あなたに贈る、春告の果実
あの子が最初に見つけた、赤く艶やかな|ひと粒《ルビー》。
でもずっと一緒にはいられない子だったから、あの時は、思い入れのある一番同士を交換こしたのだけれど。
こじんまりとした部屋でレトロランプを灯せば、天勝・牡丹(独り夜咲き・h04641)はどれがいいか、暫し悩んで。
「苺の花を模ったレースにしましょう。喜んでくれるかしら……?」
テーブルの上に広げたレースやリボンの中から、これだと思うものに決める。
ふたりで楽しんだ春に思い巡らせながら、|あの子《ルビー》のような真っ赤なひと粒に一番似合う、苺の花咲くレースに。
そして手のひらにころんと、大ぶりな苺のチャームを遊ばせた後。
手に取った一粒を、フリルやレースでうんと着飾ってあげる。
でも選んだレースを接着し糸で結いあげていきながらも、牡丹はふと、思わず表情が悲しくなってしまいそうになる。
ルビーを食べると知った時の、あの子の顔を思い出して。
でもだからこそ、いつまでも寄り添える、とっておきの|苺《ルビー》を、あの子に。
白い花のことを想って大事に、丁寧に、作業を進めていけば。
大きくひとつ、満足げにこくりと頷いて笑み咲かせる。
「良い感じ。梱包もしなくちゃですね」
出来上がった苺のレースの髪飾りを、見つめる紫の瞳にも実らせて。
それから牡丹はようやく気付く。時計をちらり、いつの間にか、もうすぐ明け方だということを。
そしてちょっぴり焦ってしまうのは、今日は絶対に間に合わせないといけない約束を交わしているから。
(「料理は出来ないけれど特別な日ですからね」)
でも急いでいても、大事にそっと、完成した贈り物を箱に入れて。薄い桃色咲く包装紙で包み込んであげた後、白色のリボンをきゅっと折り重ね、花のように結んで綻ばせれば――完成。
そして仕上げに、出来たばかりの贈り物を顔の前に近づけて。
「フルールさんが、幸せでありますように」
真心込めて、貴女に届くようにと。
鈴を転がす優しい声でそうっと唱えるのは、幸せの魔法のおまじない。
……春に花が咲くように、貴女の笑顔が見たいから、と。
そして外を見ればすっかり朝を迎えているから、急いで身支度をして。
紙袋に、春の香の思い出も一緒にそっと忍ばせて――いってきます。
つい逸ってしまうのは、約束の時間もあるけれど……早く|この子《Ruby.》を、白い花の子に届けたいって、そう思うから。
🔵🔵🔵🔵🔴🔴 成功