盾。砲火と衝撃波が荒れ狂う戦場で、学兵たちを護るために自ら的となるかのごとく、寡黙に、しかし猛々しく進み出る。
 散開した小型の機甲兵器が、タイガーを包囲せんとするが、その試みは彼に追従する学兵たちに妨げられていた。幾重もの増設装甲が弾丸を遮り、重厚な脚部が廃墟の破片を踏み砕いていく。
 しかし、辺りの空気が電磁的に震えたかと思うと、火花とともに強烈な砲弾が飛来し、タイガーの装甲を派手に抉り取っていった。電磁投射砲特有の甲高い発砲音と、着弾の瞬間に生じる衝撃波が周囲の戦闘機械諸共にタイガーの装甲を吹き飛ばす。
 この戦場における最強の機械兵器。ズムウォルトは悠然と人の形を保ちながら歩を進め、その手の中にある電磁投射砲の砲口をタイガーへと向ける。
 タイガーの融合装甲が大きくめくり上がり、大気には焼け焦げた鋼鉄の臭いが広がる。ズムウォルトはその様を冷ややかに見つめていた。
『|勝ち目無し《NO WIN SITUATION》、とでも言うつもりか』
 まるでタイガーの不屈の闘志を象徴するかのように鋭く、彼のセンサーカメラが点滅する。
『そんなものはクソくらえだ……!』
 タイガーの主機関は凄まじい砲口を上げ、再び重厚な躯体を突進させる。音を置き去りにする電磁砲弾に恐れを抱く暇もない。前進を阻むものがあるならば、砕き、踏み潰し、押しのけるという強い意志が、タイガーの脚部から響く力強い駆動音となって証明されていた。
「サクラ、LAM!」
 蓮奈が歯を食いしばり、まだ残っている携行型対装甲ミサイルを持つ学兵たちと共に前進する。鋼鉄の重戦車と歩兵の協同。射程や射角を見極めながら、学兵たちは中型機甲を狙い撃ち、タイガーの進路を切り拓く。轟音と爆炎の中を、タイガーが荒々しい振動とともに突破する。
 ズムウォルトが電磁投射砲を速射し、極超音速の砲弾がタイガーの装甲をえぐる。彼はその装甲に瓦礫を取り込み続け、懸命にそれを防ぎ続けるが、着弾の衝撃は一撃ごとに大きな穴を穿ち、タイガーの装甲に無数の破孔を形成していく。
 しかしタイガーは吶喊を続け、歯を食いしばる学兵たちが次々と敵の足を潰していくのを合図に一層加速する。重厚なパイルバンカーの起動音が金属を引き裂くように響き、鋼鉄の杭が内部機構で装填される鈍い音が戦場を打ち据える。
 ズムウォルトの華奢で美しい外見と、異形の重戦車の形をとるタイガー。その対照的な姿が、まるで運命づけられたように相対した。
 ズムウォルトは冷たい視線を向けながら、レールガンを突きつける。その美しい躯体には一分の隙もない。しかし、この距離まで持ち込まれた時点で、勝負は決していた。
 鋭く射出されたパイルバンカーが暴力的なまでのエネルギーをもってズムウォルトの胸部を貫く。ほぼ同時に弾かれた電磁投射砲もまた、発砲タイミングを逃さず、タイガーの右腕部を砲弾と衝撃波で吹き飛ばす。
 おぞましい破壊音と炸裂が響き渡る中、鋼鉄の杭とレールガン弾丸の衝突が生む閃光と轟音。その一瞬の後には、視界が歪むほどの騒音が消え、ただ硝煙と熱風だけが場を包んでいた。
 やがて、タイガーの主砲が深々と重みを持って再度吼える。しかしながら、重篤な損傷を抱えながらも、ズムウォルトは機敏な身のこなしで華麗に回避してみせる。
 逃げるように後退を開始するズムウォルト。牽制する様に再び電磁投射砲を発砲するが、もはやその射撃に先ほどのような精密さはなかった。痛ましいほどの亀裂が走ったその身体を抱え、迅速に戦線を離脱していく。片腕を失ったタイガーは鋼鉄製の山のようにそこへ踏みとどまり、撤退するズムウォルトの機影を静かに見送る形となった。
 戦場に降り積もる灰色の雪と煤煙が、タイガーの姿を覆う。
 絶望的な戦況の中で生まれた、小さな勝利。タイガーが守り抜いた学兵たちは、瓦礫の中で苦しげな呼吸を整えた。
 確かな事実はただ一つ。彼ら、彼女らは生き残ったのだ。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

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