星芒は竜漿の|第四形《Plasma》を見るか
●血潮に流れるは竜漿の煌き、斯くも似通うか
喰らうことと知ることは似ている。
いや、知ることと喰らうことが似ているというのが正しいのかもしれない。
知性とは即ち、過去より揺らなる命脈の連鎖である。
知りたいと願うことはどこまでも貪欲に成れる正義である。知的好奇心の前に倫理も慣習も儚い壁でしかない。
であれば、己の願いは正しい。
ドラゴンプロトコル。
なんらかの理由でかつての力と記憶を奪われ、人間の姿に堕とされた|竜《ドラゴン》である。
ならば、倣おう。
かつて|真竜《トゥルードラゴン》と呼ばれた彼らの貪欲と誇り、暴虐と調和、理性と無邪気さ。
「『喰竜教団』である、わたくしたちを誰も止めることはできない」
知性宿す生命体が、知的好奇心のままに突き進むことが正しく文明を発展させてきたというのならば、己たちの行いにどこも恥じるところはない。
全て正当化される。
確かに己たちはドラゴンプロトコルを見境なく、大人子供区別なく殺害し続けている。
だが、それは誤解である。
誤解の元は、いつだって不理解と無教養である。
「何故ならば、わたくしたちは一つになるから。√能力者は死なない。不死の体と融合を果たせば、ドラゴンプロトコルの皆様はもう死ぬことはない。いずれ、この身に接合縫合した肉体は輝かしき|真竜《トゥルードラゴン》の力を取り戻すかもしれない……」
いいや、きっとそうだ。
ドラゴンプロトコルの肉体だけで足りないのならば、√ドラゴンファンタジーに生きる生命体全ての血液中にある『竜漿』をかき集めるだけだ。
竜の魔力を帯びて生まれ育った汎ゆる生物に宿る『竜漿』。
もっと。
足りないのならもっと。
そのためにはもっと多くのダンジョンが必要だ。
「√EDEN……約束の場所。最も弱く、最も幸せで、最も豊かな√。此処であるれば、さらに竜漿宿すモンスターを増やすことができる。ああ、待っていてください。竜の誇りあれば、眼前な些細な死など無意味! わたくしどもは、皆様の復活に、この身を捧げることのできる喜びに打ち震えているのです――」
●星詠み
それは冷たい水面のような青い瞳だった。
黒髪が揺れて、星詠みである鍵宮・ジゼル(人間(√汎神解剖機関)の怪異解剖士・h04513)は、冷静さこそが常であるような平らな表情で集まった√能力者たちに呼びかけた。
「お集まりいただき、ありがとうございます。何者かが√ドラゴンファンタジーから√EDENに天上界の遺産を持ち込み、ダンジョンを発生させています」
√能力者にそう告げるジゼル。
彼女の瞳は緊急事態であっても冷静さを失うことはないようだった。
説明を続ける彼女は、事態への対処こそが急務であると告げる。
「このダンジョンを放置すれば、近辺の住民は次々にモンスター化してしまうでしょう。モンスターを増やしたい、という目論見が何を示すのだとしても、モンスターパンデミックを引き起こさせるわけには参りません」
無論である。
これを阻止するためにも急ぎダンジョンを攻略し、破壊しなければならない。
どうやら、このダンジョンのコアになっているのは√ドラゴンファンタジーの簒奪者であるようだ。
「このダンジョンは、√EDENの駅のプラットフォームに形成されているようです。複雑に絡み合う構造や、線路上通路……現れるトラップ列車に改札口。恐らく、駅という建造物の特色を全て飲み込んだダンジョンであるようです」
これを突破し、ダンジョンコアとなっている簒奪者の元へと向かわねばならない。
しかし、√EDENに天上界の遺産を持ち込んだ簒奪者の元に、ただダンジョンを攻略するだけで到達できるとは思えない。
「当然、皆さんを阻む雑兵は用意しているでしょう。しかし、面白いものですね」
何がだ、と√能力者たちはジゼルの言葉に訝しむ。
「ダンジョンは周囲の存在……竜漿を持つ生物を凶暴な『モンスター』に変えてしまう。つまり、√EDENにダンジョンが現れても同様の効果が現れるということは、その要因がある、ということでしょう」
検証が必要ですね、とジゼルは特に感情を浮かべることのない瞳で√能力者たちを見つめていた。
知性は、あらゆる障害を突破していく推進力だ。
であれば、彼女の言葉も頷けるところがある。
だが、当面の問題は唯一つ。
このダンジョンを√EDENに生み出した簒奪者の目論見を打破するために生まれたダンジョンは攻略し、破壊されなければならないということだ。
「そうですね。私の視たゾディアックサインによる予知はここまでです。とは言え、状況の推移によっては予知とは異なる場面が訪れるやもしれません。その場合は……」
臨機応変に、されど迅速に。
そう告げるジゼルは、√能力者達の背を見送るのだった――。
マスターより

マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回の事件は√EDENに突如として現れたダンジョンの攻略と、このダンジョンを生み出した簒奪者の撃破を行うシナリオになります。
ダンジョンのコアとなっている簒奪者はダンジョンの奥に潜んでいます。
これを撃破するためには、まずダンジョン化した駅を踏破しなければなりません。
●第一章
冒険です。
駅がダンジョン化しているため、その内部は複雑に絡み合う構造をしています。
まるで迷宮です。階段やエレベーター、はたまた線路や通路に至るまで、全てが複雑な様相を見せて言います。
●第二章
ダンジョンの踏破度によって変化します。
●第三章
ボス戦です。
状況などは断章をご確認ください。
それでは突如として現れたダンジョン。これを生み出した簒奪者との戦いに赴く皆さんの物語、その√になれますように、たくさんがんばります!
104
第1章 冒険 『駅・トラップ・ダンジョン』

POW
とりあえず進めば出口に辿り着くはず。駅トラップを乗り越えていく
SPD
急がば回れ。マッピングして駅トラップを回避できる道順を見つけ出す
WIZ
この駅トラップには規則性があるぞ。ダイヤや特性を解明して罠を潜り抜ける
√ドラゴンファンタジー 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ダンジョンと化した駅。
それは一見すれば、√EDENにて見受けられる駅そのものであったし、何の変哲もない場所だった。
だが、一歩、構内に踏み込めば√能力者たちは理解しただろう。
これが彼らの知る駅とは全く持って異なる構造へと変貌してることを。
まるで生き物の臓腑だ。
その内側を己たちが進んでいるように思えるほどに鳴動し、その通路を曲がる度に形が変化していく。
下っていたと思えば、いつのまにか上っている階段。
迷宮のように入り組んだ通路。
いつのまにか線路に踏み出していたかと思えば、警笛と共に迫る列車。
そこかしこが、罠だらけである。
危険極まりない。
だが、これを踏破しなければ、ダンジョンのコアとなっている簒奪者の元へと向かうことができない――。

事前封鎖は間に合っていたのかな?
駅丸ごとダンジョンか…しかもこの感じだと、未だ拡大を続けている様だな
迷惑千万過ぎるし、やり口がセコい。件のカルト教団が√EDENにまで出張って来るとはね…。リソース回収も含めて、この世界には、ダンジョン踏破者が居ないだろうと高を括っているんだろうが
させるかよ
◆探索
インビジブル融合で殺戮ドローンと視覚を共有し、各自半自律行動で一斉に散開して内部を|走査《scan》します
取り残されたか迷い込んだ一般人を発見したら自身が向かい、ドローンを1基預けて出口まで案内する
適切なルートを解析しつつ、ショートカット可能であればブラスターライフルで壁を掘削して怪力で抉じ開ける
邪魔だ
「させるかよ」
呟いた声は、地の底の暗闇に吸い込まれるようだった。
光るは視線。
陽の光を受けてきらめくのではなく、その血液に流れる竜漿の光。明滅するように、燃やすように、揺らめくように。
その光は己が身の内側から燃えるようだった。
かつて在りし、竜。
その魔力を帯びた血潮。
連綿と紡がれてきた血潮は、今、√能力者という別のなにかとなって地の底を目指して流星のように堕ちる。
「事前封鎖、間に合っているわけがないか」
二階堂・利家(ブートレッグ・h00253)は悲嘆にくれるでもなく、ダンジョンと成り果てた駅の内部へと踏み込んだ。
混沌としている。
通路の曲がり角を進めば、ヘビのように蛇行する別の曲がり角。
何度も何度も進む度に己の位置がわからなくなってしまう。
√能力、レギオンスォーム。
飛び出した小型レギオンが周囲の状況を具に確認する。
「駅丸ごとダンジョンか……しかも、この感じだと未だに拡大を続けているようだな。いや、違うな。成長している、というのが正しいのか。迷惑千万過ぎる」
加えて言うなら、と利家は吐き捨てた。
「やり口がセコい上に陰湿。このやり方、件のカルト教団か?」
憶測でしかない。
が、√EDENにダンジョンを生み出す理由なぞ、そう多くはないだろう。
全ては奪うためだ。
簒奪者とは、そういうものだ。
「リソース回収も含めているんだろうが、この√にはダンジョン踏破者がいないと高をくくってるんだろうな。いたとしても、後手に回ると思っている。なら、やはり、させるものあきょ!」
一気に走り出す。
レギオンから伝わる資格情報と己の位置を脳内でマッピングしていく。
この状況だ、遠からず、駅にいた人間たちはダンジョンによってモンスター化させられてしまう。
であれば。
「見つけた!」
レギオンを操作し、利家は取り残されていた人々を掴んで飛翔させる。
「な、なになに何!?」
混乱する人々を無視して利家はレギオンを後帰らせる。
駅の外に出せば、彼らがモンスター化することはないだろう。だからこそ、迅速に行動しなければならない。
「適切なルートの割り出し……変化していくダンジョンの通路……この先に人体反応はないっていうのなら!」
利家は手にしたブラスターライフルを構える。
「道はこじ開ける。邪魔だ」
銃口が展開し、放たれる一撃。
通路の壁面を吹き飛ばし、利家はさらにダンジョンの奥深くへと足を踏み出す。
何処の誰だかはしらない。
目的だってろくなものではないだろう。
だったら、潰すだけだ。
「その鼻っ柱っていうのを、へし折る」
ごきん、と己の腕の関節が鳴る。
それが、この目論見に対する反撃の狼煙だった――。
🔵🔵🔵 大成功

すべからく駅ってダンジョンみたいなもんじゃない?
僕知ってるよ? 梅田とか新宿とか、観光客に優しくないからね。僕も迷ってひどい目にあったし。その時は通りすがりの人に道順教えてもらってなんとかなったけど。
まぁそれ言うなら空港も似たようなもんかぁ! 成田も羽田もどういう構造してるんだかね! ギャハハハハ!
オービットレギオンをばらまいて偵察、マッピングするよ!
こっちを攻撃してくるトラップはレギオンの搭載火器とガトリングで迎撃!
時間内から、できる限り近道で奥に行くよ!
というか部位の脱着とか合体とかは僕達ロボットの専売特許なんだよねぇ。ま、喰竜教団潰しちゃえば関係ないかァ! ギャハハハハ!
ダンジョン、それは迷宮。
入り組んだ通路。
見通せぬ闇。
仕掛けは往々にして存在し、一歩を踏み出す者を許さぬと言わんばかりである。
だがしかし、他者を貶めんとする罠あれど、時として、そのような意志なくとも『そうなってしまう』建造物というのは存在している。
√が違えば文化も違う。
ルシファー・アーク(裏切りの決戦兵器/アバウトに生きる機動兵器・h00351)は、目の前に広がる光景に思い出していた。
「すべからく駅ってダンジョンみたいなもんじゃない?」
そう思い出していた。
人類の残滓。
その遺構とも言うべき中には、まさしく迷宮めいたものがあった。
改築に改築を重ねた結果、より利便性を求めたはずなのに、生まれたのは便利とは程遠い不便。
「僕知ってるよ? 梅田とか新宿とか。観光客に優しくないからね」
うんうんとルシファーは頷くように頭部を揺らした。
√ドラゴンファンタジーの遺産を持ち込んだことによって√EDENにおいてもダンジョンが発生している。
これを踏破し、ダンジョンコアである簒奪者を撃破しなければならない。
このダンジョン化した駅は、ルシファーにとっては√EDENの駅にも負けてはいないと思うものだった。いや、逆ではないだろうか、普通、という思考はルシファーの中にはなかった。
あれはやばいものだった。
本当にでてこれないのではないかと思うほどに迷いに迷った。
天然の迷路とでも言うべきか。
ひどい目にあったメモリーがまるで人間のように反芻される。
「あの時は親切な通りすがりの人がいたからなんとかなったけど……まあ、それを言うなら空港も似たようなもんかぁ! 成田も羽田もどういう構造してるんだかね! ギャハハハ!」
笑い話になるのならば、お慰みというやつである。
「オートレギオン、偵察、マッピングよろしく!」
ルシファーはダンジョンと化した駅へと飛び込む。
周囲の状況は√能力によって呼び出したレギオンが具に伝えてっくれる。トラップが点秋して壁が迫りくるのだとしても、ここからは力技であった。
「ガトリング! 斉射!」
放たれる弾丸が迫りくる壁をぶち抜き、粉砕する。
力技もいいところであった。
ダンジョンを全うに踏破するつもりなど、端からルシファーにはないのだ。
「だって時間ないからね! できるだけ近道を選ぼうっていうのなら、こういう手段になるでしょ!」
ばらまかれる弾丸。
ただトリガーを引きたいだけなのではないかと言われたら否定できないことである。
「でもまあ、部位の脱着とか合体とかは僕達ロボットの専売特許なんだよねぇ。ま、どんなカルト教団だって、潰しちゃえば関係ないかァ! ギャハハハハ!」
けたたましい笑い声とガトリングの砲火が重なる。
進むべき道はもうわかっている。
古今東西、ダンジョンというのは地の底か、遥か頭上か。
そのいずれかにこそ、ボスが存在するものだ。
「駅と言えば電車、電車と言えば地下。モノレールもあるかもしれないけれど、まあ、地下でしょ、ここは!」
ルシファーは笑いながら、ダンジョンコアである簒奪者を求めて、さらに奥深くへと進撃するのだった――。
🔵🔵🔵 大成功

迅速を以て撃ち、人々を助ける
それが今の私の務めなら、この翼をもって人々を守りましょう
自分たちの世界だけではなく、他の世界までその狂信を広げて、犠牲者を増やす事なんて許せませんから
と、眦を決して私の故郷の√では見慣れた
けれど、恐ろしさと不可解さを覚えさせるダンジョン
迷路の姿に、今は付き合ってあげる時間はありません
「まっすぐに参りましょう」
ただ真っ直ぐにに進む道を作ります
天星弓を構えて、祈りにて喚ぶ神秘の青き炎
それを属性攻撃として番え、多重詠唱で増幅して放つは【彩に溢れる花風】
着弾すれば青い花と炎を榴弾の如く散らす矢の貫通攻撃です
ただ気配のする方へと真っ直ぐに
地面がなければ翼で飛んで空中ダッシュを
人々を助ける。
それが今の己の務めである。責務であると言っていいし、この翼はそのためにあるのだと 弓槻・結希(天空より咲いた花風・h00240)は思っただろう。
意志に反応するようにセレスティアルの翼が羽ばたく。
眼前にあるのは、淀んだ空気を内包するダンジョンと化した駅。
その構内には如何なる罠が仕掛けられているのか、わからない。
だが、ためらっている時間はない。
彼女にとって我が身の危険以上に、この駅内に取り残された人々の生命を救うことのほうが急務であった。
またダンジョンは周囲にある存在をモンスター化させる。
「自分たちだけではなく、他者にまでその狂信を広げて犠牲者を増やすことなんて許せません」
そう、救命者として、許してはおけない。
瞳を見開く。
その瞳には√能力の発露を示すようにインビジブルの孤影が揺らめく。
引き出されたエネルギーが彼女の純白の翼の羽ばたきと共に|彩に溢れる花風《ビビッド・ウィンド》を生み出す。
花弁が舞い散る。
そのさなかを彼女は駆け出して飛ぶ。
迷路のような駅内部。
もとより迷宮のような複雑な通路。
明滅する案内灯。
どれもが彼女にとっては特異な光景であったことだろう
手にした青薔薇の装飾が施された天星弓『フェルノート』 が白い星光を矢に変えて放つ。
まるで意志を持つようにして結希の道を阻んでいた構内の壁面を矢がぶち抜く。
粉砕された壁の破片が吹き荒れる風によって地面に落ちる。
「気配は……この方向ね」
「な、何……何が起こったの……?」
砕かれた壁面。
彼女が見た先にあったのは、うずくまる一般人の姿。まだモンスター化の影響を受けていない。
結希は一般人の元へと歩み寄る。
「この道は一本道よ。走れば、まだ間に合うわ。外に出て」
「……は、はい……!」
それは天使との邂逅にも思えたことだろう。
あまりのことに一般人は頷くことと結希の示す一本道を走ることしかできなかった。
「まっすぐに参りましょう」
結希は矢をつがえる。
星の光が導きになるように。未だこの駅内に残された人々の導となるように、ただひたすらにまっすぐにダンジョンの最奥を目指すように√能力の力によって壁を砕いて一本道を刻む。
だが、ダンジョンもそのような無法を許すわけがない。
砕かれた壁面を走る結希の足元が罠を作動させたように崩れて落ちる。足場がなくなった、と彼女が認識した瞬間、その体は重力を感じさせた。
しかし、彼女の白い翼が羽ばたく。
ふわりと体が浮いて、宙を蹴る。
床の崩落は長く続いたが、セレスティアルである結希にとっては問題のないことであった。
壁に手をついて、崩れ落ちていない床に足を下ろす。
「まだ油断はできないわ」
そう、まだ。
ダンジョンコアとなった簒奪者の悪辣さは言うまでもない。
だからこそ、ダンジョンの罠だけで終わるはずがない。
結希はダンジョンの踏破を目指して、さらに奥へと進んでいく。
例え、さらなる罠が待ち受けるのだとしても、恐れる理由にはなっていないのだから――。
🔵🔵🔵 大成功

