美味しいチョコレートにご用心。
「いらっしゃいませー!バレンタイ限定!チョコレートショップです!」
街中がバレンタインによりチョコレート一色で賑わう中、可愛らしい外装の店の前でそんな声を上げる人間が1人。
その店先には確かに美味しそうな、それでいて見た目も凝ったチョコレートが売られており、人々は興味深そうに見ている。昨今、誰かに送るより自分で食べる分を選ぶ方が多いと言われるバレンタイン界隈、老若男女関係なく、その店先は賑わっていた。
そう、これはココ最近、どこでも見られる光景である。何の変哲もない、ごくごく普通の……。けれどもその中で、ひそひそと囁かれる噂がほんの少し影を落とす。
「あそこのチョコレートを食べた相手は、永遠に自分のものになるんだって」
おまじないにしては、些か重いその言葉……、どこか不気味さものせて、こそりこそりと交わされ広がるのだった。
「バレンタイン、さて、皆さんはチョコレートは渡す方ですかい?それとも自分で食う方?」
集まった√能力者を見渡して、くるり、傘をひと回ししてから|護導・桜騎《ごどう・おうき》(気ままに生きる者・h00327)は問いかける。
「仔産みの女神クヴォリフが『仔』たる怪異の召喚方法を狂信者に授けているっていうことが予知で判明しやした。厄介なのは既に怪異が起こり始めてること……なんでも、とある店のチョコレートを渡した相手が永遠に自分のものになるとかいう、奇妙な噂」
まぁ、恋愛成就はこの時期になると過敏になる話題ではあるが、それにしても言い方が不穏だ。
「まだ、ほんの数人ですが……そのチョコレート店でチョコを買った客と、その周囲の人間が失踪してるらしいんですよ」
「皆さんにやって欲しいのはまず店の調査……、次にバイトとして潜入して組織の根城を探るか、力づくでどうにかするか……あんま時間がかかると、儀式が完了しちまうかもしれない。まぁ、万が一完了してたら、『仔』だけ奪ってくださいな」
どちらに転ぶかは行動しだいではあるが、とりあえず、
「今回も、頼みやしたよ。人の恋路を邪魔するやつは、何とやら……と言いやすしね」
マスターより

バレンタインですね。そんなわけでバレンタインシナリオです。
1章目では、とある店を調査してもらいます。客の振りをして人に話を聞くもよし、店員さんに探りをかけるもよし、上手くいけば『本店』の場所を聞き出せるかもしれません。
2章目では『バイト』として『本店』に潜入するか、それとも力づくで突入するか……、1章に明記をお願いします。それの人数により分岐いたします。
では皆様、今回もよろしくお願いいたします。良いバレンタインを!
21
第1章 日常 『個性的な飲食店』

POW
その店独特のメニューを頼む
SPD
珍しい店内の光景を写真に撮る
WIZ
店員と仲良くなり、ディープな話を聞く
√汎神解剖機関 普通5 🔵🔵🔵🔵🔵🔴

ここが噂のチョコレート店ね。ここのチョコレートを食べた相手は永遠に自分のものになるんだっていうのはちょっと誇大広告ぽくない?まぁどういう原理で自分のものになるかは聞かないし、聞いても企業機密だから教えられないだろうし。
ただあの一文が「個人の感想です」や「食べた相手(自分)にしか効果ありません」だったらジャロに通報ものよ。
そもそも説明が曖昧ね。自分って誰の事よ。買った人?それともあげた人?買った人が人にあげて、もらった人が別の人にあげて、その人が食べたら誰が誰のものになるのよ!
これはクレームものね!責任者を呼んでよ!いない?本店がある?なら本店の場所を教えなさいよ!本店にクレーム言いに行くから!
「いらっしゃいませー!」
店員が声高に呼び込みをする一見して可愛らしい店を見上げて、彼女は小さな腕を組みながらうんと頷く。
「ここが噂のチョコレート店ね」
くりくりとした瞳を瞬かせて呟くのは|春埜・紫《はるの・ゆかり》 (剣の舞姫・h03111)、まだ幼さ残るというより、幼いという言葉がふさわしい彼女は、周りからの視線も気にせず中へはいる。
「いらっしゃいませぇ、今日はどんなチョコレートを探しに来たのかな?」
対応してくれたのは、若い女性だった。彼女は腰を屈めて、春埜と視線を合わせるとにっこりと笑いかける。そんな女性店員を、上から下まで見てから春埜は首を傾げて
「ここのチョコレートを食べた相手は永遠に自分のものになるんだっていうのはちょっと誇大広告ぽくない?」
「……え」
幼い子供から出たと思えない言葉に、女性店員が固まる。それに構わず春埜はじとり、と目を細めると
「まぁどういう原理で自分のものになるかは聞かないし、聞いても企業機密だから教えられないだろうし。
ただあの一文が「個人の感想です」や「食べた相手(自分)にしか効果ありません」だったらジャロに通報ものよ」
「え、あ、あの」
「そもそも説明が曖昧ね。自分って誰の事よ。買った人?それともあげた人?買った人が人にあげて、もらった人が別の人にあげて、その人が食べたら誰が誰のものになるのよ!」
つらつらと放たれる|容赦ない言葉《マシンガントーク》、百戦錬磨の店員も、幼い少女から湯水の如く溢れる言葉にぽっかりと口を開けて呆然とするしかない。
それに深々と春埜はため息を着く。本当に、深々と。全くしょうがないわねこの子は、とでも言いそうな顔で。
が、彼女は外見も中身も少女である。まぁ、普通の少女と問われると、ここにいる時点で違うのだが。
「これはクレームものね!責任者を呼んでよ!いない?本店がある?なら本店の場所を教えなさいよ!本店にクレーム言いに行くから!」
「は、は、は、はいいいいっ!!」
見た目可愛らしい少女から放たれる、大人も真っ青なクレームに、勢いに押された店員はこくこくと頷くことしか出来ず……
春埜は当初の予定通り、|本店《アジト》の場所を手に入れたのだった。
🔵🔵🔵 大成功

