シナリオ

覚めない夢に誘われて

#√汎神解剖機関

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 #√汎神解剖機関

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 暗い、昏い、闇に包まれたどこか。
 天蓋付きの寝台で、ひとりの乙女が眠りについている。

 かすかな身動ぎもせず、寝息も立てないほどの深い眠りは、死と錯覚するほどで。
 しかし屍にしてはあまりにも整った容貌と白磁の如き肌は、人形のようでもある。

 一体彼女はいつからここにいて、いつから眠り続けているのだろう。
 それを知るのは彼女の周りに咲いた青薔薇だけ。
 決して朽ちず枯れもしないその花と茨は、乙女の眠りを護るように蠢く。

 ここに眠りしは麗しき怪異。
 其の夢に誘われし者もまた、覚めぬ眠りに囚われる。


「……あなたたち、最近ちゃんと寝てる? 不眠症にちょうどいい事件があるわよ」
 そんなよく分からない話に興味を持った√能力者達に、オピウム・ラ・トラヴィアータ(放浪の|魅魔《サキュバス》・h06159)はとある事件について語りだした。
「体は健康そのものなのに、ある日突然眠ったまま目を覚まさなくなる……そんな人間が√汎神解剖機関で増えているらしいわ」
 原因・治療法は一切不明。『眠り病』とでも言うべき新種の奇病は、日本全国で密かに、かつ急速に患者を増やしつつある。その異常性から汎神解剖機関も調査に乗り出したようだが、芳しい成果は上がっておらず、入院先の病院を手配するのがせいぜいだ。

「……その病の正体は、『眠る乙女』という怪異の呪いよ」
 オピウムは星詠みの力で、偶然にも眠り病の原因を予知したらしい。それは眠り続けたまま生者を眠りに誘う呪いを発し、呪われた者は乙女の夢に心を囚われてしまうという。
「なんの目的があっての事かは知らないけど、怪異の思惑なんて考えるだけムダよ」
 重要なのは、この眠る乙女をどうにかすれば、患者たちも目を覚ますであろうこと。
 また、生者を眠らせる乙女の呪いは、使いようによっては有用な|新物質《ニューパワー》として、汎神解剖機関の研究対象になりうることだ。

「……で、その眠る乙女はどこにいるのかって? 知らないわ」
 それくらい自分達で調べなさいと、オピウムは興味なさげに言う。彼女の予知では事件の元凶は突き止められても、その所在までは分からなかったようだ。患者の分布からして日本国内のどこかだろうと予測できる程度か。
「……眠る乙女と眠り病の患者は『夢』を通じて繋がっている。なら患者について調査すれば、なにか分かるかもしれないわね」
 心霊的、あるいは超科学的な手段で患者を診察したり、患者が眠りにつく前の様子を家族や医師に話を聞いたり。患者の不自然な容態や過去の行動のどこかに、眠る乙女の所在を突き止める手がかりがあるかもしれない。

「……わたしから言えることはこれだけよ。あとは好きにすればいいわ」
 話を終えたオピウムはそれっきり力を貸す気はなさそうで、おざなりに手を振るだけ。
 しかし彼女がもたらした予知が事実で、眠る乙女の呪いが√汎神解剖機関を密かに蝕みつつあるなら、無視するわけにはいかないだろう――。

マスターより


 こんにちは、戌です。
 今回のシナリオは√汎神解剖機関にて、人々を眠りに誘う怪異『眠る乙女』による事件を解決する依頼です。

 1章は怪異の呪いで眠っている人々について調査します。
 未知の奇病『眠り病』の患者と診断された彼らは現在、√汎神解剖機関の息がかかった病院で入院中です。彼らを診察したり、眠ってしまう前の様子を知人に尋ねるなどして、眠る乙女の所在にまつわるヒントを探してください。

 見事怪異の所在を突き止められたら、2章以降はそちらでの冒険や戦闘になります。
 具体的な内容は実際に章が移行してから説明いたします。
 最終的に『眠る乙女』を撃破すれば患者達も目を覚まし、事件解決となります。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『奇妙な入院患者』


POW 本人や家族、医者などに話を聞く。
SPD 事故や事件の資料から推理する。
WIZ 特殊な術や能力を使って探る。
√汎神解剖機関 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クラウス・イーザリー
眠り病、か
あまり眠れない身としてはちょっと羨ましい気もするけど、そんな気楽な話じゃないよね

俺は入院患者の家族から話を聞こう
発病する前に普段と違う場所に出かけたり、変わったものを食べたりしたか
発病する直前の言動や行動におかしなところは無かったか、など
とにかく怪異に繋がりそうなことを聞いて、地道に情報を集めていく
協力への感謝と、目覚めさせるためにできる限り尽力するということを伝えるのも忘れずに

あとは患者の病室にいるインビジブルを穏やかな対話で呼び出して、患者が眠っている時の様子を聞くよ
寝言を言うとか動くとか、何かヒントになるようなことが聞けたら良いんだけど

※アドリブ、絡み歓迎です

「眠り病、か。あまり眠れない身としてはちょっと羨ましい気もするけど、そんな気楽な話じゃないよね」
 不眠症気味という話ではなく、クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)の場合はおそらく眠る暇がないのだろう。昼夜を問わず戦闘機械群の襲来を受ける√もあれば、怪異の夢に人知れず侵食される√もある。そのどちらも危機には変わりない。
「ああ、理夜……」「なぜ目を覚まさないの……」
 件の『眠り病』患者のひとりが入院している病院に向かうと、病室ではベッドに寝かされた患者と、その傍らで悲嘆に暮れる家族がいた。あらゆる検査では健康体なのに、意識だけが戻らない――そんな奇病に身内を奪われ、心穏やかにいられる者はいまい。

「すみません。少しお時間いいですか」
 クラウスはこの「病気」の治療のための調査員を名乗り、患者の家族から話を聞く。
 途方に暮れる家族にとっては藁にも縋る思いだろう、自分達にできる事なら何でも、と協力に同意してくれた。
「こちらの娘さん……理夜さんは、発病する前に普段と違う場所に出かけたり、変わったものを食べたりしませんでしたか」
「いえ……そういった事は特には」
「では、発病する直前の言動や行動におかしなところはありませんでしたか」
 現状はとにかく怪異に繋がりそうなことを聞いて、地道に情報を集めていくしかない。
 どんなに些細な事でもいい。少しでも気になった事はないかと尋ねれば、家族は「そういえば……」と呟いた。

「病気になる数日前、娘が言ってました。薔薇と木蓮の香りがする……と」
「花の香り、ですか?」
 家族が言うには、その時娘の近くには薔薇も木蓮もなかったらしい。だから気のせいだと思っていたのだが。予知で『眠る乙女』の情報を聞いているクラウスには、薔薇という単語が気にかかる。
「ありがとうございます。彼女を目覚めさせるために、俺もできる限り尽力します」
「どうか、よろしくお願いします……!」
 家族への聞き取りで得られる情報はこのくらいか。クラウスは改めて感謝と、事件解決への意志を伝える。いまだ不安の最中にある家族は、目に涙を浮かべながら深々と頭を下げた。

「少し、話を聞いてもいいかな」
 話を終えて家族と別れると、クラウスは患者の病室にいたインビジブルを【穏やかな対話】で呼び出し、患者が眠っている時の様子を尋ねる。医師も看護師も見舞いもいない時間帯でも、彼らなら常に見ていたはずだ。
「……やっぱり『薔薇と木蓮の香りがする』って、寝言を言ってたって? なるほど」
 何かヒントになるようなことが聞けたらと思っていたが、少なくとも家族の言っていた事の裏付けは取れた。「薔薇」は怪異そのものだとしても「木蓮」とは――そちらに怪異の居所に繋がる手がかりの可能性を感じて、彼は調査を進めていく。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

静寂・恭兵
アドリブ歓迎

『眠り病』か眠っている患者に話を聞く術を俺は持っていないからな。
患者の家族にあたってみるか。
まずは警察手帳を見せる【社会的信用】ってヤツはあったほうがいいだろう。

『眠り病』にかかる前に何か気になる事があったりしませんですか?普段と違う様子なんかを教えてくれると助かります。

はぁ、慣れんことした。
各患者に何か共通点があったらいいんだが。

「『眠り病』か眠っている患者に話を聞く術を俺は持っていないからな。患者の家族にあたってみるか」
 世の中にはそういう技を修めた人間もいるが、あいにく静寂・恭兵(花守り・h00274)の専門は|死者《ゴースト》に話を聞くほうだ。異能に頼れない以上は地道にやるしかないだろうと、堅実な調査を開始する。
「はい、どちら様でしょう……?」
「どうも。自分はこういう者です」
 患者宅のインターホンを鳴らし、まずは警察手帳を見せる。なにを尋ねるにせよ社会的信用というヤツはあったほうがいいだろう。|警視庁異能捜査官《カミガリ》という肩書きはこういう時に役に立つ。

「お宅の方がかかっている『眠り病』について、我々でも捜査しておりまして」
「まあ、警察の方まで……」
 急な警察の来訪に驚いていた家族も、例の病を調べていると言われれば協力しないわけがない。原因も治療法もわかっていない現状、どんな小さな希望でも縋らないわけにはいかないのだろう。
「『眠り病』にかかる前に何か気になる事があったりしませんですか? 普段と違う様子なんかを教えてくれると助かります」
「普段と違う……ですか。目覚めなくなる数日前から、ぼんやりしてたような気はしましたけど……」
 気になる事と言われてすぐには思い出せないかもしれないが、なにが怪異の手がかりになるかも分からない以上、どんなに些細でも情報が欲しい。要領を得ない家族の話に、恭兵は根気よく耳を傾けていく。

「そういえばあの子、入院する前日に『薔薇と木蓮の香りがする』って……」
「ほう。なるほど」
 薔薇と木蓮。そのワードは別の患者の家族から聞いたのと同じだ。恭兵が調べた限りでもすでに数人の患者が、眠り病にかかる前に「薔薇と木蓮の香り」を嗅いだという。これだけ共通する証言が取れたなら、偶然とも片付けられまい。
「すみません、このくらいしか知らなくて……」
「いえいえ。助かりました」
 恐縮する患者の家族に穏やかな笑顔で礼を言い、恭兵はその場を後にする。花の匂いだけで日本国内から怪異の居場所を特定するのは難しいが、多少の絞り込みはできるはずだ。季節はまだ春に差し掛かったばかり、木蓮の花が咲く場所は限られる。

「はぁ、慣れんことした」
 話を終えた恭兵はいつも以上にダウナーな雰囲気で溜息を吐くが、これでも面倒見の良い男なのだ。一度やると決めた事――民間人の人生に関わる事件を途中で放り出すことはないだろう。次の家族のもとへ向かう彼の足が、止まることはなかった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

白露・花宵
WIZ
アドリブ歓迎

ふぅん…眠り病に眠る乙女、ねぇ
オピウムが言ってた通り、思惑なんざ知ったこっちゃない
さっさと目を覚まさせりゃいいんだ

そんじゃ、あたしは最近眠った人らのとこにでも行こうか
最も|誰か《・・》が見てるだろう学校、もしくは職場辺りが無難だろ
とりあえず急ごうか、3日以内って縛りがあるからねぇ

目的地に着き、羽織の袂から煙管『蜜煙』を取り出す
吸って吐く白煙は能力【白露の語らい】

さぁ、お前さんら…|物々交換《お喋り》の時間だよ
あたしは幻煙を支払った
次はそっちの番さね

お前さんらが見た、眠り病の患者の、眠る前の様子を教えておくれ
変なもんが接触してなかったか、とかさ…

「ふぅん……眠り病に眠る乙女、ねぇ」
 響きだけならロマンチックかもしれないが、現実に顕れたそれは密やかにこの国と人々を蝕む病理だ。ただの人間を眠らせていったい怪異になんのメリットがあるのか、白露・花宵(白煙の帳・h06257)には見当もつかないが。
「思惑なんざ知ったこっちゃない。さっさと目を覚まさせりゃいいんだ」
 その点については星詠みの女が言っていた通りだ。元凶たる怪異を見つけるために、彼女はまず最近眠った患者達のところに向かう。手がかりのアテならひとつ考えがあった。

「とりあえず急ごうか、3日以内って縛りがあるからねぇ」
 最も|誰か《・・》が見てるだろう学校、もしくは職場辺りが無難だろうと、患者がまだ起きていた頃によく通っていた場所に足を運ぶ花宵。目的地に着けば、羽織の袂から煙管『蜜煙』を取り出し、おもむろに火を付ける。
「さぁ、お前さんら……|物々交換《お喋り》の時間だよ」
 吸って吐く白煙は、√能力【白露の語らい】の起点。蜜煙から燻る幻煙が、周辺にいるインビジブルを惹き寄せ、語り部の幻に変化させる。こいつらは普通の人には見えないがどこにでもいる、情報源としてはうってつけの存在だ。

「あたしは幻煙を支払った。次はそっちの番さね」
 お互いに欲しいものを交換する、それが物々交換屋の店主である花宵のやり方だ。ヒトならざるものと交渉する時も同じ。漂う幻煙を満足げに吸い取ったインビジブルは、情報という対価を提供する。
「お前さんらが見た、眠り病の患者の、眠る前の様子を教えておくれ。変なもんが接触してなかったか、とかさ……」
 どこかのタイミングで怪異に目をつけられたなら、兆候なり見えてもおかしくない。
 普通の人なら忘れてしまう不可解な事象でも、インビジブルなら覚えているだろう。

「授業中ぼうっとして、机になにか書いてた……って?」
 そのインビジブルが記憶していたのは、患者が眠る前に見せた奇行だった。花宵が確認してみると、机の隅っこに鉛筆でなにか走り書きされている。乱雑な薔薇の花の絵に紛れて、ひどく崩れた文字がなんとか判読できた。
『あのこがよんでる ひさしぶり あいにいくよ もういちど』
「……"久しぶり"に"もう一度"だって?」
 新しい煙草に火を付けながら、花宵はこのメッセージの意味するところを考える。
 ここにいたインビジブルは怪異を目撃していない。だが眠り病にかかる以前から眠る乙女と患者の間に繋がりがあったなら、怪異の手がかりは患者達の過去に――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

贄波・絶奈
眠り病……ね。私もこんな仕事なんか放り投げてゆっくり惰眠を貪りたい所だね。ま、永遠の眠りは流石に遠慮させて貰いたいワケだけど。ま、いいや。ほんとに仕事をほっぽりだすワケにも行かないしさっさと済ませちゃおう。

と、言ってもまずは下調べから始めなきゃいけないか。取り合えず直接患者の様子を観察するに越したことはないとして患者達のプロフィールや行動を調べて共通点や類似点が無いか確認してみようか。呪いなんてのは必ず起点があるものだしね。知らないけど。

後は……患者と怪異が夢で繋がってるのなら試しに寝てみてその一端を覗けないか試してみようかな。なにも起こらないならそれはそれで休めていいしね、サボりじゃないよ。

「眠り病……ね。私もこんな仕事なんか放り投げてゆっくり惰眠を貪りたい所だね。ま、永遠の眠りは流石に遠慮させて貰いたいワケだけど」
 そんな軽口を叩くのは、外部協力員として汎神解剖機関の世話になっている贄波・絶奈(|星寂《せいじゃく》・h00674)だ。こちらの√に迷い込んでからと言うもの、一般人だった彼女の日常は、得体の知れない怪異を追いかける日々に変わってしまった。
「ま、いいや。ほんとに仕事をほっぽりだすワケにも行かないしさっさと済ませちゃおう」
 なんやかんや言いつつこの√に留まっているのも、本人なりの義理があるのだろう。
 とっとと事件を解決してしまえば、それだけこっちの休みも増えるのだ。面倒くさそうな顔で、彼女は資料とデータを漁る。

