闘って、ただ勝って。
●祈るような声がした。
『どうしてあなたたちは戦うんですか?』
「殺されたくないなら、殺すしかない。ただそんな当たり前のことを成しているだけ」
セーラー服のスカートがひらり翻る。黒ベースのそれを纏った彼女らは死神のようであり、葬送の列のようであった。
『誰があなたたちを殺そうとしているんですか?』
「どこの誰とも知れないあなたには関係のないこと。頭に語りかけてくるのはやめて」
『ボクは手の届く範囲にいるのなら、本来は敵だとしても、あなたたちのことだって救いたいんです。√能力者だから生き返るだろうとか、そんなことは関係ありません。百回だろうが十回だろうが、たった一回だろうが、人が殺されていいはずありません』
「なら」
淡々と向かい来るモンスターや√能力者、そしてドラゴンプロトコルたちを殺していた『暗殺組織の実働部隊』の少女は答える。
応えてほしくて。
「私たちを、助けてよ」
●喰竜教団
ヴェル・パヴォーネは大人しい男の子だ。あまり好戦的なところはなく、敵であってもひどい仕打ちを受けたり、非道な実験の成れの果てを見たりしたら、苦痛に顔を歪めるような子ども。
けれど今、その顔に滲むのは、たった6歳の幼児が宿すには深すぎる憤怒の色。
「喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』なる者が現れて、異様な思想を表明したのは、もうみなさん、ご存知ですかね。……それについての予兆を漁っていたら、とある√能力者の一団に繋がりました」
曰く、√EDEN出身の者たちが集い、あらゆる任務を冷徹にこなす『暗殺組織の実働部隊』たち。剣を交えたことのある者も存在するだろう。
「ドラゴンストーカーは|真竜《トゥルードラコン》の復活のため、多くのドラゴンプロトコルを殺害し、自らの肉体と継ぎ接ぎにしています。それが|真竜《トゥルードラコン》の復活に繋がると、本気で信じているのです。
√EDENに限った話ではありませんが、他√から迷い込んで、元の√に戻れず、世界難民のような状態になった種族は存在します。吸血鬼やセレスティアルなどがわかりやすい例でしょうか。
けれどね、帰る場所があっても、帰れない者もいる。例えば、ドラゴンプロトコルとか」
ヴェルはそこで一旦、言葉を区切り、目を閉じる。怒りを鎮めるよう、努めているようだ。
「√ドラゴンファンタジーから、√EDENに迷い込んで、帰り道を見失ったドラゴンプロトコル。けれど、ドラゴンプロトコルとして、人間の姿に近ければ近いほど、√EDENの中に馴染むことは容易かったんです。√EDENの住人は、ほどよく違和感を忘れてくれますし……『暗殺組織の実働部隊』の中に、稼業はどうあれ、真っ当に働いて、ただ暮らしていただけのドラゴンプロトコルの少女がいたんです」
けれど、それを聞きつけたドラゴンストーカーが黙っているはずもない。何故ならば、彼女は|真竜《トゥルードラコン》復活のために、ドラゴンプロトコルを無差別に狩り尽くそうとしているのだから。
√EDENにも、ドラゴンプロトコルがいるのなら、繰り出さない理由がない。
「だから、ドラゴンプロトコルの暗殺部隊の少女たちに、同族を狩らせているのです。
ダンジョンを伴っているのは、√能力者のドラゴンプロトコルを釣り出すためでしょうね」
ふう、とヴェルは一息吐く。再び目を開けた彼の目は落ち着きを取り戻していた。説明することで、やるせなさがいくらか解消されたのだろう。
「みなさんの中にも、ドラゴンプロトコルの方はいるでしょう。最終目標は『ドラゴンストーカー』です。けれどその前に、まずは彼女らを助けてあげてください。
殺して、死に戻りの際の√遷移を利用し、ドラゴンストーカーから引き離すのも一つの手です。ああは言いましたが、救いには様々な形があることも、知ってはいますから」
言葉をかけて心を救ったり、逃げ出そうと手を引いたり。助ける方法は様々ある。殺されていいはずがない、とは言ったけれど、彼女らが望むのなら、殺害による逃避もまた、一つの手段である。
「すみません。ボクの心の乱れのせいで、途中の星は曖昧にしか読み取れませんでした。けれど、どのような√が拓かれても、厳しい戦いが待っていることに変わりはありません」
故に、言えることはただ一つ。
闘って、ただ勝って。
マスターより

とんでもないやつが出てきましたね。
どうも、九JACKです。緊急でシナリオを提出致しました。ちょっと普通とは毛色の違う感じのシナリオかと思いますが、九JACKの作風的にはいつも通りと思われる方もいるでしょう。
最近気づきました。集団敵に人格持たせるの、とても好きです。
さあ、私の癖の話はいいんです。今回は新たなる|王権執行者《レガリアグレイド》『喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』』をラスボスに据えたドラゴンプロトコルとダンジョンを巡る戦いとなります。
第一章では、ドラゴン要素控えめゆえ、√EDENで過ごしていたドラゴンプロトコル含む『暗殺組織の実働部隊』の少女たちと戦ったり、説得したり、各々の方法で彼女らをドラゴンストーカーの支配から救ってあげてください。
二章の分岐についてはあまり気にせずプレイングを送ってください。ただし、今回はがっつり一章の断章を書かせていただきたく存じます。プレイング受付開始は、断章追加後となりますので、ご了承ください。
武運長久を祈ります。
32
第1章 集団戦 『暗殺組織の実働部隊』

POW
集団戦術
事前に招集しておいた12体の【組織の構成員】(レベルは自身の半分)を指揮する。ただし帰投させるまで、自身と[組織の構成員]全員の反応速度が半減する。
事前に招集しておいた12体の【組織の構成員】(レベルは自身の半分)を指揮する。ただし帰投させるまで、自身と[組織の構成員]全員の反応速度が半減する。
SPD
一人一殺
60秒間【殺意の喜び】をチャージした直後にのみ、近接範囲の敵に威力18倍の【ハチェットによる斬撃】を放つ。自身がチャージ中に受けたダメージは全てチャージ後に適用される。
60秒間【殺意の喜び】をチャージした直後にのみ、近接範囲の敵に威力18倍の【ハチェットによる斬撃】を放つ。自身がチャージ中に受けたダメージは全てチャージ後に適用される。
WIZ
マンハント
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【ハンドガン】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【マスクを被って光学迷彩】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【ハンドガン】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【マスクを被って光学迷彩】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
√EDEN 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●√能力者は流転する
「私たちを助けて」
どこの誰とも知れない声に、それでもすがるしかなかった少女。
√能力者ゆえ、その肉体はドラゴンストーカーを継ぎ接ぐことに使われない。彼女らは蘇生する。彼女らを組成する体は、死に戻るとき、欠損さえをも取り戻す。それゆえに、ドラゴンストーカーが狩るのは、√能力へと至っていないドラゴンプロトコルの老若男女。
帰れなくなって、けれど別に不便はないから、√EDENで過ごしていた。暗殺組織なんて物騒ではあるけれど、食うに困らないで、少しばかりある角だとか、尾だとか、変化することのある手だとか……そういうものに目を瞑ってもらえるのだから、少女らはそれで満足していた。
それは、暗殺者という職業柄、人を殺めてはきたけれども、その報いは「生まれ故郷に帰れない」ということだけで、贖えるものではなかったのだろうか。
髪に隠せる程度の小さな角を持った少女は回顧した。
継ぎ接ぎだらけで、青い肌、火炎のような色をした双眸。ねぶるようにこちらを見、不意にすんと冷めた眼差しになって、失意に満ちた溜め息を吐き出したドラゴンプロトコルの女。
「√能力者ですか。残念です。……けれど、ドラゴンプロトコルというのなら、あなた方も救わねば」
女が何を宣っているのか、少女にはわからなかった。少女たちにはわからなかった。
「我々に救いなど不要です」
「帰りたいとは思わないのですか? もしくは、還りたい、と」
女はうっそりと目を細める。
「私はあなた方を|真竜《トゥルードラコン》へと回帰させるために、ドラゴンプロトコルを殺して回っているのです」
高らかな宣告に、少女の一人が銃を放った。けれど、女はそれより速く、尾の一振りで、二、三人の首を飛ばす。
主を失った自動拳銃が、中空に銃弾を吐き出す。ぽてぽてと地面で弾んだ少女の首は、数度瞬くと消える。
「あなた方に出会えたのは誠に僥倖。長閑な√に繰り出した甲斐があった。あなた方も幸運です。私と来れば、あなた方は簡単に√ドラゴンファンタジーへ帰ることができ、更には|真竜《トゥルードラコン》へ還る道も拓けましょう」
「そんなのいらな」
「殺されるより早く殺せ」
耳にたこができるほど……夢の中で輪唱が繰り返されるほどに刻み込まれたそれ。その言葉は、組織に属するにあたって教え込まれた暗殺者としての心構えだった。
——この女に、自分たちは敵わない。それは先の一撃を見れば、嫌というほどわかった。殺す前に殺されるだろう。
それなら、それなら自分たちは、どうすればいいというのだろうか。
そんな問いかけすら待つことなく、女は、『喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』』は朗々と告げる。
「やることは組織の任務と変わりません。ただ、標的が同胞、ドラゴンプロトコルたちに変わるだけです。
協力してくださるのなら、私もあなた方のために邁進していきましょう。
殺されたくなかったら、殺されるより早く殺しなさい、ね?」
返事も聞かずに女は去っていく。
故郷に帰ることも、|真竜《トゥルードラコン》に還ることも、どうでもよかった。どうでもいい、どうだっていいのだ。
ただ、殺されることが、嫌だった。
そんな生存本能に抗えなかったとしても。
(何が楽しくて同胞を狩らなくちゃいけないんだろう)
その思いは少女たちの中に沈澱していった。
掬われることのない思いだ。
救われることのない私たちだ。何故なら、同胞以外にも、たくさんのものの血で、この手を染めて生きてきた。今更どうして、許されるだろうか。
それでも、脳内に語りかけてきた男の子の声は言った。「敵であろうと、手が届くなら救いたい」と。
まだ両の手指で足りるほどの年数しか生きていないような人生の初心者が何を、と思った。そんな初心者が、√能力なんかに目覚めて、星詠みの力まで使えるようになったのは、御愁傷様と思うけれど。
あなたに何がわかるんだ、と思った。
『百回だろうが十回だろうが、たった一回だろうが、人が殺されていいはずありません』
無垢なるもののはずの声が、そんなことを言った。理想論の向こう側から、正論を叩きつけてきた。
暗殺者には耳の痛い話だ。けれど、耳が痛いと思う程度には、少女には良識が残っており、
「なら、私たちを助けて」
切実な願いは、|掬《救》われたがっていた。
●本当に
「来たわね」
少女たちが、√能力者たちの到着を察知した。全員が全員、ドラゴンプロトコルではないが、同じ組織に所属している同業者というのもあって、思うところはあるのだろう。
かちゃり、と少女たちは武器を構える。
「ダンジョンには通さない。それが私たちに与えられた役目だから」
「ドラゴンプロトコルは特に、その首を置いていって」
あなたたちを助けに来たんだ、と誰かが言う。
「なら!」
哭く。
「なら、証明してよ。証明して見せてよ!! あなたたちが、私たちを助けてくれるって、それをほんとに、本当に信じていいって!!」
そう思わせてよ!!
どうかこれが、|幻想《ゆめ》でありませんように。

※アドリブ歓迎、単独希望
POW判定
【作戦】
√能力で敵の隙を見出して攻撃、招集された構成員たちを打ち倒して
指揮をしている本体とタイマンする
自分の言いたいことを言った後に気絶させて転がしておき
可能ならば帰り道に拾って帰る
【戦闘】
反応速度の遅れを付いて敵集団に飛び込み、分断させながら一体づつ倒していく
(使用技能「限界突破、空中ダッシュ、グラップル、地形の利用、気絶攻撃」)
【心情】
オレはやりたくねぇことは死んでもやらねぇ
それを他人に押し付けるつもりはねぇが
死にたくないから殺すってのは普通のことだろ
それでもなにか嫌って言うなら
一緒に行こうぜ!
そんで飯でも食おう
大概のことは腹が一杯になれば解決するもんだ!
●当たり前のこと
「行くよ」
「了解」
標的を確認し、【集団戦術】で仲間を召集。冷徹に、淡々と……いつも通りに、彼女らは任務をこなそうとしていた。
けれど、向かってきた√能力者、ジューン・シロガネ(白銀の|龍拳《ドラグナー》|格闘者《エアガイツ》・h02449)がドラゴンプロトコルであることを認めた一人の動きが止まる。瞬き一つ分にも満たないほどのことだったが、それは確かに逡巡。
(なんだかなあ)
平静を装おうとする様子に、ジューンは釈然としない思いを抱えた。
彼女らの事情を聞いてから、思うところはもちろんあった。が、説得する、というのとは、ジューンの意気込みは違う。
説得とは大抵、相手の考えの否定を大前提に行うものだ。ジューンは別に、彼女らの行いや思考を否定しようとは思わなかった。
「アンタらさ、なーんか難しく考えすぎなんじゃねえの?」
「——撃って」
ぶれたのは、対面したそのときだけ。訓練された少女たちは合図一つで各々駆け出し、役割を果たしていく。五、六人は射撃、三人はハチェットを構え、肉薄。残りは牽制射撃や足技でジューンの態勢を崩そうと試みる。
が、|格闘者《エアガイツ》相手に格闘戦を挑むには、力量差がありすぎた。ジューンは銃弾を床に張りついて避け、そこからくるりと回し蹴り、逆に少女らの態勢を崩しにかかる。
文字通り蹴散らされた少女たちは崩れる。一撃一撃が段違いに重く、意識を刈り取っていく。だが、仲間が倒れようと、少女らにとっては日常茶飯事。それしきで動揺することはなく、射撃で応戦、ナイフやハチェットを構え、接近を試みる。
仲間一人倒れたくらいでいちいち動揺していては、暗殺組織の実働部隊など務まらない。何を犠牲にしてでも標的を倒すことが至上である。
ジューンは——ジューンの眉間の真眼は、しっかりそれを見ていた。
√能力の影響により、少女たちの動きはきびきびして見えても鈍い。それを感じさせないほどに鍛えているのだろう立ち居振舞い。あるいは体に刻み込まれたものだろうか。
【|真龍眼《ドラグサイト》】を使っているため、圧倒しているが、使わなかったら、いかほどの勝負になるのか。気になりはするが、今は重要なことではない。
真眼に映った隙を捉え、組み付き、投げ飛ばす。一つ。
ハチェットを受け流し、近くの木に突き立つように立ち回る。勢いよく放たれたハチェットは、簡単には抜けないだろう。得物を手放すまでの僅かな逡巡の隙に手刀を叩き込む。一つ。
牽制射撃を回避するのに、近くの枝まで飛び上がる。そこから空中ダッシュにより、跳躍にしては長めの距離を移動、反応できなかった射手の少女たちを一つ、二つ、三つ。
ハチェットの投擲が飛来するも、皮一枚で避けたジューン。ハチェットが飛来してきた方向を見ると、振りかぶった状態からまだ態勢が戻っていない。グラップルからの絞め技。一つ。
締め落とした少女を離さぬまま振り向き、射撃を狙っていた少女たちと目が合った瞬間に、解放。少女たちが引き金を引く前に肉薄。手を打ち付けて、拳銃を取り落とさせ、時間差で尾での攻撃。器用に一人、号令を出していた指揮役の少女だけを残す。
少女の目にジューンに対する諦めはない。果敢にナイフを抜き放つ。ハチェットや拳銃と比べれば、心許ない装備ではあるが、ナイフ一本でできることの幅は計り知れないのだ。
侮りはない。ジューンは油断のない足取りで、少女に近づいた。
さら、と少し揺れた髪の合間に、鱗が張っているような肌が見えたような気がする。
髪や服で隠れて見えなくなる程度の種族特徴なら、確かに人間を装って溶け込むことは容易かったことだろう。実際、溶け込めていたのだし、暗殺者以外の道もあっただろうが、それはジューンからすると些末な問題である。
「ドラゴンプロトコルは首を置いてけ、だったか。……獲ってみろよ」
安い挑発。わかりやすい煽り。それでも、退く道だけは彼女にはなかった。
音のない踏み切りからの突進。ジューン目掛けて繰り出された刺突は勢いよく、空を切る。
手首がぱしりと掴まれ、少女は成す術なく引き倒された。ナイフは叩き落とされ、蹴り飛ばされる。ジューンは十三人を相手取ったのに、傷はおろか、髪の乱れ一つない。
「……あいつと、戦うつもり?」
「ああ。それよりアンタさ」
少女を全員無力化したジューンは真眼を仕舞い、ドラゴンプロトコルである暗殺部隊の少女に顔を寄せた。
「色々と難しく考えすぎじゃね?
例えば、オレはやりたくねぇことは死んでもやらねぇ。そういう主義を持ってる。これはあくまでオレ個人の主義で、それを他人に押し付けるってのは、筋違いだ。だから、押しつけることはしねぇよ」
けどさ、と戦いの緊張感から離れたような、きょとんとした風の眼差しが、少女に注がれる。
「死にたくないから殺すってのは普通のことだろ。何がおかしいんだ? 恥ずかしいことでもねぇよ」
「え」
悪の√能力者として、ダンジョンの奥に君臨していたことのあるジューンは、「死にたくないから殺しにかかってくる」やつをごまんと目にしたし、自身がそれらを打ち倒したのも、どんなにかっこつけた理由を並べようと、根底にあるのは「死にたくないから殺す」という動機であることをよく知っていた。
この少女らは、「死にたくないから殺す」という行いに、後ろめたさを感じている様子。それをずっと、おかしいと思っていたのだ、ジューンは。
後ろめたさなんて感じる必要はない。後ろ指を指される謂れすらないのだ。ジューンの認識では。
この価値観を押しつける気はないが、進むには、前を向く必要がある。そのきっかけにならないだろうか、この言葉は。
ジューンはニカッと笑ってみせた。
「それでもなにか嫌って言うなら、一緒に行こうぜ! そんで飯でも食おう。大概のことは腹が一杯になれば解決するもんだ!」
腹が減っては戦はできぬっていうしな、と付け足しながら、ジューンは少女を昏倒させた。
言いたいことだけ言って、と少女は思ったことだろうが、気を失ったその表情は、先程より和らいで見えた。
「有言実行するためにも、勝たねえとな」
少女を近くの木に寝かせ、ジューンは前に突き進む。
🔵🔵🔵 大成功

|私《ドラゴンプロトコル》を呼んだか?
面倒なことに巻き込まれたものだな。
他√に迷い込んだ後、問答無用で怪物に襲われて死ぬよりはマシなのかもしれんが。
不自由なものだな、お前たちも。
殺すのは……まぁ、元の姿になれば容易いな。
私の鱗がこの平和な世界の重火器程度を通すものか。
だが……そんな気分にはなれんな。
同族がどうのと、そんなものは気にせんと思っていたが……新たな発見もあるものだ。人の生は面白い。
√能力を使用し、耐久を強化。硬化した尾の鱗を盾に銃弾を防ぐことで己の強さを示しつつ、どうしたいか問いかけよう。
甘えるな。
雛鳥ですら餌を求めて口を開く。
祈るだけで願いを聞き届けてくれるなど甘えでしかない。
どうすればできるが分からずとも、どうしたいかは分かるだろう。
口を開け。想いを口に出せ。まずはそれからだ。
言葉にせねば伝わるものも伝わらん。
「助けてくれるから助かった」ではない。お前たちの意思を見せろ。
どう生きたいかは聞かんと分からんが、善処はしよう。
まずは障害を潰せばいいのだろう?