◆アドリブ&連携大歓迎
ラフな普段着で買い物客として訪れます。
そこまでバレンタインとか興味は無いけど、普段からお世話になってるし
桜騎さんや仲間に気持ちは準備するべきでしょ
(まぁ興味ないと言いながらも、ちゃんと真剣に選びます)
ボクが食べるならお酒入りが…でも未成年も多いし難しい…とりあえず気になったのを買ってー…あーでもないこーでもない
ブースを見て歩きながら自分の影から情報を持っていそうなスタッフの影やブースの影に√能力【影鬼】の式神『影虫』を仕込んで行きます。
会計を済ませ、効果範囲内の近場の飲食スペースで熱い珈琲と酒入りチョコでcafeタイムを楽しみながら、情報を盗み聞き
さてと…何か聞けるかな?
「どんなチョコレートにする?」
「私はねぇ……」
チョコレートの甘い香りがする店内は賑やかな人々の声で賑わっていた。そこにラフな、一見して普通のチョコレートを買い求めに来た客、という風にちらちらと店内を見ながら歩いて回るのは|神鳥・アイカ《かみとり・あいか》(邪霊を殴り祓う系・h01875)だ。
まぁ、こういう行事にはあまり興味が無いのだが、前からの知り合いである今回の星詠みの桜騎や、いつも親しくしてもらってる面々に調査ついでに買っていこうという気持ちもあるので、客としても間違っていない。
「うーん、ボクが食べるならお酒入り……でもなぁ、未成年の子もいるし」
あーでもない、こーでもない、見本や試食のチョコレート達を前にうんうんと唸る時間は、そこそこ楽しい。もちろん、だからと言って調査に手抜かりはないが。
ブースを見て回る様子は他の客たちと変わらないが、こそり、と√能力を発動、情報を持っていそうな店員や、ブースにある物の影に『影虫』を潜ませていく。これで情報が手に入るという算段だ。
「いらっしゃいませ」
「お願いします」
レジの店員にチョコレートを渡して、会計して貰っている間にもこそり。まぁ、これだけ潜ませれば何かしらの話は聞けるだろうと、袋に入れてもらったチョコレートを手に、店を出てから比較的近くにある飲食スペースに来ると、そこで酒入りのチョコを堪能する。今回は様々な日本酒が入ったチョコレートだ。甘さの中に、酒の旨味を感じながら舌鼓を売ちつつも、影虫から入ってくる情報に耳をすませた。
『……ねぇ、このチョコの在庫、まだあったっけ』
『おっかしいなぁ、この辺に……』
『美味しいチョコレートですよー』
『ミルクにする?それともホワイト?どれも美味しそうで捨てがたいよねぇ』
『……例のチョコレート、本店からまた入るらしいぞ』
店員たちの仕事の声、客がチョコを選ぶ声、その中にぽつりと入り込んだ不穏さを感じさせる言葉に、神鳥は目を細め、熱い珈琲を啜る。
『あぁ、あの……』
『まぁ、俺たちの仕事は売ればいいだけだから……本店は……確か、倉庫街の方に……』
『そういや、闇バイトも募集してるって話だな……』
見つけた。
クスリと笑みを浮かべながら、うーん、このチョコ美味しいなぁ、お酒といい感じにマッチにするなんて思う神鳥であった。
🔵🔵🔴 成功
第2章 冒険 『胡散臭いバイト』

POW
目に付いた引き出しなどを手当たり次第に探索
SPD
効率重視でタンスなど服装に関係する場所を探索
WIZ
姿見などの着飾る行為に関係する場所を探索
√汎神解剖機関 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
港にほど近い倉庫街、そこでは何人かの若者がダンボールをえっちらおっちらとトラックに詰めていた。
ダンボールの側面には『チョコレート』の文字、この時期ならば誰もが目にするものだろう。
「さぁ、皆さん、よろしくお願いしますね!そうそう、決してこの事は他言しませんように!」
さぁ、仕事を始めましょう!
にっこりと笑うサラリーマンらしきスーツの男。どうやらここが、『例のチョコレート』の倉庫となっているようだ。
ここに侵入すればさらに詳しい情報が手に入るだろう。闇バイト、年齢性別不問のそれに、√能力者達はひとまず参加することになりそうだ。

【メイン行動】WIZ
イベントに便乗して怪異災害を起こす計画は野暮としかいえないね…。
一応、警視庁異能捜査官のお巡りさんとしては闇バイトの人達含めては見逃せないよね…。
仮装身分捜査のため、あらかじめアイテム・潜入捜査服で【正体を隠す】【変装】しておくよ。
お巡りさんだと怪しまれないのが第一だけど、矛盾を突かれそうな時は【言いくるめ】で誤魔化すしかないのが痛いけどね…。
表向きでは、真面目に作業をしながら√能力と【失せ物探し】の技能を併用して【情報収集】していきたいね。
失踪者の行方も気になる所だけれど…この倉庫に手がかりになりそうな痕跡があれば、こちらとしては大助かりなんだけどね…。
アドリブ連帯歓迎
イベントに便乗して怪異災害を起こす計画は野暮としかいえないね…。それに、一応、警視庁異能捜査官のお巡りさんとしては闇バイトの人達含めては見逃せないよね…。
そう内心で思いながら、こそりと影から倉庫を見上げて|政木・朱鞠《まさき・しゅまり》(咎忍殺し・h02374)は、持ってきた潜入捜査服に着替える。これは、その場に適した制服に姿を変える不思議な衣服……倉庫での闇バイトということで、ツナギに近い衣服となりそっと中へと入った。
「あの、バイト募集で来たものですが」
「ああ、ご苦労さま。早速だけどあっちのダンボールをトラックまで運んでくれ」
「はい」
こくりと頷いて指し示された方に向かいつつ、僅かに倉庫内を見渡して、バレぬようにそっと√能力を発動させる。
ーー【臨場】ーー
現れたベテラン鑑識官の霊は一度政木へ敬礼をしてから倉庫内を調べ始める。それを横目で見ながら政木自身は真面目に作業をこなす。こちらが怪しまれては意味が無いのだ。
倉庫内にはダンボールがいくつもあり、それを闇バイトで雇われたらしき人達がせっせとトラックへと詰めていた。大半が、若い男性……、私語はそこまで咎められていないのか小声であるが声も聞こえてくる。
「バイト代の割には楽な作業だよな」
「そういや……初日に着てたやつの何人か、見てないよな」
「単純に来なくなっただけだろ?その日払いだし」
「かもな。バイト代でここのチョコ買うとか言ってたわ」
「なんだそりゃ、貰ったバイト代還元してるじゃねぇか」
当人たちからすれば大したこともない世間話なのだろう。だが、政木にとっては気になる情報があった。【バイト代でチョコを買うと言っていた人間が来なくなった】。それは、もしかして星詠みが言っていた行方不明者なのでは?と思いながら、ダンボールをちらりと見やる。
頑丈に蓋がされているので中を見ることは出来ない。下手に探れば怪しまれてしまう。ひとまず今は真面目に作業の振りをしなければ……と真面目なバイトの振りをしていれば、ベテラン鑑識官の霊による念話が頭の中に響く。
『いくつかのチョコレートの中に、地図が紛れ込まれています。そこに何かありそうです』
見つけた……。僅かに目を細め、ダンボールに触れた瞬間、周りから見えないように隠された手元に転送された紙をすぐさましまい込む。
ここに、なにかある。
手がかりを確かに手に入れたことに僅かに安堵しながら、政木は残りの仕事をこなしていくのだった。なにせまだ、怪しまれる訳には行かないのだから。
🔵🔵🔴 成功

