シナリオ

菜の花畑に血は溢れ

#√ドラゴンファンタジー #喰竜教団 #断章追加後、随時募集開始します #ドラゴンストーカー

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 #√ドラゴンファンタジー
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 √ドラゴンファンタジーの、とある農村。
 この田舎にも、春を告げる梅の花や、河津桜に似た早咲きの桜、そして菜の花が咲き乱れている。
「ばあちゃん、こんくらいで十分かー?」
 そんな満開の菜の花畑から、その手いっぱいに菜の花を抱えて、ひょこりと少年が顔を覗かせた。
「おー、よぉく取ったねぇ。助かるよぉ。」
 その顔に深い深い皺を刻んだ老婆が、少年の姿にくしゃりと笑顔を見せた。
 少年は籠の背負い籠の中に刈った菜の花を入れると、へへ、と得意げに鼻の頭をこすり、ゆらりと竜の尾を揺らした。
「ばあちゃんの菜の花料理は美味いからな!今晩の献立が楽しみだ!」
 そうかい、そうかい、と優しく頷く老婆に竜の尾も翼も存在しない。
 人間の老婆ミチルと、ドラゴンプロトコルの少年カイ。
 2人は、血の繋がりこそないが、実の家族の様に暮らしていた。

「ああ、ああ!菜の花とドラゴンプロトコル様!なんと絵になる光景でしょう!」
 その牧歌的な日常を壊す闖入者が現れたのは、なんたる不幸だろうか。
 その闖入者、青い奇人の名を喰竜教団教祖『ドラゴンストーカ―』という。
「しかし人間如きに使役されるとは、遺憾!誠に遺憾!このような事が許されていいものでしょうか!
 そこな不届き者は疾く疾く頸を刎ね今までのあなた様への無礼をその汚らわしい血で贖わせ!
 そして我ら喰竜教団があなた様を殺すことでその軛から解き放ち、共に|真竜《トゥルードラゴン》に至りましょう!」
「カイ、狙いはあんただぁ!ばあちゃんが食い止めっから、逃げるんだよぉ!」
 『喰竜教団』。その名に聞き覚えのあったミチルは、即座に「肉体簒奪事件」に思い至った。
 カイを庇う様に立つが、振り翳された大剣、それを老婆が鎌一本で受け止められる筈もない。
「人間如きが私の邪魔をするな。此方は腕の具合も聊か悪いのだ。手間をかけさせるな。さっさと去ね。」
「ばあちゃん!!!!」
 剣風に揺れる菜の花たち。黄色い花畑を二人分の鮮やかな血飛沫が濡らした。


「みんな、来てくれて|ありがっさま《ありがとう》!
 うちのビオトープでもフキノトウが沢山顔を出して、天ぷらを楽しめるようになったよ。よかったら、みんなも食べりん。」
 星詠みである作務衣姿の少年、|玖老勢・冬瑪《くろぜ・とうま》は自身のビオトープで採れたらしいフキノトウの天ぷらを集まった√能力者たちに勧めた。
 きつね色の衣に包まれたほくほくの天ぷらは、微かな苦みと、春の美味さを感じさせることだろう。
「さて、食べながらでもいいから聞いてね。また喰竜教団による『肉体簒奪事件』だ。」
 ――「肉体簒奪事件」。
 それは「か弱き姿に堕とされたドラゴンプロトコルを殺し、その遺骸を自身の肉体に移植することで、いつか『強き竜の力と姿』を取り戻させる」。
 そんな狂い切った主張をを教義とする、「喰竜教団」によって引き起こされるドラゴンプロトコル殺人事件の総称だ。
 今回の予知では、菜の花を摘んでいたドラゴンプロトコルの少年と、彼を守ろうとした老婆に魔手が伸びたというのである。

「幸い、今回は襲撃まで時間があるでのん。|おばあさん《おばあ》の手伝いをしたり、花見を楽しむくらいの時間はあると思うよ。
 ドラゴンプロトコルの少年と遊んだりもできるかもしれん。」
 老婆や少年と仲良くなっておけば、この後の襲撃に対して、指示を聞いて貰いやすくなるだろう、と作務衣の少年は言う。
 そして、交流が終わったころに、カイを殺すべく、農作物のモンスターが現れる。
 と、ここで冬瑪が何とも言えぬ表情を浮かべた。
「フキノトウとか、ヨモギとか、ツクシとか。どれも美味そうだったでのん……」
 勿論、食べても良いが、モンスター化しているため、かなりのサイズとなっている。
 料理できる時間があるかは……わからない。
 そして、食い気に負けて、カイを護る事を忘れないで欲しい。
 モンスターたちを撃退したら、『ドラゴンストーカ―』が出てくるで、これをきっちり叩きのめせば、本件は完了だ。

「梅に蝋梅、河津桜。もう春は目の前だねぇ。
 春の訪れを楽しみ、事件を無事に片付けて、戻っておいでん。」
 かちり、かちり。√能力者たちの背中を。
 無事の帰還を祈念した、『おとこみこ』の切り火が送り出した。

マスターより

多馬
 皆さまこんにちは、或いは初めまして。多馬でございます。
 今回も時事ネタのお話です。

●第1章
 皆様にはダンジョンにある菜の花畑に赴いて頂きます。
 人間の老婆のミチルと、ドラゴンプロトコルの少年カイが2人で菜の花畑で菜の花を摘んでいますので、それを手伝ったり、のんびり早春の花を眺めるのも良いかもしれません。
 ミチルは既に「肉体簒奪事件」の事を聞き及んでおり、一言二言で納得してくれるでしょう。

●第2章
 教団に使役される、モンスターの群れです。
 フキノトウやら、ヨモギやら、少し気の早いツクシやら、早春の野草です。
 天ぷらやよもぎ餅、卵とじにしたら美味しいかもしれませんが、鍋に入れるには大きすぎるでしょう。

●第3章
 喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』と対峙することになります。
 彼女を倒すことで、シナリオクリアとなります。

●進行・プレイング受付について。
 断章執筆したら、募集・執筆開始の予定です。
 採用は先着順ではなく、内容によってはまとめて執筆させて頂きますので、ご承知おきください。

 以上です。
 皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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第1章 日常 『花溢れる園』


POW 美しい花を愛でながら
SPD 漂う芳香に漂うように
WIZ 花びらの色に思いを寄せて
√ドラゴンファンタジー 普通5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 ――黄色い菜の花たちが、初春の柔らかなそよ風にさわさわと揺れる。
 風に乗り、白い梅や、蜜色の蝋梅の香りが微かに漂い、深呼吸するのも快い陽気。

 そんな小春日和の中、背負籠に軍手と鎌を入れた老婆が畦道を歩き。
 その傍らには竜の尾をふりふり、共に小さな籠を背負って歩く、少年の姿。
「カイや。ばあちゃんが仕事しとる間は、あんまり遠くに行ったらいかんよぉ。
 最近は物騒な事件も聞くからねぇ。」
「目の届かないほどに、遠くには行かないよ。
 ばあちゃん一人に仕事させるわけにはいかないからな!」
 『そうかい、そうかい』と、皺だらけの顔をくしゃっと、更に皺だらけにして、老婆が笑う。
「そんじゃあ、たくさん仕事したら、カイの好きな料理をこさえてあげようかねぇ。
 ……おんやぁ?他所からのひとは、珍しいねぇ。」
 田舎ゆえに、他所からの人間は珍しい。老婆は遠くの人影に目を凝らす。
 剣呑な雰囲気は感じないが、老眼では目を凝らしても、どうにも姿が判然としない。
「ばあちゃん、俺が見てくるよ!大丈夫、危なさそうなら、すぐ戻ってくるから!」
 老婆、ミチルが止める間もなく。
 カイが足取りも軽く、人影……√能力者に向かって走り出す。
 そして、人懐こい笑顔を浮かべ、元気よく声を張り上げた。

 ――こーんにーちはー!みんなー、どっから来たんだー!?
マスティマ・トランクィロ
こんにちは
何処から…?そうだね、少し、遠い国から
この土地の春は美しいね
花の香の風と、暖かな陽射しが心地よくて、散歩が捗る

ところで、この花を摘むの?
もし良かったら手伝わせてくれないかな
鎌の扱いは君みたいに上手くは出来ないかもしれないけれどね
それにしても瑞々しくて美味しそうな菜の花
ホタルイカとパスタにしたら絶品に違いない…あ、お浸しも良いね…

暫く喋ったり作業をしたりしてから、一休みする時にでも本題を切り出そう
お婆様、肉体簒奪事件のことは知っている?
怖がらせるようで悪いけれど、カイが狙われているんだ
大丈夫、何とかする為に僕たちがここに居るからね
ところでカイ、山菜は好き?
そう…尚更頑張らなくては
クラウス・イーザリー
「こんにちは。俺はクラウス。ちょっと遠い国から君達を守るために来たんだ」
唐突すぎるかなとは思うけど、彼くらい素直な子なら真っ直ぐ伝えた方が伝わりやすい気がする

信用して貰えたらミチルさんにも挨拶して、良ければ菜の花摘みを手伝いましょうかと申し出る
襲撃までの間、何もしないで見ているというのも気が引けるしね

「食用なんだ……」
√ウォーゾーンで合成食品ばかり食べている身としては、まずこの花が食べられるということに驚く
どんな味がするのかちょっと気になるな

快適な温度に花の香り、穏やかな風
目の前で仲良く過ごす少年とおばあちゃん
平和で尊い光景を壊されないように守るんだ、と強く思うよ

※アドリブ絡み歓迎です
深見・音夢
まだまだ寒いと思ってたんすけど、この辺りはすっかり春景色っすねぇ。
こんなのどかな風景を血染めにしようとか考えるやつの気が知れないっす。

得物が物騒なのと顔が怖い自覚はあるんである程度距離をとりつつ友好的に。
例の物騒な連中……喰竜教団が近くで目撃されたから警戒してるって一応説明しておくっすよ。
……まぁ、怪人のボクも一般人からみたら十分物騒かもっすけど、そこは言わずにおくっす。