「あの青い人にちっと聞きたい事があるだけなんだよねぇ、オレ。」
傲慢、入るのに邪魔だからあの娘らの動き止めといて。
√能力で変化した傲慢の重力操作能力で敵を高重力で抑え込む。
後は動きの鈍った敵の頭を他の魔手達の怪力で潰して先に行くだけ…と思ったけど、進むのに邪魔になりそうな敵だけで良いか。めんどーだし。
ああでも、死にたい敵がいるならサービスで殺したげる。
オレの守りはついでに呼び出した下僕どもと魔手達に任せる。
「さてさて、ゴールまでどんくらいかね?」
あ、憤怒。煙草に火ぃ点けてー。

◆キャラ設定
人格・青色に切り替わる
青色は武闘家で求道者、沈着冷静
但し驚きだけは人並みに感じる為、その感情を与えてくれる強者を探す
※仲間への配慮は忘れない
◆青色のスタンス
見ようによっては…キミ達はより強い悪に使われる悪、か
他人を信じられないのは、自らの行いのツケだとも思うが…
◆戦闘
上記スタンスは相手が冷静さを欠く場合は伝えない
不殺を目指す
相手の攻撃はジャストガード・受け流し・見切りで対処
銃弾等の飛び道具は世界の歪みで致命傷を避ける
√能力で拳を振るい、切断でなく使用不能にする
ワタシはキミを助けられない
ただ、より強い者と戦いたいだけだ
そういう助け方しか、ワタシは知らない
◆即興連携・アドリブ歓迎
●興味はないが、通りすがりだ
「ドラゴンプロトコルを、討たなきゃ」
「連れていくのでも、かまわないのでは?」
「——|私《ドラゴンプロトコル》を呼んだか?」
気高さを湛えた、凛と通る声。翼、尾、角。人間とそう変わらぬ見目しか持たぬ少女らからすると、そこに立つドラゴンプロトコルは声に見合った堂々たるドラゴンの特徴を備えており、威厳に満ちた佇まいには、畏れと敬意を抱いた。
ヘリヤ・ブラックダイヤ(元・壊滅の黒竜・h02493)の眼差しには、少しばかり憐憫の色があった。
「面倒なことに巻き込まれたものだな。他√に迷い込んだ後、問答無用で怪物に襲われて死ぬよりはマシなのかもしれんが」
√を渡るというのは、別に√能力者でなくともできる。任意かそうでないかだけの違いだ。最初は、√能力者ではなかっただろうし、√能力に覚醒したことに関して言えば、彼女らもじゅうぶん「御愁傷様」な感じではあるが。
それでも、流れ着いたのが「最もか弱き楽園」と呼ばれる√EDENだったことは、彼女らにとって、あまりにもさいわいだった。√によってはヘリヤの言った通り、出会い頭に怪物に食われて死ぬということだってあり得る。それと比べれば、食うに困らないように手に職をつける余裕すらあった彼女らはあまりにも幸運。
それでも、今襲い来る不幸が帳消しにならないことも、ヘリヤは理解していた。故に、彼女らの人生がいかにさいわいだったかなど、説くことはしない。そもそも、比べるようなものでもないだろう。
「不自由なものだな、お前たちも」
「なら、あなたもこれから不自由にしてあげる」
それは、八つ当たりのような構図に見えた。
召集された十二人の少女と共に、暗殺者は銃口をヘリヤに向け、掃射する。ヘリヤは逃げようとも、避けようとすらしない。
「他人を己と同じところに引きずり下ろすのがお前たちの得たい『満足』なのか? ただの癇癪ではないか。人の子でももう少しましな宣い方をするぞ」
「五月蝿いっ!」
ヘリヤは銃弾を【|龍の記憶《ドラゴンズメモリー》】により耐久を上げ、硬化した尾で払う。かつて壊滅の黒竜と呼ばれていたのだ。平和な楽園で作られた弾丸に、簡単に傷つきはしない。
「他者を不幸に陥れたいから、殺すのか? 何がしたいのだ。何を成したいのだ?」
「はーあ、問答なんて、する必要あるのかねぇ」
問いかけを投げるヘリヤの様子にそうこぼしたのは、七々手・七々口(堕落魔猫と7本の魔手・h00560)。ただの猫というには些か大きく、尾が七つに分かれ、手の形をしている、奇っ怪な存在。
まあ、そもそも√能力者は√能力者であるというだけで奇っ怪なのだ。容姿云々で驚くのは今更だろう。七々手はくあ、と欠伸をこぼす。
「あの青い人にちっと聞きたい事があるだけなんだよねぇ、オレ。傲慢、入るのに邪魔だからやっちゃって」
猫からの呼び声に、手の一つが応える。
【|傲慢特権《レガリア》】が閃いた。
目を焼く閃光。眩んで呻く少女たちには、新たに獲得した魔剣により超重力がもたらされ、地面との抱擁がプレゼントされる。
七々手は敵の頭を怪力で潰せ、と命じようとして、やめた。魔手は七つあるとはいえ、相手はもれなく十二人の追加人員を召集する√能力者だ。ただでさえ数がいるのに、一人一人相手をするのも|面倒くさい《ばかばかしい》。
「通るのに邪魔なやつだけでいいや」
魔手にそれだけ告げると、興味関心を失ったように、七々手は悠々、歩き去っていく。魔手は本当に進路上に存在する敵だけをほいほい、とそこいらに放った。殺すことすら手間と思ったのかもしれない。
「へえ、あの手は強そうだ」
七々手の魔手と【|傲慢特権《レガリア》】による一方的な蹂躙風景を目にし、ハスミン・スウェルティ(黄昏刑務所・h00354)はそうこぼした。微かな驚きに反応したのは、ハスミンの中に存在する求道者「青色」だ。
「青色」の中には「驚き」の感情しか存在しない。他の感情も存在するのかもしれないが、極めて希薄で、「彼女」の心を揺り動かすのは「驚き」のみだった。
人は、心動かされるものが好きだ。そうでない人間も存在はするが、この世に生きる大半の人間は心動かされるものが好きろう。ハスミンは人間でなく、災厄だが、その点においては人間と変わらない。強者を求める武道の求道者たる青色は、自分に驚きを、心の揺れをもたらしてくれる存在を、求め続けている。
七々手はあらゆる点において驚くべき生命であるが、青色の心を揺らした驚きはすぐに立ち消える。多方向からの銃撃と、ハチェットを叩き込まんとする影があったためだ。
青色は短く息を吐きながら、己が鉄拳でハチェットを受け止める。タイミングを合わせたガードで受け止めた後、無理なく受け流すことで攻撃をいなし、続く二撃目は見切り、より効率的に受け流す。
受け流す所作で、一人の少女の背後を取り、鉄拳を少女の腕に叩き込む。【|主に仕え煌めく八色の武器《ノーウェポン・ノーライフ》】の効果から、使用不能となった少女の腕はだらんと垂れ下がる。が、残ったもう一方の手で、隠し持っていたナイフを一閃。しかしそれも青色にとっては想定の内、あっさりかわされる。
青色は顔色一つ変えることもなく、少女の鳩尾に膝を入れ、沈める。
弱い。彼女らは、彼女らの自覚する通り、弱かった。少なくとも、あらゆる武道を修め、更なる強さを求める青色の心を動かすには至らない。
それでも、只人にとっては脅威である。でなければ彼女らは暗殺で食ってはいけまい。
この先に待つ青肌で継ぎ接ぎのドラゴンプロトコルに、初対面で刃向かおうとすらしないはずだ。
「ぐっ」
決死の表情。涙が滲むほどに歯を食い縛って、重々しいハチェットを振るう少女、あるいはナイフを走らせる少女。己の弱さを自覚しながら、戦うしかない少女。
心は動かされない。けれど、それで目的を蔑ろにするような青色ではない。
襲い来る少女に、容赦なく拳を叩き込む。けれど、決して死に至らしめる一撃は放たず、√能力も【切断】はせず、【使用不能】効果のみを付与していた。
いっそ、殺してくれたら楽なのに、と少女の脳裏によぎる。
けれど、「本当に?」と何者かが問いかけた。
何者かではない。少女自身の心の声だ。
本当に、殺されたいの? 殺されて楽になりたいの? 楽になりたいから戦うの? 何がしたいの?
『何を成したい?』
彼女の耳にも届いていたドラゴンプロトコルの言の葉。反芻される問いは、波紋のように広がっていく。
自分は、何がしたいのか、どうなりたいのか。
助かりたい? 助けてほしい? 死にたくないのは確かだ。|同胞《ドラゴンプロトコル》の命を徒に刈るのに、嫌気が射している。そうまでして生きたくないという思いは燻っている。けれど、だから死にたいと、現実逃避をしたい、というわけではなかった。
なら、自分はどうしたいの? ……明瞭な答えが浮かばない。
ただ、【一人一殺】のための【殺意の喜び】は生まれず、発動はおろか、チャージなんてできようはずもない。
「ワタシはキミを助けられない」
淡々と、青色はそう宣告する。
きっと、冷酷なのだろう。けれど、動かない心で、戦うことはできない。
救おうだとか、言葉をかけて励まそうだとか、驚き以外の感情が欠如した青色には、思うことすら難しい。
「ただ、より強い者と戦いたいだけだ。より強い悪に使われるだけの悪でしかないキミたちと、わざわざ戦おうと思わない。戦う気がないのなら、尚更」
冷酷に思われることを恐れない。恐れるという感情もないから、青色の言葉は、ひたすらに真っ直ぐだ。
「そういう助け方しか、ワタシは知らない」
言い置いて、青色は去った。
戦意のないものをいたぶるような趣味は、求道者にはないのだ。
「私、は……!」
何気ない言葉で、救われた少女の向こう側。まだ答えに向き合えていない少女は、倒れた仲間たちの拳銃をとっかえひっかえしながら、ヘリヤに撃ち込み続けていた。
キン、キン、と硬質な音が響き、ヘリヤの尾が銃弾を弾く。拳銃が二丁になったところで、ただの自動拳銃程度では、銃弾の数はそう変わらない。銃を掃射する人数も減った。
元の姿に戻れば、√能力に頼るまでもなく、銃弾を弾けるし、眼前の哀れな同胞を瞬きの間に殺めることも容易い。
だが、ヘリヤはそうしない。そうする気になれなかった。
(同族がどうのと、そんなものは気にせんと思っていたが……新たな発見もあるものだ。人の生は面白い)
この姿は、不自由だ。少女に与えられるまでもなく、ヘリヤは不自由を体感していた。
それでも、不自由の中でさえ、面白いことはあり、愉快な事象は廻る。
「殺してよ! 逃げたい! でも、逃げるほどの力もないのよ、私には!!」
向こうから、そんな痛哭が空を裂く。
「いいぜ。サービスだ」
聞き届ける声は七々手のものだ。魔手が嬉々として命を終わらせるのを眺めながら、一服する七々手の声。
それもまた、救い。その場しのぎでしかないけれど、「逃げる」という意味では、死も選択肢のうちだ。
けれど。
「お前も、あのように望むか?」
ヘリヤは眼前の少女を見据える。ずっと目を合わせていたからわかる。その目が求めるのは、救いであるが、死ではない。
「……ちがう……でも、たすけ、て……」
震える声で、ようやく口にする。
「甘えるな」
低く冷ややかにも思える言葉で、ヘリヤは告げた。
「雛鳥ですら餌を求めて口を開く。祈るだけで願いを聞き届けてくれるなど甘えでしかない。どうすればできるが分からずとも、どうしたいかは分かるだろう」
戦意を失くした少女にヘリヤはずいと寄る。人と同じ形の手が、その顎を、口を掴んで、引き寄せた。
琥珀の光が、泣き濡れた少女の顔を返す。
「口を開け。想いを口に出せ。まずはそれからだ。言葉にせねば伝わるものも伝わらん。
助けてくれるから助かった、ではない。お前たちの意思を見せろ。お前の思いを言葉という形にして示せ」
「私は……」
くしゃり、と少女の顔が歪む。力が抜け、手から滑り落ちそうだった拳銃が、握り直された。
もう、銃弾も残っていないだろうけれど、暗殺者の彼女がそれを握りしめたということは、彼女にはまだ「意志」が残っているということ。
「生きたい。死にたくない。でも、同胞を殺し続けたくなんかないッ! こんな苦しい思いで、辛い思いで、生き続けたくなんかない。少なくとも! あいつの言いなりなんかで、生きていたくはない!!」
抗えるほど、強くないから、諦めたこと。
それでも、奥底では捨てきれずにいた。言葉にしろ、と言われたからだけれど、言葉にして初めて、泣くほど切実な願いだった、私の「意志」だった、と実感した。
「わかった。それが叶うよう、善処しよう」
同胞を殺したくない。言いなりになりたくない。その言葉が聞けただけでじゅうぶんだ。叶った後の具体的な生きる指針については、ヘリヤが関与すべきことではない。
ひとまずの、願いの障害は明らかだ。
「障害を潰せばいいのだろう?」
「……勝てるの?」
ヘリヤの強さも、この先に待つ『ドラゴンストーカー』の強さも知る少女は問う。
「勝つ。幸いなことに、私以外にも、お前たちを救おうと走る者はいるのだ」
これ以上心強いことのない事実を、ヘリヤは断言し、少女の元を後にした。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【守護する炎】の活用を前提
【阿頼耶識】を状況に応じ発動
【集団戦術】への対策
【制圧射撃】×【弾幕】 を活用し、遠距離から敵全体にプレッシャーをかけ、動きを封じる。
【破壊工作】×【重量攻撃】×【鎧砕き】 を活用し、敵の武器や防具を破壊して戦闘力を削ぐ。
【情報収集】×【地形の利用】 を駆使し、敵の布陣を分析し、最も効果的に制圧できる位置に移動する。
【集団戦術】×【連携攻撃】 を用いて、構成員の隙を突き、一体ずつ確実に無力化する。
【一人一殺】への対策
【阿頼耶識・羅刹】 を使用し無効化する。
【援護射撃】×【牽制射撃】 で狙撃し、動きを封じる。
【鉄壁】×【激痛耐性】×【カウンター】×【受け流し】×【弾道計算】 を組み合わせ、万が一攻撃を受けても致命傷を防ぎつつ即座に反撃。可能なら武器の破壊を狙う。
【マンハント】への対策
【遊撃】×【追跡】 を活かし、敵の動きを封じつつ即座に距離を詰める。
【阿頼耶識・羅刹】 を発動し、射程に入った瞬間に敵の能力を無効化する。
【武器落とし】×【貫通攻撃】×【鎧無視攻撃】 を用いて敵のハンドガンを破壊、戦闘不能に追い込む。
心情
殺し合いではなく、武装を奪い、能力を封じ、戦闘を続行不能にすることで戦いを終わらせます。ただ、救うためには、僕らだけが手を伸ばすのではなく、あなたにも手を伸ばしてもらわなければなりません。
僕があなたを救います。ですから――手を離さないでください。

希望を失った身で、他人に希望を与えることなんてできるかわからない
だけど、手を伸ばすからには半端な覚悟ではやらない
まずは落ち着いて話ができる状況を目指す
ダッシュで踏み込んで、武器落としやマヒ攻撃での無力化を試みて
隙を見て右掌で触れてルートブレイカーを発動し√能力を無効化する
攻撃されたら盾受けで防御するか手で受け止める
傷付いても怯まない、諦めない
話ができるようになったら『どう救われたいか』を聞く
死ぬことで別√に逃れたいなら苦しまないように殺そう
生きたまま別の√に逃れたいなら手を引こう
信じてくれ、と真摯に接することしかできないけど
俺は君達のために全力を尽くそう
※アドリブ、連携歓迎です