え?ここがさっきのチョコレート店の本店なの?ただの倉庫じゃないの?支店がちゃんとしてお店だったのに、こっちはただの出荷所て言わない?支店の方が直営店とか販売店っていうんじゃないの?小学生だと思って適当なこと言われちゃった?ホントここが本店であってるの?
まぁいいわ、◯◯支店で責任者を呼び出したら、こっちにいるって言われたけど、ここが本店で合ってるかしら?で、ここのチョコレートを食べた相手は永遠に自分のものになるって事を詳しく教えて欲しいわ。もし誇大広告だったらジャロに訴えるだからね!
あ、そうそうチョコを買った客と、その周囲の人間が失踪してるって噂もあるけど、そっちはどうなの?
「え?ここがさっきのチョコレート店の本店なの?ただの倉庫じゃないの?支店がちゃんとしてお店だったのに、こっちはただの出荷所て言わない?支店の方が直営店とか販売店っていうんじゃないの?小学生だと思って適当なこと言われちゃった?ホントここが本店であってるの?」
ねぇ!そこのあなた!!と声をかけられて振り向いた途端の|言葉の嵐《マシンガントーク》に、倉庫の現場監督らしき男は、顔をひきつらせ、周りの人間たちもなんだなんだと手を止める。
腰に手を当て、臆することなく自身よりだいぶ上にある顔を見上げて突然の|言葉の嵐《マシンガントーク》を浴びせかけたのは、一見してどころか普通に幼い少女、もとい、この場所をつきとめた|春埜・紫《はるの・ゆかり》(剣の舞姫・h03111)だった。
「お、お嬢ちゃん、迷子かい?ここはあぶな……「そんなわけないでしょ!!」」
おろおろとする現場監督らしき男の言葉をさえぎり、春埜はキリリと眉をつり上げる。
「まぁいいわ、◯◯支店で責任者を呼び出したら、こっちにいるって言われたけど、ここが本店で合ってるかしら?で、ここのチョコレートを食べた相手は永遠に自分のものになるって事を詳しく教えて欲しいわ。もし誇大広告だったらジャロに訴えるだからね!」
とんでもない言葉の嵐、息付く暇も無く、そして、こちらがストップをかける暇もなく、つらつらと言いきってはさぁ!どうなの?!と答えを求めてくる。
「い、いや、確かにここは本店であってるよ……」
「あら、そうなの?」
それにしては、ここはまさに倉庫といった雰囲気だ。ふーんと呟いてから目を細め
「あ、そうそうチョコを買った客と、その周囲の人間が失踪してるって噂もあるけど、そっちはどうなの?」
「え?!い、いや、知らないけど……」
おろおろとしたあと、現場監督らしき男はハッとなって、そっと春埜に1枚の紙を差し出す。
「そうだ、ここで特別なチョコレートを貰えるんだ。行ってご覧」
「特別なチョコレート?」
怪しい、ものすごく怪しい。だが、逆に言えば、求めているものはそこにあるかもしれない。
「わかったわ」
すんなりと頷いてメモを受け取り、春埜はならここにはもう用はないとばかりにスタスタと歩き出すのだった。
🔵🔵🔴 成功