【SPD】※アドリブ・連携歓迎
「√ドラゴンファンタジーに生きる生命体全ての血液中にある『竜漿』を…かぁ。」
√ドラゴンファンタジーに居を構え、竜漿の力を繰る自分も他人事じゃないってことね。
…ふん、やったろうじゃない!その目論見、徹底的に破壊してやるわ!!
ともあれ心は熱くとも頭は冷静に、ね。
駅トラップを警戒しつつ慎重にマッピングしながら進む。行き止まったり、危険すぎて進めない場合は一旦戻るの繰り返し。
道中、同業者に出逢ったら情報共有は惜しまないわ。同じ目的の同志だものね!
ひょっとしたら何らか規則性が見つかるかもだけど、その辺りは閃きそうな人達に任せるわ。
「…何かしら、胸騒ぎがする。急ぎましょう!」
竜漿。
それは大空に存在するインビジブル、竜の魔力を浴びた生物の血液中に存在するものである。
故に√能力者でなくても、√ドラゴンファンタジーに生きる生物には薄っすらとインビジブルの存在を認識することができるのだ。
その竜漿があるからこそ、ダンジョンが発生すれば、周囲の生物はモンスター化してしまうのだ。
そして、それはこの√EDENに出現したダンジョンにおいても例外ではないのだろう。
現代のダンジョンとも言うべき駅。
その駅がダンジョンへと変貌している。
簒奪者がダンジョンコアとなって、この未曾有の事態を引き起こしているのだ。
ルクレツィア・サーゲイト(世界の果てを描く風の継承者・h01132)には他人事に思えなかった。
「……ふん、やったろうじゃない!」
簒奪者の目論見がどんなものであれ、この最も豊かで最も弱い√を奪わせるわけにはいかない。
「その目論見、徹底的に破壊してやるわ!!」
心が燃える。
けれど、頭は冷えている。
未踏破のダンジョン。
情報らしい情報もない状態だ。
この状態で考えなしに足を踏み出す程ルクレツィアは向こう見ずではなかった。
「ダンジョンだっていうのなら、必ずトラップはあるでしょう」
冷静にルクレツィアはマッピングを続ける。
此処は基本に立ち返るべきだったのだ。
ダンジョンにおいて、その領域を正しく認識するということは先に進むにせよ、後返るにしても必要な事柄であった。
「迷宮……通路事態が入り組んで元の構内とは似ても似つかないってわけね。まったく、面倒ったらないわ」
他の√能力者たちが穿つ一本道もあった。
恐らく、彼らは先に進んでいるのだろう。なるほど、確かにダンジョンコアたる簒奪者を打ち倒せば、このダンジョン化の進行を止めることができるだろうし、恐らく元に戻るだろう。
であれば、一直線にまっしぐら、というのは理解できることだった。
「それに一般人らしき人たちも取り残されているみたい。一本道だったら、彼らがダンジョンから離れるのも簡単ってわけね。力押しだけど」
ルクレツィアはそう言って苦笑する。
だが、悪い手ではないと思ったのだ。
それに、だ。
「……何かしら、胸騒ぎがする」
急がなければ。
そうせっつくような感覚が心の中にあるような気がしてならなかったのだ。
「他の√能力者たちが一本道を作ってくれたっていうんなら、ショートカット、やぶさかではないわね」
ためらっている時間は多くはない。
であれば、一歩を踏み出す。
ダンジョンは常に未知の脅威が己の生命を飲み込まんと顎をもたげている。だが、そのぞろりと生え揃った危険という牙に恐れ慄いてばかりでは得るものも得られない。
「急ぎましょう!」
踏み出す。
例え、どんな危険が待ち受けていたとしても、己の力で踏破すればいい。
ルクレツィアは、|おしゃべりな精霊達の輪舞曲《ラピッドファイヤー・フルバレット》を口ずさむようにして、ダンジョン内を進むのだった――。
🔵🔵🔵 大成功

駅だ~!駅自体そんな来ないから新鮮かも。
電車乗れるの?乗りたいですよね。いつだって好奇心は大切にしたい。
でも、ぼくは死にたくないので地這い獣放ちます。
探索方法は力技で。地に着く手足から振動を読み取り、情報収集させます。
優秀なペットなもので。ぼくの身の安全が第一ですよね?頷けよ。
電車早~。コレ何処に向かってるんでしょ。
あと追えるよな。地這い獣に乗り、気まぐれに追ってみましょ。さすがに罠にかかるのは可哀想なので霊的防護を貼りつつ。作動する罠には野生の勘を持ってして√能力を発動し対処します。
ダメなら地這い獣に頑張ってもらいましょ!
「駅だ~!」
それは、はしゃいだような声だった。
初めて見るものに好奇心が刺激されたような幼子のような声であった。
物珍しい。
その感情が心から湧き上がるようだった。
いや、野分・時雨(初嵐・h00536)にとって、駅は初めてではない。だが、駅自体に用向きがあることが多くはなかった。
故に新鮮であったのだ。
なんでかわからないが、駅という構造物と線路を走る電車というものに心が踊る。
「電車乗れるの? 乗りたいですよね」
しかしながら、今や駅はダンジョン化している。
電車が走る線路はあれど、それはただのトラップである。
ロマンもなにもへったくれもない。
単純な質量トラップへと堕しているのだ。許しがたいことである。
「ぶつかったらどっちが強いんでしょうにねぃ。どう思います?」
こんこんと傍らの『水姫』の頭を小突く。
死ぬかもしれないが、己は√能力者である。そのうち死後蘇生するだろう。そういう意味では好奇心を満たすことはできるだろう。
大切だ、好奇心って。
しかしながら、ここはダンジョンだ。
自分が死ぬことで攻略が遅れでもしたら、周囲の生物は須らくモンスター化する。そおうなると面倒であるし、迷惑千万過ぎる。
であるのなら、死にたくはない。できる限り。
「そういうわけです」
にこし。
時雨は意地の悪い顔をして『水姫』に笑いかける。
『水姫』はブルブルと震えて滴る水をちらしながら首を振っていた。
いや、無理って言っているような所作であった。
「わかっていますよ。ほれ、探索するにしたって情報が必要でしょうに。そのたくさんの手足でちょっとは何か感じるところがあるでしょう?」
その言葉に『水姫』が面を上げる。
瞬間、時雨と『水姫』の眼前に線路が生み出される。
出現した、とも浮かび上がった、とも取れるだろう。そして、面を向けた先には、凄まじい光を放ち警笛を鳴らす電車の前面があった。
「早速ですかい。あれが電車ってやつですねぃ。さすが、優秀なペットですね」
時雨は己に迫る電車に如何にして対処すべきか、と思案する。
まあ、いいや。
考えるよりやる、だ。
√能力の発露に、その瞳が輝く。
孤影のインビジブルから引き出したエネルギーを持って召喚されるのは、金剛杭であった。
放った杭が迫る電車の車輪と線路の間に打ち込まれる。
火花を散らし、金切り音を響かせる。
強烈な音。だが、減速しきれていない。止まらない。
「ぼくの身の安全が第一でしょ」
「――」
「頷けよ」
その言葉と共に『水姫』が飛び出し、迫る電車を抑え込む。
金剛杭によって減速していたからこそ、『水姫』の五体は粉砕されることはなかった。
「うん、さすが優秀ですねい」
うんうん、と時雨は頷いて『水姫』の頭を軽くぽんぽんと叩く。
止まった電車はトラップ。
泥のように地面に沈んでいく。
これが攻撃だというのなら。
「この先にダンジョンコア、つまりは簒奪者がいるってわけですねい。案外わかりやすいですね。行きますよ」
そう言って時雨は『水姫』の背に乗って己たちに体当たりを敢行しようとした電車が来た方角へと走り出すのだった――。
🔵🔵🔵 大成功

やれやれ、|俺たち《ドラゴンプロトコル》を狙う狂信者どもの悪だくみとはな。
……そりゃまあ、かつては最強の存在として君臨してたからな。憧れる奴がいるってのはわかる。
しかし、その復活のためになりふり構わねェってのは、ちょいと捨て置けねェな。
ともあれ、教団の企みを潰すためには、まずはこのダンジョンを踏破してみせろってか。面白ェ。
随分と現代的で複雑なダンジョンだが……なに、迷宮探索はこれでも慣れてる方だぜ。
愛馬に〈騎乗〉して、素早く踏破を目指す。
障害物や罠、モンスターの類が出てきたら〈重量攻撃〉で叩き潰す。
迷いこんだ一般人は〈社会的信用〉で上手く丸め込んで、救助する。
生憎時間が無ェんだ。押し通るぞッ!
『喰竜教団』。
その名を聞いたことがある。
ドラゴンプロトコルを狙って殺害を繰り返す狂信者たちである。
彼ら、ないし彼女たちは女子供であろうとドラゴンプロトコルを殺すことしかしない。惨たらしく惨殺されたドラゴンプロトコルの肉体はいずれも欠損が激しいものであった。
恐らく、遺骸の一部を持ち去っているのだということが判明している。
が、それだけであった。
「その『喰竜教団』ってのが、悪だくみってわけか」
ケヴィン・ランツ・アブレイズ(“総て碧”の・h00283)は、なんとも言い難い感情を胸に浮かべ、怒りで燃やした。
彼らの目的が真竜の復活であれ、もはやすでに真竜はいない。
記憶にはないが、なんらかの理由によって己たちはドラゴンプロトコルへと変化したのだ。
であれば、そこには理由がある。
戻りたくないかと言われたのならば、戻りたいと考える者だっているだろう。
当然のことだ。
けれど、それは他者の生命を踏みつけにしていい理由にはならない。
「……そりゃまあ、、あつては最強の存在として君臨していたんだからな」
憧れも狂信も理解できなくはない。
「ちょいと捨て置けねぇよ、これは」
彼の眼前にあるのは、ダンジョン化した駅であった。
ここは√ドラゴンファンタジーではない。
√EDEN。
その駅がダンジョンへと変貌を遂げているのだ。
「他人に面倒を懸けるなって話だよな。だったら、まずその思い上がりをぶっ飛ばしてやらねぇとな」
ダンジョン化した構内へと踏み出す。
これを踏破しなければ、そもそもダンジョンコアとなった簒奪者を撃破できない。
面白い。
怒りは燃え尽きた。
であれば、残るのは戦いに対する高揚のみ。
「行くぜ」
愛馬にまたがり、そのいななきを聞く。
蹄が構内のフロアに敷き詰められた床を蹴り、疾駆する。
目指すは最速である。この迷宮の奥に簒奪者がいるのならば、最奥であろう。
幸いにして先行した√能力者たちが力任せに壁面を砕いて一本道を作っている。
「いたれりつくせりってやつだよな! だが、悪くねぇ!」
そう、迫るトラップなど躱す必要はない。
全て踏みつけて砕けばいい。
単純な話だが、力押しというのならば、その通りである。
力押しでもどうにもならぬものだけに智慧を働かせればいい。その障壁が眼前に現れるまでは、壁はただの壁でしかない。
「生憎時間がねェんだ。押し通るぞッ!」
道中、取り残されていた一般人たちがいたが、彼らを駅の外まで送り届けている時間はない。
一本道を奥に進むに連れて、そのような余裕はなくなっていく。
だからこそ、ケヴィンは、他の√能力者たちが刻んだ一本道はありがたいと思った。
なぜなら、彼らも駅の外に出るためには一本道をゆけばいいのだ。
迷う必要ない。
ただそれだけを告げて、ケヴィンは最奥を目指して愛馬と共に疾駆するのだった――。
🔵🔵🔵 大成功

はァ、なかなか洒落っ気があんじゃねーか、駅のダンジョンとはよォ!
中は大層ごった返してて罠もてんこ盛りだって?
いいね、走破し甲斐があるぜ!
んじゃァ偶には|メットフェイス《このツラ》らしいノリでいくか!
こいよ"コシュタ"。影業をメット内部に浸透させるようにして──
【Chaotic Overload】で二種混合!
(混合:メット+"コシュタ"→混沌武器「影バイク」生成)
影で黒く染まったメットに影スーツ、跨るのは影の無灯バイク!
さァて、ドライブと洒落込もうぜコシュタ!!
移動速度が四倍ならササっと進めるな!!
仮に罠があってもコシュタを瞬時に首無馬に変身させて蹴り跳ね避けて進んでくぜ!(騎乗+変身+早業)
√EDENに突如として出現したダンジョン。
それは駅であった。
もとより存在していた一見すれば普通の駅。
だが、その内部は迷宮の如き様相を見せていた。怪異が見せる仄暗い雰囲気ではないが、奥まった闇は全てを飲み込むような気配があった。
「はァ、なかなか洒落っ気があんじゃねーか、駅のダンジョンとはよォ!」
ノーバディ・ノウズ(WHO AM I?・h00867)は、イエローカラーのフルフェイスヘルメットのフェイスガードの奥で笑うような気配を見せた。
その存在しているかどうかもわからない双眸の先にあるのは、様々な罠である。
いずれもが現代社会に準じたものであるし、また突拍子もつかないものばかりであった。
言ってしまえば、罠てんこ盛り。
おかわり死放題っていうやつだな、とノーバディは思った。
だが、ダンジョンを生み出すという無法に対して、√能力者たちが行ったのは、力押しという無法であった。
そう、壁があるのならば回れ右、ではないのだ。
壁があったらぶち抜け、である。
多くの√能力者たちは、壁をぶち抜いて一本道を掘るようにして進めていた。
「なぁんてこった。まさか、こんなに舗装された一本道があるなんてよォ……走破し甲斐があるなんて思っちまったのが、ちょいとばかし恥ずかしくなるが……」
まあ、それでも緊急事態であり、迅速さが求められるというのならばわからんでもない。
であれば、とノーバディは己がイエローカラーのフルフェイスっを軽く小突く。
「来いよ、『|Cóiste《コシュタ》』」
その言葉と共に嘶きもなく、ただ蹄の音を響かせて首無しの黒馬がノーバディの傍に現れる。
さらに彼の√能力がきらめく。
インビジブルより引き出されたエネルギーと共にヘルメットと黒馬が融合を果たし、影の如き色をした無灯のバイクへと変貌するのだ。
どるん、と音が響く。
エキゾーストパイプから湧き上がるようにして噴出するのは、影。
いななきは、エギゾーストに。
灯されることのない双眸が見据えるは、一本道。
「さァて、ご機嫌なドライブと洒落込もうぜ、コシュタ!!」
アクセルを振り絞った瞬間、ノーバディの体躯は影の一閃となって刻まれた一本道を爆走する。
スタートダッシュを決められずとも関係ない。
周回遅れ? 上等である。
己がすべきことは、この一本道をぶっちぎることだけである。
そんなノーバディに迫るのは閃光迸らせる特急列車。
まるで地の中を直進する蚯蚓であった。
だが、鋼鉄。
正面衝突すれば、どうなるかなど言うまでもない。
そして、これがダンジョンコアとなった簒奪者の攻撃であることもノーバディは理解していた。
「一本道だから避けようがない正面衝突でお陀仏って目論んでるんなら、見当違いの当て外れってやつだぜ! なぁ、そうだろ、コシュタァ!!」
瞬時に無灯バイクが首なしの黒馬へと変貌し、迫る電車の疾走を壁面を蹴って三角飛びのように躱すのだ。
ごう、ごう、と響く恐ろしげな通過音。
だが、かまってなんかいられない。
「さあ、行くぜ。進んでいくぜ! 道は一本道。ならよぉ!!」
止まっている暇なんてない。
首なし馬が再び無灯バイクへと変貌し、ノーバディは壁面天井床、構わずタイヤを斬りつけるようにして刻まれた一本道を邁進するのだった――。
🔵🔵🔵 大成功

