シナリオ

偽りのフェアリーテイル

#√汎神解剖機関

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 #√汎神解剖機関

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●連れ去られる少女
 この時期にしては珍しく、寒さが緩んだ温かな晴れの日に。本を抱えた少女が、寂れた神社の境内へと訪れた。
 それは少女の習慣でもあった。少女は物静かなこの場所を気に入っていた。小学校の帰りに立ち寄って、少女は今日も本を読む。
 両親は仕事で忙しく、少女が一人でも遊べるように沢山の物を与えた。少女がとくに気に入ったのは、とある童話について書かれた本だ。
 彼女にとって、その本は一番の友だちだった。綴られる文字と描かれる絵は、彼女をおとぎの世界へと連れて行ってくれる。孤独を埋めてくれる素敵な世界に、少女は憧れていた。
 読み終えた少女は本を閉じる。読了の満足感と、現実へと引き戻される寂しさ。
 いつもの感情が少女の心を支配する。だが、ひとつだけ。今日は『いつも』と違っていた。
 顔を上げると、長い黒髪の少女が目の前に立っていた。巫女のような服を着て、その少女は優しげな笑みを浮かべている。
「……誰?」
 本を抱えた少女は首を傾げた。巫女の少女は、ゆっくりと手を伸ばす。
「私がアナタの望む世界へ連れて行ってあげる。さあ、この手を取って」
 本を抱えた少女は目を瞬かせた。巫女の少女の背後に、これまで散々空想した童話の世界が広がっていたからだ。
 見たこともない美しい花々が咲き誇る巨大な森、不思議な動物が飛び交うピンク色の空、その先に聳え立つ、宝石とお菓子のお城……。
「ドキドキワクワク、楽しい御伽噺の世界。そこではアナタが主人公だよ」
 少女は巫女の手を取った。彼女は自分が狂気に呑まれていることに気付かない。キラキラと瞳を輝かせ、少女はその素晴らしい世界へと『隠される』。
 ――持ち主の居なくなった本だけが、境内に残された。

●神隠しの怪異
「思考を読み取って利用しましたか。なんとも怪異らしい悪辣な手段です」
 少女には見えなかったのだろう。偽りの御伽噺を創り出す、悪意に満ちた無数の腕が。|泉下《せんか》|・《・》|洸《ひろ》(片道切符・h01617)は集まった√能力者たちへと、依頼の詳細を語る。
「√汎神解剖機関にて、危険な怪異の1体が復活したことが判明いたしました。この怪異『神隠し』は、一人の少女を侵食された異空間に誘い込んだようですね」
 怪異は少女の思考を読み取り、それを糧として侵蝕された異空間を創り出した。
「この事件を放置してはおけません。誘い込まれた少女を見つけ、必ずや救出して欲しいのです。その上で、神隠しを倒していただきたい」
 神隠しが生み出した異空間の出入り口については、星詠みの予知で把握しているため、すぐに向かうことができる。
「神隠しは復活したばかりのためか、完全に力を取り戻してはいないようです。ですから、異空間へと入っただけでは、皆様の侵入は感知されません」
 隠密を意識しつつ、派手な行動さえしなければ、少女の探索と救出が終わるまで神隠しに見つかることはない。作戦開始後は少女を捜索、発見しだい異空間から元の世界に戻るよう説得するのだ。なお、力づくで連れて帰ることは、本任務では禁物だ。
「力づくで連れ帰ろうとした場合、少女は泣き叫び、神隠しに助けを求めるでしょうね。これは『派手な行動』にカウントされます。そして、『少女に対して√能力を使うことも厳禁』です。それは、神隠しにこちらの存在を感知されるきっかけとなります」
 つまりは、『強引な手段は一切使わず、説得だけで少女を連れ帰れ』ということである。
「神隠しに隠された少女の捜索願は出ているようですが、現地の人々の力だけではどうにもならないでしょう。皆様の力が必要なのです。どうか、力を貸してください」

マスターより

鏡水面
 こんにちは、鏡水面です。怪異『神隠し』によって童話のような異空間に連れ去られた少女を捜索後、元の世界に戻るよう説得し救出。その後は首魁である神隠しを倒してください。
 
 第1章
 隠密行動を意識しつつ、異空間の中で少女を探してください。
 異空間の中には巨大な森や奇妙な色の空、西洋の童話に出てくるようなお城があります。

 第2章
 見つけた少女を説得し、元の世界に連れて帰ってください。OPにも記載のとおり、強引な手段は一切使わないでください。『少女に対して√能力を使うことも厳禁』です。
 ※POW、SPD、WIZの表記の一部に、今回の任務と噛み合っていない箇所がありますのでご注意ください。 

 第3章
 (第2章が無事に成功した場合)少女が自分の空間からいなくなったことに気付いた神隠しが、怒りと共に√能力者に戦いを挑んできます。神隠しを撃破してください。

 プレイングの採用状況については雑記にも記載しますので、ご確認いただけますと事故が減ります。
 ここまで読んでいただきありがとうございます。それでは、皆様のご参加お待ちしております!
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よろしいですか?