「と、言ってもまずは下調べから始めなきゃいけないか」
 とりあえず直接患者の様子を観察するに越したことはないとして、絶奈は患者達のプロフィールや行動を調べる。汎神解剖機関が把握しているだけでも眠り病の患者は日本全国に数十名――その全員が生物的には健康のまま、一向に目を覚まさないという。
「呪いなんてのは必ず起点があるものだしね。知らないけど」
 その患者達の中に共通点や類似点はないかと探るが、まず年齢・性別・出身地はバラバラで、現住所も日本全国に広く分布している。「薔薇と木蓮の香りがする」という発言を複数の患者がしていたことが報告されているが、これだけでは情報が足りない。

「後は……試しに寝てみようかな」
 患者と怪異が夢で繋がってるのなら、患者の傍で眠ることでその一端を覗けないか。
 そう考えた絶奈は許可を取って患者の病室に枕を持ち込んだ。最悪の場合自分も怪異の影響を受ける恐れがあるが、そのリスクは承知の上だ。
(なにも起こらないならそれはそれで休めていいしね、サボりじゃないよ)
 心の中で言い訳しつつ、患者の隣のベッドで横になり、目を閉じる。日頃の仕事疲れもあってかすぐに眠気がやってきて、意識はまどろみの中に。心地よい感覚に逆らわずに沈んでいくと、ほのかに花の香りがして――。

「……いたっ。なに?」
 ふいに指先に鋭い痛みを感じて、絶奈は目を開いた。棘や針にでも刺されたような痛みだったが、指を見てみれば傷はない。なんだ夢だったのか――と安心する事は、この状況では無理だろう。
「私も接触されたってことかな」
 現状特に違和感はないが、これが√能力者だから平気なのか、それともまだ自覚症状が出ていないだけなのかは分からない。ひとまず彼女は今の体験を記録に残して、同じような例が他の患者にもなかったか調べ始めた。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

花喰・小鳥
「眠り姫の怪異、なんだか奇妙な縁を感じます」

もっとも件の彼女は対象を眠らせる力があり、私のそれとは違うものだ
親戚みたいなものと言えばそうかもしれないが、だからこそ厄介でもあった

入院施設の職員の白衣を羽織った私は医者らしく見えているだろうか?
眠り病の患者への直接のアクセスはリスキーではある
とはいえ近道なのも事実
カーテンを引いて薄暗い病室で【傾城花】を発動
『魅了』して協力して貰います
瞳を閉じて額を触れ合わせると『精神汚染』

「あなたはどこにて、どこに向かっているんです?」

患者の意識体に呼びかける
抵抗はあるかもしれないし無理はしない
患者が向かう先を意識だけでも『追跡』する
夢は現実と繋がっているから

「眠り姫の怪異、なんだか奇妙な縁を感じます」
 そう呟いたのは花喰・小鳥(夢渡りのフリージア・h01076)、汎神解剖機関からは人間災厄「夢蝕み」として認定された女性だ。同じ「夢」にまつわる異能を持つ怪異に、彼女が興味を持つのは不思議ではあるまい。
「もっとも件の彼女は対象を眠らせる力があり、私のそれとは違うようですけど」
 小鳥が他者の眠りに入り込んで夢や精神を操るのに対し、『眠る乙女』は自分の夢の中に他者の精神を囚えるという。親戚みたいなものと言えばそうかもしれないが、だからこそ厄介でもあった。

(医者らしく見えているでしょうか?)
 入院施設の職員の白衣を羽織って、怪しまれずに患者のいる病室までやってきた小鳥。
 怪異を調査するために彼女が考えたアプローチは、患者への直接のアクセスである。夢の中に入り込めば、確実に情報は手に入る。
(リスキーではありますが、とはいえ近道なのも事実)
 自分も夢蝕みだから眠る乙女の影響を受けない、と自惚れているわけでは無い。自分にできる事の中で、これが最も有効だと思うからやるのだ。患者と自分以外には誰もいない部屋で、彼女はカーテンを引いて【|傾城花《アルラウネ》】を発動する。

「月の静寂に、満ちよ」
 薄暗い病室に漂う誘惑の芳香。それはヒトの無意識に作用し、眠れるまま魅了する。
 これは患者側から心に招き入れてもらうための下準備のようなものだ。十分に香りが満ちてから、小鳥は瞳を閉じて患者と額を触れ合わせる。
「あなたはどこにいて、どこに向かっているんです?」
 呼びかける先は患者の意識体。普段ならすぐに返事があるものだが、今回はずいぶん"遠く"に感じる。もうすこし潜らなければ声が届かないかと、彼女はより深い眠りの領域へ――。

「……やはり抵抗されますか」
 ふいに四肢になにかが絡みつく感触が。患者を通じて間接的に怪異の夢とも繋がるなら、こういった現象は予想できたことだ。抵抗というより、これは自分を引きずり込もうとしているのか。
「まだ無理をする時ではないですね」
 ミイラ取りがミイラになる前に、小鳥は速やかに退散する。患者の夢を離れる刹那、薔薇園と木蓮の樹に囲まれた洋館を、彼女は視た――その館の奥で眠る、白いドレスの乙女の姿も。

「今の女性が、件の眠り姫でしょうか」
 垣間見たビジョンは患者の意識が向かう先。あの洋館が『眠る乙女』の棲み家と考えてよいだろう。自分が"触れた"患者の他にも、沢山の意識が館の中に集まっているのを、小鳥は感じた。
「たしか、このような風景でしたね」
 一度手がかりを掴めたら、もう逃がしはしない。夢は現実と繋がっているのだから。
 薔薇と木蓮、そして洋館の外観。夢で視たものをしかと記憶に留め、夢蝕みは現実での追跡を開始するのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

天霧・碧流
※倫理観がアレなので、患者を助けたいとかではなく、夢に出てくる怪異に興味があるスタンス。ですが、他の√能力者に迷惑がかかる行動は致しません。

夢の中の怪異。実に興味深い。
なんで目を覚まさないんだろうな。
それだけ夢の中が楽しいのか?
それとも出してくれないのか?
ああ、気になるじゃねぇか。俺の夢にも出て来てくれよ。歓迎するのによ。

自分で調べつつ、幽曲の契約でインビジブルどもにも聞いてみるかね?
年齢層、性別。
感情は?嬉しそうだったのか絶望的だったのか。
最後にいた場所はどこか。
テレビやスマホなど何かを見ていたか。
誰かと話していたか。

同じことをすれば俺もお前に会えるのか?
さぁ、俺にも“夢”を見せてくれよ。

「夢の中の怪異。実に興味深い」
 真摯に患者を助けたいと願う√能力者もいれば、夢に出てくる怪異に興味がある者もいる。世間一般の倫理観からズレた天霧・碧流(忘却の狂奏者・h00550)が、今回の事件に関わる理由は完全に後者だった。
「なんで目を覚まさないんだろうな。それだけ夢の中が楽しいのか? それとも出してくれないのか? ああ、気になるじゃねぇか。俺の夢にも出て来てくれよ。歓迎するのによ」
 いまだ自分には『眠る乙女』の誘いがないのを残念がりつつ、誘われないならこちらから探しに行こうと調査を開始。目的はともかく目標は一致している以上、他の√能力者に迷惑をかける行動はすまい――少なくとも、この場では益がない。

「年齢層と性別はバラバラだな」
 自分の足とツテで集められた情報だと、『眠り病』の患者にすぐ分かる共通点はない。
 老若男女を問わず、日本全国にこの病に見舞われた人間はいる。もしこれが怪異の呪いが及ぶ範囲なら、とんでもない規模だ。
「だったらインビジブルどもにも聞いてみるかね?」
 次に碧流は【幽曲の契約】で患者の付近にいたインビジブルに知性を与え、見聞きしたものを吐き出させる。患者が目覚めなくなる前の様子を、こいつらは知っているはずだ。

「感情は? 嬉しそうだったのか絶望的だったのか? 最後にいた場所はどこだ?」
 碧流の質問に返ってきた告死の囁き曰く、発症直前の患者はぼんやりとしていて、何を見ても誰と話しても上の空だったとのこと。少なくとも不安や恐怖を感じていた様子はなく――そして、自宅や職場などバラバラの場所で、突然眠りに落ちたと。
「テレビやスマホなど何かを見ていたか? 誰かと話していたか?」
 どんな些細な情報でもいい、覚えている事は全部話せと、青年は酷薄な笑みでインビジブルに詰め寄る。すでに死んでいる彼らでさえその殺気には恐れおののいたのか、囁き声がすこし大きくなった。

「……テレビを見てた? 食い入るように?」
 曰く、普段はテレビよりネット派だったその患者が、とある番組にだけ強い興味を示したと。それは地元の名産や観光地などを紹介する地方のローカル番組で、映っていたのはどこかの田舎町だった。
「それを見て、『懐かしい』って呟いてたんだな、そいつは?」
 その人物が眠り病にかかったのは、それから1週間後の事だったという。偶然として片付けるにも、必然として結びつけるにも微妙な間隔だ。だが現状、碧流が調べた中にこれ以上の手がかりはない。

「同じことをすれば俺もお前に会えるのか?」
 ローカル番組ということは全国放送ではなく、日本中にいる患者全てがこの番組を見たとは考え難い。なら関連性が高いのは番組そのものではなく、番組に映っていた場所か。
「さぁ、俺にも“夢”を見せてくれよ」
 碧流はすぐさまスマホを弄り、インビジブルから聞いた番組の詳細を検索し始める。
 動画やアーカイブがあったら見ておこう。なければ直接現地に向かってもいい。まるで熱情の如く眠る乙女を追い求めるその表情は、言葉とは裏腹に冷たいものだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

玉響・刻
SPDで行動

これは大変な事態ですっ!
一刻も早く『眠る乙女』を見つけないとですっ!

というわけで(どさどさと資料を持ってくる)
調べていきましょう!

調べるのは被害者の皆さんが眠り病になった場所と日付ですっ!
調べた日付を順に線で結んで場所との法則性が有れば所在のヒントに
ならないでしょうか?

続いて調べるとしたら、被害者の皆さんの共通点ですねっ!
流石に件数も多いので完全に一致するような物は無いかもですが
出身地や趣味等で似たような傾向があったり
また、眠り病になる前に行った場所で共通点があったら
絞り込むことができそうな気がしますっ!

後は徹底的にやるだけですっ!
がんばりますっ!

「これは大変な事態ですっ! 一刻も早く『眠る乙女』を見つけないとですっ!」
 日本中にいる人々が、ひっそりと眠りから目覚めなくなる奇病。その原因が怪異の呪いであると聞いて、玉響・刻(探偵志望の大正娘・h05240)はすぐさま解決に乗り出した。探偵たるもの「犯人探し」は得意分野と言えよう、たとえ彼女がまだ見習いでも。
「というわけで、調べていきましょう!」
 どさどさと持ってきたのは汎神解剖機関が調査した患者のプロフィールや、現状判明している『眠り病』関連の資料だ。機関も今回の事件についてはお手上げらしく、協力は惜しまないとのことである。

「被害者の皆さんが眠り病になった日付を順に線で結んで、場所との法則性が有れば、所在のヒントにならないでしょうか?」
 そう推理した刻は手始めに患者の発症時期と場所を調べ上げ、日本地図にペンで線を引いていく。日本中に分散した患者それぞれの所在に、一見規則性はないように思えるが――。
「これは……なにかの絵を描いているようにも見えますねっ!」
 おぼろげながらも浮かび上がった線図は、確かになんらかの法則性を見いだせる。だがそれが具体的になんの絵で、何処を指しているかまでは断定できない。おそらく、この絵はまだ「完成」していないのだ。

「被害者さんがさらに増えれば絵も完成に近づくのでしょうけど、まさか待ってるわけにはいきませんし……次は被害者の皆さんの共通点ですねっ!」
 ひとつの調査方法が行き詰まると、刻はすぐにアプローチを変える。流石に件数も多いので完全に一致するような物は無いかもしれないが、たとえば出身地や趣味等で似たような傾向があったり――。
「眠り病になる前に行った場所で共通点があったら、絞り込むことができそうな気がしますっ!」
 いわゆる探偵小説の名探偵なら、もっと少ない手がかりからスマートに真相を暴くのだろう。残念ながら刻の推理力はまだその域には達していない。しかし彼女にはそれを補えるだけの情熱と行動力があった。

「後は徹底的にやるだけですっ! がんばりますっ!」
 積み上げられた山ほどの情報に目を通し、関連しそうなものを患者ごとに洗い出す。
 だんだん脳細胞が熱を持ってきたが、未来の名探偵はくじけない。もう何人目かになる患者のプロフィール資料を手にとって――。
「……あれ? この地名、さっきも見たような?」
 そこで刻はひらめきを得た。これまでに見た資料を改めて確認すると「3年前に家族旅行で●●県●●地方を訪れる」との記載が。こちらの資料の患者は「出生地は●●県●●地方」とある。

「ひょっとして他の被害者さんも……」
 地名に意識を絞って調べてみると、やはりそうだ。学生時代の進学先だったとか、祖父母の家に帰省していたとか、時期も滞在期間もバラバラだが――「全ての患者は、過去に●●県●●地方を訪れている」。
「これは大きな手がかりですっ!」
 ●●地方と言ってもまだ範囲は広いが、他の√能力者達の調査結果と合わせたり、直接現地に赴いてみれば、怪異の居場所を突き止められるかもしれない。ブカブカのインバネスコートをばっと羽織って、刻は次なる調査に向かうのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

天使・夜宵
SPD アドリブ歓迎

『眠り病』、か……随分気楽な病気が流行ってるこった。とりあえず、眠った奴等の辿った現場でも行って調べるしかねぇか。

そもそも、眠らせる目的もピンと来ねぇ。……狙いは何だ?怪異ってのは、ワケわかんねぇ事が好きなようで。
ここが現場か、痕跡は特にパッと見ねぇな。現場近くの店でも聞き込みして、倒れる瞬間の事を聞くか。
警察だ、話が聞きたい。……なるほど、調査に感謝する。
あと何ヶ所かで話を聞けば、ヒントが掴めそうか。

…これで、大体の聞き込みが済んだ。概ね検討が付けれたし、あとはもうその場所へと行ってみるしかねぇか。
……さっさと片付けて一服兼ねてサボりてぇとこだ。

「『眠り病』、か……随分気楽な病気が流行ってるこった」
 警官として様々な事件を捜査してきた天使・夜宵(熱血を失った警官・h06264)からすれば、今回の事件は穏やかな響きに聞こえるだろう。だがそれでも、眠り続ける人間は次第に衰弱し、いずれは死に至るだろう。
「とりあえず、眠った奴等の辿った現場でも行って調べるしかねぇか」
 知ってしまったからには我関せずを貫けるほど、彼はまだ腐りきってはいなかった。
 捜査の基本は現場百遍。怪異だか呪いだか知らないが、人間は人間のルールでやらせてもらう。