特に何をするでもなくのんびりぼんやりするのもたまには悪くないっすね。
それに、小春日和の景色に元気に働く少年の組み合わせ……良い、実に良いっす。
不審者扱いされない程度の距離から温かく見守る、これもまた推し活っすよ。
十・十
こんにちはーでごぜーますよー
お花の匂いにさそわれてゆらぁりゆらぁりときたでごぜーますなー
みたいな感じで答えるでごぜーますなー
それから、お手伝いしながらおしゃべりするでごぜーますかな
菜の花は何に使ってるのとか、最近料理を覚え始めて、菜の花も料理に仕えるでごぜーますよ、とかそんなおしゃべりでごぜーます
時間があれば菜の花でブレスレットを作るでごぜーますよー
いるでごぜーます?それとも一緒に作るでごぜーます?
連携・アドリブ等歓迎でごぜーますよー
十二宮・乙女
アドリブ・連携可

菜の花の花言葉は色々とあるけれど
その中でも「小さな幸せ」は血の繋がりが無くても家族のような
お2人の関係にぴったりだと思います

「おばあさん、よろしければ私にもお手伝いさせてくれませんか?」
まずはお2人に自己紹介と「肉体簒奪事件」の為に来たと説明してから
おばあさんのお手伝いをします

「素敵な菜の花畑ですね」
菜の花を摘みながら周りの景色を眺めたり
カイくんやおばあさんとお話ししてみたいです
そうですね
カイくんが絶賛するおばあさんの菜の花料理を聞いてみたいです

「んー、うちもそろそろ春の花を揃えようかな?」
これでも実家の花屋の看板娘ですので市場チェックを…なんて思ったり
あっ、警戒は怠りませんよ

 ――こーんにーちはー!!
 ドラゴンプロトコルの少年の元気な声が、春の爽風に乗って√能力者たちの元へと届く。
 一行は、そんな彼に応える様に、或いは警戒心を和らげるように。各々、その手を振り返す。
 そんな仕草に、ドラゴンプロトコルの少年カイは早くも警戒心を緩めたらしく、とことこと駆け寄ってきた。
 √能力者の服装は統一されておらず、それもまたカイの興味を引いたのだろう。
 物珍し気に瞳を輝かせ、『どこから来たのか』と改めて問うてくる。
「こんにちは。何処から…?そうだね、少し、遠い国から。」
「こんにちは。俺はクラウス、ちょっと遠い国から君達を守るために来たんだ。」
 『少し遠い国』。図らずも近しい、カイとのファーストコンタクトになった青年2人。
 思わず顔を見合わせ、微笑み合う。
 ウェーブの掛かった豊かな金の髪。そして外套代わりに羽織った、天竺牡丹と白百合の刺繍を施された振袖を風に揺らすのは、マスティマ・トランクィロ(万有礼讃・h00048)。
 そして、黒のポニーテールにギャバジンのトレンチコートを纏った青年が、クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)だ。
 どうも、この二人が此処に居合わせたのは偶然だったようだが、元より交友はあったようで。
 今、クラウスが身に纏っているアイヴォリーの上着は、マスティマが見立てた品である。

「こんにちはーでごぜーますよー。
 お花の匂いにさそわれて、ゆらぁりゆらぁりときたでごぜーますなー。」
 そして、口調も足取りも柔らかく、ゆらゆら、ふわふわ。
 詰襟の学生服を纏った|十・十《くのつぎ・もげき》(学校の怪談のなりそこない・h03158)は、この一行の中では唯一、本来は肉体を持たざる存在である。
 その表情や立ち居振る舞いからは、とても想像もつかないが。
 生前に悲劇的な末路を纏った結果、『幽霊』の√能力者として覚醒したのが彼だ。
 しかし、そんな来歴を知る由もないカイは、年の頃が近く見える十に対して、友達になれそうかと尻尾を振って歓迎の意を示している。

 そんな少年たちの様子を暖かな眼差しで、しかし少し離れたところから見守っているのが|深見・音夢《ふかみ・ねむ》(星灯りに手が届かなくても・h00525)。
「まだまだ寒いと思ってたんすけど、この辺りはすっかり春景色っすねぇ。
 こんなのどかな風景を血染めにしようとか考えるやつの気が知れないっす。」
 と、独り言ちる彼女だが。なぜ、積極的には話の輪に加わらないのか。
 それは、音夢の自己肯定感の低さにあるのだろう。
 ――……まぁ、怪人のボクも、一般人からみたら十分物騒かもっすけど。
 |鮫《フカ》をベースにした怪人である彼女は、己の容姿に強いコンプレックスを抱いている。
 少年を怖がらせてはいけない。そう配慮しての行動であった。
 とはいえ、普段は念入りに偽装しているので、然程心配はいらないはずではあるのだが……。
 それでもなお、『顔が怖い自覚はあるんで』と距離を置いてしまうあたり、容姿への自信の無さは根深いようだ。
 無論、そんな推し活女子の左肩にくっついているぬいぐるみを、十と話しているカイはしっかりと見付けており。
 後で話しかけるネタを考えている程度には、音夢の懸念は杞憂ではあるのだが。

「んー、うちもそろそろ春の花を揃えようかな?」
 春風に清楚な印象を与えるスカートの裾を揺らし。
 菜の花畑をはじめとする、春の山野草を観察しているのは、|十二宮・乙女《じゅうにみや・おとめ》(泡沫の娘・h00494)。
「お姉さんは花が好きなのか?ここいらじゃ、菜の花も梅の花も、沢山見かける花だよ。」
 そんな様子に興味を持ったのだろうか、駆け寄ってきたカイが、おらが村の風景を得意げに語ると、乙女も柔らかく笑みを返す。
「ふふ。ええ、花は大好きですよ。これでも実家の花屋の看板娘ですので。」
「そうか、花屋さんなんだ。もうすぐ、このあたりでもショウジョウバカマとか、ハルリンドウが咲くから、もっと賑やかになるんだ!」
 ふむ、と。市場チェックの傍ら、頭の中のメモ帳に野草や花器の情報を仕入れていく彼女は、さすがプロである。

「この土地の春は美しいね。花の香の風と、暖かな陽射しが心地よくて、散歩が捗る。」
 マスティマの言葉に、『だろ?』と得意げに竜の尾を揺らすカイを伴って畦道を歩き。
 そんな様子をはらはらと、心配そうに眺めていたミチルだが。
 完全に懐いている様子のドラゴンプロトコルの少年の様子を見て、安心したのだろうか。くしゃりと、皺だらけの顔に更に笑顔の皺が刻まれた。
「よく来たねぇ。カイと遊んでくれて、ありがとねぇ。」
 各々がミチルに自己紹介する中、十がカイの袖をちょいちょい、と引っ張った。
「この菜の花、何に使うでごぜーますかー?」
 さわり、さわさわ。風に揺れる菜の花たちを、ぶかぶかの袖で指し示す。
「おひたしにしたり、あえ物にしたりが多いかな?花期が来てるから、食べる旬は今辺りが最後かも!」
「僕も最近料理を覚え始めたところでごぜーましてなー。
 菜の花摘みをお手伝いするでごぜーますから、料理の話を聞かせて欲しいでごぜーますよー。」
 『任せろ』と元気よく畑に駆け出すカイについて行きながら。
『これで、ミチルおばあさんにも事件の事を切り出しやすくなるでごぜーますかー?』
 とでも言うように。十は残る√能力者たちにウィンクをひとつ。
 そのアシストに、マスティマもウィンクを返し。早速に本題を切り出した。
「お婆様、肉体簒奪事件のことは知っている?」
 金の青年が口にした単語に、老婆の空気がぴりり、緊張を孕む。
「勿論だよぉ。おっそろしい事件が起きとるから、カイが巻き込まれんか、心配しとったんだぁ。」
「その、例の物騒な連中……喰竜教団が近くで目撃されたから、ボクたちも警戒してここにきたっす。」
 マフラーで口元を隠しながら、音夢が荒事になる可能性を示すように、得物の入ったケースを担ぎ直した。
 ミチルも一般人とはいえ、冒険者を数多輩出してる√ドラゴンファンタジーの住民。
 武器は見慣れているが。しかし、それよりも心配なのは。
「そして、更に怖がらせるようで悪いけれど。カイが狙われているんだ。」
「……そうかぁ。こんな田舎には来んと思っとったけど、おっそろしい話だぁ。」
 老婆は重苦しく頷き、いつの間にやら十とともに菜の花でブレスレットを作って遊び始めているカイを見遣る。
「見てくれでわかると思うけんど、私とあの子には、血の繋がりはないんだぁ。
 それでも、実の孫みたいに思っとる。でも、事件に巻き込まれたら、私にあの子を守る力は、ないからねぇ。」
「大丈夫、何とかする為に僕たちがここに居るからね。」
 マスティマが跪き、老婆と同じ視線の高さに立ち。安心させるように語りかける。
 予知の中でも、気丈にもカイの前に出て、ドラゴンストーカ―の前に立ちはだかり。
 その身を守らんとしたミチルではあったが。
 事件に至るまで。そして、白刃の元に命を散らせるまでの心細さは、如何程であっただろうか。
「あんたたちは、あの子を守ってくれるというのかぁ?」
 老婆が絞り出した声に、勿論ですよ、と頷いたのは乙女。
「菜の花の花言葉は色々とあるけれど。その中でも「小さな幸せ」は、血の繋がりが無くても家族のようなお2人の関係にぴったりだと思います。
 おばあさん、よろしければ私にも彼を守るお手伝いさせてくれませんか?」
 その力強い言葉に、ミチルは眦に涙を浮かべ。
 ここにはいない十を除く、√能力者たち一人一人の手を取り、礼を言いながら。
 カイの身の安全を託すのだった。