第1章 冒険 『侵蝕された地へ』


POW 体力に任せて走り抜ける
SPD 危険の前兆を察知し、回避する
WIZ 何らかの術式を用いて怪異の力を退ける
√汎神解剖機関 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

清水・式
派手に動かず、
最短・最速で見つけないといけないか。

とりあえず、少女が読んでた童話を一字一句漏らさず暗記しながら散策しよう。
特に、一番ページが開かれた痕跡があるところ前後を重点に。

「……憧れた場所に居てくれれば良いのだけど」

●手がかりを辿って
 異空間の入口を抜けた先には、小鳥が囀る美しい森が広がっていた。
 木陰から森の様子を観察しつつ、|清水《しみず》|・《・》|式《しき》(情念終着・h00427)は思考を巡らせる。
「派手に動かず、最短・最速で見つけないといけないか」
 少女が残した本については、皆で確認した後に、式が預かった。捜索の手段からして、本をとくに必要としているのは彼だろう。
「この異空間が少女の空想を元にした世界なら、本の内容が役に立つかもしれない」
 何度も読まれたであろうその本を、式はそっと開いた。冒頭から綴られた物語を辿ってゆく。
「……物語の少女が、妖精の手に引かれて入った先は、美しい花たちが咲き乱れる森……」
 式は周囲の景色をくるりと見渡した。まさに今いる場所が、その森であるようだ。
 大きな音を出さないよう気を付けながら、式は森の中を進む。たまに花が話しかけてくるが、全て無視した。
 一句一句漏らさず本の内容を暗記しながら、異空間の中を進んでいく。
「このページが一番開かれているようだね」
 紙の状態から、とくに読まれているであろうページを判断する。主人公が大きなお城を見上げている場面だ。
「聳え立つ、宝石とお菓子のお城、か」
 森の向こうに、大きなお城が聳え立っている。宝石とお菓子で造られた、キラキラと輝く城だ。その姿は西洋の御伽噺に出てくる城を彷彿とさせた。式は森の中を進みながら、城を目指すことにする。
「……憧れた場所に居てくれれば良いのだけど」
 森の植物たちが誘う声も、式には届かない。彼の心にあるのは『少女を見つけ出す』、ただその一つだけだ。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

与田・宗次郎
SPD 連携・アドリブ歓迎

おとぎ話かぁ
√妖怪百鬼夜行においでよ〜……なんて軽々しくは言えないけど、不思議や夢に憧れる気持ちはわかるなぁ
だからこそ、放ってはおけないよね

√能力で配下妖怪たちと一緒に、少女が心惹かれるような地点を重点的に探してみる(あくまで探すだけ、話しかけたりはしない)
「さあ、かくれんぼの時間だよ。女の子を見つけられたら、駄菓子屋で打ち上げだ。……でも、こっそり探さなきゃいけないよ」

個人的にはお城が気になるが、侵食による危険には気をつけて、注意深く進む

●妖怪流の探し方
「おとぎ話かぁ。√妖怪百鬼夜行においでよ〜……なんて軽々しくは言えないけど、不思議や夢に憧れる気持ちはわかるなぁ」
 美しくも歪なカタチの花弁を開かせる森の植物たちを眺めつつ、|与田《よだ》|・《・》|宗次郎《そうじろう》(半人半妖の汚職警官・h01067)は呟く。
 この世界は、少女の『憧れ』が元となった世界。だからこそ、放ってはおけない。神隠しが少女を連れ去るために作った偽りの世界であって、本物ではないのだから。
「妖怪たちの手も借りるかね。出ておいで~」
 |百鬼夜行《デモクラシィ》を発動し、配下の妖怪たちを召喚した。
『キシシシシッ! でっけぇ森だな!』
『なんだい宗次郎、遊び事かい?』
 召喚された妖怪たちは、好奇心に満ちた瞳で周囲をキョロキョロと見回している。
 今にもはしゃぎ出しそうな妖怪たちに、宗次郎は口許へと人差し指を当てた。
「しーっ、静かに。……さあ、かくれんぼの時間だよ。女の子を見つけられたら、駄菓子屋で打ち上げだ。……でも、こっそり探さなきゃいけないよ」
 妖怪たちと共に、少女が心惹かれるような場所を探してみることにする。念を押すように、宗次郎は言葉を続けた。
「見つけたらおいちゃんに知らせるようにね。話しかけたり、イタズラしたらだめだよ?」
『へいへーい、わかったぜぇ~』
 宗次郎に従い、妖怪たちは東西南北、あらゆる方向に散っていく。彼らは遊び事が大好きだが、お願いしたことは守ってくれる。だから大丈夫だ。妖怪たちに続き、宗次郎も森の中の捜索を開始する。
「個人的にはお城が気になるが、焦りは禁物だね」
 なにせこの場所は怪異に侵蝕された領域だ。どこかに危険が潜んでいるかもしれない。
 最終的に目指すのは城だが、森の中についても、見落としがないよう慎重に進んでいく。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

