シナリオ

尊き|竜《あなた》へ|祈る《いただきます》

#√ドラゴンファンタジー #喰竜教団

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 げっそりした表情の藤原・天(彷徨えるモノの灯台・h02131)は、缶ジュースを飲んで喉を潤してから説明を始めた。

「先日の予兆は覚えてるか? 『喰竜教団』なる連中の件だ」

 遥か遠き時代に君臨した強大な『竜』を崇める教団。その教義は「か弱き姿に堕とされたドラゴンプロトコルを殺し、その遺骸を自身の肉体に移植することで、いつか『強き竜の力と姿』を取り戻させる」こと。

「まあよくある狂信者的なヤバいのって感じだ。で、早速事件を起こす予知があった。駆け出し冒険者のドラゴンプロトコルが狙われている。事件現場はダンジョン内。皆には急ぎで合流してもらい、救出と黒幕の撃破をお願いしたい」

 黒幕はダンジョンに罠を用意して獲物を待ち構えている。先手をとって解決することは間に合わないため、救出後は事件を起こした黒幕を撃破しなければ脱出はままならず、冒険者を守る必要もある。ただ敵を倒すのとは異なる立ち回りが要求されるだろう。

「狙われる冒険者はドラゴンプロトコルの少女で、名は『サラ』。誇り高きレッドドラゴンの末裔を自称するが実力は駆け出し相応。尊大にして小心、傲慢だが臆病、強欲だが理知的で調和を重んじる。武器は大剣で容姿は全身赤い」

 つまり尊大な貴族系お嬢様のテンプレだと纏められる。知識はあるが技術は未熟、経験は駆け出し。戦闘において役立つことは無いが、邪魔をしないことはできるようだ。

「皆に突入してもらうダンジョンは洞窟型だ。地下に向かって潜っていく形式で、中の空間は広大なものの谷に似た地形を構築している。カラクリは不明だが視界が通るから明かりは不要」

 中央が抉れて底には川が流れており、左右には崖と道がある。底は深く見えないほどで、落ちれば無事にはすまないだろう。道の幅は3人並ぶのも不自由しない程度だ。天井はかなり高い。

「ゲームで例えるならエリア1。その奥に罠があって、サラがかかりそうになっている。罠は……三億円相当の金のインゴットの山だ。宝箱とかには入ってない。ポンと置かれているんだ」

 怪しいことこの上ない。本物の金なのかまでは判断がつかないため、真贋を見極めるには実際に見るほかない。
 ともかく、この黄金に触れたり取得すると罠が発動するようだ。

「罠は転移だ。地平線まで真っ青な海の只中にある小さい島に送られる。当然、本物じゃないが、出られなければ同じことだ。脱出路は必ずある」

 もしも√能力者たちの助けが無ければ、サラはこの異空間で餓死寸前まで弱り、教団の餌食になるというわけだ。

「罠にかからず迂回したり破壊したりした場合は、おそらくモンスターを差し向けてくる」

 足場の良い地形ではないことを踏まえれば、出てくるモンスターのタイプはある程度の推測はできるだろう。相手の用意した策を全て踏み越えれば、最後に出てくるのは黒幕自らになる。

「堕落者『ジュリエット』喰竜教の信徒だ。策謀や搦め手を得意とするようだな。『|真竜《トゥルードラゴン》』を信奉していてドラゴンプロトコルを優先的に狙う。サラだけじゃなく、|√能力者《こっち》にもドラゴンプロトコルがいればそちらも狙うようだな。逆に他の種族は見下してる」

 喰竜教の信徒はドラゴンプロトコルの肉体の一部を自分たちの体に移植しており、戦闘時には活用してくる。思わぬ攻撃に注意しなければならない。

「説明は以上だ。正直、まともに相手したいタイプじゃないが被害者が出ても気分がよくない。頼んだぜ、皆」

マスターより

松六
 松六です。√ドラゴンファンタジーのお話となります。なんかヤベーのが来ましたね……。
 第一章は冒険。罠にかかりそうになっているサラを助けましょう。罠にかかるか、避けるか(解除、破壊は避ける)で分岐します。
 第二章は分岐。罠にかかる場合、海の異空間に飛ばされます。岩と砂の無人島に転移しますので、出口を探します。
 罠を避ける場合は集団敵です。足場から落とされないよう、サラを守りながら戦います。
 第三章はボス戦です。ジュリエットは飛行しておりサラまたはドラゴンプロトコルを優先して狙います。その辺りを対策すると戦いやすいでしょう。
 護衛対象のサラは装備と髪、眼、羽や角、鱗も真っ赤な高飛車少女。皆様のことは先輩冒険者と認識するので、思ったよりは素直に聞いてくれます。戦闘は役立ちません。
 以上です。それでは皆様、よい冒険を!
9

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第1章 冒険 『三億円が落ちている』


POW 惑わされない。例え本物だろうとも鋼の精神で攻撃する
SPD 徹底的に真贋を見極める
WIZ 死んでもいいので強欲に手を伸ばす
√ドラゴンファンタジー 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 洞窟に入ると、不思議と中は明るかった。魔法によるものか、なんらかの自然現象なのか。足元に気を付けながら先を急ぐと、地下とは思えないほど広大な谷が姿を現す。
 そして、綺麗に積まれた黄金のインゴット(三億円相当)と、葛藤しながら手を伸ばすか迷っているドラゴンプロトコルの冒険者『サラ』がいた。
アステラ・ルクスルブラ

ドラゴンプロトコルを狙い撃ちする連中とはね
そんなマトモとは思えない思想の犠牲は見過ごせないな

で……、これが三億円相当の金?
え、本物?
どうやって用意したんだろう?
その教団って、これを使い捨てられるくらい金持ちってこと?
……いやいや、本物のわけないじゃん?
触れるだけで発動する罠なら、本物である必要無いんだし?
これに引っかかったらすごく恥ずかしいよね?

……と、一瞬の間に頭の中で物欲と自制が駆け巡り
こほんと咳払い一つ、平静を装い

サラだよね?
そんな一目瞭然な罠、触っちゃダメだよ?
ああ、もちろん、私が止めなくても、聡明そうなあなたなら触らないと思ってるけどね?

