シナリオ

停滞の理性

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「皆様、お集まりいただきありがとうございます」
 能力者が集められた、どこかの会議室の中。一礼したヴェイカー・ベークス(目指せパン罪者・h01060)は資料を広げる。
「√妖怪百鬼夜行の各地には古妖の封印が散らばっていることはご存じですね?どいつもこいつも物騒な妖怪らしいのですが、この封印を解いてしまった人がいるらしいんですよね」
 ハハッ。男は笑いながらおどけて両手を挙げるが、事態は能力者達が思っていた以上に深刻なのだろう。古妖と言えばそのどれもが他者の血肉を食らう危険な存在のはず。それを野放しにするわけにはいかないのだ。
「で、どうやらそのやらかしてくれた奴がお天道様の下を歩けないような輩らしく、大通りの二、三本入った細い路地に集まっている連中の誰か一人です」
 誰か一人。つまり、そこにいるのは確かなのだが、具体的にどのような人物なのかは分かっていないと言う事らしい。案内人は薄っぺらい笑みの仮面を傾けて。
「まぁ、正直に聞いたってどうせ口を割るわけないですからね。適当にぶちのめして吐かせるか、いい感じの『お小遣い』を握らせて、どいつがそのやらかした奴なのかを聞き出してください。まだ生きてれば見つかるでしょう」
 捜索の手がかりだけ伝えて、胡散臭い男は再び一礼すると会議室の扉を開いた。その先は、人と妖怪が入り乱れて闊歩する往来の物陰に繋がっていて。
「それでは皆様、ご武運を。無事の生還をお待ちしておりますよ?」

マスターより

久澄零太
ヒャッハー!『ギャグ依頼』だァ!!

久澄です

今回は薄暗い路地裏でアウトローな雰囲気のやり取りをするんですって

まぁ、だからって拷問して情報を聞き出すわけにはいかない為、どうせロクな事にならないんだろうけどね!!

初回執筆は十六日の予定

当日の十八時くらいまでにプレくれると嬉しいな!
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第1章 冒険 『裏の社会を探れ』


POW 腕っぷしでならず者達に認めさせる。
SPD 怪しい所をしらみつぶしに当たっていく。
WIZ 裏の社会について詳しそうな妖怪や人間を調査する。
√妖怪百鬼夜行 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒木・摩那
古妖の封印を解いてしまったのですか。
知らずに封印を解いてしまったのは仕方が無いですが、放置したままにしてしまうのは困ったものです。
早く封印を元に戻したいですね。

さて、情報を得るということですが。
今回の相手は素直に話してはくれないとのこと。
情報料と言っても、中学生女子が払えるお金なんて雀の涙ですし。
出せるものというと、集めた調味料の数々とか、例の食べてはいけないパンとか、スマイルぐらいですね。
かわいく語り合っても話していただけないとなると、最後は拳で語ることになるんですかね。
荒事は避けたくはありますが。
プレジデント・クロノス
私は、私は、エンターテイメント系大企業、PR会社『オリュンポス』のCEOだ。
さぁ、取引現場に向かおうと、部屋の扉を開けたら、違う場所に出たようだ。

ここは、何処だ…!?
(最近、自身の記憶が飛んで徘徊でもしているのではないかと疑うな…。)

大正村か?
その割には、やけに、生活感があるような気がするな…。
しかも、普通の人っぽくない格好の者達までいるな…コスプレか?

ふむ…そうか! やはり、新規参入の映画のセット会場だったか。

どれ、ちょっとあの辺りで集まっている(ガラの悪そうな)者達にここが何処か聞いてみよう。

*:アドリブ等大歓迎
轟・豪太郎
ワシが剛拳番長轟豪太郎である!
ミンシュトア(h00399)はワシが置いてきた!
とはいえ、ワシも√能力者としてはまだまだ駆け出しのひよっこである!
ここは「番長応援歌」で仲間を応援するぞ!
(学ラン姿の男臭い応援団員達が所狭しと路地に密集して迫ってくる)
ワシと応援団員達の男気に当てられ、ならず者どもも口を割ってくれるであろう!
ん、むしろ連中の「情報を渡さない」という行動の成功率が100%になるのかこの場合?
それはそれでよし!持ち味をイカせッッ!!
剛拳番長らしくPOW行動!
男の共通語は肉体言語じゃぁ!
“喧嘩殺法”でとことんまでに語り合う!
以上!!
塙・弥次郎
WIZ
俺は冒涜融合体ヒアデス!が人間に擬態したモード!
アウトローがなんぼのもんじゃい、こちとら秘密結社やめた住所不定無職だぞおまけに人権もねェし
喪服にサングラス、ロン毛のカツラでレッツインタビューだ

つーことでお小遣いなんてない、俺が欲しいくらいだ
腕っぷしもちょっとこう…変死体が出来上がって別な事件がおきちゃうかも
そういうわけで元悪の怪人らしく「心の隙間を広げる音」を聴かせつつ催眠洗脳してやる
コツはとにかく催眠音波を聴かせ続けることさ…つまりつれない態度だろうが徹底的に食い下がる
「俺がその封印とやらを知ったところでアンタ困るか?困らない、だろ?」
「まあまあ教えてよ減るもんじゃなし」
「なあ?」
黒葉・黄泉子
この幽霊探偵黄泉子がまるっと解決してあげるわ。
裏路地にいる人達からの情報収集も鮮やかな手並みを見せてあげる。
先ずは、闇に紛れてアウトローの一人を『這い寄る黒い手』で裏路地の奥に連れ込みます。アウトローと幽霊が裏路地の奥に二人きり…何も起きない筈もなく…【憑依融合】。

憑依して完全融合する√能力…そう"完全融合"した事でアウトローの記憶も共有できるッ!
…でもハズレねこいつ。まあいいわ。
このまま記憶を読み取り口調を真似て、このアウトローになりすまして他の連中から情報収集よ。奴等も身内には口が軽くなるでしょ。

