シナリオ

過剰摂取

#√汎神解剖機関 #ノベル #大君主 #カフェー

タグの編集

作者のみ追加・削除できます(🔒️公式タグは不可)。

 #√汎神解剖機関
 #ノベル
 #大君主
 #カフェー

※あなたはタグを編集できません。


 正しい時間の流れを冒涜する者への罰について――女神様が最初に見つけた部分は『アキュートの殴り書き』の一部でしかない。章を紐解けたとしても全体の一割ほども把握できないと、そう思考をした方が宜しいだろう。妾を連れて行きたい場所があると汝、汝が謂ったのではないか? くねくねと、すっかりオマエに懐いてしまった女神様は文句とやらを垂らしていらっしゃる。いや……お前が勝手に付いてきただけなんだが……? 弔焼月・滅美の人らしいカタチこそ如何にも滑稽に思えて、シュールに思えてならないと女神様は嗤う。そんな態度を続けるってんなら、お前、俺はもう帰って寝るからな。フワフワと、モワモワと、ひとつオマエは欠伸をしてみせた。女神様の反応と謂ったら、嗚呼、可愛らしいものではないか。ぐるりと頭を、頸を回転させ『猟犬』のようにオマエを視る。汝……それは赦されない。それは、ダメなのだ。妾は汝がいなければ満足に食事をする事すらも出来ん。つまりは、女神様はオマエを『財布』と見做しているのだ。勿論、財布以外にも深淵的な、冒涜的な沙汰と呼ばれるものに浸されてはいるのだが。そうかよ。だったら、俺の知り合いがやってる店に行くとするか。いや、あれを知り合いと呼ぶのも、少々、難儀ではあるし、お前と一緒だと別の意味での災厄な目に遭うかもしれねぇが……。汝、それは如何いう意味だ。妾が災厄程度に侵されると、冒されると、本気で思っているのか……? 無意識が残酷を孕むと謂うのならば、女神様、黒い山羊よりも彼等らしいか。ああ……おい、あそこだ。√を挟むかのように、退廃と陰鬱を跨ぐかのように、情念を待ち受けているかのように――その建築物は存在していた。汝、そういう意味か。確かに妾は女神だが……肚を要とする怪異だが……あれは、向きが違うとしておこう。
 君ぃ……我輩は構わないのだが、他の従業員や客の事も考えてくれ給えよ。カフェー『unknown』のカウンター、ヤケに回転する椅子に腰かけたふたつ。これには流石の店長も頭を抱えたくなるほどか。我輩に頭は無いのだがねぇ。注文をしてくれ給えよ。君達はどうせ『奥』には用などないのだろう? 店長の対応は『接客』を仕事にしている者にとってマイナスを極めていたが、このくらいが丁度良いのかもしれない。店主よ、妾はここからここまで、全部だ。心配する必要はない。何せ隣の男が全部払ってくれるからの。……俺はエスプレッソをブラックで。ドカドカとカウンターに並べられていくケーキ類。その中には如何物が……脳髄のカタチをしたものが……混じってはいたが、女神様にとっては見慣れた馳走でしかない。最後に運ばれてきたのはたっぷりな紅茶と――狂ったようにドス黒い珈琲であった。で、我輩はあまり口出しする気はないからねぇ。ふたりで、いや、ふたつで、頭を痛めていると良いさ。提供を終えると店長は……人間災厄「黙示録」は奥の方へと引っ込んでいった。
 女神様の胃袋はブラックホールであった。山のように積まれていたケーキは一瞬で消え去り、欠片すらもぺろり、触手の先で舐ってのご馳走様。汝、のう、汝。そこまでして目覚めたいのは如何してなのか。汝の場合はその状態の儘の方が気楽で良いとは思うのだが。ごくりと、泥よりもドロドロとしたものを飲み干したオマエ。乾杯を謳い続けたところでひどい眠気は醒めやしない。むしろ、沈むかのように深まるばかり。俺は……俺は、起きていなくちゃいけない。眠くて眠くて、仕方がないのだが。俺は起きて『これ』の解読を進めなければならない。焦燥だろうか、執着だろうか、或いは本能だろうか。改めてカウンターに置いてやった『アキュートの殴り書き』。装丁を、皮膚を、嗅ぐように撫で、捲った。それで、汝、妾が手伝ってやったのだ。妾の想定だと半分くらいであれば……六割くらいであれば、解読できるようになっている筈だが……。ぼんやりと、重たい頭を傾げつつ――作業の再開と洒落込むと宜しい。支離滅裂な角は取れ、まるくまるく。