雨夜・憂
今回は文字通り神隠しに合った少女救出の任。
敵に悟られず動くというのは中々に難しい。ただ憂には考えがある様子。

「要は√能力を使わなければ良いだけの話だ」

そういうと自分自身に備わっている力を使う。リミッター解除をして能力を発現。己の存在その物を透過する。イラストアプリのツールを模倣したようだ。そして自分自身から発せられる音もミュートに。これで自分が発する音も消えるだろう。

「(さて…行きますかぁ)」

口は動くが声は聞こえない。そのままナビ機能を模倣し危険な道を避け、最短ルートで移動。彼自身は改造人間であり肉体改造を施されている。パワーはもちろん感覚も人間の比じゃなく、高い索敵能力で常に周囲を見張って。

●着実に
 続々と仲間たちが捜索を開始する中、また一人、√能力者が侵蝕された異空間へと入り込んだ。
 本任務にて、神隠しに遭った少女を救出する。敵に悟られずに動くには、慎重さと高い技術を要求される。だが、|雨夜《あまや》|・《・》|憂《ゆう》(百鬼斬り・h00096)には考えがあるようだ。
「要は√能力を使わなければ良いだけの話だ」
 自分自身に備わる力でこの局面を乗り切る。憂は彼が持つ技能の一つ、リミッター解除を施し能力を発現した。
 ツールバー&ユーティリティを用い、イラストアプリのツールを模倣する。使用機能は透過ツール。己の存在を透過し、姿を見え難くする。
 もっとも、ツールを使って隠れたからといって、「これで大丈夫」と油断するような男ではない。
(「此処は怪異により生み出された空間。敵の領域である以上、看破されないとも限らない」)
 油断せず、常に気を張って進もう。そう心に念じて、一歩前へと足を踏み出す。聴こえるのは森を吹き抜ける風の音と、小鳥の囀りだけだ。
(「さて……行きますかぁ」)
 少女の空想が源とはいえ、強力な怪異が創り出した空間だ。使えるものは何でも使う。
 森の状況を目視でも十分に観察し、さらにはデバイスのナビ機能を駆使して最短ルートを予測した。
(「より早く森を抜けるには……こちらの方向か」)
 森は広大だが、肉体改造を施された改造人間である彼にとっては、少し広めの庭と大して変わらない。周囲を索敵する彼の眼差しは、地獄の門を守る番犬のように鋭い。
(「必ず、少女を見つけてみせよう」)
 孤独と憧れから怪異の手を取ってしまった少女を、救い出すために。
 静寂の中、憂は淡々と歩を進めていった。遠くに聳えていた城が、しだいに近付いてくる。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

十・十
隠密行動は苦手でごぜーますけど、頑張るでごぜーますよー
【憑依合体】で子犬で融合、わんわんパワーをゲットでごぜーますよ、わおーん
と、叫んではばれてしまうでごぜーますね、あぶないあぶないでごぜーます
可能であれば、少女が持ってた本から少女の匂いを知りたいでごぜーますな
匂いがわかれば少女がどこにいるか探しやすいでごぜーます
それが無理なら、「野生の勘」をもって少女を探すでごぜーますよ
見つからないように、幽霊の姿でゆらぁりゆらぁりわんわんと「空中浮遊」と子犬の「野生の勘」とを併用してこそこそいくでごぜーます
アドリブ・他PCとの絡み等歓迎でごぜーますよ

●匂いを追って
 怪異が創造した異空間――不思議な植物が溢れる森へと、|十《くのつぎ》|・《・》|十《もげき》(学校の怪談のなりそこない・h03158)は侵入する。
「隠密行動は苦手でごぜーますけど、頑張るでごぜーますよー」
 やる気は充分。十はわんわんパワーを手に入れるべく、|憑依合体《ノケモノ》を発動し、子犬の幽霊と融合した。
 子犬の心を感じ取り、本能の赴くままに鳴き声を上げそうになる。
「わおー……、くぅーん」
 なんとか堪えた。遠吠えなんてしてしまったら、怪異に気付かれてしまうかもしれない。
「と、叫んではばれてしまうでごぜーますね、あぶないあぶないでごぜーます」
 子犬と融合したことで頭に生えた犬耳をぴんっと立てて、十は捜索を開始する。
 異空間に入る前に、少女が残した本から、少女の匂いは嗅ぎ取っておいた。
 紙に染み込んだその匂いは、今もしっかりと記憶している。
「ほんのりと甘い匂い……住んでるお家が、そういう匂いなんでごぜーますかね?」
 とにかく、この匂いを手掛かりにしよう。野生の勘も頼りに、十は森の中を探索する。
 目立たぬように、そろり、そろぉり。幽霊の姿となり、木陰や茂みの中で浮遊しながらゆっくりと進む。
 ゆらぁり、ゆらぁり、わんわん、わんわん。すうっと空気を吸い込み、すんすんと鼻を動かしてみた。
「くんくん、くんくん……うーん……こっちでごぜーますかね?」
 気のせいである可能性も否めないが、記憶した匂いがする方向へと移動する。木陰からこっそりと覗けば、開けた場所へと繋がる道が見えた。
「……あっちから匂うでごぜーますね。行ってみるでごぜーます」
 城がある方角だ。十は息を潜めたまま、森の外に続くその道へと踏み出した。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 冒険 『一時的狂気に苛まれる民間人』