ちょっと動きずらいわね。不養生なんじゃない、この体?あっ、首が逆方向に。


【アドリブ歓迎】

 私ことプレジデント・クロノス(PR会社オリュンポスの最高経営責任者・h01907)は、エンターテイメント系大企業、PR会社『オリュンポス』のCEOだ……そう、当社は真っ当な会社なのだ。だというのに、一部界隈では悪の秘密結社だとか正義の秘密組織だなんて噂が流れてしまっている。お陰でこうして私が直々に取引に赴き、事情を説明する羽目になっているのだ。
「まぁ、それでも業績の方には不思議と何の問題もないから、本当にただの噂だとは思うのだが……」
 会社というものは、業績だけで回っているわけではない。特に顧客や取引先との信頼関係は必須。そして最高責任者がこうして現場に出ている辺り、数字以外の面においては会社にどれだけの影響が出ているのかはお察し頂きたい。
「さて、今日も今日とて、会社の実情を説明しながら仕事をこなすとするか」
 取引現場に向かおうと、先方が待っているであろう部屋の扉を開くと……。
「ここは、何処だ……!?」
 会議室ではなくやや古風な街並みでした。
 というわけでプレジデントの回想シーン(?)から始まりました。周囲の風景を見回せば、一昔前の日本のような家屋もあれば、やたら新しい建造物もある。呆気にとられたプレジデントが首を左右に揺らして周囲を確認してから振り向くと、自分が通り抜けたはずの扉が無くなっていた。
「最近、自身の記憶が飛んで徘徊でもしているのではないかと疑うな……」
 本来なら今からでも大急ぎで取引現場に向かわなければならないのだが、そもそも自分がいるこの場所がどこなのかも分からない。周りを見れば立ち並ぶ店に提示された住所は見た事もない表記。
「ふうむ、いつの間にやらテーマパークか何かに踏み込んでしまったようだ……だが」
 行き交う人々は確かに誰もが笑顔だが、その笑顔は歓喜ではなく、日々の幸福感によるもの。顔を見て心を察するくらいできなければ、CEOなど勤まらない。
「その割には、やけに、生活感があるような気がするな……しかも、普通の人っぽくない格好の者達までいるな……コスプレか?」
 どう見ても非日常な空気の中に漂う日常の光景に、プレジデントはピンと来た。
「ふむ……そうか!やはり、新規参入の映画のセット会場だったか」
 勘がいいのか悪いのか……いやこの人無能力者だから、都合の悪い部分は理解できないという可能性が……?
「であれば、スタッフに道を聞きたい所だが、私には客とスタッフの違いが分からんな……む?」
 ここでプレジデントが見つけたのは、路地裏の物陰に集まっているちょっと物騒な雰囲気の人達。
「む、あんな目立たない所に集まって、何やらひそひそと……もしや、スタッフか?どれ、ちょっとあの辺りで集まっている者達にここが何処か聞いてみよう」
 と、プレジデントが路地裏に入っていった辺りで。
「ワシが剛拳番長轟豪太郎である!」
 ドドン!!無駄に集中線とか見上げ構図とかサウンドエフェクトとか、大量に使いこんで劇画タッチ顔で仁王立ちする轟・豪太郎(剛拳番長・h06191)。どう見ても成人しているとしか思えない気配に学帽、学ラン姿の彼は周りからは実に冷ややかな目を……。
「あれ、番長衣装ってやつ?」
「人間文化ファッションはやはり見ていて楽しいなぁ……」
 向けられてない!むしろなんか熱い!?
「ふっ、何やら困惑しているようだな……」
 そりゃー、ねぇ?
「ミンシュトアはワシが置いてきた!」
 誰があのおもしれ―女の話をした!?さてはおめー同背後だな!?既にツッコミどころ満載な豪太郎は腕組みしたまま。
「とはいえ、ワシも√能力者としてはまだまだ駆け出しのひよっこである!ここは仲間の応援に回るぞ!」
 って宣言しながら路地裏に入っていくと、出入り口を塞ぐようにど真ん中に立つ。集まっていた目つきのヤベー連中が一斉に豪太郎を見ると。
「皆々様のーッ!更なる活躍を祈ってーッ!三、三、七拍子ィー!!」
 なんか応援し始めたーッ!?
『押忍ッ!!』
 なんか出てきたーッ!?
「フレーッ!フレーッ!能ッ!力ッ!者ッ!!」
 なんか始まったー!?
「ななななんだ!?新手のアトラクションか!?」
 突然現れたムッキムキでむさくるしい学ラン男の集団に狭い路地はギッチリ詰まり、至近距離で応援大合唱を聞かされる羽目になった現地民とプレジデントは混乱。おかしいな、応援能力のはずなのに、やってる事が音響兵器なんだが……?
「ワシと応援団員達の男気に当てられ、ならず者どもも口を割ってくれるであろう!」
 これはアレかな、情報を吐くまでこの絶叫攻撃をやめないぞっていう新手の拷問かな……?ごろつき系お兄さんたちもプレジデントも耳を塞いで必死に耐える中、塙・弥次郎(冒涜融合体ヒアデス・h05784)はヒーローっぽく決めポーズをビシィ!
「俺は冒涜融合体ヒアデス!……が人間に擬態したモード!アウトローがなんぼのもんじゃい、こちとら秘密結社やめた住所不定無職だぞ!おまけに人権もねェし!!喪服にサングラス、ロン毛のカツラでレッツインタ……」
 弥次郎……は偽名なんだっけか。人間の姿を取ってグラサンで目元を隠し、ウィッグつけて身バレを防止しながら近づこうとしたヒアデスは、何故かそこら中を埋めつくすマッチョメェンに左右からガッシと捕まって。
「おい、服装が間違っているぞ!」
「黒服にしたってモノが違うだろうが!学ランはどうした学ランは!?」
「え?あれ?待って、俺は応援団じゃないんだけどぉ!?」
 物陰に引きずられていくヒアデス。戻って来た彼は学ランに襷をかけ、鉢巻きまで巻いてデッカイ旗をブンブン。
「お小遣いなんてない、俺が欲しいくらいだ。腕っぷしもちょっとこう……変死体が出来上がって別な事件がおきちゃうかも。うん、確かにそんな不安を心のどこかで吐露してたよ?してけどさぁ!なーんで俺が巻き添えをくうわけ!?」
 バッサーバッサ、バッサバサ!文句言いながらもちゃんと旗を振って応援してくれるヒアデス。なんやかんやで真面目なのかなーって思ってたら。
(なーんて被害者面をしておけば、まさか俺が旗の音で催眠術をばら撒いているとは誰も思わないだろう……)
 心の中身が物凄い悪党でした。顔で怒りながら心で嗤うヒアデスが手旗催眠をバサバサしていると。
「この幽霊探偵黄泉子がまるっと解決してあげるわ!」
 黒葉・黄泉子(幽霊探偵黄泉子の事件簿・h05732)がズギャーンッと参戦……したのだが、応援と旗催眠が飛び交い、飛び散る汗と体温でムワムワしてきた漢臭い路地裏の熱気と異臭にあてられて。
「あ、無理」
 スッと奥の物陰に消えていく。悪霊にも匂い移りするのだろうかと、心配になった彼女は自分に消臭剤を振りかけてから、こそっと路地の応援騒ぎを覗いて。
「だーれーにーしーよーおーかーなー……」
 てけとーに一人選んで、指先をビシィ!
「君に決めた!!」
 黄泉子のご指名(?)と同時に彼女の影はゆっくりと伸び、元からいた連中と呼び出された応援団の作る影を伝い、音もなく伸びていくと……。
「ッ!?んー!むーっ!?」
 獲物の足から這い上がり、手足に巻き付いて動きを封じ、口を押さえつけて黙らせた。辺りには騒々しいほどの応援歌が響き渡り、助けを求める呻き声は影へと消えて、絡みつかれた男はゆっくりと黄泉子が潜む物陰へと引きずられていく。アウトローと幽霊が裏路地の奥に二人きり……何も起きない筈もなく……。
「ンーッ!?…………………ハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタ……って、これ別の妖怪じゃない!!」
 突如、なんか喋り始めたかと思ったらセルフツッコミをするいかついオッサン。
「説明してあげましょう!」
 いやもういいよ、口調からしてなんとなく察しはつくから。
「私の能力は憑依して完全融合する……そう『完全融合』した事でアウトローの記憶も共有できるッ!」
 バビューンッ!謎のエフェクトと共に片手で顔を隠し片手で後頭部に回して腰を捻る奇妙なポーズを取る黄泉子だが。
「……でもハズレねこいつ。関係者の記憶はないし、心の奥底に隠されて記憶も、今の奥さんと出会ったときに、山盛りパフェを前に子どもみたいな喜び方したのを思いっきり見られて赤面した失敗談しかない……まあいいわ。記憶さえ読み取ってしまえば、成り代わりだなんて簡単、他の連中からも身内には口が軽くなるでしょ」
 と、歩き出そうとするのだが。
「ちょっと動きづらいわね。不養生なんじゃない、この体?……あっ」
 謎のポーズをとっていたのではなく、制御が難しくて妙な動きをしていた事が判明したところでカメラは路地裏のお祭り騒ぎに戻って来まして。
「なんですかこのカオス!?」
 すし詰め状態の学ランと筋肉、響き続ける大音声の応援歌、そして漂う青春の漢臭。目、耳、鼻を同時にやられた黒木・摩那(異世界猟兵『ミステル・ノワール』・h02365)はツッコまずにはいられなかったようだが、話が進まない為、早急に現場に突っ込んで欲しい。
「この状況に突撃しろと!?」
 うん☆
「他人事だと思って、凄くいい笑顔してそうな声ですね……!」
 拳を震わせながら、咳ばらいをして気を取り直し。
「古妖の封印を解いてしまったのですか。知らずに封印を解いてしまったのは仕方が無いですが、放置したままにしてしまうのは困ったものです。早く封印を元に戻したいですね……というわけで封印現場の方に向かってもいいですかね?」
 その場所を聞きにいくんだろぉ?
「えぇ……?」
 汗と筋肉でむさくるしいサウナっぽくなってきた路地裏を見やり、物凄く嫌そうな顔をする摩那。
「さて、情報を得るということですが、今回の相手は素直に話してはくれないとのこと。情報料と言っても、中学生女子が払えるお金なんて雀の涙ですし。出せるものというと、集めた調味料の数々とか、例の食べてはいけないパンとか、スマイルぐらいですね。かわいく語り合っても話していただけないとなると、最後は拳で語ることになるんですかね。(汗まみれの人達と触れ合いたくないから)荒事は避けたくはありますが」
 大丈夫大丈夫、汗かいてるのは応援団だけだから!話を聞きに行かなくちゃいけない任侠者っぽい人たちはそんなでもないから!!
「あの空間に飛び込むのが嫌なんですよ……!」
 などと、情報を得るには踏み込まなくてはならないが、近づきたくない摩那……しかし!
「人間の小娘がこんな所で何をしている?」
 外見ヤクザなお兄さん達に囲まれてしまった!まぁ、路地裏の入り口でいつまでもウロウロしてたらそうもなるわな。
「えーっと……皆さんにお話をお伺いしたくてですね……?」
「ほう、だったら出すモン出してもらおうか?」
「ちょ、ちょっと持ち合わせがないと言いますか、お渡しできるものが無いと言いますか……」
 目を泳がせてしまう摩那に、彼女を囲む男どもは口角を上げて。
「だったら体で払ってもらうしかないなぁ?」
「何するんですか!?離してください!!」
 三人がかりで押さえこまれてしまった摩那は、路地裏の物陰へと連れ込まれてしまう。
「あ、ダメ、やめてくださ……痛い痛い痛い!そんなの無理……っあぁん!?」
 物陰から聞こえてくる摩那の悲鳴に、プレジデントが動く。しかし、その歩みを阻むようにごろつきっぽいのが二人で立ちふさがり。
「通してもらえるか?そういうコンセプトのテーマパークにしては、あまりにもリアルすぎるものを見てしまった故な。是非ともその詳細を確認させていただきたい」
「何言ってんだテメェ……この界隈に興味があるってんなら俺が相手に……」
 言い終えるより前に、プレジデントの胸倉を掴んだ男の視界は反転して空を見上げていた。
「な、なんだぁ!?」
「種も仕掛けもない、物理学の応用だ。それで、お前もぶん投げられてみるか?」
 プレジデントとしては、威嚇の意味を込めてもう片方を睨みつけたのだが。
「是非!!」
「……スタッフが研究熱心なのは良い事だが、何かが違ってはいないか?」
 すんごいキラキラした目で掴みかかられて、お望み通り投げ飛ばしてやったプレジデントが路地裏に踏み込むと、そこで見たモノは。
「あっ、あっ、あぁ、今度は何だか……くすぐったく……!」
 頭をマッサージされる摩那と。
「でゅへへにんげんたんのかみはさらさらすべすべでなんだかとうがらしみたいなすぱいしーないいかおりがただよっておいしそうだけどぜったいたべたりしないからあんしんしてよいのでござるよぐへへへへへ……」
 トリップ状態な顔で摩那の頭をモミモミしているアウトローだった。危ない奴かと思ったら、ちょっとアレな人間オタクな妖怪だコイツー!?
「……?」
 これには開いた口が塞がらないプレジデント。仮面で顔が隠れていなければ、それはもう虚無に片足突っ込んだポカン顔を晒していた事だろう。そんな彼の視線に気づいたアウトローがハッと我に帰り。
「な、なんだテメー!?なんか用か!?」
「あー……えっと、ここは何処なのだ?道に迷ってしまってな」
 気概を削がれたプレジデントが何とか引っ張り出して来たのは、当初の目的というか、用意していた質問。あまりにも唐突なタイミングでの問いかけに、我ながら何を聞いているのだろうと頭を抱えるプレジデントだったが。
「ここはいろは町に番地と丁目だぜ」
「む、住所をいろはで表現しているのか……」
 まさかの普通に答えてくれた。質問フェーズに入った事で、摩那も振り向き。
「この辺りで最近変わった事とかありましたか?」
 まさか古妖を探してますなんてストレートに聞くわけにもいかず、遠回しに聞いてみるが。
「そうさな……どっかのバカが古妖の封印を解いちまったなんて噂が流れてる。俺達みたいな『真っ当な』ヤクザ者はさておき、虎の威を背負って調子に乗ってる輩もうろついてるらしいから気をつけな。この辺りは俺達のシマだから好きにはさせないが……人間たんが傷ついたら俺達は悲しくて悲しくて……」
「にゃーッ!?髪が乱れるからやめてください!!」
 頭をわっしゃわっしゃに撫でまわされて絶叫する摩那なのだった……さて、路地裏でそんな事になっている一方で。
「男の共通語は肉体言語じゃぁ!」
 バキィ!!暑苦し……もとい、狭苦しい路地では豪太郎がならず者と拳で語り合い、クロスカウンター!お互いの顔面を捉え、両者ともに強引に拳を振り抜いて、片や血の混じった唾を吐き、片や鼻から赤い塊を噴き出す。
「いいモンもっとるのぅ……」
「テメェもなァ!!」
 なんてドカバキ騒ぎを起こしている隙に、ヒアデスはギャラリーの一人と肩を組んで。
「良い試合だなぁ兄弟!ちょいと探し物をしに来てたんだが、こんなものが見られるとは思わなかったぜ!」
「なんだぁ親友!?こんなところまで探しに来るなんて、ロクなもんじゃねぇだろう!」
「違いねぇ!」
 ガハハ、二人同時に豪快に笑い、ヒアデスはスッと声のトーンを落として。
「この辺りにある古妖の封印を探してる。何か知らねぇか?」
「……知ってどうする?」
 途端に、声が冷えた。同時に肩を組んでいた男の手元が死角に入る。得物に手をかけたと察しながらも、ヒアデスは動きを見せずに。
「俺がその封印とやらを知ったところでアンタ困るか?困らない、だろ?」
 返答ではなく、質問を重ねて意図を伏せる。常であれば敵意とみなされてもおかしくはないだろうが、旗音にまぜて散々聞かせてきた催眠音波は、その疑念を許さない。
「……」
「まあまあ教えてよ減るもんじゃなし」
 これはなかなか口を割らないな……そう判断したヒアデスがアプローチを変えようとした時。
「くけっ、くけけけけけけけけけけーっ!!」
 首が完全に真後ろを向いて逆立ちしたままエアバイクしながらバック走してくる黒服が現れた!
「何がどうしてそうなったー!?」
 任侠者の叫びに、目が真っ白になって舌を出しっぱなしにしていたソレはピタと止まると、手首をゴリッと回転させて、ペタペタペタペタ……ヒアデスと任侠者に迫って来る!!
「「おわーっ!?」」
 突然始まったホラー展開に二人は肩を組んだまま二人三脚で走り出すが、追いかけて来るコイツはなんなのかってーと。
(うーん、体が全然いうこと聞いてくれないわね……まぁ、質問さえできればいいでしょ)
 動かしづらい体を無理やり動かした結果、色々と酷い事になってる黄泉子(融合中)である!
「おで……古妖……探す……封印……どご……?」
「なんか喋ってる!?」
「なぁ兄弟!ここはさっさとゲロッちまった方がいいんじゃないか!?じゃないとお前もああなるかもしれねぇぞ!?」
「いやでも、人間ちゃんの身の安全が……あっ」
 ヒアデスが両目から緑色の光を発して口から稲光を放ち始めた追跡者を示すと、任侠者は慌てて口を塞ぐ。
「ほほぅ、封印を解いたのは人間だったんだな?」
「いや違う!マレビトちゃんはきっと流れ着いたばかりで、わけも分からずにここの封印を解いちまっただけなんだ!あの子は悪くない!!」
「はーい、情報提供ありがと、さんッ!!」
 建物の壁に肩を組んでいた任侠者の顔面を叩きつけ、気絶させたヒアデスはぱっぱと手を払い。
「うし、そんじゃ近くにあるらしい封印を探しに……」
「おで……さがす……」
「気色悪い動きで近づいて来んなー!?」
 逆立ちを維持できなくなり、両脚もついて背中越しに股間の間からジッとこちらを見て追いかけて来る黒服(In黄泉子)にビビり散らすヒアデスなのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 集団戦 『妖怪犯罪者』