 最初の頁は目次ですらなかった。未知なる言語の……女神様曰く、アクロが如何たら……散文的なものから入っていたのだ。形式のない、ある種出鱈目さを愛しているこの頁、常人であればおそらく、目で追うだけでも眩暈を覚える類であろうか。それでも尚、我慢に我慢を重ねて、次へ次へと頁を捲ると――正しい時間の流れを冒涜する者への罰――が目に留まる。汝、数日前に謂った通りだ。この頁が、この一文が、この章が『最初の頁』だとしても間違いではない。女神様の『慧眼』は文字通りに『神』であった。其処からは二人で、二体で『時間』に関係していそうな言の葉を、ロゴスを探し当てていくだけ。お前……懐いても神なんだな。俺だけでは此処まで辿り着けなかったぜ。かなり頁が飛んで――別次元にあるとされる『螺旋の街』の現存について――螺旋? 妾、螺旋にはあまり良い思い出がなくてな。汝、こっから先は頼んでも? いや、螺旋に良い思い出がないってなんだよ……。別に俺は構わねぇけどさ……? 鈍角を怨む猟犬に似た住人……それらを束ねる大君主と呼ばれる存在……大君主の持つ"肉体に絡みつき、精神を汚染し、存在を改変する血液"について……。なあ、思ったよりもスイスイ解読できてるよな? 俺、魔導書を紐解く才能でも持ってたか……? 目を逸らしていた。何も、目にしないようにしていた。しかし、女神は自身の眼球を何故か制御出来ていなかった。汝……おかしいのだ。妾は、この記述について知っている。知ってはいるのだが、何故か、知らない事にされているのだ。はあ? 神様が正気を失うなんてのは勘弁してくれよ。ドクドク、女神の――クヴァリフの頭の中身が――傷んでいく。妾は……いや、大丈夫だ。汝、折角だから可能な限りを晒してしまおう。
 人類存続の危険性――血液の剥離、存在の修正は確実に不可能――べちゃべちゃ。女神様の触手が地面を殴った。それと同時に女神様の視線が『真っ暗』に集中する。汝……妾も、眠たくなってきたのだが。この眠気、封印時の妾よりも……強烈……。お前。こんなところで至ってるんじゃねえよ。俺も眠たくなってくる……。ぶおんと、無理やり頭の靄を振るい落とす。完全には落としきれないが――如何にか――表記とやらに辿り着く。
 オットー・Y・ソトト。
 怨みに唯一対抗できるのは彼である。
 オットー・Y・ソトト。
 怨みを裏返すのに必要なのは『鍵』である。
 オットー・Y・ソトト。
 振り向くといい、塩の柱こそが救済の証である。
 なんだこれ……最後の一文なんか、もう、狂人の戯言以外に感想が出てこないぜ。確かに狂人が記した『もの』なのだろう。故にこそオマエはこの魔導書の――アキュートの殴り書き――著者の貌というものが判るのだ。これは『窮極の門』の関係者が書いたものだ。それも、魔導書の『旧さ』から導き出すと『窮極の門』が創設されて間もない頃の『もの』とも解せる。いや……だからって、なんだ。どうして俺が『これ』を持っているのかは知らないが、内容を知ったとして、果たして俺に利益とやらがあったのか。
 利益ならあるさ、君ぃ。
 重要なのはどう活かしていくのかって事さ。
 ――塩には気を付けた方が良いぜ?
 会計は済ませた。
 眠気にやられた女神様を背負って、塔を登るかの如く。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

挿絵申請あり!

挿絵申請がありました! 承認/却下を選んでください。

挿絵イラスト