如何物盗るか、捕られるか

【√汎神解剖機関で(√能力者に目覚めた後)のエピソード】
・√能力者に覚醒した後、ある程度√能力にも慣れ、各世界で仕事(義賊としての盗み)をするエピソードを希望
・出身世界(√妖怪百鬼夜行)以外をいろいろ回ってみると、どの世界にも助けるべき弱き人々がいると知る
・助けるべき弱き人々→孤児院の子供とか、暴力や権力に屈するしかなく辛い日々を送る人々
・自来也としては、絵巻物で見た義賊「自来也」のように、義賊として悪党から金目の物を頂戴して弱き人々に配布する
・能力者として覚醒する前から、義賊として自来也として√妖怪百鬼夜行の世界では活動していたが、√能力に目覚めてからは他の√世界でも活動する事に
ノベルの内容
・√能力も使い、この世界で義賊として活動する、そんなノベルをお願いします。
・結果部分についてはお任せします(警察系の組織に捕まっても良いですし、貧乏人に盗んだ金をバラまいても良いですし、その他の結末でもお任せします)
・文字数も最大3000文字以内なら何文字でも可です。
NG事項
・巨大蝦蟇妖怪の姿には戻りません(常に人状態で活動します)
クヴァリフ器官――1994年頃、怪異の臓腑から発見され、摘出されたもの――は今現在、この√にとって欠かせない『もの』となっている。新物質の扱いは最早、宝石の類よりも『上』とされ、機関同士での争いの『種』にもされているか。そして、現在、クヴァリフ器官よりも重要視されているのがクヴァリフの『仔』であった。クヴァリフの仔、文字通り仔産みの女神クヴァリフの『仔』である。仔は様々なカタチをしているが、総じて、新物質としての可能性を秘めている。それだけで争いは激化した。連邦怪異収容局の職員までもが――王権執行者までもが――動き始める始末だ。未知なるものは恐怖や狂気をばら撒くがそれ以上に、それ故に、異常なまでに解剖をしなければならない。ぼくはおいしくないよ! ぼくはおいしくないよ! 仔の鳴き声などお構いなしに晒してやるのが機関の根底である。兎にも角にもクヴァリフの仔。これは人類に如何様な影響を与えるのだろうか。
汎神解剖機関の職員、その一人である男は――小さな公園にやってきた。上司曰く、此処にクヴァリフの仔が落ちているから『回収』せよ、とのこと。いや、まさか、こんな公園に……小さな子供が遊ぶような公園に……怪異が子供を落っことすなんて、考え難いものだが。故に余計に、上司の言葉が気になった。あの上司はもしかしたら予測しているのではないか。実際、目に映っているのは遊具ばかり。それも、かろうじて安全そうなものばかり。なんとなく近くにあったブランコに腰を下ろしてみる。……やれやれ、あの上司も、例によって人使いが荒いというワケだ。男は昔を思い出したのか、ぎぃぎぃと、こいでみせる。ぎぃぎぃ、ギィギィ、ぎぃぎぃ、ギィギィ……? この声は何だろうか。この音は何だろうか。男の背後から聞こえる、ブランコではないギィギィ……! 飛び降りると同時に視線を背後へ。これが……クヴァリフの仔……! メンダコを彷彿とさせる、ぐちゃっとした輪郭。口とも穴とも解せない、伽藍洞な部位から「ギィギィ」笑っている。……早速、持ち帰るとしようか。……貴様、何をやっている。クヴァリフ様の子供に……不敬ではないか! ぞくりと、男は嫌な予感を覚える。この、ありきたりな科白は……耳に馴染んだ怒声は……!