POW 蛇首咬
自身の【うわばみ(蛇)妖怪の頭部 】を、視界内の対象1体にのみダメージ2倍+状態異常【蛇毒】を付与する【毒蛇】に変形する。
SPD サプライジング・ノーフェイス
あらかじめ、数日前から「【のっぺらぼうを中心とした 】作戦」を実行しておく。それにより、何らかの因果関係により、視界内の敵1体の行動を一度だけ必ず失敗させる。
WIZ 犯罪コネクション
任意の対象から「対象レベル万円の賄賂」を受け取った場合、対象が攻撃したのと同対象を即座に【空飛ぶ『頭骸骨』 】で攻撃する(これは行動を消費しない)。
イラスト 小日向 マキナ
√妖怪百鬼夜行 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 能力者が集めた情報を整理すると、『なんかの拍子に迷い込んで来た人間が、この区域にある封印を解いちゃった』らしい。で、その古妖の力の余波を受けて強化された妖怪が、古妖にその人間を供物として捧げるべく探し回っているとのこと。で、ここの連中はその配下っぽい妖怪より先にその人間を見つけて、保護しようとしていたってのが現状だったようだが。
「おっと、ここから先は通行止めだぜ……」
 能力者達が封印の場所に向かっていく途中、横並びに広がって通せん坊をしている妖怪の集団に遭遇。妙な気怠さを振りまくそれは、能力者達を見て笑みを浮かべると。
「まぁ、ここまで来ちまった時点で生かしては帰さねぇけどなぁ!!」
 戦わなければ。その意思とは裏腹に、何故か体から力が抜けていく……。

※敵さんはどうやら、対峙した相手の『やる気』を奪う力を持っているようです。その為、不意に意思を削ぎ落とされて、連動して四肢の力が抜けてしまいます。ここぞという瞬間に気合を入れ直す自分なりのルーティンや、集中力を高める手段が必要になるでしょう。
 次回執筆は十七日の予定。当日の十八時くらいまでにプレくれると嬉しいな!
黒木・摩那
頭をマッサージされて、体は痛いですが気分は爽快と妙な気分ですね。
外見は怖いですが、妖怪たちは話せば意外といい人達でした。
そして、封印を解いてしまったのは外から来た人間ということですから、その人も探して助け出さないといけません。
お仕事増えましたね。