POW 手加減したビンタで物理的に正気に戻す。もしくは気合いで憂いを吹き飛ばすように力づける。
SPD 指圧などの的確な身体刺激で正気に戻す。もしくはテクニカルなパフォーマンスを披露して元気づける。
WIZ 魔術的手段で精神を安定させ正気に戻す。もしくは精神状態に寄り添った対話を行って励ます。
√汎神解剖機関 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


 √能力者たちは手分けして少女を捜索。その結果、彼らはついに少女を見つけ出す。
 少女は宝石とお菓子で造られたお城の前に立っていた。煌びやかで可愛らしいその外観を、熱心に見上げている。
 その眼差しは、素敵なものを見つけた時のように、きらきらと輝いている……。
与田・宗次郎
WIZ(精神状態に寄り添った対話)
連携・アドリブ歓迎

お嬢ちゃん、見つかってよかったよ
宝石とお菓子のお城、憧れちゃうよねぇ

「突然ごめんね、お嬢ちゃん。おいちゃん、お巡りさんなんだ。
 神社の境内で本を読んでた娘さんに、捜索願が出てるんだよ。
 ……お嬢ちゃんのことだよね?」
警察手帳を見せつつ「社会的信用」と「演技」を使用
……いや、警官なのは本当だけどね?

あとは少女の「ここにいたい」「帰りたくない」気持ちを否定せず、耳を傾けつつ、帰るほうに話を誘導
「わかるよ。素敵なお城だもん。行ってみたいし、お姫様にだってなってみたいよねぇ」
「でも、お父さんもお母さんも、お嬢ちゃんのこと心配して待ってるよ」
十・十
まず実体化して呼び止めてお話しするでごぜーますかねー
こんにちはそこいくお姉さん、先を急ぐのもいいけど、はしゃぎすぎたら疲れちゃうから、ここらで休憩がてら少しおしゃべりしませんか?
お話の内容はここに来るまでの話、「野生の勘」でうまく話題を勘づいて家族の話までもっていきたいでごぜーますな
きっと僕と違って幸せな家族の思い出があると思うでごぜーます
ここから先にいくとお父さんやお母さんと会えなくなるかもしれないけど、それでもいくの?
ボクはもう手遅れだけど、お姉ちゃんはまだ大丈夫だから。だから早く帰ろう?案内ならボクがするから
そういって実体化から幽霊にもどって姿を消すでごぜーます
アドリブ等歓迎でごぜーます
雨夜・憂
「綺麗だな」
ふと背後から喋りかける憂。この子が夢に描いた絵本の世界なのかもしれない。

「絵本が好きなのか? 俺も好きだ…今まで嫌な目にあった女の子が魔法の力でお姫様になって幸せになる話とかね」
とシンデレラの話をしながら、ふと相手の横にしゃがんで目線を合わせる