※アドリブ、他の方との絡みOK
真竜への回帰ねぇ、わたし達ドラゴンプロトコルにも十人十色な事情があるとは思うけど。
わたしはそこまで回帰したいと思った事はないわね、昔の記憶が殆どないのもあるけど存外この身体
も気に入ってるしね。
気持ちを叫べるって事はまだ戻れるところにいるわね。
従いたくない役目なんて捨て置けば良いと思うけど、あんた達にも事情があるのよね?
助けてあげるわ、あんた達も救われる覚悟をしておきなさい。
【行動】
力の差を見せつける意味でも開幕から正義完遂を使用。
ただしブレスによる攻撃は封印し、物理的な攻撃に留めるものとする。
目的は彼女達を解放させる事、死に至るような攻撃はしない。

あたしもね、この人達みたいな生き方してたかもだから他人事と思えないんだ
力になりたい助けてあげたい
いーよっ!変なストーカーなんかに負けないって証明してあげる!
ちょっと痛いけど我慢してねー!
√能力を発動して高速で斬り込むね
パンチで気絶させたり、ハンマーの柄でなぎ払ったり突いたりして無力化を狙うよ
敵の武器は叩き壊すか竜化した足で蹴り飛ばしー!
攻撃は高速で動き回って回避。集団戦術には竜漿グレネード投げつけて対応
あたしは!つよい!
自分達は許されないなんてどうか諦めないで
過去は消せない。だからこそ生きて奪った命にどう報いるか考えること…それが心の救いだって思うんだ
今度はお姉ちゃん達が、誰かを助けてあげてね
●誰よりも、あなたたちが
誰よりも|疾《はや》く、戦場に駆けつけ、少女たちと戦い続けている少年がいた。
不動院・覚悟(ただそこにある星・h01540)。√ウォーゾーンに生まれ、死屍累々の死地を駆けることが常と言ってよい彼は、それでも「守るため」に戦い続けていた。
倒れている少女は、一人もいない。戦闘が始まってからそれなりの時間が経過し、【集団戦術】によりスクワッドを組む少女たちの人数は、たった一人で相手取るには多すぎる。いくら代償として、反応速度が落ちるとしても、だ。
少女が構えた拳銃を、撃ち落とす。ナイフやハチェット、他にも様々な形状の暗器など、少女たちの装備は多彩で、近接戦闘を挑む者も多い。その者には手甲をつけた拳による強打で武器を弾いたり、叩き落としたり、時には破壊したり。彼女らの肉体を傷つけることはなく、ただ武器のみを破壊し、戦闘不能に追いやっていく。そんな戦い方をしていた。
少女たちが数で押すには、覚悟の【圧滅銃】による【制圧射撃】と【弾幕】が強すぎる。故に、近接戦闘に切り替える者が多くいた。
「お前」
切り込み続けてくる少女の一人が、覚悟にハチェットを叩きつけながら、口を開く。
静かな眼差し。けれど声色には隠しきれない憤怒が滲む。
「私たちを見下しているのか? 強者だからと……武器を壊し、戦闘能力を奪えば、私たちの心がいつか折れると」
ちら、と黒い瞳に炎が揺らめく。
派手な重火器の使用はない。けれど、この戦場に、炎はあった。
覚悟を守護する炎が。
「心が折れれば、抗わないだろう、刃向かわないだろう、と。そう思うから、こんな戦い方をしているのか!?」
「違います」
喜びではなく、怒りのような気もするが、チャージした感情を乗せ、威力18倍となったハチェットを叩きつけようとする少女。炎の加護を受けた覚悟は、右掌で、ハチェットを掴む。物々しい気配を宿していたハチェットは鎮まり、少女の【一人一殺】は不発に終わる。
加護する炎が、覚悟の目の中でも揺らめく。
「僕は、あなたたちを助けたい、救いたいんです」
「殺さなければ、それが成し遂げられると? 違うだろう? 武器を破壊しても、兵器を破壊しても、それを使う人間を殺さなければ、新たな武器を手に取って向かってくるだけだ!」
少女はハチェットを手放し、覚悟に向かって一歩踏み出す。身を屈め、足に忍ばせていた暗器を手にすると、それで覚悟の喉を狙った。
けれど、それを受け流し、かわすと、少女の手の甲を強打し、武器を落とさせる。少女はまだ強打に痺れているだろう手を振り払い、覚悟の頬を打った。
当然、致命傷にはなり得ない攻撃。平手打ちほどの威力もない。打撃というより、少し強めに触れた程度。けれど、少女には確固たる敵意と反撃の意思が存在することが伺える。
泣いている。涙を流していないだけで、声を上げていないだけで。少女は心臓の奥が痙攣しているのではないかと思うほどに心を震わせて、悔しさを噛みしめていた。
「お前ほどの強者が、それを知らないわけがない。このままでは延々、埒が明かないことなんてわかりきっている。それでも私たちを殺さないというのか? 助けたいから? 何故だ!」
ドラゴンストーカーのような|圧倒的強者《レガリアグレイド》として君臨するレベルの者に勝てない少女。圧倒的強者からすれば、取るに足らない弱者かもしれない。
けれど、この人は強いな、と覚悟は確信した。
彼女の他の少女の中には、武器をなくし、歯が立たないことに心が折れ、行き場を失ったようにその場に膝をついている者も散見する。まだ立っている少女は、抗い続ける少女の姿に、どうにか心を奮い立たせているのだろう。
もうただ一人かもしれない、折れない少女は、穏やかですらある覚悟の顔面に、利き手ではないだろう手で、拳を叩きつけようとする。速さのないそれを避けるのは、あまりにも容易だ。受けたところで、威力もないだろう。
多彩な武器を器用に扱うところから、ステゴロ前提の鍛え方はしていないはず。暗殺とは、戦うより、潜伏と隠密を生かした一瞬での決着が主。体力はあるだろうが、持久力に極振りされることはない。【阿頼耶識】で耐久を上昇し、元より長期戦を覚悟して戦闘に臨んでいた覚悟と比べたら、目に見えて体力が減少している。
それでも、この少女から、闘志は消えない。覚悟の√能力によってもたらされた炎と同じく、絶える様子のない焔が、彼女を熱し続けている。
止むことなく。
「あなたこそ、どうしてですか?」
「何がだ?」
「あなたはドラゴンプロトコルじゃない。人間でしょう?」
そう、長く渦中に身を置いていたからわかる。ドラゴンプロトコルだからこそ狙われた少女たちの中には、腕などをドラゴンのものに戻して、失った武器の分の攻撃力を補う者もいた。自分でコントロールするのは難しいようだが……闘志の途絶えない少女は、ずっと、生身の腕のままだ。人間の姿のままだ。肌を鱗が張っていることも、スカートの下に小さな尾を隠していることもない。
ドラゴンプロトコルじゃない者が、ドラゴンプロトコルたちにこうまでして手を貸す理由。想像はできるが、覚悟は彼女自身の口から聞きたかった。
「|人間《ドラゴンプロトコルじゃない》とわかっているなら、お前が助ける謂れもないだろ。殺せばいいじゃない、か!」
覚悟から距離を取り、砕かれて置き去りにされた武器の破片を手に取った少女は投げつける。粉々の破片と、それで傷ついた少女の血が飛び散る。
目眩ましだろう。武器を拾うにも時間がいる。ステゴロは得意ではないだろうが、どのような状況にも対応して戦い続ける知識が少女にはあった。雀の涙ほどしか、効果がなくとも、それは確かに、隙。
「あなたの言葉が聞きたい、あなたの意思が知りたいんです!」
牽制射撃。けれど少女はハチェットと拳銃を拾うことに成功していた。ハチェットは投擲され、拳銃を構えた少女は跳躍。
「知ってどうする! お前が救いたいのはあくまでドラゴンプロトコルだろう!?」
【マンハント】により、一矢報いようとする少女。その利き腕を、誰かの右手が、ぱしりと掴んだ。
|能力が無効化される《ルートブレイカー》。
「俺たちが救いたいのは、ドラゴンプロトコルだけじゃない。あなたたちみんなだよ」
そう口にしたのはクラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)。奇しくも、覚悟と同じく√ウォーゾーンの戦場を知る者。駆け抜けた戦場の数より多くの死者を目にし続け、希望を欠落した少年。
「希望を失った身で、他人に希望を与えることなんてできるかわからない。だけど、手を伸ばすからには半端な覚悟ではやらない」
だから、聞かせてほしい。あなたの望みを。
真摯な眼差しが、二対。
少女は短く、息を吸った。
「私は」
【|黒曜真竜《オブシディアンドラゴン》】が地を鳴らし、闊歩していた。リリンドラ・ガルガレルドヴァリス(ドラゴンプロトコルの|屠竜戦乙女《ドラゴンヴァルキリー》・h03436)である。
|真竜《トゥルードラゴン》への回帰に、リリンドラは興味がなかった。竜だった時代の記憶が希薄なのもあるが、人間に近しいこの体も、存外気に入っているのだ。
(それにしても)
竜の姿で、向かってくる少女たちと対面しながら、リリンドラは思う。
ハンドガンでは竜に歯は立たない。しかも、リリンドラは√能力【|正義完遂《アクソクメツ》】で竜の姿となっている。この姿は、攻撃・回復問わず、外部からの干渉を受けないため、銃だろうが、ハチェットだろうが、攻撃は通らない。
力の差を見せつけるため、この√能力を選んだ。そうすれば、諦めてくれるかもしれないというのもあるが、心を折りたいわけじゃない。死なせたいわけでもない。能力の詳細を知らない少女たちは、攻撃の通る糸口はないか、と体の一部を竜化させて、立ち向かってくる。
まだ自分の気持ちを叫べて、完全には諦めきれていないのなら、彼女たちは戻れる。彼女たちをこちら側に呼ぶためには、こちらも声を届けなければなかった。戦場で生きる者にとっては、強さこそが全て。それなら彼女らに「強き者」であることを示さなければ、言葉は届かないだろう、と。
「そもそも、従いたくない役目なんて捨て置けば良いと思うけど」
「あたしもね、この人達みたいな生き方してたかもだから他人事と思えないんだ。だからね、わかるよ」
リリンドラの一言に応じたのはシアニ・レンツィ(|不完全な竜人《フォルスドラゴン・プロトコル》・h02503)。彼女もドラゴンプロトコルであるが、肌が青いことを除けば、普通の人間の女の子のような見目。
シアニは、リリンドラのように、完全な竜の姿に戻れないことが欠落だった。それでも、竜だった名残で、腕や脚など、一部なら竜化できる|不完全な竜人《フォルスドラゴン》。
ちょうど、対面する彼女らと同じような感じ。だから、何か一つ、ボタンの掛け違いがあれば、シアニは彼女らの位置に立っていたかもしれない。
他人事じゃない。だから、彼女らの気持ちも、なんとなくわかる気がする。きらきらした無垢な目は、|黒曜真竜《リリンドラ》にそう語った。
「だからこそ、力になってあげたい。助けてあげたい」
「同感ね。……あんたたちにも、事情があるのよね?」
『ドラゴンストーカー』はわかりやすい悪だ。正義に生きる|屠竜戦乙女《ドラゴンヴァルキリー》として、アレを許すわけにはいかない。
ただ、それに従う彼女らが完全なる「悪」かというと、違うだろう。誰かの言葉を借りるなら、「より強い悪に使われるだけの悪」だ。
従わざるを得ない理由で、嫌々従っているのなら、正義を名乗る身として、救うべき相手に相当する。
だから、プラズマのブレスは使わず、彼女らの攻撃を払いのけるだけに留めているのだ。
その思いは、シアニも同じ。
不完全であることをコンプレックスには思っていない。種族特徴が目立たないから、人間に溶け込んで生きられる。それはとても良いことだろう。そのまま平和に暮らせるのなら、それに越したことはないのだ。
「あたしたちが助けてあげる! 変なストーカーになんか負けないって証明するよ! ちょっと痛いけど、我慢してね」
天真爛漫にそう告げると、シアニは【|不完全な竜は急に止まれない《フォルス・ドラグアサルト》】で両腕を竜化。武器のハンマーを振るい、突撃してきた少女を薙ぎ払う! 一人が飛べば、人数が多いので、何人か巻き込んで吹き飛んでいく。
少女たちの手から落ちた銃やハチェットは叩き壊す。壊してしまえば、武器を再利用することはできない。リリンドラも、足で踏み潰したりしていた。
そんな中、【殺意の喜び】をチャージし、【一日一殺】のハチェットを繰り出す少女が襲い来る。リリンドラには通らないと気づいたのか、シアニを狙っていた。
それが届く前に、ばさり、とリリンドラが翼を広げる。干渉を受け付けない竜の翼は、人の子の体を弾き飛ばした。
【集団戦術】で数の利を取ろうとする少女たちに、シアニは竜漿グレネードを飛ばす。電撃がバチバチと撒き散らされ、少女たちは動きを封じられる。
トドメを刺したりはしない。助けたいのであって、殺したいのではない。死なせたくないから。
「——私は、あの子たちが、ドラゴンプロトコルが助かれば、それでいい」
静かで、凛として、強くて。けれど、諦めが多分に宿る声がした。シアニとリリンドラが反応する。二人だけでない。二人が相手取っていた暗殺部隊の少女たちも、そちらに顔を向ける。
人間の少女が、瞑目していた。
「彼女たちは種族こそドラゴンプロトコルだけれど、見た目は私と変わらない。人間と同じように、飲んで食べて笑って、必死に生きる子たちだ。なんでそれが苦しい思いをしなきゃいけない? ただ生きてただけなのに、生き方を悔いながら、同胞を殺すなんてしなきゃいけない?」
私はいいんだよ、と人間は語る。そもそも暗殺対象は人間が多い。同胞を殺すのが仕事みたいなもんだ、今更それで喚いたりしない、とばっさり切り捨てる。
だが、ドラゴンプロトコルは違う。√EDENにおいて、彼女らのような世界難民は存在するが、そうごろごろドラゴンプロトコルがいるわけではない。同胞殺しを了解して、暗殺者になったわけではないのだ。
「竜の姿になったりはしないよ、期待してたならごめんね。それでもあなたとおそろいのこの手は嫌いじゃないんだ、なんて言ってた子が、なんで任務でもないことで、理不尽に血や涙を流さなきゃいけない? わけわからん思想を振り撒くイカレポンチに、頭を垂れなきゃいけない? 万一、欠落を取り戻してしまったら、彼女たちは√能力者じゃなくなる。そうしたら、あの継ぎ接ぎ女の一部にされるんだぞ? ふざけるなよ!!」
戦うだけなら、ドラゴンプロトコルを殺すだけなら、|人間《わたし》がいくらでも代われる。どうなったっていい——少女は泣き叫ぶ。
どうしたって、種族は代われない。変われない。どうしようもない。お前らにだって、どうしようもないだろうが、と。
そんな少女の激白に、震えた空気は一度鎮まる。
「救うためには、僕らだけが手を伸ばすのではなく、救いたい相手にも手を伸ばしてもらわなければなりません。それはあなたも同じ」
覚悟がしっかり少女の目を見て語りかける。ゆらりと瞼を持ち上げた少女は、覚悟を見た。
「ドラゴンプロトコルの彼女らを救いたいのなら、一方的に、独りよがりで救おうとするのではいけません。彼女らの声を聞きましょう。……あなたの声は、届いたはずです」
人間の少女が、目を見開いたまま、覚悟の目線に釣られるようにして、仲間たちに目を向ける。
気絶している者もいたし、武器を失って、困り果てたような顔をしているが……まだ希望を失っていない目が、いくつもあった。
「あなたたちは、何を望みますか? 俺たちはあなたたちをどう救ったらいい?」
クラウスがドラゴンプロトコルの少女たちに向かって問いを放つ。うち一人がくしゃりと顔を歪めた。
「生きたいよ!! ねえ、そんなこと言われたら、そんな風に思われてるなら、許されなくたって生きたいよ。死にたくないよ」
「自分達は許されないなんてどうか諦めないで」
シアニが悲痛に叫んだ少女に歩み寄る。その肩をそっと抱いた。
「過去は消えない。だからこそ生きて奪った命にどう報いるか考えること……それが心の救いだって思うんだ」
許されないから諦めるんじゃなくて、これからはお姉ちゃんたちが誰かを救っていってね、と微笑む。
その言葉に、幾分か心が軽くなって、口も軽くなったのか、一人が「馬鹿」と小さくこぼす。その罵倒は、人間の少女に向けられていた。
「馬鹿! 馬鹿馬鹿馬鹿!! 私だって、私だって……! 仲間意識なんて持つ必要はないって教えられたけど、何度も同じ任務に行ったりして、何も思わないなんて無理だったよ! なんで自分はどうなってもいいとか言うの、馬鹿!!」
ずいずいと少女に寄ったドラゴンプロトコルは、ぽかすかと少女の胸元を殴る。人間の少女はぽかんとしていた。
「あの女のこと、イカれてるって思うよ。殺されたあの子たちも、√能力者だから戻ってきたけど、それで理不尽が許せるわけない。でも、私たちじゃ、束になっても太刀打ちできない」
「命令に従うのが嫌なら、ドラゴンプロトコルじゃないあなたに全部背負わせればいい? そんなわけないじゃん!!」
他の少女たちも、人間の少女の元に寄り、中にはえぐえぐと泣きじゃくりながら、思いを吐露していく。
暗殺者という体裁上、強くあらねばと隠してきた心。弱さでもあったそれの中には、大小問わず「仲間」という思いがあり、彼女らが「ひと」であることを示していた。
一種傲慢だった人間の少女の考えに、ドラゴンプロトコルたちはやいのやいのと色々言ったが、行き着いたのは「ありがとう」の一言だった。
「私たちのこと、考えてくれたのは、素直に嬉しい」
だから、とドラゴンプロトコルの少女たちは互いに目配せする。死んだ目をしていた彼女たちは、ただひとつ残った「希望」を見つけられたのだろう。光を目に宿していた。
自分たちの言葉を待ってくれた√能力者たちに告げた。
「あの継ぎ接ぎ女を……『ドラゴンストーカー』を倒してほしい。私たちが死に依って逃げる必要はないんだって、思いたい。あの女も√能力者だから、いつか戻ってはくるだろうけど、殺して。私たちに、逃げる時間をください」
あいつの前に、強い敵がまだいるけど、と少女は口にする。
その言葉を受けて、リリンドラとシアニ、クラウスは頷く。
「助けてあげるわ、あんた達も救われる覚悟をしておきなさい」
「生き延びて、逃げきったら、今度はお姉ちゃんたちが誰かを助けてあげてね」
「きみたちのために、全力を尽くそう」
力強く、誠実な言葉に、明るさを取り戻した少女たちは微笑む。
人間の少女だけが、まだ緊張を宿していた。
「少しだけ、ついていってもいい? 自分がどうなってもいい、なんてもう言わないけど、少しでも、力になりたい。私も救う手助けをできたんだって……思わせてほしい」
「そういうことなら、行きましょう」
覚悟が、人間の少女に手を差し出す。
「彼女たちも、あなたも救います。ですから――手を離さないでください」
手を離さないであげてくださいね。
そろそろと重ねられた手を握り返す。覚悟はうまく笑えないため、微笑みも浮かべられなかったが、彼が負う炎は優しさを灯していた。
それもそうだろう。彼が戦場に放ったのは、焼き尽くし、破壊するための炎ではないのだ。その炎は「守るために戦う」という——闘うという、彼の誓いの表れ。
【守護する炎】だ。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第2章 ボス戦 『クーファ・ジ・インフェルノヴァーミリオン』