「そもそも、眠らせる目的もピンと来ねぇ。……狙いは何だ? 怪異ってのは、ワケわかんねぇ事が好きなようで」
 面倒くさそうな顔で悪態を吐きながら、夜宵は患者のひとりが倒れたという場所までやって来る。予め聞いた話によるとそいつはまだ学生で、通学路の途中で突然意識を失ったという。
「ここが現場か、痕跡は特にパッと見ねぇな」
 義眼に置き換えられた彼の【凶眼穿孔】でも視えないなら、物的痕跡は残されてないと考えていいだろう。しばらく周囲を睨み回してから、彼は現場近くの店で聞き込みをすることにした。

「警察だ、話が聞きたい」
「えっ? な、なんでしょうか」
 急に職質された相手は戸惑っていたが、適当にかいつまんで事情を説明すれば、特に情報提供を渋りもしなかった。この店の前で学生が倒れた瞬間のことを尋ねれば、すらすらと当時の様子を語ってくれた。
「あの時、その子はスマホの画面をじっと見ていたんです。歩きスマホは危ないよって注意しようと思ったら、その前に急に倒れて……」
「……なるほど、調査に感謝する」
 眠りに落ちる直前、その患者は何を見ていたのか。まず気になるのはそれだが、他の患者の状況も分からないまま断定はできない。夜宵は仏頂面で店員に礼を言い、その場を後にしながら思考を巡らせる。

「あと何ヶ所かで話を聞けば、ヒントが掴めそうか」
 眠り病の患者は日本全国にいる。近場を順に当たるにしても結構な移動距離になるが、他にもっとスマートなやり方を知らない。情熱の欠落した男は心底嫌そうに顔をしかめながらも、堅実な調査を進めた。

「……これで、大体の聞き込みが済んだ」
 時間をかけて判明した事実は、病にかかる前の患者の多くには共通する奇行があったこと。「薔薇と木蓮」「久しぶり」などの発言、そして●●県のとある地方に関する情報に触れていたこと。
「概ね検討が付けれたし、あとはもうその場所へと行ってみるしかねぇか」
 あの学生がスマホで見ていたのは、●●地方の観光案内サイトだった。夜宵が調べられた範疇だと全員ではないが、同地方に関連性のある患者は他にも何人かいた。よもや無関係ということはあるまい。

「……さっさと片付けて一服兼ねてサボりてぇとこだ」
 機械の右手でがりがりと頭を掻き、だらしなく着崩した制服姿で路端を歩く夜宵の姿は、誰もが眉をひそめる不良警官だろう。それでも彼が仕事を放り出さないのは、矜持でも正義感でもない――こんな自分でも、まだ支えてくれる|お守り《Anker》があるからだ。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

星谷・瑞希
今回は久しぶりに依頼をするな…
学校が忙しくて中々行けなかったがやっと依頼に出れたので調査を開始する

あ、ありがとうございます!
病院に行き受付の人に患者がいる部屋を聞きそこへ向かう

よし、早速診察してみよう!
√能力を使用して概念を書き換える手で頭に触れて自身のスマートフォンに眠ってしまう状態になる前の光景を映し出す

駄目だ、僕の力じゃ数分が限界かな…?
映し出たのは普通に生活していたら突然倒れるという映像だけだった

う〜ん…あっこ、こんにちは!
頭を悩ませていると見舞いに来た患者の家族に話を聞く事にした

こんな状況でお話を聞かせていただいてありがとうございます…僕は退室します…
とお辞儀してお礼を言って退室した

「今回は久しぶりに依頼をするな……」
 いくら√能力者とは言っても、星谷・瑞希(大切な人を守る為に・h01477)はまだ10歳の小学生。学校が忙しくてなかなか事件に関わる暇がなかったが、今回やっとその暇ができたようだ。
「すみません、眠り病の患者さんはどの病室に?」
 調査を開始した彼はまず病院に行き、受付で患者がいる部屋を尋ねる。普通は患者の関係者以外に教えられないだろうが、ここは汎神解剖機関の息がかかっている施設なので、√能力者であれば情報提供を受けられる。

「3階の305号室です」
「あ、ありがとうございます!」
 係の人に教えてもらった部屋へ向かうと、そこにはベッドで眠っている患者がいた。
 肌の色艶や血色もよく、傍目には本当にただ眠っているだけのようにしか見えない。なのに何故か目を覚まさない、それが現状発生している『眠り病』の症状だ。
「よし、早速診察してみよう!」
 瑞希は【|霊力超解放《オーバー・ライド》】を発動し、巨大な霊力の手でそっと患者の頭に触れる。概念を直接書き換える霊能力とサイコメトラーの力を応用して、患者の中にある記憶を読み取るつもりだ。

「これがこの人の記憶……」
 瑞希の持っているスマートフォンに、患者が眠ってしまう前の光景が映し出される。
 学生だった患者はその時、普通に学校に通っていたようだ。授業の最中に突然机に突っ伏し――そのまま、目を覚まさなくなった。
「駄目だ、僕の力じゃ数分が限界かな…?」
 これを見た限りだと、患者は眠り病にかかる直前まで普通に生活していたようだ。発病の原因となる要素はどこにあったのか、それを確認するには数分間の記憶は短すぎた。もう一度同じ事をやるのは、患者の精神や魂に負担をかけかねない。

「う〜ん……あっ」
「あら、あなたは?」
 どうしたものかと頭を悩ませていると、病室のドアが開いて誰かが入ってくる。医師や看護師の格好ではないので、おそらくは見舞いに来た患者の家族だろう。瑞希は慌てて「こ、こんにちは!」と挨拶する。
「もしかして、この子のお友達?」
「は、はい、そうです」
 たまたま患者との年齢が近かったおかげで、向こうは勝手に勘違いしてくれたようだ。
 騙すようで気が引けるが、ここで何かの手がかりが掴めれば――と、彼は家族から話を聞くことにした。

「この子、病気になる前からちょっと様子がおかしかったのよ。今思い出してみれば……っていう、些細な事だけどね」
 家族が語るところによれば、発症数日前から患者は少しぼんやりしていて、「夢の中で薔薇と木蓮の花を見た」と話していたそうだ。そして昔のアルバムの写真を食い入るように見ていたとも。
「あの時、私達が変だと思って、すぐに病院で診てもらっていたら……こんな事にはならなかったのかしら……」
「それは……」
 そう言って涙を零す患者の家族に、瑞希は言葉を失う。眠り病の原因が怪異の呪いである以上、異変に気付いても普通の人にできる事はなかっただろう。正体も分からぬモノに大切な我が子を奪われた、家族の悲しみが痛いほど伝わってくる。
 
「こんな状況でお話を聞かせていただいてありがとうございます……僕は退室します……」
「いえ……また来てちょうだい。この子もきっと喜ぶわ……」
 瑞希は家族にお辞儀して、お礼を言って病室を去る。その拳はぎゅっと握りしめられ、瞳は静かに燃えていた。あの人たちのためにも絶対に事件を解決し、患者を目覚めさせて見せる――少年の心に宿ったのは、決意だった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

鳳崎・天麟
よし、シュリンとしての活動を再開しましょう!
小学校が少し忙しかったがようやく活動を再開出来て少し張り切っている


まあわたくしは√能力者じゃないので聞き込みするしか無いのですが…
という訳で周りのお見舞いに来た聞いて回る事にした

はい、なるほど…ありがとうございます
と周りに聞き込みしたが元気そうだったが突然眠ってしまうといった者ばかりだった


ふむ、やっぱり√能力者では無いのはこういう時にはきついですね…仕方がありません

あーあ、こういう時にはその場所に行こうとする人達を追うのが一番ですね
ネガティブ・パラノイア態に変身して病院の出口で張り込む事にした

「よし、シュリンとしての活動を再開しましょう!」
 最近は小学校での学業や行事が少し忙しくて、街を守るヒーロー「シュリン」の活動はお休み状態だった鳳崎・天麟(大切な人を守る為に戦う狩人・h01498)。ようやく活動を再開できて少し張り切っていた矢先に、今回の事件は起こったのだ。
「まあわたくしは√能力者じゃないので聞き込みするしか無いのですが……」
 もし√能力が使えたら超常的な方法で情報を集められたかもしれないが、無い物ねだりをしても意味はない。というわけで彼女は病院の周りで『眠り病』患者のお見舞いに来た人に話を聞いて回る事にした。

「あの人が眠る前の様子? ちょっとぼんやりしてたけど、別に普通だったわ」
 聞き込みの結果、患者達は持病や健康面の不安なども特になく、元気そうだったのに突然眠ってしまった者ばかりだった。なにが原因なのかも分からない突然の発症だからこそ、この異変は奇病と呼ばれているわけだ。
「はい、なるほど…ありがとうございます」
 天麟は話を聞かせてくれた人に丁寧に礼を言って、次の相手を探すが、得られる情報にこれといった進展はなかった。やはり小学生、そして非√能力者という立場では、踏み入れる所にも限界がある。

「ふむ、やっぱり√能力者では無いのはこういう時にはきついですね……仕方がありません」
 調査に行き詰まりを感じた天麟は方針を変え、ネガティブ・パラノイア態に変身。蜘蛛の複眼の様なゴーグルと龍の歯が剥き出しのマスクを着け、病院近くの暗がりに身を潜めた。
「あーあ、こういう時にはその場所に行こうとする人達を追うのが一番ですね」
 こうして病院の出口で張り込んでいれば、他に何か手がかりを掴んだ人――√能力者を見つけられるだろう。その人を追いかければ怪異の居場所にたどり着けるはず。調査は苦手でも怪異との戦闘になれば、自分にもできることはあるはずだ。

「ん? 今出てきたのって……もしかして」
 しばらく張り込みを続けていると、病院の中から天麟と年齢の近い子供が出てくる。
 急いでいたようで顔ははっきりとは見えなかったが、その姿に天麟は見覚えがあった。ひょっとして「彼」もこの事件を調べているのか――そう考えた彼女は急いで後を追いかけるのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

ユッカ・アーエージュ
眠る乙女……その怪異もまた眠っているということ?
一人で眠っているだけでは寂しいのかしらね

日本のどこか、だなんて相変わらずの大雑把な予知よね、オピウムさん……
手掛かり探しに、まずは患者さんの様子を見に行きましょう

医学の心得となると|おばあちゃん《1000歳以上》の知恵袋程度にしか無いけれど
患者さんの傍らにいる精霊の動き、働き、力強さ・弱さ
そういったもので何が起こっているかを察知して……そして、訊けるならば精霊達に、これを引き起こしたものの姿形、手段、何処に行ったのか……情報を聞き込みましょう

加えて、患者さんの家族にも、こうなる前の患者さんの様子を聞き込んで
精霊視点の情報、患者さん家族視点の情報、摺り合わせたら導き出せるものはないかしら

「眠る乙女……その怪異もまた眠っているということ?」
 自身の夢に他者の心を囚えるという不思議な怪異の話を聞いて、なぜ彼女はそんなことをするのか、そして眠り続けているのか、ユッカ・アーエージュ(レディ・ヒッコリー・h00092)は疑問を抱く。
「一人で眠っているだけでは寂しいのかしらね」
 そんな人間らしい感情を怪異が持ち合わせているかは分からないが、真意を確かめるにしても直接会わないことには話にならない。『眠り病』にかかってしまった大勢の人達のためにも――しかし、そのための調査も簡単ではなかった。

「日本のどこか、だなんて相変わらずの大雑把な予知よね、オピウムさん……」
 以前も彼女に乏しい情報だけで送り出されたことを思い出し、溜息を吐きながらも手掛かりを探すため、ユッカはまず患者の様子を見に行くことにした。異変解決に協力する√能力者であることを明かせば、面会の許可はすんなり通る。
「医学の心得となると|おばあちゃん《1000歳以上》の知恵袋程度にしか無いけれど」
 病室で主に彼女が診るものは、患者の傍らにいる精霊の動き、働き、力強さ・弱さ。
 森羅万象に宿る精霊は、人間を含む動植物の生命・精神活動とも密接に関わっている。すなわち精霊を観測することで病人の容態を推測できるのだ。

「体のほうに問題はなさそうね。でも、言葉通り"心ここにあらず"みたい」
 長期の睡眠でやや衰弱してはいるが、健康状態は至って良好。医学的には目を覚まさないのが不思議な状態だ。しかし心霊的に見れば精神活動に関わる精霊の働きが極端に鈍い。普通なら、人間の心は眠っていても夢の中で活動を続けているのだ。
「夢の精霊さん、この人の心は何処へ行ったの?」
 患者の身に何が起こっているかを大まかに察知したユッカは、【|形あるものはいつか羽ばたく《オーヴァーチュア・ビギンズ》】を使って、精霊達に直接疑問を訊ねる。精神の領域から患者に接触し、これを引き起こした者の姿形や行方を。

「……青い薔薇の茨が、この人の心を連れ去った?」
 そこから先の患者の精神の行方は、精霊達にも分からないらしい。薔薇というのは予知で聞いた『眠る乙女』の特徴とも合致するし、かの怪異が人間を自分の夢に囚えているのは本当らしい。
「茨は外から来たんじゃない。最初から|この人の中に《・・・・・・》"種"があった……ですって?」
 もうひとつ、夢の精霊は興味深いことを言っていた。一体いつからあったのかもわからない"種"が、本人も気付けないほどひっそりと心の中にあり、ある日突然"発芽"したそれが、患者の心を奪っていったと。

「ひょっとして……」
 精霊の話からひらめきを得たユッカは、患者の家族に連絡を取り、発病する前の患者の様子を聞き込み始めた。心の中の”種”――怪異に呪われた原因の根本が最近ではなく、もっと過去にあったのだとしたら。
『どこかで"青い薔薇"を見たことはなかったか? そういえばあの人、昔そんな話を……』
 複数の家族に話を聞いた結果、ついに裏付けとなりうる情報を得た。数年前に旅行に行ったとある地方で、綺麗な青い薔薇を見たと言っていたらしい。家族が気になって一緒に探した時は見つけられなかったので、訊かれるまですっかり忘れていたそうだが。

「絶対に何かあるでしょうね……ここに」
 精霊視点の情報と、患者の家族視点の情報を摺り合わせ、ユッカが導き出した答え。
 患者と家族が旅行で訪れたという、とある地方の観光案内図に印を付けて、彼女は立ち上がった――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 冒険 『怪異の館』


POW 館の中を探索する
SPD 館の庭を探索する
WIZ 館の離れを探索する
√汎神解剖機関 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 患者の診察、関係者への聞き込み、現場検証、プロフィールや過去の記録の調査。
 それぞれが調べ上げた事実を統合した結果、√能力者達はとある場所に辿り着く。

 ●●県●●地方。
 緑豊かな閑静な田舎町に、美しい薔薇と木蓮の庭園に囲まれた、一軒の洋館がある。
 いつ建てられたものか記録には残っておらず、現在は無人の廃墟となっている。
 地元の人間でさえ、こんな館があることを知らない者がほとんどだ。

 現在『眠り病』と呼ばれる呪いの患者は全員、過去にこの地方を訪れている。
 おそらく、その時に彼らはこの館で『眠る乙女』または類する「何か」と出会った。
 彼らが一度は無事に戻ってきた理由について、確かな事は言えないが、当時はまだ眠る乙女が活動期に入っていなかった可能性は考えられる。

