シナリオ

ぶっ放せ!ケシバトリオン!

#√マスクド・ヒーロー #シデレウスカード

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「は、ばかな! 俺の『ケシゴマジシャン』が…!!」
 絶望した表情を浮かべ頭を抱えている一人の少年。
 その前で高笑いをあげるのは、少年の先ほどまでのゲームの対戦相手。サングラスにマスク、そして黒マントを羽織ったなんとも怪しい男です。
「サージサジサジ! わたしの『サジタウルス・ケシゴキング』は最強のケシゴーレム!」
 巨大な金色の消しゴムを大切そうに撫で回す怪しい男。そして、その男は非情にも破れ去った少年に嘲りの言葉を投げかけます。
「あなた、ケシゴマスターと呼ぶのも烏滸がましいザコでしたねえ〜。あなたにこのケシゴーレムは相応しくない!」
「な、なにすんだ! 返せよおれの『ケシゴマジシャン』!」
「サジサジサジ……弱者が口答えしてはいけませんねえ! くらえっ! キングバズーカ!」
「う、うわああああ!!」
 少年は怪しい男の放つ消しゴムの一撃によって崩れ落ちます。そして、哀れにも彼の大切なおもちゃ、ケシゴーレムは奪われてしまうのでした。

「『ケシバトリオン!』をご存知かしら?」
 集められた√能力者たちの前に現れた土偶を思わせる見た目の少女、テラコッタ・|俑偶煉陶《よーぐれっと》が開口一番そんなことを話し出します。
 知ってる人は知ってるかもしれない……。『ケシバトリオン!』というのは√マスクド・ヒーローにて人気爆発中の子供向け|おもちゃ《ホビー》である。カスタマイズした消しゴム(ケシゴーレムと呼ばれる)を指で弾き飛ばし、相手の消しゴムをリングアウトさせて勝敗を競う遊びだ。
 もちろん漫画化、アニメ化もしており√マスクド・ヒーローの子供達は最強のケシゴマスターになろうと日夜切磋琢磨している……そんな最強ホビーなのだ!
「そしてこれがわれたちの相棒……耐久型ケシゴーレムの『BIGネリケ将軍』なわけですけど!!! ……まあ、余談はここまでにして ですわ」
 語り口調があまりにも熱くなりすぎて脱線していることに気がついたテラコッタが話を本題に戻します。
「えーと、なんでしたっけ……。そう、事件はこの『ケシバトリオン!』の地区大会会場で起こるんですの。手に入れた人を怪人に変えてしまうシデレウスカードというものがありまして、これを手に入れた人が怪人…シデレウスとなってしまいました! そして、地区大会会場で……√能力を使ったインチキファイトで子供達のケシゴーレムを倒し、壊し、奪いまくってるの! ですわーー!」
 決して許されるわけがない暴挙ですわ! と、テラコッタは憤ります。
 今回の怪人が行なっている悪事の内容はともかく、人を怪人へと変えるシデレウスカードについてはのっぴきならない由々しき問題です。
 今回の事件も放っておけば更なる犯罪を引き起こす呼び水となることは間違いありません。
「さささ、皆さま、早速事件現場へと向かい怪人を打ち倒してくださいまし! ……あ、でも、いきなり殴りつけたりしちゃダメですよ? どの怪しい人物が怪人なのかわからないんですからね?」
 そう、恐ろしいことに地区大会会場内には、怪しい黒ずくめの人物が複数人いるのである。きっと闇堕ちしたライバルだったり、主人公的人物の父親だったり、別口のホビー組織の一員だったりするのだろう。
 そういうわけなので我々にできる手段は一つだけ。各自ケシゴーレムを買い……もしくは家から持ってきて、ケシバトリオン大会に参加すること。シデレウス怪人は、ケシゴバトルで盛り上がっていれば必ず自分から姿を現す。なぜなら、シデレウス怪人は……ケシゴマスターだから……!
 ケシゴマスターを止めることができるのは、ケシゴマスターだけなのだ!!
「子供達のため、『ケシバトリオン!』の未来のため、頑張ってくださいませ! ですわ!」
 テラコッタは戦士を見送る真剣な表情で√能力者達に敬礼するのでした。