などと相手の自尊心をくすぐって諫めて止めよう
逆刃・純素
なんか変なのに目をつけられて……ドラゴンプロトコルさんも大変ぴす。
死体の皮膚でチョッキを作った人とか昔いたらしいですけど……
とりあえず目の前の人はなんとかするぴす。

罠を解除する方向で動きます。
サラさんを止めて√能力を発動して探知にかからないようにしながら
金塊自体や周辺を調べて可能ならトラップ解除します。
経験はないけど技能の野生の勘や学習力でなんとか頑張ります。

解除できても、持って帰るのは考えたほうがいいですぴすよ?
純粋にコレめっちゃ重いですぴす……
刻見・雲雀
●アドリブ連携歓迎
…………流石に露骨すぎじゃない????
どう見ても罠ですと言っているようなものなんだけど、逆に露骨すぎるからこそ引っかかるっていう奴かな……
考えてる暇はないか、このままだと本当に触っちゃいそうだし。

サラさんに声をかけて引き留めよう。
悪いことは言わないから手を出さない方がいい、取り返しのつかないことになるかもしれないよ。

と軽く告げてから【緋血殲刃】を使用、
『緋血傷器』を投げナイフの形にしてインゴットに投げてみようか。
触れただけで発動するならこれでも罠が起動するんじゃないかな?
念の為術式系の罠だとアレだから、武器が当たる程度には距離を置いた上で検証だね。
東大和・斬花
強くなるのは己自身の手でのみ、ドラゴンプロトコルが竜に戻るとしても狂信者どもの手など必要無い事だ、その者達を断ち切ろう

お前がサラとやらか、それには触れるな、罠だ
なにか聞かれる前に太刀でインゴットを両断し破壊する
道端で綺麗に積まれた黄金など偽物以外の何物でもない
仮に本物だとしてもこの先を進むには不要だ

 でこぼことした岩肌の洞窟を3人の√能力者たちが進んでいく。道中には罠もモンスターも無く、視界に困らない程度には明るいために足場の悪さを除けば苦は無かった。

「ドラゴンプロトコルを狙い撃ちする連中とはね」

 口を開いたアステラ・ルクスルブラ(|赫光《ルクスルブラ》の黒竜・h01408)、彼女もドラゴンプロトコルである。今回の事件も、事を起こした教団も他人ごとではない。仮に種族が違ったとしても、マトモとは思えない思想による犠牲が出ることを見過ごすことはできなかった。

「なんか変なのに目をつけられて……ドラゴンプロトコルさんも大変ぴす」

 |逆刃・純素《さかば・すぴす》(サカバンバの刀・h00089)は同情するように呟く。狂った連中に狙われるなど百害あって一利なしだ。

「死体の皮膚でチョッキを作った人とか昔いたらしいですけど……」
「どこの√にもいるのだな……」
「まあ、探せば聞こえる話の類だね。気分はよくない」

 暗殺者としてその手の事柄を知る|刻見・雲雀《きざみ・ひばり》(最果てに挑む翠瞳・h01237)はそう締めくくる。人の皮で装丁した本、カルトの儀式……それらの犠牲になるのは、いつだって無辜の民衆だ。
 心の内に各々想いを灯しながら歩みを進めた先は深い谷であった。崖の間を駆け抜ける風が不気味な音を奏でるが、3人は意に介さず周囲を見渡して件の冒険者を探す。

「あ、いた。本当に赤いな」

 奥の方に見える真っ赤な姿。地味な色彩の洞窟の中では特に目立っている炎の如き装い。
 3人は足元に気を付けながら迅速に近づいていくが、サラは集中しているのか彼女に気づく様子はない。意識の先に何があるのか、視線を向けると輝く黄金がそこに鎮座していた。

(で……、これが三億円相当の金?)

 金のインゴットである。ピカピカに光を反射して輝く黄金。それが山となって積まれているのだ、三億円相当の量が。無造作に。私怪しいですと自己主張しているようなものだがゴールドの魅力とはそれでも手を伸ばしかねないもの。
 あるいは、ドラゴンとは金に惹かれてしまうものなのだろうか。

(…………流石に露骨すぎじゃない????)

 雲雀は困惑した。

(どう見ても罠ですと言っているようなものなんだけど、逆に露骨すぎるからこそ引っかかるっていう奴かな……)

 あからさま過ぎると裏を勘ぐって警戒してしまうものだが、いやそれにしても堂々とかつ無造作で、どのような思考と感情を置けばよいのか困ってしまう。
 惑う雲雀の横で、アステラもまた黄金に目が眩んでいた。

(え、本物? これ本物じゃないか? いやそもそもどうやって用意したんだろう? その教団って、これを使い捨てられるくらい金持ちってこと? まさか自費? ……いやいや、本物のわけないじゃん? 触れるだけで発動する罠なら、本物である必要無いんだし? でも罠ってわからないように本物を置く可能性も。どっちだ? 本物? 偽物? いやいやいやそもそもの話これに引っかかったらすごく恥ずかしいよね?)

 頭の中で物欲と自制が鬩ぎ合うこと0.2秒。勝ったのは、自制心だった。

「とりあえず目の前の人はなんとかするぴす」

 純素の言う通り、今にも触れそうなサラを止めることが先だろう。
 アステラは欲望を誤魔化すようにこほんと咳払い一つ。平静を装って赤い冒険者に声を投げる。

「サラだよね?」
「ひゃ!? は、ははい!?」

 誰かいるとは思っていなかったのか、素っ頓狂な声を上げて飛び上がり、高速でアステラへ振り向くサラ。
 アステラはさも出来る人といった雰囲気を出しながら言葉を続ける。

「そんな一目瞭然な罠、触っちゃダメだよ? ああ、もちろん、私が止めなくても、聡明そうなあなたなら触らないと思ってるけどね?」
「え、ええ、もちろんですわ! このワタクシがこのような見え見えの罠に! 触ったりしませんとも!!」

 自尊心をくすぐるような言葉選びが功を成し、サラは瞬く間に黄金から距離を取った。顔は羞恥心で真っ赤に染まり、チラチラと名残惜しそうに金を見ているが。
 雲雀が続いて語りかける。

「そうそう、悪いことは言わないから手を出さない方がいい、取り返しのつかないことになるかもしれないよ?」
「取り返しのつかないこと? ふ、ワタクシはレッドドラ」
「転移罠でどことも知れない場所に送られて……とか、さ?」
「ゴン、の……、……」

 想像したのか、サラの顔から血の気が引く。威勢の良い言葉は途切れて絶句しているあたり、確かに小心臆病らしい。
 一先ず、彼女を金のインゴットから離すことには成功した。あとは、この罠をどうするかだ。

「で、これどうする?」
「わたしが解除してみるぴす」

 純素が手を挙げて立候補し、体勢を変える。長期の活動に適した姿勢を取り、じりじりと罠に近づいていく姿は肉眼以外では探知できない状態だ。視界を外せばいなくなったかのように気配が消えている。
 そして、それは罠もまた例外ではなく。今の状態の彼女が黄金に触れても何も発動しない。ペタペタと弄り回し、とりあえずどんな罠か調べてみる。

「魔術とかそっち系の仕組みっぽいぴす。たぶん……この辺……あとここも……」

 野生の勘に任せて霊剣をぶすぶすと地面や金のインゴットに刺す。一見無造作であり実際に無造作ではあるが、刺した箇所は的確なように見える。
 解除を成した純素が金から離れて戻ってきた。

「これで大丈夫なはずぴす」
「では、試してみようか」

 雲雀が何も持たない手を、何かを掴む形にする。手の内から血液が滲み生まれ、形を成すように集い、1本のナイフを作り出す。

「触れただけで発動するならこれでも罠が起動するんじゃないかな?」

 血で生み出された投げナイフを投擲する。スナップの効いた投げは張り詰めた弦を解き放つように刃を射出し、音もなく金のインゴットに突き刺さった。

「何も起きませんね」
「十分な検証とは言えないかもしれないが、解除されてるとみていいんじゃないかな」
「……は!? で、では、持ち帰ってもよろしくて?」

 後ろの方でこっそりナイフ投げの真似をしていたサラが興奮気味に問いかける。
 答えたのは、アステラでも純素でも雲雀でもなく、新たな√能力者であった。

「道端で綺麗に積まれた黄金など偽物以外の何物でもない」
「へ?」

 我が道を行くとばかりに女子高生が割って入る。あまりにも堂々とした佇まいにサラは道を開けてしまったが、疑問符が言葉から漏れていた。
 山と積まれた金のインゴットの前に立つは、|東大和・斬花《あずまやまと・ざんか》(一刀必殺・h05005)。背負った大太刀の柄を掴み、誰かが声をあげるより速く抜刀両断。苛烈な一刀が魅力の輝きを斬り伏せる。