POW
|惡化渾淆《イヴィライズド・アマルガム》
命中する限り「【右手の魔剣『ケイオス・サングイス』 】による攻撃→技能攻撃→[右手の魔剣『ケイオス・サングイス』 ]攻撃→技能攻撃」を何度でも繰り返せる。技能攻撃の成功率は技能レベルに依存し、同じ技能は一度しか使えない。
命中する限り「【右手の魔剣『ケイオス・サングイス』 】による攻撃→技能攻撃→[右手の魔剣『ケイオス・サングイス』 ]攻撃→技能攻撃」を何度でも繰り返せる。技能攻撃の成功率は技能レベルに依存し、同じ技能は一度しか使えない。
SPD
|災化汞刃《フェイタライズド・マーキュリー》
【『災化術式』による単属性特攻効果 】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【|狂冥汞吼《ロア・オブ・エレボス》】」が使用可能になる。
【『災化術式』による単属性特攻効果 】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【|狂冥汞吼《ロア・オブ・エレボス》】」が使用可能になる。
WIZ
|堕化蝕銀《ルーインド・クイックシルバー》
自身の【左腕の変異竜漿兵器 】を、視界内の対象1体にのみダメージ2倍+状態異常【四肢の麻痺と発生障害】を付与する【|磔刑の大槍《クルーキフィクサ》】に変形する。
自身の【左腕の変異竜漿兵器 】を、視界内の対象1体にのみダメージ2倍+状態異常【四肢の麻痺と発生障害】を付与する【|磔刑の大槍《クルーキフィクサ》】に変形する。
√EDEN 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●呪われたモノ
「『無限の戦葬』という呪いによって、戦いと死を強制された√能力者が、ダンジョンの最奥の少し手前にいるわ」
シオリと名乗った人間の少女が√能力者たちを案内しながら説明する。
「名前は確か、クーファ・ジ・インフェルノヴァーミリオン。戦いと死を繰り返しているのは、そういう天上界の遺産の呪いらしいわ。
戦うか、死しかないから、戦いには特化している。継ぎ接ぎ女以前に、クーファにも私たちは勝てないでしょうね。……この扉よ」
少女は、扉を示すと、さっと身を引いた。
向こうに、強大な気配がある。異質な力の気配が二つ。一つは最奥のドラゴンストーカーだろう。もう一つが、クーファか。
「生きる理由ができたから、表立っての戦闘は難しいけれど、援護射撃くらいならできる。必要があれば、隠れているから合図を」
合図は石なり瓦礫なりを投げてほしいとのこと。必要に応じ、対応してくれるようだ。
扉が開くと同時、少女は姿を眩ます。暗躍こそが少女の本領である。それに……少女の存在を忘れさせるほどの圧倒的な佇まいで、呪われた存在は立っていた。
すぅ、と赤みのある紫の目が、√能力者たちに向けられる。
「……来たか」
また、戦いの時が。
物々しい武装が持ち上げられる。
「死ぬまで戦ってやろう。どうせ私には、それしかできない。お前たちが死ぬまで、かもしれないが」
呪いで荒んでしまったのか、些か覇気のない眼差し。けれど、殺意だけは明瞭に、突き刺すように放たれる。
前哨戦というには、厳しい戦いが、幕開けた。

※アドリブ歓迎
POW判定
【作戦】
敵の技に対してこちらも連撃系√能力で真っ向勝負する
【√能力】
竜爪、竜翼、竜角、竜尾等の竜部位による攻撃に
空中ダッシュ→受け流し+カウンター→グラップル→鎧無視攻撃→
闘争心+限界突破→竜気属性攻撃を挟んだコンボで
磨いた技能による滑らかな連撃を叩き込む
【心情】
(少女たちに)お前ら、手は出すなよ……
オレの名前はジューンだ、アンタの名は?
(返答後に)
それじゃ、戦いに生きる者同士として一つお手合わせ願おうか!
(戦闘後)
楽しいバトルだったぜ、
アンタが呪いの武具とやらに心が囚われてなかったら良かったんだが
まあ、また会ったら|闘《や》りあおうぜ
そん時はもっと強くなってるからな!
●戦いに生きる者
戦いと死を繰り返す呪いの化身。その確かな強さは、ドラゴンストーカーへの反目を躊躇わなかった暗殺者の少女が、潜伏を迷わずに選ぶほどのもの。
そういうレベルの「見ればわかる」。
そんな強者を前にして、|龍拳《ドラグナー》|格闘者《エアガイツ》たるジューン・シロガネ(白銀の|龍拳《ドラグナー》|格闘者《エアガイツ》・h02449)が黙っていられようはずもない。
いの一番に、前に踊り出て、名乗りを上げる。
「オレの名前はジューンだ、アンタの名は?」
「尖兵の少女に聞かなかったのか?」
シオリたちのことだろう。把握しているようだ。おそらく、シオリがいることにも気づいている。
(出てくんなよ)
心中でそう呟き、ジューンは眼前の戦士に笑いかける。
「やたら長い名前だったからな。間違えてたら悪いだろ?」
「ああ、確かに……。私の名はクーファ・ジ・インフェルノヴァーミリオン。久しく名乗っていなかった。確かに長い名前だからな。名乗るのが億劫なほどに」
「はは! なら改名でもしたらどうだ?」
師匠の名から取り、「ジューン・シロガネ」となった彼女。彼女の場合は欠落として真名を失ったからだが、格闘者として、改名は心機一転のいい契機だ。あれから以前より増して生きるのが楽しくなったジューンは、改名に前向きである。
クーファは軽く目を閉じ、「必要ない」と告げる。
「私の名を覚えて帰る者はないからな。意味がない。お前にも、私にも」
「そうかい。でもオレは覚えて帰るぜ。強いんだろ、アンタ。
戦いに生きる者同士として一つお手合わせ願おうか!」
「……」
応ずる声はなかったが、クーファは右手の|剣《えもの》を構えた。|武に生きる者《エアガイツ》にはそれでじゅうぶん。
クーファの魔剣『ケイオスサングイス』から袈裟斬りが繰り出される。迫り来る凶刃を竜爪を当てていなすジューン。魔剣を手の中でくるりと回したクーファ、【鎧砕き】の重い一撃で龍部位ごと打ち砕こうとするが、ジューンは受け流し、カウンターの拳をクーファの右肩めがけて放つ。
クーファは魔剣を軽く上方に放った。手でジューンの拳を受け止めるも、竜の力は強く、押される。それは見越していたのだろう。押してくる力に抗わず、軽く身を引き、目の端に鈍色を捉えると、手を離し、回し蹴り。それは魔剣を叩きつけるものとなって、連撃が繋がっていく。
魔剣に竜尾を叩きつけて返したジューンは、続いて【空中ダッシュ】による突撃を行い、竜角を伴う頭突きを見舞う。クーファは【ジャストガード】で敢えてぶつかり、普通なら脳震盪でぐらつくであろうタイミングを狙って、魔剣を横一閃。
それを竜爪で鷲掴みにするジューン。そのまま【グラップル】で組み付き、竜爪で脇腹から肩にかけて薙ぐように突き上げ、【鎧無視攻撃】となる足の竜爪を叩きつける。
クーファは短く息をこぼし、左腕の竜漿兵器で受ける。変異型の竜漿兵器がばら、と砕けた。その破片を飛ばすことによってジューンに【弾幕】を張るつもりらしいが、ジューンは竜翼を羽ばたかせ、一掃。【闘争心】のままに【限界突破】した速度で、鳩尾を狙い、続けざまに竜気属性による攻撃でトドメ!
対処が追いつかず、吹き飛ばされるクーファ。鳩尾に全力を食らったため、咳き込む。口元を拭った跡は、微かに赤が見えた。
一部砕けた変異型竜漿兵器を見やる眼差しには、相棒を悼む、というには忌々しげな色が滲む。
望んで呪われたわけではないだろう。望んで負った宿命ではないはずだ。それでも、クーファは築いた経験をここまで武に落とし込んだ。
それが知れただけでも、|格闘者《エアガイツ》として、ジューンは満足だった。
「楽しいバトルだったぜ」
「皮肉か?」
「いーや? ただ、アンタが呪いの武具とやらに心が囚われてなかったら良かったんだが」
望まなかったことにしろ、ここまで技として昇華するような人物なのだ。才能以前に、その気概が活きたのなら、自分はもっと苦戦した。ジューンは拳を交えて、そう感じ取った。
そう、惜しむらくは、クーファを戦いへ誘うのは「呪い」であること。彼女が自ら望んで武を極めたのなら、どれだけ愉しい|武闘《こと》が待っているか。武術を極める者として、想像するだけで胸が躍る。
だから、ジューンは明るく告げた。
「まあ、また会ったら|闘《や》りあおうぜ。そん時はもっと強くなってるからな! クーファ」
また。
当たり前にあるかのように告げられた再会の約束に、呼ばれた名に、クーファの表情が仄かに翳った。
逝く先を憂うように。
🔵🔵🔵 大成功

※アドリブ、他の方との絡みOK
望まなくして守護者になってるのね。
戦いと死しかない、未来。
そんなものに正義はないわ。
此方にも負けられない理由がある、あんた達みたいな被害者をこれ以上増やすわけにはいかないの。
あんたを倒してドラゴンストーカーをぶっ飛ばす、呪いの連鎖は断ち切らせて貰うわよ!
【行動】
√能力正義顕正を使用し、そのリーチを最大限活かしながら戦闘を行うわ。
連携が取れる状況なら連携優先、必要であれば盾になるように。
戦闘後にドラゴンストーカーに全力で宣戦布告をするわ。
自分達の行いが正しいと思ってる奴はだいたい歪んでいる事に気付けないのよ!
あんた達の目的も計画も全部全部、ぶっ壊す!

◆キャラ設定
引き続き、青色
青色は武闘家で求道者、沈着冷静
但し驚きだけは人並みに感じる為、その感情を与えてくれる強者を探す
※仲間への配慮は忘れない
◆青色のスタンス
戦いと死、か
ワタシがその呪いを受けていたら、ああなっていたのかもな
やろうか、死ぬまで。
◆戦闘
ジャストガード・受け流し・見切りに加えカウンター解禁
魔剣と技能による攻撃は脅威そのもの
序盤は守勢で剣技を見る
最奥の奴とはどういう関係だろうか
戦いの中に殺意以外を抱く事はあるか
声で問うか、或いは武器で語り合いたい
強さの割に妙に弱気な様な、空虚故なのか気になる
攻撃手段がある程度見えたら√能力使用
世界の歪みを解いて拳の一撃に託す
◆即興連携・アドリブ歓迎

「おー、かっけぇ武器。何処で手に入んの?」
敵のいる辺りを指定して√能力発動。んでもって憤怒の巨大化した拳で殴りまくってもらう。
拳の弾幕を突破してこっちに来るようなら、他の魔手達の怪力を活かした連携攻撃で迎撃。
敵の攻撃は動きを見切って回避するか、霊的防護も合わせて魔手達で受けて防御するかねー。
上手いこと武器掴めたらそのまま敵を地面に叩きつけるのもあり。
オレが麻痺っても魔手達は止まらんしね。
「さっきよりは楽しそうだ。戦いしかできねぇなら、せめて楽しく殺し合おうぜー。」
●愉快ではない話
「おー、かっけぇ武器。何処で手に入んの?」
「最初はただの竜漿兵器だったさ。……天上界の遺産にでも呪われてみたらどうだ? こうなるぞ」
「はは、なら別にいーや。興味ないし、魔手さんたちで、文字通り手は足りてるし?」
わりと真面目に問答に答えたクーファに、七々手・七々口(堕落魔猫と7本の魔手・h00560)はけらりと笑う。一番手で出たドラゴンプロトコルの格闘家に、左腕の変異竜漿兵器は砕かれていたはずだったが、竜漿兵器の能力か、はたまた戦いを強制する呪いからか、変異竜漿兵器は元の姿を取り戻していた。
クーファが蘇芳の眼差しを七々手に向ける。大きな猫は、くつくつと鼻にかかるような笑い方をする。
「さっきよりは楽しそうだ。戦いしかできねぇなら、せめて楽しく殺し合おうぜー」
それは、戦いの、殺し合いの愉しみを覚えた者の笑みだった。
といっても、攻撃も防御も、やるのは尾から生える七つの魔手たちである。今回は憤怒の魔手だ。
しかし、黙って攻撃を待つようなクーファではない。ゆらりと持ち上がる七つの魔手を見、ある程度のあたりをつけたのだろうクーファは、七々手そのものを叩こうと竜漿兵器を変化させる。
【|磔刑の大槍《クルーキフィクサ》】。対象を刺し、貫き、磔にするための禍々しき牙。昏い色のオーラを纏い、蘇芳の輝きを滲ませたそれは人の血を吸って生きている武器、と言われても、納得できてしまうような代物だ。
大きな獲物には大きな得物で、と思ったのか、怪力で槍を振るうクーファ。呪詛も籠っていそうな一撃を、見切り、回避。大振りの一撃の直後に生まれるどうしようもない硬直。ラッキー、と思いながら、七々手は【憤怒の巨拳】を発動する。
『くたばれ』
シンプルで端的だからこそ、滲んだ怒りの激しさが明瞭な声がした。それを具現するように、炎と【巨大化した憤怒な魔手】がクーファのいる地点を中心に駆け巡る。
縦横無尽な上に、【巨大化した憤怒な魔手】は七倍威力だ。クーファは見切り、受け流し、威力の低い炎は無理に避けず、耐性か何かを活かすことで、凶悪な拳の回避に専念していた。
その中で、【|惡化渾淆《イヴィライズド・アマルガム》】による連撃での対処を披露してみせる。攻撃は最大の防御、とはよく言ったもの。回避に活かせる技能を織り交ぜることによって、300回の攻撃を凌いでみせる。
へー、すご、と七々手が次の手を考え始めたところで、その横合いから勇ましい靴音と共に、ドラゴンプロトコルが一人、姿を現す。
ゴシックロリータのフリルをひらひら揺らし、その碧眼に宿すは義憤。
リリンドラ・ガルガレルドヴァリス(ドラゴンプロトコルの屠竜戦乙女《ドラゴンヴァルキリー》・h03436)、ここにあり。——そう高らかに宣告するような佇まい。
「あなた」
リリンドラが、屠龍大剣をクーファに向ける。
「望まなくして守護者になってるのね。戦いと死しかない、未来。そんなものに正義はないわ」
「わざわざ言われずとも、知っている」
感情が希薄に感じられた蘇芳が、不快の色を宿す。
「これは役目ですらない。宿命というのも、些か大それたことだ。……義務だよ」
そうなってしまったから、そうあるしかない。そう決まっているから、それ以外に道はない。そこには正義も悪もない。
私の生きて逝く道を善悪で区別することすら烏滸がましい。
クーファの一種告解のような言葉に、リリンドラは片眉をぴくりと跳ねさせる。
「義務ですら、本来は正しいことのために行使されるものよ。わざわざ聞く必要はないと思うけど、あなたは戦いと死とかいう呪いの過程で、更に悪しき連鎖に巻き込まれた。後ろにドラゴンストーカーとかいうイカレプロトコルがいるのはわかってんのよ」
かちゃり、と屠龍大剣を構え直し、リリンドラは声高に叫んだ。
「救うって、私は決めた。まとめて救ってやるわ! 私が成す正義でね!!」
その決意に呼応するように【|正義顕正《アクノシュユ》】が行使される。屠龍大剣が真紅の輝きを放つ。
「私のとっておきで相手してあげる」
「いいだろう」
剣には剣で応えるのか、クーファは魔剣を構える。
疾走。変化させたままの魔槍を地面に刺し、身軽な姿でリリンドラに肉薄すると、クーファは魔剣を横一閃に薙ぎ払う。リリンドラは大剣でそれを受け止めた。が、クーファはすかさず喧嘩殺法により、なかなかの足癖の悪さでリリンドラを崩しにかかる。
「ただでやられないわよ!」
それを跳躍して避け、落ちる勢いを乗せて屠龍大剣を振り下ろす! が、クーファは大剣を横合いから魔剣で軽く叩き、僅かに軌道がずれたのを見切って回避、ふわりと広がるリリンドラのスカートめがけて剣を振り抜こうとした。
だが、その刃がリリンドラに届くことはなかった。
ハスミン・スウェルティ(黄昏刑務所・h00354)——その中の武術の求道者「青色」が介入したから。
リリンドラの体を軽く引き、剣の軌道から抜けさせた青色は、リリンドラに振り向くことなく、連撃の止んだクーファの方に歩み寄った。
「戦いと死、か。
ワタシがその呪いを受けていたら、そうなっていたのかもな」
訥々と求道者は語る。呪いという形で「戦い」を与えたなら、青色は果たして「求道者」となり得ただろうか。
クーファはこの連鎖を「義務」と称した。過ぎた義務は必要であっても苦痛にしかならない。静かに吐露された言葉のカタチは、なるほど、彼女の苦しみを象っていたのだろう。
それでも、そうせざるを得なかったとはいえ、クーファはその呪いを、戦いの連鎖を、武術へと昇華させた。——求道者たる青色が、その様子に惹かれぬはずもない。
戦う素質があったのだ、クーファには。彼女にとってみれば、その素質は不運で不幸なものであったかもしれないが、それでも、適性があった。適切な環境でその才を育んだならば、クーファは青色を満たすほどの驚嘆をもたらす存在となっただろう。
その技を、存分に見させてもらった。言うべきことは、七々手とリリンドラが大体言葉にしてくれた。ならば、ワタシは。
青色が、黒洞々たる瞳で、クーファを見据える。
「やろうか、死ぬまで」
真っ直ぐすぎる闘志。苦笑が零れた。
クーファはその呪いの性質上、こういう武闘家とはよく対面することがあったのだ。その誰もが、言葉よりも己の武で語り合うことを望んだ。
それに応える義理はクーファにはないが、そういう在り方が、嫌いではなかった。
だから、応えてしまうのだ。
魔剣を下段に構える。どんな攻撃にも対処しやすい構えだ。
こちらは散々見させてもらったが、そちらはこれから初見で見切らなければならないものな、と青色は目を細める。
「いつでもいい。ワタシが使うのはこの拳のみだ。|災厄のオーラを纏った拳《右ストレート》をお前に決める」
「……そう」
青色が宣言すると、クーファは駆け出す。素早く【世界の歪み】を脱ぎ捨てた青色は、クーファを見失ったことに気づいた。
だが、気配はわかる。無気力で諦念が滲んでいても、戦うときは滲む殺気。呪いだ義務だと忌んでも、戦いをやめられずに滲む闘志。
難儀なことだ。背後からの剣戟を、拳で弾いた青色は思う。
難儀で、驚くべきことだ。こんなにも呪われた宿命を疎む表情を見せながら、クーファは戦いをやめられない。
魅せられてしまっている。
青色は振り向いた。クーファを歓迎するために。——クーファは地面に突き立てていた大槍を足場に利用することで、立体的な攻撃を繰り出そうとしている。
そんな驚くべき宿命と性を併せ持った彼女を正面から迎え入れる。
きっとキミは「そうなってしまった」だけのワタシだ。きっとワタシは「そうならなかった」だけのキミだ。そう言えると思わないか?
そんな問いかけは、口にせずとも届くだろう。きっと、クーファになら。
剣を振り切った直後で隙だらけのクーファの顔面に、災厄のオーラの乗った右ストレートが炸裂する。
√能力【|驚くべき戦闘技術を求めて《ノーサプライズ・ノーライフ》】により、八倍威力となった拳は、面白いくらいにクーファを、足場にした槍ごと吹き飛ばした。
「爽快ね」
見ていたリリンドラが思わずといった様子でそうこぼす。七々手がぴゅ~、と口笛を吹いていた。
「ドラゴンストーカーにもぶち込んでやってほしいものだわ。私も、正義の鉄槌を下すけどね」
青色は答えなかったが、リリンドラは構うことなく、ダンジョンの最奥に向かい、声を上げた。
「どうせ聞いているんでしょう? だからね、言わせてもらうわ、ドラゴンストーカー!!
真竜への回帰云々、あんたたちの結論には微塵も興味がない! 唾棄すべき悪でしかないからよ。あんたたちは正しいと思ってるんでしょうけどねぇ、自分たちの行いが正しいと思ってる奴はだいたい歪んでいる事に気付けないのよ!
もう、あの少女たちや、この戦士みたいな犠牲は出させない。あんたたちの目的も計画も全部全部、ぶっ壊す!」
奥で嗤うのは、鬼か蛇か。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

