シナリオウサギの捕らえ方
ザクザク、遊郭からなだれてきた人間がパイを切り分けている。ザクロ・パイの味わい方についてはまったく、三月のウサギのように理解はしているが、皮肉な事に、合い挽き肉な事に、逢引されたかの如くにパイは此方に回ってこない。何が起こってるんだ？ あたしは怒られるような事をしてないし、まだ、する気もないってのに如何いうわけだい？ ワケを話したら三月のウサギ、オマエはちゃんと納得を出来るタイプの化け物なのだろうか。えぇ？ 黙りな！ 三月がなんだ！ 三月に気が狂うってのは迷信だってネズミの野郎は知らないのか？ あん？ ネズミなんて何処にもいない？ はぁ？ 猫とお友達になるのがお似合いだ？ いい加減にしろよ、気が狂ってるのはあたしの隣にいる帽子を被ったこいつだけで十分だっての。なに？ そんな奴はどこにもいないだって？ ザクロ・パイだけ喰ってろ！ 三月のウサギの絶叫に、三月のウサギの佛草に、人間も妖怪も引いている。ザクロ・パイの馥郁だけが三月ウサギの精神を擽るのか。なんだって？ ザクロ・パイが擽ってくる？ 頭おかしいのか？ ザクロ・パイは死んだザクロのパイなんだぜ？ ジャムを溶かすって謂うのなら話は別かもしれないが……。兎にも角にも人類的なポーズを決めてやれ。くねくねとした奇怪こそが、現状の三月のウサギを正気に戻してくれる事だろう。ははあ、さてはネズミも帽子屋も、あたしの事を揶揄っているんだ。紅茶を飲んでいるヒトサマや妖怪サマにしたって、あたしの事を莫迦にしているんだ。えぇ？ あたしがそんな紅茶を飲めるわけないだろ。あたしはもっと上等な紅茶を毎日飲んでいるからね！ 慰めるつもりならもっと上等なお茶を用意してくれよ……なに？ 一滴も飲めない？ チッ！ これだから人生ってのは……ウサギ生ってのに囚われてるんだよ！ この蛇口からは飲めるんだよ。ほら、重要なのは突拍子もない人類的な思考ってやつさ……？ くそ！ 泥だ！ 泥しか出ない！ あたしが泥だって謂いたいのか？ 確かにあたしはドロドロだけどね。莫迦にしやがって！ あん？ ちゃんと水が出てる？ 泥だよ！ 嘘つきめ！ 嘘つきには針千本飲ませるのが法律だよ！
食い逃げ脱獄傷害窃盗と罪のパレードだ。そんな三月のウサギが『のろい』の類に中てられたのなら、それこそ、エスカレートする以外にはありえない。おい、そこのオマエ！ あたしを見て笑っただろ？ あたしの事を三月のウサギだって、頭のおかしいウサギだって嘲笑っただろ？ まったく、無実な何者かを捕まえての針千本だ。打出の小槌で頭を叩いたのならば、その反動で口腔が開かれる。この口か？ この口があたしの紅茶やザクロ・パイを食べたんだな？ この盗人！！！ 盗人には針千本だけじゃダメだね。これはもう針万本飲ませるしかないね！ 女王様もそう決めた！ もがもが、もがもが、誰かさんが助けを求めても、無実だ無実だと叫んでも、猫のない笑いじゃあ如何しようもない。あたしはいつになったらお茶を飲めるんだ？ なに？ あと数時間は飲めない？ おしまいだ。やっぱり今日はおしまいの日なんだよ。絶望だ！ 絶望的なまでの咽喉の渇きだ！ 針飲ませたって面白くないね！ 三月ウサギの方が犬よりも白いだって？ 黙ってろ！ ネズミの絞め方にはこだわりがあるんだよ！ ひらめいた！ 話題を変えよう！ ザクロ・パイはもう飽き飽きだったんだ。代わりにネズミ・パイを焼こうぜ？ ネズミ・パイなら誕生日にだって食える筈さ！ はぁ？ オリジン・ティー？ なんだそれ。ネズミのくせにあたしの知らないもの提供しやがって……？ 三月ウサギにはやらない？ これだから！ 今度のうみそ啜ってやるから覚悟しやがれ！
帽子屋！ 帽子屋ならあたしのことわかってくれるだろ？ 何せハットはネズミののうみそを削り取るのに最適だからね！ 針千本飲まされた誰かさん、今度はどうやらネズミのように振り回されてしまったらしい。ブレイン・ジャムがどろどろと出てきそうな顔色だ。おっと……これは失礼！ 失礼をしてしまった！ このあたしが……？ あたしが失礼だって？ そうやって三月ウサギを決めつけていたんだな、失礼な！！！ 失礼なのはオマエの方だろう。迷惑なのはオマエの方だろう。気が付いた時には周囲、汚職警官がたんまり。なんだ？ なんだなんだ？ あたしに何か用でもあるのか？ オマエか？ ここらで騒ぎを起こしているウサギってのは……と、謂うよりも、またオマエか？ 脱獄しやがって！ グルグル巻き！ あたしをウサギ・パイにするつもりかい？
兎の穴へと飛び込むよりも前に――よいではないか――檻の中の三月。
おしまいだ！ おしまいの日だ！
あたしが目を回すなんて、おしまいだ！
ネズミ！ ネズミの所為だからね。あたしは非誕生日になったら、真っ先に、ネズミ・パイを切り分けるんだ！
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴 成功