「仮に本物だとしてもこの先を進むには不要だ」

 かくて黄金は塵と消えたり。電光石火の行動に理解が追いつくまで数秒。サラが口を開きかけるが、純素の方が速かった。

「本物だとしても、持って帰るのは考えたほうがいいですぴすよ? 純粋にコレめっちゃ重いですぴす……」
「まあ、あの量を一人では無理だな」
「確かに。その通りだね」

 実は幻だった、などと言うわけではない限り、相応の質量を持つわけで。運ぶ準備の無い駆け出し冒険者に持って帰れる手段はなく。まさか重し同然のインゴットを抱えてダンジョン攻略をするわけにもいかない。

「諦めろ、サラとやら」

 斬花の言葉に、サラは口をパクパクと開閉するものの反論する道理を思いつかなかったらしく……がくん、と項垂れる結果となった。
 此処で終わるならば後の笑い話となり、友人なりとの話のタネになっただろう。しかし、残念なことに本番はここからだ。
 谷状の地形、断崖の底から、羽ばたく音が耳朶に届いた。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 集団戦 『ハーピー』


POW ハンティング・ザ・スカイ
【上空からの襲撃】の体勢を取る。移動力と戦闘力を3分の1にする事で、肉眼以外のあらゆる探知を無効にする。嗅覚・聴覚・カメラ・魔術等、あらゆる探知が通用しない。
SPD スカイレイダー
【脚の爪】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
WIZ シャウトバレット
【音波】属性の弾丸を射出する。着弾地点から半径レベルm内の敵には【轟音】による通常の2倍ダメージを与え、味方には【士気高揚】による戦闘力強化を与える。
√ドラゴンファンタジー 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

 気配を最初に感じたのは誰であったか。断崖の底、岩の裏、天井の影。死角から次々と姿を現すのは女性の上半身に鳥の羽と下半身、蠍に似た尾を持つモンスター。

「ハーピー!? こんなところで襲われたら、最悪崖の下に……」

 サラがモンスターの名を叫ぶ。
 羽ばたく怪物たちは耳障りな異音を喚き散らし、侵入者たちを見下ろす。突き落として殺すか、爪で裂くか。品定めるように飛びまわり、ハーピーが√能力者たちに襲いかかる!
逆刃・純素
予知どおりとは言え、まずいタイミングで来たぴすね。
地の利は完全にあちらにあり……と言っても魚類の意地を見せてやるぴす!

技能の空中浮遊であらかじめ浮いておいて
突き落とされないようにしておきます。
できれば他人の邪魔にならない、敵の攻撃に巻き込んだり
巻き込まれない位置に動いておきます。
空中の不安定さや突風などは技能の環境耐性や地形耐性で耐えます。
その上で、できるだけ大人数を巻き込めるように調整しながら√能力で攻撃します。

鳥にしては悪くないけど、まだまだ修行が足りないぴす。
あと3億年くらいは頑張ってから来るがいいぴす
刻見・雲雀
●アドリブ連携歓迎
『緋血傷弾』で【呪血・紅霧】を発動、【先制攻撃】を逆に仕掛けて出鼻を挫く。
隠密状態の間に身を隠せそうな場所へサラさんを避難させる

終わったら声をかけるからここで待ってて。
戦うって?本当に戦えるのかい、膝がそんなに笑ってる状態で??
やめときなよ。
使命や栄誉や誇りなんかより生命の方が大事だ、だから俺は君の安全を最優先に行動する。
それでもやるのなら、基礎戦術と心構えをしっかり身につけてから挑むことをお勧めするよ。
家族を変に悲しませないようにね。

『緋血紅霧』で【闇に紛れる】状態にして戦場に戻る。
【不意打ち】で羽根を狙い、地に落として他の√能力者のみんなと連携して畳み掛けていこうか。
アステラ・ルクスルブラ
こう足場が悪いと、現れるモンスターも空を飛ぶのが道理か
多人数で立ち回るには狭い足場は皆に譲って、こちらは空で迎撃しよう

体内で生成した魔力を翼から放出して推進力に変えて、浮遊や飛翔しながら空中戦を行う
サラの護衛を最優先にして、上方の敵、特に向かってくる敵から優先的に対応しよう
ガントレットの竜爪を振るい、鉤爪で敵を引き裂いて殴り飛ばしていく

もし急襲の体勢を取る敵がいたら、仲間にも注意を促しつつ、鉤爪部だけ分離して魔力で遠隔操作して撃ち抜く
数で攻められるなら、【竜爪連撃】で手数で応じる
飛翔しながら片っ端から連撃を叩き込み、返り討ちにしてやる
サラに、少しは先輩冒険者らしいところを見せてやらないとね!

 このような環境であれば飛行モンスターが出てくるのも道理というもの。地を走るしかない獲物を悠々と狩ってきたのだろう。
 駆け出しとはいえ、いやだからこそか。学んだ成果として不利を理解したサラは、へっぴり腰で大剣を構えて顔を少々青くしていた。やはり、ここで頼りになるのは√能力者だけだ。
 襲撃を受けるタイミングはよいものではないが、予知通りゆえに対応に遅れは無い。

「地の利は完全にあちらにあり……と言っても魚類の維持を見せてやるぴす!」

 魚は鳥に食われる餌か? 否、鼠とて猫の喉笛を噛み切るのだ。どちらが獲物か異形の身に刻んでやると、純素はふわりと空中に浮きあがる。
 浮遊する彼女にハーピーの視線が集中した瞬間、雲雀がその隙を撃つ。

「――呪血」

 握り拳から人差し指と親指を伸ばす、銃に見立てた手の形。指先に収束した血液が光線のように敵の翼を穿った。

「ギャァ!?」

 さらに霧散した血は雲雀の姿を覆い隠し、下手人を探すハーピーの眼から匿う。

「サラに、少しは先輩冒険者らしいところを見せてやらないとね!」

 アステラの黒曜石の如き竜翼から赫い魔力が噴出。ジェットエンジンを彷彿とさせる推進力で急上昇した彼女は、迂闊なハーピー目掛けて突進。|竜爪《ガントレット》を突き出して強襲する様は重騎兵のランスチャージめいて敵の胴体を粉砕せしめた。
 モンスターの意識が完全に空の二人に向く。その間に雲雀はサラを巨大な岩の影に連れて行った。ここならまず巻き込まれることはないし、突風などで吹き飛ぶこともないだろう。

「終わったら声をかけるからここで待ってて」
「い、いいえ、ワタクシとて冒険者。レッドドラゴンの末裔!」
「だから戦うって? 本当に戦えるのかい、膝がそんなに笑ってる状態で??」

