シナリオ

骸花

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 ぜんぶ、木が食べちゃったのよ。
 挟み込まれた桜色については、裏返る事のない鮮やかなピンクについては、描写する必要もないだろう。死体よりも死体らしく、腐敗よりも腐敗らしく、妖艶な匂いを孕んでいる『それ』こそ、最もおそろしく、おぞましい人間と考えられよう。人間が、そんな『女』が火車の運転を慣らしている。均しているとも表現でき、後部座席にはふたつの影か。違う。光と影だ。オセロ・ゲームを彷彿とさせる、トゥーン・チェイスを想起させる、冒涜的なまでの有り様であった。CC、お前、到着するけれども、準備は大丈夫かしら? 後部座席から発生する、発声する、賑やかしいもの。騒々しさで謂ってしまえば女の瞳よりも姦しいか。ぼく、本当は玉蓮と二人で遊びたかったけれど、偶には百足と三人で遊ぶのも悪くないよね。暖かくなってきたから、ちょうど見頃だろうし、玉蓮に似合うものだから! 光が笑えば影が嗤う、このマトリョーシカ以上に異常な様子はマトモな人間からすれば地獄よりも奈落だろうか。ケオ、それは如何いう意味でしょう。いや、俺も、ケオの執心と謂うものは知っているから、仕方のない事だと割り切れはするのです……。曲がったのは世界ではない。曲がったのは火車である。捻じれると同時に停止して……停滞して……目的地とやらに到着した。櫻の木の下には屍体が埋まってゐる! と、よくよく謂うではないか。観光客は一人もいない。人の気配など欠片としてない。勿論、女を省いた場合ではあるのだが。そう……これは花見! 上を見ずに下を見る、花見! ちらちらと、ひらひらと、踊っているのは花なのだろうか。枝の垂れた美的センス、その矢印が示している箇所には――いっぱい咲いてるんだって! 百足が言ってた! 馬鹿正直と嘘つきの相性はよろしく、狂い咲きをしたかのような脳味噌が監視しているとなれば、嗚呼、実り豊かを約束したと告げても良い。嗚々、酩酊をするかのような光景だ。さ、レジャーシートを敷いて。青いやつです。これは、地を這う俺がやりましょうです。ざっと、ホトケサマを踏むような、踏み絵をするかのようなカタチだ。じゃあ、じゃあ、俺も手伝う! 端っこ持って広げる~! ケオ、そこは真ん中です。神様の通り道ですので、邪魔をしてはいけないのですよ。……それなら俺、通っても良いよね? 真実サマのお通りだ。そこ退け、そこ退け、神意が煌めく。
 キャッキャと騒いでいる、ウフフをしている、犬ころどもを眺めながら女は団子をつまむ。ああ、そうです。玉蓮、その団子も俺が用意してきましたものですよ。枕団子! ええ、ちゃんと六個ありますですからね。ふたつを胃袋にしまい込めば、ちょうどよい! レジャーシートの上で蜷局を巻くように影色、光の方にも差し出した。枕団子? 真っ白でまんまる! なんだか、玉蓮の心みたい! まだ食べたこともないし、俺も食べたいな! 口腔へと消えて行った真っ白いもの。果たして『それ』は本当に白であったのか。もちもちしてて、もちゃもちゃしてて、ぐちゃぐちゃしてる。お団子とも違う味! これおいしいね百足! 玉蓮も枕団子おいしい? 冒涜的で、刺激的で、別の意味でのおいしいだ。おいしいよ。おいしくて、おいしくて、材料が気になるほどに、ね。材料は何かと? 大丈夫ですよ! 大丈夫大丈夫。大丈夫ですよ。怪異の脳漿を練り込んだのか、別の何かを入れ込んだのか。アタシがおいしくいただけるのなら、構わないわ。でも、あまり変なこと教えちゃダメよ、百足。CCは純粋なんだから……。面白き人間からの愉快なご忠告だ。棘を刺されたとしても、釘を打たれたとしても、鳴いてくれそうにはない。フフ、問題ありませんです。良識の範囲内ですよ、常識の範囲内ではありませんです、何せ、化け物基準! 如何やら光と影と、その隙間にいる人間。この表現は間違いではないらしい。善悪も等しく、女にとっては『かわいらしい』じゃれあいでしかないのだが。なら、良いわ。お前もCCも、仲良くしているのなら、アタシは首を突っ込む必要性も『ない』ものね。