男は狂信者どもに囲まれた。囲まれてしまい、身動きすらも赦されなくなった。なんだって俺のところに……! 男はまったく、知る由もないのだが、狂信者どもの背後には星詠みが憑いている。或いは、連邦怪異収容局の職員が唆したのかもしれない。ちぃ……! な、なあ、今回だけは見逃してくれねぇか? 俺もよ、仕事なんだ。仕事が終わったら、俺は、関わらねぇからよ……。ギィギィ、ギィギィ、震えているクヴァリフの仔。心の中で男は悪態を吐くか。俺の方が泣きたいってのによ、いい加減、黙ってくれねぇか。アッハッハ! アッハッハッハッハ! 狂信者の一人が哄笑する。哄笑につられた狂信者、ふたり、さんにんと、感染していくのか。残念だが、貴様、貴様はもう逃げる事も出来ない。逃げたとしても、クヴァリフ様の寵愛を受けた我々には追いかける術というものがあるのだ。にょろりと、狂信者どもの身体から触手が伸びてくる。嫌だ……こんな場所で、わけのわからない連中に、正気ではない連中に殺されるだなんて、まっぴらごめんだ……! ギェェェェェェ!!! 不意に、狂喜したかの如くに絶叫したクヴァリフの仔。男も狂信者もぴたりと、その異様さに動作を止めたか。
絶景かな、絶景かな、こりゃあ今夜は縁起が良いねぇ! いや、このお宝は如何にも縁起物とは言い難いがな! 漁夫の利とでも謂いたいのか、一石二鳥とでも謂いたいのか、ジャングルジムのてっぺんで呵々と笑う者がひとつ。その影が抱えているのは、成程、先程絶叫したメンダコだ。狂信者どものひとりが怒りを露にする。き、き、貴様ァ! よくも、よくも、クヴァリフ様の、女神様の子供を雑に扱ってくれたな! 今なら殺すだけで終いにしてやる。さっさとそこから、降りてこい! まったく饒舌な狂信者ではないか。おうおうおう、この自来也様相手に「降りてこい」たぁ、そっちこそ良い度胸じゃあねえかよ。まあ、落ち着け。俺がここにきた理由は何も『お宝』欲しさじゃないんだぜ。なあ、アンタら、近所迷惑もいいところだって謂ってんだ。それはお互い様ではないだろうか。それは両成敗の類ではないだろうか。唯一、熱っぽさから引いた汎神解剖機関の男、溜息を吐くようにして言の葉を紡ぐ。なあ……それ、どうするんだ? お宝ではない事くらいは承知なんだろ? 承知の上で奪ったんなら、盗んだんなら、つまりは、意図があっての事なんだろ? 知らざぁ言って聞かせやしょう……この自来也、金目の物以外にも、爆弾だって盗んで魅せるとも! く、く……クヴァリフ様の子供を、女神様の子供を、爆弾扱いとは冒涜的な!!! 殺してやる! 殺してやる!!! 狂信者どもが構えたのは拳銃である。待て待て、随分とおっかねぇ連中だな。仕方ねぇ、ちょいと早いがとんずらする事にするぜ。じゃあな! 泥崙と煙がモクモク、黙々――弾丸が虚空を穿ち、其処には盗人も、仔も、なくなった!
くそ……逃がすものかよ。教祖様に連絡だ。クヴァリフ様の仔を宝物としない賊など、贄としての価値もない。殺せ! 殺せ!!! ぎゃあぎゃあ、わあわあ、騒がしかった連中は『俺』を無視して盗人の捜索に夢中らしい。しかし、いや、俺にとって、あの盗人は恩人となるのだろう。あれがひとつの『義賊』としてのカタチなら――お礼をしなくてはならない。
チウチウと、チュウチュウと、一匹の鼠が駆けている。隙間から隙間へと移動する際は細心の注意を払って、ジュウジュウと鳴いていく。そうして、一定の距離を取ったと判断し、ようやく鼠は正体を明かすか、泥崙――しっかし、陰気なところだねぇ。まさか、俺が、この自来也様が、こうまでして盗み出さなきゃならねぇ代物とは! 弄った懐、にゅるりと触手をこぼした『仔』はギィギィ、自らの扱いの酷さ、訴えた。ちっとは我慢してくれねぇか。そのうち、テメェの保護者がやってくるからよぉ。彼方、義賊の目に映ったのは先程の『男』である。おう、遅かったねぇ。いや、俺が早かっただけか。アンタの足に文句なんざねぇよ。……はぁ……はぁ。改めて、先程はありがとうございます。ですけど、俺は汎神解剖機関の職員。あのような怪異を、怪奇な能力を、捨て置けるほど頭が柔らかくありません。ん……? そりゃあいったい、如何いう事だ。がしゃん、義賊の腕――盗堂・自来也の腕――まったく見慣れた、輪っかがふたつ。こいつはやられたな。まさか、この世界に俺を捕まえる事のできる優秀なサツがいるとはねぇ! いえ、あの、逮捕と謂うわけじゃ……。少し、事情を説明してもらうだけでして、あと、絶対、逃げるかなと、思ったので。
違いねぇ! で、俺の活躍を聞きてぇってんなら覚悟しろよな? 三日三晩で語り尽くせるほど薄っぺらじゃあないぜ! ギィ! はっはっは! そうか、そうか。こいつも聞きたいってよ! はっはっは!
義賊の話は――自来也説話は――三日三晩を超えても終わらなかった。
眠気と頭痛にやられながらも、俺は、そのキラキラとした『おはなし』に、
魅入られたと残しておく。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴 成功