 こうして、喰竜教団からカイの身を護る為に、ミチルを交えて方針の相談をすることと相成った。
「唐突すぎるかなとは思うけど、彼くらい素直な子なら真っ直ぐ伝えた方が伝わりやすい気がする。」
 このクラウスの提案に、少年の気質を予てより知り、或いはこの交流の間で把握した皆が頷き。早速、十と遊んでいたカイを呼び寄せた。
 説明を聞いた少年は、√能力者たちや、母親代わりの老婆の懸念を余所に、ポカンとした表情を浮かべて。
「でも、お兄さん、お姉さんたちが守ってくれるんだろ?なら、俺もばあちゃんも、安心だ!」
 そう言って、あっけらかんと笑って見せた。一見、拍子抜けするほどに能天気なようにも見えるが。
 それも、ミチルに余計な心配を掛けたくないからこその振る舞いであったのだろう。
 その手が強く握り込まれたのを、クラウスは確かに見た。

 ――襲撃までの間、何もしないで見ているというのも気が引けるしね。
 そう言って、クラウスたちはミチルたちの農作業の手伝いを申し出た。
 勿論、老婆と少年にとっては願ったりかなったりである。二つ返事で快諾した。
「それにしても、素敵な菜の花畑ですね。」
 乙女が額の汗を拭いながら、率直な感想を述べた。その手には、幾本かの蕾のままの菜の花が握られている。
 花屋の看板娘というだけであって、植物の扱いには目を見張るものがある。
 根元から刈り取ってほしい、という指示に対し、素早く対応して見せた。
 そして、それとは対照的に。クラウスの手付きは少々、ぎこちない。
 銃の他に、刃物の扱いにも卓越した技能を持つ彼ではあるのだが。農作業となると、少し勝手が違うようだ。
「食用なんだ……。」
 思わず零れた言葉は、彼が√ウォーゾーンの出身であることに由来する。
 合成食品ばかり食べている身としては、見渡す限り……とまではいかない、小さな畑ではあるが。この花が食べられるということに、驚くばかり。
「それにしても、瑞々しくて美味しそうな菜の花。
 ホタルイカとパスタにしたら絶品に違いない……。あ、お浸しも良いね……。」
「そうですね。カイくんが絶賛する、おばあさんの菜の花料理を聞いてみたいです。」
 マスティマと乙女の言葉に、『そんな大したもんじゃぁないよぉ。』と、老婆は皺だらけの顔で照れくさそうに笑うが。
「どんな味がするのか、ちょっと気になるな……。」
 と、ぽつりとクラウスが口にすれば。
「あんれまぁ、お兄ちゃんは食べたことがないのかぁ。
 そんなら今晩は、ばあちゃんが、たんと腕を振るわんといけないねぇ。」
 √能力者たちの腕を見込み、安心した老婆が袖をまくる様な仕草を見せた。

「特に何をするでもなく、のんびりぼんやりするのもたまには悪くないっすね。」
 皆が思い思いに菜の花や少年、老婆と触れ合う中。
 音夢はマスティマから預かった振袖をケースの上に乗せ。
 畔の斜面に寝そべり、程よい日差しと柔らかな風を堪能していた。
「金髪の兄ちゃん、こんな感じでサクサクやってくんだ!」
「うーん、流石に上手だ。僕では、君に鎌の扱いでは敵わないな。尚更頑張らなくては。」
 眼下には、十とお揃いの菜の花のブレスレットを付けて。
 フリルで飾ったシャツ一枚の姿となったマスティマたちと、楽しそうに、そして手慣れた手つきで菜の花を根元から刈る少年の姿。
「小春日和の景色に元気に働く少年の組み合わせ……良い、実に良いっす。」
 ――不審者扱いされない程度の距離から温かく見守る、これもまた推し活っすよ。
 水底で寝む、鮫の様に。細やかながら輝かしい光景に、少し眩しそうに目を細めて。
 少し臆病で、心優しい怪人は微睡みに耐えながら、ふわりと欠伸を一つ。

 血腥い予知など嘘のように、菜の花たちが風に揺れている。
 ――いっそ、あの星詠みの予知が外れてくれていたなら。
 誰かはそう思い、願ったかもしれない。
 しかし。そんな、穏やかな空気を踏み壊す様に。
 何とも言えぬ珍妙な足音たちが、菜の花畑に迫っていた。
「どうやら、団体様のご到着でごぜーますなー。」
「おばあさん、カイくん。私たちから離れないでくださいね。」
「推しの尊みを十分に補給したっすからね!幾らでも守ってみせるっすよ!」
 十の柔らかくも、警戒を孕んだ声と共に。
 警戒を怠らなかった乙女や音夢、√能力者たちが各々の得物を携えて。
 老婆とドラゴンプロトコルの少年を守る様に、前に立つ。
 快適な温度に花の香り、穏やかな風。
 目の前で仲良く過ごす少年とおばあちゃんの姿を見てきたクラウスは、間もなく訪れるであろう敵に備えて、決意を固めた。
 ――平和で尊い光景を壊されないように、守るんだ。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 集団戦 『モンスター化農作物』


POW 我らに隷属するがいい!
【美味しい農作物 】を放ち、半径レベルm内の自分含む全員の【洗脳】に対する抵抗力を10分の1にする。
SPD お前たちの協力があればもっと美味しくなれるのだ!
【美味しい農作物 】を放ち、半径レベルm内の自分含む全員の【洗脳】に対する抵抗力を10分の1にする。
WIZ すくすく育つ
自身の【穀物類 】がA、【野菜類】がB、【果物類】がC増加し、それぞれ捕食力、貫通力、蹂躙力が増加する。ABCの合計は自分のレベルに等しい。
√ドラゴンファンタジー 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「ドラゴンプロトコルの、菜の花の虐殺現場は、ここかー。」
「よくも、我ら春野菜の仲間をー。」
 √能力者たちの前に現れたのは。何とも人聞きの悪い事を口にする、|怪生物《モンスター》たち。
 その見た目は、巨大なフキノトウに、ヨモギに、ツクシなどの様々な可食性の山野草や、春野菜。
 これこそが、教団の使役するというモンスターであろう。
 見た目こそ、少し美味そうに見えなくも……いや、珍妙ではあるが。
 その眼に宿る、少年と老婆への害意は疑いようがない。
「ドラゴンプロトコルを殺せばー。」
「我らに素晴らしい土壌を用意してくれると、あのお方は約束してくださったー。」
 『殺す』。確かに、モンスターたちはそう口にした。
 その事実に、人間の老婆ミチルとドラゴンプロトコルの少年カイは身を竦ませながら。お互いを守り庇う様に抱き合う。
「邪魔をするなら、お前たちも我らの肥やしにしてくれるー。」
 彼らを守りながら、この|春野菜に山野草《モンスター》たちを疾く料理して。
 本命であるドラゴンストーカ―に備えねばなるまい!
深見・音夢
緊張感無い外見に反して言うことは物騒っすねぇ……
あ。正直に言うとボク野菜とか果物より肉食系っすから。
どうせ食い物で釣るならカツオのたたきかお高い蟹とか海老とか持ってくるべきだったすね。
旬のもの自体は悪くないっすけど、押し売りはNGっすよ!

派手に吹っ飛ばす方が楽といえば楽っすけど、菜の花畑を台無しにするのは厳禁っすよね。
ならここで使うべきはピンポイントに狙える弾。
もちろんちゃんと用意してあるっすよ。こういう時に手札が多いのも銃使いの強みっすから。
【三点式連装弾】で足止めからの本命を叩きこむっす!

ところでこれ、粘着弾付いたところを除いたら食べられ……るんすかね。まぁ食べたい人がいたら譲る方向で。

 ――ドラゴンプロトコルを殺せー。
 ――畑の畝を血で満たせー。
「緊張感無い外見に反して、言うことは物騒っすねぇ……。」
 現れたモンスターたちは、春感溢れる見た目に反し。
 ドラゴンプロトコルの少年カイへの殺意を隠さず口にして、憚らない。
 |深見・音夢《ふかみ・ねむ》(星灯りに手が届かなくても・h00525)は、そのギャップに閉口しつつも。『推し』と定めたカイと、その拠り所であるミチルを守るため。
「ちゃんと、ボクの後ろに隠れてるっすよ。ボクたちが、必ず守るっすからね。」
 不器用ながらも、鮫の様なギザ歯を見せて、勇気づける様に力強く笑って見せてから。
 彼女は【試製型魔銃【宵星】】の銃口を怪物たちに向けた。