 欠落を保たない普通の人間は異常現象に遭遇しても、その事実を忘却してしまう。
 だが、この時点で彼らの精神には呪いの「種」が植え付けられていたと推測される。

 近年の怪異の活発化に伴い、眠る乙女も――語弊のある言い方をすれば"目覚めた"。
 同時に不活性だった被害者達の呪いも、次々に芽吹き始めた。
 これが、眠り病が短期間で急速に患者数を増やした原因だと考えられる。

 以上の調査結果と推測から、眠る乙女はこの洋館の何処かにいる。
 館内はすでに怪異のテリトリー。探索には大きなリスクが予想される。

 だが、ここまで調査を重ねてようやく掴んだ怪異の尻尾だ。
 眠り病の患者を救うために、√能力者達はいざ洋館へと乗り込んでいく――。
静寂・恭兵
アドリブ歓迎。

ここからは怪異の領域だ気を引き締めねばな。
とりあえず共通して聞く事が出来たのは『薔薇と木蓮の香り』だどちらも咲いている庭に向かうのがいいか…。
庭にたどり着いたら√能力『ゴーストトーク』を使用。ここの館に『眠り病』を発病させた怪異が居るならばこの辺りにいるインビジブルなら知っているはずだ。
薔薇と木蓮…本来ならそれ程近い季節に咲くものではないはず…ならどちらかがもしくはどちらもが怪異の影響を受けているのかもしれない…怪異はすぐそこだ。

「ここからは怪異の領域だ。気を引き締めねばな」
 調査のすえ●●県●●地方までやってきた恭兵は、そこに建つ無人の洋館を見て呟く。
 人の気配はないが、にも関わらずあまり寂れた雰囲気がないのが、逆に不気味なような。怪異『眠る乙女』の寝所としては相応しいかもしれない。
「とりあえず共通して聞く事が出来たのは『薔薇と木蓮の香り』だ。どちらも咲いている庭に向かうのがいいか……」
 この館の特徴として、まず最初に目に入るのもそこだ。管理する者など誰もいないはずなのに、庭師の手入れが入ったばかりのように綺麗に整った庭園で、薔薇と木蓮が花を咲かせている。

「ここの館に『眠り病』を発病させた怪異が居るならば、この辺りにいるインビジブルなら知っているはずだ」
 庭にたどり着いたら恭兵は【ゴーストトーク】を使用。降霊の祈りによって付近のインビジブルを生前の姿に変え、話を聞く。ゴーストトーカーの名家・静寂家でも稀代の逸材と謳われる彼にとって、この程度は初歩中の初歩だ。
「どんな些細な事でもいい。怪しいものを見たなら教えてくれ」
 この√能力で引き出せる情報は直近3日以内の目撃内容に限られるとはいえ、眠り病の発症例が増えたのも最近。つまり近日中にもなにか異変が起きていておかしくない――彼の読みは当たっていた。

「……薔薇が成長している?」
 知性を得たインビジブルが語るには、庭園の薔薇は以前から咲いていたものの、しばらく前まではこれほど花盛りではなかったという。そして成長の証は開花だけではない。
「館の主を探しているなら、茨を辿っていけ?」
 よく確認してみれば、地面や他の雑草に紛れて分かりづらいが、薔薇の茨は庭園を出て洋館の中まで伸びていっている。館の敷地の外方向には伸びていないのが、なおさら不自然だ。

(薔薇と木蓮……本来ならそれ程近い季節に咲くものではないはず……ならどちらかが、もしくはどちらもが怪異の影響を受けているのかもしれない……怪異はすぐそこだ)
 情報をくれたインビジブルに「ありがとう」と礼を言うと、恭兵は茨を辿って庭から館へ。日中でも薄暗い屋内に入ると、怪異の腹の中に呑まれたような気分になるが――そんな事で臆する彼ではなかった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

クラウス・イーザリー
(綺麗な場所だな……)
薔薇と木蓮に囲まれた洋館は美しいのに、怪異のせいかどこか不穏な気配も感じる
何が起こるかわからないし、気を付けて調査しよう

俺は入口辺りに留まって、レギオンスウォームでレギオンを飛ばして館内を調査する
眠る乙女の場所、そこに至るまでの道筋、他の怪異の存在
直接足を運ぶ前に、できるだけ多くの情報を集めておこう

情報が纏まったら眠る乙女の元へ向かう
もし途中に障害があるなら基本的には迂回するよ
次はきっと戦いになるだろうから、できるだけ体力は温存しておきたい
勿論、迂回すると時間がかかりすぎるならその限りじゃない
どうしようもない場合は強行突破しよう

※アドリブ、連携歓迎です

(綺麗な場所だな……)
 普通の旅行中にここを見つけられたなら、もっと素直に感動できたのかもしれない。
 薔薇と木蓮に囲まれた洋館は美しいのに、怪異のせいかどこか不穏な気配も感じる。それは来訪者を拒んでいるのか、誘っているのか。
「何が起こるかわからないし、気を付けて調査しよう」
 いきなり突入するのは危険が大きすぎるだろう。クラウスは入口の手前に留まって【レギオンスウォーム】を起動。小型無人兵器「レギオン」による館内の調査を開始する。

(眠る乙女の場所、そこに至るまでの道筋、他の怪異の存在)
 直接足を運ぶ前に、できるだけ多くの情報を集めておきたい。レギオンの超感覚センサーが探知した内容は、クラウスの手元の端末にリアルタイムで送られてくる。移動距離は半径25m以内に限られるが、優秀な索敵要員だ。
「館内をうろつく怪異はいないか」
 洋館の中は完全に無人で、ヒトだけではなく怪異の存在も見当たらない。ここにいるのは『眠る乙女』だけなのだろうか。それなりの広さがある館内で、その1体だけを探すのは手間になりそうだが――。

「この茨が道標になりそうだ」
 館の床や壁や天井に、血管のように絡みついた薔薇の茨。それらが指向性をもってひとつの方角に伸びていることにクラウスは気付いた。試しに1体のレギオンに辿らせてみると、その端末はとある部屋に行き着き――侵入と同時に接続が切れた。
「やられたか。けど、ここまで分かれば十分」
 情報が纏まったら、いよいよ彼自身が眠る乙女の元へ向かう。目的地までの道筋で気を付けておいたほうがいい点も、すでに把握できている。特に、あの茨に直接触れるのは避けたほうが良さそうだ。

(次はきっと戦いになるだろうから、できるだけ体力は温存しておきたい)
 館内に張られた茨をまたいで進み、多少遠回りになっても無難なルートを選択。もちろん迂回すると時間がかかりすぎるならその限りではないが、事前調査の結果だと、どうしようもなく強行突破するしかない状況はなさそうだった。
(向こうも温存してるのかもね)
 眠る乙女とやらの思考は分からないが、敵対者の侵入にも気付かず寝ているほど迂闊だろうか。まあ、なんにせよ答えはすぐわかる。居場所さえ判明すれば、怪異との対面まであと少しだ。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

玉響・刻
SPDで行動

さて、と綺麗な所ですけどちょっとイヤな感じがしますね…
油断せず慎重にいきましょうっ!

いきなり乗り込んでも相手の有利になるだけですから
ひとまず周囲(庭)の様子を確認しましょうっ!

青い薔薇と木蓮が鍵みたいですので、咲いている植物を
調べますっ!

気をつけるべき点は、咲いている植物自体が怪異の
一部かもしれないので襲われても対処できるよう
具体的にはいつでも能力「胡蝶乱舞」を使って行動
できるように準備しておきます

後は、木蓮の香りとのことなので、(あるなら)その香りを
追って行きます

庭の探索後、館に入る際は「胡蝶乱舞」を使用して
臨戦態勢で行きますっ!

※アドリブ歓迎

「さて、と綺麗な所ですけどちょっとイヤな感じがしますね……」
 人気のない閑静な土地に、花園に囲まれてひっそりと建つ洋館。なかなか絵になる風景ではあるのだが、ここが怪異の館だと知ってしまうと――いや、知らなくても隠しきれない、怪しい雰囲気が漂っている。
「油断せず慎重にいきましょうっ!」
 いきなり乗り込んでも相手の有利になるだけだ。刻はひとまず周囲の、特に庭の様子を確認しに行く。誰にも手入れされていないはずなのに、そこの草花は完璧に整っていた。

「まずはここからですよね。青い薔薇と木蓮が鍵みたいですのでっ!」
 他の√能力者達の調査結果でも、患者の証言として頻出したワードだ。刻が庭に咲いている植物を調べてみると、紫紅色の木蓮の花にまぎれて真っ青な薔薇の花が目立つ。自然界において青い薔薇とは、本来存在しない「奇跡」を指すらしいが。
「気をつけるべき点は、咲いている植物自体が怪異の一部かもしれない事ですね」
 なのでもし襲われても対処できるよう、√能力はいつでも使えるように準備してある。
 彼女は護刀の柄をぐっと握りしめたまま、慎重に花に顔を近づけて、触らずに匂いを嗅ぐ。春の訪れをイメージさせる、甘くて上品な香りだ。

「花だけじゃなく、こっちからも同じ香りがしますね」
 患者達が言っていた「薔薇と木蓮の香り」とは、これのことか。感覚と意識を研ぎ澄ませて香りを辿っていくと、刻の足は庭を抜けて館の入り口に辿り着く。まるで誰かに「入っておいで」と誘われているようだ。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず……ですよねっ」
 いかに危険だと分かっていても、ここまで来たなら行くしかない。刻は【胡蝶乱舞】を発動し、淡く光る無数の黒い霊蝶を周囲にまとう。黒い胡蝶は死を告げる蝶、これを使ったからには彼女も本気だ。

「臨戦態勢で行きますっ!」
 たんっ、と地を蹴って洋館に突入した刻は、鍛え抜かれた走術で館内を疾走。庭を出ても仄かに漂う花の香りを追いかける。なにが待ち構えていようと斬り伏せる準備は万全。その横顔は探偵志望の娘とはまた違った側面――いっぱしの剣士の顔を見せていた。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

天使・夜宵
【無名】SPD 庭探索
※アドリブ歓迎

まさか、テメェも調査してたのかよ
相棒も別口で調べてたなら、説明は不要か。花に囲まれてるって話なら、庭を探索してみるか

幾ら無人とはいえ、敵のテリトリーなら油断は禁物
敵が出てきたとしても“無名”で一刀両断するだけ、煙草の煙も姿を消すには役に立つ

約束だったか何だったか忘れたが、ンなもんのために眠らされる身にもなって欲しいもんだ
……んで、相棒。何か聞き出せそうか?そこら辺にいる|奴ら《・・・》から

薔薇だとかの匂いが鼻につく。さっさと見つけ出して終わらせてぇとこ……面倒事はゴメンだ
戦闘になったとしても、足引っ張んじゃねぇぞ
白露・花宵
【無名】
SPD

おやま、あんたも来てたんだねぇ?考えてることは一緒か
そうするか、薔薇と木蓮がやたらと話しに出てきたようだからねぇ

念の為周囲を警戒しながら“蜜煙”を手に、花を調べる
なんか出ても相棒がいるからなんとかなるだろ

さてねぇ…約束したかは知らないが、取り敢えず呼んでんだろ?
なにに惹かれてたのかねぇ
幻煙が手元にないのが痛いが…ま、やってみるさ
《インビジブル制御》で《情報収集》を試みる
お前さんら、ここにナニがいるか知ってるかい?他のことでもいいよ、知ってることを教えておくれ

面倒事とか言ってないでさっさと行くよ
…あんた、誰にもの言ってるんだい?|暗殺者《あたし》の足を、あんたが引っ張るんじゃないよ

「まさか、テメェも調査してたのかよ」
「おやま、あんたも来てたんだねぇ?」
 ●●県●●地方にある洋館の前で、一組の男女がばったりと鉢合わせる。それぞれ違うルートで眠り病の事件について調査していた、夜宵と花宵だ。男のほうが顔をしかめれば、女のほうは目を細めて笑う。
「別口で調べてたなら、説明は不要か」
「考えてることは一緒か」
 ふたりの関係は拾われた者と拾った者、あるいは利害の一致した相棒だ。僅かなやり取りでも互いの現状は把握したようで、最低限の情報共有だけで行動を開始する。この辺りはもはや阿吽の呼吸だ。

「花に囲まれてるって話なら、庭を探索してみるか」
「そうするか、薔薇と木蓮がやたらと話しに出てきたようだからねぇ」
 洋館の敷地で真っ先に目に入り、かつ最も怪しいのはやはりそこだ。「蜜煙」の煙草を手に、花宵が庭園の花を調べている間、夜宵は無名の妖刀の鯉口を切り「不知火」の煙草を吹かしている。
「なんか出ても相棒がいるからなんとかなるだろ」
「丸投げすんなよテメェ。なんとかするけどよ」
 いくら無人とはいえ、敵のテリトリーなら油断は禁物。ふたりとも周囲の警戒は怠っていない。もし敵が出てきても夜宵の【終焉黙示】なら先手を取って一刀両断できるし、花宵の【煙舞】なら毒煙で文字通り「煙に巻ける」だろう。けぶたい煙草の煙も姿を消すには役に立つ。

「約束だったか何だったか忘れたが、ンなもんのために眠らされる身にもなって欲しいもんだ」
 花宵の調査が終わるまで、夜宵は手持ち無沙汰にそんな話をする。本人達でさえ忘れていたものを、今更蒸し返されていい迷惑だろう。怪異の思考はてんで分からないが、人間側はいい迷惑だ。
「さてねぇ……約束したかは知らないが、取り敢えず呼んでんだろ? なにに惹かれてたのかねぇ」
 花宵とて怪異の考えなど理解する気もないが、少なくとも眠り病にかかった相手とは「惹かれ合う」ものがあったのだろう。夢の中に心を囚われてしまうほど、強く深く。そいつを確かめるには直接会ってみるしかないか。

「……んで、相棒。何か聞き出せそうか? そこら辺にいる|奴ら《・・》から」
「幻煙が手元にないのが痛いが……ま、やってみるさ」
 花宵の調査方法は前と同じだ。付近にいるインビジブルを制御して情報を引き出す。
 √能力を使った時ほど素直に話を聞かせてはくれないが、エサがなけりゃ口も割らせられないようじゃ、仕事人の恥だ。
「お前さんら、ここにナニがいるか知ってるかい? 他のことでもいいよ、知ってることを教えておくれ」
 まだこっちの言葉を解する程度に知恵のある奴らを見つけて、訊ねる。【白露の語らい】と比べて利点があるとすれば、3日以内の縛りがないことだ。昔からの出来事でも、ひょっとしたら聞ける可能性がある。

「ここしばらくの間、薔薇がよく育ってるって?」
 インビジブルの話を聞いて花宵が足元を見ると、下草にまぎれて気付かなかったが、薔薇の茨がそこらじゅうに絡まっている。不自然に伸びすぎたそれは庭園の外に出て、洋館の中に向かっていた。
「……館にナニがいるかは知らない。奥に行ったヤツはみんな戻ってこないから、だとさ」
「やれやれ。厄ネタは確定か」
 話を聞いた夜宵は露骨なしかめっ面。さっきから薔薇だとかの匂いが鼻について、ただでさえ不快なのだ。だが手がかりが見つかったのは僥倖――この茨を辿っていけば『眠る乙女』の居場所に至るだろう。