「でも、そのお姫様の魔法は長くは続かない。何でだと思う? それは本当じゃないからだ」
お姫様の話は、今の女の子と同じ境遇だと伝えて

「夢は冷める。悲しい事だけどね? でもお姫様は不幸になったかな? 違う。魔法なんて無くても愛してくれる人は必ず現れる」
と女の子に左手を差し出し

「君も同じだよ。魔法に頼らなくても、自分の物語は自分で好きに描けるんだ」

●いつか終わる魔法
 ピンク色の空の下。色鮮やかに輝く城は、甘い香りを漂わせる。√能力者たちは、城に見惚れる少女へと、そっと話しかけた。
「綺麗だな」
 |雨夜《あまや》|・《・》|憂《ゆう》(百鬼斬り・h00096)の言葉に、少女は笑顔で振り向いた。
「うん、綺麗なお城!」 
 心地よい夢の中に居る気分なのだろう。|十《くのつぎ》|・《・》|十《もげき》(学校の怪談のなりそこない・h03158)も実体化して、少女へと朗らかに語りかける。
「こんにちはそこいくお姉さん、先を急ぐのもいいけど、はしゃぎすぎたら疲れちゃうから、ここらで休憩がてら少しおしゃべりしませんか?」 
「いいよ!」
 少女は快く頷いた。そんな少女を、|与田《 よだ》|・《・》|宗次郎《そうじろう》(半人半妖の汚職警官・h01067)は複雑な思いで眺める。
(「楽しそうな所に申し訳ないけれど……ちゃんとお話しないといけないからねぇ」)
 宗次郎は警察手帳を少女へと見せ、演技を――否、本職なのだが――とにかく、警官として少女に話しかける。
「突然ごめんね、お嬢ちゃん。おいちゃん、お巡りさんなんだ。神社の境内で本を読んでた娘さんに、捜索願が出てるんだよ。……お嬢ちゃんのことだよね?」
 少女は、はっとしたように目を瞬かせ、次には表情を曇らせる。
「わたし、帰りたくない」
「わかるよ。素敵なお城だもん。行ってみたいし、お姫様にだってなってみたいよねぇ」
 宗次郎は少女の気持ちを否定しない。宗次郎へと、少女が首を傾げながら問う。
「おじさんもお姫様になってみたいの?」
「おいちゃんは、どちらかっていうと王様の方がいいかな?」
 そんな柄じゃないけどね、と宗次郎は軽く笑ってみせた。怖い印象を与えぬよう、穏やかな笑みを崩さぬまま、彼は言葉を続ける。
「でも、お父さんもお母さんも、お嬢ちゃんのこと心配して待ってるよ」 
「…………」
 少女は黙って考え込んでいるようだ。重い沈黙を解すように、憂が柔らかに口を開いた。
「絵本が好きなのか? 俺も好きだ……今まで嫌な目にあった女の子が魔法の力でお姫様になって幸せになる話とかね」
「わたしもそのお話、知ってる。シンデレラだよね?」
 少女の言葉に憂はこくりと頷いて、その瞳にほんの少しだけ寂しげな色を滲ませる。
「でも、そのお姫様の魔法は長くは続かない。何でだと思う? それは本当じゃないからだ」
 午前0時に魔法は解けて、ドレスはボロ着に、馬車は南瓜に戻ってしまう。けれど、それが本当の姿なのだ。魔法の力で、いつまでも偽っているわけにはいかないから。
「夢は冷める。悲しい事だけどね? でもお姫様は不幸になったかな? 違う。魔法なんて無くても愛してくれる人は必ず現れる」
 憂は少女へと、左手を差し出す。彼女に一夜限りの魔法なんて要らない。夢に溺れなくとも、その足でしっかりと立ち、歩いていけるはず。
「君も同じだよ。魔法に頼らなくても、自分の物語は自分で好きに描けるんだ」
 迷う少女へと、十がそっと重ねるように、言葉を紡ぎ出す。
「きっと僕と違って幸せな家族の思い出があると思うでごぜーます。ここから先にいくとお父さんやお母さんと会えなくなるかもしれないけど、それでもいくの?」
 十の問いかけに、少女の瞳が切なげに揺れた。
「お父さん、お母さん……」
 仕事のせいで構ってもらえずとも、両親のことが好きなのだろう。
(「親御さんも、この子を大切に思ってるに違いないでごぜーます」)
 だからこそ、この場所に居続けてはいけない。十は温かな眼差しで、少女を見つめる。
「ボクはもう手遅れだけど、お姉ちゃんはまだ大丈夫だから。だから早く帰ろう? 案内ならボクがするから」
 本来いるべき場所へと、少女を安全に送り届けてみせる。
 三人の優しい眼差しに、差し伸べられた手に。少女は意を決したように、力強く頷いた。
「……わかった、帰るね」
 神隠しの悪意に気付かずとも。少女は心のどこかで、この世界が偽りであることを理解していたのかもしれない。
 帰ると決めた少女に、十はにっこりと微笑んでみせた。
「それじゃあ、わるーい魔女に見つからないように、こっそり行くでごぜーますよ。お家に帰るまでが、おとぎ話でごぜーます!」
 √能力者たちは少女を連れて城から離れる。森へと戻り、異空間の出口へと向かった。
 異空間から出る直前に、少女がふと思い出したように口にする。
「あ、そうだ。わたしをここに連れて来てくれた黒い髪の女の子に会ったら、ありがとうって伝えてほしいの。楽しい時間をくれたから」
 神隠しのことを言っているのだろう。少女は知らないのだ。巫女服のあの怪異が、悪意を持って少女を異空間に誘い込んだことを。宗次郎は、穏やかな表情を一切崩さない。
「おいちゃんに任せなさい。会えたらちゃんと伝えておくよ」
 それは優しい嘘だ。無垢な少女が、怪異の真実を知る必要はない。だからこそ、宗次郎は何食わぬ顔で嘘を吐いたのだ。
 異空間から出た後、少女は無事に現地の機関に保護された。残された仕事はあと一つ。怪異の討伐だ。
 異空間の入口に再び立ち、憂は少女が最後に言った言葉を思い返す。
「……純粋で賢い、優しい子だったな」
 寂しさを全部呑み込んで、少女は魔法の世界から抜け出した。しかし、彼女のように決断できる子供は、そう多くないかもしれない。
「同じように隠される子を出さないためにも、神隠しを倒さないとでごぜーますね」
 十は異空間の入口をまっすぐに見据える。少女を救出した今、感知した神隠しが姿を現す時は近い。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第3章 ボス戦 『神隠し』