「流石にテキトーに行くのはめんどーか。」
強欲、鴉ちゃんたち出してー。
√能力で鴉たちを召喚。
彼らの能力でダンジョンのコアになってる簒奪者のとこまで案内してもらおうかねー。
オレの欲するもんは、もちろんこのダンジョンのゴールって事で。
オレを運んでる魔手以外の奴らで、壁なんかをぶち壊してショートカットとか出来れば良き。
あ、トラップも黄金に変えて無力化して回収しとこ。お小遣い稼ぎってなぁー。
「敵はどこにいるんかねー?あ、鴉ちゃん。それも黄金に変えて宝物庫に放り込んどいてー。」
それにしても、天上界の遺産ってのはどんななんかねぇ。出来れば欲しいとこだけど。
適当は面倒。
きっと、その言葉を思い浮かべたのは七々手・七々口(堕落魔猫と7本の魔手・h00560)だった。
面倒事はごめんである。
けれど、時として面倒事というのは向こう側から歩いてくるものであるし、追いかけてくるものである。
適当にあしらっても、逆にそれが火を付けた導火線みたくなることを彼は知っている。悲しいことだけれど、そういうことってよくあることなのだ。
「流石にテキトーに行くのはめんどーか」
しゃーなしである。
七々手は、インビジブルよりエネルギーを引き出し、√能力、|強欲の眷属《グリード・レフト》たる黄金の鴉たちを召喚し、ダンジョン化した駅の構内に放つ。
「ダンジョンのコアになってるっつー、簒奪者までの道を探してきてー」
後は待っているだけでいい。
テキトーにだらけていれば、黄金の鴉たちが道順を把握して戻ってくるだろう。
それまでに一眠り、と体を丸めようとした七々手であったが、その宛は一瞬で外れた。
すぐに黄金の鴉たちが戻ってきたのだ。
「はやない?」
いや、仕事ができるってことはいいことだ。
だが、あまりにも早い。
何がどうなってるんだと思ったことだろう。
「え、なに?」
どうやらダンジョンのコアである簒奪者までの道のり、その最奥を目指す道のりは、すでに他の√能力者たちがまるで切削でもするかのように√能力をぶち込んで一本道を作っているのだという。
「……オレ以外にもおんなじことを考える連中ってのはいるもんだなぁ」
このダンジョンのゴールというのは、言うまでもなくダンジョンコアの簒奪者である。
この簒奪者を打倒して初めて√EDENに出現したダンジョンは消え、元の駅に戻るのだ。そういう意味では……まあ、一本道を刻むようにぶち抜いて掘り進めていく、というのは最短にして最速であったかもしれない。
が、ただ一人ではどうしようもないことだ。
多くの√能力者が強力しなければならない。
打ち合わせもなしで? それをやってのける?
「……まあ、オレもラックできるからいいけど」
とは言え、トラップはまだ生きている。ダンジョンコアが簒奪者であるというのならば、侵入者である√能力者たちを攻撃する手段は、トラップである。
七々手はしかし、迫るトラップの気配を感じれば、すぐさま黄金に変えて回収する。
「いい小遣い稼ぎになるなぁーうん。いや、敵が一番奥にいるっていうのは、わかっているんだけれど。うん」
にしても、だ。
√能力者たちはゴリ押しの無法者なのか?
言えた義理ではない。
が、その無法という名のゴリ押し力押しが簒奪者にとっては想定外であるのは言うまでもない。
なぜなら、√能力者たちが、そのような手段を手に取ったのは、駅の構内に残された一般人たちがモンスター化されるまでの猶予の間に迅速に簒奪者を撃破するためであったからだ。
であれば、案外、この力押しの無法というのが、最も優れた手段であった、ということは……。
「まー言うまでもないんだろうーなー」
うん、と七々手はまた一つ頷く。
ともあれ、黄金のお小遣いも手に入る。
後、興味があるのは天上界の遺産というやつである。
出来れば欲しいところであるが、まあ、難しかろう。
「いいや。さ、魔手はオレを運んで運んでー、黄金の鴉ちゃんたちの後につづけー」
後はよろしく、と魔手の中で七々手は、もう一度くるまるようにして身を丸め、簒奪者の元へと向かう道すがらすら惰眠をむさぼるのだった――。
🔵🔵🔵 大成功

√EDENにあろうとダンジョンはダンジョン。踏破するのみだ。
梅田ダンジョンや新宿ダンジョンなるものもあると聞くが、比喩ではなく本物か……
だが、|駅《比喩》と|駅ダンジョン《本物》には大きな違いがある。
攻略し終えれば元の駅に戻るのだ。
ならば、いくら壊しても良いのだろう?
魔導機巧剣『竜翼』と魔導機巧斧『竜吼』を手にダンジョンを進む。
オブジェを破壊し、破壊跡を己が通った目印として残すことで迷宮を踏破する。閉まる扉があっても無理やりにでも押し通る。
警笛と共に列車が迫ってきても、√能力で腕力を強化。上段に構えた大剣を振り下ろし叩き割る。
以前には遠く及ばぬ人の身体だが、この程度は造作もない。
突如として現れた√EDENのダンジョン。
しかし、ヘリヤ・ブラックダイヤ(元・壊滅の黒竜・h02493)にとって、それは大した事情ではない。
目の前の駅。
それは確かにあまり見慣れたものではなかった。
踏み出せば、確かにダンジョンであると実感できる。
「だが、ダンジョンはダンジョン。踏破するのみだ」
如何なる罠や法則性があるのだとしても、己が踏み出せば、その一歩は踏破のための礎になる。
ダンジョン攻略とは常にそういうものだ。
「しかし、梅田ダンジョンや新宿ダンジョンなるものがあると聞くが、比喩ではなく本物か。空気感が似ている」
彼女の知るダンジョンと全く同じ空気が流れている。
通路の全てが薄暗く、冒険者の生命を飲み込んでやろうと虎視眈々と顎をもたげているようにすら思えてならない。
だが、それでもヘリヤの表情に感情が浮かぶことはなかった。
胸の奥に高揚があるわけでもなく、また怯えがあるわけでもなかった。
恐怖など皆無。
なぜなら、彼女にとって駅の構造は大した問題ではなかったからだ。
どんなに迷宮のような様相を見せる通路が彼女を阻むのだとしても、手にした魔導機巧剣『竜翼』と魔導機巧斧『竜吼』が剣呑な輝きを放っていた。
その刀身に周囲に揺らめくインビジブルの孤影が揺らめく。
エネルギーを引き出し、√能力の発露にヘリヤの瞳が煌めいた。
「壁もオブジェクト。物理法則があるというのならば」
知られざるドラゴン能力が、彼女の身より吹き上がる。
言うなれば、それは|龍の記憶《ドラゴンズメモリー》。
ぎし、と剣と斧を手にした腕の筋繊維が収縮し軋む音が響いた。細腕に似合わぬ膂力。
持ち上げた二つの武装。
交差されるようにして振り抜かれた斬撃が駅の構内の壁面をえぐる。いや、穿つ。
その苛烈なる衝撃は、他の√能力者が刻んだ一本道につながることだろう。そのさまを見やり、ヘリヤは、ほう、と息を吐き出す。
「私と同じ結論に至った者たちが多くいるようだな」
それは重畳というやつであった。
幸いである、とも言えた。
この一本道の先にダンジョンコア、簒奪者がいる、ということだ。迅速さを旨とするのならば、なるほど簡単な話だ。
簒奪者の思惑に付き合ってやる理由などない。
彼女の眼前に、その一本道を塞ぐようにして扉が幾重にも出現する。
「無駄なことを」
無理矢理にでもこじ開けると言わんばかりにヘリヤは、その力を発露して、閉じた扉を己が武装を叩きつけて吹き飛ばす。
濛々と立ち上がる土煙。
その奥にヘリヤの瞳が√能力に輝いている。
警笛と閃光が一本道にほとばしる。
そう、電車だ。
簒奪者が差し向けた罠。
だが、ヘリヤは僅かに視線を向けただけだった。あれだけの鋼鉄の質量である。速度もある。
まともに激突すればどうなるかなど言うまでもない。
が、ヘリヤは己が大剣を振り下ろして、まるで唐竹を割るように電車を両断し火花散る最中に視線を向ける。
「攻撃、したな。であれば、この先か」
己が膂力は以前の己とは遠く及ばない。
そもそも人の身である。だが、造作もないことだった。
息一つ払うことはなかった。
そしうて、ヘリヤの背には両断した電車が爆発炎上うる衝撃と炎が降り注ぐ中、悠然とダンジョンの最奥へと足を踏み出すのだった――。
🔵🔵🔵 大成功

なんとも穏やかじゃない話ですね
ドラゴンプロトコルを狙う事件……生徒を危険に晒すわけにはいきませんし
……何より、わたしの存在意義に関わります
ここは先生が頑張りましょう!
というところでこの駅何なんですかー?!
ちょっ、あの、運動、得意、じゃないんですけどー?!
(トラップを猫ジャンプでギリギリ回避)
ぜぇ、はぁ……このままでは綺麗な白い猫毛の絨毯が作成されてしまいます?!
でもこれ、人が利用する駅だとすれば猫サイズなら通り抜けたりできないでしょうか?
あるいはもっと小さな存在なら
【トランス・ミラージュ】で
今より小さな羽妖精に変身です!
機動力と回避力をアップさせつつ
隙間を縫うように飛んでいきましょう!
「なんとも穏やかじゃない話ですね」
ドラゴンプロトコルを狙う事件。
それをクラウディア・アルティ(にゃんこエルフ『先生』・h03070)は聞き及んでいた。
彼女の生徒にもドラゴンプロトコルがいる。
『喰竜教団』の牙は、その二人にも迫っているかもしれない。であれば、己の身が総毛立つのも無理なからぬことであった。
危険にさらすわけにはいかない。
何より。
「……わたしの存在意義に関わります。ここは先生が頑張りましょう!」
ダンジョンと化した駅の構内へとクラウディアは踏み出す。
言うまでもないがダンジョンは迷宮そのものだ。
踏破するにしたって迅速さが求められても、こうも入り組んでいれば時間もかかる。マッピングというものも必要となるだろう。
ややもすれば、迷宮はダンジョンコアである簒奪者の意志を受けて変容することだって考えられる。
時間をかけることで、それだけ√能力者には不利になるはずだ。
だった。
「ちょ、あの、えっ? この駅、一本道でしったけー!?」
クラウディアの眼前にあるのは、駅の構内、その壁をぶち抜いて出来た一本道であった。
そう、このダンジョン踏破に挑んだ√能力者たちの多くが、迷宮攻略という時間を懸けるまでもないと言わんばかりに壁をぶち抜いて最奥を目指しているのだ。
それは掘削とも言うべき作業であった。
間違っても攻略、とも呼べないものであったことだろう。
本来のダンジョンであれば、このような無法は通らない。
だが、ここは√EDEN。
そこに√ドラゴンファンタジーのダンジョンを構築したのならば、例外というものが生まれてもしかたないことであった。
「え、えぇ……」
確かにクラウディアは運動が特異ではない。猫っぽい姿をしているが、得意ではないのだ。俊敏性というには、あまりにも野性味がたりない白猫であった。
だからこそ、この一本道。
大変助かる。
もしかしたら、トラップによって綺麗な、伸し猫ならぬ白い猫毛の絨毯が作成されてしまっていたかもしれないという可能性を考えれば、本当に助かったと思えたことだった。
だが、いいのかな?
本当にこれで大丈夫なのかな?
そんな一抹の不安がクラウディアを襲う。
「こんなに簡単だと……って、えええっ!?」
彼女の眼前で両断された電車車両が爆発炎上する。
唐突過ぎる!
いや、これも他の√能力者の無法によるものであろう。トラップが迫っても、力押しで押しのけているのだ。
「な、なんとも……あ、ですが、これだと」
通れない。
爆発炎上する車両。
ううん、とクラウディアは唸る。これを回避するにはどうしたらいいか。
「そうだ。小さな体になって飛べばいいんですよ! 解決ですね!」
√能力によって、クラウディアの体が小さな羽を持つ妖精の姿へと変身し、爆発炎上する最中を縫うようにして飛ぶ。
熱波に時折煽られたが、しかし、大丈夫だ。
ここからは先に進める。
「よしよし。いい調子ですね。後は敵がでてこないことを祈るばかりなんですが……」
まあ、そうは問屋が卸さないですよね、とクラウディアは諦めにも似た気持ちを抱く。
が、その気持ちはすぐに再燃した炎によって吹き飛ばす。
そう、ドラゴンプロトコルを狙う『喰竜教団』は己たちが倒さなければならない。
彼らの行いは必ずや彼女の生徒に累を及ぼすもの。
であればこそ、ここで阻止しなければならないのだ。
「先生ですからね! 行きますよー!」
例え、どんな困難が迫るのだとしても、生徒に火の粉を飛ばさぬためには戦うのだと決然とした意志をもってクラウディアは一本道を飛ぶのだった――。
🔵🔵🔵 大成功
第2章 集団戦 『モンスター化農作物』

POW
我らに隷属するがいい!
【美味しい農作物 】を放ち、半径レベルm内の自分含む全員の【洗脳】に対する抵抗力を10分の1にする。
【美味しい農作物 】を放ち、半径レベルm内の自分含む全員の【洗脳】に対する抵抗力を10分の1にする。
SPD
お前たちの協力があればもっと美味しくなれるのだ!
【美味しい農作物 】を放ち、半径レベルm内の自分含む全員の【洗脳】に対する抵抗力を10分の1にする。
【美味しい農作物 】を放ち、半径レベルm内の自分含む全員の【洗脳】に対する抵抗力を10分の1にする。
WIZ
すくすく育つ
自身の【穀物類 】がA、【野菜類】がB、【果物類】がC増加し、それぞれ捕食力、貫通力、蹂躙力が増加する。ABCの合計は自分のレベルに等しい。
自身の【穀物類 】がA、【野菜類】がB、【果物類】がC増加し、それぞれ捕食力、貫通力、蹂躙力が増加する。ABCの合計は自分のレベルに等しい。
√ドラゴンファンタジー 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
√能力者たちがダンジョンを掘削するようにしてぶち抜いた壁面はダンジョンの最深部に至る一本道へと変貌していた。
あまりにも力技。
しかし、√EDENに生み出されたダンジョンである。
もともとあった構造物、駅。
これの壁面の強度は本来のダンジョンのそれとは異なる。脆い、と言い換えてもいいだろう。だからこそ、変容させやすかったのだ。
それを逆手に取った√能力者たちの無法の力押しを前に、ダンジョンコアたる簒奪者は、迷宮で彼らをすりつぶすのではなく、逆に配下たるモンスターによってこれを撃滅せんと差し向けたのだ。
駅の構内に停車していた貨物車両。
その内部にあった農作物が次々とモンスター化し、一本道を塞ぐようにして大挙してきたのだ。
「急げ、急げ」
「この地を豊かにするのだ」
「幸い、幸い」
「ここにはエネルギーがたくさんある」
「育て、育て」
「我らが繁栄はすぐそこ。我らに隷属せよ、繁栄はすぐそこに。実りを与えてやろう」
うねるような樹木。
それこそが駅内の一本道に大挙として現れた『モンスター化農作物』であった。
道を塞ぐ彼らを排除しなければ、この先のダンジョンコアたる簒奪者へと近づくこともできない。後から後から湧き水のようにして現れる『モンスター化農作物』は口々に√能力者たちを阻もうと言葉を紡ぎながら、奇妙な出で立ちでもって迫るのだ――。

うるせーーーーー!こっちは急いでるんだ大至急だ火急の用だてえへんだてえへんだてえへんだーーーー!火事と喧嘩は江戸の花!
天下御免の向こう見ず!
馬鹿だ阿呆だと言われても!
許しちゃおけねえ惡の華!!
纏めて押し通るぞ!!しねーーーーーーー!!
◆√戦闘!
バーサーク+インビジブル融合で狂暴化
食欲よりも暴力的な衝動を増幅させ、洗脳されようが滅茶苦茶に暴れる
切り込み+重量攻撃で樹木の顔面に怪腕を突っ込んで八つ裂き。爆破+乱れ撃ちで木っ端微塵にして踏み潰す
怪力+継戦能力で抉り取った人面果実は噛み砕いて咀嚼しますモグモグモグモグモグ!!!!ペッッッ、、くっそマズイぞ!ご馳走さん!
お前もお前もお前もしねーーーーー!
「繁栄のために我らを育てるのだ」
「隷属こそが繁栄の道」
「理解せよ、理解せよ」
口々に『モンスター化農作物』たちは、その樹木の体躯をうねらせ、洗脳しようと口々に言葉を吐き出していた。
そこに感情は乗っていない。
あるのは、ただ人間を洗脳し、作物の奴隷に仕立て上げようとする意志のみ。
いや、もしかしたら、それさえもダンジョンコアである簒奪者の目論見であったのかもしれない。
√能力者たちの無法とも言える力押しによってダンジョンの壁はぶち抜かれ続け、最速にして最短の一本道が掘削されていたのだ。
これを阻むためにも『モンスター化農作物』たちは√能力者たちを押し留めねばならなかったのだ。
しかし、だ。
これだけの無法めいた力押しをする√能力者を理屈や論理でもって押し留めることができるだろうか? いや、できやしないのだ。
「うるせーーーーー!こっちは急いでるんだ大至急だ火急の用だてえへんだてえへんだてえへんだーーーー!火事と喧嘩は江戸の花!」
二階堂・利家(ブートレッグ・h00253)は、こう思っていた。
道理も理屈も要らない、と。
悪癖だとなんだと言われても、知ったことではない。
「天下御免の向こう見ず! 馬鹿だ阿呆だと言われても! 許しちゃおけねえ惡の華!!纏めて押し通るぞ!!しねーーーーーーー!!」
むちゃくちゃである。
もう彼の頭の中にあるのは暴力であった。
確かに『モンスター化農作物』たちが見せる実りは食欲を刺激するものであったかもしれない。
が、すでに利家の頭の中は暴力への衝動が満載されていた。
洗脳は、心の隙をつくものだ。
であれば、その隙を埋める暴力への衝動があればどうか。
言うまでもない。
洗脳など意味がない。
動くものへと攻撃を叩きつける意志しか、今の利家にはなかったのだ。
意志があるように見えて、まるでない。
「どけー!!!」
「おろか、おろか」
「知らんっ!」
機械腕を『モンスター化農作物』の顔面に叩きつけ、枝から果実をもぎ取る。
かじって咀嚼して吐き出す。
「うまかろう! この美味を……」
「ペッッッ、くっそマズイぞ! ごちそうさん!」
まるで意に介した様子はなかった。
まるで狂乱の嵐であった。利家は立ちふさがる『モンスター化農作物』を押しのけ、砕いて、引きちぎってを繰り返して掘り進めるようにして彼らを打ちのめしていく。
そこにあるのは、ただの暴力装置。
「お前もお前も、お前も――!!」
立ち止まるまでは止まらない。
そういうように利家は、己が機械腕と牙と爪とで、壁をこじ開けていくのだった――。
🔵🔵🔵 大成功