 うぐぅ、とサラが黙る。反論しない辺り無理だという自覚はあることは、駆け出しながら聡明なことの証だ。それに飛行相手への対抗手段も無い様子である。

「やめときなよ。使命や栄誉や誇りなんかより生命の方が大事だ、だから俺は君の安全を最優先に行動する」
「ですが……」
「それでもやるのなら、基礎戦術と心構えをしっかり身につけてから挑むことをお勧めするよ」

 未熟な彼女に返せる言葉は無い。だが歯噛みしながらも瞳の奥にある意志は消えていない。

「……家族を変に悲しませないようにね」

 自嘲を含んだ助言で結び、彼は血霧を纏って戦場に翻る。
 ダンジョン内の空中戦は前衛と後衛に分かれて鎬を削っていた。ハーピーの群れとアステラが爪をぶつけ合い、シャウトバレットとサカバンミサイルが相殺している。まるで嵐の中にいるかのように大気が荒れ狂っていた。

「ギャォオオ!」

 群れの後ろでホバリングするハーピーが吼える。音は弾丸となり、純素を狙って伝播、炸裂して轟き、肉体に圧を与えてくるうえ味方の士気を高揚させる。
 揺れる体勢を彼女は踏ん張って耐えながら、その手には無数のインビジブルが集う。

「鳥にしては悪くないけど」

 それは時の狭間に消えた幾億の涙のきらめき。

「まだまだ修行が足りないぴす」

 |ああ慈悲深き太古の涙よ《サカバンミサイル》。太古の霊が巨大な群れとなってハーピーを襲撃する。1発のダメージは些細なものだが幾重にも積み重ねれば山をも崩す。怪鳥は押し退けられて叫ぶ暇も無い。
 士気高揚の強化が途切れた瞬間の、敵の勢いが減じた隙をアステラは突く。複数体のハーピーの只中に飛び込み、拳を振り上げる。

「片っ端から、一気に行くぞ!」

 手近な1体に竜爪を叩き込み、掴んで振り回してなぎ払い、怯んだ敵の顔面に竜爪を振り下ろし、逃げようとする相手に蹴りを連続で放ち、反動で上昇した先にいた奴を両手の竜爪で引き裂く。
 大暴れしているがアステラの視野は全体を見ている。彼女の暴力と純素の面制圧から逃れた位置にいる個体が、急襲の体勢を取ろうと飛び上がっているのを見つけた。

「上! やらせない、行け!」

 拳を振るう。竜爪の鉤爪が切り離され飛翔する。ミサイルのように襲来した爪にハーピーは驚いて怯み、避けそこなって肉に爪が食らいつく。

「ギギャギャ!?」
「せぇーのッ!!」
「ギュエ……っ」

 鉤爪と魔力で繋がったガントレットをアステラは全力で振る。紐付きの鉄球めいてぶん回されたモンスターは他の個体を巻き込みながら落下し、崖に叩きつけられ絶命した。
 不利を悟った数匹のハーピーが怯えた鳴き声を囀り、身を翻して逃げようとするも翼を赤い閃光が貫く。

「それじゃぁ畳み掛けていこうか」

 発射元は舞い戻った雲雀だ。指から血の弾丸を射出し、怪鳥の羽に穴を穿っていく。
 穴だらけの翼では満足に飛行できないハーピーたちはふらふらとホバリングをどうにか維持する。しかし、飛ぶことに意識が集中してしまったために迫る拳に気づけなかった。

「そら、吹き飛べ!」
「グギャァっ」

 ロケット突撃してきたアステラの竜爪がモンスターを弾き飛ばして纏めあげる。一塊になってしまい空中制御もできない状態の敵の群れ。混乱と動揺の渦中にあるハーピーたちは暴れることしかできず、事態を解決する術をもたない。
 そして、無数のサカバンミサイルが餌に群がる魚群の如く降り注いだ。雑多な悲鳴を上げながら羽毛と血を撒き散らし、ハーピーたちは谷の底へと落下していった。

「あと3億年くらいは頑張ってから来るがいいぴす」

 若造めと言いたげな雰囲気の純素は、ふふん、と落ちていったハーピーを見下ろす。
 アステラは隣まで飛翔して留まり、雲雀はやれやれと肩をすくめつつも警戒は怠らず。
 影の奥から新たな怪鳥たちの羽ばたきが響く。けれど、その音の数は最初に比べて少ない。どうやら、群れの底も見えてきたようだ。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

フィオ・エイル・レイネイト
こんなところで襲われたら最悪崖の下に……ってのは、向こうも同じじゃないかな

翼をもつ百鬼夜行を従えてハーピーへ向けて跳躍。周囲の地形や呼んだ配下妖怪を足場にハーピーの上へ飛び乗れば、刀を振るってその翼を断って崖の下に突き落とす
ハーピーたちすらも足場にそれを繰り返し、ひたすらに数を減らしていこう
相手方の攻撃は武器で受けつつ配下妖怪のいる方角へ逃げるように弾かれるよう加減を調整

「最悪どうなるか、を想像できるのは悪くない素養だと思うよ。後はその最悪を引かないように立ち回れるだけの経験値かな。ベテランに師事して経験積むのが良いんじゃないかな
誰だって最初はルーキーだし、それを揶揄する人もそういないでしょ
東大和・斬花
此処では不利……か
ならば肉を断たせ骨を斬るのみ
「汝らを斬る」
そう言い放ちあえてその場に座し、刀のみを鞘中で構える
そして攻撃された瞬間に鞘走る居合で反撃、一の太刀で爪を弾き、二の太刀でその翼を断つ
龍統・ミツアキ
「さぁ貴様の業を数えろ…」

【忍び足】で接近し攻撃。

防御は【エネルギーバリア】【受け流し】を使用、間に合わない場合のみ左腕を盾変わりに。

多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の√能力者に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。

あとはおまかせ。
【連携】【アドリブ】大歓迎。
よろしくおねがいします!
継萩・サルトゥーラ
松六マスターにおまかせします。かっこいい継萩・サルトゥーラをお願いします!

アドリブ歓迎。
「やったろうじゃないの!」
「まぁ焦んなや、楽しいのはこれからだ」

√能力は指定した物をどれでも使用ます。
戦うことが好きで好きで楽しく、戦闘知識や勘を活かしてハデに行動します。
楽しいからこそ冷静でいられる面もあります。
多少の怪我は気にせず積極的に行動しますがヤバいときは流石に自重します。
仲間との連携も行えます。
軽口を叩いたりやんわりと皮肉を言ったりしますが、他の√能力者に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!