「どちらかが死ぬまで、全力でやり合おうか」
シオリ達と違って説得の余地は無い
それならば、全力で戦って道を切り開くまでだ
隠密用の布を被ってダッシュで距離を取りながらライフルを構え、弾道計算とスナイパーで狙撃
手足を狙って機動力を削いだり、味方が攻撃する直前に撃って防御や回避を強いて隙を作ったりと援護主体で立ち回るよ
自分が攻撃対象になったら先手必勝で割り込んで攻撃し、身を隠して隠密状態で狙撃を続ける
隠密を見抜かれたら見切りで凌いで、再び先手必勝を挟む隙を探すよ
一人では歯が立たなくても、味方やシオリと共に戦えるなら勝機はある
暗殺者達を解放するためにも、ここで負けてはいられない
※アドリブ、連携歓迎です

【守護する炎】の活用を前提
【阿頼耶識】を状況に応じ発動
【惡化渾淆】への対策
「制圧射撃」×「弾幕」 を活用し、攻撃の連鎖を妨害し行動を制限。
「鎧無視攻撃」×「貫通攻撃」 を組み合わせ、高威力の一撃で撃破を狙う。
「情報収集」×「地形の利用」 を駆使し、戦術的に有利なポジションを確保。
「集団戦術」 を活用し、仲間と連携して敵の動きを封じる。
【災化汞刃】への対策
「援護射撃」「牽制射撃」 を駆使し、移動速度の上昇を抑制。
「鉄壁」「激痛耐性」「受け流し」 で近接攻撃のダメージを最小化。
【阿頼耶識・羅刹】 を発動し無効化。
「重量攻撃」「鎧砕き」 を併用し、防御を突破して致命傷を与える。
「弾道計算」「戦闘知識」 を駆使し、敵の動きを先読みして攻撃を仕掛ける。
【堕化蝕銀】への対策
「遊撃」「追跡」 を活かし、機動力を利用して撹乱。
「2回攻撃」「連携攻撃」 で素早くダメージを蓄積させる。
【阿頼耶識・羅刹】 を発動し効果を無効化。
「重量攻撃」「制圧射撃」 を駆使し、一気に撃破を狙う。
「牽制射撃」「弾幕」 を併用し、敵の反撃の機会を奪う。
シオリさんに援護をお願いし、彼女が狙われた場合には「かばう」
手を離さない約束を守ります。
心情
それが、あなたの選んだ道ですか? 追い詰められた末の諦めでしょうか?敵のため、絶望のために戦うのでもなく、あなたの戦いは、あなた自身が決めるべきです。呪いなんかに負けないで下さい。

わぁ、戦う前なのにビリビリ来る…
ふふふ、でも、シオリ先輩も見守っててくれるし百人力!カッコ悪い戦いは見せられないもんね!
あたし負けないよー!
√能力を発動!
マントを目深に被って迷彩効果を得つつ、増加した速度を活かして1撃入れては離れての繰り返し!視線を散らしながら削っていくよー。
敵の動きは常に見切りで観察しつつ、攻撃は柄で逸らすように弾いてジャストガード。
打ち合う中で隙があれば竜化した足で蹴っ飛ばしてやろうかな。
大技はマントを脱ぎ捨てて距離感を狂わせて回避。
この人もやっぱり無理矢理戦わされてるのかな。
手心なんか加えてる余裕はないんだけど、すっごく強くて戦ってて楽しい人だからちょっと寂しいかも。
●炎よ、どうか
灯っていた。
炎が、灯っていた。灯され続けていた。
佇む戦士たちをただ照らす炎。
否、その炎は、彼らを守るためにある。
炎の灯りに、クーファはその蘇芳を細めた。魔剣と変異竜漿兵器についた気味の悪い目玉たちが、居心地悪そうに忙しなく、ギョロギョロと動く。
忌まわしい、忌まわしい。守るなど、守るための炎など!
声があったなら、そんな怨嗟を撒き散らしたにちがいない。そんな黒さを醸し出すクーファの武器たち。けれど、そんな呪詛に、彼女が呑まれることはない。
そう、この程度、永劫続く呪いに比べれば。
「……あぁ、そうだな」
ナニカに応えるように、クーファが呟く。
「そうだった。私はそのためにここにいるのだった。それ以外の理由では、どこにも行けないのだった」
逝けないのだった。
戦いを、死を。
「誰とも知れぬ誰かが望むままに、私は流転するしかない。廻り続けて、転がり続ける。抗い疲れて、身を任せて……少し、愉しいだなんて|感情《コト》を思い出したが、そうではないのだろう?」
なあ、とクーファが声をかけた先に、少年がいた。
「どちらかが死ぬまで、全力でやり合おうか」
それでお前が報われるのかは知らないけれど、と告げたのはクラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)。希望を失くして、それでも、人を救おうと戦う者。
闘う者。
彼は、黒くて、死神にしては物々しさがないが、戦いや死の残滓が見てとれる。あくまでクーファには、だが……闘い続けてきたのだろうな、ということがわかる。
その通り、クラウスは絶え間なく戦場を駆け続けている。希望を忘れてしまったから、絶望すらわからず、さすらっている。その欠落は呪いにも似ているかもしれなかった。
クラウスは纏う黒布を引き寄せると、クーファを見据えた。
先に戦った少女たち——シオリたちとは違う。クーファは力を持ちながら、わざわざドラゴンストーカーに従う道を選んでいる。つまり、彼女が従う理由は力にない。心ではない。
だから、言葉が通じることはないだろう。——希望を忘れた少年の中に「希望的観測」は存在しなかった。
(それでも、諦めない人はいるよ)
闇に紛れるように、揺らめく守護の炎に溶けて、姿を消しながら、クラウスは心中で語りかけていた。
言葉は通じないと思うから、言わないけれど。俺が希望を失ったからって、他の人が持つ希望を否定する必要はないからね。
距離を取ろうと退いたクラウスと入れ替わるように、また別の少年が現れる。
クーファは【|災化汞刃《フェイタライズド・マーキュリー》】を発動させ、少年に肉薄、左腕の竜漿兵器を槍の姿に変異させ、突き刺そうとする。
だが、少年と距離を詰めきる寸前、クーファの足元で小石が弾けた。
(攻撃ではない。避ける必要は)
思考より速く、クーファは飛び退く。鋭い銃弾の雨が通りすぎた。
(一人、いるな。尖兵の少女か)
眼前の敵、不動院・覚悟(ただそこにある星・h01540)も撃っているし、おそらく姿を消したクラウスも撃っている。接近を防ぐための弾幕、牽制射撃。潜む少女に向かわせないよう、立ち居振る舞っている。
思考をするが、速度を緩めないクーファ。【|狂冥汞吼《ロア・オブ・エレボス》】が使えずとも、『災化術式』による移動速度は顕在。そこから別な技に繋げればいい。戦いを強制され続けてきただけあって、そういう順応は慣れたものだった。
姿が見えずとも、連携が取れている。それは合図を拾っているからだ。先程の小石。小石で大まかな射撃位置と射撃そのものの要請をしているのだろう。小石程度の合図を拾い、正確無比な射撃を行うあたり、ただの弱者と侮ることはできない。小石はダンジョン内ならどこでも手に入るだろう。小石をなくすことはできない。
なら、隠れている狙撃手を討つのが早い。そうクーファが結論づけるのは速かった。が、クーファが動くより速く、青い影がよぎっていく。
重量のあるハンマーが、クーファの左腕の竜漿兵器を一打、すぐさま離れていく。青い影を追おうとするが、空色の残像を残すそれには簡単に追いつけない。
「くーっ、やっぱ近くだともっとびりびりする! でも、シオリ先輩も見守ってくれてるし、百人力。カッコ悪いとこは見せられないもんね」
【|不完全な竜は急に止まれない《フォルス・ドラグアサルト》】で強化された脚で駆け抜けながら、シアニ・レンツィ(|不完全な竜人《フォルスドラゴン・プロトコル》・h02503)は呟く。鼓動がどくどくと、耳の中で暴れるような脈動を繰り返す。
気持ち悪さはない。これは動悸ではなく、胸の高鳴りだ。宣告の通り、カッコ悪いところを見せてはいられない。約束したのだ。シアニと似て、ほとんど人と変わらぬ姿のドラゴンプロトコルたちが逃げられるように、ストーカーを倒すと。
せっかく、自分たちの強さを認め、託してくれたのだ。挫けているヒマなんてない。
マントを目深に被り、その迷彩効果を活かしながら、シアニは脚で攪乱しつつ、ヒットアンドアウェイ。ハンマーによる【重量攻撃】で、ヒットアンドアウェイ戦法でも、一撃にはきちんと重さが伴っている。重さがありつつ、速い。その合間でシアニはクーファの足元付近に小石を投げていた。それを合図にシオリ、覚悟、クラウスが射撃を行う即興連携。
多方向からの射撃で、シオリの位置を特定させず、近接戦闘の間合いに入れず、クーファの√能力の肝となる部分を封じる。
攻勢に移れない、と察したクーファは動きを止めた。
(今!)
シアニは好機と思い、一撃を入れるために走る。クーファはそれを剣で受け流し、薙ぎ払いで、吹き飛ばす。
【|惡化渾淆《イヴィライズド・アマルガム》】の連鎖が始まった。悪夢のようでいて、淡々とした技。魔剣による攻撃に技能攻撃を落とし込むことによって、一撃一撃が洗練され、速くなっていく。
見切りと柄でのジャストガードで凌ぎつつ、下がろうとするシアニへクーファが2回攻撃で追い縋る。
ばさり、とシアニがマントを大きく翻した。軽い目眩ましだが、その一瞬を衝いて、現れたクラウスがハンドアックスを振り下ろす!
クラウスのハンドアックスを無視することができず、クーファはむ、と唸り、変異竜漿兵器で受ける。振り返ったときにはもうクラウスの姿はない。
【|惡化渾淆《イヴィライズド・アマルガム》】は止まってしまった。シアニの一撃を受け、すがろうとするも、速度に追いつけない。
クラウスも【先手必勝】による隠密効果が高く、姿を捉えられない。銃弾の雨に晒され、ヒットアンドアウェイで蓄積されていくダメージ。一発逆転できるほどの奥の手も、クーファには残されていなかった。
それでも、戦い続けなければならない。
クーファは現状で唯一動きを捉えられる覚悟を標的と定め、迫る。覚悟は逃げる様子がない。【|災化汞刃《フェイタライズド・マーキュリー》】で速度を上げ、一か八か、【|狂冥汞吼《ロア・オブ・エレボス》】。
「私は戦い続ける。死ぬまで、死んでも」
「それが、あなたの選んだ道ですか?」
覚悟は【|狂冥汞吼《ロア・オブ・エレボス》】のタイミングで一歩踏み込むと、クーファの腕を掴んだ。
右手から迸る不可視の炎。√能力を無効化する最強だけれど、絶対的ではない力。
【阿頼耶識・羅刹】と覚悟は呼んでいる。
「選んでなどいない」
「なら、諦めですか? 選択肢がないから、と」
「ああ」
腕を掴まれたままでは、√能力が無効化され、発動もままならない。戦うためだけのクーファの能力は、肉体と紐付いている。
手を離してほしかった。
クーファは変異竜漿兵器で覚悟を払おうとしたが、√能力でもない攻撃は、【守護する炎】によって高められた技能による防御の前には無意味に等しい。
「呪いでそう定められたから戦う。戦うしかできない。諦めているよ。ドラゴンストーカーに、『このダンジョンの遺産なら、お前の呪いを打ち消せるかもしれない』と言われたが、どうだかな」
うまくはいかないだろう、お前のこのてのひらのようにはいかない。
掴まれた右手を持ち上げ、クーファは苦笑する。
「そこまで諦めを自覚して、どうしてその甘言に乗ったのですか?」
「さてな」
「諦めきれていないんでしょう?」
覚悟からの視線に、クーファは目を逸らす。
「戦い続けながら、呪いが解ける可能性をあなたはまだ探している。だからここにいるというのなら、あなたは惰性や他人のためで戦うのではなく、あなた自身の意思で戦うべきです」
「侮るなよ。諭されなければならないほど、私は自分が間違っているとは思っていない」
左腕の変異竜漿兵器を振るい、覚悟を振り払う。振り払うことに成功したが、現れたクラウスのハンドアックスには対応できず、それに続いたシアニの蹴りももろに食らってしまう。
立て直そうと体を起こすも、どこからか放たれる射撃により、身動きを制限される。
畳み掛けるように、覚悟も圧滅銃での制圧射撃を行いながら、滅巨鋼刃の重量攻撃で、クーファとの戦いに終幕を下ろす。
クーファは一瞬、反撃しようと反応したはずだったが、瞑目し、抵抗することなく、攻撃を受け入れた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

