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 √ドラゴンファンタジー、先ごろ発見されたダンジョンの内部。
 その洞窟内部に、激しい戦いの音が響いていた。躍動するWZの駆動音、そして金属と肉とがぶつかり合う、激しい音。
「オールナイターさん!」
 アダムス・オールナイター(愛の薬・h06030)の耳に、声が響いた。WZに装備された通信機越しの声だ。
 その声は綾咲・アンジェリカ(誇り高きWZ搭乗者・h02516)のものである。
「敵がそちらへ向かったぞ。手筈通りに頼む!」
「えぇ、聞こえていますよアンジェリカさん。お任せあれ」
 応じている間にも、こちらへと追い立てられたモンスターどもの叫びはどんどんと近づいてくる。
 ボーグルどもだ。その残虐さと凶暴性に満ちふれた叫びは、洞窟内部の反響も相まって実に恐ろしげであった。
 しかしアダムスはまったく動じることなく、ウィザードロッド『カルタムンディ』を手に待ち受けている。
 光苔の発するぼんやりとした明かりの中に、憎々しげなボーグルどもの姿が浮かび上がった。
「……いきますよ。全部かわしきれますかな?」
 アダムスの口髭が、わずかに持ち上がる。その笑みと同時に、『カルタムンディ』からはおびただしい数の魔法の矢が放たれ、ボーグルどもに降り注いだ。
「ギヒィィィッ!」
 ボーグルどもは悲鳴を上げるが、魔法の矢はそれに憐れみをかけることなどない。全身を貫かれながら、ボーグルどもは絶命していく。
 しかし、ボーグルどもは眼前のアダムスを蹴散らさねば先へは進めない。全身を血に染めながらも襲いかかってくる。
 その腕がアダムスを掴むかに見えたとき。腕は主の元を離れ、ボトリと落ちた。
「どうです? ちょっとした手品でしょう?」
 アダムスはプレイングカードを弄ぶ。わけがわからぬと狼狽えるボーグルにそれを放つと、カードはその首筋を斬り裂いた。
 蜘蛛の子を散らすように、アダムスから離れようとするボーグルども。
「逃さんッ!」
 WZがその後ろから襲いかかって、ことごとくを打ち倒した。

「お見事でしたよ、アンジェリカさん」
「なに、勢子の役目を果たしただけだ」
 称賛されたアンジェリカは謙遜しつつ、
「まだ先は長い。急ぐとしよう」
 と、前方を見やる。
 ボーグルどもの骸をかき分けて進んだ先は、行き止まりであった。
「しまった。先程の分かれ道を曲がっておくべきだったか」
 アンジェリカは顔をしかめたが、アダムスの方は泰然として、
「アンジェリカさん。ちょうどいい頃合いです。ここで小休止しましょう」
 と、促す。
「しかし……」
「まだ、先は長いと言ったでしょう? だからこそ、このあたりで一息ついておいた方がよいのではありませんか?」
 年長者のゆとりを見せ、アダムスはWZに収まったアンジェリカを見上げた。
「ちょうど、新しい茶葉を仕入れたところなんです。せっかくだから、ここにも持ってきていますよ」
「はは、さすが抜かりがない」
 プシュッと小さな音を立ててコックピットが開き、アンジェリカはWZから降りた。ストライドスーツを着た首筋に、わずかに汗が浮かんでいる。アンジェリカはゆるくウェーブの掛かった髪をかき上げながら、アダムスに笑みを向ける。
「どんなときにもティータイムを忘れないのは、よい心がけだ。私を休憩にいざなう殺し文句としても十分だな」
「えぇ。こう見えて、なかなか策士なもので」
「ふふ」
 地面に置かれたガスバーナーの青い火が、洞窟内を流れる空気の流れでわずかに揺らめく。銀色のケトルはやがて、シュンシュンと蒸気を上げた。
 アダムスが持ってきたバスケットの中には、ティーセットが一揃え収められていた。
「あぁ……美味い」
 鼻腔を抜ける香りを楽しみながら、アンジェリカがしみじみと頷いた。
「でしょう?」
 アダムスもカップを傾ける。アンジェリカがベルガモットの香りを好むことは知っている。「客」の好みを覚えていられないようでは、バーテンダーはやっていられない。
 しばしの沈黙。明かりとして、まだバーナーには火を灯している。揺れる炎を見つめるアンジェリカが黙っているので、アダムスも無言のままでいた。
「……あなたと戦場をともにすることができて、心強い」
 ぽつりと、アンジェリカが呟く。長いまつ毛を伏せて。アダムスは黙ったまま微笑んだ。
 遠くで、またしてもボーグルと思しき唸り声が聞こえた。
「まだ、残っていたか」
 アンジェリカが表情を引き締めて立ち上がる。
「残念だが、休憩もここまでだな。進むとしよう。行くぞ……『アダムス』」
 しばし呆気にとられたアダムスであったが、すぐに笑みを返した。
「えぇ。行きましょう『アンジェリカ』」
「……アンジェ、と呼んでくれてもいいんだぞ?」
「ははは」
 いちど親しみを覚えるとグイグイ距離を詰めてくるアンジェリカに苦笑しつつ、アダムスはティーセットをバスケットに収めた。
「さぁ、進みましょう」
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

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