 羽ばたく音がダンジョン内に反響する。少なくなったと言えどもハーピーの群れは今だ脅威足りうる数だ。

「此処では不利……か」

 斬花の呟きは冷静に状況を判断してものだ。斬撃が飛ぶなればともかく、彼女の長大な刀でも飛ぶ相手に届かない。寄って斬ろうにも機動力が不足、追いつかない。
 であればどうする? ならば肉を断たせ骨を斬るのみ。

「汝らを斬る」

 宣言する。ばさりと羽織を脱ぎ捨て、鞘に納めた大太刀を傍らに置き、岩の床に正座する。その姿は牡丹の如し大和撫子の美しさ。ここが地下のダンジョンでなければ誰もが見惚れた所作であろう。
 生憎と見ているのはハーピーのみで、怪物に美麗さを理解する情緒は無かったらしく襲撃の体勢を取り始める。彼女らには殺して喰うという本能が優先されるのだ。
 上空から怪鳥が急降下する。翼を畳み、鋭い矢のように高速で迫る敵の影。音も気配も無く来る危機に、斬花は鋼のように冷たい視線を向けた。

「私の眼は天網の如し」

 振り下ろされる爪を前に鞘を掴んで神速の抜刀。閃く大太刀が攻撃を弾く。思わぬ反撃への衝撃と、一撃を流されたことでハーピーは体勢を崩して怯んだ。

「逃しはしない」

 瞬く二の太刀が紙を裂くように翼を切断。遅れて噴き出す血飛沫の中、怪鳥が悲鳴をあげる。地に落ちてのたうち回る敵を踏み止めて見下ろし、斬花は刀を上段に構えた。さながら、断頭台のギロチン。
 鋭い呼気。落雷めいた石火の振り下ろしがハーピーの首を断つ。ごろりと転がる頭を一瞥した彼女は、愛刀を振って血糊を落とし、鞘に納めて羽織を掴み、次なる獲物へと向かう。
 他方、飛び回るハーピーに対し対空射撃の弾幕を張るのは継萩・サルトゥーラ(|百屍夜行《パッチワークパレード・マーチ》・h01201)。大型ガトリング砲タイプのファミリア・セントリーが吼え猛るように|化学弾《ケミカルバレット》を吐き出し、怪鳥を撃ち落とさんと狙う。

「鳥の化け物を落とせってか? やったろうじゃないの!」

 最初に突撃して超強酸に溶かされた個体を見たせいか、ハーピーたちは大きく旋回して射撃を避けている。化学弾は直撃せずとも炸裂して広範囲に酸を撒くため、怪鳥たちは思った以上に回避距離を取らねばならない。

「そらそらそらぁ! どうしたツギハギ鳥、来ないのか?」
「グルァ!!」

 追い立てるようにガトリング砲を乱射する。言葉を理解しているかは定かではないが、挑発されていることはわかるらしい。イラついたように鳴き回る様子に、サルトゥーラは口角を上げる。
 その時、景気よく弾を吐き出していたガトリング砲が停止した。

「おっと、弾切れか? これはヤバいぜ」

 いっそあからさまなほどの演技である。しかし、焦りと怒りが溜まって冷静さを欠いたハーピーは今が好機と飛びかかった。

「ギャィ! ギャィ!」
「まぁ焦んなや、楽しいのはこれからだ。そうだろ?」

 剣のように鋭く殺意に満ちた爪が振るわれようとした刹那、サルトゥーラの前にいつのまにか立っていた影が1人。

「さぁ貴様の業を数えろ……」

 |龍統・ミツアキ《りゅうどう・みつあき》(千変万化の九頭龍神・h00681)が龍氣を溜め込んだ霊剣を手に、敵が死地に飛び込むのを待ち構えていたのだ。
 勢いのついている怪鳥に止まる手段は無い。虎口ならぬ龍の顎に入っていたと気づいても、逃げる暇は与えられない。

「内に秘めたる九頭龍よ、今此所に顕現せよ」

 厳かに振るわれた霊剣から龍が生じる。それは八柱の龍と双頭を持つ一柱の龍であり、在るだけで大気を震わせる力を持つ。加えて、サルトゥーラがぶっ放していた化学弾には味方を強化する効能があり、九頭龍の力は常よりも増大しているのだ。

「ギャ、ギャ……っ」

 怯えて逃げようとするハーピーだが、何もかもが遅すぎた。声ならぬ意思の咆哮を放ち、九頭龍が怪鳥へ食らいつく。まるで草原を焼き払うかのように敵の群れがあっという間に駆逐されていった。
 跡形もなく消し飛んでいく敵を感慨も無く見やるサルトゥーラは、ソードオフショットガンを肩に担ぐように持って軽口をたたく。

「スゲー威力だ。頼りになるぜ」
「次だ。行くぞ」
「応よ」

 殲滅を終えた2人は、残敵掃討のために移動するのだった。
 ハーピーを討伐していく√能力者たちの姿を、岩の影からサラは見る。

「皆さま、強いですわ……」

 √能力者たちのことを先輩冒険者と認識している彼女は、ただ感嘆の息を吐く。

「最悪どうなるか、を想像できるのは悪くない素養だと思うよ」
「ふぇ?」

 話しかけられるとは思っていなかったのか、サラは気の抜けた返事をした。振り向いた先にはフィオ・エイル・レイネイト(無尽廻廊・h06098)が立っており、言葉を続けながら横を抜けて行く。

「後はその最悪を引かないように立ち回れるだけの経験値かな。ベテランに師事して経験積むのが良いんじゃないかな?」

 鈍い赤色の髪を揺らし、刀の柄に手を添えて、フィオは助言を綴る。彼女のお人よしの性が、口を開かせてしまうのだ。

「誰だって最初はルーキーだし、それを揶揄する人もそういないでしょ」
「は、はい。じゃなくて、ええ! そこまで仰られるならば、聞き入れることもやぶさかではなく!」

 口元を緩めてふっと笑い、フィオは足を進める。駆け出しにしては悪くない、けれど駆け出しには違いない。存外才は伸びるだろうか。それを知るには、怪鳥どもを狩って未来を守らねばならない。
 バサりと羽ばたく音が近づいてくる。緩めた表情を引き締めて、フィオが指を鳴らすと配下の妖怪たちが次々と召喚された。翼持ち空を行く百鬼夜行を従えて、フィオは疾走する。

「こんなところで襲われたら最悪崖の下に……ってのはさ」

 足に込めた力を地に叩きつけて跳躍。わざわざ動けないフィールドに出てくるなんて、と嘲笑するように鳴くハーピーは両足の爪で引き裂こうと振るう。
 だが、フィオは配下妖怪を踏みつけてさらに跳躍して避けた。攻撃を外して隙を晒す怪鳥の背中に着地した彼女は、刀を抜いて構える。

「そっちも同じじゃないかな」

 風切り閃く刃。遅れて噴き出る血飛沫。切り離された翼が宙を舞い、飛行手段を失ったハーピーが崖の下に墜落していく。すでに離脱していたフィオは、手近な個体の背中に跳び乗った。
 仲間の末路を目にしたハーピーが彼女を振り落とそうと暴れるが、冷静に翼に刀を突き刺されて痛みに動きが止まった。その瞬間、根元から切断される翼。

「ギギィっ!?」
「次ね」

 落下するより速くフィオが跳ぶ。ハーピーあるいは配下妖怪を足場に、八艘跳びめいて次から次へと軽快に怪鳥を落としていく。
 空中にいる間に爪が迫れば、刀で防ぎ弾かれることでさらに飛び、配下妖怪や地形を利用して跳躍する。羽は無くとも自在に跳ぶ彼女を敵は捕らえることはできず、逆に飛行手段を奪われ地の底に次々落ちていった。