POW 攫う『かみのて』
【虚空より生える無数の『かみのて』】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
SPD 増殖する『かみのて』
自身の【かみのて】がA、【かみのうで】がB、【かみのかいな】がC増加し、それぞれ捕食力、貫通力、蹂躙力が増加する。ABCの合計は自分のレベルに等しい。
WIZ 荒ぶる『かみのて』
【虚空より生える『かみのて』】により、視界内の敵1体を「周辺にある最も殺傷力の高い物体」で攻撃し、ダメージと状態異常【掴む腕】(18日間回避率低下/効果累積)を与える。
√汎神解剖機関 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


 ――――パキリ。
 異空間の入口に、突然大きな亀裂が走った。それは瞬く間に広がり、ガラスが砕けるように弾け飛ぶ。
 弾けた破片の向こうから、怒りに瞳を燃やす神隠しが姿を現した。
「誰? 私からあの子を奪ったのは?」
 異空間に閉じ込めて、少しずつ精神を蝕んで、私のものにするつもりだったのに。
 神隠しは√能力者たちを睨み、背後の腕を不気味に蠢かせる。
「アナタたちね。許さない……許さないわ!」
継萩・サルトゥーラ
鏡水面マスターにおまかせします。かっこいい継萩・サルトゥーラをお願いします!

アドリブ歓迎。
「やったろうじゃないの!」
「まぁ焦んなや、楽しいのはこれからだ」

√能力は指定した物をどれでも使用ます。
戦うことが好きで好きで楽しく、戦闘知識や勘を活かしてハデに行動します。
楽しいからこそ冷静でいられる面もあります。
多少の怪我は気にせず積極的に行動しますがヤバいときは流石に自重します。
仲間との連携も行えます。
軽口を叩いたりやんわりと皮肉を言ったりしますが、他の√能力者に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
与田・宗次郎
連携・アドリブ歓迎

ぃやいや、許せないのはこっちのほうもだね
神様なのかもしれないけど、
子どもを騙して連れ去っちゃあいけないよ
未成年者略取の疑いで、逮捕……
いやいや、きっちり倒させてもらうよ

とはいえ、敵さんの手数は多そうだ
こっちも配下妖怪のみんなに助けてもらおう
「さあさあ、鬼ごっこの時間だよ!
 鬼はあの神様、おいちゃんがやっつけるまで
 逃げ切れたら、みんなの勝ちだ!」
牽制してもらいつつ、射撃系の技能で攻撃
間合いを詰められたら、御用警棒を伸ばしてぶつけ
「ダッシュ」で距離を取る
十・十
いいなぁ、愛してくれる親がいるというのは
いいなぁ、誰かに求められるというのは
「もしもアナタが生前のボクを取り込んでたら、ボクはその結末でも喜んでたと思うよ」
そう『呪詛』を吐きながらゆらぁりゆらぁりと近づきます
「どうして現れてくれなかったの?」
亡霊のようにゆらぁりゆらぁりと、「恐怖を与える」ように
「餓死するぐらいなら、夢の中の方がよかった」
相手の攻撃は「野生の勘」と「空中浮遊」でゆらゆら避けて
「これはただの癇癪、憂さ晴らし」
当たる距離まで近づいたら「捨て身の一撃」による【一点集中全力突】で「鎧砕き」するように防御ごとぶち抜きます
「なーんて、ただのオバケの戯言でごぜーますよ」
連携アドリブ等歓迎だよ
雨夜・憂
「ふざけるな! 人の悲しみに付入り利用しようとする貴様に怒る資格など無い! 本当なら詐欺罪、及び未成年者誘拐罪で逮捕する所だが…悪党に慈悲は無い」
これは罪を憎む憂の力なのか。相手側の月が雲に隠れ雨が降り出し、なんと憂側に青白く光る別の月として現れる。暗い森へと誘おうとする悪意の光では無く、夜の闇に憂う者たちを優しく照らす月の如く。

「貴様の罪は俺が断ち斬る!」
無数に襲い掛かる“かみのて”攻撃も改造人間として肉体改造を施された憂には止まって見える。人間の域を既に限界突破した技は全ての攻撃を受け流し、そして放たれる“断罪”の剣。

