鎖刻
獣の性質について――魚群の生態について――いっそ、本人に訊いてしまうのが宜しい。潮の臭いが鼻腔を衝いてくる中での食事とは、食餌とは、良い趣味を持っていると皮肉繋げてやれ。ぺらり、適当な頁を捲るよりも前にオマエ、テキトウなドリンクとやらを頼むのが正しさなのではないか。此処は港近くにある喫茶店であり、実にレトロな雰囲気が――寂れ廃れているだけ――ウリの空間なのだから。……それなら、紅茶を貰うとしよう。眠気覚ましにピッタリなカフェインもオマエにとっては睡眠薬に等しい。ああ、眠い。眠くて、眠くて、たまらない。されど、折角ここまで歩いてきたのだ。角を往くかのように座しているのだ。目の前の『これ』の断片くらいは把握しておかなければならない。猟本:アキュートの殴り書き。いつ、どこで手に入れたのかは不明だが、酩酊していたのか、睡魔にやられていたのか、その両方の仕業と謂えた。……ふむ。人間が食事をする場所とは……こういう、埃っぽいところであったのか……? お隣に座ったのは何者だろうか。いいや、何だろうか。……お、お前。こんな場所で何してんだ。うねる触手に妖艶な女体、数多の仔を孕み続けているお隣さんは――シュールな事に――クヴァリフであった。
良い、妾も汝も、戦闘の意思はないのだろう。それより、汝、その魔導書、解読するつもりなのであれば妾も手伝ってやろうではないか。お前……いや、俺も眠いんだ。さっさと終わらせて、横になりたい。何かしら、不明な獣の皮で構成された魔導書は――題名の通り、只の殴り書きの寄せ集めだ。人に読んでもらう為のものではなく、おそらく、メモ書きかその程度の類でしかない。謎の言語で、かつ、字が汚いのだ。幾ら女神様であっても、能力者であっても、これを完全に紐解く事は至難と思えた。汝……その文章なのだが、妾、見た事がある。何……どの文章だ? 此処か、それとも……。ああ、違う。こっちよ。
――正しい時間の流れを冒涜する者への罰について。
汝、さては自分のルーツとやらが封印されてはおらぬか? 何を言い出すのかと思えば……俺は眠いんだ。これ以上、変な事を口にしたら、奢ってやらないぜ。それは困る! 妾はここの紅茶とケーキを気に入ったのだ。追加注文もするとしよう。
そこの汝、妾はチュロスと謂うものが欲しい。
贄とせよ。
鎖のように並べられた、甘ったるい、熱を帯びているかのような……。
🔵🔵🔵🔵🔴🔴 成功