 ――派手に吹っ飛ばす方が楽といえば楽っすけど。菜の花畑を台無しにするのは厳禁っすよね。
 畑は老婆たちの生きる寄る辺だ。それをあまり傷つけぬとようにと、音夢は素早く判断を下す。
 やはり、勝った上で、『推し』には最大限輝いて欲しいという配慮であろうか。
 素早い弾道計算から放たれた素早い狙撃が、戦闘のフキノトウの顔面に風穴を開ける。
「フキノトウー。こんな虫食いの様に穴を開けるなんて、なんてひどいことをー。」
「まずはお前から畑の肥料にしてやるー。我ら春の山野草の美味さを知って、隷属するがいいー。」
 |春の山野草《モンスター》たちは、物言わない亡骸となったフキノトウの姿に嘆き、狼狽し。
 仇討ちとばかりに、それはそれは美味しいだろう土筆やヨモギなどをぽいぽいと音夢に向かって投げ放つ。
 この山菜たちの√能力は、半径レベルm内の自分含む全員の【洗脳】に対する抵抗力を10分の1にするという効果を持つ。
 我らが美味さを知れば、隷属せずにはいられまい。とでも言うように、得意げに腕を組むモンスターたち。が、しかし。
「あ。正直に言うとボク野菜とか果物より肉食系っすから。」
「なんだとー。肉ばっかりじゃ体を壊すぞー。バランスの良い食事、野菜も山菜も食えー。」
 あっさりと食べる事を拒否した音夢に、思わずモンスターたちが心配の声を発した。
 そもそも、彼女は鮫をベースとした怪人である。スイカを愛するクロダイの様な悪食でなし、野菜を食べずとも、怪人の身体を維持することは容易いのだろう。
「どうせ食い物で釣るならカツオのたたきか、お高い蟹とか海老とか持ってくるべきだったすね。」
 更に注文を加えられれば、ツクシたちが憤慨するのもやむ無しだろう。
「山菜に、海に行けというかー。食わず嫌いには、食わせてこの美味さをおしえてやるー。」
 音夢の口に里山の恵みでも押し込もうというのであろうか。何とも言えぬ珍妙な足音を響かせながら迫る山菜たち。
 そもそも、春の山菜は生で食べるにはえぐみが強い。フキノトウの場合はピロリジジンアルカロイドなどの天然毒素を持つ。
 それ故に、その毒素やえぐみを抜く、アク抜きをするという習慣があるのだ。
 そんなものを生で食べさせられた日には、それはもう口の中が大変なことになるだろう。
「旬のもの自体は悪くないっすけど、押し売りはNGっすよ!」
 ――ちきり、と。
 音夢は【特殊兵装用弾薬ポーチ】から、手早く切り札の装弾を済ませ、魔銃の照星を敵の先頭に合わせる。
「もちろんちゃんと用意してあるっすよ。通常弾の他に、ピンポイントに狙える弾。」
 ――【|三点式連装弾《トリコロール・バレット》】、一番!
 ギザ歯を見せると共に響く銃声と、先頭のモンスターを中心に爆ぜる眩い光球。
「なんだ、この光はー。」
 音夢を山菜の虜にせんと、目を見開いていたモンスターたちは、その閃光弾を直視する羽目になり。思わずその場に蹲る。
 ――二番!
 蹲り、足を止めたモンスターたちに降りかかる、赤い粘着弾。
 べとりと地面に縫い付けられ、最早モンスターたちは身動ぎすらままならず。
 排莢と共に、本命たる三番と名付けられた弾の装填が完了する。
「こういう時に、手札が多いのも銃使いの強みっすから。
 本命の、三番!きっちり受け取ってもらうっす!」
 ――ドゥン!!
 砲音の如き、腹の底に響く銃声と共に。放たれた青の対物貫通弾が、山菜たちを巻き込みながら一直線に飛翔し。
 怪物たるその身を、肥料くらいには使えそうなモノ言わぬ野菜くずに変えるのだった。

「ところでこれ、粘着弾付いたところを除いたら食べられ……るんすかね。」
 ふと、モンスターたちの亡骸を前に、そんなことを呟く音夢だったが。
「ねえちゃん!かっこいいぞー!!」
 竜尾を揺らし、一生懸命に声援を送る|推し《カイ》の姿を見て、彼女は思わず『くっしっし』と、照れ笑いを浮かべ。
 食べられるかどうか、などという細やかな疑問は。春風と共に、すっかり消えていたのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

十・十
霊体が肥やしになるわけがないでごぜーますなー
逆に食べてやるでごぜーますなー

『見えないオトモダチ』を呼び出して【怒涛ノ小動物】を起動
300体の小動物の幽霊を実体化して、全員で食べにかかるでごぜーますよ
飢えて死んだ小動物たちの食欲をくらうがよいでごぜーます
ボクは食べれないから「動物と話す」ことでみんなに指示をしながら念のためミチルとカイから離れないようにしておくでごぜーますなー
・・・ところであの野菜たちは食材にできるのでごぜーますかね?
まー、ボクにはせいぜい野菜スープを作ることぐらいしかできそうにないでごぜーますが
連携アドリブ等歓迎でごぜーますよ

 ――よくも、よくも仲間たちを―。
 ――必ず仇を討って、墓前にニンゲン製の肥料を供えてやるからなー。
「霊体が肥やしになるわけがないでごぜーますなー。」
 ゆらゆら、ふわふわ。『幽霊』の身が、ドラゴンプロトコルの少年カイと人間の老婆ミチルを守る様に。
 そして|山菜《モンスター》たちを揶揄う様に、宙を漂う。
 |十・十《くのつぎ・もげき》(学校の怪談のなりそこない・h03158)は、その『幽霊』として√能力者に覚醒した来歴故に。
 迫り来る『食べ物』たちを前に、餓えて命を落とした彼は何を思ったであろうか。

「ボクは食べれねーでございますからなー。代わりにいくでごぜーますよみんなー!」

 虚空を掬う様に、ぶかぶかの袖を下から持ち上げれば。
 ――わらわら。わらわらわら。
 地面から湧き出す様に現れる、小動物たち。その数、300匹を数えるだろうか。
 それらは全て、彼らを『見えないオトモダチ』と呼ぶ十にしか普段は見えぬ、姿なき|幽霊《もの》。
 それが十の√能力により、実体を得たのである。
「みんな、おなかが空いてるでごぜーますからなー。
 ――逆に食べてやれ、でごぜーますなー。」 
 その餓えに餓えた600の瞳が、山菜たちの姿を一斉に捉え。進軍を開始した。

 ――【怒涛ノ小動物】
 これは指定地点から一定範囲内を、【実体化した小動物の幽霊】で300回攻撃するという√能力である。
 たとえその身は小さくとも、300匹もの実体化した小動物の幽霊という、圧倒的な数の暴力。
 それらに一斉に齧られたら、どうなるであろうか。
 特に、ネズミやウサギは。山菜であろうと、遠慮なく喰らうであろう。
 緊張感のない見た目の|山菜《モンスター》たちも、その身に沁みついた天敵たちの気配に。
 ――あ、ああ。ネズミ……ウサギもいるぞー……ああああ、わぁぁぁぁ……
 狼狽し、すくすくと育ち山菜類を増やすことで目を晦まそうとしたり。
 或いは怯えて、じりり、じりりと後退していく。
 しかし、それよりも。餓えた獣たちの|本能《しょくよく》の方が、速い。

「飢えて死んだ小動物たちの食欲をくらうがよいでごぜーます。」

 そこに普段の十の、可愛らしい笑顔はなく。
 天敵たちに貪り食われる運命を悟らせ、モンスターたちの心胆を凍らしめる、『成り損ないの怪談』の冷たい笑顔。

 ――もぐもぐ。しゃくしゃく。しょりしょり、もりもり、ぱくぱく。
 
 戦場に響く、愛らしい咀嚼音のオーケストラ。
 300匹の小動物の海に、少しずつ沈んでいくように。山菜たちが喰われていく。
 容易くは末魔も断って貰えず、生きながらにしてちまちまとその身を齧り削り取られていく山菜たちの慟哭と悲鳴を背に。
「……ところで、あの野菜たちは食材にできるのでごぜーますかね?」
 その『怪談』も斯くやという惨劇が見えぬよう、カイとミチルの視線を塞ぐように。
 十はいつものおばけの笑顔で、ぷかぷかと宙に躍る。
「まー、ボクにはせいぜい、野菜スープを作ることぐらいしかできそうにないでごぜーますが。」
 しかし。小動物が去った後の現場には。
 スープに使えそうな野菜くずひとつ、遺されてはいないのであった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

クラウス・イーザリー
マスティマ(h00048)と一緒に行動

言っていることは理解できるけど、カイやミチルさんを殺させる訳にはいかない
それに、うん(マスティマに頷いて)俺も山菜を食べてみたいし

カイ達と敵の間に立ち塞がるように移動して、マスティマの加護があるなら大丈夫だろうと心強い気持ちで戦いに臨む

彼の空間引き寄せで集まった敵に向けて紫電の弾丸を使用し、範囲攻撃と味方の強化を同時に行う
洗脳には精神抵抗で抗って、カイ達やマスティマの方に向かおうとする連中は居合で斬り捨てる

カイ達を守ることが最優先……ではあるけど
マスティマにもあまり無理はしないで欲しいっていう気持ちが結構ある
彼は少し、自分のことを二の次にしがちに見えるから
マスティマ・トランクィロ
クラウス(h05015)と

んん…確かに君たちの主張は真っ当だ
でも、残念だったね
僕はカイとミチルの味方だし、それに…僕は……ええと
山菜が大好きだから!(今思いついた苦し紛れ)
ね、そうだよね、クラウス?!

カイとミチルに霊的防護と、それから幸運の加護を
空間引き寄せで敵をクラウスの間合いに引き込もう
死んでも即座に蘇生する今、多少の無理はきくだろうし――あぁ、クラウスは嫌がるかもだけど…
…大丈夫だよ、無茶はしないさ
相手が植物なら、粛々と燃やすだけだし——
我が一族の末裔として、僕は自分の身を守る程度の術は心得ている
愛銃の炎属性攻撃を付与した弾丸で、護身と、クラウスに援護射撃を
彼に心配はかけられない

「んん…確かに君たちの主張は真っ当だ。」
「うん。言っていることは理解できる。」
 √能力者たちによる勇戦により、山菜のモンスターたちは確実に数を減らしている。
 もうあとひと息、ふた息というところで。山菜の側の主張にも、一定の理解を示す者たちもいた。
 戦支度に【紅の振袖】を羽織り直したマスティマ・トランクィロ(万有礼讃・h00048)と、【レーザーライフル】を抜いたクラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)だ。
 確かに、山菜たち食われる側には食われるだけの、殖えたい者たちには殖えたいだけの理由が懸かっているのだろう。
 『生きる』ための命の奪い合いである以上、そこに善悪が介在する余地はない。
「ニンゲンにも話が分かる奴がいたんだなー。お前たちは、見逃してやろうー。」
「しかし、その魔力の高まりと、武器はなんだー。」
 そう|山菜《モンスター》たちが指摘するように、2人の戦意は衰えるどころか、高まりを見せている。
 『生きる』ために√ウォーゾーンで武器と共にある青春を送ってきたクラウスと、狩りを嗜むマスティマにとって、それは『お互い様』で済んでしまう話だ。
 故に、理解は示せども、退く理由になどなりはしない。
 そして、黒と金の青年たちは、更に戦う理由を上乗せしてみせる。
「そう。でも、残念だったね。僕はカイとミチルの味方だし。」
「そういう事だよ。カイやミチルさんを殺させる訳にはいかない。」
 モンスターたちが|仲間《菜の花》の仇討ちを望むならば、こちらは共に過ごした人たちを守るため。
 ドラゴンプロトコルの少年と、人間の老婆の細やかながら幸せな日常を守るため。
 ここで『はい、そうですか』などと退く訳があるはずもない。
「それに…僕は……ええと山菜が大好きだから!ね、そうだよね、クラウス?!」
「うん。俺も山菜を食べてみたいし。」
 マスティマが口にした苦し紛れの思い付きに、クラウスも薄い表情の中に微苦笑を浮かべ。
 最早、話す事もあるまいと。カイ達と敵の間に立ち塞がった2人から、2挺、そして3つの銃口が襲撃者たちに向けられた。