◆アドリブ&連携歓迎
集めた情報を他の探索者と共有する為
本店の場所が倉庫街にある事
積み込みの裏バイトの潜入捜査を行う旨を
予め桜騎さんに伝えておきます。
問題は潜入方法だけど…まぁなんとかなるなる?
一応、服装を変え、お金に困ってる風を演出
前章で食べたお酒チョコで√能力を発動
魅力を上げ、遅れて来た裏バイト志願者を演じながら潜り込みます。
『割の良い日雇いって聞いてきたんだけどぉ…どんな内容なのぉ?』
ちょっと頭が足りない風?『えー重い荷物持てないー』とか、仲間が見たらオマエは指一本でも持てるだろ!と突っ込んで吹き出すような口調で周囲をそれとなく観察、情報収集に努めます。
何かあれば素手でもなんとかなるし
「ええ、わかりやした、責任もって伝えておきましょ」
「よろしくね!」
星詠みである桜騎にこれまでの情報を共有し、|神鳥・アイカ《かみとり・あいか》(邪霊を殴り祓う系・h01875)はよし、と頷く。
普段の彼女と違い、少し安そうな作業服のような服装で、そっと倉庫に入る前に√能力を発動させる。昼間食べていた『酒』入りのチョコレート、それにより魅力をあげる。
それでよし、と頷いて、少し申し訳なさそうに中へと入った。いかにも、遅れてきたバイト希望者だというように。
「あのぉ……割の良い日雇いって聞いてきたんだけどぉ…どんな内容なのぉ?」
ちょっと頭が足らないぶりっ子風に現場監督に問いかける。彼は、鼻の下をデレっと伸ばしてダンボールの山を指さした。
「あれをトラックまで運んで欲しいんだ」
「えー、あんなおもいそうのぉ、もてなぁい」
ここを他の仲間たちが見たのなら、ひくりと顔をひきつらせて、お前なら指一本で持てるだろ!!というツッコミをしただろうが、生憎とここにいるのは現場監督をはじめとして、他も闇バイトで集められたごく普通の人間たちである。
つまり、彼らは総じて、彼女をか弱い女性と思い込んでいた。彼女の拳ひとつで、自分たちなど簡単に蹴散らされるなんてこと知りもせず、デレデレとした顔で近寄り、自分が代わりに持つよ!なんてカッコつけたりする。
「ありがとぉ、優しいんですねぇ……!でもぉ、このチョコレート、ぜぇんぶ同じ場所に行くのかしらぁ?」
「らしいよ。そうだ、噂だとここで仕事を頑張ると特別なチョコレートを貰えるらしいんだよね」
「へぇ、特別なチョコレートですかぁ?」
ずっと目を細める。もちろん、顔はニッコリと頭が足りそうな笑顔のままに。
「君なら現場監督にお願いしたら貰えるよ!」
「えー、ならもらいたいなぁ。ねぇ、監督さぁん!」
特別なチョコレート、下さいな。
にっこりと大変可愛らしい笑顔で問かければ、現場監督はでれーと笑って、特別だよなんて言いながら、チョコレートを1箱。それをゆっくりと開いてみれば、地図がひとつ。
●●●
「ここに失踪者のヒントあればいいんだけど」
変装を解いてフゥと息を吐く。手の中には先程貰った地図、他の√能力者たちも同じ場所への地図を手に入れたという情報は入ってきている。となれば、ここに何かあるのは間違いない。
「うし、行ってみよ!」
ぐっと右手で拳を作り、左手の手のひらにぱぁん!と当てると、頷いて、神鳥は歩き出すのだった。
🔵🔵🔵 大成功
第3章 集団戦 『さまよう眼球』

POW
かじりつく
自身の【眼球と牙】を【真っ赤】に輝く【暴食形態】に変形させ、攻撃回数と移動速度を4倍、受けるダメージを2倍にする。この効果は最低でも60秒続く。
自身の【眼球と牙】を【真っ赤】に輝く【暴食形態】に変形させ、攻撃回数と移動速度を4倍、受けるダメージを2倍にする。この効果は最低でも60秒続く。
SPD
ヒュージ・ファング
【強酸】のブレスを放つ無敵の【無数の牙の生えた巨大な口】に変身する。攻撃・回復問わず外部からのあらゆる干渉を完全無効化するが、その度に体内の【生命力】を大量消費し、枯渇すると気絶。
【強酸】のブレスを放つ無敵の【無数の牙の生えた巨大な口】に変身する。攻撃・回復問わず外部からのあらゆる干渉を完全無効化するが、その度に体内の【生命力】を大量消費し、枯渇すると気絶。
WIZ
新たなる牙
視界内のインビジブル(どこにでもいる)と自分の位置を入れ替える。入れ替わったインビジブルは10秒間【次なる「さまよう眼球」】状態となり、触れた対象にダメージを与える。
視界内のインビジブル(どこにでもいる)と自分の位置を入れ替える。入れ替わったインビジブルは10秒間【次なる「さまよう眼球」】状態となり、触れた対象にダメージを与える。
「あ、ああ……」
顔をひきつらせた人々が部屋の隅でガクガクと震える。その中央には無数の眼球と眼と牙が集合した不気味な怪異がひとつ。
奴はギチギチと牙を鳴らし、無数の眼球でこれから犠牲となる人間たちを見やる。こいつらを生贄とし、この怪異に喰わせることで、怪異は女神クヴォリフの仔として変質し、召喚される。
一部の人間たちはチョコレートに記された地図を目印にここに訪れていた。『相手が永遠に自分のものになるチョコレートがここにある』、そんな噂と共に。
貴方だけに特別に、好きな人と一緒に。
そんな甘い言葉に乗せられて、あるいは洗脳されて。
ほら、だって、怪異の腹の中に入れば、『女神クヴォリフの仔』として、永遠に自分のものになる。だって、境界なんてなくなるほどに、溶け合って、どろどろになって、混ざり合うのだから。
それこそチョコレートの如く。

◆潜入班 アドリブ&連携歓迎
手際良く事前連絡、下準備を済ませ
『地図』が示す場所へ
一般人同様、大人しく捕まって
軟禁されてる部屋にご案内して貰います
はぁ〜っ…雑に縛って素人臭いなぁ
ネコ被るのも肩こるし
大まかな人員配置と間取りは確認出来た
後はタイミング次第…
(一般人に視線を向け)
急ぎ過ぎても首謀者や仔を取り逃すし
悪いけど浅はかな考えを反省して貰おうかな
『さまよう眼球』が一般人を襲う直前
拘束を力任せに外して割って入り
突入の合図がわりに、オーラを纏った拳で殴り飛ばします。
…やっと動ける
怪我したくなかったら動かないで
勝手に動かれると守りきれないから
姿を見せた仲間に首尾はどう?
と嬉しそうな笑みを向けます