「さっさと見つけ出して終わらせてぇとこ……面倒事はゴメンだ」
「面倒事とか言ってないでさっさと行くよ」
 心底面倒臭そうな相棒に活を入れて花宵が歩きだすと、夜宵も気だるげに後を追う。
 館内はいよいよ敵の本丸だ。いつ攻撃を受けたって不思議はない。テンションはチグハグでも両名とも油断はしていない。
「戦闘になったとしても、足引っ張んじゃねぇぞ」
「……あんた、誰にもの言ってるんだい? |暗殺者《あたし》の足を、あんたが引っ張るんじゃないよ」
 ピリピリと剣呑な空気を擦り合わせながらも、不良警官と暗殺者は自然と互いの死角をカバーするように視線を巡らせる。館内にただよう二筋の白煙が、双頭の蛇のように揺らめいていた――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

天霧・碧流
※アドリブ、連携歓迎。他の√能力者に迷惑がかかる行動は致しません。

はぁ~、なるほどねぇ。
眠る患者が一気に増えたのは植え付けていた種が一斉に開花したからってわけか。
面白い仕掛けだ。
一気に花を咲かせて庭園にでもしたかったのか?
だが、派手すぎたな。
だから√能力者たちが、この場所にたどり着いたわけだ。
いや、誘っているのか?
いいねぇ、じゃあその誘いに乗ろう。

この洋館に訪れた患者が共通して行った場所が怪しいか?
一番考えられるのは庭園だが…。

誰の記憶にも残っていない洋館なら、そこにある物にでも聞いてみるか?
【武装化記憶】を使って、洋館内の物に触れてみるか。
案外、眠り姫ってのも『物』かもしれん。絵とか。

「はぁ~、なるほどねぇ。眠る患者が一気に増えたのは植え付けていた種が一斉に開花したからってわけか」
 面白い仕掛けだ、と感心した様子で呟いたのは碧流。日本中に患者が現れたということは、以前から『眠る乙女』は相当な数の種を撒いていたのだろう。もっとも、その意図までは計りかねるが。
「一気に花を咲かせて庭園にでもしたかったのか? だが、派手すぎたな。だから√能力者たちが、この場所にたどり着いたわけだ」
 1人ずつ徐々に眠らせていけば、あるいは事件として発覚すらしなかったかもしれない。なのにこうして居場所を突き止められるとは、時間をかけて準備してきた割には詰めが甘い。

「いや、誘っているのか? いいねぇ、じゃあその誘いに乗ろう」
 わざわざここまで来たというのに、家主の顔も見ずに帰るなんてありえない。招待されているなら尚更だと、碧流はニヤリと笑いながら探索を開始する。引きこもりの家主はさて何処にいるのだろう。
「この洋館に訪れた患者が共通して行った場所が怪しいか?」
 一番考えられるのは庭園だろうか。洋館を囲うように、薔薇と木蓮の花が咲き誇っている。怪異を除けば住人は誰もいない、そもそも訪れる者さえ稀だと言うのに、見事なものだ。

「流石に本人がここで寝てるって事はないよな」
 しばらく庭園を見て回ると、整えられたかのように綺麗な花々の中で、薔薇の茨だけが異様に繁茂しているのに気付く。それは曲がりくねりながらもひとつの方角へ――館の中へと伸びている。
「いいねぇ」
 さっきも口にしたが「誘っているのか?」と思えるほどの状況。笑みを深めながら、碧流は茨を辿って洋館に入る。昼間であっても薄暗い館内は、まるでホラー作品の舞台のよう。いかにも怪異が潜んでいそうな雰囲気だ。

「誰の記憶にも残っていない洋館なら、そこにある物にでも聞いてみるか?」
 さらなる手がかりを求めて、碧流は洋館内の調度品に触れて【武装化記憶】を使う。
 器物の記憶を読み取るのはサイコメトラーの基礎中の基礎。意識を集中させた彼の脳裏に、過去の情景が浮かび上がる。
(……誰か歩いてるな)
 かつん、かつん、と響く足音。夢遊病者のような虚ろな顔で、館の廊下を歩く少女。
 こいつが『眠る乙女』かと思ったが、碧流は彼女の顔に見覚えがあった。数年分ほど若そうだが、眠り病について調査している時に写真で見た、患者のひとりと同じ顔だ。

「今のは患者が昔ここに来た時の記憶か」
 怪異に誘われた被害者が"種"を植えつけられる過程を、洋館の調度品は覚えていたわけだ。過去の映像で被害者が歩いていった道をたどれば、その先に眠る乙女はいるだろう。
「案外、眠り姫ってのも『物』かもしれん。絵とか」
 そんな予想が正しいかどうか確かめるためにも、足早に館の奥へと歩いていく碧流。
 夢の怪異が現実でどんな姿をしているのか、はっきりとした事はまだ分からないわけだ。どうせなら血と悲鳴は流れてくれたほうが、彼としては面白いかもしれないが。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

花喰・小鳥
眠り姫と患者たちの夢が繋がっている以上、乱暴な手段、たとえば館に火を放つ手は使えない
精神に及ぼす影響は考慮が必要です

「それにしても彼女はなぜ……」

患者たちを一度は解放したのか?
そして今の状況、私が彼女なら恐らくは

【狩猟者】を発動

館内が彼女のテリトリーで、私たちが『招かれた客』でも、わざわざ姿を晒す理由はなかった
慎重に、けれど速やかな行動を
彼女の|残り香《ビジョン》を辿るように『追跡』を緩めない

患者たちは『撒き餌』かもしれない
より上質な獲物、つまり|私たち《能力者》を狩るための萌芽というのは考えすぎだろうか

「怪異の思惑なんて考えるだけ無駄、でしたね」

星詠みの言葉を思い出して私は微笑みを浮かべた

(眠り姫と患者たちの夢が繋がっている以上、乱暴な手段、たとえば館に火を放つ手は使えない。精神に及ぼす影響は考慮が必要です)
 怪異の拠点と思しき場所を突き止めても、小鳥は強硬策を取らなかった。少なくとも元凶である『眠る乙女』本人を確認するまでは、慎重に行動すべきだろう。患者の心にトラウマが残ったり、永遠に目覚めなくなったりしたら最悪だ。
「それにしても彼女はなぜ……」
 患者達を一度は解放したのか? それが小鳥にとって一番の不可解だった。当時はまだ活動期でなかったなどの考察はできるが、確証に足るものはない。そもそも普通の人間が怪異と遭遇して(少なくとも見かけ上)心身とも万全で生還すること自体が稀だ。

「そして今の状況、私が彼女なら恐らくは」
 自分なりの考察を練りながら、小鳥は【|狩猟者《バーゲスト》】を発動。不吉を呼ぶイングランドの黒妖犬の如く、狩猟行動の体勢を取って洋館に入る。この体勢中は肉眼を除いたあらゆる探知――霊感や魔術の類もすり抜けられる。
(もし私たちが『招かれた客』でも)
 館の中が『眠る乙女』のテリトリーである以上、わざわざ姿を晒す理由はなかった。
 患者の意識を介して彼女の夢に触れた時の|残り香《ビジョン》は、はっきりと覚えている。あれと同じ気配を、あの時よりもずっと強く、ここに来た時から感じている。

(慎重に、けれど速やかな行動を)
 体勢を崩せば隠密も解けてしまう以上、全力疾走などはできないが。迷いのない小鳥の足取りはそれでも十分に迅速だ。猟犬の如く痕跡を辿り、追跡を緩めない――そもそも迷いようがないほど、館の奥に行くほどそれは鮮明になる。
(患者たちは『撒き餌』かもしれない)
 故に小鳥の危惧は深まる。一般人を一度は俗世に帰したうえで今回の事件を起こしたのは、より上質な獲物、つまり√能力者を狩るための萌芽というのは考えすぎだろうか。もしそうなら自分達はまんまと罠に釣られたことになってしまうが。

「怪異の思惑なんて考えるだけ無駄、でしたね」
 そこまで考えたところで、星詠みの言葉を思い出して、小鳥は微笑みを浮かべた。
 異能の力ゆえに人間災厄に認定されていても、彼女の思考基準はまだヒトだ。純然たる怪異の考えなど分からなくて当然。
「それにご招待いただいたなら、せめてご挨拶はしませんと」
 この考察がもし当たっていたとして、今からすごすごと逃げ帰るのか? 答えはNOだ――相手にどんな策謀があろうとも、喰い破るのみ。芳しき夢の残り香を追って、夢蝕みは足を止めはしない。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

星谷・瑞希
ここが今回の事件の手がかりになる場所…!
と館に入る

あっ、これって落とし物かな…?
一階を探索していると落とし物を発見したので√能力を使用して概念を書き換えて記憶を探ってみる

なんだ…迷い込んだ人が落とした物か…
見ると理由は不明だが此処に来て探索していたが何も無いとそのまま去って行った
探索していたのは恐らく被害者だろうがまだ呪いの「種」が芽吹く前だろう

…不味い?!
気を取り直して2階を探索してみると何か不思議な感覚に襲われる

…これか!えい!
√能力を概念の書き換えを自身に使用して自分の中にある不思議な感覚を概念を書き換える手で握り潰す

…下手したら僕も眠り病になっていたのかな?
と少し恐ろしくなった

「ここが今回の事件の手がかりになる場所……!」
 調査のすえ●●県●●地方までやって来た瑞希は、その郊外にたたずむ一軒の洋館にたどり着いた。いよいよ「眠り病」事件の核心に迫っている実感を抱きながら、意気揚々と探索を開始する。
「あっ、これって落とし物かな……?」
 まずは一階から調べていると、埃をかぶった廊下に腕時計が落ちている。どうやら留め具が壊れて持ち主の腕から外れたようだ。なにか手がかりになる情報はないかと、早速【|霊力超解放《オーバー・ライド》】を使ってみる。

「なんだ……迷い込んだ人が落とした物か……」
 霊力の手で概念を書き換え、物に宿る記憶をサイコメトリーの要領で探ってみると、腕時計の持ち主は普通の人間だと分かった。理由は不明だが数年前にこの館を訪れ、しばらく探索していたが何も見つけられずにそのまま去って行ったようだ。
「探索していたのは恐らく被害者だろうね」
 まだ呪いの「種」が芽吹く前だろう。この出来事がきっかけで腕時計の持ち主は「種」を植えられたわけだ。怪異そのものの目撃情報は得られなかったが、逆説的にこの辺りに怪異はいないことが分かった。

「1階にはこれ以上なにも無さそうかな……」
 気を取り直して2階の探索に移ると、階段を上がってすぐに不思議な感覚に襲われる。
 不快感ではなく、むしろ柔らかい羽布団に包まれるような、花畑で寝転がっているような――奇妙な心地よさに瞼が下がる。
「……不味い?!」
 これは明らかに怪異の干渉を受けている。それを自覚した瑞希は慌てて霊力の手を自分の頭に突っ込んだ。物理的な干渉でなくても、概念に触れられるこの√能力ならば――。

「……これか! えい!」
 自分の中にある「不思議な感覚」を手で掴み、握り潰すイメージ。違和感が消え、思考にかかっていた靄が晴れると、瑞希はほっと安堵の息を吐いた。ここが怪異のテリトリーだと分かってはいたが、まさかこんな突然干渉を受けるとは。
「……下手したら僕も眠り病になっていたのかな?」
 病院にいた患者のように、夢に囚われて寝たきりになる自分を想像し、少し恐ろしくなる。『眠る乙女』の危険性を実感するとともに、迫りつつもあることを確信した彼は、より慎重に探索を再開するのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

鳳崎・天麟
パラノイアと魔女

なるほど、ここが例の場所ですか
ネガティブ・パラノイア態を解除してから館の庭を探索する事にした

不気味ですね…これは何ですか?
第六感などで庭の周りを調べると何かを見つける

これって花ですね…ネットにも載ってませんね
青い花から距離をとりつつスマホで調べても全く出てこない
何となく眠る乙女と関係ありそうとは思う

あっ貴女は…小鳥遊夢羽さん、久しぶりですね
ライバルが後ろから現れ返事をする

…やっぱりこの花って眠る乙女の呪いみたいなものなんですね
この花は素早く宝珠に呪い解除の回転をかけて投げて破壊した

ありがとうございました、後少しで眠り病になる所でした
とお礼を言って彼女と共に探索を続ける事にした
小鳥遊・夢羽
パラノイアと魔女

あん?騒がしいな…
寝泊まりしていた館の外が騒がしいので離れに向かう

こんな場所に人が来てんのか…何か異変でも起きたな〜これ
館の離れには自分の靴では無い足跡を見つけて何か起こったのだと確信し翼を生やして空を飛び速く館に戻る事にした

おっ、あれって天麟じゃん
庭に妹分(本人の主観)が居たので声をかける
よお、天麟!完璧最強魔女のククリさん参上だ!
と言ってみたら

もう!だから本名は辞めろぉぉぉ!まあ、それはおいといて…
と彼女に本名を言われて恥ずかしいが青い花と向き合う

その花壊した方がいいぞ、ヤバい呪いがあるから
√能力で青い花を壊した

ほーん…面白そうだし私も付いていくわ
と彼女に着いていく事にした

「なるほど、ここが例の場所ですか」
 眠り病を調査する√能力者の後を追って、天麟も●●県●●地方の洋館にやって来る。
 怪しげな雰囲気を放つ無人の館を前に、ネガティブ・パラノイア態を解除した彼女は、まずは外から探索することにした。
「不気味ですね……これは何ですか?」
 いやな気配を感じながらも庭の周りを調べていると、咲き誇る薔薇と木蓮の中から気になるものを見つける。それは青い薔薇のようだが、彼女の第六感はなにかが違うと訴えていた。

「これって花ですね……ネットにも載ってませんね」
 青い花から距離をとりつつ、スマホで検索にかけてみるが、いくら調べても同様の花の情報はまったく出てこない。いや、似ている花ならいくらでもヒットするのだが、よく見比べてみるとどれも違う。
「なんでしょうね、これは」
 なんとなく『眠る乙女』と関係ありそうとは思うが、それ以上のことは分からない。
 放置すべきか、思いきって触れてみるべきか。判断に迷った天麟はしばし思案する。



「あん? 騒がしいな……」
 その頃、洋館の近所にある別の館では、小鳥遊・夢羽(混沌の魔女『ククリ』・h06582)が寝泊まりしていた。この辺は人気もなく仮宿にはもってこいだったのだが、調査に訪れた√能力者達の気配を感じ、なんの騒ぎだと起き上がる。
「こんな場所に人が来てんのか……何か異変でも起きたな〜これ」
 自分が泊まっていた館の離れに向かうと、自分の靴ではない足跡を見つける。それで何か起こったのだと確信した夢羽は背中から翼を生やして、近くの様子を見て回ることにした。

「おっ、あれって天麟じゃん」
 上空から夢羽の視界に入ったのは、彼女の妹分(あくまで本人の主観だが)の天麟が、洋館の庭で何かを見ている所だった。√能力者ではないはずの彼女まで異変に関わっているのかと、放ってはおけずに声を掛ける。
「よお、天麟! 完璧最強魔女のククリさん参上だ!」
「あっ貴女は……小鳥遊夢羽さん、久しぶりですね」
 急に後ろから現れた女性に、天麟は落ち着いて返事をする。彼女にとっての夢羽はライバルのような存在だが、険悪というほど仲は悪くない。『混沌の魔女』の異名を付けられるほど頭のネジが外れている彼女に、ここで会うのが幸運か不運かはわからないが。