「じゃあ、始めようか。この場の皆に、加護を。」
 先んじて動いたのはマスティマ。かつり、微かに守る者たちから距離を置き。鮮血の如き赤で虚空に描かれるのは、|十二星座《ホロスコープ》を模した魔法陣。
 彼の背後にいるカイとミチル、そして共に戦うクラウスに、霊的防護と幸運の加護を付与したのだ。
 『おまじない』も、√能力者かつ強大な魔力を有する彼を以てすれば、些細な干渉などものともしない、強力な効果を発揮する。そして。

 ――拝跪せよ。

 それは|悪意《マスティマ》の名の如く、重く厳かな闇を含む、力ある声。顕現するは、血脈に受け継ぐ悪魔。

 ――【|炎獄礼讃《ベネディクトゥス・マーレボルジェ》】

 この√能力は、炎獄により焼き尽くし、敵を引き寄せるという効果を持つ。
 山菜たちが幾ら踏ん張ろうと。その空間ごと吸い寄せられてしまえば、抗う事は不可能だ。
 そして、その抵抗の意志に反して引き寄せられてくる山菜たち。それを待ち受けている狩人がいた。
「ありがとう。マスティマの加護があるなら、心強いね。」
 クラウスの構えたライフルから放たれた【紫電の弾丸】が空間を切り裂き、ばちりと雷が爆ぜる音と共に山菜たちが炭となる。
 クラウスの√能力は攻撃能力の他に、味方に帯電させることで戦闘力を強化するという追加効果がある。マスティマの加護には雷の加護のお返し、という訳だ。

「煮ても焼いても食える、我々だがー。」
「黒焦げにするとは、なんと勿体無いことをー。」
 マスティマの空間引き寄せは便利な能力である反面、敵の攻撃をも招き入れかねない諸刃の剣だ。
 そうはならぬよう、マスティマに攻撃が届く距離に入る前に、クラウスが優先して光刃剣の居合で斬り捨てていくが、その数に押されて、討ち漏らしも出てくる。
 【炎獄礼讃】を発動した今のマスティマであれば、例え死亡したところで即座に復活することができる。それでも。

 ――マスティマにもあまり無理はしないで欲しいっていう気持ちが結構ある
 ――彼は少し、自分のことを二の次にしがちに見えるから。

 光刃剣の間合いから逃れた|山菜《モンスター》に向け、半ば強引に片手でライフルを保持し。放たれたレーザーが巨大ヨモギの命脈を断つ。

 そして、その想いは。相方であるマスティマにも届いていた。
 ――死んでも即座に蘇生する今、多少の無理はきくだろうし。
 ――あぁ、クラウスは嫌がるかもだけど……。
 クラウスの奮戦ぶりは、そういう事であろうと確信している。故に。彼に心配はかけられない。実力を示す必要がある。
 ――我が一族の末裔として、僕は自分の身を守る程度の術は心得ている。
 彼が『守り切れなかった』と肩を落とす前に、吹き荒ぶ獄炎が山菜たちを黒焦げどころか炭も遺さず焼失させ。
 マスティマを守らんと無理な体勢の射撃を敢行したクラウスに迫るモンスターを、炎属性を付与した弾丸が貫き、燃え上がらせる。

 ――……大丈夫だよ、無茶はしないさ。

 赤と青の視線が刹那、交錯し。互いに頷き合う。戦友であればこそ、この目と目の会話で全ては事足りる。
 菜の花が風に揺れる中。お互いを信頼し合う炎と雷が、山菜のモンスターたちを完膚なきまでに蹂躙していったのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

十二宮・乙女
アドリブ・共闘可

菜の花の虐殺現場……
敵からすればそう見えるのですね
だからと言ってミチルさんとカイ君を害する事は許せません

「二人とも私の後ろから出ないで下さいね」
可能であればミチルさんとカイ君の2人を
安全な場所に向かわせたいですが
難しいようであれば私が二人の盾となります

戦闘はアーテに任せます
あの子は戦う事が好きなので
何時もならやり過ぎないか気になる所ですが
今回は思いっきり暴れちゃって下さい
近づいてくる敵はカノンに対応をお願いします
「大人しくしてください」
タイミングを見て【天穿つ賢者の一射】を発動します

「二人とも大丈夫ですか?」
ミチルさんとカイ君がその場に残っていた場合
怪我がないか確認します

「菜の花の虐殺現場……彼らからすれば、そう見えるのですね。」
 すっかり数を減らした|山菜《モンスター》たちを前に、そう呟く|十二宮・乙女《じゅうにみや・おとめ》(泡沫の娘・h00494)は花屋の看板娘である。
 日常から草花を取り扱う彼女からすれば、彼らの言い分に思うところもあるだろう。
「二人とも私の後ろから出ないで下さいね。」
 それでも、彼女はドラゴンプロトコルの少年カイと、人間の老婆ミチルの盾になるように前に一歩、歩み出る。
(可能であれば、ミチルさんとカイ君の2人を安全な場所に向かわせたいところですが……。)
 しかし、それを行えば星詠みの予知から外れる恐れがある事を、同じ星詠みである乙女は重々に承知している。
 故に、答えの代わりに。彼女の足元、影からぞわりと黒が染み出し、鉤爪を持つ大きな両手が姿を現す。乙女が【アーテ】と呼ぶ影業だ。
 そして、桜、泡、紅葉、雪の結晶を纏い、大剣を携えたぼんやりとした姿の死霊の少女が乙女の傍らに立った。
 それが示すのは、明確なモンスターたちへの敵対の意志。
「――だからと言って、ミチルさんとカイ君を害する事は許せません。」

「今回は、思いっきり暴れちゃって下さい。」
 乙女の|命令《オーダー》を受け、制限なく力を振るえる事を心から楽しむように。
 荒れ狂う影が大爪を振り回せば、その度に乱切りに刻まれた|山菜《モンスター》たちが悲鳴を上げて千切れ飛ぶ。
  ――あの子は戦う事が好きなので、何時もならやり過ぎないか気になる所ですが。
 彼女がそう評する程度に、前衛を任せるアーテは戦闘狂。
 無制限に暴れさせられるなら、これ程頼りになる前衛は居ないだろう。
 近づいてくる敵は死霊の少女【カノン】に対応を頼むところであったが。最早、アーテを抜けて攻撃を仕掛ける余力が無い程に、モンスターたちの戦力は削られている。
 後は、残る敵の息の根を射止め、削りきるのみ。乙女は天に祈る様に若草の様な緑の瞳を閉じた。
 真昼の天に、星が輝く。矢は既に番えられ、術者の号令を待っている。

 ――|十二星座・人馬宮《ゾディアック・サジタリウス》解放。
「……天の弓よ、我らに仇なすモノに制裁を!
 ――【|天穿つ賢者の一射《ケイローン・シューティングアロー》】!」

 乙女が力強く目を見開くとともに。山菜たちの頭上から、無数の光の矢が降り注ぐ。
 逃れようの無い弓箭の雨に、逃れようとも脚を射抜かれ、反撃を加えようとも腕を射抜かれ、考えようにも脳天を射抜かれ。
 その衝撃波に、乙女の桃色の髪がふわりと揺れる。
「我々のー……素晴らしい土壌を得て、繁栄する、夢がー……」
 辛くも、生き残り。虫の息で這いずる最後のフキノトウの隣で、死霊の少女がさも親し気に、にこりと微笑む。
「大人しくしてください。」
 ――振り下ろされた大剣と共に。
 珍妙な姿の襲撃者たちの企ては、全て斬って捨てられた。

「二人とも、大丈夫ですか?」
「うん、姉ちゃんたちのお陰で、俺もばあちゃんも怪我一つないぞ!ありがとうな!」
 モンスターたちを全て撃退し終え。怪我がないか確認する乙女たち√能力者に、ドラゴンプロトコルの少年は元気に尻尾を揺らして応じる。
 ――その時であった。
「ああ、ああ!菜の花とドラゴンプロトコル様!なんと絵になる光景でしょう!」
 予知の通りの言葉と共に。菜の花畑に不釣り合いな継ぎ接ぎの肉体を持つ、狂気の輩が姿を現したのは。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

第3章 ボス戦 『喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』』


POW 竜骸合身の儀
自身の【身体部位一つ】を、視界内の対象1体にのみダメージ2倍+状態異常【竜化暴走】を付与する【竜化部位】に変形する。
SPD 竜骸蒐集
【大剣】が命中した部位を切断するか、レベル分間使用不能にする。また、切断された部位を食べた者は負傷が回復する。
WIZ 真竜降臨の儀
インビジブルの群れ(どこにでもいる)に自身を喰わせ死亡すると、無敵獣【真竜(トゥルードラゴン)】が出現する。攻撃・回復問わず外部からのあらゆる干渉を完全無効化し、自身が生前に指定した敵を【灼熱のブレス】で遠距離攻撃するが、動きは鈍い。
√ドラゴンファンタジー 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 ――喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』。
 ドラゴンプロトコルより奪った肉体を己の身体と置き換える事で|真竜《トゥルードラゴン》に至らんという教義を掲げ、√ドラゴンファンタジーを騒がせる「肉体簒奪事件」の首謀者だ。
「嗚呼、嗚呼、お迎えに上がったにも関わらず、まさかドラゴンプロトコルに非ざる蒙昧の輩に囲まれていようとは!実に、実に嘆かわしい!今すぐにでもあなた様に群がるこの真竜に至る資格を持たぬ暗愚の者どもを疾く疾く排除しあなた様を|真竜《トゥルードラゴン》に至らせるためさくりと殺して差し上げましょう!なに、腕の調子は上がりませんが斯様な些事如きでこの者らを鏖殺するにはさしたる時間は要りません多少狙いは逸れるかもしれませんが殺すには十二分そこを退け汚らしい老婆がドラゴンプロトコル様が見えないだろうがぁ!!!!」
 ドラゴンプロトコルの少年カイを守る様に、腰の曲がった背、震える足でドラゴンストーカ―の前に、人間の老婆ミチルが立ちはだかる。
 一息に激昂まで捲し立てた喰竜教団の教祖は予知の通りに大剣を構え、その支えきれぬ重さに切っ先が大地を削る。
 何事もなければ、老婆も少年も、共に命を落としている未来が待っていたのであろうが。
 然し、予知と明らかに異なる点は。√能力者たちが今、この場に居る事だ。

