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夏之目書店の昼下がり

#√妖怪百鬼夜行 #ノベル #不思議骨董屋店主

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山野辺・雅
【夏之目・孝則と一緒のノベル希望】
|雅《みや》ちゃんはいっしょにすんでいる夏之目さんに、たんてーの本のことを聞いているところを書いてほしいなのです。
いつもたんてーさんは、事けんがおきたあとに調べ始めるです。かなしいことがおきる前に止められないのです?
いつもはんにんは、してしまったことを、わかったって言って、話しはじめるです。ずっとうそをついていたほうがいいんじゃないのかなって思うなのです。

いつももそうですけど、本のことおしえてくれるときの夏之目さんはとてもやさしいなのです。けど読んだ本はちゃんとかたづけなきゃだめなのです!

【共通情報】
## 夏之目書店について
√妖怪百鬼夜行 の 東京のどこかにひっそり佇む。
専門書の類は少なく、主に並べられているのは現代文学。実は曰く付きの古典も扱っていて、鍵付きの扉の奥にあるとか。
雅ちゃんのおかげで整理整頓ができている。夏之目は片付けるのは苦手。
店に立ち寄ると夏之目は、本を読んだり、何かの資料を読んでいることが多い。近頃は√EDENの推理小説ものを好んで読む。

## 夏之目さんとの出会い
雅ちゃん自身理由がわからず気づいたら身寄り無く一人でいたところを夏之目が拾い、以降一緒に夏之目書店に住む。書店のお掃除係で家族同然に過ごしている。

「|探偵《たんてー》さんは、どうして事件を止めないなのです?」
 ある日の昼下がり、何気なく訪れた沈黙を破った山野辺・|雅《みや》の一言。
 それは、新たな沈黙を齎した……夏之目・孝則の思案、あるいは懊悩という形で。
「事件が起きると、悲しいことばかりなのです」
「……」
 孝則の沈黙を促しと捉えた雅は、さらに続けた。
「探偵さんは、犯人のしたことを全部見抜いちゃうなのです。すごいなのです!
 でも、全部わかるなら事件が起きる前に調べれば、悲しいことも起きないのです?」
「……なるほど、そう来ましたか」
 孝則が呟き、額に指を当てて上向く仕草の意味は、まだ雅には解らない。

 幸か不幸か、この日の夏之目書店は普段より客足がまばらだ。
 何せ|店主《孝則》は、売り物を読んで暇を潰すような書痴。これはこれで没頭できて実に結構、と気にしない。こうして幼い助手と読書の感想戦を構えるのも日常だ。

 しかし今日は、いつにない難問が降ってきたものである。
「まず雅ちゃんは、何故それを疑問に思いましたか?」
「だって、探偵さんはいつもそうなのです」
 来た。残酷な指摘だ。孝則は世の推理作家を哀れんだ。
 といっても、雅はまだ10歳――身寄りも自覚もなく彷徨っていた彼女を拾い上げた孝則の推理に拠る年齢だ――の少女。同年代に比べると、環境的に読書体験の量は圧倒的だろうが、過去の解らぬ素性と天真爛漫で純朴な素養もあって、こうした不文律への造詣はまだ浅い。無垢な疑問であることを、不思議そうな表情が物語る。
(「"そういうものだから"で片付けるのは容易いけれど」)
 孝則は難問を前に、灰色の脳細胞をめまぐるしく働かせる。読者の興味を惹くためのガジェット――道理ではあるが、少し面白みに欠けるか。否、視点を変えるべきだ。雅の疑問が発生したに至る過程を想像し、トレースし、同じ目線に立つ。現実に於いて、その思考過程は1秒にも満たなかった。

「雅ちゃんが本を毎日片付けるのと同じことですよ」
 孝則は眼鏡を指で押し上げた。
「えっと……??」
「本は誰かが手に取ることで、棚から離れます」
 指先が、近くの棚を撫でた。いずれも現代文学ばかり――この不思議本屋に、専門書の類は殆どない。
「誰も手に取らなければ、本はただそこにあるだけです。勝手に出歩いたりはしない。
 それなら、雅ちゃんが整理する必要もなくなるでしょう? これを因果と云って」
「夏之目さんが、ちゃんと読んだ本を片付ければいいなのです?」

 三度、沈黙が訪れた。

「……つまりどんな物事も、原因があって結果が生じる、ということです」
 孝則はなかったことにした。
「探偵の推理は結果に対して初めて生まれるもの。万能ではないのですよ」
「でも探偵さんは本は散らかさないなのです」
「他に読書をしていて気になったことはありますか?」
 孝則はなかったことにした。

 大変に不服そうな雅だったが、問われれば素直に思案する。
「いつもといえば、犯人は探偵さんに「おまえだ」って言われると、いつも「わかった」って言って話し始めるなのです」
 これは予想通りの指摘だ。孝則の灰色の脳細胞が再び……。
「ずっと嘘をついていたほうがいいんじゃないのかな、って雅ちゃんは思うなのです!」
 探偵の推理は早くも崩れ去った。変化球だ!
「それは……」
 ここに来て、「面白くない」で切り捨てた最初の回答案が牙を剥く。あれを出していれば、即座に済んだはず。孝則は己の読み違いに少し動揺した。
「これも"いんが"なのです?」
 雅は先の回答を引き合いに出した。
「……そうですね。そういう考え方も面白いです」
 孝則は頷いた。
「犯人からしてみれば、探偵に全てを明かされた時点で"終わって"います。
 その場で嘘をついたとしても、警察や他の人を誤魔化せるか怪しいですしね」
「でも、自分で話す必要は――」
「逆に一つ某から質問しましょうか」
 孝則は遮り、問いかけた。
「雅ちゃんは……それは自供というのですが……その犯人の姿に何を思いましたか?」
「えっと、びっくりなのです!」
 少女は反射的に答えてから、自らの読書体験を反芻する。
「それに色んなことが雅ちゃんの頭の中で、すとんってなったみたいなのです。
 雅ちゃんは探偵さんみたいに解らなかったけど、すごくすっきりなのです」
「まさにそれが、最大の理由ですよ」
 彼は言った。
「最後まで物語に付き合ってくれた読者への、作者からのご褒美というわけです」
「なるほど……」
 雅は面白そうに頷くが、本当に理解したとは言い難い。
「雅ちゃん、もっと本を読みたいなのです!」
「その感想こそ、作者への一番のご褒美だろうね」
 幼き新たな同好の士を、先達は微笑んで見守る。

「でも夏之目さんはちゃんとお片付けすべきなのです!」
「某へのご褒美は……」
「まず片付けないとだめなのです! "いんが"なのです!」
 これに関しては、向こうが一枚上手だった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

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