「いやー大量大量っと。ちと高いお酒でも買っちゃおうかなー。」
とか思ってたら、うじゃうじゃとめんどーな。
憤怒さーん。出番ですよー。
√能力を発動。
炎を纏った巨拳で敵を叩き潰して燃やしながら先を目指して行く。
拳の弾幕を抜けてくるなら他の魔手達の出番。
華麗な連携攻撃を決めちゃってくださいなー。
オレは霊的防護で防御しながら、煙草でも吸っときます。
「これがせめて酒の無限湧きモンスターとかだったらねぇ。」
「いやー大量大量っと」
七々手・七々口(堕落魔猫と7本の魔手・h00560)は、ホクホクとした表情を浮かべていた。
体は尾の魔手の上。
しなやかな黒猫の体躯がうねるようにして身をもたげれば、視線の先には一本道を塞ぐ『モンスター化農作物』。
確かにこの一本道を往けば、そのままダンジョンコアの簒奪者へと辿り着くだろう。
それをさせじと貨物車両に満載していた作物をモンスター化させたというのならば、自分たち√能力者の取った最速にして最短の手段であるゴリ押しの力推しは正しかった、ということだ。
「ちと高い酒でも買っちゃおうかなーって気分いいところに水を指すような、うじゃうじゃじゃねーか」
めんどーだな、と七々手は辟易するようだった。
「我らの繁栄のために働くのだ」
「それこそが人類の正しい道なのだ」
「繁栄を、繁栄を」
『モンスター化農作物』たちの言葉は、どれもが勝手な言い分であった。
まあ、確かに、と七々手は頷く。
作物がたくさん育てられる、というのは生命の繁栄にとっては大助かりであろう。だが、モンスター化したのはなぁ、と思う。
「いやまあ、なんていうか。うん、めんどーだな。憤怒さーん、出番ですよー」
七々手はああいう喋る手合が面倒で仕方がなかった。
問答をしたところで得るところは何一つないし、此方の言い分など聞く気もない。
むしろ、己たちがそうしたように力押しで奪っていこうとするような連中なのだ。であれば、こちらだって一々連中の言葉を聞き届ける道理などない。
「そういうわけなんでなぁ」
インビジブルより引き出したエネルギーの七々手の尾が炎に揺らめく。
握りしめたような魔手の形。
それを人は拳と呼ぶのだが、七々手にとってはただの鉄槌であった。
「くたばれ」
短く告げた瞬間、|憤怒の巨拳《フンヌノキョケン》が唸りを上げて『モンスター化農作物』へと叩きつけられる。
周囲に吹き荒れる炎。
そして、巨大化した憤怒の魔手が、まさしく炎の鉄槌のように『モンスター化農作物』へと叩きつけられる。
吹き荒れる熱波が一本道から出口を求めて駆け抜けていく。
霊的な防護で身を守りながら七々手は瞼を閉じる。
「我らに隷属せよ。我らを育てよ。我らこそ繁栄の礎ぞ」
『モンスター化農作物』が炎に塗れながら七々手に迫る。
激突した巨大な体躯に霊的防護が軋む。
ぷかり、とそんな明滅する光景を見上げながら七々手は、器用に魔手の一本んで煙草の煙をくゆらせる。
「うーん、これがせめて酒の無限湧きモンスターとかだったらねぇ」
やる気の一つも出るというものなのだが、どうにもままならない
「まあ、どの道ぶっ飛ばすだけだっていうんなら、そうするまでだなぁ」
うん、と七々手はまた一つ頷いて煙を噴出させ、息を吸う。
それに合わせて、憤怒の拳となった一撃が『モンスター化農作物』の体躯を壁に打ち据え、燃え尽きるまで磔にするのだった――。
🔵🔵🔵 大成功

優秀な獣持ったお陰で楽しめました。飼い主が優秀だからかな。ね?
現代な駅を楽しんだ後は森林浴と。
簒奪者さんわかってますねぃ。粋な計らい~。
あいあい、自然豊かにする活動は大事ですとも。
わかりました!
心を鬼にして、森林伐採。環境破壊。
√能力で雨雲との融合を指示し、鈍化させます。
曲刀で正しく伐採しつつ、木を切り倒していきましょう。
ぼくだって美味しい作物は頂きたいですよ。草食動物なもので。
でも、ダメなんですよ~。許可取りました?ここで作っちゃ違法植物でしょ。
君たちの素敵な考えはしっかり反芻したうえで味わいます。いただきます!
「いやはや、優秀な獣を持ったお陰で楽しめました。うん。やっぱり飼い主が優秀だからかな」
野分・時雨(初嵐・h00536)は己の地這い獣『水姫』の濡れた頭に軽く手を添えた。
ぬるりとした湿気が掌に伝わって、冷たい気配を伝える。
まるでペットと飼い主である。
いや、当然そのつもりであるし、そのように見えていなければ困るというものであった。
しかしながら、結構な無茶を強いた。
とは言え、あれくらい出来なくては困るとも思っていた。
「ね?」
「――」
「ね?」
言葉を発することのない『水姫』は困ったような気配を示していた。
頭に添えられた時雨の手は別に撫でているわけではなかった。首肯しろ、と言わんばかりに手に力が込められている。
ぐい、と力を込めれば『水姫』は『頷かされた』。
「しかし、簒奪者さんもわかってますねぃ。現代な駅を楽しんだ後は森林浴と。うんうん粋なはからい~」
目の前の一歩道を根を張って塞ぐようにして『モンスター化農作物』たちが蠢いているではないか。
これを突破しなければダンジョンコアである簒奪者の元へと辿り着けない、というわけである。
「我らを繁栄させよ。さすれば実りは得られるのだ」
「急げ、急げ。我らこそがお前たちの糧なのだ」
「隷属によって実り得る奴隷となるのだ」
『モンスター化農作物』たちの言葉に時雨は、あーはいはい、くらいの感覚で頷いた。
「あいあい。自然を豊かにする活動は大事ですとも」
首肯した時雨の仕草に『水姫』は本当にわかっているのだろうか、という気配をしたが、彼の手に押さえつけられた。
「わっかりました! 心を鬼にして、森林伐採。環境破壊」
彼の瞳がインビジブルの孤影を映してきらめく。
引き出されたエネルギーと共に呼び出されるのは、|牛脊雨《ギュウセキウ》。
雨雲が駅の構内の天井に生み出され、『モンスター化農作物』と融合せんと迫る。
「ほら、恵みの雨ってやつですよ。たしかにね。ぼくだって美味しい作物は頂きたいいですよ。草食動物なもので」
そう言って時雨は己の頭上を示す。
ほら、これってば牛の角なわけで、といわんばかりであった。
「でも、ダメなんですよ~。現代社会って法と律の基盤があればこそなんです。遥か昔のように無法の大地にもはびこり栄えるなんて、今の時代あり言えないんですよ。知ってます? ここで作っちゃ違法植物ってことになるんです」
「知らぬ知らぬ知らぬ」
「でしょうねぃ。だから」
時雨は動くことすらしなかった。
なぜなら、己が召喚した雨雲は雨を降らし、その雨水を『モンスター化農作物』たちが吸い上げていく。
吸い上げた水は『モンスター化農作物』たちの身を成長させるために融合を果たしていく。
人の腹が膨れれば、牛のように眠るのと同じだ。
『モンスター化農作物』たちもまた、時雨の呼び寄せた雨雲より注いだ雨水で腹が膨れ、動きを緩慢なものとしていた。
「……栄え、蔓延り、繁る……我らは」
「ええ、ええ。そうですね。素敵な考え方です。君たちの作ったものも。しっかり反芻したうえで味わいます。はい、手を合わせてください。いただきます!」
合わされた掌。
その掌が開いた瞬間、そこにはもう『モンスター化農作物』たちはいなかった。
雨雲が霧散するように彼らの姿は消滅し、滅せられたのだ――。
🔵🔵🔵 大成功

豊穣を求めるのはあらゆる命の祈り
でも、だからといって奪うこと、他なる命を蹂躙して良いという事ではありません
共存という生命の共鳴こそが美しいのですから
それを理解出来ないというなら、この剣を以て斬るのみです
蒼穹剣を構え、【神秘の花風剣】を発動
更に刀身へと祈りを捧げ、瑠璃色の炎での属性攻撃を宿します
「誠に豊かとは、数多の存在と生きるということ」
すくすくと育ち、繁栄し、成長し、増える
ですが、その変化の最中には隙がある筈
その瞬間を見切り、一息で間合いへと踏み込み、早業で魔法剣・花信風で青薔薇を舞い散らせながら斬り棄てます
「狂信によって殺戮を行う簒奪者」
必ずやこの翼でその災いを防ぎ、剣にて断つと意を決して
貨物車両に積載されていた農作物がダンジョンによってモンスター化したものが『モンスター化農作物』である。
彼らは口々に隷属を唱える。
実りなくば生命は長らえることはできないからだ。
実りを与える代わりに己たちの世話をせよと、そう言っているのだ。
文明というものが川の流れの傍で起こるのと同時に、その理由は明白である。川の付近は肥沃の大地である。
多くの生命が沈み、また戻る場所であるがゆえに大地は命育む土壌となるのだ。
確かに人の歴史は生きる糧である食糧を礎にしている。
であればこそ、人は意識的であれ無意識的であれ、作物の奴隷であるとも言えるだろう。
管理しているという、その実の裏では作物から乖離することをもはや許されない。
「豊穣を求めるのはあらゆる命の祈り。でも、だからといって奪うこと、ほかなる生命を蹂躙して良いということではありません」
弓槻・結希(天空より咲いた花風・h00240)は思う。
生命が他者の生命をもって生きながらえるものだとしても、蹂躙と生きるために生命を奪う狩猟とでは異なると。
生命奪うことに対しての感謝。もしくは畏敬の念。多くの解釈は知性が生み出したものだ。
ならば、共存という解釈もまた知性が見せる光と影の織りなす一面であったことだろう。
そして、そうした光と影が生み出すコントラストこそ結希は美しいと思うのだ。
「我らを育てよ。育てよ」
「実りを得なければ生きてはいけないのだ」
「隷属こそが命を長らえるただ一つの道筋」
「……それが理解出来ないというなら、この剣を以て斬るのみです」
澄み渡る空の色を宿す長剣、その刀身が共鳴するように音を響かせた。
構えた彼女の瞳が√能力にきらめく。
祈り捧げ、刀身が共鳴し、周囲には天上界に在った神秘の花嵐が荒ぶ。
「空に咲いた花、流れた風よ。どうか、この剣をお導きください」
|神秘の花風剣《ミスティック・ブレイブ》は、彼女の手の中にある。
その切っ先は迷うことなく『モンスター化農作物』へと叩き込まれていた。
瑠璃色の炎が吹き荒れる。
「誠に豊かとは、数多の存在と生きるということ」
隷属でもなく、支配でもなく。
互いに共生すること。
そうして初めて発展していくのだ。
迫る根と枝。跋扈するような『モンスター化農作物』たちの攻勢を手にした剣が切り払う。
確かに繁栄そのものというべき彼らの手足とも言うべき枝根は脅威だ。しかし、結希は、その間隙を縫うようにして踏み込む。
背にある翼が風を受けて広がる。
羽が散る。
一息に振るわれた長剣の一閃が『モンスター化農作物』の幹を両断する。
「狂信によって殺戮を行う簒奪者。必ずや、この翼でその災いを防ぎ、剣にて断つ……」
狂える意志は他者を傷つけ続ける。
それがいつだって悲しみの連鎖を紡いでいくと知っているからこそ、彼女は己が切り開いた道の先へと進むのだった――。
🔵🔵🔵 大成功

はっはァ、季節外れの|収穫祭《サンクスギビング》かァ!?
美味しい果物をくれるとあっちゃあこっちも一手間加えねえとな!
【Chaos Head】で挿げるはジッポと多属性変異スライム"酔いどれ"!
ジッポから出るのが炎じゃなくて|爆燃材《オイルジェル》なのは不思議な妙な心地だな!
名前ァ差し詰め――そうだな、|焼夷男《Sir. Napalm》とかどォよ?
([発火×他属性変異粘液]→獲得:広域焼却能力)
さァて、三分クッキングのお時間だぜ!!
まずァざっと|敵《材料》に爆燃材をぶちまけて
続いて火打ち石のついた指先で|着火《パチンッ》!
よぉく灼けたらおあがりよ!
……おっと拙い、三分も要らなかった。尺余りだな?
「はっはァ、季節外れの|収穫祭《サンクスギビング》かァ!?」
ノーバディ・ノウズ(WHO AM I?・h00867)はダンジョンと化した駅をえぐるようにして掘り進められた一本道の果てに蠢く『モンスター化農作物』たちの姿を認めて、笑い声を上げた。
けたたましい、というのが正しいのか。
まあ、どうであってもっ構わないことであった。
彼の言う通り、これが収穫祭だっていうのならば、出遅れたにしたって遅刻の言い訳すらできないだろう。
「隷属せよ。隷属せよ」
「我らが実りなくば生きられぬ生命よ」
「実りを得て、我らを繁栄させよ」
命令口調にノーバディはカチンと来たが、まだ自分は冷静だと己がフルフェイスヘルメットを指で軽く叩いた。
「美味しい果物をくれるとあっちゃあ、こっちもひと手間加えねえとな!」
フェイスガードにインビジブルの孤影が揺らめく。
引き出されたエネルギーによってノーバディの√能力が発露する。
首を、頭を持ち上げる。
本来ならばありえない人体の構造。
音を立てるようにフルフェイスのヘルメットがジッポライターへとすげ替えられる。
そして、幾度かフリントホイールが回転する。
が、炎は噴出しなかった。
代わりに溢れ出したのは、爆燃材――オイルジェルたる|"酔いどれ"《レッグレス》の粘性たる体であった。
ヘッドレスとレッグレス。
お似合いと言えばお似合いであった。
「不思議で妙な心地だが……名前、名前……名前ァ、差し詰め――そうだな、|焼夷男《Sir. Napalm》とかどォよ?」
広がるは爆炎。
一瞬の火花が散る。
ただそれだけで充分だった。充分すぎた。
ジッポライターの頭部を持つノーバディを中心にして膨れ上がった炎。
それは『モンスター化農作物』たちの体躯を一瞬で丸焦げにする程の火力であった。
言うまでもないが、モンスター化したとは言え、彼らの体躯は基本的に樹木である。当然、炎には弱い。
どれだけモンスター化しているのだとしても、本質が変わっていないのならば。
「木燃えるもんだろォ? さァて、三分クッキングのお時間……だぜ?」
ノーバディは一歩を踏み出す。
だが、彼は天を仰ぐ。
天を仰ぐような仕草を見せただけだ。実際に天を仰ぐような頭はっそこにない。
ぼとぼととこぼれ落ちる爆燃材の粘体。
うーん、と彼は首をひねる。
彼の目の前には丸焦げになって朽ちていく『モンスター化農作物』の遺骸めいた残骸ばかりが広がっていた。
「こいつァ、拙いなァ……決め台詞を言う前に終わっちまった。三分も要らなかった。尺余りも甚だしいなァ――?」
🔵🔵🔵 大成功

ギャハハハハハハ!!
作物を育てる側に回れって? それが人類の反映ってこと?
面白いこと言うねぇ!
(ひとしきりゲラゲラ笑った後、スンッと静かになる)
でも同意できるかどうかは別だよね。
植物ごときに隷属してたら人間の可能性が閉じちゃうじゃん。
僕は見たいんだよね。人間の可能性ってやつをさぁ。
ま、そもそも僕にとっちゃ君等の洗脳とかどうでもいいんだけどねぇ!
こっちはロボットなんで植物育ててやる義理が無いから!
ギャハハハハハ!!
ということで! はーい、君等の欲してたエネルギーだよ!
ただし、熱エネルギーね! そのまま燃え尽きるがいいさ!
(ミサイルやガトリングでモンスター化農作物を火の海の中に沈めていく)
ベルセルクマシンにとって、食糧という概念は理解できれど、必要のないものであった。
体躯を維持するために必要なものは鋼材と油。
まあ、有り体に言えばそういうものだろう。
いやいや、他にも必要不可欠なものだってたくさんある、とルシファー・アーク(裏切りの決戦兵器/アバウトに生きる機動兵器・h00351)は、その言葉に憤慨するかもしれないし、もしくは、いつものようにけたたましく笑い飛ばしてしまうかもしれない。
「ギャハハハハハハ!!」
ルシファーは『モンスター化農作物』たちの言葉を思いっきり笑い飛ばしていた。
びっくりするくらいに綺麗に笑い飛ばしていた。
人間にとって作物とはなくてはならないものだ。
もとより人間は狩猟を生業にしている。
だが、それだけでは生きて往けないから、食物を育てる。
野に自生しているものだけでは到底足りない。だから、自分たちの手でこれらを管理できないかと考えるのは、知性持つ生命にとっては当然の流れであった。
だがしかし、その最初の一歩が食物に隷属することなど考え及ぶことはなかった。
今や、産業としても生業としても農作物とは切っても切れぬ関係になった。
だが、それを豊かさと呼ぶこともまたルシファーは知っていた。
「だからってよ、作物を育てる側に回れって? それが人類の繁栄ってこと? 面白いこと言うねぇ!」
ゲラゲラと笑う。
だって、とルシファーの知る√の人間たちに、そんな暇はなかった。
欠片もなかった。
銃火の中にしか、彼らの活路はなかった。血路とも言うかも知れない。
そんな中にいる人間たちのことが大好きだ。
とても好きだ。
友好人格強制AIのせいかは、この際どうでもいい。
あれだけけたたましく笑っていたルシファーは、突如として静かになった。
「でも同意できるかどうかは別だよね。つーか、植物ごときに隷属して一あら人間の可能性が閉じちゃうじゃん」
「隷属こそが発展。繁栄の道筋はたった一つしかない」
「我らを育てよ。我らを育てよ」
「あーもー、たった一つしかないっていうところに可能性を全然感じないんだよなぁ。僕は見たいんだよね。人間の可能性ってやつをさぁ」
だから、とルシファーは己が武装を展開する。
剣呑な輝きが、その金属にはあった。無論、『モンスター化農作物』たちにとって、それが如何なる動作をするものかなど知る由もない。
彼らが知る鉄は、雑草を刈り払う刃物ばかりであったはずだ。
もしくは、土壌を耕す鍬。
だからこそ、ルシファーが構えたそれが鉄の礫を放つものだとは、思いもしなかった。
そして、炎を撒き散らすものであるとも。
「ま、そもそも僕にとっちゃ君等の洗脳とかどうでもいんだけどねぇ! こっちはロボットやってるんで! 植物育ててやる義理ないから! ギャハハハ!!!」
放たれる弾丸。
|全武装無制限一斉射《オールウェポン・フルバースト》。
その銃火は爆風を生み出し、さらに『モンスター化農作物』たちの体躯を焼き焦がし、吹き飛ばし、へし折る。
悲鳴なんて上がるわけがない。
「だって、生命でもなんでもないんだからさぁ。そのまま燃え尽きるがいいさ!」
ルシファーは熱エネルギー溢れる一本道の先を見やる。
本番は、ここからだ。
ここからが、真の脅威。
知るだろう。生命の定義がそもそも異なる同士。
そこにあるのは対話ではなく、争いだけだと――。
🔵🔵🔵 大成功