「みんな、俺とばあちゃんを助けて!!」

 カイの声に、√能力者たちは一様に頷き。
 菜の花が風に揺れる中、ドラゴンストーカ―との決戦の火蓋が切って落とされた。
十・十
汚らわしいって自己紹介でごせーます?
まー、ボクも人?のこと言えないでごせーますが

ゆらぁりゆらぁりと揺れながら「空中浮遊」で移動して接敵するでごせーますよ
相手の攻撃は「野生の勘」や「フェイント」で回避するでごせーます
十分に近づいたなら、【一点集中全力突】に「鎧砕き」をのせてぶん殴るでごせーます
・・・もしも、殴るまえに右腕が切り落とされならばありがとうと言ってあげるでごせーますよ
そのまま切り落とされた右腕を左腕で掴んで鈍器にして「喧嘩殺法」をのせて殴るでごせーますよ
能力の条件は右腕で殴ることだから効果あるはず
痛くないかって?餓死する苦しみと寂しさに比べたらマシでごせーますよー
連携・アドリブ歓迎です

「汚らわしいって、自己紹介でごぜーます?」
 ふわりふわりと漂う幽霊が、無辜のドラゴンプロトコルの身体を継いで接ぐのみで、己が身を失ったドラゴンストーカ―の姿を痛烈に皮肉る。
「まー、ボクも人?のこと言えないでごぜーますが。」
 そう呟いた少年の幽霊は、|十・十《くのつぎ・もげき》(学校の怪談のなりそこない・h03158)。
 不完全な怪談と化した、小さなおばけである。

「私の崇高な教義を理解し得ぬ無知蒙昧の幽霊如きが何を言うか竜の尾も肉体も持たぬ貴様に用はない疾く去ぬるがいい!!!!」
 喚くドラゴンストーカ―を揶揄う様に攻撃をするように見せかけては笑って逃れ。ゆらぁりゆらぁりと揺れながら。
 彼女が強引にぶん回した大剣をふわりと宙に浮かんで回避する。
「小動物の気持ちになるでごぜーますよー。」
 元より動物霊たちとも仲の良い十である。その野生の勘は彼ら譲りなのかもしれない。
「このちょこまかちょこまかゆらゆらと鬱陶しい事この上ない貴様は必ずその頸を断ってくれるぞ逃げるなこのぉ!!」
「逃げなければいいでごぜーますか?なら、この通りでごぜーます。」
 幽霊の姿に恥じぬつかみどころの無い動きで、ドラゴンストーカ―の懐に潜り込んだ十の右拳が強く握りしめられる。
「全力でぶん殴る!」
 ――ごっ!!
 ドラゴンストーカ―が目を剥き、その身体が宙に浮く。
 その青褪めた腹に深々と突き立っているのは、ぶかぶかの長い袖に覆われた、十の腕。
 その袖の中から、めきり。骨が折れる、鈍い音が響いた。

 ――【|一点集中全力突《パイルバンカー》】

 この√能力は、十の【右腕】で殴る事で4倍ものダメージを与える、単純にして強力無比な効果を持つ。しかし、その威力は己の身体に、骨折という反動をもたらすのだ。
 故に、この力が使えるのは二度まで。

 挑発を重ねられ、そしてドラゴンストーカ―についに与えられた反撃のチャンスに、青い奇人は狂気狂乱の声を上げる。
「ごほっ……捕らえたぞ二度目など与えるか痴れ者がその右腕が無ければその力は使えまいまずはその腕を貰ったぞザマを見ろ!!」
 伸ばされたままの十の右腕が、宙を舞った。

 ――【竜骸蒐集】
 この√能力は【大剣】が命中した部位を切断する、という至極単純な効果を持つ。
 右腕を失った十に、最早攻撃手段は無く。後は生かさず殺さず、インビジブルになるまで切り刻むのみ。
 ドラゴンストーカ―が愉悦に顔を歪めた、その傍で。

「ありがとう、と言ってあげるでごぜーますよ。」
 ――学校の怪談が、嗤った。

 宙に舞い、落ちてきた右腕を。十が残る左手でぱしり、キャッチする。
 その勢いのまま、勝ち誇り、がら空きの横っ面に。ぐしゃり。
 右腕と、頭蓋。2つの骨のひしゃげる音が響いた。
 それは、己の切断された腕すらも鈍器として使う、可愛い顔に見合わぬ渾身の喧嘩殺法。
 それも、使われたのは√能力の発動条件を満たす【右腕】だ。
 骨ごと歪んだ笑顔のまま、水切りの石のように地面を跳ね飛んだドラゴンストーカ―を尻目に。
 【二度目】の|弾《うで》を使い切り、学校の怪談の成り損ないに戻ったおばけは、ゆらぁりゆらりと漂い、にまりと笑顔を浮かべて見せた。
「痛くないかって?餓死する苦しみと寂しさに比べたらマシでごぜーますよー。」
 ――右腕はもう取れてるから、痛くねーでごぜーますしなー。
 そんな、ブラックジョークを添えて。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

深見・音夢
ストーカーと言われるだけあって随分とご執心のようで。
その妄執は推しへの愛と通ずるところがあるかもっすけど、そういう相手のことを考えない一方通行の矢印は見てられないんすよねぇ。

あ、二人とももーちょっと下がっててもらっていいっすかね。いやその、危ないのとは別で見られたくないとこ見せちゃうかもなんで。
じゃあ、ここからは……遠慮なくやらせてもらおうか。
『擬装限定解除・夜鮫』、異形の力を使うのは君だけじゃないということだよ。
狙撃銃を見れば否応でも間合いを詰めて切り込んでくるはず。そこを意表を突いて鮫歯で喰らいつく!
少々の傷も、推しの平穏と比べれば……ああでも、この姿を見られたら怖がられるだろうな。

「ストーカーと言われるだけあって随分とご執心のようで。」
 喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』の狂信ぶりを、狙撃銃を担いだ黒衣の怪人が、そう吐き捨てた。
 |深見・音夢《ふかみ・ねむ》(星灯りに手が届かなくても・h00525)は、推しへの愛と尊みでエネルギーを賄う推し活女子である。
 果たして、その妄執は誰かを輝かせるだろうか。答えは否。
 ドラゴンストーカ―のやり方は、他者の輝きを奪うばかりで、何も生みだしはしない。
 そして今、このストーカーは音夢の|推し《カイ》の輝きを奪わんとしている。その様な無法を音夢が看過できるはずもない。
「その妄執は推しへの愛と通ずるところがあるかもっすけど、そういう相手のことを考えない一方通行の矢印は見てられないんすよねぇ。」
 その、金の瞳が見据える先には。√能力者から痛手を被り、立ち上がりつつある|唾棄すべき者《ドラゴンストーカ―》がいる。

「あ、二人とももーちょっと下がっててもらっていいっすかね。
 いやその、危ないのとは別で見られたくないとこ見せちゃうかもなんで。」
「姉ちゃんがそう言うなら、俺は見ないよ。絶対に!」
 カイは『音夢なら必ず守ってくれる』。そんな信頼の目を向けると。目をぎゅっと瞑り、更に後ろを向いて見せた。
 そしてミチルもまた、一つ頷くと。カイに倣い、背を向ける。
 ――ありがとっすよ。
 音夢はその信頼の証に、小さく呟き。
「じゃあ、ここからは……遠慮なくやらせてもらおうか。」
「そのような物干し竿を担いで、更には人間を改造しただけのその身に何が出来るか見せてもらおうか、いいやいいや遠慮しなかったところで|真竜《トゥルードラゴン》に至るべく|信仰《さつがい》に|改造《さつがい》を積み重ねてきたこの私に届く訳もない!」
 その左腕を竜に変え。狙撃銃の照星から逃れる様にジグザグに跳びながら、青い奇人が突っ込んでくる。

 ――【竜骸合身の儀】
 自身の【身体部位一つ】を、視界内の対象1体に強力なダメージと状態異常【竜化暴走】を付与する【竜化部位】に変形するという、ドラゴンストーカ―の√能力だ。
 言葉とは裏腹に、先ほど大打撃を受けたが故の警戒心もあるのだろう。狙撃、銃撃を警戒して、その銃口から逃れる様な動きを見せながら、近接戦を仕掛けようと試みる。

 そして、それは。音夢の想定通りの動きであった。
 ――狙撃銃を見れば。否応でも、間合いを詰めて切り込んでくるはず。
「それじゃあ……可愛い推し活女子の、可愛くないとこ見せてやろうっすかねぇ……♪」
「何を言うか既に間合いだ首を刎ねて遣ろう!貰った!」
 間合いに入った教祖の、勝ち誇った笑みと共に振り下ろされる大剣と。続く、左腕による連撃。
 これをドラゴンストーカ―も想定していなかった疾さで、音夢が掠める様に躱す。 
 鮫が哂い、自身のコンプレックスの源である、怪人の姿、その一部に変身する√能力を発動したのだ。
 めきりと口から覗くのは、肉を容易に裂くであろう、鮫の乱喰い歯。
 そして、肌は水を切り裂いて泳ぐに適した鮫肌に。

 ――その名も、【|擬装限定解除・夜鮫《オトメノスガオ》】
 攻撃回数と移動速度を4倍、受けるダメージを2倍にするという、諸刃の剣となる√能力だが。
 意表を突かれ、見事に攻撃を空振り体勢を崩した、その頸筋に。鮫の牙が幾度も牙を突き立て、喰らい付いた!!