まずは眼の前の妖怪が邪魔です。
どかしましょう。

ヨーヨー『エクリプス』で戦います。
なんとなくだるい時こそ、マイコレクションの登場ですね!
ピリッと辛い唐辛子をひとかじりすれば、気合注入、集中力UP、体中に力がみなぎるスーパーアイテムなのです。
和傘『飛天御前』で【受け流し】しつつ、【紅月疾走】を発動して、がんがん殴っていきます。
黒葉・黄泉子
やっぱり普段の自分の方が動きやすいわね。ちなみにさっき憑依したアウトローはちゃんと関節を元に戻して放置して来たわ。

力付くで通させてもらう…わ~、やる気が抜ける〜。空中浮遊でぐだ〜んとしてしまうわ。
でも安心安全、私の影絵の怪異達は私が腑抜けててもある程度オートで戦ってくれるわ。行きなさい『這い寄る黒い手』『牙むく猟犬』。うわばみが噛み付いて来ても『生い茂る影』が防御してくれるわ。

あ~、やる気が出ないわ〜。後お任せします〜…【映画のような恐怖体験】。
ジャパニーズホラーな体験を味わえますよ。…ちなみにJ・ソーンさんはチェーンソーの音を聞いてると気合いと殺る気がはいるらしいですね。


【アドリブ歓迎】
塙・弥次郎
オーケーオーケーわかりやすくて助かるよ
どっちかっつーとそういうセリフ言ってきた側なんでね、その言葉には応えてあげないと
甲虫の脚めいた不気味な触腕を冒涜蝕装体から展開しつつ「蝕む装甲腕」で毒入りの2回攻撃を繰り出す
妖怪じみたのはアンタらだけじゃないってこった

・やる気の回復方法
妖怪犯罪者の「犯罪コネクション」を見て元気を出します
だってあいつら金いっぱい持ってる
俺飯いっぱい食わないと生きていけない
犯罪者の金は俺のものにしていい
全部俺の金じゃないか?
プレジデント・クロノス
さて、何処へ向かうべきか…いつもなら、適当に勘の赴くまま進めば、いつの間にか戻ってる気がするが。

アレか、このテーマパークは、最近流行りの没入体験型アトラクションと言う奴かな?
下手にこちらからやる気を出さずともスタッフが対応してくれる仕組みか…。
にしては、なんちゃって任侠映画さながらの世界観だが、誰得なのだろうか…?

おっと、あちらにもスタッフが集まっているな。サボりかな?
アレを見ていると私までやる気が削がれる気がする(精神抵抗)が気のせいだろう。

供物? あぁ、なるほど、アウトレイジ用語と言う奴か?
私は、こう見えても迷子になっているただの一般人だが、インフォメーションにでも案内してくれるのかね?
轟・豪太郎
むぅ、力が抜けていく、だと?
こういう敵の技から抜け出すには、自らの腹かっさばいてその激痛で目を覚ます。
というのが定番だが、生憎ワシは刃物を持っておらんからのぅ。
自らの剛拳で自分の頬を思い切り殴る!
(ズギュウ~ン!)
くぅ~、さすがワシの拳は効くのぅ。
「だが、男の仕事はやせ我慢じゃぁ!!」
さらにワシのルーティンといえば決まっておろう?“闘争心”を高め、
「ワシが剛拳番長轟豪太郎である!!」

あとは『百錬自得拳』でひたすら敵を殴り続けるぞ!
「貴様が!倒れるまで!殴るのをやめないッ!」
(殴った 殴った 殴った 殴った さらに殴った)
うむ、余った文字数は仲間の応援に使おう。
「必勝を祈願して、三三七拍子ィ!」

「さて、何処へ向かうべきか……いつもなら、適当に勘の赴くまま進めば、いつの間にか戻ってる気がするが……」
 まさか自分が能力者と肩を並べて戦場のど真ん中に立っているだなんて、夢にも思っていない系逸般人、プレジデントはヒャッハー臭をぷんぷんに漂わせるヤンキークリーチャーズを前に首を傾げて。
「アレか、このテーマパークは、最近流行りの没入体験型アトラクションと言う奴かな?下手にこちらからやる気を出さずともスタッフが対応してくれる仕組みか……にしては、なんちゃって任侠映画さながらの世界観だが、誰得なのだろうか……?いや待て、この私の目を以てしても見いだせない隠れた需要が……!?」
 経営者として何やら衝撃を受けているプレジデントに、妖怪達は顔を見合わせて。
「あれ、コイツマジで無関係……?」
「でも見られた以上は……」
「ゆーて、俺ら別にカタギを殺す趣味はねーし……」
 などと、ヒソヒソミーティングし始めた敵さん達に向かって。
「隙あり!!」
 摩那は容赦なくヨーヨーをシューッ!
「あ、てめ!」
「相談中に不意打ちは!」
「卑怯だぞ!?」
 ガッ、ゴッ、ベシッ!なんか三人ワンセットっぽい妖怪たちに綺麗に命中して飛んでいくヨーヨー。どこまでもワイヤーが伸びるそれはそのまま飛んでいき。
「自分達から喧嘩を吹っかけて来ておいて、相談なんてしている方が悪いのでは?」
 なんて半眼になりながらワイヤーを引く摩那。そう、飛ばしたヨーヨーとは、帰って来るものである。
「「「いってぇ!?」」」
 後頭部に強烈な一撃を貰った妖怪たちが頭を抱えてプルプル……そんな様子に嘆息した摩那は、クリミナルな妖怪達の向こう側を見つめて。
「頭をマッサージされて、体は痛いですが気分は爽快と妙な気分ですね。外見は怖いですが、妖怪たちは話せば意外といい人達でした。そして、封印を解いてしまったのは外から来た人間ということですから、その人も探して助け出さないといけません。お仕事増えましたね」
 そのためにも、こんな所で足止めを食らっている余裕はない。ヨーヨーを構え直す摩那の横で、抱き上げたニャンコのように体を物理的に伸ばす黄泉子は軽く肩を回して、お腹の長さを本来の人間サイズに戻すと。
「やっぱり普段の自分の方が動きやすいわね。ちなみにさっき憑依したアウトローはちゃんと関節を元に戻して放置して来たわ」
 元あった状態にきちんと戻してあげる優しさというべきか、筋肉痛必至のヤベーアクロバットをさせておいてほったらかしにして来た無慈悲というべきか……まぁ、生きてるんだからセーフ?
 拳を握った腕をグルングルン振り回し、臨戦態勢(?)に入った黄泉子は敵さんに向かって走り出すと。
「力付くで通させてもら……わ~、やる気が抜ける〜……」
 途中で小石に躓き、前方に思いっきりダイブ。転倒するかと思いきや、そのまま中空に蹴伸びスタイルで浮かび、ふわ……ふわ……悪霊からシャボン玉にジョブチェンジした黄泉子はそのまま大空に向かって旅立って逝きながら。
「あ~、やる気が出ないわ〜。後お任せします〜……」
 ぷんぷん、雑に手を振って雲の向こうへと消えていった……。
「何がしたかったんだ……?ま、まぁ、古妖様の妖気に当てられたようだな!」
 などと、敵さんが青空の彼方で恨めしポーズしてる黄泉子の幻影を眺めていると。

 くすくす……くすくす……。

 どこからともなく、子どもの笑い声が聞こえてくる。簒奪者も、能力者も、周囲を見回すが、本日の戦場は隠れる場所はそこかしこにある細い路地。だからこそ、耳を澄ましたところで声の出所がつかめない。
「チッ、どこかに伏兵がいやがるのか!?」
 妖怪の一人が路地裏に飛び込んで、ゴミ箱を蹴り倒すも、中から出てきたのは『ルール違反』のシールが貼られた未回収のゴミ袋。
「ここか?それともここか!?」
 放置されていた木箱や、大きな甕の中身を見て回っていると。

 ――こっちだよ。

 耳元で囁く女の声。ヒヤリとした吐息に、近づいて来る冷気。その正体はほっそりとした白い十本の指で、背後から伸ばされた両手が、妖怪の世界を埋めつくした。
「うわぁあああああ!?」
「あいつ、返り討ちにあってないか!?」
「ったく、世話が焼ける……!」
 仲間っぽい妖怪たちが、悲鳴が聞こえた路地裏に入ると、ブォン、ブォーン……。
「……Are you carp?」
 巨大な木の板に磔にされて、顔に『鯉』って書かれてた。そしてその前でホッケーマスクつけた巨漢がチェーンソーの試運転を行っており、現場に踏み込んだ二人をジッと見つめてくる……。
「おわー!?」
「お前は妖怪って言うかモンスターだろ!?縄張りがちげーぞ!?」
「Hmm……」
 巨漢は口元に片手を添えて、首を傾げると。
「You are carp」
 グッとサムズアップしてデッカイ木の板を二枚追加。
「なんで『よし!』みたいな空気出してんだ!?何もよくねぇよ!?」
「ていうかコレまな板の鯉って言いたいのか!?ふざけんな電動鋸なんぞで俺達を倒せると思ってんじゃねぇぞゴラーッ!!」