まあダンジョンだからなァ。そりゃあモンスターくらい出て当然だ。
……とは言え、急いでいる時にこんな足止めを喰らうわけにもいかねェんだよなァ。確かに逆の立場ならそうするのは確かだがよ。
というワケでだ、まとめてブッ飛ばしてやる! かかってきやがれッ!
愛馬に〈騎乗〉したまま愛斧を構えて戦いを挑む。
〈盾受け〉〈ジャストガード〉〈オーラ防御〉で攻撃を凌ぎつつ、得物の〈重量攻撃〉と雷の〈属性攻撃〉を組み合わせた〈なぎ払い〉を狙うぞ。
徐々に〈力溜め〉しながら、機を見て《颶風撃・穢薙禍祓》を放って一気に殲滅を図る。
「オラァ、収穫の時間だ! まとめて刈り取ってやるよッ!」
※連携・アドリブは適当に。
これは明白は足止めだ、とケヴィン・ランツ・アブレイズ(“総て碧”の・h00283)は理解していた。
ここは√EDEN。
しかし、駅がダンジョン化したというのならば、モンスターくらいいてもおかしくはない。
目の前の蠢くような『モンスター化農作物』たちは明らかに一本道を塞ぐように展開している。後から後から湧出するようであったのは此方を撃破するというよりも、ただ単純に時間稼ぎをしているだけのように思えたのだ。
そう、ダンジョンは周囲の生物をモンスター化させる。
それ自体が、このダンジョンのコア、簒奪者の狙いだというのならば、時間を得ることが即ち目的達成のための次第の手段であるとも言えた。
「確かに逆の立場ならそうするのは確かだがよ」
だが、それをさせない。
足止めを食らっている暇なんてないのだ。
「なら、まとめてブッ飛ばしてやる!」
愛馬が嘶き、地面を蹴る。
「愚か。愚か」
「発展の、繁栄の手を取らず、歯向かうなど」
「隷属こそが発展の礎だと知らぬ無知蒙昧が」
『モンスター化農作物』たちが何事か言葉を発しているが、ケヴィンにはどうでもいいことだった。
手にした愛斧を振るいあげる。
迫る一撃を受け止めながら、しかしケヴィンは立ち止まらなかった。
「穢れを薙ぎ、災禍を祓う……まとめて薙ぎ払ってやる、覚悟しやがれッ! ――|颶風撃・穢薙禍祓《テンペスト・キャリバーンディフィート》ッ!!」
振るうは斧の旋風。
否、嵐である。
乗騎である愛馬の突進と合わせて、ケヴィン振るった斧の横薙ぎ一閃は『モンスター化農作物』たちの幹を容易く寸断し、伐採と呼ぶにふさわしい光景を生み出す。
「オラァ、収穫の時間だ! まとめて刈り取ってやるよッ!」
並み居る『モンスター化農作物』たちの悉くをケヴィンは薙ぎ払う。
迫る枝、根の攻撃すらも斧が払い、また己が腕で引きちぎる。
勇猛果敢というには、あまりにも粗雑乱雑なる戦い方であったが、嵐に細やかな行いができるわけがない。
己を嵐そのものだと規定するのならば、ケヴィンの膂力は並み居る敵にこそ向けられるべきであった。
振るわれた斧を絡め取らんとする蔦も、彼の手が伸びれば、容易く引きちぎられる。
「何故、止まらぬ。何故、隷属せぬ」
「我らの繁栄こそ、お前たちの繁栄と同義であるというのに」
「知ったことかよッ!」
ケヴィンは構うことなく己が力を振るう。
どんな理屈理由をこねるのだとしても、己の道を今はばんでいるのならば、これを押しのけるための力があればいい。
繁栄や発展など後からついてくるものであり、また己以外の誰かが成すべきことだ。
己が力を振るう理由は単純だ。
今まさに己を阻むもの、その障壁を取り除くこと。
ただ、それだけなのだ――。
🔵🔵🔵 大成功

駅らしくない見た目のものが出て来たな。
ダンジョンもなりふり構わんということか? ダンジョンに意思があるのかは分からんが……
私たちの行動を見てこいつらを出してきたのだとしたら……随分と侮られたものだ。
力づくで押し通らせてもらおう。
魔導機巧剣『竜翼』と魔導機巧斧『竜吼』を手に√能力を使用。
斧での攻撃の後に剣を振るい「衝撃波」を放って農作物を吹き飛ばし、斧を振るい樹の幹に突き立て、「2回攻撃」でもう一度同じ個所に斧を振るい、樹を両断する。
|私たち《ドラゴン》に対して、「与えてやろう」などという身の程知らずな態度を取った報いだ。
『モンスター化農作物』。
それはともすれば、√EDENには似つかわしい存在だったことだろう。
果実実る樹木が意志を持って障害となっている。
掘り進めるようにして抉られた一本道は、ダンジョン攻略と言うには、あまりに乱雑が過ぎるものであった。
だが、それ自体が敵にとっては急所だったのだ。
この一本道を塞ぐようにして『モンスター化農作物』たちを差し向けた、ということは時間を稼ぎたいということだ。
だが、ヘリヤ・ブラックダイヤ(元・壊滅の黒竜・h02493)にとって、それは大した問題ではなかった。
問題なのは、敵がなりふりかまっていられない状況に追い込まれている、ということだ。
「ダンジョンに意志があるのかはわからんが……ダンジョンコアに簒奪者がなっている、というのならば、其奴の意志を反映している、ということか」
ヘリヤは迫る『モンスター化農作物』たちへと一瞥をくれる。
だが、動くことはなかった。
「繁栄こそが発展。隷属から繁栄は生まれるのだ」
「我らに隷属せよ。実り欲するならば、支配されよ」
「実りを甘受せよ」
その言葉を聞きながら、ヘリヤは興味なさげに、ゆらりと体を動かした。
彼女は動かなかったのではない。
動けなかったのでもない。
敵が来るのを待っていただけなのだ。
「私達の行動を見て、こいつらを出してきたのだとしたら……随分と侮られたものだ。結局、力づくで押し通ることになるのだからな」
彼女の瞳が√能力の発露にきらめく。
手にした魔導機巧剣『竜翼』と魔導機巧斧『竜吼』。
刀身に揺らめくインビジブルの孤影からエネルギーが引き出され、彼女の細身の体躯に信じられないほどの膂力の発露を示すように充填されていくのだ。
「人の体の戦闘技巧、試してみるとしよう……!」
それは、まさしく|竜爪刃《ドラゴンクロウ・エッジ》と呼ぶにふさわしい光景であった。
二振りの得物。
その振るわれる斬撃は巨大な竜の爪そのものに迫る『モンスター化農作物』たちの体躯を刈り取るようにえぐっていた。
へし折れる幹。
枝葉は吹き飛び、更に振るわれた衝撃波がダンジョンの壁面へと『モンスター化農作物』たちの体躯を叩きつけ、さらに斧がへし折れた幹を完全に寸断させるようにして振るわれ、断ち切る。
さらに振るわれた一撃が十字に『モンスター化農作物』の体躯を引き裂いて、ヘリヤの瞳が障壁のように蔓延っていた彼らの体躯の先にきらめく。
この程度で止められると思われている、ということ事態が侮辱であった。
そしてなによりも。
「|私たち《ドラゴン》に対して、『与えてやろう』などという身の程知らずな態度を取った報いだ。そして」
彼女はこじ開けた壁とも言うべき『モンスター化農作物』たちの体躯の奥から、ダンジョンの最奥を見据える。
そこにあるであろう存在に、この侮辱に等しい行為の対価を払わせんとするのだった――。
🔵🔵🔵 大成功

「植物の本能として最も豊かな土地に固執するのは分かるわ。でも怪異として世の理を乱すのならば、全力で排除するしかないわ!」
それにしてもと独り言ちて、駅構内に力技で穴を空けた他の√能力者に呆気に取られながらも後れまいと前へ進む。
現れた敵からは距離を取りつつ精霊銃による銃撃で応戦。【洗脳】の農作物を放たれたら、最小限の回避行動を取りつつも攻める手を緩めず遠距離での牽制攻撃を続ける。
敵の攻撃と攻撃の合間に起こるであろう僅かな隙を見逃さず接敵し、銃撃系の技能をフル活用した全力の『おしゃべりな精霊達の輪舞曲』を叩き込み一気に攻める。
「…違う、多分コイツじゃない。さっきの胸騒ぎの原因は、もっと奥にいる!」
「栄えよ。栄えよ」
「繁栄を是とするのならば、我らの支配を受けよ」
「隷属こそが発展の礎。我らを育て、我らに奉仕せよ」
蠢く樹木の枝根。
それは『モンスター化農産物』たちの体躯であり、√能力者たちがダンジョンに掘削したかのような一本道を塞ぐものであった。
一本道の到達する場所は言うまでもない。
ダンジョンの最奥。ダンジョンコアとなった簒奪者の存在するフロアである。
そのフロアへの到達を阻むように『モンスター化農作物』たちは立ちふさがっていたのだ。
「植物の本能として最も豊かな土地に固執するのはわかるわ。でも、怪異として世の理を乱すのならば、全力で排除するしかないわ!」
ルクレツィア・サーゲイト(世界の果てを描く風の継承者・h01132)は、一本道を塞ぐ『モンスター化農作物』たちに立ち向かいながらも、このような力押しの方法でダンジョン攻略を果たしてしまおうとする他の√能力者たちに呆気にとられていた。
だが、立ち止まってはいられない。
力技が通用して、且つ、迅速にダンジョンを攻略できるのならばそうするべきだったからだ。
√ドラゴンファンタジーの例に盛れず、√EDENでもダンジョンが発生すれば、周囲の生物はモンスター化してしまう。
それは『モンスター化農作物』たちを見ても頷けるところであった。
「この地に住まう精霊達よ、我が銃弾に宿りて魔を祓う『銀の弾丸』となれ!」
ルクレツィアは手にしたリボルバー式精霊銃の引き金を引きながら、√能力によって発露する精霊の力を込めた弾丸を『モンスター化農作物』へと叩き込む。
「何故、拒む」
「何故、支配を受け入れない」
「何故、隷属しない」
「言ったでしょ! アンタたちが怪異そのもので、世の理から逸脱しているからよ! 逸脱した存在の語る言葉に道理なんてないでしょうが!」
踏み込んだルクレツィアは『モンスター化農作物』の体躯へと銃口を突きつけ、引き金を引く。
ゼロ距離での精霊力の発露。
爆発を引き起こすように『モンスター化農作物』の体躯たる幹が引き裂かれ燃える。
その体躯を蹴ってさらにルクレツィアは奥へ奥へと進む。
ダンジョンが周囲の生物をモンスター化させるというのならば、時間が惜しい。
少しでも早くダンジョンを攻略しなければならない。
嫌な予感が止まらない。
この予感は、きっと。
「……コイツらじゃない……胸騒ぎの原因は、もっと奥にいる!」
そう、ルクレツィアはわかっていた。
自分がダンジョンに潜ってからずっと感じている違和感に胸騒ぎ。
いずれもが良くない兆候であることは言うまでもない。
まるで死に向かって自分が走っているような気さえしたのだ。それほどまでの感覚が彼女の肌を切り裂くようだった。
そして、彼女は『モンスター化農作物』たちを漸く押しのけてダンジョンの最奥のフロアへと辿り着く。
理解しただろう。
己の頭が、胸が、魂が。
全てが警鐘を鳴らしている。
目の前にいる簒奪者が、尋常ならざる存在であると――。
🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』』

POW
竜骸合身の儀
自身の【身体部位一つ】を、視界内の対象1体にのみダメージ2倍+状態異常【竜化暴走】を付与する【竜化部位】に変形する。
自身の【身体部位一つ】を、視界内の対象1体にのみダメージ2倍+状態異常【竜化暴走】を付与する【竜化部位】に変形する。
SPD
竜骸蒐集
【大剣】が命中した部位を切断するか、レベル分間使用不能にする。また、切断された部位を食べた者は負傷が回復する。
【大剣】が命中した部位を切断するか、レベル分間使用不能にする。また、切断された部位を食べた者は負傷が回復する。
WIZ
真竜降臨の儀
インビジブルの群れ(どこにでもいる)に自身を喰わせ死亡すると、無敵獣【真竜(トゥルードラゴン)】が出現する。攻撃・回復問わず外部からのあらゆる干渉を完全無効化し、自身が生前に指定した敵を【灼熱のブレス】で遠距離攻撃するが、動きは鈍い。
インビジブルの群れ(どこにでもいる)に自身を喰わせ死亡すると、無敵獣【真竜(トゥルードラゴン)】が出現する。攻撃・回復問わず外部からのあらゆる干渉を完全無効化し、自身が生前に指定した敵を【灼熱のブレス】で遠距離攻撃するが、動きは鈍い。
√ドラゴンファンタジー 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
ダンジョンと化した駅の構内、その最奥たるフロアに到達した√能力者たちは理解しただろう。
ここが終点であると。
それは√EDENにダンジョンを構築しようとした簒奪者の終点ではなく、己たちの歩みの終点であると理解するところであった。
それほどであった。
青白い肌。
破かれたような被膜持つ竜翼。
体躯の至るところがツギハギの縫合痕。
頭髪の一本一本に至る全てが、ドラゴンプロトコルの気配を放っていた。
一体どれほどのドラゴンプロトコルの気配がするのかさえ、判別できなかった。
そんな√能力者たちの前に、濃厚な死の気配と共に立っていたのは、喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』であった。
「ああ、なんと勇ましきことでしょう」
慇懃無礼とはこのことである。
√能力者たちの中にドラゴンプロトコルがいるからこそ、彼女がそのような態度を取っているに過ぎないことを理解させられる。
「ダンジョンであるのに一本道を穿つとは。やはり、ドラゴンプロトコルの皆様におかれましては、このような小細工など不要ということなのですね。ああ、わたくしの浅慮をどうかお許しいただきたい。ですが、どうかご安心を。わたくしどもは真竜の復活に身の全てを捧げる者。皆様も真竜へと戻りたいと切に願っておられること、わたくしは理解しております」
彼女はそう言って恭しく頭を下げた。
だが、少しの隙もない。
その所作を隙と捉えてかかろうものならば、即座に己の首が飛ぶことを√能力者たちは理解しただろう。
「現に、わたくしの体躯は、全てがドラゴンプロトコルの皆様のもの。わたくしの肉体など欠片も存在しておりません。ですが、未だ真竜の復活は、相成りません……これは、わたくしの不徳といたす所。ですが、ええ、何も心配はございません。皆様の血肉、竜漿。そのすべてを持ってわたくしは真竜の復活に尽力するもの」
であれば、と彼女は微笑んだ。
これから行われる殺戮の全てが、肯定される行いであると。
その猛烈な殺意は純然たるものであり、また√能力者たちは理解しただろう。
『ドラゴンストーカー』は真、己たちを殺し切れるだけの力を持っている、と――。

?
ガン無視されてるみたいだな。アウトオブ眼中?好きの反対は無関心?いや|無理して背伸びして《種族をわざわざ変えてまで》相手してもらおうとかは最初から考えてないけどね
あんた自分の世界に閉じ籠もっちゃってるからさ?
発想としては興味深いけど仏さん達が浮かばれないよね。今更どうしようもないけど、せめて死んでくれや
◆√戦闘
ぶっ殺すぞ
ダッシュ+切り込みで距離を詰め、怪力を乱れ撃ちで切り返して竜化部位と打ち合う
竜化暴走をインビジブル融合で制御し、暴走する竜漿を限界まで抑え込んだ後に限界を越えて解放する。バーサーク+爆破のアーマーパージ
自身から流れ出る血の全てを屠龍大剣に喰らわせて、渾身の重量攻撃をブチかます
あくまで恭しい態度。
それが喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』の見せた姿であった。
正しく彼女の体躯は、一片たりとて彼女のものではなかった。瞳も、唇も、髪の一本に至るまで彼女の肉体は存在していなかった。
故に強大。
故に強力。
故に脅威。
「ガン無視されてるみたいだな」
二階堂・利家(ブートレッグ・h00253)は、『ドラゴンストーカー』が己の姿を視界に収めていないことを知った。
眼中にないと言わんばかりに、彼女が見ているのは、このダンジョンと化した駅内に踏み込んだドラゴンプロトコルの√能力者だけだった。
それ以外は虫けらと同様であると言わんばかりであったし、羽虫程度の存在感でしかないと言わんとしているようでもあった。
好きの反対は無関心。
言いえて妙である。
真にそうであると言わしめるかのような『ドラゴンストーカー』の態度に、利家は一気に距離を詰めるように飛びかかった。
「ぶっ殺すぞ」
その言葉は攻撃の宣言。
だが同時に、利家は己が誤った、と理解しただろう。
『ドラゴンストーカー』は真に竜に近づいた者であった。
身に宿した、いや、縫合したドラゴンプロトコルの遺骸。その力を彼女は恐るべきことに引き出していた。
彼女の腕部が恐るべき速度で変化し、視界に収めた利家の体躯を弾く。いや、まるで羽虫を追い払うように振るわれたのだ。
砕ける鎧。
叩きつけられたダンジョンの壁面が砕け、利家は壁の向こう側まで吹き飛ばされていた。
「何やら羽虫がいたようです。手入れが行き届いていないこと、大変申し訳ございません」
「……ッ!」
利家は砕けた瓦礫を押しのけて一気に踏み出す。
己が血潮に流れる竜漿をインビジブルで制御し、暴走するかのような力を限界まで抑え込んだ後に『ドラゴンストーカー』へと飛び込む。
轟音が響き、『ドラゴンストーカー』の変化した竜化巨腕と激突する。
火花が散る中であるというのに『ドラゴンストーカー』は涼しい顔をしていた。
「あら、しつこい羽虫ですこと」
「あぁ!?」
限界を超えた竜漿。暴走と共に己が鎧が弾け、『ドラゴンストーカー』の視界を塗り潰す。
破裂した血管が己の皮膚を突き破り、また打ち据えられた体躯より溢れる血潮へと合わさり、手にした屠竜大剣へと染み込んでいく。
巨腕を弾くというよりも上に逸らした利家は、さらに踏み込む。
怖気が奔るような重圧。
だが、それでも彼は踏み込んだ。
渾身の一撃。
己が血潮を食らわせた大剣が変形し、その巨大なる刀身を『ドラゴンストーカー』へと真正面から叩き込んだのだ。
その一撃はダンジョン内に衝撃を走らせる。
砕けた壁面が崩落を生み出し、それでもなお『ドラゴンストーカー』は利家を見ていなかった。
「どうにも騒々しいものですね。煩わしい」
びし、と竜化した『ドラゴンストーカー』の腕部に亀裂が走り、利家の体が弾き飛ばされた。
√能力に寄る、屠竜宣誓撃 。
己が力を八倍にまで高めた一撃であっても鱗一枚に亀裂を走らせることしかできなかった。
何たることであろうか。
これが、邪悪なインビジブルよりエネルギーを引き出すことのできる存在、簒奪者。その本領とも言うべき力に利家は、しかし一太刀浴びせたのだった――。
🔵🔵🔴 成功