「これで終わり、かしら?」

 フィオが地面に戻ってきた時には、モンスターの群れは狩り終わっていて。サラが再び感嘆の息を吐くのだった。
 しかし、これで終わりではない。策略を防がれた黒幕が、逃げるつもりが無いのならば。あとは自らの手で目的を果たすべく動くのみ。先のハーピーたちとは違う羽ばたきの音が響く。どこからともなく、黒い狂気が現れる。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

第3章 ボス戦 『堕落者『ジュリエット』』


POW レガシー・オブ・デス
【処刑鎌型の遺産『ルート・ハーヴェスター』】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【√能力無効化空間】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
SPD フォービドゥン・フルーツ
爆破地点から半径レベルm内の全員に「疑心暗鬼・凶暴化・虚言癖・正直病」からひとつ状態異常を与える【禁断の果実(食べた者にも効果がある)】を、同時にレベル個まで具現化できる。
WIZ スレイブ・オブ・ジュリエット
あらかじめ、数日前から「【地域に生息する存在を無差別に隷属化する】作戦」を実行しておく。それにより、何らかの因果関係により、視界内の敵1体の行動を一度だけ必ず失敗させる。
√ドラゴンファンタジー 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 バサ、と黒幕が姿を見せた。
 艶やかにして鴉の濡れ羽色を纏う堕落者『ジュリエット』は、見るものを惹きつける美しさだ。正常ならば。

「あぁ、偉大なりしドラゴンプロトコル様……こうして御姿を拝見させていただけたこと、光栄でございます」

 恭しく頭を垂れる。その視線と意識はサラに向けられており、内包される敬意と礼儀に偽りはない。しかし、対象となっているサラは、顔面蒼白となって絶句していた。

「できれば御身を傷つけたくはありませんでした。ですが、こうなってはもはや、他に手立ては無く……けれどご安心ください」

 黒と反する白い肌に縫われた鱗。植えられた角。なにより目を引くのは、黒い天使の翼と対を成す、竜の翼。幾つもの竜翼を縫い合わせた巨大な翼が背中に存在していた。

「御身の全てを、必ずや|真竜《トゥルードラゴン》と成すために。卑賤な我が身を以て、取り戻します」

 話を一切聞く気の無い、己の|世界《しんこう》で閉じた|狂気《りゅうぐらい》。悍ましき儀式を止めるために、戦いの火蓋が切られた。
逆刃・純素
……こう、いいたいことはありますけど
言っても絶対聞かないタイプですよねこの人ぴす。
さっさとやっつけて帰っちゃいましょうぴす。

アイテムのフレックスウォールを起動して
サラさんを守る簡易拠点を作成、
その前に陣取って技能の拠点防御で防衛戦に持ち込みます。
残念ですけど、ここは行き止まりぴす。他を当たってくださいぴす。
√能力に技能の居合とカウンターを合わせて敵の攻撃の隙をつきます。
可能なら武器か翼を狙って攻撃します。
先に状態異常を食らっていた場合、技能の野生の勘でねじふせます。

変なのに噛まれたと思ってすっぱり忘れるといいぴす。
無事に帰るまでが冒険ぴす!
アステラ・ルクスルブラ

なるほど、これが狂信者ってやつか
そんな狂った思想の為にサラを犠牲にはさせないし、私だってそんなのお断りだ
ドラゴンプロトコルが、あんた達が思うほど落ちぶれた存在か……その身で確かめさせてやる!

ムカつく相手だけれど冷静に行こう
サラは最優先で護る、そのためにもこちらに注意を引く
もしドラゴンプロトコルに執着して私を狙ってくるなら好都合、その分仲間には自由に動いて貰おう

体内の竜核炉を全開にして【赫光形態】を発動、最初から全力で挑む
翼からの魔力の噴射による加速で、機動力と制動力を大幅に強化
近距離で鉤爪の連撃を仕掛け、遠距離で翼からの魔力光線を放ち
手数を活かして攻め立ててこちらを意識させる

敵がこちらに狙いを定めたなら、機動力で躱したり、鉤爪で弾いたり、魔力障壁で強化した盾で受けたりと、捌くことを優先する
もし全てを捌ききれずとも覚悟の上、それなら倍返しにしてやるだけだ

敵に消耗が見えたなら、【赫光形態】での【竜爪連撃】で、圧倒的な速度と手数で一気に畳み掛ける
竜から奪い取った角も翼も、全部叩き折ってやる!

 モンスターと戦うとか、危険な罠とか、ダンジョンの不思議な現象とか。そういったものと相対する覚悟は――十分なものであったかはともかくとして――あった。しかし、狂信者に狙われる想定も覚悟もサラには無かったのだ。一応、大剣は構えられているが、構えているだけでしかない。
 恐怖に囚われる彼女であったが、庇うように立つ影がいた。

「……こう、いいたいことはありますけど、言っても絶対聞かないタイプですよねこの人ぴす」

 呆れるように呟きながら、純素がサラの盾となる。

「なるほど、これが狂信者ってやつか」

 怒りの炎を宿し、アステラが両の拳を打ち付け合う。
 頼もしい2人の√能力者のおかげで、サラは踏みとどまる。純素が顔だけ振り返り、大したことじゃないように語り掛けた。

「さっさとやっつけて帰っちゃいましょうぴす」
「……は、はい! ワタクシ、ここで終わるつもりはありませんわ!」
「あんな狂った思想の為にサラを犠牲にはさせないし、私だってそんなのお断りだ」

 純素が金属板を取り出し、地面に刺しこむ。ロックの外れる音がして折り畳まれていたパーツがガチャガチャと駆動してサラを守る|簡易防衛陣地《フレックスウォール》を構成した。サラがびっくりして「ひゃっ」と叫んでいるが、純素は気にせずアステラに告げる。

「わたしが防衛するぴす。ここは任せろですぴす」
「了解だ!」

 初手から全力。アステラは翼を|赫光形態《モドゥス・ルクスルブラ》に変形。竜核炉が全力駆動し、砲火の如き跳躍飛翔でジュリエットへ肉薄する。
 重騎兵の突撃めいた竜爪の一撃を、処刑鎌が受け止める。ダンジョンの隅々まで響き渡るような金属音と衝撃波、異なる2つの黒が交差した。

「ドラゴンプロトコルが、あんた達が思うほど落ちぶれた存在か……その身で確かめさせてやる!」
「ああ、御二人もドラゴンプロトコル様に拝見できるなんて……夢のようです!」

 本当に話聞かない、と誰しもに感想を抱かせる狂信。しかし、鍔迫り合いは拮抗していた。信仰か、狂気か、執着か。敵の力は強い。

「なんと美しい翼でしょう。まるで磨かれた黒曜石、清らかな暗黒の色」

 不釣り合いなほど巨大な、ツギハギの竜翼が動く。

「貴方様も、必ず。必ずや、|救って《たべて》見せます」

 空を打つ。羽ばたきが生む推力が、ジュリエットを押し上げる。だが冷静さを保っているアステラは素早く捌いた。鉤爪で鎌を受け流し、流されるままに距離を離してみせる。

「なるほどね。やっぱりあの翼は飾りじゃないか」

 力づくのゴリ押しは厳しそうだ。しかし、幸いにも敵の意識はアステラに向いた。サラを守ることが最優先である以上、ジュリエットを惹きつけることが肝要。形態変化も長期間続くものではないことも計算に入れて、ここは猛攻だとアステラは攻めの姿勢を崩さない。
 魔力を噴射する翼を広げて、狙いを定める。