そうか。
私には手は不要だ。下がっているか、他の√能力者に手を貸すといい。
お前も道を選べなかった者か。
知らん世界に飛ばされ、殺す以外に生きる術がなくなる。
呪いを受け、ダンジョンの奥で戦いと死を繰り返す他なくなる。
与えられた道を甘受している……という点においては私も同じかもしれんな。
魔導機巧剣『竜翼』と魔導機巧斧『竜吼』を手に戦闘。
√能力を使用し、敵の魔剣と技能の連撃に対してこちらも剣と斧、そして技能の連撃で対抗する。
剣の攻撃→「怪力」任せの斧の一撃→剣の攻撃→魔剣の太刀筋を「見切り」、弾くように斧を振るう→剣での攻撃→素早く剣を切り返す「2回攻撃」→斧の攻撃→剣を上段から叩きつけるように振り下ろす「重量攻撃」と繋げて人の技で断ち切ろう。
この一撃、防いでみせろ!
私も今や竜の道からは外れているが……ままならぬ人の暮らしも不便さも悪くないと考えている。
運がよかったといえばそれまでだが……己のゆく道を嫌う者には負けん。
●廻って、転って、回り疲れて
忌まわしき魔剣『ケイオス・サングイス』を支えに、立ち上がるクーファ。その前に歩を進めたのは人の姿に堕とされた竜。
人々に恐れられた過去は伝承となり、形なき言葉は彼女の力になりはしない。力も記憶も、寝床すらなくし、人の子らと同じく、冒険者として食い繋ぐしか手立てがなくなり、ダンジョン攻略に日々明け暮れるヘリヤ・ブラックダイヤ(元・壊滅の黒竜・h02493)は、その静かな眼差しをクーファに注いでいた。
「お前も道を選べなかった者か」
訥々と告げる。クーファは「お前、も?」と問い返した。ヘリヤは仄かに苦笑を灯す。
ドラゴンプロトコル——何らかの理由により、真竜としての姿から、人の姿に堕とされた種族。その「何らかの理由」はドラゴンプロトコルによって様々だろうが、不明瞭である場合が多い。少なくとも、ヘリヤは、何故堕ちたかを知らなかった。
「与えられた道を甘受している……という点においては私も同じかもしれんな」
だが、ヘリヤは姿こそ失えど、竜としての誇りまで失ったわけではない。両の手にはそれぞれ魔導機巧剣『竜翼』と魔導機巧斧『竜吼』が握られ、黄褐色の目には闘志が宿っている。
そうだったな、とクーファはその蘇芳を伏せた。ケイオス・サングイスを手に取り、構え直す。変異竜漿兵器の損壊は既に元通りとなっていた。
そうだった。私にかけられた呪いは「戦いと死」を繰り返すもの。私はまだ死んでいない。死んでいないのなら、戦い続けなければならない。この|宿命《のろい》からは逃れられない。
暗殺部隊の少女たちは「逃げられる」という点においては、クーファより幸いだと言える。一時的な手段と言えど、死が逃避の手段として作用するのだ。クーファは死すら呪いの一環。逃げる術はない。
逃げられないのなら、受け入れるしかない。そう諦めている。
確かに、呪いの過程で手に入れた戦闘技巧を使いこなすのは楽しい。が、永劫繰り返される戦いと死の宿命を思えば、それは一時しのぎの慰めにしかならない。雀の涙にすら、なるかどうか。
「どうせ死ぬのだ。一人くらい道連れてやらねばな」
「やってみるといい」
クーファとヘリヤが、同時に剣を振るった。繰り出されるのは【|惡化渾淆《イヴィライズド・アマルガム》】と【|竜爪刃《ドラゴンクロウ・エッジ》】。奇しくも同じ系統の√能力だ。
魔導機巧剣『竜翼』とケイオス・サングイスがぶつかる。ヘリヤは魔導機巧斧『竜吼』に怪力を乗せて振るい、クーファの脇腹に一撃を入れる。痛烈な一撃に顔を歪めつつ、クーファは気合いで拳を入れ、ヘリヤから離れる。
が、拳の威力はヘリヤの肩を軽く叩いた程度。ヘリヤはすぐさま距離を詰め、再び『竜翼』を一閃。僅かな合間に耐性を整えたクーファはケイオス・サングイスでのカウンターを試みるが、その動きは見切られ、『竜吼』に弾かれる。
両腕を広げる形となったクーファに、ヘリヤは『竜翼』を振るい、素早く切り返して二回攻撃、反撃を許さぬとばかりに『竜吼』を叩き込む。
クーファは斧の一撃に合わせて後ろに飛び、ダメージを軽減するが、度重なる戦闘、疲労と負傷の蓄積は、一撃をいなしたところでなくならない。態勢を整えるには至らず、肉薄するヘリヤの『竜翼』が上段から降り注ぐのに、変異竜漿兵器のついた左腕を持ち上げるしかできない。
重量の乗った一撃が、変異竜漿兵器を粉砕し、クーファの左腕を軋ませる。切り裂くというよりは、押し潰すような一撃に、クーファはもはや抗う気力すら生まれなかった。
ああ、死ぬ。静かに思った。クーファは√能力者だ。死んでも、やがて肉体はどこかの√で再構築される。そうしたら、また戦いと死だ。ぐるぐると、天上界の遺産の呪いと√能力者のさだめが巡り、廻らせる。
中途半端に諦めきれないままでいるから、どうしようもなく苦しいのだ。肉体だけでなく、心ごと死んだらいいのに、とクーファは思う。死のたびに、そう思っているような気がする。
疲れた。疲れたのだ。逃げられないのは知っている。やめられないのも知っている。だから諦めたつもりでいたのだ。なんで、どうして。
諦念に満ちたやるせなさ。クーファの目に宿ったそれを見下ろしつつ、ヘリヤは述べる。
「私も今や竜の道からは外れているが……ままならぬ人の暮らしも不便さも悪くないと考えている。運がよかったといえばそれまでだが……己のゆく道を嫌う者には負けん」
他の者たちと戦うクーファを見ていた。クーファは呪いへの忌避を持ちつつも、戦いを愉しんでいる場面があった。それなら「愉しい」とだけ、思っていればよかったのだ。
愉しいとだけ、思っていられたなら、どれだけ楽だっただろう。
それができない、そんな複雑怪奇な心の有り様もまた、人間らしさであった。難儀なことだ。
「……あぁ、あなたが、あなたたちが、強かった。私が弱かった。それだけの結末だ」
そう紡いで、クーファはその蘇芳を閉ざした。
瞼が再び開くことはなく、その体はほどなくして、どこかの√で再構築されるために消えた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』』

POW
竜骸合身の儀
自身の【身体部位一つ】を、視界内の対象1体にのみダメージ2倍+状態異常【竜化暴走】を付与する【竜化部位】に変形する。
自身の【身体部位一つ】を、視界内の対象1体にのみダメージ2倍+状態異常【竜化暴走】を付与する【竜化部位】に変形する。
SPD
竜骸蒐集
【大剣】が命中した部位を切断するか、レベル分間使用不能にする。また、切断された部位を食べた者は負傷が回復する。
【大剣】が命中した部位を切断するか、レベル分間使用不能にする。また、切断された部位を食べた者は負傷が回復する。
WIZ
真竜降臨の儀
インビジブルの群れ(どこにでもいる)に自身を喰わせ死亡すると、無敵獣【真竜(トゥルードラゴン)】が出現する。攻撃・回復問わず外部からのあらゆる干渉を完全無効化し、自身が生前に指定した敵を【灼熱のブレス】で遠距離攻撃するが、動きは鈍い。
インビジブルの群れ(どこにでもいる)に自身を喰わせ死亡すると、無敵獣【真竜(トゥルードラゴン)】が出現する。攻撃・回復問わず外部からのあらゆる干渉を完全無効化し、自身が生前に指定した敵を【灼熱のブレス】で遠距離攻撃するが、動きは鈍い。
√ドラゴンファンタジー 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●継ぎ接いだ向こうに楽園はあるのか
「戦いと死を繰り返す凄腕の戦士、と聞いていましたが、所詮は人間。この程度ですか。また呪いの連鎖に戻っていったのであれば、いい気味だ」
青い肌。その上をいくつもの接合痕が這う。女性にとって傷跡は恥とされる場合が多いようだが、さながら「ドラゴンプロトコルのデッドマン」といった出で立ちの女は、縫合痕を誇らしくすら思っているようだ。
隠すことなく晒された肌、縫い跡を軽くなぞると、女は、『喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』』は、うっそりと笑う。
嗤う。
「ああ、偉大なるドラゴンプロトコルの皆様……わざわざ皆様の方からいらしてくださるとは、幸甚の極みにございます。歓迎致しますよ」
まるで、慈母でも気取るかのように、優しく、愛おしさに溢れた笑みをこぼすドラゴンストーカー。ドラゴンプロトコル以外の種族が目に入ると、その視線は零下の冷たさを宿すが、それでも彼女は「親愛なる」ドラゴンプロトコルへの敬意を優先する。
「尖兵となってくださったドラゴンプロトコルの少女たちを逃がしてしまったようですが……何がお気に召さなかったのでしょう。わたくしは、あなた様方のために、方法を見出だしているというのに」
女は不服そうに唇を尖らせ、悩ましげに眉根を寄せる。
「まあ、しかし、まだ成し遂げられていないことを信じるのは難しいこと。あなた様方から、快く協力を得られるよう、努めて参ります」
恭しく一礼し、√能力者一同を見渡す。√能力者たちから放たれる、嫌悪や呆れの籠った視線。ドラゴンプロトコルからまで向けられるそれに、彼女は小首を傾げた。
「本当に、何がご不満なのやら……力ある元の気高き姿と強さを取り戻す、というお話ですのに……人間どもの間で、恐れられ、称えられ、語り継がれているあなた様方の『永遠』が、『栄光』が、その手に正しく戻るよう、わたくしは祈っているのです」
そしてそれこそが『喰竜教団』の指針、とドラゴンストーカーは宣った。
「帰りたい、と思ったことはございませんか? 還りたい、と願ったことは? √能力者としてお集まりの皆様です。何かしらの欠落に身を焦がしておられるはず。ドラゴンプロトコルならば、その多くが真竜への回帰により、埋められるはずなのです」
甘言。おそらく、クーファもこのように誘ったのだろう。「その|欠落《のろい》から解放されたくはないか?」——それは最も甘く、致命的な美辞麗句。
あらゆるものと秤にかけることを促す。
されど、我が胸の誇りは。私が私を誇れる所以は。胸を張って生きていく理由は。
お前なぞにわかるものか。
「……そうですか。わかってくださらないのでしたら、仕方がありません。降りかかる火の粉は払います。あなた様方であっても」
どうか、わたくしの導となる教えが、いつかあなた様方を導きますように。
ぼう、とその赤金に陶酔が灯る。それを信仰だと、教祖である彼女は宣う。
ドラゴンストーカーを捉えつつ、狙撃による援護の態勢を取るシオリがぽつり、呟いた。
「そのための|犠牲《いけにえ》になんか、させない」
|あの子《ドラゴンプロトコル》たちを。
●マスターより
引き続き、シオリからの援護を受けられますが、プレイングボーナスが関わるものではございませんので、言及なくともかまいません。
皆様の心の籠った熱いプレイングをお待ちしております。

「ねぇ、最初に継ぎ接ぎしたのは誰だったの?」
ああ、忘れる前に聞いとこっと。
√能力で鴉ちゃん達を召喚。
敵の√能力を妨害する為に、敵を喰らおうとするインビジブルを片っ端からオレの宝物庫に転送してもらう。
転送作業と同時に、黄金に変える権能で敵を攻撃。完全に黄金に変えるのは無理でも多少は動きは鈍くなるだろ。たぶん。
鴉ちゃん達が狙われない様に、魔手達には全力でぶん殴っといてもらうかねー。
武器受けと霊的防護による防御と、動き見切っての怪力を駆使した2回攻撃で連携攻撃な感じで。
もし真竜になっちまったら、ブレスの切れ目に敵の口目掛けて突っ込んで、腹ん中で暴れてやる。
外部がダメなら内部はどうだーの精神で行こう。

「御託は結構だよ」
何を言おうとこいつはドラゴンプロトコル達を殺すことを止めないだろう
俺だって、何を言われようとドラゴンプロトコルを守ることを止めるつもりは無い
故に、問答は無意味だ
ダッシュで大剣の範囲外に逃れながら弾道計算+スナイパーで狙撃
敵が味方を攻撃するタイミングに合わせての射撃で狙いを狂わせたり、味方の攻撃に合わせて牽制して当てやすくするなど味方との連携を意識
自分が狙われたら√能力先手必勝で割り込み
斧で攻撃してから身を隠し、また射撃での援護を続ける
ここで死んだところで、こいつはこの活動を止めないんだろうけど
何度蘇えられても、何度だって止めるつもりだよ
※アドリブ、連携歓迎です

※アドリブ、他の方との絡みOK
色んな事情があるわよね、それこそドラゴンプロトコルの数だけ。
あんたに利用されていた彼女達の事情も理解できたわ、都合よく使ってくれたみたいね?
そもそもわたしが気に入らないのは他者の事情を勝手に不幸と断定して救済の名目で好き勝手しているあんた達の傲慢な思想と行動そのものよ!
今からあんたが戦うのは欠落を抱えてようと前を向き続けている正義そのもの、それはとても尊いものでもあるわ。
その目と心に刻み込んでおきなさい!
【行動】
正義真眼を使用し技能のみで戦うわ。
今回に関してはシオリの援護を受けたいので、適宜支援の合図を送るわね
戦闘後シオリにオススメのスイーツがないか聞いてみるわ!
●赦されざれ
「あ、忘れる前に聞いとこっと」
任務の内容もあってか、ドラゴンプロトコルが多く、ドラゴンストーカーに対しての強い嫌悪や忌避が漂い、緊張が高まり続ける戦場で、七々手・七々口(堕落魔猫と7本の魔手・h00560)のその声はどこかのんびりして感じられた。
ドラゴンプロトコル以外眼中にない様子だったが、自分への質問だろうか、と七々手に目を向けるドラゴンストーカー。七々手は軽く首を傾げ、縫合痕をなぞるように眺めてから、口にする。
「ねぇ、最初に継ぎ接ぎしたのは誰だったの?」
「よくぞ聞いてくれました。あの方はとても敬虔な御方でした。下等なる人間どもたちも招き、祈りの場として教会を運営していた方でした。その教会にはドラゴンプロトコルも訪れており、何故人の姿に堕とされたか、回帰することはできるかなど、様々な不安を打ち明ける者が多かったです。あの方は、それらに真摯に向き合っていらした」
当時、わたくしの中でぼんやりとしていた思想を、今の形まで導いてくださった恩人です。忘れようものですか。……なぞと宣う。
「その御方は仰いました。『竜として、個としての強さをわたくしたちは失ってしまいました。けれど、世界から抹消されず、存在を赦されている。それなら、わたくしたちは個としてではなく、一人一人が繋がり合って、一つの大きな力となっていくべきです』と。
素晴らしいお考えに、当時のわたくし、感動に打ち震え、嗚咽が止まりませんでした。わたくしも、ドラゴンプロトコルというこの身に悩み苦しんでいた。それをあの方の言葉が、救ってくださったのです。
このご恩に報いるには、誰よりもまず、あなた様を救わねば——と、わたくしはあの御方を殺し、わたくしの体に継ぎ足しました」
ぞっ……と風とも形容できぬナニカが通り抜ける。
冷えた空間の中、ドラゴンストーカーが徐に大剣を持ち上げた。がちん、と金属同士がぶつかり合う音がした。
「御託は結構だよ」
「わたくしはお前の意見など聞いていない」
短く言い捨てたクラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)に、ドラゴンストーカーは零下の視線を送る。
ドラゴンプロトコル以外の存在を見下しているのだろう。まだ会ったばかりだが、言葉の端々から、あからさまさが見てとれる。
「聞いてくれなくて結構だ。俺もお前の言葉をこれ以上聞く気はない」
お互い様だ、とだけ残すと、クラウスの姿が眩み、捉えられなくなる。√能力【先手必勝】による、一撃後の隠密。精度の高いそれを捉えるのは難しい。
言いたいことだけ言って消えるなど、生意気だ。ドラゴンストーカーは自分のことは棚に上げ、心中でごちると、大剣を構えた。
「色んな事情があるわよね、それこそドラゴンプロトコルの数だけ。あんたに利用された彼女たちの話や、あんたが今語った最初の犠牲者の話を聞いて、改めて実感したわ」
リリンドラ・ガルガレルドヴァリス(ドラゴンプロトコルの屠竜戦乙女《ドラゴンヴァルキリー》・h03436)が、憤然とした様子で、つかつかとドラゴンストーカーの前に歩み出る。その手にはドラゴンストーカーのそれと比べても見劣りせぬほどの大剣。
屠竜大剣。それは、竜を討つための剣だ。
「救わねばとか言うけどさ、最初に継ぎ足したっていうそのドラゴンプロトコルは、本当に不幸だったわけ? ドラゴンプロトコルであることを不幸や不安と思うやつらがいるって事情もわかるけど、その人はそういう人たちの不安に寄り添い、導いていただけ。その人たちが前を向けるように『自分はこう考えて、前を向いているんだ』って教えていただけよね? どうして、人に手を差し伸べて、支えようとする心ある人を『不幸だ』って決めつけられるの?」
「あの方もドラゴンプロトコルでした。表に出さずとも、不安はあったでしょう。神という虚像にすがらねばならぬほどに。それが不幸でなくして、なんだというのです?」
「~~~っ!! あんたのね! そういう考えがね、わたしは気に食わないのよ!! 勝手に不幸と断定して救済の名目で好き勝手しているあんた達の傲慢な思想と行動が!!」
ガン、と屠竜大剣を床に打ち付けるリリンドラ。軽く突いただけで、床には軽い亀裂が生じる。
ドラゴンストーカーが話したそれが、本当に最初だったか、本当にあった話かを特定する術はない。だが、大切なのは事実云々より、そこから見えたドラゴンストーカーの考え方だ。
垣間見えた思想。その歪み具合を、言い逃れのしようがないくらいの悪を、正義に生きるドラゴンプロトコルは許せなかった。
だからね、とリリンドラは、大剣を持ち上げる。
「わたしはあんたを討つ。今からあんたが戦うのは欠落を抱えてようと前を向き続けている正義そのもの、それはとても尊いものでもあるわ。
その目と心に刻み込んでおきなさい!」
屠竜大剣が、正しくその名に基づく役割を果たそうとしていた。悪なる竜を屠る剣として。
リリンドラの口上から、戦いが動き出す。ドラゴンストーカーが発動したのは【全ての√能力】だった。
「いきなり豪勢なこって。鴉さんや」
七々手が【|強欲の眷属《グリード・レフト》】で黄金の鴉を呼び出す。その命令を汲んだ鴉が拐うのは、ドラゴンストーカーの命を啄まんと集結したインビジブルたち。
インビジブルに喰われなければ、【|真竜《トゥルードラゴン》】を呼び出すことはできない。インビジブルはどこにでもいて、それなりの数がいる。が、それは無尽蔵ではないし、手に負えないほどの数でもない。いてもせいぜい、百といくらかだ。
それなら、召喚された黄金の鴉で、七々手の宝物庫への転送をし続ければ、やがて尽きる。23体いるのだ。それにインビジブルは統率されていないし、知能もない。捕まえるのは簡単。
インビジブルが消え、視界が拓けると、地面にいくつか石が弾ける。間を置かず、銃弾がドラゴンストーカー目掛けて放たれた。牽制のためではあるが、肩や首筋など、急所に近い場所を狙っており、殺意が伺える。
(さっきの人間と尖兵の小娘か)
「余所見!」
七々手の魔手がドラゴンストーカーを殴る。大振りで独特なバランスの一撃の隙間を縫い、左目を燃え上がらせたリリンドラが屠竜大剣を叩きつけた。
重量の乗った一撃がドラゴンストーカーの腹部を強打する。追い込むように反対側から、七々手の魔手が怪力による強打。崩れそうになるのを踏ん張るドラゴンストーカーの足付近で小石がこつん、と弾けた。
正確無比の狙撃が、ドラゴンストーカーのふくらはぎを射抜く。
「くっ、インビジブルは……!?」
|真竜《トゥルードラゴン》召喚のために引き寄せていたはずのインビジブル。妨害はあれど、一匹も来ないのはおかしい、とドラゴンストーカーは首を巡らせた。
確かに、全てのインビジブルを七々手が呼んだ黄金の鴉たちは宝物庫に送れたわけではない。が、干渉の取っ掛かりさえできれば、【インビジブル制御】の技能で、行動を抑えることができた。
ドラゴンストーカーの焦燥を逆撫でするように、心臓目掛けた銃弾が飛ぶ。
しかし、それは大剣によって弾かれ、ドラゴンストーカーは銃弾の飛来した方へぬらりと振り返る。
「わたくしから逃げ出すことすら自分ではできなかったくせに、生意気な」
「行かせない」
クラウスのバトルアックスが走る。シオリとはほぼ反対方向からの射撃を行っていたため、背後から頭を強打することに成功する。
「ぐあっ、おのれ!」
「余所見すんじゃないわよ!!」
クラウスに振り向こうとするドラゴンストーカーに、リリンドラの啖呵が飛ぶ。クラウスは√能力で姿を隠しており、リリンドラに応じるには、中途半端な姿勢となった。
「逃げられなかった? 逃げなかったのよ!」
ドラゴンプロトコルの少女を思いやり続けた人間、シオリの思いを知るリリンドラは、まず一撃、拳による重量攻撃をドラゴンストーカーの脇腹に刺す。
ドラゴンストーカーは【竜骸合身の儀】で変化させた竜化した左腕を、リリンドラに叩きつけようとするが、七々手の魔手と黄金の鴉がそれを妨害する。標的を一人に定める制限のある√能力のため、七々手に作用させられない。
「立派なことじゃない。確かに、抗うほどの力がなくて、諦めかけていたけど、シオリたちは諦めきってはいなかった! それはあんたが、勝てるかどうか関係なく、打ち倒すべき悪だからよ!!」
燃えるリリンドラの左目、【|正義真眼《アクノキョウチョウ》】には見えている。ドラゴンストーカーの隙も、仲間の配置も、どこに石を投げれば、効果的に合図が送れるかも。
振り切った拳を開き、小石を落とす。リリンドラは正義の屠竜大剣を握り直し、続けざまの【二回攻撃】へ。
七々手の鴉たちが目潰しをし、身動きが取れなくなるドラゴンストーカー。凶刃が、意志が、叩き込まれる。
「お前が何度、蘇っても、俺たちはお前を止めるよ」
クラウスが崩れ落ちたドラゴンストーカーへ、トドメのように拳銃を撃ち放った。
「シオリ、後で√EDENのおすすめスイーツでも教えてよ! 終わったら食べに行きましょ」
勇ましかったリリンドラが、年相応の天真爛漫な声をかける。わたしは最近、りんご飴にはまってるの、ああ、お祭りに行くのもいいわね、なんて。
未来の約束をしたい。
それを果たすために、強くありたい。
生きて、叶えることに意味があるのだ。骸になんて、なってやるものか。
お前の、継ぎ接ぎになんて。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