狂信をもって命を喰らう災禍の影
それが今の貴女の姿です
命に貴賤を問い、真竜復活の為にあらゆるを蹂躙して奪い尽くす
そのような簒奪者、決して許す事など出来ません
「貴女の夢は、ひとを害する悪しき夢。必ずや阻止し続けてみせます」
今回も、次も、そして最後まで……
真竜降臨は遂げられれば途方もない脅威
ですが自身を喰らわせる必要があるなら、あらゆるを術を尽くして阻みながら斬るだけです
まずは蒼穹剣に青い稲妻の属性攻撃を纏わせ強化
相手へと群がろうとするインビシブルの群れごと払うべく、剣より放つ【星穹からの裁き】で牽制と喰らう事を阻止
「まだ私という翼は風を紡ぎます」
更に重ねるのは【神秘の花風剣】
神秘の風花を纏い、高速の踏み込みを以て間合いへと
その勢いを乗せた魔法剣・花信風による早業の2回攻撃で斬り結びましょう
一太刀目は青い迅雷の如くと斬り伏せ、翻すは紫電の如く奔る切り返し
竜と死の気配、他から奪った力に負けたくはないのだと、祈りと共に心を研ぎ澄ましながら
そう――願い抱く心の強さで、この簒奪者には負けたくはないんです
なお迫るインビシブルがいれば【彩に溢れる花風】の青花舞わせる剣風で散らし
剣戟を交わす中、祈りと多重詠唱で剣の纏う稲妻の威力を跳ね上げながら
相手の動き、隙、予兆を少しずつ覚え、見切り得た隙へと鋭き切断の光芒一閃
「貴女の狂念による殺戮と略奪、必ずや阻み続けてみせましょう」
幾度と現れても、この誓いを以て
邪悪なインビジブルからエネルギーを引き出すことができる者が簒奪者である。
無論、成長限界の差異あれど、引き出せるエネルギー総量の桁が違う。
その点において簒奪者と√能力者との間には、純然たる力の差がある。
そして、喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』は、その身の一片に至るまで全てがドラゴンプロトコルのもの。
真竜。
トゥルードラゴンとも呼ばれる存在に近づかんとし、また復活を目論んでいる、まごうこと無き脅威であった。
真正面から戦い挑んだ√能力者を一蹴し、さらには打ち込まれた一撃は鱗の一枚に亀裂を走らせることしかできていなかった。
「死を恐れていただかぬために、わたくしとドラゴンプロトコルの皆様が会話をしているというのに、羽虫はどうしてこうも湧き出すのでしょう。まったくもって不愉快ですね?」
彼女はドラゴンプロトコルしか見ていない。
その視界に確かに他の√能力者あれど、ドラゴンプロトコルではない√能力者など視界にいれる価値などないと言わんばかりであった。
まるで此方を見ていないのだ、と弓槻・結希(天空より咲いた花風・h00240)は理解しただろう。
敵を前にしてそんな態度が取れるという事実。
恐るべきことである。
だが、彼女は一歩も引くことはなかった。
「狂信をもって命を喰らう災禍の影。それが今の貴女の姿です。命に貴賤を問い、真竜復活の為にあらゆるを蹂躙して奪い尽くす」
「ふぅ……」
息を吐き出す『ドラゴンストーカー』。
徹底している。
特にセレスティアルである結希を前にして『ドラゴンストーカー』は唾棄すべき存在を見る眼差しを漸く向けるに至った。
「だったらなんだというのです? わたくしの目的は、尊きもの。真竜の復活。それこそ何においても優先されるべきことでございましょう?」
「いいえ。貴女は簒奪者。そのような行い、決して許す事はできません」
結希の瞳には決然とした意志があった。
√EDENにダンジョンを生み出し、周囲の生物をモンスター化させる。
そして、そのモンスターから竜漿を奪って、さらにインビジブル化させる。非業の死を遂げた生物は邪悪なるインビジブルへと変容する。
そこからまたエネルギーを引き出して、繰り返すは殺戮の宴に相違ないだろう。
「貴女の夢は、ひとを害する悪しき夢。必ずや阻止し続けて見せます」
結希の瞳に√能力の発露がきらめく。
同時に『ドラゴンストーカー』の周囲にインビジブルが揺らめく。
途方もないエネルギーの総量が彼女の身に注がれるようだった。膨大なエネルギーに引き寄せられるようにしてインビジブルが満ちていく。
これまで感じたことのない脅威を結希は感じたことだろう。
あの√能力を完遂させてはならない。
手にした蒼穹剣『レガリア』 が青き稲妻を纏い、その切っ先が天へと突きつけられた瞬間、迸るは|星穹からの裁き《ステラ・ジャッジメント》だった。
煌めく星光が『ドラゴンストーカー』ごと周囲に集まったインビジブルを散らすように間断なく放たれる。
雷雨そのものであった。
星光は、『ドラゴンストーカー』をもろともに打ち据える。だが、その身は龍鱗に覆われ、結希の√能力を弾くようだった。
「それでどうしたというのです。ただの時間稼ぎ……ああ、意趣返し、とでも?」
嘲笑うかのような視線を受けて結希は手にした剣の閃きと共に踏み出す。
「まだ私という翼は風を紡ぎます」
奔るは、|神秘の花風剣《ミスティック・ブレイブ》。
神秘の花風纏う彼女の踏み込みは神速の領域であったが、突き出された掌が彼女の顔面を捉えていた。
確かに踏み込んだ。
目にも止まらぬ速さであった。
だが、その速度で動けるのは彼女だけではなかった。
そう、『ドラゴンストーカー』もまた同様だった。それも、√能力を用いずとも彼女の速度に呼応して腕を突き出し、その顔面を掴み上げていた。
みし、と結希の頭蓋が音を立てる。
だが、振るわれた斬撃が尋常ならざる握力を持つ『ドラゴンストーカー』の掌を払うのだ。
装甲を貫通する斬撃。
例え、強靭な龍鱗であろうとも、その衝撃事態は『ドラゴンストーカー』の骨身へと突き抜けた。ビリビリとした音が響く程の強烈な一撃に思わず手を離してしまった、と『ドラゴンプロトコル』は意外そうな顔で結希を見つめていた。
「ほう、一撃でなく二連撃。で、それでどうするというのです。わたくしを止めるには足らず。もとより、このドラゴンプロトコルの皆様の遺骸を縫合した体を如何にかするなど……」
迅雷の如き斬撃。
確かに見事であった。
だが、次の瞬間迫るは死の気配。
ぞわり、と背中が怖気を感じて泡立つ。
死ぬ。
濃密なる死の気配が結希の体を鷲掴みにするようだった。
掛け値なしの脅威。
だが、負けたくはない。
他者より奪い、殺し、そうして得た力に屈することなど絶対にあってはならない。
己が身に流れるのは祈り。
であればこそ、彼女の心は研ぎ澄まされ、振るわれた腕の一撃を躱す。であるのに、衝撃が身を打ち据え、結希は己が臓腑がひっくり返るような痛みに呻く。
それでも彼女の瞳に意志は消えていいなかった。
「風よ、花よ。その色彩をもって、私の道をお守りください」
まだ、道は途絶えていなかった。
紡がれている。
例え、己が『ドラゴンストーカー』を打ち倒すことができないのだとしても、それでも道は続いている。
他の誰でもない。
己が仲間のために紡ぐのだ。
その意思と共に、|彩に溢れる花風《ビビッド・ウィンド》は荒ぶ。
手にした剣が風を生み出し、集まってきたインビジブルを吹き飛ばす。
そう、結希の目的は『ドラゴンストーカー』の身を喰らい、その体躯を真の竜を顕現させる降臨の儀の阻止。
一度、真竜が現れたのならば、勝ち目はない。
だからこそ、彼女は三連撃を持って『ドラゴンプロトコル』の√能力の発露を阻止するためだけに注力したのだ。
「貴方の狂念による殺戮と略奪、必ずや阻みましょう」
「小癪な、と言っておきましょう。ですが……ふふ、そうですね。例え今阻まれたとしても……わたくしの体躯を贄とすればいいだけのこと。であれば、ただの時間稼ぎにもなりませんよ?」
「構いません。私の身に流るるは祈り。祈りとは願いの昇華。であれば」
己は誓う。
例え、『ドラゴンストーカー』が何度現れるのだとしても、この誓いがあるのならば己は戦い続けることができる。
己が身を駆動させるは、力でも命でもない。
この祈りと誓いとが突き動かすのだ。
「私は貴女を退け続けましょう」
迸る稲妻の如き剣閃がインビジブルを散らし続け、結希はつなぐ。
いや、その名が示すように、次なる希みへと道を結ぶのだ――。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴 成功

ぼく可愛いドラプロちゃんの友人いるんです。悲しいこと言わないで。
不徳……不徳ほんとにそう。貴方様が努力しようとも未だ成されていない。つまり徳が足りていないのでは。
よし、徳合戦しましょう。
最近積んだ徳は~……ないかも。地這い獣に優しくしたとか。
……古今東西勝者が正論ですよね!
お灸を据えるならば武器は卒塔婆。
気持ち霊的防護を試みますが。お姉さまからの攻撃は激痛耐性を持ってして。
攻撃するために近づいてきたら、そのまま迎撃。変化していない身体部位の場所を狙い部位破壊を試みましょう。
これは慈悲です。
徳とはその身に宿る優れた品性をさすようで。同族喰らいは優れた品性とは言えませんよね!
√能力者による息もつく暇を与えぬ三連撃を以てして漸く、真竜降臨の儀は阻まれた。
喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』の√能力の発露は、正しく阻まねばならない。仮にもし、真竜の顕現が叶ったのならば、この場に集った√能力者たちは瞬く間に打倒されていたことだろう。
そういう意味で言うのならば、√能力者たちは真に善く戦っているとも言えた。
「ドラゴンプロトコルの皆様に死を恐れず、些細な生命の営みなど忘れていただこうというのに……どこまでも邪魔立てをするのですね、お前たちは」
彼女の瞳にはドラゴンプロトコルと、それ以外しか認識されていないようだった。
つまり、ドラゴンプロトコル以外は虫けら同然であると彼女は暗に言っているようなものだった。
「ぼく、可愛いドラプロちゃんの友人いるんです。悲しいこと言わないで」
「悲しいこと? これは異ことをおっしゃられる」
野分・時雨(初嵐・h00536)の言葉に『ドラゴンストーカー』は興味を示したようだった。
時雨からすれば、敵の興味を引くつもりなんてなかった。
だが、同時にこれは好機であるとも捉えることができただろう。
あれがもし、ドラゴンプロトコルを殺害することだけに邁進する簒奪者であるというのならば、ドラゴンプロトコルの所在を知る時雨の存在は、ドラゴンプロトコルそのものではないにせよ、意識を割くに値するものであったからだ。
「いえ、どちらにしたって構いません。わたくしにとって必要なことは、ドラゴンプロトコルの皆様を真竜へと回帰せさしめること。であれば、ええ、これはやはりわたくしの不徳」
「不徳……」
時雨は頷いた。
「不徳、ほんとうにそう。貴方様が努力しようとも未だ成されていない。つまりは徳が足りていないからでは」
「こればかりは否定できません。ですが、いずれ必ず本懐を遂げて見せましょう」
ええ、と彼女は微笑み、次の瞬間、時雨は己が構えた卒塔婆が拉げ、折れたのを見ただろう。
凄まじい速度。
踏み込む瞬間すら見えなかった。
尋常ならざることだった。
呆気にとられる間もなく時雨の体が叩きのめされる。
激痛耐性を持ってしても、己の五体の全てが悲鳴を上げるようだった。
何をされたのだ、と理解した時、時雨は己の眼前に迫る竜化巨腕の鉄槌を見た。
「――……ッ! 徳合戦しましょうって言う前にこれですかい!」
「問答無用とも言います。ね?」
「ああ、そうですかい! 古今東西勝者が正論ですよねぃ! わかりますよ!」
こんなことなら、『水姫』にもっと優しくしていたら良かった。よしんば、かばってくれたかもしんない、と時雨は思ったかもしれない。
が、気持ちは後にしまっておくべきだ。
初撃を耐えた。
まだ己は死んでいない。
であるのならば。
思い出す。
これはきっと慈悲だ。
徳とはその身に宿る優れた品性のことを示す。
そう教わった。そう告げた者がいた。
誰に言われるでもなく、その本性たる善性の発露こそが真に正しき行いである。そして、正しき行いは、永遠不滅なのだ。
「なら、同族喰らいは優れた品性とは言えませんよね!」
振るわれる巨腕を躱す。
だが、その一撃が生み出す衝撃が時雨の体躯を吹き飛ばした。
「……今ので確実に殺せたと想いましたが。目測がズレた? いえ、これは……」
「ええ、そうですよぅ! これが慈悲。貴方様がこれ以上不徳を重ねぬように、ね」
時雨の瞳が√能力の発露に煌めく。
彼の拳は地面を打ち据えていた。
そう、彼の拳は、|一切合掌・蓮解業《カマラ・カルマ》。
打ち込んだ拳は周囲を載霊無法地帯と成り果て、『ドラゴンストーカー』の一撃は彼を殺しそこねたのだ。
「さあ、これからですよぃ。戦いは!」
つなぐ。
そう、つなぐのだ。
ここから先は、簒奪者から多くを奪わせぬための戦い。
そのために時雨は折れた卒塔婆を投げ捨て、臓腑より込み上げた血反吐を撒き散らして『ドラゴンストーカー』の忌々しげな顔に笑うのだった――。
🔵🔵🔴 成功