「あ?が、ぎゃぁぁぁぁあああああ!!!!?
 貴様、貴様ドラゴンプロトコル様から頂いた玉体になんという事を貴様許さぬ許さぬ許さぬ!!」
 絶叫と共に、喰らい付いた音夢を振りほどかんと闇雲に振るわれた左腕、そして大剣を躱し様に、その躰を喰い千切り。音夢がその速度を以て再び距離を置く。
「『擬装限定解除・夜鮫』、異形の力を使うのは君だけじゃないということだよ。
 それに……何が、『ドラゴンプロトコル様から頂いた』だ。盗人猛々しいとはこのことだね。」
 ドラゴンストーカ―から噛み千切った肉塊を、ぺっ、と血と共に吐きながら。
 ――ずきり。闇雲に振るわれた刃に斬られたのだろうか。夜色に輝く鮫肌から鮮血が滴っている。
(少々の傷も、|推し《カイとミチル》の平穏と比べれば……。)
 火力と引き換えにした防御の薄さ故だが、それも覚悟の上の一撃だ。

(ああ、でも。この姿を見られたら、怖がられるだろうな。)
 ――ずきり。また、痛みが走る。
 そしてそれは、流れる血よりも、もっと痛い。

 諦観と、そして恐れと共に。音夢は推しの無事を確認すべく振り向いた。
 果たして、その視界に入ったのは。
 ――竜の尾を振る少年と老婆の、音夢への|信頼《せなか》だった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

十二宮・乙女
アドリブ・連携可

カイ君を己の欲望の為に殺そうとする上に
ミチルさんを汚らわしい老婆呼ばわり……
自力で真竜に至る事も出来ない劣等種が良く吠えるものですね

「アーテ、遠慮はいりません」
アーテの思う存分にやらせます
止めませんとも
「カノンは2人の護衛を」
カイくんとミチルさんの2人は私とカノンで守ります
アーテとカノンと私
3枚の盾を越えられますか?

「目的も果たせず惨めに朽ちるのはどんな気分ですか?」
√能力【冥府の番犬】の攻撃技を発動します
敵に喰らい付くまでこの子は追いかけ続けますよ
無駄な抵抗は止めなさい

「カイ君、ミチルさん、大丈夫ですか? もう危機は去りましたよ」
無事に敵を倒す事が出来たら2人に声をかけます

 ――|十二宮・乙女《じゅうにみや・おとめ》(泡沫の娘・h00494)は、それが例え演じている人格であろうとも、穏やかな人柄である。
 少なくとも、ドラゴンプロトコルの少年や、それを守ろうという老婆の目には、その様に映っている。
「カイ君を己の欲望の為に殺そうとする上に、ミチルさんを汚らわしい老婆呼ばわり……。」
 しかし、今の彼女は違う。赤と緑の瞳には、顔をひしゃげさせ、頸許を抉られ血を溢すドラゴンストーカ―の姿に対する怒りと侮蔑の色が明らかだ。
「自力で真竜に至る事も出来ない劣等種が、良く吠えるものですね。」
「貴様。貴様貴様貴様貴様!貴様こそ辛うじて人以外のパーツで命を繋ぐ死に損ないであろうに我らが教義を理解する能も無くよくもよくも言ってくれたなよろしい貴様は更に細かく刻んで花の肥料にして呉れようそこを動くなぁ!!」
 激昂し、再び左腕を竜化させ、大剣の切っ先をがりがりと引き摺りながら迫り来る喰竜教団教祖の姿にも、恐れなどあろうはずもなく。ただただ、冷めた目を向けるばかり。

「アーテ、遠慮はいりません。そして、カノン。カノンは2人の護衛を。」
 乙女の足元から湧き出す影が、鉤爪を持つ大きな両手を模り。ドラゴンストーカ―を蠅叩きの様に叩き潰さんと振るわれる。
 大剣で受け止めるドラゴンストーカ―の足が、その一撃の重さに地に沈み込んだ。

 ――ええ。アーテの思う存分にやらせます。止めませんとも。

 戦闘狂の|影《アーテ》の両手が荒れ狂う。この唾棄すべき敵には一切の遠慮がいらないので、ある意味では気が楽だ。
「アーテとカノンと、私。3枚の盾を越えられますか?」
「越えらいでか!」
 しかし、青い体からは流血が多く。大剣と、そして竜化した左腕では、影の両手を防ぐので文字通りの手いっぱいだ。
カイとミチルの2人を守る乙女と|死霊《カノン》の元に辿り着けるかは、既に危ういと言ってもよい。
 だからこそ、今が攻め時だ。乙女は√能力という、秘蔵の札を切る。

「暗き地底を守護する獣よ、我が呼び声に応えよ!」
 ――【|冥界の番犬《ミツクビノケモノ》】

 現れたのは、その名も高き、【冥府の番犬「ケルベロス」】。
 そのよだれがトリカブトにもなったという伝説を持つ、この三つ首の番犬は。花屋の娘である乙女に相応しい獣に相応しいかもしれない。
 放たれた番犬は、疾風の如く影に手古摺っている喰竜教団の教祖に迫る。

 ――敵に喰らい付くまで、この子は追いかけ続けますよ。

 そう口にするまでもない。【|狩猟猛追《デスチェイス》】の名の付いた咢が、奇人の身体に喰らい付いた。
「目的も果たせず惨めに朽ちるのはどんな気分ですか?無駄な抵抗は止めなさい。」
 まるで、犬に与えた玩具の様にドラゴンストーカ―の身体が振り回され、地面に叩き付けられる。
 その隙に、ドラゴンストーカ―が何とか離脱したのが目に映るが。
 至る所を欠損させて、血を垂れ流しているその姿から、戦いが佳境に差し掛かったのは、誰の目に見ても明らかであろう。

「カイ君、ミチルさん、大丈夫ですか?もう程なく、危機は去りますからね。」
 敵に向ける視線とはまるで異なる、穏やかなオッドアイが。程なくして訪れるであろう|春《へいおん》を告げた。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

マスティマ・トランクィロ
クラウス(h05015)と

カイ、ミチル、大丈夫——僕たちに任せて
彼らに微笑みを向けつつ、霊的防護は継続
でもどうしようかな
クラウスと違って僕には誰かを護りながら強敵と戦う力はない…

【罪人に薔薇紅の洗礼を】
僕の力が足りないなら、相手を弱めてしまうのが良い
近接戦をするようだから、引き付けて『ルキウスの炎』で焼却を
それでも僕が及ばないなら、僕が戦わないのも一つの手かも
クラウスの足を引っ張る訳には行かないから、少し軽率だけどこれにしよう
【聖なる哉この殉難】
召喚する屍竜からの攻撃も即ち僕からの攻撃だから、この組み合わせは悪くない筈
…あれ
クラウスの方を見られないのはどうしてだろう
きっと心配をかけてしまったかもしれないから、彼には後で釈明を——後で……?
そう、どうせ死ねないのだから…大丈夫
彼に幸運の加護をと祈って、後は信じて委ねよう
クラウス・イーザリー
マスティマ(h00048)と

「大丈夫だよ、任せて」
カイとミチルさんに頷いてライフルを構え、フレイムガンナーを起動
彼らを背に庇った状態で火炎弾を用いて狙い撃つ
接近戦に持ち込まれたら、マスティマの助けを借りつつルートブレイカーで能力を打ち消しながら戦う

マスティマがインビジブルに喰われ始めたら、信じられないものを見るような目で振り返って手を伸ばすけど
その手は空を掴んで、最期に視線が合うこともなくて

√能力者の死は一時的なものだと理解しているけど、どうしても心が苦しい
だってそんなの、怖くて辛いだろう
……どうして、躊躇しなかったんだ

空っぽの掌を握りしめて、強力な屍竜が味方についてくれている今が好機だと無理矢理意識を切り替える
彼に合わせて攻撃して、一気に畳み掛けよう

「カイ、ミチル、大丈夫——僕たちに任せて。」
 マスティマ・トランクィロ(万有礼讃・h00048)はドラゴンプロトコルの少年カイと、人間の老婆ミチルに笑顔を向けつつ。付与していた霊的防護を付与しなおした。
 彼の魔力を以てすれば、並みのお守り以上の効果で彼らを守ってくれる事だろう。

 ――でも、どうしようかな。クラウスと違って僕には誰かを護りながら強敵と戦う力はない……。

 この事件の結末に大きな影響を及ぼすことになる、このマスティマの胸中を。
「大丈夫だよ、任せて。」
 カイとミチルを安心させるべくマスティマの言葉に頷いた、この時のクラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)は。
 知る由もなかったのだ。

 身体のあちらこちらから血を垂れ流し、血走った眼で√能力者たちを睨むドラゴンストーカ―は、手負いの獣だ。
 この状態が最も危険な事は、狩りを嗜むマスティマにはよく理解る。
 そして、如何に借り物の身体から齎された力であろうと、戦闘力そのものは本物だ。
 今までの戦いを通して見ても、√能力者たちにより痛撃を加えられてはきたものの、強敵には違いない。
 マスティマは彼我の実力差をこう把握し。血で描いた魔法陣を、まるで光背の様に展開した。
「僕の力が足りないなら、相手を弱めてしまうのが良い。」
 ――【|罪人に薔薇紅の洗礼を《ローズレッド・バプテスマ》】
 この√能力は、【血で描いた魔法陣より、深紅の光】を放つことで、範囲内の自分含む全員の【マスティマからの攻撃】に対する抵抗力を10分の1にするというもの。
 クラウスやカイ、ミチルや、他に戦う√能力者の抵抗力も下げるという効果ではあるが。
 自身の攻撃に、味方を巻き込まなければ良いだけの話だ。