◆潜入班 アドリブ、連携歓迎
一般人になりすまし地図の示す場所へ
チョコを譲って欲しい、と接触し捕まる時は腰を抜かして降参
抵抗しません。暴力はやめてください
一般人の護衛を優先、仲間と協力を惜しまない
怪異の最初の犠牲者になる為、陽気に迂闊に接近
もしかして、ドッキリですか?
よく出来た人形ですね。生きているみたい
怪異の口の中に右手の握り拳を肩まで突っ込みます
獣妖外皮と龍王之護で防御力を上げ、怪力で押さえ込む
大蟹の姿に戻り、巨躯を盾にして被害者たちを攻撃からかばう
怪異の変形は、ルートブレイカーで無効化
拳の中に隠しておいたカムロを開放して破壊の炎で内側から焼く
牛鬼たちと死霊を呼び出し、氷属性攻撃で遊撃を指示

◆突入班
SPD/アド連携◯人型ステ欄参照
事前の打ち合わせ後に行動開始
護導と共に外部協力機関に協力要請
人質の存在と人数、√能力者が潜入、人質の護衛をしている旨も伝える。合図と共に突入して、避難と保護、部外者立ち入り禁止等の処理を依頼
家屋の破損に対する補償その他の処理も頼むぜェ?
「さて、俺達も行くか、神来社。」
出入り口を得物で切り刻み合図とする
仲間との波状攻撃を意識
此方に注意を向け道を拓き人質の保護と避難を優先
「こんなカンジ。」
神鳥の声に口端上げ応える
「無効化?クカカ、何処まで削ろうか」
牙を抜き折り目玉へ突き込む攻勢ラッシュ
ダメージは仲間達に任せた!
死亡者には弔いを
でも好きな人をモノ扱いは駄目だぜ

いや、このメモってどう考えても怪しいでしょ!イマドキの小学生でもこんなのに騙されない!
でも大丈夫、私はあの某少年探偵の再来とも言われるスーパー小学生よ♪このメモが仇になったわね!証拠はこれで十分、でも気になるからメモの住所の所にいっちゃえ〜
流石スーパー小学生の私!怪しまれずに侵入出来たわ!それにしてもここにいる人達が噂のいなくなった人達ね(自分もその一人とは気付いていない)でも安心して、私がここに潜入する前に警察に連絡して証拠を渡したから直に助けがくるわ!私は誰って?私は通りすがりのスーパー小学生、紫ちゃんよ💜ほら予想通り助けが着たわ!皆一斉に逃げるわよ!!
それにしても悪趣味オブジェね…

・【守護する炎】の発動を前提
2班(◆潜入班、◆突入班)に分かれた仲間の援護支援、繋ぎ役
「情報収集」「追跡」「戦闘知識」「地形の利用」「団体行動」「集団戦術」「暗視」での連携強化
「制圧射撃」「弾幕」「牽制射撃」「弾道計算」「破壊工作」 で敵の動きを徹底的に妨害
「救助活動」を最優先に行動、時間を掛けないよう2班(◆潜入班、◆突入班)の合流に助力
突入班の障害になるものは「怪力」で強行突破
「かばう」が間に合わない場合、「牽制射撃」「弾道計算」「戦闘知識」での阻止線を張る
・【戦場の支配者】を活かした耐久と支援
「制圧射撃」「援護射撃」「集団戦術」 を組み合わせ、仲間の援護支援
「鉄壁」「激痛耐性」「環境耐性」「ドーピング」で壁役
・ボスの行動を封じる
【かじりつく】【新たなる牙】の発動を【阿頼耶識・羅刹】で無効化
「地形の利用」 でボスの動きを予測し「遊撃」「追跡」 を活かし、敵の動きを封じつつ距離を詰め、射程に入った瞬間に敵の能力を封殺
「2回攻撃」「遊撃」「重量攻撃」「鎧無視攻撃」 で、「阿頼耶識・羅刹」後は迅速に追撃
「カウンター」「受け流し」で即反撃
・【ヒュージ・ファング】への対応
回避・防御、援護支援を徹底
「逃亡阻止」「継戦能力」を主軸に意図的な弱体化を狙う
心情
……助けを求める声があるのなら、応えるのが道理
守れる笑顔があるのなら、刃を振るうのが僕の戦い
――誰かを助けるのに、理由など必要ありません。

◆突入班 アドリブ・連携 歓迎!
桜騎さんから連絡を受けて現場に向かいます。
ウィズっちの準備のお手伝いするよ。私じゃこんな手際よくできないから勉強になるよ!
さぁみんな準備は出来てるかな?
(仔兎達:誕生日に貰ったリュックサックを背負ってふんすふんすと気合い充分な様子)…うん、完璧!
(ウィズっちの掛け声に)よしっ、行こう!
神使召喚を使って仔兎と共に突入。ごー!
それじゃ、二手に分けよう。
こっちの子達は様子見に行って監視をお願い。あとの子達はあの目玉を齧ってね。頼んだよ!
クヴォリスの子を食べるだけで強くなる?怪しすぎる。強くなるんだったらそれだけじゃ足りないよね。これは何かあるでしょ