「もう! だから本名は辞めろぉぉぉ! まあ、それはおいといて……」
 本名で呼ばれるのがあまり好きではなく、普段は『ククリ』というハンドルネームを名乗っている夢羽だが、知人にはあまり浸透してないらしい。恥ずかしそうにツッコミを入れつつも、気を取り直して天麟が見ていたものを見る。
「その花壊した方がいいぞ、ヤバい呪いがあるから」
 夢羽の正体は人間災厄。向き合えばすぐに其れが怪異に由来するものだと察知する。
 彼女は右掌の【ルートブレイカー】を発動し、籠められた呪いごと花を握り潰した。

「……やっぱりこの花って眠る乙女の呪いみたいなものなんですね」
 魔女である夢羽が言うなら間違いはないのだろうと、天麟は同様の青い花に「天麟の魔力宝珠」を投げつけた。宝珠にかけられた特殊な回転の技法が、花弁を散らし呪いを解除する。
「ありがとうございました、後少しで眠り病になる所でした」
「眠り病? なんだそりゃ」
 助けてもらったお礼を言われても、夢羽のほうはピンときていない様子。どうやら彼女がこの近くで寝泊まりしていたのは事件とは無関係らしい。もし気付かないままだったら、彼女のほうこそ眠り病の患者と同じ目にあっていたかもしれない。

「ほーん……面白そうだし私も付いていくわ」
 天麟から事件について聞いた夢羽は、興味本位で彼女についていくことにした。実力はご覧の通りだし、無頼の輩のように見えてもやる時はしっかりやる真面目さと身内に甘い面があるのを、以前から親交のある天麟は知っている。断る理由はないだろう。
「よろしくお願いします、夢羽さん」
「だからククリだって言ってんだろぉぉ!」
 本人達にとってはいつも通りのやり取りを交わしつつ、探索を再開するふたり。まだ手がかりは少ないものの、さっきのように呪いを放っているものを潰していけば、いずれ元凶にたどり着くだろう――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

贄波・絶奈
ふんふん……眠る乙女に廃墟の洋館ねぇ。随分とおあつらえ向きなシチュエーションだけどそういうの嫌いじゃないよ。というワケでサクッと調べてみようか。
被害者は呪いの種とかなんとかを植え付けられたらしいけど、それって多分私が前にサボ……試しに眠ってみた時に感じた痛みだろうね。なら、丁度良いし逆にそれを利用してみようか。もし館内で身体に異常では起きたらその症状が激しくなる方向に進んでみよう。ここに原因があるならなんらかの反応もありそうだしね。ここが怪異のテリトリーなんだったら敢えてその誘いに乗って一気に真相に近づくって作戦だよ。ま、ハイリスクだろうけどそれぐらいの方が面白いだろうしね。

「ふんふん……眠る乙女に廃墟の洋館ねぇ。随分とおあつらえ向きなシチュエーションだけどそういうの嫌いじゃないよ」
 似合いすぎているというか、狙いすぎているというか。ホラー映画の導入にはふさわしそうな館の外観を眺めて、絶奈はそんな感想を呟く。地道な下調べもそろそろ飽きたし、分かりやすいのは歓迎だ。
「というワケでサクッと調べてみようか」
 洋館の周りには庭園など怪しい所もあるが、彼女はまっすぐ表口から館に足を踏み入れる。ここまで来てコソコソしたって仕方がない。どうせ自分が来ていることは、向こうも察しているだろうから。

(被害者は呪いの種とかなんとかを植え付けられたらしいけど、それって多分私が前にサボ……試しに眠ってみた時に感じた痛みだろうね)
 痛みを感じたのはあの一瞬だけで、ここまでは何ともなかったが。すでに自分の心にも患者達と同じ「種」が植えられているのだろうと絶奈は判断していた。つまりそれは、いつ自分も眠ってしまってもおかしくない状況ということだが。
「なら、丁度良いし逆にそれを利用してみようか」
 恐怖なんてまるで感じてない様子で、彼女はスタスタと館内を歩き回る。ここまで異変の大元に迫れば、なんらかの自覚症状が出てもおかしくない。言い換えれば、身体に異常があれば怪異が近くにいるということだ。

(ここが怪異のテリトリーなんだったら、敢えてその誘いに乗って一気に真相に近づくって作戦だよ)
 そもそもの種を植えられた時といい、あまり自身へのリスクを顧みない性質なのだろうか。回りくどいことを一切抜きにした絶奈の作戦は、果たして予想通りの展開になった。館に入ってほどなくして、あの時感じた痛みが戻ってきたのだ。
「ビンゴ、ってやつかな」
 指先の痛みとは対照的に、頭に薄く靄がかかったような感覚もある。意識を持っていかれないよう気合を入れ直すと、彼女はそのまま館内の探索を続ける。進む先はもちろん症状が激しくなる方向だ。

「ま、ハイリスクだろうけどそれぐらいの方が面白いだろうしね」
 階段を見つけて二階に上がると、一階にいた時よりさらに症状は強くなった。痛みはあまり気にならなくなった代わりに、茨のようなものが体に絡みつく幻触。そして羽布団に包み込まれるような眠気。
「ひょっとして私、気に入られた? ずいぶん熱心な招待じゃないか」
 ここまで来れば絶奈はもう、自分を呼んでいる「存在」の位置をはっきりと感じ取ることができた。導かれるままに歩を進めるさまは、これまでにもいた数多の被害者達と同じ――しかし彼女の瞳はまだ光を失ってはいなかった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

第3章 ボス戦 『眠る乙女』


POW お休みなさい、良い夢を
【青薔薇の香気】を放ち、半径レベルm内の自分含む全員の【睡眠欲】に対する抵抗力を10分の1にする。
SPD ようこそ、私の世界へ
【青薔薇】から【眠りに誘う呪いがこもった棘】を放ち、命中した敵に微弱ダメージを与える。ただし、命中した敵の耐久力が3割以下の場合、敵は【心を乙女の夢に囚われ、身体はやがて衰弱】して死亡する。
WIZ さようなら、貴方はいらない
【青薔薇】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
イラスト 棘ナツ
√汎神解剖機関 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 洋館の二階中央にある、窓のない部屋。
 √能力者達が辿り着いたそこは、むせ返るほどの花の香りと、深い闇に満ちていた。

 開け放たれたドアから差し込む光が、うっすらと室内の様子を照らしだす。
 設えてあったのは天蓋付きの寝台。その中には青い薔薇に囲まれて眠る、ひとりの乙女の姿があった。

 眠る乙女。
 まさに、その名の通りの形容をした、人を眠りに誘う怪異。

 久方ぶりの侵入者に寝所を荒らされても、乙女はぴくりとも反応しなかった。
 だが。その場にいた者はみな、脳裏にささやくような声を聞く。

 ――ようこそ、私の世界へ

 幻聴ではない。眠る乙女はヒトの精神――正確には夢を通じて干渉を仕掛けている。
 眠り病の患者達と同じように、√能力者達の心も自分の夢に囚えるつもりなのだ。

 現実空間では無防備にも見える眠る乙女だが、そんな彼女を護るように薔薇が蠢く。
 この花と茨も怪異の一部なのだろう。見せかけは美しくても危険性は高く、迂闊に挑めば眠らされる前に命を落とすことさえありうる。

 だが、この怪異を討伐するか、せめて封じる事ができなければ、患者達は二度と目を覚まさない。眠り続ける乙女にひとときの「死」をもたらせる可能性があるのは、ここにいる者達だけだ。

 夢の虜囚となるか、それとも解放者となるか。
 眠る乙女と蠢く青薔薇を前に、√能力者達は戦闘態勢を取った。
静寂・恭兵
アドリブ歓迎

『眠る乙女』と言う名の通り少女の姿をした怪異に少し惑わされてしまう。
自分はつくづくこういった姿に弱い。
理解はしているが。

しかし、眠らされてしまった一般人をなんとかするためにはこの怪異を倒すなり封じるなりしなければならない。

今俺に出来るのは前者だろう。
ならば戦うのみ。

【霊的防御】で青薔薇の攻撃から身を守りつつ
√能力『花閃葬』にて【居合い】【切断】
花を断ち切る。

俺が帰るべき花とお前は違うからな。

(……綺麗だな)
 『眠る乙女』と言う名の通り少女の姿をした怪異に、恭兵は少し惑わされてしまう。
 あくまで見かけ上の事だと分かっているのに、自分はつくづくこういった姿に弱い。理解はしているが、変えられない性分というやつだ。
(しかし……)
 眠らされてしまった一般人をなんとかするためには、この怪異を倒すなり封じるなりしなければならない。それも彼は理解していた。さもなくば患者達の心は永遠に夢に囚われたまま、肉体はいずれ衰弱死するだろう。

(今俺に出来るのは前者だろう。ならば戦うのみ)
 覚悟を決めた恭兵は、眠る乙女の横たわる寝台に一歩近付く。すると薔薇の茨が乙女を護るように蠢きだし、むせ返るような甘い香気があふれ出す。思わず眠気を誘われるが、もう惑わされはしない。
「あの花の傍へ、帰る為に」
 愛する椿の姿を思い浮かべながら、使役する死霊の邪気を纏う。それは言葉よりも明瞭に敵対の意志を示すことになっただろう。眠る乙女の声が、再び脳裏にささやきかける。

 ――さようなら、貴方はいらない

 彼の心を、自身の夢に囚える事はできないと悟ったか。怪異が取った行動は純粋な「外敵の排除」だった。青薔薇の茨が鞭のようにしなり、これまでにない高速で動きだす。
「嫌われたみたいだな」
 どのみち斬らねばならぬのだから、そのほうが気持ちは楽かもしれない。【花閃葬】を発動した恭兵は俊敏な動きで青薔薇の攻撃を掻い潜り、死霊の邪気は霊的防護となって彼の身を守る。

「俺が帰るべき花とお前は違うからな」
 ここで自分が眠りに堕ちてしまえば、誰があの花を守るのか。いずれ散る定めに抗うのか。己が戦う理由を今一度噛み締めると、恭兵は敵との間合いを測り、宝刀「曼荼羅」に手をかけて。
「――『花閃葬』」
 鞘走る動きを視せぬ、居合の絶技。鍔鳴りの音が響く時、すでに攻撃は完了していた。
 茨がバラバラに断ち切られ、それらが護るべき一輪の花――乙女の体に、一筋の血の線が走る。それでも彼女は目を覚まさないが、薔薇達からは動揺がはっきりと見て取れた。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

クラウス・イーザリー
「眠っている人達の心を、解放してもらおうか」
悲嘆に暮れていた患者の家族達を思い出しながら銃を構える
尽力するって約束したからね、絶対に負けられない

ゴーグルの暗視機能で闇を見通しながら戦闘
ライフルを構えてフレイムガンナーを起動し、火炎弾で青薔薇と茨を焼いていく
隙があれば乙女の本体も狙おう

青薔薇の棘は見切りで回避するか光刃剣で叩き落とす
茨に絡み付かれたらナイフで切断して抜け出そう

眠りの誘いは心地良い
ついそのまま眠り込んで、覚めない夢に溺れたくなってしまうけど
眠り続ける患者達とその家族のことを思い出して、自分の心を奮い立たせるよ

※アドリブ、連携歓迎です

「眠っている人達の心を、解放してもらおうか」
 悲嘆に暮れていた患者の家族達を思い出しながら、クラウスは銃を構える。『眠る乙女』の返答がないであろう事は承知の上だ。交渉の余地がなければ力尽くで取り戻すまで。
「尽力するって約束したからね、絶対に負けられない」
 彼が装着した「スマートゴーグル」の暗視機能は、薄暗闇を見通して戦う相手の姿を浮かび上がらせる。寝台の乙女を守るように咲く青薔薇達が、こちらに茨を伸ばしてきていた。

 ――ようこそ、私の世界へ

 青薔薇の棘には毒がある。人を眠りに誘い、心を乙女の夢に囚える呪いという毒が。
 クラウスは【フレイムガンナー】を起動し、火炎弾発射形態に変形させたライフルを構える。
(植物には火なんて安直だろうか)
 照準越しに標的を見据え、トリガーを引けば、放たれた火炎弾が青薔薇と茨を真っ赤に焼く。怪異とはいえ見た目通りに火には弱いようだ。のたうつ茨はまるでもがき苦しむ蛇のよう。

 ――どうして拒むの

 脳裏にまた乙女の声が響く。同時に青薔薇の動きが変わった。燃やされるのも承知の勢いでクラウスのもとに茨を伸ばし、棘を飛ばしてくる。無理やりにでも呪いを刺してしまう気か。
「熱心なお誘いだね」
 クラウスは素早く武器を持ち替え、棘の射線を見切って「光刃剣」で叩き落とす。茨に絡み付かれても、即座にナイフで切断して脱出。白い光の刃と黒い艶消しの刃、二本を巧みに操る姿は歴戦の兵士の風格だ。

「あなたの誘いは心地良い」
 抜け出す際に少しだけ棘がかすめたか、微弱な傷から呪いが入り込む。それは苦痛ではなく甘美で、ついそのまま眠り込んで、覚めない夢に溺れたくなってしまう――けれど。
「ここで自分まで寝るわけにはいかない」
 眠り続ける患者達と、その目覚めを待つ家族のことを思い出して、自分の心を奮い立たせる。ここまで抗われるのは想定外だったか、青薔薇の守護に少しだけ隙間ができる――そこを狙って、クラウスは乙女の本体に照準を合わせた。

「もう夜は終わりだ」
 火炎弾の熱と光が、薄暗闇を照らす。ベッドに燃え移った紅蓮が眠る乙女を焦がす。
 いまだに怪異の本体は身じろぎひとつしないが、傷つかないわけではないらしい。であれば倒せるはずだと、クラウスは次弾を装填した。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

玉響・刻
アドリブ、連携歓迎

(胡蝶乱舞展開したまま突入)
遂に見つけましたっ!
あなたにも何か“思い“があるのかも知れませんが
人を不幸にするなら見過ごせません!
いざ尋常に勝負ですっ!

少しでも早く決着をつけたいのは本音ですが、ここは焦らず
迫ってくる周りの青薔薇を減らしていくことから始めますっ!

胡蝶乱舞による移動速度で撹乱しながらなら、青薔薇の攻撃も
早々当たらない筈ですっ!
ただ、青薔薇の香気は香りを感じたら、すぐ離れる位しか対策
が無いのが不安かもですが

後は攻撃ですが、青薔薇は根本の方からできる限り斬りたいですっ!
そして、隙が出来たら「閃刃・告死蝶」を眠る乙女に放つだけですっ!