 【フレイムガンナー】を起動し、ライフルを火炎弾発射形態に変形させたクラウスは、カイとミチルを背に庇ったまま、猛進してくるドラゴンストーカ―に幾発もの火炎弾を撃ち込んでゆく。
 既に体のパーツを欠損させた喰竜教団教祖は、直撃弾を受けその身に受けて火だるまになるも。
 2人を大剣の刃の間合いに捉え、その血肉を焦がしながら【竜骸蒐集】で敵を切断し、僅かにでも体を回復させんと大剣を振るった。
 その凶刃をクラウスが咄嗟に抜いた光刃剣で受け流せば。その隙を突くように、マスティマの懐中時計に封じられた『ルキウスの炎』が燃え上がり、ドラゴンストーカ―の青褪めた肉体を炭に変えてゆく。
 炎に次ぐ炎の嵐に。遂に。がらりと音を立て。
 ドラゴンストーカ―の大剣が、地に墜ちた。しかし、まだ、終わらない。
「――嗚呼、嗚呼、解りました。解りました。事ここに及んでは、私が敵どもを無残に殺戮し、ドラゴンプロトコル様を綺麗に殺害する事は難しいでしょう。ならば殉教を!華々しい殉教を!我が肉体を|真竜《トゥルードラゴン》を呼び出すべく殉教の法悦に身を委ねましょう!さらば、さらば皆さまごきげんよう!無敵の真竜《トゥルードラゴン》がこのつまらぬ風景ごと灰燼に帰すのを指を咥えて見ているがいい!私がその姿を見られるのが残念ですがザマを見ろ!!はは!!ははははははははははははははははは!!!!」
 火達磨のまま、皮膚を炭に変えながら、その炭をインビジブルに喰わせながら。
 ドラゴンストーカ―が愉悦の哄笑を上げる。
 どうせ死ぬならば、命を遣い捨てるが如く遣い切ろうという、√能力者ならではの戦法。

 ――【真竜降臨の儀】
 己の|殉教《死》を以て、信仰対象であり、あらゆる外部からの干渉を無効化する、無敵の【真竜《トゥルードラゴン》】を喚び出す√能力だ。
 ドラゴンストーカ―の耳障りな笑い声が絶えた時。
 ずん、と大地を震わせ降り立った|真竜《トゥルードラゴン》が、その威厳ある双眸を以て、獲物たちを見降ろした。

 如何なる攻撃も通用しない真竜。この事態を打開し、打倒するには、クラウスの√能力が必要となる。
 しかし、流石のクラウスも、カイとミチルを守り、マスティマを援護しながら真竜に接近し、切り札を切るのは不可能に近い。
 ――ここから先は、僕が及ばない領域だ。なら、僕が戦わないのも一つの手かも。
 自分が戦力になれば、壁になる事が出来れば。クラウスが、あの竜を斃してくれる。
 戦況を観察しながら、マスティマは心に浮かんだアイディアを実行しようと、心を決める。
 ――足を引っ張る訳には行かないから、少し軽率だけどこれにしよう。
 共に戦う青年に、ただの一言もなく。無敵の真竜に並ぶ力を得るべく、マスティマは√能力を発動する。
 途端。漂っていたインビジブルたちが、一斉にマスティマを向いた。

 ――『彼は少し、自分のことを二の次にしがちに見える』。
 クラウスは、マスティマの人柄をこう評し、心配していた。
 インビジブルの動きに違和感を感じ、振り返った時。その懸念が、現実のものとなっていた。
 ――マスティマが、インビジブルたちに喰われている。

 ――【|聖なる哉この殉難《サンクトゥス・クルチフィクスス》】
 攻撃・回復問わず外部からのあらゆる干渉を完全無効化する無敵獣【月喰いの屍竜】を呼び出す√能力だ。
 しかし、『無敵』には大きな代償を伴う。インビジブルたちに己が身を喰わせ、死亡することが条件となるのだ。

 ――……あれ。クラウスの方を見られないのはどうしてだろう。

 魚のカタチをした霊体たちに、その身を喰われながら。マスティマは瞼を閉じる。
 異変を感じて振り返ったクラウスが、信じられないものを見るような目を向けて。
 必死に手を伸ばしている姿も、こうしてしまえばその瞳に映る事も無い。

 ――きっと心配をかけてしまったかもしれないから、彼には後で釈明を……
 ——後で……?

 それは、√能力者であるが故に。死んでも次があるからこその、生命の軽さ。
 ……いや、物語を終える事が出来ない、吸血鬼の諦念。

 ――そう、どうせ死ねないのだから…大丈夫。

 インビジブルがその身を喰い破る度に、紅い振袖が歪に揺れる。
 自分の名を呼んだ声が、その耳に届いた気がする。

 ――彼に幸運の加護を祈って、後は信じて委ねよう……。

 祈りを捧げられた|彼《クラウス》が、どんな表情を浮かべていたかも知らずして。
 伸ばされた手の気配を感じながら。その命のぬくもりの体感を待たずして。
 ぷつり。マスティマの意識は、そこで途絶えた。


 ――マスティマが、舞い散る梅の花弁と共に、消えた。
 その手を掴もうとした姿勢のまま、クラウスは呆然として動けない。
 カイとミチルが√能力者への誓いを守り、その姿を見ていなかったのが、唯一の救いであろうか。
「『めでたしで終わる話が好きなんだ』、そう言っていたじゃないか……。
 『君はどう?』って、聞いてきたじゃないか……。」
 空を掴んだ手。開いたところで、それ以外に何も遺っていやしない。
 勿論、クラウスとて√能力者の死は一時的なものだと理解している。している筈なのに。
 しかし、どうしたって。心の苦しさを抑える事が出来ない。

 ――だってそんなの、怖くて辛いだろう。

 幾十、幾百もの学友たち、そして|親友《つばさ》の最期を看取って来たからこそわかる恐怖と、未だ慣れぬ遺された者の痛み。
「……どうして、躊躇しなかったんだ。」
 開き、空っぽの掌を握りしめて。学徒兵の青年は無理矢理意識を切り替える。
 まだ、此処は戦場だ。まだ、その背には守るべき少年と老婆がいる。
 だから、立ち止まる訳にはいかない。

 前方には『|真竜《トゥルードラゴン》』。
 後方には、彼の忘れ形見である『月喰いの屍竜』。
 無敵を誇る2体の竜が咆哮を上げ、灼熱のブレスと獄炎のブレスが宙でぶつかり合う。
 炎が吹き荒れ、火花を散らす。紅梅よりも紅い紅い炎が菜の花畑に降り注ぐ。
 外部からの干渉を完全に無効化するのだから、やがて、辺りを火の海にしてなお続く千日手となるだろう。
 この状況を打開する力が、クラウスの右手に装填された。
 強力な|屍竜《マスティマ》が味方についてくれている今が好機だと、熱風に揺れる菜の花畑を青年が駆ける。
 マスティマより贈られたギャバンのコートが降り注ぐ火の粉を弾き。如何なる幸運か、その姿が真竜に捉えられる事もなく。

 ――【ルートブレイカー】

 言葉に尽くせぬ想いたちを載せて。クラウスは、あらゆる√能力を無効化する右の拳を竜の身体に叩き付ける。
 なぜ、ここまでの接近に気づけなかったのか、とでも言うように。
 トゥルードラゴンが、信じられぬものを見たかのように目を見開き、黒髪の青年を見下ろした。
「俺たちの、勝ちだ。」
 勝者とはとても思えぬ声音で、クラウスが呟くとともに。
 喰竜教団教祖が喚び出した紛い物の真竜は、硝子の様に全身に亀裂を走らせ。砕け散り。
 その粒子も春風に攫われて、消えた。

●エピローグ
「終わったのか……?あれ、金髪の兄ちゃんは……?」
 戦いが終わった後。カイが真っ先に心配したのは、この場から姿を消していたマスティマのこと。
「ああ、彼なら……先に、帰ったよ。」
 これならば、嘘は言っていない。やがて、彼は何処にか蘇るだろう。
 そして、√ドラゴンファンタジーは√能力者である冒険者たちが認知されている世界だ。
 √能力者がどんな存在であるか、カイも、ミチルも、理解している。
 クラウスの乏しい表情の中に浮かぶ色を見て、『帰った』の意味を把握したようだった。
「そうかい、そうかい。そりゃぁ、気が早いねぇ。あのお兄ちゃんが言っとった、洒落た料理はこさえられんけども。
 ばあちゃんが、美味しいものを鱈腹食べさせてあげようと思ってたんだけどねぇ。」
 カイの尾がしおりと垂れ、途絶えかけた会話の口火を老婆が切った。長く生きていれば、見送る事もあっただろう。
 カイの頭をくしゃくしゃと撫でながら、心の底から残念そうに。しかし、重苦しくはなり過ぎないように。老婆が皺だらけの顔に微笑を浮かべる。
「なら、代わりにお礼を伝えてくれんかぁ。老い先短い命とカイを救ってくれたこの御恩は、決して忘れませんよ、と。」
「俺からも!みんな、それと金髪の兄ちゃん、俺とばあちゃんを助けてくれてありがとう、って!また遊びに来て、って!」
 クラウスたち√能力者に、老婆と、尾を揺らすドラゴンプロトコルの少年の頭が、深々と下げられた。

 こうして、ドラゴンプロトコルを殺害しに現れた、喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』は斃れ。
 春らしい柔らかな日差しに相応しい、菜の花が揺れる平穏な田舎の日常が帰ってくるのだった。

 その夜。細やかな礼として、カイとミチルが√能力者たちを持て成した料理の中に。
 手の付かぬ膳が一つ据えられた。
 この料理をマスティマが味わう事が出来たかどうかは、その場に居合わせた者たちのみぞ知る。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

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