急にバイトがツライから逃げたと思われちゃうかもしれないけど…【闇に紛れる】で作業場を離れて『地図』の示す場所に向かうよ。
何の神様を信じているかは自由だと思うけど…他人を贄として巻き込んで大願成就を目論むのならキツめのお仕置きをサービスしないといけないね!
それに、人々に理不尽を擦り付ける面倒な怪異を回収できるこの好機を逃すわけにはいかない…特殊なお巡りさんとして事件解決させて頂くね!
さあ…さまよう眼球ちゃん、お腹一杯になる前に咎の上書きを終わりにさせて貰うよ。
戦闘【WIZ】
防御面が【霊的防護】と【武器受け】頼りなのはちょっと強引かもしれないけど…得物は【居合】の技能と相性が良い『デコポン』を使いつつ、√能力で手数を上げ底しつつ【なぎ払い】や【傷口をえぐる】で間を置かずダメージを与えたいね。
アドリブ連帯歓迎
人々も寝静まる深夜、その視界の隅にどこか暖かな光を感じながら、とある雑居ビルの前を2人の年若い男女がコソコソと話しながら歩いていた。
「ここだって」
「ここに"噂のチョコ"が……」
二人の手にはこのビルを指し示す地図がひとつ。ここに来れば"相手を永遠に自分の物に出来るチョコ"が貰えると、とあるバイトで知った二人は、夜も遅いながらここに訪れたのだ。
雑居ビルの前には二人の男がいた。彼らはやってきた訪れた二人を見て、ニッコリと愛想の良い笑みを浮かべる。
「いらっしゃいませ、お客様」
「『地図』はお持ちでしょうか?」
その言葉に二人は、本当にここなんだ!と僅かに頬を染めた様子で、持ってきた『地図』を差し出す。
それを見た男たちがこくりと頷き、手を差し出した途端
「やれっ!!」
「えっ?!」
「きゃあっ?!」
ビルの中から数人の屈強な男たちが現れ、あっという間に二人を囲むと、縄で縛りあげてビルの中へ連れ去ってしまう。そしてそっと、その扉が閉じられる瞬間、炎がひらりと中へと入っていく。そうしてそこには、静寂が残されたのだった。
●●●
それからほんの少しあと
「ふーん、ここね!」
暗がりからぴょこん!と顔を出す少女が一人、|春埜・紫《はるの・ゆかり》(剣の舞姫・h03111)は、メモ、もとい『地図』を片手にたった一人でここに訪れていた。そうしてこそり、と、ビルの裏手に回る。こういう所は案外と……と思えば、不用心なことに、鍵はかかっていないようだった。
「流石スーパー小学生の私!怪しまれずに侵入出来たわ!」
こそりこそりと小声で呟きながら、会心の笑みを浮かべて胸を張る。ここに来る前に警察への連絡も済ませておいた。これで万事大丈夫!と軽快な足取りで、一人、奥へと進んでいく。
●●●
そして更にもう一人、春埜が誰にも見つからずにこっそりと裏口へ回った頃、闇から僅かに姿を現してビルを見上げた女性……|政木・朱鞠《まさき・しゅまり》(咎忍殺し・h02374)は「よし、ここね」と呟く。
作業場で『地図』を得た彼女は、そっと【闇に紛れて】ここへ来た形だ。まぁ、急に居なくなったことでバイトが辛くて逃げたと思われるかもしれないが、最初から目的はこちらの方であるので気にはしない。
「何の神様を信じているかは自由だと思うけど、他人を贄として巻き込んで大願成就を目論むのならキツめのお仕置をサービスしないといけないね!」
よし!と気合を入れて、そっと目を閉じて集中し、再度【闇に紛れ】侵入しようとした瞬間、そんな彼女の肩を、誰かがそっと叩いたのだった。
●●●
怯える二人が連れてこられたのはビルの地下。
そこには、二人と同じように連れてこられたと思わしき数人の男女が縄で縛られ、部屋の隅で怯えて縮こまり、更に室内には僅かに鉄臭い匂いが充満していた。
これは血の匂いだと気づいた二人は、僅かに、身を小さくする。
そんな彼女達の様子にニヤニヤと連れてきた男達は笑い、さぁ!新しい餌だぞ!!と部屋の奥へと声をかけた。
ギチギチと音がする。それは、何かを擦り合わせるような……噛み砕くような、そんな、音……。しかもそれはひとつでは無い、複数の音がギチリギチリと鳴る。早く獲物を喰わせろと、闇の中から音がする。
「ひっ……いやあああ!!」
悲鳴が、部屋の中に響き渡った。
現れたのは、無数の目玉と牙を持つ怪異、『さまよう眼球』。奴は、その牙のいくつかを血で濡らしながら新たな獲物たちを見渡す。
さぁ、早く喰わせろ、もっと強大になるため、さぁ、さぁ!!
「はは!さぁ、行け!喰らいつくせ!そして『女神クヴォリフの仔』となるのだ!!」
あぁ、自分たちも奴に喰われるのだ。何人かは見ている。奴に、人が生きたまま喰われる所を……絶望がその場を支配する。顔を白くさせて、人々が硬直する中、『さまよう眼球』は楽しげに笑みを浮かべるようにその無数の目玉を歪め、まるでその怯える様にすら愉悦を感じているかのようにゆっくりと人々に近寄る。
緊張が、張りつめていた。
後一歩、やつが近付いた瞬間、それは破裂しパニックとなり人々を支配するだろうとそう思った刹那、人々と『さまよう眼球』の間を割くように炎が走った。
それは苛烈な炎であるのに、どこか、優しい。まるで自分たちを守ってくれる、そんな炎……そしてそれは、決してまやかしでも思い込みでもない。
「……助けを求める声があるのなら、応えるが道理」
静かな、けれども力強い声がする。炎が一層大きく揺らめき、その中央から彼は……不動院・覚悟(ただそこにある星・h01540)は現れ、『さまよう眼球』を見据えた。
……助けを求める声があるのなら、応えるのが道理
守れる笑顔があるのなら、刃を振るうのが僕の戦い
――誰かを助けるのに、理由など必要ありません。
それは確かに希望であった、人々の希望となる者、炎を宿した星。彼は自身の武器である圧滅銃を構え吠える。
『絶望の中でも光は消えません。この戦場に希望を取り戻します――『戦場の支配者』!』