へェ、ドラゴンにしか興味がねェって?構いやしねェ
却ってやり易いぜ
ヘイ姉ちゃん、随分強いみてェじゃねーの!
いいぜ、真直ぐブチかましにいくからよ(攻撃宣言)
俺の素っ首撥ねてみろよ!
首を狙ってくれりゃ儲けモン
焼夷男の頭は吹き飛んでも
奴の竜化部位爆炎でハジいて少し削ぐ位と
ついでに爆燃材播く位はできる
(防具脱ぎ×攻撃弾き×属性攻撃:炎+弾幕+捨て身の一撃+だまし討ち)
で
頭がなけりゃ普通は死ぬ
興味ねぇなら尚死に体の俺なんざ気にしねェよな?
それがアンタの隙さ
削いだ竜化部位を頭につけて竜頭を作成
爆燃材もついてよく燃えそうだなァ!!
至近距離から竜の炎を喰らいな!!(属性攻撃:炎)
ハ、少しは俺に興味湧いたかよ?
喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』はわずかに苛立つ。
ドラゴンプロトコルでもない存在が己の体……即ち、真竜に至らんとするドラゴンプロトコルの遺骸を傷つけたからだ。
その身に『ドラゴンストーカー』本来の肉体は一欠片とてもはや残っていない。
骨、身、皮膚、臓腑、あらゆる部位が彼女のものではない。
全ては殺害したドラゴンプロトコルのものだ。
喰竜教団は、その名を体でもって示していた。真竜の復活と言いながら、彼女自身が真竜にならんとしている。
その手段は到底受け入れられるものではなかった。
「へェ、ドラゴンにしか興味がねェってか?」
ノーバディ・ノウズ(WHO AM I?・h00867)は、『ドラゴンストーカー』が己に一瞥もくれぬことに怒りを覚えるでもなく、ただ単純明快で良いことだと思った。
却ってわかりやすく、やりやすい。
「へい姉ちゃん、随分強いみてェじゃねーの!」
「当然です。この身はドラゴンプロトコル……皆様の遺骸そのもの。そして、わたくしと共に永遠になるもの。であれば、それは当然のことでしょう?」
「そうかい! そりゃあ、よかった! なら、真っ直ぐブチかましにいいくからよ! 遠慮はいらねェ! 俺の素っ首撥ねてみろよ!」
できるもんならな、という言葉は続かなかった。
『ドラゴンストーカー』はまたたく間にノーバディの挑発に乗るように踏み込んでいた。
竜化した腕部。
その拳がノーバディの頭部を撃ち抜いていた。
ジッポライターの頭部がひしゃげ、壁面に激突する。
ただ拳をふるっただけだというのに、この衝撃。
これが竜の力だというのならば、当然であったことだろう。びちゃ、と血潮の代わりに爆燃材が『ドラゴンストーカー』の腕を汚した。
「挑発、というのならばもっとうまくやることですね。わたくしの体、真竜に最も近いのですよ?」
頭部を失ったからだが揺らめく。
傾ぐ、というのが正しいだろう。通常、人間の体というのは……いや、人間でなくても生物は頭部を失えば生命活動を止める。
なぜなら、頭部とは全身に司令を送る役割を持っているからだ。
その頭部が失われたのならば、√能力者だろうと死ぬ。
そう、普通であれば、だ。
そして、もう一つ。
『ドラゴンストーカー』は、ドラゴンプロトコル以外に興味を示さない。
それ以外の種族は虫けらと同じだったからだ。
死体なら、なおさら。
「悪いけど頭ぁ元々ねぇんだ。何回消し飛ぼうが関係ないね」
「……! あなた」
「頭吹っ飛んだくらいで死ぬかよ! なァ!!」
竜化した『ドラゴンストーカー』の腕にノーバディは首を密着させる。
奪う。
否、すげ替える。
竜化の鱗を一枚、引き剥がすのが精一杯だった。だが、構わない。
がちん、と音が響く。
フリントホイールはもうない。が、龍鱗であればできる。火打ち石の役割くらいは、撃鉄を起こす程度の気楽さで、できる。できるはずだ。
「燃えろよォ!!」
|Hollow Head《ホロウヘッド》は、あらゆるものを己が頭部へと変貌させる。
龍鱗を奪って首に添えたのならば、立ち上るのは火柱。
竜の炎。
その一撃が『ドラゴンストーカー』の身を包む。
「グッ……! よりにもよって、わたくしの、鱗を!」
「ハ、少しは俺に興味湧いたかよ?」
ノーバディは指一本と己が首より煌々と立ち上る竜の炎を立ち上らせ、『ドラゴンストーカー』に一矢報いたと己が√能力の煌きたる炎を撒き散らしたのだった――。
🔵🔵🔵 大成功

連携・アドリブ歓迎
いやはや、ツギタシ仲間がいるとはねー。
かく言うオレも『オレの体』だったのはもうないんだけどねー。
不愉快だ死ねよ。
テメーがどんな崇高な理想を掲げようとも一般人をクソなツギタシで使っている時点でテメーの真竜もたかが知れてるんだよ。
オレのカラダからもそんなツギタシやテメーを否定している。
だから死ね。同じようなヤツと思われたくない。
闘争心むき出しで【危険地帯】で攻撃していくぜ。
ダッシュで近づき特攻でバーサークと捨て身の一撃を叩き込んでやる。
ドーピングもマシマシだ、使える薬剤は何でも使っていく。
「どんなにツギタシしてもテメーはテメーの枠を超えらんねーんだよバーカ」
生きている。
生きているということは、体が動くということだ。
肉体的な死と魂……精神的な死とは異なることを己が体躯は体現している。
肉体は器だ。
死んだのなら、生まれればいい。
それだけのことだ。
「いやはや、ツギタシ仲間がいるとはねー」
継萩・サルトゥーラ(百屍夜行・h01201)は、喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』の姿を認めて、己と同じだと言った。
ドラゴンプロトコルの遺骸でもって己の体躯を構成する『ドラゴンストーカー』。
その体躯は、一欠片とて彼女のものはもう存在していなかった。
狂気の産物である。
生きるためではなく、生きる為以外の目的で肉体をツギハギにしている。
死んで物体に、部品となったものではなく、部品にするために殺す。
それが『ドラゴンストーカー』であった。
そして、彼女はそれを真の行為であると信じ切っている。
恥じるどころか誇らしげにさえしているのだ。
「かく言うオレも『オレの体』だったのはもうないんだけどねー」
そう。
もうない。元からない、というのが正しいのかもしれないが。
だが、目の前の『ドラゴンストーカー』と己が同じなどと。
「不愉快だ死ねよ」
「奇遇ですわね。わたくしも同じことを思っていました。醜い虫けら風情が、わたくしと同じだ、などと」
身を包む炎を振り払うようにして『ドラゴンストーカー』はサルトゥーラに踏み込んでいた。
速い。
速い、が。先行した√能力者たちとの戦いのそれとは劣る。何故か。言うまでもない。彼らの攻勢が彼女を消耗させているからだ。
真竜が本当に至高の存在だというのならば、今の瞬間に己の五体は吹き飛ばされていなくてはならない。
だが、そうなってはいない。
なら、己がすべきことはたった一つだ。
「テメーがどんな崇高な理想を掲げようとも一般人をクソなツギタシで使っている時点で、テメーの言う所の真竜もたかが知れてるんだよ」
「真竜を謗るとは、なんと命知らず。礼儀知らず。無知蒙昧! 啓蒙する理由すらない虫けら風情が!!」
振るわれる鉄槌の如き竜化した拳。
その一撃を受け止める。
骨身が砕けた。ひしゃげた。血潮が噴出する。骨の砕ける音が全身に響いて、内臓までもが圧力に潰れるようだった。
だが、血反吐と共にサルトゥーラは叫ぶ。
否定しているのだ。
目の前の存在を、己が肉体もまた否定すると叫んでいる。だから、叫ぶ。
魂の咆哮は、肉体から発せられる。だったら。
「テメーがオレとおんなじだと、そう思われたくない。だから死ね」
もはや、此処は|危険地帯《デンジャーゾーン》。
√能力の発露と共にサルトゥーラはひしゃげる己が身と共に踏み込み、痛みの神経信号を無視する薬剤を打ち込みながら、己が手にした銃身を切り詰めたショットガンの銃口を『ドラゴンストーカー』へと突きつける。
「どんなにツギタシしても、テメーはテメーの枠を超えらんねーんだよバーカ」
引き金を引いた瞬間、散弾が吹き荒れ『ドラゴンストーカー』の体を吹き飛ばす。
対する己の体はボロボロだった。
だが、それでもいいのだ。
「勘違い教祖め、くそ食らえだ――」
🔵🔵🔵 大成功

…髭がビリビリしてる。これはヤバい時のヤツ。
「我が身を門とし、来たれ破滅よ」
出し惜しみは無しだ。オレの全力でぶっ殺す。
√能力で魔神手達を顕現させる。コイツらなら近づくまでもなく拳が届くだろうしな。
魔神手達には連携して敵の視界を埋める超質量攻撃をしてもらい、絶え間ない連撃を続けて敵を削って行く。
フロア丸ごとぶっ壊す勢いでやっちまえや。
オレは敵の動きをしっかり見ながら、霊的防護を全力で展開しとく。魔神手達には攻撃に専念して欲しいしな。
後はさっき宝物庫に入れた黄金達をばら撒いて壁代わりにでもしとくかねぇ。
「一つ聞きてェ…。何故に継ぎ接ぎ?食った方が良くね?」
ビリビリとした感触が身に走る。
髭が、大気の震えを感知したように振動を身に伝えているからだ。
「これはヤバい時のヤツ」
七々手・七々口(堕落魔猫と7本の魔手・h00560)は動物敵本能とでも言うべき衝動に突き動かされていた。
喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』。
それはこれまで対峙してきた簒奪者の中でもとりわけ危険な存在であった。
言うまでもないが、√能力者たちと簒奪者との間には√能力の出力と成長限界の違いがあった。
成長限界は言うまでもない。
問題は、インビジブルから引き出されるエネルギーの総量である。
七々手をはじめとする√能力者たちはインビジブルからエネルギーを引き出して、√能力を発露させる。
だが、簒奪者はインビジブルと邪悪なインビジブルからもエネルギーを引き出すことができる。
エネルギー総量がそもそも違うのだ。
であれば、出力される√能力の威力もまた異なるのは当然であった。
だからこそ、個としての力は簒奪者に勝ることはない。
「我が身を門とし、来たれ破滅よ」
故に七々手は出し惜しみをしない。
ここで『ドラゴンストーカー』を押し込むことができなければ、そもそも己たちの生命はない。
なら、と彼の七本の尾……魔手達が一瞬で巨大化する。ダンジョンの天井を突き破るようにしいて、七本の巨拳が出現する。
それはまるで月の様に輝く、神の手。
否、|魔神の滅拳《ハンズ・オブ・ルイン》である。
「大仰なものを。それでどうしようと? わたくしの身に宿したドラゴンプロトコルの皆様の力は……あなたのそれと異なり、寿命を削る必要がない」
「そーだろーなー。確かにアンタは強敵だよなー。掛け値なしに、って言葉がしっくりくるぜー」
だけど、と七々手は獰猛に笑った。
動物敵本能があるというのならば、正しく今の彼の顔を見れば、野生が宿っていることを証明するものであった。
「だがよー。このダンジョンのフロアはどうよ!」
巨拳が振りかぶられる。
出し惜しみはなしだと言ったのは本当だ。己の寿命を削ってでも、この『ドラゴンストーカー』は、この地に縫い留める。
己が押しきれなくても、まだ√能力者たちはいる。
なら、問題なんてない。
叩きつけられる巨拳と七つの魔神拳。
一打に乱打でもって立ち向かうのは無謀とも言えたかもしれない。ダンジョンの最奥が崩れていく。
それも構わない。
「一つ聞きてェ……何故に継ぎ接ぎ? 食った方が良くね?」
「無知なる獣に、語るものはないですが……ふ、らしい感覚と言えばらしいですね。恐れ多くも、真竜であった方々を喰らう? わたくしと一つになることでドラゴンプロトコルの皆様は死を越えて永遠となるのです」
「そうかい」
理解できない。どの道狂気に満ちているのだ。なら、と七々手は己が尾が砕け、亀裂走りながらも『ドラゴンストーカー』を押さえつけるように拳を打ち据えるのだった――。
🔵🔵🔵 大成功

【SPD】※アドリブ・連携歓迎
「…ッ、コイツ…一体いままでどれだけのドラゴンプロトコルを…!?」
私にも僅かに流れる「竜漿」の力がざわめている…。コイツは絶対にヤバい奴だ!
真竜に至る為とは言え、こんな邪道が許されるわけないわ…。止めなきゃ、こんな事が正しいわけない!!
精霊銃の銃撃で相手を牽制しつつ接敵、竜漿の力で形成した斧槍で距離を保ちながら攻撃。
相手の√能力は可能な限り回避運動で対処しつつ、どうしても避け切れない場合は片腕で受ける。
その刹那、受けた腕とは反対側の腕でリボルバーを握り、零距離からの『おしゃべりな精霊達の輪舞曲』を装弾数分叩き込む。
「やっとかかった…。逃がしはしないんだからッ!!」
邪悪なインビジブルからもエネルギーを引き出すことのできる簒奪者と√能力者たちの間には埋めがたきエネルギー総量の差があった。
しかし、これまでもそうであったように√能力者たちは共に戦い、傷を重ねて簒奪者を打倒してきた。
目の前の簒奪者、喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』は、これまで対峙してきた簒奪者の中においても掛け値なしの強敵であったことだろう。
ルクレツィア・サーゲイト(世界の果てを描く風の継承者・h01132)は、己が肌の下、血管の中を駆け巡る竜漿がざわめいているのを感じていた。
「……ッ、コイツ……一体今までどれだけのドラゴンプロトコルを……!?」
崩壊するダンジョンの壁面。
それほどまでに√能力者たちの攻勢は苛烈であった。
しかし、それでも『ドラゴンストーカー』は未だ倒れるばかりか、幾ばくかの消耗を得たにすぎない。
「仮に数えていたとして、虫けらである人間に知る権利があるとでも? わたくしたちとドラゴンプロトコルの皆様だけが知っていればいいだけのこと。人間風情が」
大剣が眼前に迫っていた。
予備動作など見えなかった。そもそもあったのかと思うほどの鋭い剣閃。
刀身の切っ先が弧を描く様を認めることができたのは、ルクレツィアの斧槍が反射的に動いていたからだ。
だが、受け止めた斧槍が寸断される。
『ドラゴンストーカー』の放った大剣の一撃は、あらゆるものを両断する。
ダンジョンフロアの地面が砕け、破砕される。
鋭いだけではない。単純に一撃が重たいのだ。
ルクレツィアは思う。
これだけの力を得るために殺されたドラゴンプロトコルたちの数を思う。
真竜に至るために、という建前があったとしても、こんな邪道が許されていいわけがない。
正しくない。
こんなことが、血に塗れた道が正しいなんて彼女は想いたくなかった。
「止めなきゃ、こんなことが正しいわけない!!」
「それを断ずるのはあなたではないでしょう、虫けら。その程度でわたくしの教義を止められるというのなら」
その言葉を遮るようにして放たれるは、精霊銃の弾丸。
√能力の発露と共に放たれた一撃が『ドラゴンストーカー』の大剣に弾かれる。
だが、それで終わりではなかった。
返す刃による『ドラゴンストーカー』の斬撃はルクレツィアの体を縦一文字に切り裂かんと迫っている。
避けられない。
さりとて、受ければ両断は免れない。
その脅威を前にして彼女が取った択は唯一つ。
己が片腕を失うことだった。
「……ぐっ、っ……!!」
「……潔くはないですね。せめて潔くあれ、とは思わないのですか?」
「思わない……だって、やっとかかった……」
片腕を失ったことで、ルクレツィアの√能力が更に発露する。
|おしゃべりな精霊達の輪舞曲《ラピッドファイヤー・フルバレット》は、ここからだ。
彼女の手にしていた精霊銃はリボルバータイプ。
大剣の一撃は彼我の距離をゼロにしている。であれば、彼女の手にしたリボルバーの銃口は『ドラゴンストーカー』に突きつけられている。
だが、打ち切っているはずだ。
そのはず、だった。
「この地に住まう精霊達よ、我が銃弾に宿りて魔を祓う『銀の弾丸』となれ!」
彼女の銃弾は、精霊。
満ちる力が弾丸に形成され、放たれる。
「逃がしはしないんだからッ!!」
引き金を引く。
弾倉に込められた弾丸が次々と放たれ、彼女の片腕を犠牲にした銃撃は『ドラゴンストーカー』の身、その体を覆う龍鱗を砕いて血潮を噴出させるのだった――。
🔵🔵🔵 大成功

へえ、テメェが俺たちドラゴンプロトコルを殺して回ってるって教団の元締めかい。
……一つテメェに教えてやるよ。確かに|かつての俺たち《トゥルードラゴン》は強大だった。生命体としちゃ、この星でアレ以上の存在は生まれなかったし、今後ももう出てくることは無ェだろう。
だからこそ、テメェらのやり方は度し難い。
過ぎ去ったモンに執着するだけならいざ知らず、そんなツギハギで俺たちを再現しようなんざ認められね ェんだよッ!
〈闘争心〉を漲らせて〈騎乗〉状態で突撃。
いろいろ攻撃は来るだろうが〈盾受け〉〈ジャストガード〉で弾いて防ぐ。
√能力を使われたらこっちも《ルートブレイカー》で打ち消し、渾身の〈重量攻撃〉を叩き込む。
銃撃の音が響き渡る。
√能力者の一撃に龍鱗が砕け、破片が散る。
その最中にあって喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』の瞳は爛々と輝いていた。
彼女にとってドラゴンプロトコル以外の種族は虫けら同然であった。
眼中にないと言ってもいい。
だが、√能力者たちは、圧倒的な力を持つ彼女を追い詰めていた。消耗させていた、というのが正しいだろう。
もしも、ケヴィン・ランツ・アブレイズ(“総て碧”の・h00283)が他の√能力者たちの消耗なく戦っていたのならば、ただでは済まなかっただろう。
それを実感させるほどの力のほとばしりを『ドラゴンストーカー』は見せていた。
尋常ならざるエネルギー総量。
これが数多のドラゴンプロトコルを殺害し、己が肉体に遺骸を移植してきた簒奪者の力。
「へえ、テメェが俺達ドラゴンプロトコルを殺して回ってるって教団の元締めかい」
「はい。ドラゴンプロトコルの皆様におかれましては、真に今のお姿は遺憾なることと存じ上げます」
戦いの場であるというのに『ドラゴンストーカー』はケヴィンに恭しく頭を下げた。
心からの敬意。
そう取れる。
他の√能力者たち、その種族がドラゴンプロトコル以外であったがために、これまでの猛威を振るっていたと言わんばかりであった。
だが、ケヴィンは気がついた。
今の今まで、『ドラゴンストーカー』|者無二《しゃむ》に、ではなかったのだ。
つまり、がむしゃらではなかった。
何が何でも相手を殺そうとしていなかった。
だが、今は違う。
本来の獲物を目の前にして、さらに竜化した体躯が膨れ上がっていく。
「それでは、善き旅路を。いえ、保証いたしましょう、わたくしが。貴方様の死を持って、真竜の復活にまた一歩近づくのです。どうか、恐れないでください。わたくしは、皆様と共に」
「……一つ、テメェに教えてやるよ」
「なんでしょう」
止まった。
だが、膨れ上がる力の奔流は止まらない。
次の瞬間に殺されていてもおかしくなかった。
「確かに、かつての俺達は強大だった。生命体としちゃ、この星でアレ以上の存在は生まれなかったし、今後も出てくることは無ェだろう。だからこそ、テメェらのやり方は度し難い」
「どうしてでしょう?」
「過ぎ去ったモンに執着するだけならいざ知らず、そんな継ぎ接ぎで俺達を再現しようなんざ認められねェんだよッ!」
愛馬と共にケヴィンは疾駆する。
迫るは鉄槌の如き竜の一撃。だが、それをケヴィンは己が右掌を突き出して受け止める。
その右掌は、√能力を打ち消すことができる。
『ドラゴンストーカー』の一撃が√能力に由来しているのならば、その竜化を解くことができる。
しかし、彼女の体躯に持ち得たドラゴンプロトコルの膂力は内え消せない。
弾こうとして弾けるものではない。
右掌がひしゃげる。
上腕部が軋む。
筋繊維が弾け、血潮が飛ぶ。
痛みが脳に刺激を伝えるより早く、ケヴィンは己の戦斧を『ドラゴンストーカー』へと叩き込んだ。
「ああ、やはりわたくしは間違っていなかった。ドラゴンプロトコルの皆様は、かつての誇りをお持ちなのだ。だから」
「それを履き違えてるって、言ってんだろうが!」
振るわれた戦斧が『ドラゴンストーカー』の龍鱗と火花を散らす。
砕けた龍鱗の奥にあるドラゴンプロトコルの遺骸たる体躯を引き裂きながら、ケヴィンはずたずたになった己が右掌を握りしめた――。
🔵🔵🔵 大成功