 団子を咀嚼し終えたのならば本題だ。何せ、見に来たのは桜ではなく『桜』である。文字通りの犬めいて、獣めいて、灰かぶりのお姫様に化粧を施すのか。木の下にもお花が咲いてるんでしょう? 土の中にもたっぷり、お花が誇っているんでしょう? スコップの数は多めとせよ。玉蓮、待っててね。百足に負けないように、たくさん掘ってみる! 聖なる光の脳髄――何者かの脳髄――競争心の類が芽生えたのだろうか。ピアノの音も今は掻き消え、目の前の『結婚を約束した相手』の為に張り切りを魅せるのみ。勝負? 勝負です。いや、俺はケオと勝負する気はありませんです。良心の呵責とやらを俺は持っていないのですので……それに。土くれを掘り返す際、最も効率的なのは何を増やす事か。道具? 能力? いいや、違う。多足類にお任せあれ――。四本の腕だ! 四本の腕で掘り! 掘り! 掘り! そもそも勝負にならないのだ。せめて、怪異の腕が二本、転がっていてくれたなら勝負は『わからなかった』のかもしれない。百足の四本のお手て、便利でいいね。……CC、今度、人型の怪異に出会ったら解剖をしておくよ。クヴァリフの仔の触手を拝借するのも愉しそうね……。え? ぼくにプレゼントしてくれるの! やった! 俺も何かねだってみても良いかもしれないですね。そうして顔を出したのは、貌を晒したのは――晒されたのは――怪異の臓腑ではなく、真っ白い、つるりとした。やや! 掘り返した桜たち。白いものが多いですね。鳴いておきましょう。
 テケリ・リ!
 お前も食いしん坊ね。
 皮も肉も腑も――完全に、完璧に、舐り取られた有り様だった。グロテスクの類ではあるのだが、成程、スプラッタの類からは除け者にされている。ご挨拶をしてくれた根っこの先には目玉のひとつすらも刺さっていなかった。桜色はないでしょうかね? 季節外れか? 影の問いに対して垂れ枝は沈黙をするしかない。髪の毛の一本くらい残してくれたって罰は当たらないのではないか。白いのがたくさん、白いのがいっぱい。カラカラ、カタカタ転がってる。カルシウムがたっぷり! 桜色はないのかな。ねえ、玉蓮。白い桜も好き? 嫌いではない。臓腑を根こそぎ根っこが持っていくなど奇怪な沙汰ではあるが、ある種の親近感と謂うものを孕んでくれている。CC、アタシは綺麗な方が好きだわ。指差したのは『花』である。認めてあげたのは『肚』の方でもある。多足類、腐肉を漁るのも趣味ですのに。ふと百足から、影からこぼれた言の葉。嗚呼まずい本音出た。サーセン。睨め憑けてきた死者の魂――浮遊していた、回転していた、インビジブルからの文句。聞こえない。聞こえないのだから、それはナンセンスと同じ沙汰であった。CC、お前、泥んこじゃない。帰りは仕方がないけど、あとでお風呂に入ってちょうだいね。お風呂? ぼく、玉蓮の為なら何秒だって、何分だって浸かっていられるよ! 百足も一緒に入らない? 俺とケオが一緒に入る? 浴槽が幾ら広くても『ヒトサマ』のサイズだ。化け物ふたつが、災厄ふたつが、同時に収容可能なほど機関に余裕などないと思えた。玉蓮! ぼく、善い子でずっといるから、結婚したら……!
 白い桜が辟易と眼窩を眩ませた。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

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