炎が光となって人々に降り注ぐ。それにイラついたように声を上げたのは、その光が注がれることがない『さまよう眼球』であり、今回のことを目論む男たちであった。
「√能力者とはいえ、たった一人でなにができる!!いけ!!」
ガアア!と『さまよう眼球』が無数の牙を鳴らして不動院に向かっていく。避ければ背後の無力な人々が死ぬことになる。そう、奴らは人質の有用さを理解していた。
故にたった一人でなにができると嗤うのだ。
「よく出来た人形ですね、生きてるみたい」
声が、通った。陽気なその声は、この空間でやけに場違いだと誰もが思っただろう。縛られ、隅で怯えていたはずの……新たに連れてこられた男女のうち、男の方が立ち上がって不動院の横に並んだ。その顔に浮かぶのは、この場にそぐわぬ呑気な笑顔である。
ブチッ……と縄が切れて床へと落ちるその瞬間、彼は自身の右手を伸ばして、隣にいる不動院へ向かってきていた『さまよう眼球』の無数にある口のうちの一つにその腕を肩まで突っ込む。
ただの人であれば、あっという間に噛み砕かれて、そのまま全て飲み込まれるのは間違いない。だが、響いた音は骨を砕く音でも、肉を砕く音でもなく。
ガキィ!!!と硬質な音を立てて、牙がぼろり……と砕けた。驚いたのか、あるいは本能的に危険を感じたのか、『さまよう眼球 』が離れようとするが、彼はその身体を強く押さえ込み逃がそうとしない。
そうして、その姿はだんだんと変わっていく。
青色に白い斑点、大きく立派なふたつのハサミ、それは、その姿は正しく
「か、カニ?」
誰かが困惑したような声を上げた。そこに居たのは立派なというか、どこか愛嬌のある巨大な一匹のノコギリガザミ。ガザミ・ロクモン(葬河の渡し・h02950)はその巨躯で人々の盾になりながら『さまよう眼球』が変形していくのに気づいて、片手を突っ込んだままルールブレイカーを発動させる。更に、拳の中に隠しておいたかムロで内側から奴を焼く。
悲鳴のようなものが上がった。ぐらりと強制的に変化を止めさせられて、更には内側から焼かれ、『さまよう眼球』が退いたが、やつとてそれで簡単に諦めるつもりは無い。
力が欲しいなら喰らえばいい。二人の一瞬の隙をついて、『さまよう眼球』は人々の方に向かっていく。悲鳴が上がる。だがそれが、誘導されたものだと気付きもしない。
「はぁ〜っ…雑に縛って素人臭いなぁ
ネコ被るのも肩こるし」
ブチぃ!!と縄が力まかせに切られる音がする。『さまよう眼球』の牙が、人々に迫った瞬間、赤いオーラを纏った拳が奴を吹き飛ばした。
「はぁ……やっと動ける」
んーと伸びをして、ぐっと拳を構えるのはガザミと共にわざと捕まっていた少女、もとい|神鳥・アイカ《かみとり・あいか》(邪霊を殴り祓う系・h01875)。
彼女はニッと笑みを作り、後ろに人々を庇ったままちらりと目線をそちらにやる。
「怪我したくなかったら動かないで
勝手に動かれると守りきれないから」
鋭く伝えるのは、現状、楽観視ができないからだ。こちらには√能力者が三人、向こうは怪異が一体とこのことを目論んだ男が1人、そしてその部下らしい男たちが数人。
怪異と男たちだけならこのメンバーだけでどうとでもなる。問題は、自分たちが背後に庇っている人質達だ。一般人である彼らは戦闘の余波だけで死ぬ可能性がある。
もちろん、不動院の√能力である『戦場の支配者』が発動している現在、簡単に殺されることは無いだろうが、楽観視はできないのだ。そう、現状、このままであれば。
どぉーん!と破壊音が響く。それに捕まっていた人々があわあわと慌て、首謀者たちもあわあわとしているのに、神鳥がフッと笑みを浮かべた瞬間、不動院が圧滅銃を怪異ではなく壁に放った。
もちろん、人々に当たらぬように細心の注意をはらいながら、壁だけを吹き飛ばす。その途端、障害物が無くなったとばかりになだれ込んできたのは
「よし!頼むぜ!」
「おまたせー!」
「助太刀するわ!」
ウィズ・ザー(闇蜥蜴・h01379)、|神来社・紬《からいと・つむ》(月神憑きの仔兎使い・h04416)、そして政木・朱鞠と、協力者たちであった。
●●●
時は、少し前に遡る。
後ろから肩を叩かれ、目を鋭く細ませた政木がその相手を攻撃しようとした瞬間
「待った待った!俺らも目的はあんたと同じだと思うぜ」
そう言って両手を上げたのがウィズと、こんばんわーとひらひらと手を振る神来社であった。その後ろには何人かの人間の姿もある。
「え、それって……」
「この事件を解決しにきたんだよ。こいつらは協力者、√能力は使えないが、人質の保護なんかをやってもらう」
「貴方も√能力者だよね?良かったら一緒に行かない?」
目的が同じであるなら敵対する理由もない、むしろ協力した方が被害は断然抑えられるだろう。それは道理、1人では助けられる人も限りあるし、動きも制限されてしまう。
「ええ、お願いするわ」
「よしっ、じゃ、合図と共に突入、協力者達には人質の避難と保護、ここら一体の立ち入り禁止を頼んである」
「ウィズっち、手際いいよねぇ。私じゃこんな手際よくできないから勉強になるよ!さぁ、皆も!準備はいい?」
感心したように笑いながら神来社が言いつつ、下に視線をやる。そこにはもふもふとした可愛らしい仔兎たち……その背にリュックを背負って、任せとけ!ふんす!と気合いの入った様子で頷く。大変微笑ましいが、彼らも立派な戦力である。
「……それで、合図っていうのは?」
その微笑ましさに思わず目を細めていた政木だが、あっと呟いて確認した瞬間、ビルから強いオーラを感じてそちらを見やる。
「よし来た……さて、俺達も行くか、神来社」
「よしっ!行こう!」
ウィズが両手に武器を構え、入口を切り裂く。それを合図として、彼を先頭に救出のための突入部隊は一気に流れ込んだのだった。
●●●
不動院が『作ってくれた入口』より入ってきたウィズと神来社、そして政木が後ろを庇うように並び、協力者達が手分けをして人質たちの救出を始めるのに、神鳥がふふっと笑みを浮かべ、やってきたウィズに視線を向けた。