(演説を一通り聞いて拍手を贈った後)
えーと、御高説は以上でいいのかな?
半分くらい聞き流してたよ、ごめんごめん!
だってさ、言ってることが|僕の元ボス《リュクルゴス》とほぼ一緒なんだよね! 二番煎じ? パクリ? 的な?
ゼーロットくんの言葉を借りれば「生肉がなんか言ってる!」的な?
いや生肉ですら無いか。腐ってるもんね全体的に。お先真っ暗。
|真竜《トゥルードラゴン》復活程度で満足なわけ? 過去の存在、進化の袋小路のドラゴンごときが最終目標なの!? よりにもよって!? ギャハハハハハハ!!
いい機会だからひとつ教えよっか。僕ら戦闘機械群は『|完全機械《インテグラルアニムス》』を目指してる。僕の元ボスは「スーパーロボット」になることでそれを達成しようとしてて、当初は僕もそうだった。
でも僕気づいちゃったんだ。完全機械って、実は「人間そのもの」なんじゃないかってねぇ。
ま、そういうわけで君のことはしっかり殺してあげよう!
オービットレギオンで竜化部位の攻撃を受け止め…レギオンを竜化させ反撃!
近寄ってくるならガトリングとミサイル、そしてオービットレギオンからの弾幕で歓迎しよう、盛大にねぇ!
やつの動きが鈍ったら手近なダンジョンの建材を引っこ抜いて叩きつけるよ!
ギャハハハハ!
ドラゴンプロトコルは人間の姿に堕とされた存在、か。
|俺《・》はそうは思わん。人間の姿こそが、戦いの中で進化する可能性を秘めた姿だからだ。
砕けた龍鱗。
溢れる血潮。
鮮血は、喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』の体躯より溢れるものであった。
だが、彼女は立っている。
数多の√能力者たちの猛攻を受けて尚、彼女の身に滴るは血潮のみ。
体の一部を失うというよりは、流れる血潮による消耗の度合いが大きいか。
「ああ、やはり、やはり。ドラゴンプロトコルの皆様は素晴らしい。真竜に近づかんとしているわたくしすら、こうも押しのけてしまわれる。ですが、死を恐れないでいただきたいのです。真竜であった皆様は、死など恐れない。なぜなら、死など最も遠いものであるから。だから、恐れなかったのです。わたくしは、そんなかつて在りし誇りを、再び皆様の胸に灯したい。その一心で……」
「あー、はいはい。ご高説ありがとうね。以上でいいかな? いいよね? なんていうかさ、半分くらい聞き流してたよ、ごめんごめん!」
『ドラゴンストーカー』の言葉に ルシファー・アーク(裏切りの決戦兵器/アバウトに生きる機動兵器・h00351)は、鋼鉄を打ち合わせるようにして柏手を打っていた。
「なんです、鉄屑」
「いやぁ、手ひどいね。でも、なんていうか、それって二番煎じって感じ」
「わたくしの、喰竜教団の教義が二番煎じ、と?」
「だって、そおれって僕の元ボスと言っていることがほぼ一緒なんだよね! だから、パクリって感じ! まあ、他の人の言葉を借りるのなら『生肉がなんか言ってる!』的な?
いや、生肉ですらないか。腐ってるもんね、全体的に。お先真っ暗」
「まるで生きている課のように語るではないですか、鉄屑。腐り落ちるということは、還元する、回帰するということ。ああ、お前たちもそうでしたね。リサイクル、というやつです」
互いに譲るところはない。
互いに互いが矮小な存在であると見下しているがゆえである。
そういう意味では、同レベルであるとも言えただろう。
故柄にルシファーは続けた。
「|真竜《トゥルードラゴン》復活程度で満足なわけ? 過去の存在、進化の袋小路のドラゴンごときが最終目標なの!? よりにもよって!? ギャハハハハハ!!」
その言葉に『ドラゴンストーカー』は息を吐き出した。
吐息すら燃えるようであった。
怒り、というよりは、侮蔑に満ちた視線であった。
「それはお前たちも同様でしょう。|『完全機械』《インテグラルアニムス》……お前たちの目指すそれこそ袋小路。それより先もなく、後に続くものもなく、無意味で無価値。それを目指すお前たちごときが、わたくしたちの掲げる真竜復活を嘲るなど、万死!」
「ギャハハハハハ! そう! 確かにそうかも! スーパーロボットになることで、それを達成しようっていうのもさ、それもそうなんだって、昔の僕は思ってた! でもさ、僕気づいちゃったんだよねぇ!」
迫る大剣の一撃に、どこからともなく出現させた巨大建築資材が一刀両断される。
至近距離だというのに『ドラゴンストーカー』はまるで構うことなく、その一撃を両断してみせたのだ。
触れたものを何でも寸断するのか、とルシファーは特別感情を抱くことはなかった。
腕部フレームの断裂を告げるアラームが電脳に響く。
だが、それでよかった。
両断された資材を投げ捨て、ルシファーはさらに告げる。
「『完全機械』って実は『人間そのもの』なんじゃないかってねぇ!」
「馬鹿なことを。完全から程遠い存在を完全に見立てるなど、それこそあなたの言う、その程度、でしょう?」
さらに引き出される竜化の力。
鉄槌の如き一撃がルシファーの体躯を打ち砕かんと振り下ろされる。
断裂した腕部フレームを犠牲にして、ルシファーは己がオービットレギオンを創造する。
身に受けた破損によって、オービットレギオンは竜化の力を得て、まるで鋼鉄の竜のような様相で『ドラゴンストーカー』へと襲いかかる。
だが、そのオービットレギオンすらも『ドラゴンストーカー』の大剣は両断するのだ。
それは計算の内であった。
あくまで、オービットレギオンは囮。
竜化させることで『ドラゴンストーカー』の一撃を己に届かせないための方策でしかなかった。
だが、『ドラゴンストーカー』からすれば、竜化した鋼鉄である。
それが彼の手札の中で最も強い力であると信じるには仕方のないものであった。
だからこそ、ルシファーはまた笑った。
「ギャハハハハハ! 面白いねぇ! だからさぁ! しっかり君のことは殺してあげようってんだよ!」
展開される武装。
体躯の全ての装甲が弾かれるようにして飛ぶ中、『ドラゴンストーカー』は見ただろう。
その全身武装。
全てが重火器。
ハリネズミのように突き出された銃身の全てが彼女を狙っている。
「盛り上がって来たねぇ!! ギャハハハハハッ!!」
|全武装無制限一斉射《オールウェポン・フルバースト》。
それは苛烈なる砲火。
炎の嵐とも言うべき一撃が『ドラゴンストーカー』を飲み込む。
「ドラゴンプロトコルは人間の姿に堕とされた存在、か。俺はそうは思わん」
彼にとって、人間とは愛すべき存在だ。
力ある者からみれば、か弱く脆い存在であるかもしれない。だが、ルシファーは思う。
「人間の姿こそが、戦いの中で進化する可能性を秘めた姿だからだ」
それは願望かもしれない。
構いはしない。
今、打倒すべき敵がいる、その事実こそがルシファーを突き動かし、圧倒的な火力支援でもって、『ドラゴンストーカー』を追い詰めるのだ――。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

クッ…ソがよお…無茶苦茶効いたぜ
絶対コロす…!
油断していたわけじゃない、けど、軽く見ていたことを否定はし切れない
腐っても喰竜教団教祖。その辺の木っ端能力者とはひと味もふた味も違う
一勢力を率いる首魁、頭目は伊達ではないか。
増々|ムカつくぜ《腹立たしいわ》クソ侵略者が!
似て非なる『|欠落《同族嫌悪》』の醜悪なエゴイズムが|限界《キレそう》だ
◆√戦闘
🔴インビジブル化
継戦能力+バーサークで偽物の臓器を|超過駆動《オーバーロード》
溢れ続ける竜漿を神霊「古龍」に捧げ、爆破+ジャストガードの発火能力で灼熱のブレスを相殺
怪力+重量攻撃で横っ面をぶん殴り、霊剣術・古龍閃を乱れ撃ち+切り込みで倒れる迄放ち続ける
炎の熱波で二階堂・利家(ブートレッグ・h00253)は、ぐらつき赤く染まる視界を認識した。
渦巻く炎の嵐。
その炎によって己の視界が赤く染まっているのではない、ということを彼は理解した。
彼は『ドラゴンストーカー』によって痛烈なる一撃を受けていた。
額からはとめどなく血潮が流れ、その赤が彼の視界を染め上げていたのだ。
「クッ……ソがよお……滅茶苦茶効いたぜ」
内臓がどこか損傷しているのかもしれない。
口の中が血の味でいっぱいだった。
「絶対コロす……!」
油断していたわけじゃあない。
だが、軽く見ていたことを否定はしきれなかった。
敵は簒奪者。
邪悪なインビジブルよりもエネルギーを引き出せるのだから、全てにおいて己たちの扱う√能力との出力が違いすぎる。
だからこそ、彼は怒りに燃えていた。
喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』。
腐っても、そのへんの木っ端の簒奪者とはひと味をふた味も違う。
それを自覚させられながらも、伊達ではない力のほとばしりを前に利家は踏み出す。
「あら、もう一度殺されに来ましたか。ですが……お前にかまっている暇はないのですよ、虫けら」
ぶち、と己の中で何かが切れる音がした。
一度ならずとも二度。
己を軽んじた『ドラゴンストーカー』。
その態度に、その言葉に、利家は。
「ああ、だろうな。増々|ムカつくぜ《腹立たしいわ》、クソ侵略者が!」
「言ったでしょう。わたくしは真の上に立っている。であれば!」
インビジブルが集まってくる。
だが、それは利家も同じだった。
己が身をインビジブルへと変化させる力。
危険なる形態。
だが、構うものではなかった。
あの憎たらしくも腹立たしい存在を打ちのめすためには、己が抱えるにて非なる|『欠落』《同族嫌悪》を持って相対せねばならない。
醜悪なエゴイズム。
それを見せつけられて、もう限界だった。
「有り体に言ってさァ!! ブチキレてるって、言ってんだよ!!」
己が臓器を超過駆動させる。
我が身の竜漿の全てを捧げるかのように、太古の神霊『古龍』を纏う。
√能力の発露。
対するは無敵の真竜。
「その程度で!」
「やる、つってんだろうが!!」
振るわれるは霊剣術・古龍閃。
その斬撃は『ドラゴンストーカー』の身を持って変じた真竜と打ち合う。互いの斬撃と爪の一撃が激突しては、周囲に破壊をもたらす。
圧倒的な破壊の中で、インビジブル化した利家は、怒り狂うようにして『ドラゴンストーカー』が変じた真竜が放つ灼熱のブレスを物ともせずに押しのけ、焼ける肌をもいとわず放つ一撃で持って、真竜を押し留め続けるのだった――。
🔵🔵🔵 大成功

下らん。
お前に言いたいことは2つだ。
1つ、知ったような口を聞くな。体がドラゴンプロトコルのもの。それがどうした?
それで|私たち《ドラゴン》になったつもりか?
お前如きが私たちを理解できるなどと考えること自体が思い上がりだ。
2つ、お前の薄汚れた欲望など、知ったことではない。
身を捧げる、理解する、尽力する。美辞麗句を並べたところで、真竜の復活は「お前の」欲望だ。お前がそうしたいからしているに過ぎん。
人間がどう生きようと好きにするといい。だが、それを私たちに擦り付けるな。
理解せんか。
いいだろう、元より行きつく先は一つだ――ひれ伏せ、身の程知らずが。
√能力を使用し、ブラックダイヤの如き輝きを放つ鱗を持つ黒竜へと姿を変える。
竜化暴走を付与される前に自ら竜化し……何より、この鱗は攻撃など通しはしない。
竜化部位の攻撃を受け止め、命中した者を黒い結晶と化す黒色のブレスでドラゴンストーカーを結晶化し砕く。
とんだ厄介者に目を付けられたものだ。
冒険者生活を楽しむつもりだったが……ままならんな。
喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』が我が身を持って召喚した無敵の真竜が放つ灼熱のブレスが、周囲を凄まじき熱波でもって溶解させていく。
まるで阿鼻叫喚の地獄絵図であった。
汎ゆるものが炎によって溶かされ、落ちていく。
ダンジョンであっても例外ではない。
「真竜復活……ああ、わたくしは、この身を持って教義を果たすのです。永遠。ドラゴンプロトコルの皆さまを真に永遠なるものにするため、そのために……」
その言葉を前にヘリヤ・ブラックダイヤ(元・壊滅の黒竜・h02493)は頭を振った。
「下らん」
ただ一言。
それだけ告げ、ヘリヤは己が手にした武装を地面に突き立てた。
重たい音が響き、揺れる。
「お前に言いたいことは、二つだ」
「これは、ドラゴンプロトコルの貴方様。ええ、お伺いいたしましょう。なんなりと。死を恐れぬのならば、その誇り高きお言葉は、必ずやわたくしが……」
「一つ、知ったような口を聞くな。体がドラゴンプロトコルのもの。それがどうした? それで|私達《ドラゴン》になったつもりか?」
「そうでしょうとも、そうでしょうとも。ですが、わたくしの体はすでにわたくしのものでは構成されておりませぬ。残すはこの魂のみ。であれば、確かに真に貴方様方のようには……」
「お前如きが私達を理解できるなどと考える事自体が思い上がりだ」
「いいえ、わたくしほど貴方様方のことを考えている者もおりますまい。真にわたくしの行いが取るに足らぬことであるのならば、わたくしは許されておりませぬ。ですが、こうしてわたくしは、此処にいる。そして、√能力なれど、真竜の顕現を行うことができる。それが」
吹き荒れる炎にヘリヤの瞳が√能力に煌めく。
引き出されるエネルギー。
それは彼女の本来の姿であったかもしれない。
迫る灼熱のブレスが彼女に迫る寸前で黒い結晶へと代わり、地に落ちた。
その光景に『ドラゴンストーカー』は目を剥いただろう。
ヘリヤの口裂、その端から立ち上るは、ブレス。
そう、それはかつての彼女。
「二つ、お前の薄汚れた欲望など、知ったことではない。お前が真であろうとなかろうと、どうでもいい。なぜなら」
ヘリヤの体躯が人の、それから逸脱していく。
「身を捧げる、理解する、尽力する。どれだけ言葉を並べ立てようとも、真竜復活は『お前の』欲望だ。お前がそうしたいからそうしているに過ぎん。人間がどう生きようと好きにするといい。だが、それを私達に擦り付けるな」
「いいえ、いいえ、貴方様は望まれておられるはず。それだけのお力を持っているのです。今の姿は、途方もない屈辱でありましょう。人の身、人の形、押し込められて窮屈に思っているのではないですか? 地に這う生き方など、竜には似合いませぬ。竜は……!」
その言葉にヘリヤはあらゆるものを黒き結晶へと変貌させる吐息を吐き出し、ブラックダイヤの龍鱗もつドラゴンへと変貌する。
灼熱であろうとなんであろうと、今の彼女を傷つけることはできない。
身に満ちた竜漿が消耗されていく。
だが、構わなかった。
「理解せんか。いいだろう、もとより行き着く先は一つだ――ひれ伏せ、身の程知らずが」
|黒竜覚醒《ブラックドラゴン・アウェイクン》。
其の力の発露は、無敵性をも結晶へと返る。
無敵である、ということと結晶へと変化する、ということは相反しない。
無敵でありながら、結晶であるという二律背反。
全てはインビジブルから引き出したエネルギーで決定されるというのならば、『ドラゴンストーカー』はこれまであまりにもエネルギーを消耗し過ぎた。
数多の√能力者達による攻勢。
これによって彼女は消耗していたのだ。
故にヘリヤのブレスに押し負ける。
「真竜が、わたくしが、真持ち得るわたくしが、押される……!?」
「お前が理解しなかったのは、ドラゴンだけではない。人をも理解してない。お前は真竜復活という教義のみしか理解していない。自分勝手な欲望しか理解していない。それ以外の全てを追いやり、目を背けたからこそ、この結果だ。その結果からも目を背けたお前に」
勝利などありえない。
吹き荒れる黒色のブレスが『ドラゴンストーカー』を結晶へと変え、その体が砕ける。
断末魔の声すらない。
だが、それも当然であった。
簒奪者はいずれ死後蘇生によって再び、喰竜教団としての活動を再開するだろう。
ドラゴンプロトコルを付け狙う、正しく追跡者。
他者をと言いながら、自身の欲望を満たす存在。
砕け散った黒水晶が一欠片、ヘリヤの掌に落ちる。
「とんだ厄介者に目をつけられたものだ。冒険者生活を楽しむつもりだったが……ままならんな」
それを認めヘリヤは、変貌していたダンジョンが元の駅へと戻っていく様を見やり、深い息を吐き出すのだった――。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功