あなたの世界いるのはあなただけですっ

「遂に見つけましたっ!」
 淡く光る黒蝶の群れとともに、『眠る乙女』の寝室に突入してきたのは刻。青薔薇に囲まれながら眠り続ける乙女を見れば、それこそが今回の眠り病事件の元凶だと確信する。
「あなたにも何か“思い“があるのかも知れませんが、人を不幸にするなら見過ごせません!」
 犯人を追い詰めた名探偵のように指を突きつけても、眠る乙女は一切反応を見せない。
 だが無視はさせない。呪いにかけられた本人はもちろん、彼らの家族や友人など、大勢の人達がこの事件に巻き込まれているのだから。

「いざ尋常に勝負ですっ!」
 【胡蝶乱舞】を展開したままの刻が一歩踏み込むと、寝台周りの青薔薇が反応する。
 その動きは獲物を眠りに誘うものではなく、外敵を排除するものだ。現実世界での行動力を持たない乙女にかわって、手足となり武器となる怪異。
(少しでも早く決着をつけたいのは本音ですが……)
 ここは焦らず、まずは迫ってくる青薔薇を減らしていくことから始めるべきか。鞭のようにしなる茨の範囲攻撃を、刻はダッシュで回避する。洋館の探索中に見せた走術は、もちろん戦闘中でも有効だ。

「撹乱しながらなら、早々当たらない筈ですっ!」
 無数の黒い霊蝶をまとい、驚異の移動速度で室内を駆け巡る刻。洗練された動きに青薔薇達はついて行けていない。敵の攻撃に隙が生まれれば、彼女はすかさず接近に切り替え、護刀「羽風」を抜く。
「剪定ですっ!」
 断つならできる限り根本の方から。斬り落とされた花が散り、茨から力が失われる。
 しかしその間際、青薔薇はひときわ甘い香りを放つ。こちらを道連れに眠りに誘おうという気か。

「この香りはまずいですっ!」
 青薔薇の香気を感じたら、刻はすぐさま距離を取る。これ位しか対策が無いのが不安だが、彼女のスピードなら眠らされる前に離脱できるだろう。何度も嗅がされたら危ういかもしれないが。
「眠らされる前にあなたを倒します!」
 撹乱と一撃離脱の戦法で、青薔薇の本数を減らす。寝台の守りに隙ができれば、その時が眠る乙女に攻撃するチャンスだ。鞘に納めた護刀から、渾身の――そして超速の横薙ぎを放つ。

「あなたの世界にいるのはあなただけですっ」
 胡蝶の霊光を帯びた刃が漆黒の軌跡を閃かせる、その居合の名は「閃刃・告死蝶」。
 たとえ無理矢理引きずり込もうとも、絶対に取り戻す――拒絶と奪還の意志を込めた一撃は、寝台ごと眠る乙女を切り裂き、寝間着とシーツを血で濡らした。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

花喰・小鳥
「夢は夢。いずれ覚めるから夢でしょう?」

煙草に火を着けて一服、紫煙の吐息と共に語りかける
眠りに誘う彼女の干渉に、私はむしろ混ざるように溶けていく『精神汚染』
干渉されるなら、干渉できるということに他ならない
紫煙と私の放つ匂いが『おびき寄せ』て彼女を『魅了』しようと絡めとる

「もはや同類と言ってもよいのでしょうか」

襲いかかる青薔薇に奇妙な縁を感じながら【葬送花】を発動

燐火の花びらが青薔薇と眠り姫を抱くように舞い踊る
彼女の夢を喰らうことでダメージを相殺する『生命力吸収』
混ざり過ぎると危険だが、それは彼女も同じこと

「大丈夫。あなたは独りじゃない。一緒に眠りましょう」

夢の中で果てるなら幸せに違いない

「夢は夢。いずれ覚めるから夢でしょう?」
 煙草に火を着けて一服しながら、小鳥は紫煙の吐息と共に『眠る乙女』に語りかける。
 彼女にもおそらくは、ずっと見ていたい夢があった。忘れてしまいたい現実があった。けれどそれが叶わぬことも知っている。覚めない夢は死んでいるのと同じだ。

 ――ここだけが、私の世界

 脳裏に乙女のささやき声が聞こえた。同時に、寝室に漂う青薔薇の香気が強くなる。
 眠りに誘う怪異の干渉に、小鳥はむしろ混ざるように溶けていく。向こうから招待してくれているのに、断る理由はない。
(干渉されるなら、干渉できるということに他ならない)
 逆に、彼女の放つ|花纏《アティレ》の匂いと|血社《ファシナンテ》の紫煙が、怪異をおびき寄せたのか。夢喰みという、類似の能力を持った人間災厄を相手取る経験は、眠る乙女にとっても稀有だったろう。

「私からも歓迎しましょう」
 無力な獲物だと思い込んだ相手は捕食者だった。夢喰みの力が眠る乙女を魅了しようと絡め取る。これまで何をされても変わらなかった乙女の寝顔がかすかに険しくなり、青薔薇達がざわつきだす。

 ――貴方はいらない

 脅威を認識した眠る乙女の行動が、誘惑から排除に切り替わった。青薔薇の茨がうねり、無数の棘で小鳥を打ち据える。さっきまで熱心に誘ってきたのに変わり身の早いことだ。
「もはや同類と言ってもよいのでしょうか」
 襲いかかる青薔薇に奇妙な縁を感じながら、小鳥は【|葬送花《フロワロ》】を発動。向こうが咲かすのが誘眠の花なら、彼女が咲かすのは|燐火《レヴニール》の花だ。無数の白い炎の花びらが、青薔薇と眠り姫を抱くように舞い踊る。

「大丈夫。あなたは独りじゃない。一緒に眠りましょう」
 同族嫌悪で拒まれてしまったようだが、小鳥は構わず乙女の精神と繋がったまま夢を喰らう。夢を通じて記憶や精気なども喰うことができるのが彼女の特性だ。青薔薇の茨に打たれたダメージは、相手からもらった生命力で相殺する。
(混ざり過ぎると危険だが、それは彼女も同じこと)
 夢と現実、怪異と自我の境界が徐々に曖昧になっていく。戻ってこれなくなるラインを見極めたうえで、そのライン際ギリギリまで迫る。恐怖なるものとは無縁の行動は、とうに生きる目的を見失ったが故か。

(夢の中で果てるなら幸せに違いない)
 小鳥に眠る乙女への敵意はない。あるのは親近感と、少しばかりの慈悲の心か。寝台の乙女に布団をかけるように、白き燐火の花びらを被せ、現実も夢も等しく燃え上がらせていく。
「酷薄な死よ、抱け」
 夢を通じて伝わってくる乙女の感情は、歓喜か、嫌悪か、恐怖か、すぐには味わい尽くせないほど複雑で。ただ、その力が少しずつ衰えているのは分かる。現に小鳥を襲う青薔薇も、先程より元気をなくしていた――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

天使・夜宵
【無名】

ようやく、親玉の登場か。コイツを倒さねぇと話にならねぇんなら、ぶっ倒すだけだろ
呑気に寝る時間は終わりだ。…この花の匂いがずっと鼻について気分が悪ぃんでな、さっさと終わらせる

援護は相棒に任せて先陣を切る。回りくどいやり方より、真っ向勝負でいくのが性分だ
促される【睡眠欲】ごと刀で一閃、青薔薇も意味を成さないくらいに叩き斬る
抵抗力が減らされて睡魔に襲われそうになっても、いざとなりゃ自分をぶん殴って起きりゃいいだけ
…いってぇ、それで殴るな。おかげで目が覚めたけどよ

|眠る《・・》なら一人で寝てろ。テメェと一緒に寝てやる気なんざ、一ミリもねぇんだよ
ここで一人虚しく、消えるように眠るのがお似合いだ
白露・花宵
【無名】

あんた、そんな猪突猛進でどうするんだい…

人にサポートを任せて突っ込んで行く相棒に、信頼と思えば気分は悪くないが思わず溜息が出ちまうよ
しゃあない、|珠弾き《これ》でちっと商売といこうかねぇ

…ま、計算するまでもなく、お前さんらと交換できるもんなんざなさそうだが
珠くれてやるから、あたしの相手もしておくれ

上手くいきゃ、塵芥になるけどねぇ
流石にそこまでは欲張らないさ
相棒が攻撃する隙を作れりゃ上等

って、おい、寝てんじゃないよ
相棒が自分で殴る前に背後からどついてやる
寝たあんたを担ぐなんざ、あたしには無理だからね

だから──この男の言う通り独り、あんたはここで独り寂しくおねんねしてな

「ようやく、親玉の登場か。コイツを倒さねぇと話にならねぇんなら、ぶっ倒すだけだろ」
 洋館の寝室にて『眠る乙女』を見つけた夜宵は、剣呑な気を発して眼光を鋭くする。
 こいつこそが事件の元凶。患者を眠り病にした呪いの大元であり、今もなお彼女の夢には大勢の人が囚われている。
「呑気に寝る時間は終わりだ。……この花の匂いがずっと鼻について気分が悪ぃんでな、さっさと終わらせる」
 ここまで来ればやる事はシンプルだ。ヤニの匂いでも誤魔化せないほどの香りに顔をしかめつつ、援護は相棒に任せて先陣を切る。回りくどいやり方より、真っ向勝負でいくのが彼の性分だ。

「あんた、そんな猪突猛進でどうするんだい……」
 こっちを振り返りもせず突っ込んでいく相棒に、花宵は思わずため息が出てしまう。
 なんにも言わずにサポートを任せるのも、信頼と思えば気分は悪くないが。背中を預かるほうの気苦労も分かってほしいものだ。
「しゃあない、|珠弾き《これ》でちっと商売といこうかねぇ」
 と言っても止まるヤツじゃないのは、そろそろ付き合いも長いので分かる。戦闘用の道具として彼女が取り出したのは算盤。不適当なようにも見えるが、これが物々交換屋の武器だ。

 ――ようこそ、私の世界へ

 敵意をもって迫る√能力者に、眠る乙女は青薔薇から棘を放つ。調査中に何度も言及されてきた、眠りに誘う呪いの棘だ。それ自体は微弱なダメージしかもたらさないが、睡魔に襲われた被害者の心はいずれ夢の世界に囚われ、肉体は衰弱死に至る。
「うるせえ」
 だが夜宵は先手を取って【終焉黙示】を発動。青薔薇の元まで跳躍すると、促される睡眠欲ごと刀で一閃する。どこにでもあるような無名の太刀なれど切れ味は鋭く、意味を成さないくらいに叩き斬られた薔薇の花びらが散る。

「……ま、計算するまでもなく、お前さんらと交換できるもんなんざなさそうだが」
 そんな相棒の暴れっぷりを眺めながら、花宵は算盤の珠を弾く。ずっと寝たきりでは私物も大してなさそうだし、眠る乙女も人間社会の物品を必要としない。怪異は経済活動の外側にいる存在だ。
「珠くれてやるから、あたしの相手もしておくれ」
 それでも交換できるものがあるとすれば、命のやり取りか。算盤から弾き飛ばされた【黄泉路の珠】が、青薔薇や眠る乙女に当たる。彼女が勘定するのは金から命まで、さてこいつの価値はどれほどか。

「上手くいきゃ、塵芥になるけどねぇ。流石にそこまでは欲張らないさ」
 これが致命傷になるほど追い詰められてはいない。しかし眠る乙女も青薔薇達も、攻撃を受けて無視はできないだろう。敵意と呪いの何割かは花宵の方にも向けられるはずだ。
「相棒が攻撃する隙を作れりゃ上等……って」
 そこで花宵は夜宵の動きがさっきより鈍いのに気付く。いつの間にか、室内に充満する花の香りが強くなっていた。眠る乙女の呪いは棘だけでなく、匂いからも「感染」する。

 ――お休みなさい、良い夢を

 接近戦を挑んでいた夜宵に全ての棘を躱しきるのは難しく、抵抗力を削られたところに呪いを受けたのだろう。どうせ彼のことだ、いざとなりゃ自分をぶん殴って起きりゃいいだけ――とでも考えていたのだろうと、花宵には容易に察しがつく。
「おい、寝てんじゃないよ」
 後方でサポートに徹していたぶん、花宵はまだ眠気に余裕があったようだ。相棒が自分で殴る前に、背後から算盤の角でどついてやる。睡魔でぼんやりしかけていた夜宵も、その一発で我に返った。

「……いってぇ、それで殴るな。おかげで目が覚めたけどよ」
「こっちだって眠いんだよ。さっさと面倒事を終わらせな」
 目覚ましにしてはキツい鈍痛に後頭部をさすりながらも、夜宵は一応礼を言っておく。
 そして、ふざけたマネをしてくれた怪異を改めて睨みつけ、殺意をもって斬りかかる。
「|眠る《・・》なら一人で寝てろ。テメェと一緒に寝てやる気なんざ、一ミリもねぇんだよ」
 立ち塞がる茨を切り払い、眠る乙女に一太刀。ぱっと咲いた鮮血の花が、青薔薇を赤く染め変える。お返しとばかりに呪棘に刺されるが、もはやその程度で彼は止まらない。

「ここで一人虚しく、消えるように眠るのがお似合いだ」
 このまま永眠する手伝いだけならしてやると、悪態吐きつつ刀を振るい続ける夜宵。
 そんな相棒がまたうっかり寝てしまわないよう、花宵は後方で監視しつつ算盤を弾く。
「寝たあんたを担ぐなんざ、あたしには無理だからね」
 手間はかかるし気に食わない時もあるが、それでもこいつは相棒で、拾ったのも自分だ。心だろうが命だろうが、なんにも持ってない怪異風情に、タダでくれてやるわけにはいかない。

「だから――この男の言う通り独り、あんたはここで独り寂しくおねんねしてな」
 ぴん、と指先で珠弾き。黄泉路の珠が薔薇一輪を塵芥に変える。呑気に寝こけてばかりの怪異も、そろそろ体力が削れてきた頃合いだろうか。いかに夢を支配する怪異とて、現実世界では不死身ではない。
「テメェの居場所なんざ……何処にもねぇんだよ」
 ざわつく茨を断ち切り、無名の刀が再度閃く。そこに込められた意志は徹底的な拒絶。
 いまだ悲鳴のひとつも上げぬまま、眠る乙女は静かに追い詰められつつあった――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

星谷・瑞希
魔女と共闘

これが眠り病の原因!
念動力を纏ったエネルギーバリアを展開しつつ戦闘態勢する

あっ、天麟!あれ…?その人誰?(も、もしかして天麟の知り合いなのかな?ちょっと変わっているな…)
幼馴染と知らない人も参戦してきた

あっ?!危ない!
敵の√能力は青薔薇から出てくる棘は素早く音響弾を放ち棘を吹き飛ばす(防ぎ切れないならエネルギーバリアで防ぐ)

よし、行くよ!
√能力を発動し霊力解放形態になり青薔薇と棘に触れて無力化する

これでどうだ!やあ!
そのまま敵に近づいて星剣で敵を斬り裂いた

これが混沌の魔女の力なの…?
知らない人も凄く強かった
小鳥遊・夢羽
魔女と共闘

お〜これが天麟のお姫様か〜
と天麟の耳元で囁いた

おう!完璧最強魔女のククリさんの参上だ!
と天麟の大切な人に挨拶する

言うなっていっただろ…
また本名を言われたが今回は敵が居るからスルーした(この時に√能力を発動する)

ほい
敵の√能力は高速詠唱で門の創造を詠唱し私の目の前に門を展開し敵の背後に出口を展開して敵に跳ね返す(攻撃は受けないようにすればいいから)