「十悪両断!」
それは鈍い鋼色の一閃と共に十文字斬りとなって敵をなぎ払い。
清水・式
心情:人に干渉しようとする神さまには、碌なのがいない

『かみのて』を、|神夜《かぐや》に切り刻んでもらいながら、一歩一歩、ゆっくり神隠し歩みよる。

「……たかが、その程度で。人に、関わろうとするなよ」

●悪意を屠る
 怒り狂う神隠し。しかし、許せないと感じているのは彼女だけではない。
「ぃやいや、許せないのはこっちのほうもだね。神様なのかもしれないけど、子どもを騙して連れ去っちゃあいけないよ」
 |与田《よだ》|・《・》|宗次郎《そうじろう》(半人半妖の汚職警官・h01067)は笑みこそ崩さないが、その瞳には毅然とした色が宿っている。
 ――|Rain call《レインコール》が、月を隠し雨を降らす。時を同じくして、青白い光が|雨夜《あまや》|・《・》|憂《ゆう》(百鬼斬り・h00096)を照らし出した。
「ふざけるな! 人の悲しみに付入り利用しようとする貴様に怒る資格など無い! 本当なら詐欺罪、及び未成年者誘拐罪で逮捕する所だが……悪党に慈悲は無い」
 光は夢か幻か、本物の月のように輝く。優しい月下で、援軍に訪れた継萩・サルトゥーラ(|百屍夜行《パッチワークパレード・マーチ》・h01201)は、ガトリング砲の砲口を神隠しへと構える。
「あいつが件の神隠しか。助太刀するぜ」
 |十《くのつぎ》|・《・》|十《もげき》(学校の怪談のなりそこない・h03158)が、力強く頷いてみせた。
「援軍感謝でごぜーますよ。……さあ、やりましょうか」
 真剣な眼差しで神隠しをまっすぐに見据え、十は戦闘態勢へと入る。
 緊張が漂う空気の中、|清水《しみず》|・《・》|式《しき》(情念終着・h00427)が、静かに溜息をついた。
「……干渉しようとする神さまには、碌なのがいない」
 物憂げに瞳が細められたのも束の間、鋭い眼差しを神隠しへと向ける。先の少女のように再び子供が隠されぬよう、必ず倒さなければと彼は強く心に思う。√能力者たちへと、神隠しは歪な笑みを浮かべた。
「アナタたちを殺して、また別の子を隠さないとね?」
 腕を無数に広げ、彼女は√能力者たちへと襲い掛かる。
 迫り来る神隠しを睨み据え、式は√能力を発動した。
「――|神夜《カグヤ》、おねがい」
 言霊を紡げば、護霊「神夜」が式の背後から召喚された。神夜は戦場へと降り立ち、神秘的に煌めく霊力の糸を編み上げる。それは、怪異を断つ刃の糸だ。虚空より生える無数の『かみのて』を、式は凛と見つめる。
「神夜、霊糸で邪魔な腕を切り刻んで」
 式の言葉に従い、神夜の霊糸は迫り来る攫う『かみのて』を迎え撃った。霊糸は式へと振るわれる神隠しの腕を、順番に切り落としてゆく。
 糸を掻い潜った神隠しの腕が、式を打ち据えた。だが、式は耐え凌ぎ、歩みを止めない。
(「邪悪な力を感じる……これが、この敵の力。――でも、負けないよ」)
 痛みに構わず彼は神隠しへと少しずつ歩み寄る。腕を切り落としていた霊糸が、巫女の体へと触れた。
「人の平穏な日常に、神さまは要らない」
 霊糸が神隠しの体を切り裂く。滴る血に、彼女の殺意が増した。
 元より肌を刺す殺意が、さらに膨れ上がる。どす黒い殺気にも動じず、宗次郎は拳銃をしっかりと構えた。
「未成年者略取の疑いで、逮捕……いやいや、きっちり倒させてもらうよ」
 |百鬼夜行《デモクラシィ》を発動し、配下の妖怪たちを召喚する。
『ついに親玉の登場か!』
『今度は何して遊ぶんだい?』
「さあさあ、鬼ごっこの時間だよ! 鬼はあの神様、おいちゃんがやっつけるまで逃げ切れたら、みんなの勝ちだ!」
 妖怪たちへと、宗次郎は高らかに言い放った。妖怪たちはすぐに理解し、神隠しの周囲を牽制するように飛び回る。
「鬱陶しいわね。すべて喰らってあげる」
 神隠しが『かみのて』を増殖させた。悍ましい光景だが、宗次郎は世間話でもするように問いかける。
「どんどん手が増えてくねぇ。それで捕まえて食べようってかい」
 答えの代わりに無数の腕が伸び、宗次郎へと迫った。宗次郎は片手に御用警棒を握り、迫る腕を弾く。後方へと飛び退きながらも、攻撃の合間……一瞬の隙を見逃さない。
「そう簡単には捕まってあげないけどね!」
 もう片手の拳銃からの射撃。妖怪たちの牽制による助けも相まって、弾丸は神隠しの体へと刻まれる。
 被弾した敵へと怒涛の剣技を重ねるべく、憂が抜刀隊特別支給軍刀『甲』を手に駆ける。
「貴様の罪は俺が断ち斬る!」
 眼前の怪異は、いわば暗い森へと誘う悪意の光。優しい月光は夜闇に憂う者たちを照らす。悪意を退け、討ち滅ぼすために。
 粘着質な悪意はその腕を広げ、優しい月光を喰らおうとする。
「断ち斬れるものなら、やってみなさい」
 暗闇から増殖した腕が溢れ出す。それは蠢きながら憂へと迫った。だが、それが何だというのだ。