 ※しばらくお待ちください。

「New item」
 金曜日が十三日だった時に遊びに来そうな感じの巨漢が、お徳用かまぼこ(意味深)を道端の露店で販売し始めたところで。
「むぅ、力が抜けていく、だと?」
 敵さんの纏う妖気のせいか、気力を削がれ、筋肉が弛緩してしまう豪太郎が冷や汗交じりに奥歯を噛む。
「こういう敵の技から抜け出すには、自らの腹をかっさばいて、その激痛で目を覚ます……というのが定番だが、生憎ワシは刃物を持っておらんからのぅ」
 というお悩み相談(独り言)を聞いて、巨漢ことJ・ソーン氏が立ち上がり。
「Do you need chainsaw?」
 マスクをキラキラさせて自慢のチェーンソーをオススメしてくるが、豪太郎は自分で自分の顔を、メメタァ!!
「くぅ~、さすがワシの拳は効くのぅ」
 顔筋が変形して潰れるくらい思いっきりぶん殴り、気合を入れ直す。割と本気でいったらしく、殴りつけた頬の上の目から涙が止まらなくなってしまったが。
「だが、男の仕事はやせ我慢じゃぁ!!」
 うーん、凄まじいまでの根性論……なお、J・ソーン氏はしょんぼりして店番に戻った。で、豪太郎は息を大きく吸い込んで。
「ワシが剛拳番長轟豪太郎である!!」
「な、なんだこいつ!?」
 仁王立ちしていつものセリフ。背後に見えた巨大な豪太郎の幻覚に敵さんが一歩後退った隙を見逃さず、素早く踏み込んだ豪太郎は強烈なタックルで押し倒すと馬乗りになり。
「貴様が!」
 バキッ!
「倒れるまで!」
 ドゴッ!
「殴るのをやめないッ!」
 グォオオオ……グシャッ!!
「……」
 敵さんを真っ赤に染め上げて、沈黙した事を確認した豪太郎は立ち上がると胸を反らし。
「必勝を祈願して、三三七拍子ィ!」
「コイツ妖怪の事を血祭りにしておいて、平然と応援を続けようとしてやがる!?」
 敵さんが完全にドン引きしてしまったところで、ヒアデスはパンパンと手を鳴らし、ヘラヘラしながら。
「オーケーオーケーわかりやすくて助かるよ。どっちかっつーと、そういうセリフ言ってきた側なんでね、その言葉には応えてあげないと……まさか、喧嘩を売った側が逃げたりはしねぇよな?」
 ビビり始めた敵さんに挑発もかねて圧をかけるヒアデスだったが、ブチィ!突如、背後から巨大な蛇に首を食いちぎられてしまった。
「あっははははは!ざまーみやがれ!!」
 長く伸びた蛇の体は、妖怪達の一体の首に繋がっており、回り込むようにしてヒアデスの頭に食らいついたのだ。力なく崩れ落ちるヒアデスの体に、妖怪達は腹を抱えて笑うが、彼の首を引き千切った蛇の妖怪だけは、眉を潜めて。
「肉がマズい……コイツ、人間じゃないぞ!?」
「あ?味でそんな事が分かんのか?」
 首から先を失って、血と空気を噴き出す管から声を吐くヒアデスの体が、ゆっくりと立ち上がる。
「な……頭を食われて、生きてやがるのか……!?」
「妖怪じみてるのはアンタらだけじゃないってこった」
 ボコボコ……牙で引き裂くというより、咬合力で押し潰された傷口が泡立ち、黒く変色すると顎しか存在しない無機質な頭部がズルリと生えた。人の目鼻を削ぎ落とし、金属を塗りたくったようなつるりとした顔がジッと妖怪達を見つめれば、ボコリ、ボコリ。肩が爆ぜ、腕が膨れ上がり、指先が硬化する。変容は瞬く間に全身に広がって、変身した……否、正体を現したヒアデスはコキリ、首を鳴らす。
「ンン~、ブラスフェミィ……」
 顔もないのに、口角だけで不気味な笑みを浮かべるヒアデスに逃げ出そうとする妖怪もいたが、その手元に薄い札束が叩きつけられて。
「逃げんな!金ならくれてやる!こいつをぶっ殺すのを手伝え!!」
「だーっ、もう!こんな仕事うけるんじゃなかったぜ!!」
 金には目が無いのか、首を伸ばしていた妖怪に半ば押し付けられるようにして渡された金を懐にしまい、骸骨の妖怪が鉄パイプを片手に飛びかかって来るが、ヒアデスの腕を覆う装甲とぶち当たり、甲高い音を響かせる。その隙に背後から伸びる蛇の首が迫るが、片手を向ければ指先を覆っていた装甲は細く枝分かれを繰り返し、節くれ立った投網を広げると蛇頭に絡みつき、握り潰してしまった。
「クソッ……だが、もう両手が塞がってるぜ!」
 鉄パイプと腕で押し合っていた骸骨がそのされこうべを飛ばし、喉元に食いつこうするが……。
「あ……え……?」
 ヒアデスの胸部装甲から伸びた無数の鉤爪を備えた腕が、頭蓋骨を絡めとる。甲虫種の脚部を思わせる腕はその見た目に違わぬ怪力を以て、頭部の骨を粉砕。首を失った骸骨の体はカラカラと、接合が解けてしまった。
「こいつ……なんで弱体化しない!?」
「んん?やる気が出ねーってやつ?そりゃーもちろん、コイツの為よ」
 驚愕に震える妖怪の前で、ヒアデスは崩れ落ちた骸骨だったモノを漁り、札束を引っ張り出すと。
「お前等、金いっぱい持ってる。俺、飯いっぱい食わないと生きていけない。犯罪者の金は俺のものにしていい……つまり」
 奪い取った金を装甲の隙間に押し込んで、拳を鳴らす。
「お前等を皆殺しにすれば、全部俺の金じゃないか?」
「おいコイツそこらの妖怪よりえげつねぇ悪党だぞ!?」
 戦意喪失……というにはまだ足りないのだろう。完全に腰が引けてはいるものの、道を譲る気配を見せない敵さんに、摩那は一つ頷き。
「邪魔なのでどかしましょ……う?」
 ヨーヨーを持った手を大きく振りかぶるのだが、急に腕が重くなる。全身が水を吸ったスポンジのような奇妙な重さに襲われると、口の中に忍ばせておいたものを、カリッ。
「……漲って来ました!」
 遠心力を乗せて飛ばしたヨーヨーで妖怪をまとめて括り、それをハンマー代わりにぶん回して敵軍の頭上から叩き落し、一網打尽にして見せる摩那。あっという間に戦線が瓦解していく様に、妖怪は青ざめながら。
「オイオイオイ……古妖様の妖気を吹っ飛ばしただと?どんなヤベー薬キメてんだ!?」
「いやですねー、お薬なんて使ってませんよ?」
 てくてくてく、にこやかに歩み寄る摩那が取り出したのは、赤い香辛料の果実……唐辛子。
「ピリッと辛い唐辛子は、ひとかじりすれば、気合注入、集中力UP、体中に力がみなぎるスーパーアイテムなのです。ささっ、お一つどうぞ?」
 と、警戒して強張っていた妖怪の口に突っ込んだ摩那だが。
「ゴッフゥ!?」
 唐辛子を詰め込まれた妖怪は口から火の玉を吐き、頭上に真っ赤な花火を咲かせると白目を剥いて、物言わぬオブジェと化した。
「おや?美味しすぎて立ったまま気絶しちゃったみたいですね」
「なんっなんだこいつらはー!?」
「もう供物なんてどうだっていい!まずは逃げろー!!」
 そこからはもー、敵さんは一目散に逃げだした。そりゃー誰だって逃げる。俺だって逃げる。じゃあ逃がしてくれるかって言うと話は別だが。
「供物?あぁ、なるほど、アウトレイジ用語と言う奴か?私は、こう見えても迷子になっているただの一般人だが、インフォメーションにでも案内してくれるのかね?」
 若干呑気な事を言っているプレジデントだが、能力者達を置き去りにして、妖怪達はあっという間に姿を消した。
「なんと逃げ足の速い……!」
「狭い路地が入り組んでいて、土地勘のない私達ではとても追いきれませんね……」
 豪太郎が舌を巻き、摩那が追跡を諦めるも。
「ふむ、分かりにくい『道案内』については指導が必要そうだな」
 一つ頷き、フッ。一陣の風を残してプレジデントの姿が消える。狭い路地という事は、壁という名の『足場』が使えると言う事。三角飛びして屋根に上がり、建物から建物へ壁と屋根を蹴って走って行くプレジデントは高所の視点から逃げた妖怪達を捕捉、前方に回り込むと。
「お前達、顧客を誘導するなら相応の速度でなければついて来てくれないのだぞ?」
「うわー!?どっから出やがった!?」
 文字通り降って湧いたプレジデントにびっくりした妖怪たちがUターン。しかし、路地を走る妖怪達に対してプレジデントは建物の上を飛び移るパルクール走法で回り込む為、道とか障害物とか一切関係ない最短距離で回り込んでくる。
「待て。私の話を聞いているのか?」
「うわー!?」
 真逆に走ったのに前方に立ってたり。
「お前達、仕事の仕方がなっていないぞ」
「げぇーっ!?」
 フェイントを仕掛けて横道に逸れたはずなのに真横を走ってたり。
「ところでどこに向かって走っているのだ?」
「ほぎゃー!?」
 狭い路地裏に入って、放置されていた棚を引き倒して道を塞いだはずが出口でスタンバってたりと、もういっそプレジデントが顔が見えないのをいいことに複数の影武者で包囲網を敷いていると言われた方が信じられる事態に陥り。
「神様……俺、妖怪ですけど救ってもらえますか……?」
 ついに敵さんが天に祈り始めた。すると、神々しい光が降り注ぎ、黒いセーラー服を真っ白に染め上げてなんか神様っぽくした黄泉子がゆっくりと降りて来て。
「妖怪に救いなんてないわ……幽霊になりなさい……」
 穏やかな声音と共に、手を差し伸べる。その手を、妖怪が取った瞬間。