「喰らいな!」

 赫い魔力の光線を連射する。迫る閃光に対しジュリエットは竜翼で全身を包み込みガード。連続して着弾し粉塵が敵の姿を覆い隠すが、巨大な翼が塵を払って無事な姿を晒す。
 そして、ジュリエットの白い手には見慣れない果実が乗っていた。

「粗品で申し訳ないですが、どうかお受け取りください」

 複数の果実を投げつけ、彼女は後退する。アステラは撃ち落とそうとして、純素の声が飛ぶ。

「それは避けた方がいいぴす!」

 野生の勘が導いた答え。アステラは即座に対応して高速機動で果実を回避しながら敵に接近していく。
 黒曜の竜翼から魔力光線を放ちながら飛翔突撃するアステラに対し、瞬間的な加速で勝るジュリエットは果実を放って回避行動を行わせ減速を強制することで、距離を詰めさせまいとする。だが、総合的な速度はアステラが上だ。徐々に近づきつつある。

「このままでは|救え《たべれ》ません。ああ……ドラゴンプロトコル様を地に墜とすのは、心苦しいですが」
「待て!」

 直角に、真下へ。ジュリエットが急降下。アステラも追う。
 ツギハギの竜の翼が大気を打つ。狂信者が携えし鎌は遺産であり、その力は一定範囲の彼女を除く√能力無効化空間を作り出すこと。アステラとの空中戦の最中では使う隙が見出せなかったが、地面で発動すれば有利なフィールドを生み出せる。
 そして、鎌を振るう瞬間。

「残念ですけど、ここは行き止まりぴす」

 純素が間近まで踏み込んでいた。

「他を当たってくださいぴす」

 古代海底抜刀術の居合抜き。滝を上る鯉の如き迸る刃が処刑鎌を弾く。
 一手防いだだけ、いや違うとジュリエットは気づく。鎌の異変に。

「遺産の力が……! この腐った魚めがッ!!」

 鬼か悪魔か憤怒の形相の狂信者に、純素は涼しい顔で忠告した。

「頭上注意ぴす」
「なにを」
「捕まえたッ」

 赫い流星が降り注いだ。ジュリエットを地に叩きつけたアステラは、息を継ぐ暇も無く竜爪を連打。慈悲も容赦もない連撃が岩肌にクレーターを作るほど放たれて、敵は悲鳴を上げることすらできない。

「竜から奪い取った角も翼も!」

 振り上げた右手。小指から順番に折り畳まれて親指でロック。赫い魔力が竜爪に渦巻き、さながらドラゴンの顎めいて力がこもる。

「全部叩き折ってやる!!!」

 渾身の鉄拳が、狂信者の顔面に降った。
 元の防衛位置に戻った純素は、サラに告げる。

「変なのに噛まれたと思ってすっぱり忘れるといいぴす。無事に帰るまでが冒険ぴす!」
「そうですわね。忘れ……わす、忘れられ、ます?」

 敵も先輩もインパクト強くて忘れ難いですわ、と思うサラだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

フィオ・エイル・レイネイト
(サラを庇うように彼女の前に立つ)
何だっけ。喰竜教団?
宗教屋さんの在り方は別に否定しないけど、その気がない子を無理に従わせるのは無粋ってものだよ
言い換えてあげようか。力でしか教義を達せない君の仕草が教団とやらの限界だよ

妖刀を抜き放ち力の開放
燃える緑眼と緑の刀身が敵意を帯びて輝くとき、周囲に緑色の風が吹く
隷属させたのはハーピーかインビジブルか、まあそれを盾にする腹積もりだろうけれど
一人や二人盾になったとて、風が止まるとは思わないでしょう?

「サラさんって言ったっけ?
冒険屋をやるってことは、こういう訳の分からないこと言われる時もあるってことだよ
今回ばかりは相手がぶっ飛びすぎてるから手伝ったげるけどね
東大和・斬花
人の敵、この手で断ち切らん
鎌による攻撃は見かけは派手だが弱点がある、刃先が前にしか無い事だ
ルートブレイカーの蒼炎をもって周囲を焼却する
これは攻撃では無く目くらましだ
その間に相手の懐に入る、さすれば刃先は当たる事無し
そして炎を纏った右手で鎌の柄を掴めば、最早お前の武器は唯の鎌
そしてそのまま打突、体勢を崩し一閃
刻見・雲雀

話す気力も削がれるね……この手の狂信者が一番厄介だから困ったものだ。
まあそもそも話したところで聞く気がないだろうし、そういう相手には相応の返しをするだけなんだけど。
サラさん、絶対にそこから動かないように――大丈夫、君には指一本触れさせないから。

『緋血紅霧』でサラさんを覆い【迷彩】に近い状態へ
位置を特定しにくくすることで眼前の敵に注力せざるを得ない状況に追い込む
どう反応するかはわからないけどそれで相手が感情的になったら御の字だね

【緋血殲刃】を発動、『緋血傷器』に腐敗の『呪詛』を絡めて投擲
フルーツを腐敗させることで爆発を阻止し√能力を抑える
爆発阻止に失敗しても投げたところで距離を取れば能力の範囲外になるハズだ

ただこれはあくまで【フェイント】、本命はサラさんを隠すと同時に仕込んでおいた【呪術・紅鳳蝶】での包囲攻撃
術式を弄り【闇に紛れる】状態にしておいたから【不意打ち】を食らわせられるハズだ

【呪詛】はたっぷり込めたから、精々苦しんで死ぬことだね。
狂信者の末路にはそれが一番お似合いだよ。

 お椀状に凹んだ地面から、ジュリエットが鎌を支えに立ち上がる。角が折れて鱗は剥げ、白い肌を土と血に汚している姿は最初の美しさが見る影もない。だが、その顔に浮かぶのは怒りでも哀しみでもなく、ドラゴンプロトコルへの執着、信仰であった。どれほどボロボロになっても決して陰ることのない、爛々と輝くガラス玉のような瞳に、サラはひゅ、と息が詰まる。
 背の異なる1対の翼を躍動させ、サラに近づこうとする歩みを3人の影が妨げた。

「何だっけ。喰竜教団?」

 サラを庇うように立つはフィオ。腰に佩いた刀をいつでも抜けるようにしながら、敵を見据える。

「宗教屋さんの在り方は別に否定しないけど、その気がない子を無理に従わせるのは無粋ってものだよ」

 少女の外見と不釣り合いな老成した雰囲気。このような輩と相対することは初めてではないといった様子で、彼女の表情は実に平坦なものだ。
 対してジュリエッタは、どんな言葉も馬耳東風だった。ドラゴンプロトコル以外を見下しているゆえに聞く耳を持つことは無い。ただ道を遮るものを排除するために、意識を向ける。

「言い換えてあげようか」

 フィオが刀の柄に手を添える。無駄な力を込めず柔らかく握った。

「力でしか教義を達せない君の仕草が、教団とやらの限界だよ」

 静けさとは怒りを鋭く研ぎ澄ますことだ。彼女は刀を、妖刀『無尽廻廊』を鞘から抜く。碧玉を思い起こす緑の刀身が妖しく輝き、新緑の木の葉の如き緑の瞳が燃え上がり、カワセミの羽のような翠色の風が巻き起こる。