 怪物の如き無数の腕にも、憂が臆することなど無い。悪辣な怪異と戦う力を持っているというのに、臆する必要などあろうか。肉体改造を施されたという事実は、彼を極限まで強化する。
「その腕が俺の身を裂いたとしても、俺の剣が鈍ることはない!」
 迫り来る腕を越えて、断罪の剣を放つ。
「十悪両断!」
 鈍い鋼色の一閃。憂の十文字斬りが、神隠しの体を斬り裂いた。
「ちっ……」
 神隠しが眉を寄せるが、彼女の殺意と勢いは未だ衰えず。憂は冷静に状況を判断する。
(「確かな手応えはあった。だが、まだ足りない」)
 無数の攻撃を受けてもなお、神隠しの勢いは衰えない。さすが邪悪に染まりきった怪異といったところか。
 複数人で押していてもこの状況。やはり敵は強大と言えよう。
 薄氷の上を歩むような戦いに、サルトゥーラは心の底から笑みを浮かべてみせる。
「タフだな。こいつはたくさん楽しめそうだ」
 強敵と戦うのは胸が躍る。武器を持つ腕にも力が入るというものだ。だからといって、夢中になり過ぎることはない。敵の状態をしっかりと見極め、思考を巡らせた。
 ――敵は間違いなく消耗している。精神を研ぎ澄まし、攻撃を重ね続ければ、勝機は見える。
 戦闘を楽しんでいるからこそ、冷静な脳が行動の最適解を導き出した。
「――狙え」
 サルトゥーラはケミカルバレットを発動し、ガトリング砲から化学属性の弾丸を発射する。弾丸は宙を裂くように飛び、神隠しの武器である腕へと深く撃ち込まれた。着弾した弾は、内側から敵の腕を溶かす。
「忌々しいわね」
 神隠しは腕を伸ばす。だが、超強酸に蝕まれた腕の動きは当初よりも鈍い。
 直撃を受ければ致命傷であることに変わりない。だが、ドーピングで戦闘力を強化した今ならば十分に受け流せる。
「その弾丸には超強酸がたんまり入ってる。怪異も溶かせるやべーやつがな」
「この程度の痛み、どうってことないわ」
 怒り心頭の神隠しは強気な姿勢を崩さない。それが、サルトゥーラをさらに楽しませた。
「いいねぇ。オレも気合入れていかないとな!」
 無数の剣技、そして弾丸が神隠しを消耗させる中、十も彼女へと接近する。
 十の心には、ある感情が渦を巻いていた。愛してくれる親がいる。誰かに求められる。先ほど助けた少女は、すべてを持っているようにも思えた。――それは、『羨望』だ。
「もしもアナタが生前のボクを取り込んでたら、ボクはその結末でも喜んでたと思うよ」
 十は神隠しへと迫る。ゆらぁり、ゆらぁり。
「どうして現れてくれなかったの? 餓死するぐらいなら、夢の中の方がよかった」
 彼の口から吐き出される言葉は、『呪詛』そのものだ。
「そんなこと、言われても困るわ……」
 他の√能力者たちと様子が違う十に、神隠しは戸惑い気味に返した。
 十は亡霊のように近付いてゆく。繰り出される『かみのて』を避け、受け流しながら、|一点集中全力突《パイルバンカー》の間合いへと詰めた。
「これはただの癇癪、憂さ晴らし」
 右拳をぐっと握り締め、神隠しを全力でぶん殴る。衝撃に吹き飛ぶ神隠しへと、十は悪戯っぽく笑ってみせた。
「……なーんて、ただのオバケの戯言でごぜーますよ」
「くぅ、っ……!」
 神隠しは体勢を大きく崩す。限界が近いようだ。
 だが、√能力者たちは決して手を緩めない。相手が完全に倒れるまで、猛攻を重ね続けるのみだ。
 宗次郎は拳銃を握る手に力を込めつつ、仲間たちへと呼び掛ける。
「あと一息だけど、油断せずに行こうか」
 立て続けに放たれる弾丸は、容赦なく神隠しを貫いた。
 サルトゥーラは宗次郎へと頷いて、ガトリング砲にエネルギーを注ぎ込む。
「ああ! そろそろケリ付けるぜ!」
 再び発射された超強酸の弾丸が、神隠しの体に無数の風穴を開けていった。
 満身創痍に近い彼女へと、憂が肉薄する。
「無論だ。魂ごと叩き切る!」
 烈風の如き斬撃が、夜闇を裂くように閃いた。悪を斬る聖剣は、神隠しを無数の腕ごと薙ぎ払う。
 さらに追い討ちを掛けるように、式の神夜が敵の体を切り刻んだ。
「……ただただ害しかなさない、愚かな神さま。もう、人に関わろうとするなよ」
「まだ……まだよ!」
 全身から血を迸らせながら、神隠しは必死に腕を蠢かせる。最後の悪足掻き――だが、もう終わる。
 十は拳を握り締めた。あと1回骨折すれば、右腕は使い物にならなくなる。けれど、それで構わない。
「これで、最後にするでごぜーます!」
 十は神隠しへと、全身全霊の右腕を振るった。彼らの攻撃に彼女は限界を迎え、ついに力尽きる。
「そ、んな……また、殺される、なんて……!」
 ボロボロと体が崩れ落ちていく。崩れ落ちた体は、地面へと溶け込むように消えていった。
 かくして、√能力者たちは少女を救い出し、神隠しの討伐を果たしたのである。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

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