※アドリブ歓迎
POW判定
【作戦】
相手を挑発してからもろ肌脱ぎになって攻撃を誘い、
寄ってきた所を「受け流し、カウンター」で攻撃を弾いて掴み
正面から【龍巻落至】で決める
【心情】
オレはなぁ、昔ダンジョンを占領して
全てを真竜の姿で潰して回って存在を高めようとしてた
だがある日、√能力者ですら無い武芸者に
竜漿が尽きるまで逃げ回られ負けて思ったんだ
なんて下らないことをしてたんだろうって
それからは失くした力に拘らず、竜人として武芸の技を磨こうとしてる
どうだ、アンタからすればオレは唾棄すべき相手なんじゃないか?
オレも『喰竜教団』なんざぁクソだって思ってるんだ
だからテメェをぶん殴ってその活動を止めさせてやらァっ!
●真なるもの
強さとは何か。
真竜が正義か? 絶対的か?
真竜であらねば、強くなれないなんて、誰が決めたのだ? 誰が言ったのだ?
「なあ、アンタ」
血を流しながら、諦め悪く立ち上がるドラゴンストーカーに向け、言葉を投げかけたのはジューン・シロガネ(白銀の|龍拳《ドラグナー》|格闘者《エアガイツ》・h02449)。
「随分と真竜のことを買っているようだが……一つ、聞かせてやろうか。オレが真竜の姿で、ダンジョンを占領していた頃の話だ」
油断のない佇まいであるものの、ジューンの目には懐かしむ色が宿る。それは忘れられない邂逅の記憶だ。
「真竜の姿で、モンスターも、冒険者も潰して回って、全てを圧倒することで、自分の存在を高めていた」
「在るべき姿でございましょう」
ドラゴンストーカーがほんのりと目に陶酔の色を宿し、立ち上がる。それを見返すジューンの金瞳には、ほろ苦さが滲んでいた。
苦さの向こうには、確かな誓いの光がある。
「在るべき姿、か。あの頃のオレも、そう思ってたよ。真竜であるオレは強い。強いヤツは弱いヤツを蹂躙して、虐げて、ただ糧として、その強さを誇りとし、ふんぞり返っていればいいって。
だがある日、√能力者ですら無い武芸者に竜漿が尽きるまで逃げ回られて、負けた。目の覚めるような心地だったよ。オレはそれまでの自分を省みて、思ったんだ。なんて下らないことをしてたんだろうって」
「な……」
愕然とするドラゴンストーカー。それを嘲っているわけではないが、ジューンは笑った。からからとしたその笑い声は、からりとした晴れ空のように朗らかで心地よい。
回顧するたび、身の引き締まる思いがする。敗北の味は苦かったけれど、それもまたよし、と笑えるのだ。大切なことに気づいて、闇雲に求めるだけで、輪郭も知らなかった強さの形を知った。だから、ジューンはもっと強くなれると信じ、武芸を磨いた。
それが|龍拳《ドラグナー》|格闘者《エアガイツ》という今の姿だ。
「それからは失くした力に拘らず、竜人として武芸の技を磨こうとしてる……どうだ、アンタからすればオレは唾棄すべき相手なんじゃないか?」
「唾棄だなんてとんでもない! ですが、理解に苦しみます。真竜の姿に、拘らないなど」
「だろうな。オレも理解できねえわ。『喰竜教団』もアンタも、はっきり言ってクソだ。だからテメェをぶん殴ってその活動を止めさせてやらァっ!」
高らかな宣戦布告と共に、ジューンは着衣を脱ぎ捨て、ドラゴンストーカーに挑戦的な笑みを向けた。
「理解しがたい考え、そういうのを否定すんのに、強さはあんだろ? 捩じ伏せてみろよ」
ちりっと脳が焼けるような感覚に顔を歪め、ドラゴンストーカーは大剣を閃かせる。
それを受け流し、カウンターの流れで、ジューンは真正面からまずは竜化しているドラゴンストーカーの左腕を掴んだ。それを持ち上げるようにして、右腕、両脚、首を翼や尾も用いて極めると、反撃も、足掻く暇すら許さず、地面に叩きつけるようにして投げる。
ぐぎ、と少し鳴ってはいけないような音がドラゴンストーカーの体から奏でられた。
【|龍巻落至《ドラグナーバスター》】——ジューンが辿り着いた、強さの形の一つ。8倍威力のそれが、ドラゴンストーカーに真なるものの「強さ」を刻みつける。
「立てよ。あれだけほざいておいて、まさかこんなもんじゃねえだろ?」
挑発の言葉に、地に伏せられたドラゴンストーカーは、睨み付けるような視線を投げた。
🔵🔵🔵 大成功

アドリブ・連携歓迎です。
あー⋯⋯、他種族でご同類をみるとはね。
いやさーオレもさーツギタシしているし、「本来の体」ももうないけどさー。
アレと一緒だと思うと不愉快、不愉快だわな。
だから死ねよ。
【ケミカルバレット】で撃ち抜く。超強酸の弾幕はさぞかしキクだろうな。
闘争心むき出しで特攻の捨て身の一撃でいくぜ。
覚悟はキマってんだ、オレの戦闘知識や第六感に野生の勘なんでも使ってくぜ。
見切りやフェイントしていくが、ダメージにゃ気合いと根性にドーピングをトッピングじゃい!
「そんなクソなツギタシでテメーが真竜になれんなら、オレは今頃カミサマにでもなれてるんだよバーカ」

五月蠅い輩だ。
「所詮は人間」と言っていたが……お前は何様のつもりだ?
体を継ぎ、|真竜《ドラゴン》になったつもりか?
そうでないなら、なぜお前が私たちの心の裡を代弁する? 私たちを「お前の」欲望のままに動かそうとする?
身の程を知れ。
ドラゴンプロトコルとしても――|私たち《ドラゴンプロトコル》を狩り、その証を見に刻むお前が敵以上の何かのはずもない。
下がっていろ、シオリ。
そして見ていろ。私たちの強さを――!
√能力を使用し、黒竜へと姿を変える。
攻撃はもちろん、状態異常すらも通さぬ鱗で竜化部位による攻撃を受け止め、命中した者を黒い結晶と化す黒色のブレスでドラゴンストーカーを結晶化させる。
●マガイモノこそ哀しけれ
完全にソレは盲点だった。
ドラゴンプロトコルを狙うドラゴンストーカーのやり口ゆえ、この任務にはドラゴンプロトコルの√能力者が多く集まった。大々的に予兆に現れたのだ。ドラゴンプロトコルのみならず、全ての√能力者に喧嘩を売ったことに変わりはない。それでも、その狙いはドラゴンプロトコルであり、ドラゴンプロトコルは「渦中の人」であった。
けれど、まさか、ドラゴンストーカーが、殺したドラゴンプロトコルの肉体を継ぎ接いで、自らを成しているなどとは。
屍体を継ぎ接ぎにしているとは。——どこかで聞いた文句だった。どこかの世界で、√で、√ドラゴンファンタジーではないところでよく聞いた、残念ながらお馴染みの、狂気の沙汰。
「まさか、まさかだ。あー⋯⋯、他種族でご同類をみるとはね」
本来、継萩・サルトゥーラ(|百屍夜行《パッチワークパレード・マーチ》・h01201)はさっぱりした性格である。が、ツギハギのドラゴンプロトコルを前にして、彼はとても居心地の悪そうな顔をしていた。
実際、気分は最悪といっていい。
「いやさーオレもさーツギタシしているし、『本来の体』ももうないけどさー。アレと一緒だと思うと不愉快、不愉快だわな」
ゆらりと立ち上がったドラゴンストーカーも、不愉快そうな色を隠していない。サルトゥーラを見て、不快きわまりないとでも言いたげに顔を歪める。
「わたくしも、お前のような美しさの欠片もない存在と一緒にされるのは、不愉快です。全て切断して、元のバラバラ死体にでも還るといい」
「やなこった。お前が死ねよ」
ドラゴンストーカーが大剣を、サルトゥーラがガトリング砲を構える。【ケミカルバレット】の弾丸が散り、薬品独特の臭いが漂う中、ドラゴンストーカーはサルトゥーラに肉薄。宣言通り、サルトゥーラをバラバラ死体に戻すべく、【竜骸蒐集】を行う。
振るわれる大剣をサルトゥーラは第六感や野生の勘を駆使してダイナミックに避けていく。ダメージが深く、余裕もないのか、ドラゴンストーカーの大剣は大振りで、精細を欠く。
そこに超強酸での攻撃が絶えず降り注ぐのだ。じゅっと肉が溶け焦げる音、それに伴う焼けるような痛みが、ドラゴンストーカーを容赦なく削っていく。
青い肌が、爛れていく。
精細を欠いた大剣の軌道も、継ぎ接ぎだらけのドラゴンストーカーの肉体も、美しさなんてない。
「所詮は人間だの、美しくないだの、お前は何様のつもりだ?」
ヘリヤ・ブラックダイヤ(元・壊滅の黒竜・h02493)の冷たい声が響いた。サルトゥーラを刻もうとする大剣を、自らの剣でもって弾く。重量攻撃を乗せたそれは、大剣を弾き飛ばし、ドラゴンストーカーを仰け反らせる。
態勢を大きく崩したドラゴンストーカーに、サルトゥーラが追い討ちをかけるよう迫る中、ヘリヤは【|黒竜覚醒《ブラックドラゴン・アウェイクン》】を発動する。
「下がっていろ、シオリ」
援護を行おうとしていたシオリにヘリヤは呼びかける。
ブラックダイヤのような美しい鱗を持つ黒竜へと、姿を変えながら。
「そして見ていろ、私たちの強さを——!!」
ヘリヤが振り向くことはなかったけれど、シオリは影から、しっかりと頷いた。
『絶大な戦闘力と、生物非生物問わずあらゆるものを黒い結晶に変えるブレスで気ままに暴れ回り、周辺諸国を恐怖に陥れた黒く透けるような美しい鱗を持つドラゴン』——今は伝承しか残らない存在。けれど、確かに存在したのだ、と知らしめるような佇まい。圧倒的なまでの存在感。
「ああ、なんて……」
美しい。そんな陳腐な言葉一つで済ますのは畏れ多い。そう感じさせる冷たい美麗さ。琥珀色の双眸が、ギロリ、とドラゴンストーカーをねめつける。
サルトゥーラが距離を取ったのを確認し、|黒竜《ヘリヤ》はブレスを放った。ぞくりと身を震わせたドラゴンストーカーだったが、避けるには反応が遅すぎた。
黒い結晶へと変わり果てるドラゴンストーカーの体。結晶はブラックダイヤのように美しい。
が、サルトゥーラは何一つ躊躇うことなく、ソードオフショットガンを向ける。
「壊すの勿体ないけど、中身がアレじゃ、ケチがつくからな」
「ああ」
簡単には砕けない結晶だが、サルトゥーラが一点集中で攻撃して亀裂を作ると、黒竜の姿のヘリヤが踏みつけて砕く。
襤褸雑巾のように投げ出されるドラゴンストーカーの体。それを睥睨し、人のカタチに戻ったヘリヤが告げる。
「体を継ぎ、|真竜《ドラゴン》になったつもりか? そうでないなら、なぜお前が私たちの心の裡を代弁する? 私たちを『お前の』欲望のままに動かそうとする?
身の程を知れ」
「そーだそーだ」
サルトゥーラも続ける。その目には闘争心が漲っていた。デッドマンとしての衝動が、本能が、マガイモノはマガイモノでも、同一視されたくない、唾棄すべき相手への嫌悪を殺意に昇華させ、眇めた目で、見下す。
「そんなクソなツギタシでテメーが真竜になれんなら、オレは今頃カミサマにでもなれてるんだよバーカ」
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【守護する炎】の活用を前提
【戦場の支配者】を状況に応じ発動
【竜骸合身の儀】対策
「牽制射撃」、「制圧射撃」で攻撃準備を阻止し、変形を妨害
「牽制射撃」、「弾幕」で仲間が視界に入らない立ち回りを徹底し、暴走を防ぐ
【竜骸蒐集】対策
「受け流し」、「鉄壁」での防御
「牽制射撃」、「弾幕」 で攻撃タイミングを潰す
※部位を切断された場合
「逃亡阻止」で動きを封じる
「破壊工作」で、切断された部位を即座に破壊し、食べられないようにする
【阿頼耶識・修羅】
チャージ中は「制圧射撃」、「弾幕」、「牽制射撃」を継続し、敵に行動の隙を与えない
可能ならば【真竜降臨の儀】の阻止を狙う
※万が一、真竜が出現した場合の対応
「戦闘知識」、「破壊工作」、「地形の利用」でダンジョン崩落での封じ込め
あらゆる技能を駆使し自らが殿を務める
【シオリさん】
ドラゴンストーカーに狙われる可能性を考慮し位置取りを確認
「かばう」、「受け流し」で即座に守れるように意識
心情
シオリさん達やクーファさんをまた利用しようとするなら、僕は何度でも前に立ち塞がります。もう二度と手出しはさせません
シオリさん、一つ頼み事を聞いてもらえないでしょうか?
どこかで『無限の戦葬』の解呪に関する噂や情報を聞いたら、教えて欲しいのです
苦しみを抱え、どうしたらいいのか分からなくて助けを求められないこともあると思います
クーファさんは諦めていませんでした。だから、僕も諦めたくありません