ほら、隙作ってやったぞ
門の創造と同時に魔女の炎を投げた後、翼を生やして飛び上がる

じゃあ私のもくれてやるよ!
天麟が攻撃したのを確認した後魔力指銃を放ち攻撃した

(ああ、私…生きてて良かったかもな)
と考えたが今は戦闘中なのでその思考は打ち切った
鳳崎・天麟
魔女と共闘

やっぱり瑞希も居ましたか!
と瑞希に挨拶する

ええ、可愛いでしょう?
彼女の囁きに口元が緩みつつも返事をする

少し違います、彼女は小鳥遊・夢羽さんです。強いのは事実です
と訂正を入れた

あーあ、憂鬱ですよ…全く
ネガティブ・パラノイア態に変身して空中ダッシュで敵に接近する

1番高いSPDで判定

敵の√能力は視力で棘を見て素早くシュリン・バレットから魔弾を放つ

ええ…ありがとうございます
敵が体勢を崩したらパラノイア・ソードで斬り裂いた

…貴女のその表情は初めて見ましたね
混沌の魔女とは思えない優しい顔になったのを見て混沌の魔女になった理由でもあったのかなと思いつつシュリン・バレットを構える

「これが眠り病の原因!」
 ついに『眠る乙女』を発見した瑞希は、直ちに念動力を纏ったエネルギーバリアを展開しつつ戦闘態勢を取る。すぐにこいつを倒して、眠り病の患者達を目覚めさせよう――と、そこで後ろから足音が1人、いや2人分近付いてくる。
「やっぱり瑞希も居ましたか!」
「あっ、天麟! あれ……? その人誰?」
 ひとりはAnkerにして幼馴染の天麟だったが、もうひとりの方は知らない顔だ。瑞希達よりも年長で、気の強そうな印象のピンク髪の女性。『混沌の魔女』ククリこと夢羽だ。

「お〜これが天麟のお姫様か〜」
「ええ、可愛いでしょう?」
 耳元で夢羽が囁きかけると、天麟は口元を緩めつつ返事をする。日頃から溺愛している大切な人を紹介できて、すごく得意げだ。ようやく合流できたこともあって声が弾んでいる。
「も、もしかして天麟の知り合いなのかな?」
「おう! 完璧最強魔女のククリさんの参上だ!」
 首を傾げる瑞希に、夢羽も胸を張って自己紹介。もちろん名乗るのは本名ではなくハンドルネームのほうだ。できれば初対面の相手にはこっちの名前だけ覚えていてほしいのだが。

「少し違います、彼女は小鳥遊・夢羽さんです。強いのは事実です」
「言うなっていっただろ……」
 すぐさま天麟に訂正を入れられ、不満そうに唇を尖らせる夢羽。だが今回は目の前に敵が居るのでスルーしておく。ふざけてる場合じゃないのは彼女だって分かっているのだ。
(ちょっと変わっているな……)
 というのが瑞希から見た夢羽の第一印象だが、天麟が連れてきて「強い」と断言するなら実力は確かなのだろう。事実、すでに【OverEvol.・CHAOSWITCH】を発動している夢羽の体からは、目視できるほどの魔力が炎のように立ち上っている。

 ――ようこそ、私の世界へ

「あっ?! 危ない!」
 そんな三人の脳裏に眠る乙女が囁いたかと思えば、青薔薇から呪いの棘が放たれる。
 いち早くそれを察知した瑞希は、警告を発しながら霊力狙撃銃を発砲。音響弾で棘を吹き飛ばし、防ぎきれないぶんもエネルギーバリアで弾く。
「ほい」
 一方の夢羽は余裕の表情で「門の創造」を詠唱し、自分の目の前に空間を繋ぐ門を開く。彼女を狙った棘は全てその門に吸い込まれ、乙女が眠るベッドの後ろに開かれた「出口」から吐き出される。本体に呪いは効かないだろうが、まずは挨拶代わりだ。

「あーあ、憂鬱ですよ……全く」
 そして天麟はネガティブ・パラノイア態に変身して「シュリン・バレット」を発砲。
 超人的な視力と魔弾で棘を撃ち落とすと、やる気のなさそうな発言とは裏腹に、いの一番に敵に接近していく。
「よし、行くよ!」
 空中を飛ぶように駆ける幼馴染を追って、瑞希も【|霊力超解放《オーバー・ライド》】形態に変身。解き放たれた霊力で身体能力と跳躍力を引き上げ、驚くべきスピードで眠る乙女を強襲する。

 ――違う

 ふたりの接近を拒むように、青薔薇と茨が鳥籠のように寝台を囲う。いばら姫の童話の如く、眠る乙女は茨に守られているようでも囚われているようでもあり。どちらにせよ、無理にここを突破しようとする者は、眠りに誘う呪いの棘に刺される事になる。
「おらよ」
 が。そこでまた夢羽が呪文を唱え、門の創造を介して茨檻に「魔女の炎」を投げ込む。
 内側に直接炎をワープさせれば防ぎようもあるまい。√能力者にだけ視える幻炎が、青薔薇を焼き消していく。

「ほら、隙作ってやったぞ」
「ええ……ありがとうございます」
 こともなげに言ってから背中に翼を生やし、指先に炎を灯したまま飛び上がる夢羽に、天麟はお礼を言いつつ「パラノイア・ソード」を抜剣。ざわめき立つ青薔薇達をばっさりと撫で斬りにする。
「瑞希!」
「うん!」
 すかさず瑞希が霊力の手で青薔薇と棘に触れ、眠りに誘う呪いを無力化する。これで自分達が乙女の夢に心を囚われてしまう心配はない。邪魔者も排除すれば本体を叩くのみだ。

「これでどうだ! やあ!」
 そのまま瑞希は寝台に近づいて「星剣レイチェス・フラン」を振り下ろす。戦闘中もこんこんと眠り続ける乙女は、青薔薇の護衛を突破されれば無防備そのもの。可愛らしくも鋭い剣閃が血飛沫を散らす。
「じゃあ私のもくれてやるよ!」
 まだ息の根があると見れば、夢羽も空中から指銃を突きつける。超越した身体能力に無限に増大する魔力、それが人間から魔女になった彼女の力だ。一喝と共に撃ち出された魔弾は乙女の体を貫通し、寝台まで風穴を開けたうえ、周囲の青薔薇を吹き飛ばした。

「これが混沌の魔女の力なの……?」
 夢羽の戦いを初めて見る瑞希は、その凄まじい強さに驚嘆していた。世界は広く、あらゆる√にまだ見ぬ強者や想像もつかない実力者がひしめいている。そのことを改めて実感させられた気分だ。
「流石ですね夢羽さん」
 天麟のほうはすでに彼女の実力を知っていたため驚きはしない。敵がダメージを受けた隙を突いて、パラノイア・ソードでさらなる追撃を。切り裂かれた眠る乙女の体が、鮮血の紅に染まっていく。

(ああ、私……生きてて良かったかもな)
 若き√能力者とAnkerと怪異の戦いを上から眺めつつ、夢羽はふとそんな感慨に耽る。
 呪いを受け、魔女になってなお生き続けてきたが、たまには良い事もある。そんなことを考えたものの、今は戦闘中ゆえ、その思考はすぐに打ち切る。
「……貴女のその表情は初めて見ましたね」
 畏怖と共に語られし「混沌の魔女」とは思えない優しい顔を、天麟は見逃さなかった。
 そこに混沌の魔女になった理由でもあったのかなと思い、機会があれば訊ねる事もできるだろうかと考えながら、剣を納めてシュリン・バレットを構える。なんにせよ今はまず、この戦いを終わらせてからだ――響く銃声が、乙女に銃創を刻む。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

天霧・碧流
※アドリブ、連携歓迎。他の√能力者に迷惑がかかる行動は致しません。
フフ……やっと会えたな、お姫様。良い顔で眠ってやがる。美しいもんだ。
そんなアンタに子守唄でもプレゼントしよう。ちょっとした呪いもおまけだ。
【ディスコードスフィア】使用。天蓋とか茨で攻撃出来ると愉快だな。
その青い薔薇も狂奏の呪いを受けているならメスで斬るのも簡単かな?

なんだよ、俺じゃ夢に誘ってくれないのか?
じゃあ俺の夢に招待しようか。俺の夢は賑やかだぜ?茨で吊るされた人形たちがイカレたように踊り狂っている。薔薇はヒトの血を吸い真っ赤に染まる。
楽しいぜ?きっと気に入るさ。
目覚めたい?ダメだ。だってアンタはその顔が美しいから――

「フフ……やっと会えたな、お姫様。良い顔で眠ってやがる。美しいもんだ」
 誰もいない洋館で青薔薇に囲まれ、ひとりベッドに横たわる瀟洒な乙女。シチュエーションだけを見ればまさに眠り姫だ。危険な怪異とは思えないその姿を眺めて、碧流は口元を歪める。
「そんなアンタに子守唄でもプレゼントしよう。ちょっとした呪いもおまけだ」
 そう言って使用するのは【ディスコードスフィア】。混沌の響きによって狂奏の呪いをもたらし、敵に被害を与える√能力だ。子守唄と呼ぶには不安をかき立てる音色が寝室に満ちると、ベッドの天蓋に亀裂が走る。

 ――いやな音、貴方はいらない

 割れた天蓋の破片が『眠る乙女』に突き刺さると、彼女は碧流を敵と認識したらしく。
 眠りに誘うのではなく明確な殺意をもって、青薔薇が鞭のように襲い掛かってくる。
「なんだよ、俺じゃ夢に誘ってくれないのか?」
 棘だらけの茨をひょいと躱しざま、碧流は「朱華」のメスを振るう。この青薔薇も怪異の一部であり、乙女と一緒に狂奏の呪いを受けたのなら、回避率が低下しているはずだ。

「じゃあ俺の夢に招待しようか」
 あっけないほど簡単に青薔薇を切り刻んで、碧流は乙女が眠るベッドの傍へ。無防備な寝顔を見下ろしながら、眠りに誘う棘をわざと握りしめて、乙女と自分の呪いを混ぜ合わせる。
「俺の夢は賑やかだぜ?」
 ぽたぽたと手から血を流しながら、それでも彼は笑っている。有線ケーブルのように茨で繋がれた両者の精神は、理論上は行き来可能な状態。怪異の力に囚われない強い意志――あるいは狂気があれば、逆に怪異をこちら側に引き寄せる事だってできるだろう。

 ――ここはどこ?

 碧流の夢の世界では、茨で吊るされた人形がイカレたように踊り狂っている。薔薇はヒトの血を吸い真っ赤に染まり、それでも吸いきれなかった血で地面は赤い湖のよう。刺激臭と鉄錆の臭いが、やたらとリアルに鼻につく。
『楽しいぜ? きっと気に入るさ』
 夢はヒトの心象や記憶を反映するというが、であればこの光景を"悪夢"でさえないという碧流の精神性は、凡庸なヒトの心とはかけ離れている。であれば怪異なら順応できるのか、と言えばそうでもなく――。

 ――ここはいや。私の世界じゃない

「目覚めたい? ダメだ。だってアンタはその顔が美しいから――」
 人形のような乙女の寝顔をそっと撫でて、忘却の狂奏者は不気味なほど優しく微笑む。
 この顔のまま永遠の眠りにつけるなら、きっと素敵なことだろう――彼女を夢で歓迎するために、碧流は自らもまぶたを閉じ、深い眠りに落ちていった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

贄波・絶奈
へぇ、夢に誘おうってワケか。ずっと寝てられるってのは魅力的な気がしないでもないけど残念だけど今はそんな気分じゃないんだよね。てなワケで遠慮しとくよ。

搦手とかでジワジワこっちを弱らせるって魂胆なら、そんな作戦を先に潰せばいいだけの話。という事で眠りバトルしようか。眠りとは短い死に他ならず、死とは永遠の眠りに他ならぬ――キミの眠りと私の|眠り《死》どっちが強いか白黒付けよう。

なんか変な事される前に√能力を発動して私はさっさと死ぬよ。召喚した無敵獣なら他の人の壁代わりや援護にも丁度いいだろうからね。それじゃ、|おやすみ《さよなら》。次の目覚めで逢いましょう。なんてね

「へぇ、夢に誘おうってワケか。ずっと寝てられるってのは魅力的な気がしないでもないけど、残念だけど今はそんな気分じゃないんだよね」
 勤務態度は熱心とは言い難く、隙あらばサボりがちな絶奈。それでも、ここまで来ておいて仕事ほっぽりだして寝るほど無責任ではないらしい。他人の――それも怪異の夢に閉じ込められるのもちょっと、というのも理由にあったかもしれない。
「てなワケで遠慮しとくよ」
 甘い香り漂う寝室で、きっぱりと拒否の意志を示した絶奈のもとに、青薔薇の茨が蛇のように這い寄る。はいそうですかと諦めるか、あるいは帰らせてくれるほど、『眠る乙女』は素直じゃないらしい。

 ――貴方はもう、逃げられない

 青薔薇の棘は眠りに誘う呪いの証。すでに絶奈は間接的にその呪いを受けている。
 あとは物理的な攻撃も織り交ぜて、搦手などでジワジワこちらを弱らせる魂胆だろう。なら、そんな作戦は先に潰せばいいだけの話だ。
「という事で眠りバトルしようか」
 茨に絡み付かれる前に、絶奈は洋館内にいたインビジブルを自分の元に呼び寄せた。
 彼女はインビジブル受容体――D.E.P.A.S.と通称される特異体質者のひとり。その肉体は見えない怪物達への最上級の贄となる。

「眠りとは短い死に他ならず、死とは永遠の眠りに他ならぬ――キミの眠りと私の|眠り《死》、どっちが強いか白黒付けよう」
 上演するのは【『寂星夜』ーさよならアクアリウムー】。インビジブルの群れに自分を喰わせ、開幕宣言と共に絶命した絶奈と入れ替わりに、無敵獣「インビジブル・グリムリーパー」が召喚される。
『―――!!』
 贄を得て顕現した獣は贄の遺志に応え、眠る乙女に星屑のような弾丸を放つ。それは命を抉る感覚そのもの。夢よりも明晰な「死」を感じてか、乙女の寝顔が苦しげに歪む。

 ――貴方はいらない

 誘っていた獲物とは別物と判断したか、青薔薇の攻撃がインビジブル・グリムリーパーに殺到。されど無敵獣は無傷である。いかなる外的な干渉であっても、それを排除することはできない。

 ――いらない、どいて、邪魔よ

 動きは鈍いものの、無敵の体躯は他の仲間の壁代わりに攻撃を引き受けるにも最適。
 わざと相手のヘイトを買い、無数の茨に絡み付かれながらも、インビジブル・グリムリーパーは眠る乙女だけを標的に定め、死という眠りに彼女を誘う。

 ――ああ、こわれていく

 ――みんなが、去っていく

 ――私の、世界が

 攻撃を幾度身に受けただろう。√能力者達の脳裏に聞こえていた声が、ふいに止む。
 同時に、寝台を囲っていた青薔薇が花びらを散らし、しおれ、枯れていく。乙女の死と運命を共にするように。
『それじゃ、おやすみさよなら。次の目覚めで逢いましょう。なんてね』
 死して肉体を失い、自らもインビジブルとなった絶奈の声が聞こえる。お互いに√能力者である以上、彼女達にとって死はそれこそ「一時の眠り」に過ぎない。それでも、再び目覚めの時が訪れるまで、眠り病の怪異が人々を襲うことはなくなるだろう――。



 ――かくして、日本全国で密かに蔓延していた『眠り病』の感染は終息へと向かう。
 眠る乙女の撃破から程なく、夢から解放された患者達も、皆無事に目覚めたそうだ。
 怪異の呪いを祓った√能力者達の功績は、公に称えられることはないが。この働きが黄昏に向かいつつある人類を、またすこし延命させたのは確かだろう。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

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