 こっちにおいで……。

「ひぃ!?」
 どこからともなく、声がする。振り向けどそこに人影はなく、自身の影が手招きをしているのみ……そう、一切動いていない自分の影が、独りでに動いている。

 おいで……おいで……おいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいでおいで

「あ、あぁ、あぁあああああああああっ!?」
 脚を、腕を、腹を、顔を、影から伸びる無数の腕が掴み、引き寄せ、ずぶり、ずぶり、トプン……後には、静寂だけが残された。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第3章 ボス戦 『『五月病妖怪』アシタヤロー・ヤスモー』


POW 休み明けか、何もかも皆怠い
【抗いがたい気怠いオーラ】を放ち、半径レベルm内の自分含む全員の【怠惰】に対する抵抗力を10分の1にする。
SPD あえて言おう、寝よう
【だらしなく床に寝ころんで休息】の体勢を取る。移動力と戦闘力を3分の1にする事で、肉眼以外のあらゆる探知を無効にする。嗅覚・聴覚・カメラ・魔術等、あらゆる探知が通用しない。
WIZ 明日すればよかろうなのだぁぁ!
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【面倒なことは先送りにしようとする力】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
イラスト 枢真のえる
√妖怪百鬼夜行 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 なんか色々あったけど、能力者達が結局封印はどこにあるんだろうねーって歩いていたら、小さな祠と、その前で寝てる牛にその牛をソファにしてなんか読んでる影みたいなのがいた。
 人型のソレは、能力者達に気が付つくと。
「本日の業務は終了しました」
 それだけ言って、また何か読み始める。ただ、それだけだ。それだけだというのに、凄まじい倦怠感に襲われて、立っている事すらままならない。体どころか目蓋まで重くなってくる怠惰の妖気に当てられている事に気づいた能力者達をチラと見たそれは、巻物を畳み。
「あー……あれか、俺の事を封印しに来たんだ?そうじゃなきゃ、まだ生きていられるわけないもんね。でもねー、俺、これでも神様とかソッチ系に近い部類でさー、人に願われたからには応えないわけにはいかないんだよ」
 我ながら面倒なんだけどねー。そうため息をついたそれは、指を二本立てて。
「明日、日本政府?とやらの人達を怠惰に沈めて、明後日はお休みだから三日後に来てくれない?」
 などと、提案してくるのだった。

※敵さんはそこにいるだけで、妖怪達とは比べ物にならないくらいやる気を削ぎ落としてきます。気合を入れ直す手段を用意しましょう。次回執筆は十八日の予定!当日の十八時くらいまでにプレくれると嬉しいな!!
プレジデント・クロノス
そういえば、ウチの会社にいるキャストたちが、こんな感じに全身黒ずくめな恰好をしていたな…。先程のスタッフたちも、人型ではなかったし、任侠テーマパークに、特撮系?色々と盛り過ぎなのではないだろうか?

それにしても、ここのキャストの質は問題だな!
客がまだいるというのに、営業終了の対応、経営者の視点を持つ者としては、見過ごせないぞ。しかも、組織だけではなく、こ奴自身にも問題がありそうだな…先程の発言からチーフリーダーか。それに、神を名乗って、神対応とでも言いたいのか!? 幾らアウトロー系テーマパークでもこれは遺憾の意!

どれ、若者を導くのも年長者の務め、少し教育せねばな!(使命感)

*:アドリブ大歓迎。
轟・豪太郎
「一番槍はワシがもらったァァーッ!」
【番長特攻行進曲】で応援団達の行進と共に颯爽と登場じゃぁ!

むぅ、さっきにも増して力が抜けるとは、ごっついのぅ……
だが!共に現れた応援団員達の行進の響きが!それ以上に力を与えてくれるッ!!
通常の3倍の“闘争心”と!通常の3倍の“根性”で!いつものルーティンをぶちかます!!
「ワシが剛拳番長轟豪太郎である!」
さっき倒した妖怪の返り血で全身赤く染まっているから好都合。通常の3倍といえば赤いものらしいからのぅ!

あとはシンプルに“喧嘩殺法”で、
重い拳を相手に叩き込む。
重い蹴りを相手に叩き込む。

最後は、封印を解いてしまったという人間の安全と多幸を祈願して応援じゃ!
黒木・摩那
明日は日本を沈めるとか言ってます。
個人的にはすごく共感するところもありますが、明日は朝からお仕事ありますし、
今プレイング書かないと、書けないんですよね。
なので、あしたやろー、休もうとはいかないんです。

と、そんなメタい話はおいといて。
やる気がでない時こそ、マイコレクションの登場ですね! その2
でも良いですけど、それだとコレクションが減るばかり。
無理にやる気を引き出すのも良い手では無い気がします。

ここはやる気充実を目指します。甘いものですね!
ドーナツセットがあるので、それを食べて気合補給します。
古妖は戦う気も無いようですから、手早く動力剣『アンフィニ』で解体してしまいましょう。
黒葉・黄泉子
(ぷかぷか空中浮遊する黄泉子)
あ〜…やる気が出ない〜…あちらさんの言う通り3日後でいいんじゃない〜?

な〜に〜、『這い寄る黒い手』?…え、気合いが入る物を調達してきたのぉ?
あ~、このままじゃ埒が明かないしいっちょお願い〜。
ん〜?私の体を拘束して〜?……ちょっと待ちなさい。どっから持ってきたの、そのグツグツに煮立ったおでんの入った土鍋ッ!?待ちなさいッ!?大根は駄目だって…あッ!あっつッ!?これ気合いが入るとはまた別ジャンルじゃないッ!?

酷い目にあったわ…それもこれも古妖のせいね覚悟しなさいッ!
…?何、寝転んで?肉眼以外のあらゆる探知を無効?
目の前じゃ意味ないでしょッ!【呪拳】ッ!


【アドリブ歓迎】
塙・弥次郎
なんてゆるい野郎だ、見られたからには生かして帰さんくらい言いなさいよ
っていうか面倒ならずっと寝ててくれよ

こっちのやる気のほうは…ま、さっき稼いだ金の使い道がなくなっても困るんでね、サイフの厚みで元気を出したいところだが
俺自身はどうにもやる気がなくなったとしても、俺と融合した冒涜蝕装体が敵を倒せと勝手に動いてくれるさ
「知恵は冒涜の源泉なり」…普段は俺の知恵とともに動いてくれるが、今は知恵無きモンスターとして俺の身体を動かしてもらう
増加した腕力でもって一撃、二撃、どっちが先に動けなくなるか競争といこうぜ
・・主人公・・
私は静かに心を整え、目の前の五月病妖怪アシタヤロー・ヤスモーを見据えた。彼の気怠いオーラに立ち向かうため、私は強い意志を燃やす。「怠惰の海に沈むことなどできない。私は未来を明るく照らす光だ!」そして、右手を掲げ、ルートブレイカーの力を発動する。彼の怠惰を打ち消し、周囲の流れを変える。世界が眩しく輝く中、私の姿はまるで英雄の如く映る。仲間と共に、この場を乗り越えてみせる!希望を胸に進むのだ、私たちの未来は明るい!