◆キャラ設定
引き続き青色
青色は武闘家で求道者、沈着冷静
但し驚きだけは人並みに感じる為、その感情を与えてくれる強者を探す
※仲間への配慮は忘れない
◆青色のスタンス
ワタシは流石に歓迎されていないな
とはいえキミもドラゴンプロトコル(以下DP)に歓迎されていないのでお互い様だ
「欠落を埋められる『はず』」「輝かしき真竜の力を取り戻せる『かも』」か
狂信者ならもっと絶対的な美辞麗句を述べた方が良いと思うけれどな
まあ、諸々関係ない…戦おうか。
◆戦闘
竜化暴走の付与…流石に面倒だな
伊達に老若男女を殺してきてはいないらしい
とはいえ、やる事は変わらない
ジャストガード・受け流し・見切り+カウンターを叩き込もう
敵の攻撃手段がある程度見えたら『驚くべき~』を使用
一度目で駄目なら、『銀に戻る~』で復活して何度でも
キミの様な継ぎ接ぎではない…全てワタシだ。
相手を戦闘不能に出来て
かつ近くにDPやシオリがいたらとどめの一撃を譲る
ワタシは予知とやらを見ていないしDPでもない
ただの強者を求める武闘家だ
◆即興連携・アドリブ歓迎

縫合痕が目に入るたびに悲しくなる
1つ1つにどれだけの無念が詰まっているんだろう。もっと生きたかった人もきっといっぱいいて
それを誇るように見せつけて…許せないよ…
救いたいなら相手の想いも汲んであげなよ
甘い言葉を並べておいてあなたは自分のことしか見てない。ほんとは自分が救われたいだけ?それとも後に引けなくなっちゃった?
√能力は適宜使用
変質者の竜化に一瞬驚きながら…こっちも腕を竜化してハンマーで弾いて相殺っ
髪も肌も戦い方も似ててすごく複雑。あたしも何かが違ってたら…嫌でもそう思わされて今回そんなのばかり
けどその戦い方ならあたしだって負けない!
足も竜化して、増加した速度でまとわりついてひたすら攻撃を弾き続けるよ!特にあの禍々しい竜化部位は誰にも触れさせない!
ダメージを与えるのは皆やシオリ先輩に任せたっ
ブレスの兆候があれば竜化した腕、怪力、ハンマーのブースター全部乗せで顎を叩いて軌道を逸らしてみる
自分の歩く道くらい自分で決められる!竜を、見くびらないで!
片付いたらシオリ先輩達も一緒に祝勝会、しよ!
●闘って、ただ勝って
半死半生のドラゴンストーカー。空間にふよふよと漂う僅かな|透明魚《インビジブル》を見、誰にも聞こえないくらいの微かな舌打ちをする。
【真竜降臨の儀】を行うのはほぼ不可能な状態にされた。体も全身が軋むように痛み、千切れるのではないかと思うほど。……そもそも、一つでなかったものを、一つにしようとしているのだ。無理は祟っているのだろう。
「『欠落を埋められる『はず』』『輝かしき真竜の力を取り戻せる『かも』』か。狂信者ならもっと絶対的な美辞麗句を述べた方が良いと思うけれどな」
淡々とした声が述べる。言葉の内容こそ、挑発的に思えるが、声があまりにも淡白で、乾いていて、挑発には聞こえない。
その分、言われた方の屈辱は深いようで、興味の希薄なハスミン・スウェルティ(黄昏刑務所・h00354)の面差しに注がれたドラゴンストーカーの目線には、めらりと焼きつけるような熱がある。
ハスミンは変わらず興味のなさそうな眼差しで、軽く首を傾げるだけだ。
歓迎されていないようだ。わかってはいたが。ハスミンは——ハスミンの中の一人、この任務の中でただ戦い続けてきた青色は、改めて認識する。
予兆に現れたというこの女。ドラゴンプロトコルを老若男女問わず、殺して回っているという。その噂は耳にした。耳にしたが、興味なんてなかった。さして驚きもしない。よくあることではないが、まあ、狂信者というのなら、そういう者もいるだろう。驚くに値しなかった。
「先の者の言葉を真似るような形にはなるが、ワタシも御託は結構だ。興味もないし、関係もない。ワタシはただ、戦いに来た。諸々関係ない……戦おうか」
青色は拳を構える。金糸が辺りを呑みながら広がる炎を返し、映えた。
武闘家たる青色の戦い方を、これまで別行動ではあったものの、不動院・覚悟(ただそこにある星・h01540)は把握していた。
単独でもじゅうぶんに強い。けれど、周囲への気配りを忘れず、独り善がりになることのない青色の立ち居振る舞いは、戦士として尊敬する。
ここが武闘家たちが技を高め合うだけの場所なら、手出しをするのは野暮と言えた。先のクーファとの戦いは、それに相当しただろう。だが、ドラゴンストーカーにはそのような高尚さはない。
「……ひどいよね」
覚悟の隣で、堪えるような声で紡いだのはシアニ・レンツィ(|不完全な竜人《フォルスドラゴン・プロトコル》・h02503)。湖面のように透明に揺らめく碧は、涙を堪えているのかもしれなかった。
ぐ、と抱えるハンマーを握る手に力が入る。その手は小さく震えて見えた。
「あの縫い痕の数だけ、もしかしたらもっと、たくさんの|人たち《ドラゴンプロトコル》が殺されてるんだ。1つ1つにどれだけの無念が詰まっているんだろう。もっと生きたかった人もきっといっぱいいたはずだよ。|√能力者《あたしたち》みたいに抵抗するすべもなくて、ただ殺されて、繋がれて……
それを誇るように見せつけて……許せないよ……」
喰竜教団の中でだけとか、希望者を募ってとか、そういう制限があるのなら、やるせない思いが生まれても、「考えに賛同している」のなら仕方ない、と思えた。
けれど、ドラゴンストーカーは「ドラゴンプロトコルを、見境無く、大人子供の区別なく殺害している」と宣った。堂々と。
望まず、命を奪われ、望まず、継ぎ接ぎにされた。死人に口無しという言葉がある。どんな無念があろうと、怨嗟や憤怒があろうと、彼ら彼女らはもう叫べない。
ドラゴンプロトコルのシアニにとって、他人事ではなくて。だからこそ、悲しくて、苦しいほどに悔しくて。言葉をぽつりぽつり、こぼしていく。
「戦わなきゃ……闘わなきゃ」
「はい。否定しましょう。人の弱さや苦しみに浸け入り、更なる苦しみを与えるだけの存在を、野放しにしてはおけません」
覚悟の言葉に込められた優しさと決意に、シアニは彼を見上げる。黒色の何の変哲もない目。彼は戦士であるよりまず、人間だった。どんな種族であろうと、形容の一つに用いられる「ひと」という表現。その元となった種族が人間である。
人間は心を持つ。だから、「ひと」の形を持つものも、心のままに生き、時に心の複雑怪奇さに惑ったりする。けれど、その惑いが、楽しかったりする。
心があることは苦しいけれど、心あるひとに出会うと、「ひとでよかった」と思えるのだ。ひどく、安心する。そんな安心を、シアニは覚悟に抱いた。
このひとは「ひと」だ。あたしも「ひと」だ。
おんなじだ。
向こうで、物陰からこちらを見ている気配がある。少し遠いけれど、シオリもいて、助けてくれようとしている。
立ち向かうために戦おうとしている。
闘っている。
「行こう」
シアニの言葉に、覚悟が頷いた。
剣と拳が交錯する。大剣での切断を狙うドラゴンストーカーに対し、青色は太刀筋を見切り、腕全体を使って流し、カウンターの拳を叩き込んでいた。
腕を竜化しているドラゴンストーカー。それによる攻撃は【竜化暴走】の危険がある。警戒しつつ、青色はドラゴンストーカーの動きを、太刀筋を、見極めていく。
ドラゴンストーカーが袈裟懸けに剣を振り下ろす。青色はそのわかりやすい太刀筋を受け流し、懐に潜り込む。
む、とほんの少し、違和感がよぎった。先程までと比べて、剣に込められた力が軽いように感じる。
竜化したドラゴンストーカーの腕が剣を持ったまま、裏拳を青色に叩き込もうと返ってきていた。
青色は目を見開き、すぐさま伏せた。地面に張りつくように。
(そのような回避、足蹴にしてくれと言っているようなもの)
望み通りそうしてくれようか、と笑みが浮かんだのも束の間、ものすごい打撃が、ドラゴンストーカーの腕にぶつかり、その体を弾き飛ばす。
「その戦い方なら、あたしだって負けないから!」
シアニが、腕と脚を竜化させた状態で、割って入ったのだった。シアニは完全な竜の姿に戻れない。体の一部を竜化させるのが限界だ。変化させた腕と脚も、肘や膝あたりまでしか竜化していない。
青い肌。ドラゴンストーカーのそれを見て、顔を歪める。シアニもまた、青い肌を持っているドラゴンプロトコルだ。何か一つ、些細なボタンの掛け違いで、自分はそちら側に堕ちていたのかもしれない……なんて考えがよぎって、嫌になる。
シアニの心中に立ち込めた暗雲を吹き飛ばさんと、銃火器の掃射音が注いだ。立て直してシアニを標的にしたドラゴンストーカーの前に、覚悟が立ち塞がっている。
覚悟がいるのと別方向からも銃撃がある。シオリだ。青色もすっと立ち上がり、シアニに声をかける。
「折を見て仕掛ける。トドメは任せよう」
「え」
「ワタシはドラゴンプロトコルじゃない。ただの武闘家だ。強い者を求めているだけ」
戦いに来ただけだ、と。
綺麗事を並べるだけなら、誰にだってできる。見定められるのは綺麗事の内容ではなく、それを実現しようとする決意と覚悟だ。
覚悟なら、いくらでも。その名に恥じぬほどの強い決意と意志で戦い続けてきた——闘い続けている覚悟は、炎を絶やすことなく、灯し続けている。
ただの覚悟の炎ではない。守護する炎を。
炎の効果により増強された技能を用い、ドラゴンストーカーに攻撃の隙を与えない。絶え間ない制圧射撃と牽制射撃。被弾しないようにするだけでも骨が折れそうな銃弾の雨を、回避するので精一杯なドラゴンストーカー。竜化暴走を付与する拳も、切断を強いる大剣も、そもそも攻撃できなければ、宝の持ち腐れというものである。
弾幕により、視界も遮られたドラゴンストーカーは、覚悟を標的にするしかなかった。
たかが人間……これまで相手にしてきたドラゴンプロトコルの√能力者たちが、ああだこうだと言っていたが、技能を駆使するだけで、√能力を使ってこない。この小僧はその程度なのだ、と。——この期に及んでこの女は人間を見下す考え方を変えるつもりがないらしい。
多少の被弾は気にせず、竜化した腕で大剣を握りしめ、覚悟の眼前へ跳躍する。|覚悟《ほのお》を宿した目は逸らすことなくドラゴンストーカーを見つめていた。
【鉄壁】で肉体の頑強さを増してから、体を捻り、受け流す。攻撃の流し方は、元々覚えてはいたが、ここにはいい手本となる武闘家がいた。いつもより効果的に、コンパクトに流せる。
いなされてたたらを踏むこととなったドラゴンストーカーの腹部に、カウンターで重量攻撃を乗せた蹴りを入れた。シオリはもちろん、他の仲間に標的を変えさせないため、しっかり自分がここに留める。
ドラゴンストーカーが軽く吹き飛んだ隙に、覚悟は【阿頼耶識・修羅】のチャージを始めた。60秒のチャージが必要で、受けたダメージはチャージ後に反映される。ある程度は大丈夫だろう。
だからといって、攻撃を受けてやる気はない。
再び大剣を翳したドラゴンストーカーに割り込み、地面からかっと突き上げたハンマーで対抗したのはシアニ。見事ドラゴンストーカーの手を強打し、剣を取り落とさせる。
けれど、大剣より警戒すべきは禍々しさを宿す竜化部位の腕。
——それだけは絶対、誰にも触れさせないから!!
シアニは【|不完全な竜はご近所迷惑《フォルス・ドラグスタンプバースト》】でのハンマー攻撃で、ドラゴンストーカーの攻撃を弾きつつ、ヒットアンドアウェイを繰り返す。
「頃合いだな。ワタシの|災厄の拳《右ストレート》を食らってもらおう」
青色は声高に宣言し、混戦の中へ突入する。【世界の歪み】を脱ぎ捨て、肉薄。精細を欠いた半死半生の拳など、赤子も同然というように弾く。鼻と鼻がつくかと思えるほど接近し、その顔面に、竜化部位に負けず劣らずの禍々しいオーラを纏った右拳を打ち付ける。
「ぐっ」
「まだ終わんないからね!」
【|不完全な竜は急に止まれない《フォルス・ドラグアサルト》】で得た脚力で、背後に回っていたシアニが、ハンマーを振るってドラゴンストーカーの背中に強撃! 野球だったならホームランだろう痛快な一打が炸裂する。
ダンジョンの天井とハグすることとなったドラゴンストーカーだが、抱擁は一瞬、すぐ床に落ちる。強打に次ぐ強打。受け身を取ることもできなかったため、かはっと口から空気の塊を吐くことしかできない。
幸いにも、大剣が近くに転がっていた。手を伸ばそうとするが、伸びてきた足が大剣を蹴飛ばし、阻止する。
覚悟が立っていた。地に伏すドラゴンストーカーからすると、悠然と佇むその少年は天を衝く塔の如く、強大な存在に思えた。
「うっ、あああああ!!」
雄叫びを上げ、ほぼ捨て身で覚悟に一撃入れようとするドラゴンストーカー。だが、それはもう完全に見切られ、カウンターとして、蒼い炎を纏った拳が叩き込まれる。
そう、60秒は経過していた。
更には、【戦場の支配者】により、ドラゴンストーカー以外は回復され、まだ全力で攻撃ができる。
「甘い言葉を並べておいてあなたは自分のことしか見てない。ほんとは自分が救われたいだけ?」
シアニが問いかける。先にドラゴンストーカーが語った「最初に継ぎ接ぎにしたドラゴンプロトコル」の話もそうだ。救われたから救いたいというのなら、どんな救いを望むのか、そもそも救い自体を望んでいるのか、聞くべきだった。
そうしたら、自分たちと暗殺部隊の少女たちのように、わかり合えたかもしれないのに。こんなに、誰からも嫌われることはなかっただろうに。
嫌われたところで、痛くも痒くもないのかもしれないが、と思いつつ、覚悟も決意を言葉にする。
「シオリさん達やクーファさんをまた利用しようとするなら、僕は何度でも前に立ち塞がります。もう二度と手出しはさせません。
人の弱さに浸け入って利用する、あなたを、その心を、許しません。絶対に」
何度蘇ろうと、不死性のある√能力者であろうと、あなたを倒し続ける、と。口にした言の葉には言霊が宿り、それはひとが思うより、強大で凶悪な力となるから、刻みつけるように告げるのだ。
シアニがハンマーを下ろし、小石をドラゴンストーカーの胸元に放る。こつん、と青い肌に当たって小石が地面に落ちた直後、タァン、と銃声。
寸分狂いのない狙撃により、ドラゴンストーカーは死を与えられた。
インビジブルとなることなく、やがてどこかで再構築されるために消えていくドラゴンストーカーの肉体。残されたのは、血痕のみ。そこでようやく、シオリが顔を出す。
「……殺ったの?」
「うん、ありがとう、シオリ先輩!」
シアニがシオリににっと笑う。戸惑いながらも、シオリも笑みを返した。
「シオリさん、怪我はないですか?」
「ええ。気遣って闘ってくれたのよね。ありがとう。……トドメが私でよかったの?」
「シオリさんの怒りも届けるべきでしたから」
「うん。あたしもそう思った」
シオリは覚悟とシアニの言葉を受けつつ、青色を見る。【世界の歪み】を着直した青色は、静かにシオリを一瞥すると、目礼した。
そもそもシアニにトドメを任せていたのだ。シアニが選んだのなら異論はないし、近くにいたのがシオリなら、シオリに任せてもいいと思っていた。
言葉にはされなかったけれど、心地よい沈黙から何かを汲み取り、シオリはそれを噛みしめ、「ありがとう」と再度口にした。
「ねえ、シオリ先輩、祝勝会しようよ! 他のみんなも呼んで」
そういえばさっき、スイーツ食べに行こうって言ってた人もいたよね、なんて語らうシアニ。少しくらいなら、羽を伸ばしてもいいか、とシオリははにかんだ。
覚悟が少しいいですか、とシオリに声をかける。
「どこかで『無限の戦葬』の解呪に関する噂や情報を聞いたら、教えて欲しいのです」
「『無限の戦葬』……クーファのことも、助けるの?」
はい、と覚悟は頷く。
「苦しみを抱え、どうしたらいいのか分からなくて助けを求められないこともあると思います。クーファさんは諦めていませんでした。だから、僕も諦めたくありません」
覚悟の決意に、シオリは柔らかな眼差しを向けた。
「苦しくて、一人じゃどうしたらいいかわからなくて、助けを求められない、なんてどこかで聞いた話ね」
少し、苦い面持ちだ。覚えがあるのだろう。
けれど、だから信じられる。同じだったから。同じだった自分はこうして救われたから。
「わかった。気に留めておくわ」
他にも、道中で伸したドラゴンプロトコルの少女を拾い、ラーメンでも食べに行こうと連れて行く者もいたり、シオリの帰りを待つ者もいたり。
そうやって少しずつ、前に進んでいく。歩き続けることしかできないなりに、少しでも道が明るくなるよう、「ひと」は闘い続けていく。
闘って、ただ勝って、その先にある未来を切り開いていくのだ。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功