「ドラゴンプロトコル様……貴方の救いを阻む下劣な者共を、すぐに駆除しますので。しばしお待たせすることをお許しください」
「話す気力も削がれるね……この手の狂信者が一番厄介だから困ったものだ」

 雲雀が短く息を吐く。何を話しても聞く気がないということがわかっていても、こうして面と向かい合えばそれなりに消耗を感じる。相応の返しをせねばなるまい。それが最も適した対応というものだ。

「サラさん、絶対にそこから動かないように――大丈夫、君には指一本触れさせないから」

 血の気が引いているサラは返事の余裕無く、しかし頷くことで意思を示す。安心させるように笑いかけた雲雀は、手から血の煙を振り撒く。緋色の霧はヴェールのようにサラを覆い隠し、その姿を迷彩めいて溶かした。
 目標を見失えどもジュリエットに躊躇いは存在しない。祈る。それをきっかけに仕込みが作動。事前に隷属していたハーピーが天井から急降下して3人を狙う。奇襲で動きを止めるかダメージを与えて、その間に、という策略なのだろう。フィオも雲雀も動かない。気づいていない? 否だ。

「人の敵、この手で断ち切らん」

 斬花が無造作に振るった右手から放たれた蒼い炎が、ハーピーを焼き払った。

「稚拙な策だ。敵意が隠せていない」

 単に指摘しただけ、と冷徹な無表情で評する斬花。彼女を信用しているからこその無防備。
 憂いを断ったフィオは敵に向けて刀を振る。刃の軌跡に沿って緑の風が吹き、風に乗って斬撃が飛翔した。振るわれる刃は瞬時に10数回重ねられ。幾重にも連なる風は嵐となってジュリエットを襲う。

「ああ、ドラゴンプロトコル様、ドラゴンプロトコル様っドラゴンプロトコル様ッ!!」

 盾にされたハーピーは瞬く間に血達磨と化した。巨大なツギハギの竜翼で防御するも皮を剝ぐように徐々に削られる。ジュリエットは射線から外れるべく上昇し、禁断の果実を投擲して攻撃の中断を狙う。が、読んでいたと言わんばかりに紅のナイフが果実を貫き、腐らせ、遠くへ弾く。

「苦し紛れは通さないよ」

 投げナイフに変じた血液を手中で弄びながら、雲雀の鋭い視線が敵を射抜く。
 しかし、ジュリエットは鎌を構えて前に進む。己の信仰が進ませる。狂気が止まることを許さない。機関銃のように風と刃が刻む嵐の中を、腐敗の呪詛が混ぜられた緋血のナイフが刺さる只中を突き抜けたジュリエットはついに2人の目前に至り、ズタズタの翼を広げて処刑鎌を振り下ろす。ことはできなかった。

「鎌による攻撃は見かけは派手だが弱点がある」
「は……?」
「刃先が前にしか無い事だ」

 掲げた鎌が下りる直前に一歩踏み込み懐に潜り込んだ斬花が右手で鎌の柄を抑えていた。
 巨大な刃を長い柄の先に備える鎌は、重心が端に偏っている。振り子のように重さを利用して振り回すこの手の武器は、支点こそが最も威力が低くなるのだ。ゆえに斬花はあえて前に出て、右手だけで受け止めることを可能とした。さらに蒼炎が鎌を取り巻き、遺産の力を消し去る。
 
「もはやお前の武器は唯の鎌」
「下劣な者共が、ドラゴンプロトコル様の邪魔を! ああ、必ず私が、御救いしごっ!?」

 斬花が左手に保持している大太刀の柄頭で打突。正中線を突かれたジュリエットは呼吸ができず怯む。その隙に右手を離し、抜刀術の構えを取る。並び立つは|緑の疾風《フィオ》。
 何かを言おうと敵が藻掻けど声にならず、それでも咄嗟に後退なり跳躍なりしようとして気づく。退路を塞ぐようにひらひらと舞う、不吉な赤い蝶の囲い。

「悪いけど、逃げられると思わない方が良いよ」

 サラを隠した血の煙。投げつけた紅のナイフ。全て雲雀の仕込みなれば、あとは仕上げが残るのみ。

「|呪術《じゅじゅつ》・|紅鳳蝶《くれないあげは》……呪詛はたっぷり込めたから、精々苦しんで死ぬことだね」

 鱗粉、あるいは蝶そのものが触れた個所、吸った内蔵が腐敗する。傷ついた翼を腐らされては飛ぶことは適わない。下がろうとして蝶の群れに飛び込んでしまい、激痛に蝕まられるジュリエットは既に袋小路、もしくは――断頭台の壇上。

「私の風があなたの最期」
「一刀必殺」

 火花瞬く居合抜き、碧煌めく鎌鼬、双刃閃き重なりて狂気を討つ。首飛び胴を分かたれ、狂信者は力なく地に伏した。その手は最期までドラゴンプロトコルに伸ばされ、苦痛に歪んだ顔は、やはり何も見ていなかった。

「狂信者の末路にはそれが一番お似合いだよ」

 死体に背を向けた雲雀は、見るべきものは無いとサラのもとへ行く。
 フィオも刀を納めた後、サラへ歩み寄る。
 斬花は残心のち刀を鞘に納め、成すべきは成したと場を後にした。

「サラさんって言ったっけ? 冒険屋をやるってことは、こういう訳の分からないこと言われる時もあるってことだよ」

 長く続ければ、あるいは運が悪ければ変人奇人、トラブルに遭遇することもある。今回の相手は、珍しいパターンだった気もするが。

「今回ばかりは相手がぶっ飛びすぎてるから手伝ったけどね」

 仕方ないから、と言っているがお人よしの気が強いフィオは、仮に他の案件だったとしても首を突っ込んだだろう。
 ともあれ、命拾いしたサラはぷるぷるに震えている足を大剣で隠しつつ、表情だけは優雅さを保つ。

「本来ならワタクシの力で乗り越えなければならないところを、先輩の皆様に助けていただいたこと、心の底から感謝しますわ」
「どういたしまして。ま、無事でよかったよ」
「いろいろと貴重な助言もいただきましたわ。更なる修行を重ねて、レッドドラゴンの末裔にふさわしい冒険者となるために、先輩たちに追いつくために、ワタクシ頑張りますわー!」

 威勢だけは良いとはこのことだろう。助言を真摯に受け止めたのは本当のようだが。心配になってきた雲雀は余計かなと思いつつも言葉を紡ぐ。

「君が続けるというなら、その意思を止めることはできないけれど。備えるべきものは備えてから挑むことだ。後悔しないように、ね」

 重く、多くの意味を乗せたその言葉の意味をサラは理解できない。だが、忠告であることはわかったらしい。真剣に受け入れて、彼女は冒険者の道を進むだろう。
 悲劇は防がれた。狂気が若い芽を摘むことを許さず、雛は羽ばたいて行ける。
 そして、√能力者たちは己の√へ帰還する。しばしの休息を得て、次なる予知を解決するために。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

挿絵申請あり!

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