「そういえば、ウチの会社にいるキャストたちが、こんな感じに全身黒ずくめな恰好をしていたな……先程のスタッフたちも、人型ではなかったし、任侠テーマパークに、特撮系?色々と盛り過ぎなのではないだろうか?」
 この状況になってなお特撮系テーマパークと信じて疑わないプレジデントは首を捻ると。
「それにしても、ここのキャストの質は問題だな!」
 仮面に一つしか開いてない目出し穴から血走った眼を見せて、古妖の放つ怠惰の妖気と同格の最高経営責任者の覇気を纏う……いやコイツマジでなんなん?最近のアンカー、なんかおかしくない?
 それはさておき経営者スイッチが入ったプレジデントは能力者を無力化するほどの妖気を放つ古妖に、逆に圧をかけ。
「客がまだいるというのに、営業終了の対応、経営者の視点を持つ者としては見過ごせないぞ。しかも、組織だけではなくお前自身にも問題がありそうだな……先程の発言からチーフリーダーか?それに、神を名乗って、神対応とでも言いたいのか!?幾らアウトロー系テーマパークでもこれは遺憾の意!」
「うわぁ……この人何言ってんの……?」
 古妖すら困惑して他の能力者に聞こうとしたその時!
「一番槍はワシがもらったァァーッ!」
「すろうす!?」
 学ランのマッチョメェンが担いだ派手な神輿の上で応援旗を振り回しながら豪太郎が乱入!棒人間っぽい球体状の顔面に神輿の持ち手をメキョォ!!正方形に陥没させながら吹っ飛ばすも、お神輿が急停止して上に乗ってた豪太郎も旗を降ろし、肩で息をする。
「むぅ、さっきにも増して力が抜けるとは、ごっついのぅ……だが!共に現れた応援団員達の行進の響きが!それ以上に力を与えてくれるッ!!そうだなお前達ッ!!」
『押忍ッ!団長!!』
 へばっていたはずの団員たちがシャキッと立て直し、腕を後ろに組んで神輿の左右に整列。その中心で仁王立ちした豪太郎が胸を反らし。
「ワシが剛拳番長轟豪太郎である!」
 だからなんだよ!?って言いたくなる叫びと共に気迫を取り戻すが、応援団ポーズを維持していなければやる気が抜け落ちてしまう……何とか無気力状態にはなるまいと必死に耐えていると。
「明日は日本を沈めるとか言ってます。個人的にはすごく共感するところもありますが、明日は朝からお仕事ありますし、今プレイング書かないと、書けないんですよね。なので、あしたやろー、休もうとはいかないんです」
 キリッ!なんかリアルな呟きが聞こえた気がするが、その辺は置いといて、パンツスタイルのスーツに鞄を肩にかけて出勤姿になっている摩那は鞄の中身をごそごそ。
「と、そんなメタい話はおいといて……やる気がでない時こそ、マイコレクションの登場ですね!その弐、でも良いですけど、それだとコレクションが減るばかり。無理にやる気を引き出すのも良い手では無い気がします」
 という事は唐辛子じゃないものが出てくるのかなーって待っていると、にゅーっ……どうみても鞄よりも大きなドーナツボックスが出現。どうやって入ってたんだ……?
「ここはやる気充実を目指します。甘いものですね!ドーナツセットがあるので、それを食べて気合補給します」
 気合っていうかカロリーを補充し始めた摩那……オヤツタイムに入ってしまった彼女の横をぷかぷか漂って来た黄泉子は空中でゴロゴロするという不思議な動きを見せて。
「あ〜……やる気が出ない〜……あちらさんの言う通り三日後でいいんじゃない〜?」
 なお、本当にここで帰還した場合は大惨事になるため途中帰還は認められません。黄泉子本人はさておき、彼女が取り込んだ怪異の方はここで仕事をほっぽりだすリスクについてよく分かっているらしく、影の中で相談すると、空中の黄泉子に向かって手をブンブン、手話で会話し始めた。
「な〜に〜、『這い寄る黒い手』?……え、気合いが入る物を調達してきたのぉ?あ~、このままじゃ埒が明かないしいっちょお願い〜」
 などと、怪異に仕事を押し付けてお昼寝に入ろうとした黄泉子の体を、無数の影の手が掴んで地上に引きずり降ろすと正座させて、枝葉の如き影が膝にのしかかり動きを封じてしまう。
「ん~?何で私を押さえてるの~?」
 気合を入れるんだからもっとこう、頑張ろうって気になる物が出てくると思っていた黄泉子がぽやんぽやんしていると、わふわふわふわふ!ワンコの影がおでんの屋台を引いて来た。問題はアレかな、鍋の中身が沸騰してる事かな。なんだか嫌な予感がして来た黄泉子が首を傾げている間にも、影の手は具材の煮え具合をチェック。
「……ちょっと待ちなさい。どっから持ってきたの、そのグツグツに煮立ったおでんッ!?」
 何とかして逃れようとすると、ガシッ!背後から羽交い絞めにされてしまい、あれ、こんなことする影絵なんてあったかしらと振り向けば。
「This is hot」
「言われなくても分かってるわよ!ていうかなんで呼んでないのに勝手に出て来てるのよJ・ソーンさん!?」
 私が呼びました、のドヤおててする影の手が菜箸を操り、おでん種を厳選し、これだ!と思った物を取り出した。まだ距離があるのに熱気を感じて振り返った黄泉子がビクッ!
「待ちなさいッ!?大根は駄目だって……あッ!」