「首尾はどう?」
「こんなカンジ」
つまりは上々だ。役者は揃った、後は人質たちの救出が終えるまで戦線の維持を行い、やつを倒すだけのことである。
「くそっ!くそくそくそっ!やれ!全員殺せ!!」
苛立った声を首謀者の男が挙げて、命じられた通りに『さまよう眼球』が突っ込んでくる。
「無効化?クカカ、何処まで削ろうか」
にぃと唇を歪めたウィズがダンっ!と地面をけった。牙を抜きおり、『さまよう眼球』へ突き込む事による攻勢ラッシュ、ダメージは狙っていない、それは仲間がやってくれる。
今はこの戦線を維持するのが目的だ!
突撃する一瞬、ちらり、床に散った犠牲者の血が見える。
死亡者には弔いを……だが
「好きな人をモノ扱いは駄目だぜ!」
果たしてその声が幾人に届いたか……それは分からないがそれでも、いつか薄れていく記憶の中において少しでも残っていてくれればいいと願う。
「みんな!頼むよ!!」
神来社の声におー!と手を挙げて、仔兎達が『さまよう眼球』に突っ込んでいく。だがその数は半数、もう半分は監視のためにあちらこちらに散らばる。
逃げ遅れはいないか、他の男たちがおかしな動きをしないか、そのために。ふんすふんす!気合いは充分!変な動きをする男たちには齧り付いて、避難すべき人を見つけては協力者たちを連れてきて、助けるために仔兎たちも走り回る。
「くそっ!ちょこまかと!」
『さまよう眼球』が無数の牙の生えた巨大な口に変形していく。『強酸』を放ち、もはや誰彼構わず攻撃しようとするやつの前に不動院が躍り出た。
「っっ」
放たれた『強酸』が後ろの人間を庇った不動院の体に僅かにかかる。だが、激痛を耐え、鉄壁の防御で一歩も引くことなく、むしろ『さまよう眼球』の顔面に圧滅銃の速度を活かした連射をぶち込む。
「さぁ、今のうちに!」
壁役は自分が行う、人質たちも、否、仲間も傷つけさせぬと不動院は構え直して、地面をけった。
「さあ…さまよう眼球ちゃん、お腹一杯になる前に咎の上書きを終わりにさせて貰うよ!」
ぐっと刀を構え、政木も攻撃に参戦する。一人では防御面に少し不安はあったが、現状仲間達がいる。防御や遊撃、さらには壁役をこなす不動院、連撃を叩き込むことで気を逸らしてくれているウィズ、神来社の仔兎たちも小さな体を活かした動きで敵を翻弄している。
ならば自分は攻撃を受けおうべきだと刀を構えると、その隣に神鳥がその身に赤いオーラを纏って並んだ。
「行こう!」
「ええ!」
鳥が水面を走るように舞うが如く連撃が『さまよう眼球』を襲う。神鳥のその動きは確かにまうように美しいが、それ以上に苛烈であり、強烈だ。
一撃一撃が重く、確かにやつを削る。
「はぁっ」
その動きの隙を狙いながら、『ちょっと冷たくするけど…別にイイよね?』と政木が放つは『忍法・冰鱗弾』、氷属性の弾丸は『さまよう眼球』の一部を凍てつかせ、すかさず『狐の尻尾』を用いた二連撃でそこを砕く。
悲鳴らしきものを『さまよう眼球』があげた。√能力者達の猛攻に、やつの体がふらつき始めていた。
●●●
さて、そんな戦場とかした一室の隅で、こそりと動く小さな影がひとつ。
「それにしても悪趣味オブジェね……」
げんなりと呟きながら春埜がこそこそと動く。小柄な体のおかげか、誰にもその姿は気づかれていないようだ。
「あ、いた!ほら、あなたたち、にげるわよ!」
部屋の隅、まだ救助の手が届いていない人々に声をかけ、そのロープを外して逃げるのを促す。
「さ、行くわよ!」
長居は無用、さっさと逃げるが勝ち!と、数人の人々と共に春埜は逃げ出す。それを神来社の仔兎がちょこんと見ていたが、うん、逃げたのならよし!と見送り、また自分の役目に戻っていくのだった。
●●●
「神鳥!救助終わったとよ!」
「OK!あとはアイツらだけだね!」
戦闘は終盤へと入っていた。協力者たちの手と、不動院が壁役になりながら障害物を破壊したのとでスムーズに避難が終え、あとは『さまよう眼球』を倒し、首謀者たちを捕まえるばかりである。
「そんな、ばかな……」
「悪いけど、終わりだよ」
呆然と呟く首謀者の男に、ニッと笑みを浮かべる神鳥が「さぁ、行くよ!」と声をかけ、他の面々も一気に攻撃を仕掛けていく。もう背後を気にする必要は無い。
「あ、あ、あ……!!」
呆然とする首謀者の男を置いて、神鳥の拳が、神来社の仔兎達のかじりつきが、ウィズの刃が、カザミの召喚した牛鬼が『さまよう眼球』を削っていく。
「さぁ!」
「これで最後!」
そして、政木の尻尾の攻撃が『さまよう眼球』を吹き飛ばし、不動院の圧滅銃が欠片も残さず吹き飛ばしたのだった。
●●●
外はすでに明るくなり、保護された人々は家へ帰り、やがてここでの記憶も消えていくだろう。
首謀者たちは全員捕まり、警察の手に引き渡された。黒幕などはこれからということだが、ひとまずは、めでたしめでたしといったところか。
「おつれさまぁ!あー、お腹すいた!」
「おつかれさん」
「お疲れ様でした」
「おつかれさま」
「お疲れ様です」
「お疲れ様でした、みなさん」
うーん!と体を伸ばす神鳥を筆頭に、それぞれ互いの労を労う。仲間たちに大きな怪我はなく、数人の犠牲者は出てしまったものの、それでも大半の人々は助かったのだ。戦果としては上々と言えよう。
「では、私はこれで。また縁があったら!」
手を振り、政木が一時の仲間達に笑みを向ける。けれどまた、どこかで会うこともあるだろう。そんなことを思いながら。
こうしてバレンタインに起きた事件は、ひとまずの収束をみせ、世間はまた穏やかな日々を取り戻したのである。だが、それでも不穏な影は全て消え去った訳では無いのだ。いつかまた、日常に影を落とす日がくるかもしれない。
なにはともあれ、甘いお話と美味しいチョコレートにはご用心。
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