 \ジュッ!/

「あっつッ!?これ気合いが入るとはまた別ジャンルじゃないッ!?」
 ほっぺにまん丸な焼き印を入れられてしまった黄泉子がツッコむも、なんか呆れた雰囲気の影の手がハンドサイン。
「え、さすがに子どもに煙草で根性焼き入れるのは倫理的にちょっと……だからそれ気合を入れるの意味が違うでしょう!?というか何で選択肢が煙草かおでんでどっちにしても根性焼きされなきゃいけないのよ!?」
「あいつすげぇな……」
 ぽつり溢すヒアデス。黄泉子の事言ってるのかと思ったら。
「こっちがこんだけ騒いでるのに、全く気にせず昼寝してやがる……!いや、顔が見えないから寝てるのかどうかよく分からんが……」
 敵さんについてのコメントかい!!
「なんてゆるい野郎だ、見られたからには生かして帰さんくらい言いなさいよ……っていうか面倒ならずっと寝ててくれよ」
「いやー、起こされちゃったからにはそうもいかないというか、ねぇ……」
「あ、起きてた」
 返答があった事で敵さんはまだ寝てなかった事が判明。妖気に当てられる前に決着をつけたい所だが……。
「ま、さっき稼いだ金の使い道がなくなっても困るんでね、サイフの厚みで元気を出したいところだが……」
 コイツを撃破すれば腹いっぱい飯が食える!いや待て、戦う必要なんてあるのか?全てを投げだして帰って飯食ってもよくない?あれ、そう考えると別に今日急いで飯食いに行かなくてもいいんだよな……そうだ、今日はもう頑張ったじゃないか、帰って寝て、金の使い道は明日考えたって……。
「はっ!?」
 あっという間に思考を怠惰で塗り潰されていた事に気づくヒアデスが我に帰るも、既に全身は気持ちよく寝てたのに深夜に突然目が覚めてしまったかのような、重々しい倦怠感に包まれている。
「こいつはマズいな……」
 怪人であるはずの自分も脱力にやられている。ならば、人間の能力者であればもっと……。
「くくく、お前にはエンタメとはなんたるか、顧客への奉仕とはなんたるかを叩き込んでやらねばなるまいな……!」ゴゴゴゴゴゴゴ……
「声が小さいッ!」ドンッ!
『押忍ッ!!』ビシィ!
「キャラメルバニラピスタチオアーモンドエキストラホイップアドクラッシュクッキーチョコレートソースウィズストロベリードーナッツ美味しいです!!」もっきゅもっきゅ
「……」
 ヒアデスは、そっと敵に向き直り。
「チッ、面倒な奴だ……!」
 何も見なかった事にした。とはいえ、現状がお手上げである事に変わりはない。いかに強力な√能力であろうと、それを振るう本人に強い意思が無ければ存在しないに等しいのだから。
「そこまでだ!」
 膠着した戦場に、煌びやかな光と壮大な音楽を携えて、・・主人公・・(しゅじんこう・h05166)が駆け付けた!
「こ、れは……!」
 しかし、古妖の領域に踏み込んだが最期。気力を削ぎ落とされて膝をついてしまう。登場して速攻で無力化されてしまった……えーと……あーもー!こいつ嫌い!!
「なんで!?私まだ何もしてないよ!?」
 うるせー!お前の名前は表記どうしたいいのかよく分かんねーんだよ!なんで名前に「・」なんて入れた!?
「入れたかったから!」
 そっかー……で、納得するとでも思ったか!?
「えー……しょうがないなー……じゃあほら、こことここをカットして、『主人公』表記で……あ、画面の前の皆!私は主人公だからこうやって屑みたいなライターさんとも普通にやり取りしちゃうけど、よい子はマネしちゃだめだぞ!!」
 えー、謎の注意喚起なんかもありましたがシナリオ再開しまーす。はい、三、二、一……スタート!
「怠惰の海に沈むことなどできない」
 膝をついた主人公は深呼吸して心を整える。凄まじい倦怠感に肉体は闘争の意思を泥のようなまどろみに引きずり込もうとするが、逆に言えば強い意思を持てば体が動いてくれる。
「私は未来を明るく照らす光だ!」
 右手を掲げ、立ち上がる様を前に古妖は興味深そうに主人公を見た。
「へぇ、俺の妖気の中でまだ動けるんだ?」
「確かに強力な妖気だけど……正確には毒霧って言った方がいいんじゃないかな?」
 その瞬間、戦場が冷えた。初めて古妖が明確に敵意を示したのだ。自分の予想が正しい事を確信した主人公は口角を上げて。
「人の意思を怠惰に沈める妖気……そう感じてるけど、実際には体の方を麻痺させる呪詛なんでしょ?だから体が動かなくなって、『体が過労状態だ』って勘違いした脳が無理やり休憩を取ろうとしてやる気が出なくなるだけ。実際には動こうと思えば動ける……!」
「おー、凄いね、正解だよ。それで?」
 素直に認めて拍手を贈る古妖が、首を傾げた。
「その右手に妙な力を感じてはいるけどさ、結局、届かなかったら意味ないじゃん。ほら、動けるもんならここまでおいでよ」
「くっ……!」
 右手で触れさえすれば、呪詛だろうが毒だろうが問答無用で打ち消す事ができる。だが、その小さな掌を運ぶための足が動いてくれない。強靭な意思を以て立ち上がったものの、体を引きずるようにして歩く主人公に対して、動いた分だけ下がる古妖。
 時間をかければかけただけ、能力者達の体は妖気に侵食されて動かなくなる。だというのに、目の前の相手を殴ってやる事すら叶わないのだ……。
「おいガキンチョ、あいつを押さえればどうにかできるんだな?」
「が、ガキンチョ!?」
 ヒアデスからの呼称にショックを受ける主人公。まぁ、六歳児やし……それでも本当にロリか?って雰囲気はあるが、まぁ置いといて。
「一撃だけでいい……何とか触れられれば……!」
「よし、だったらアンタに賭ける!」
 カクン、言い残したヒアデスが事切れた。かと思えば彼の装甲がブクブク膨れ上がり、内より出るは無数の甲脚。腹ばいのまま宙に浮かび上がり、増殖する無数の脚が体を支え、両腕を軸にして伸びる甲脚が絡み合い、ズラリと棘を並べた鎌を作り上げる。腕との接合面に関節を持ち、ぱたりと畳まれた様は蟷螂のそれに酷似していた。
「冒涜蝕装体は俺と同化してるが俺の体じゃねぇ。時々こうやって勝手に動くんだが……今回ばかりは好都合だ!」
 ガチャガチャガチャガチャ!騒々しい音を立てて距離を詰めたヒアデスの大鎌が降りかかるが、ニュルッとすり抜けた古妖が逃げる。
「俺がそう簡単に捕まるわけないでしょ?ゆるーく逃げ回って時間稼ぎさせてもら……」
「ワシが剛拳番長轟豪太郎である!!」ドドンッ!!
 本日何度目とも知れぬ怒号が響き、古妖が足を止めた。やたら数の多い応援団員に囲まれて取り押さえられたのである。
「おっとぉ?俺の誘導が狙いだったな?」
 取り逃がしたと見せかけて、その場から動けなかった豪太郎の下に押し込まれたのだと気づいた古妖を前に、先の戦闘で妖怪の返り血を浴び、真っ赤に染まった豪太郎は口角を上げて。
「常の三倍といえば赤いものらしいからのぅ!行くぞっ!三倍番長拳!!」
 状況だけ見たらただのリンチだが、細かい事を気にしてはいけない!重々しい鉄拳が古妖の顔面を捉えて殴り飛ばし、膝蹴りが腹部を抉る。
「努力!友情!熱血!!それらを支えるモノこそが!ワシらが掲げる番長式応援法よ!!」
 攻め立てる豪太郎目掛けて、眠っていた牛が「やれやれ」とでも言いたげに動き出そうとするが、起き上がるより先に巨大な鎌が振り下ろされて、縫い留められた。
「行かせやしねぇよ……二体同時に湧いて来やがったんだ。つーことは、どっちも本体ってオチだろうがよ……人外同士、どっちが先に動けなくなるか競争といこうぜ」
 怠惰であろうと古妖の片割れ。恐ろしいまでの剛力でヒアデスの鎌を押し返そうとするが、左の鎌で押さえている間に右の鎌を畳んで。
「デカい腕にはこういう使い方もあってなァ!!」
 強化された腕力に物を言わせて、ぶん殴る!策も技術もあったものではない、怪力と腕力のぶつかり合い。一撃ごとに赤い血飛沫と黒い雫が飛び、どちらがどちらのモノなのかは判別がつかない泥仕合に持ち込んだ。
「さぁ、主人公とやら!ワシが押さえているうちに!!」
「うん……任せて……!」
 ボッコボコにした古妖を羽交い絞めにした豪太郎に合わせて、周りの応援団達が主人公を支え、彼女は走り出す。広げた右掌は光を放ち、怠惰なる影を照らした。
「その現象をぶっ壊す!」
 主人公が右手で古妖に触れた途端、能力消滅の衝撃で古妖が吹っ飛ばされてしまう。同時に能力者達に伸し掛かっていた倦怠感の枷が外れ、自分自身が取り込んだ怪異たちからようやく解放された黄泉子が拳を鳴らした。
「酷い目にあったわ……それもこれもあなたのせいね覚悟しなさいッ!」
 などとブチ切れた黄泉子の頬は左右共に真っ赤なまん丸がくっついている。反対側も大根焼きされたのか……。
「八つ当たり……じゃなくて、呪いの溜めはもう十分!食らいなさい!!」
「フッ、いかに強力な能力だろうと、当たらなければ意味がない……」
 古妖はゴロリ寝そべり、濃密な妖気を放ち始め姿を隠す。
「今の俺は肉眼でしか感知できず、そして視界は妖気に覆われほぼゼロ。果たしてこの状態で俺を殴る事ができ……」
「目の前で隠れたら意味ないでしょッ!!」ドゴシャァ!!
「るぎゃーっ!?」
 寝転がって動きを止めちゃってたら、そらー当たるわな。思いっきり頭をぶん殴られて首から上が埋まった古妖が何とか顔を引っ張り出すと、そこには分厚い冊子を開いたプレジデントの姿。
「どれ、若者を導くのも年長者の務め、少し教育せねばな!なーに、六時間もあればお前も立派なサービスマンになれるとも!」
「やめろー!俺を働かせようとするなーッ!!」
 逃げ出そうとした古妖を、プレジデントが、ガッ!ヘッドロックを仕掛けて押さえ込み、目の前で『オリュンポスの輝かしい道程』なる冊子(辞書みたいな厚さだけど、冊子)を開いて会社の沿革やら経営方針やらを見せつけながら。
「エンターテイメント系PR会社『オリュンポス』の最高経営責任者が直々に、お前一人の為に、講演を行おうと言っているのだ。有難く拝聴するがいい!」
 善意の押し売りどころの話じゃないプレジデントは洗脳……もとい、教育を施そうとする。ギロリ、古妖を睨みつけ。
「まずはお前の考えを知らなくてはならないな!カスタマーサービスにおいて最も重要な事は何だと思う?質か?速度か?感動体験か!?」
「俺に仕事の話をするなーッ!!」
 CEOモードに入って無駄に圧力を発し始めたプレジデントに古妖が悲鳴を上げると、摩那がドーナツを食べ終えて手についた砂糖やチョコを拭い、てこてこてこ。
「えいっ」
 ぷすっ。鋸のような剣を頭に突き刺して、スイッチをポチッ。

 ヴィイイイイ!ブジャジャジャジャジャジャジャゴリゴリゴリゴリバヅッ!!

 頭を切断された古妖は自我を失い、霧散していってしまうのだった。
「な、何ィーッ!?」
 抱え込んでいた敵が消滅した事にプレジデントは衝撃を受けて。
「手品を使ってまで我がオリュンポス講座から逃げただと!?おのれ……なんとしても教育してやるぞーッ!!」
 勝手に勘違いすると、消滅した古妖を探してどこかへ走って行ってしまった。
「かくして、私達の戦いは終わった……これからも辛く厳しい戦いは続くだろう。それでも、希望を胸に進むのだ、私たちの未来は明るい!さぁ帰ろう……新たなる道へ進むために!!」
 あっ!エンドロールを主人公に持って行かれた!?
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

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