マスターより

森の人
 森の人です。よろしくお願いします。

 今回はシデレウスカードによって怪人となった人物が起こす「不可能犯罪」に挑んでいただきます。
 どんな犯罪なのかと言いますと、√能力により絶対吹っ飛ばされない無敵消しゴムとなった消しゴムで、怪人が子供向け大会で無双してるという犯罪です。
 あまり真剣に考えず、どうぞご参加くださいませ。

 第1章は⛺️フラグメント。たくさんいる怪しい人物のうち誰が怪人なのかわからないので、とにかく大会に参加して遊びまくることで怪人を炙り出そうという内容です。
 ケシバトリオンのルールなどは曖昧です。どんな雰囲気で遊ぶのかをプレイングで書いていただければと思います。
 少年少女相手と楽しく遊ぶだけでも問題ありませんし、怪しい人を率先して探しケシゴバトルを挑んでもいいと思います。
 なお、√能力を使って参戦する場合は自動的に怪人と当たります。サジタウルス・ケシゴキングを倒す手段を考えておいてください。

 第2章は特別な⛺️フラグメント。正体を現したシデレウス怪人と戦います。
 怪人とは言いますが、偶然シデレウスカードを拾ったせいで気が大きくなってしまっただけの元一般人。ある意味被害者でもあります。持っているシデレウスカードを破棄さえすれば人間に戻れるはずですので、できるだけ生きて帰してあげてください。
 怪人名は「サジタウルス・カエサル」。指の力が異様に強く、消しゴムを弾き飛ばして戦います。

 第3章は👿フラグメント。シデレウスカードをばら撒いている元凶との戦闘です。こっちはもうギタギタにやっつけちゃってください。

 それではよろしくお願いします。
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よろしいですか?

第1章 冒険 『玩具で世界征服』


POW パワ―重視でバトルだ!/大人げない体格差でなんとかする
SPD スピード重視でバトルだ!/大人げない技量でなんとかする
WIZ テクニック重視でバトルだ!/大人げない金の力でなんとかする
√マスクド・ヒーロー 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

米満・満代
【POW】で勝負!
心情
ホビーとあれば現役小学生(欠席がち)の私の出番ですね!
レッツ!ケシゴバトル!

行動
ドノーマルのケシゴーレムを金ピカに塗装して「ゴールデン・ゴージャス・(ケシ)ゴーレム」と名付け愛機とします。
正々堂々真正面からぶつかり、勝って傲らず負けて腐らず対戦相手と健闘を讃え合います。
「よろしくお願いします!」
「行っけぇ!ゴールデン・ゴージャス・ゴーレム!」
「対戦、ありがとうございました!」
「ケシゴバトルの中でお互いを理解し合い、成長し合うことができるんです!『ケシバトリオン!』は誰かを傷つけるための道具なんかじゃありません!」

連携・アドリブなどお任せします。

 わいわいがやがやと賑わっている大会会場。そこにワクワクした様子で足を踏み入れる少女が一人……米満・満代です。
 同年代の少年少女が一生懸命に、楽しそうにホビーに熱中している様子を見ていると、満代も『ケシバトリオン!』に挑戦したい気持ちがおさまらなくなってきます。
「わあ〜! 会場内での販売もしてるんですね」
 きょろきょろと辺りを見渡していた満代が目を付けたのは会場の一角。そこにはケシバトリオンの主役、消しゴムおもちゃのケシゴーレムがワゴンに山と積まれ鎮座しておりました。
「お嬢ちゃん、ケシゴバトルは初めてかい? それじゃあこのケシゴーレムがいいね。すごく使いやすいから初心者におすすめだよ」
 満代は店の主人にシンプルなデザインのケシゴーレムを手渡されます。こぢんまりとした可愛らしいサイズのケシゴーレムですが、その個体はなんだかやけに自分の手に馴染むような気がして……迷わず満代はそのケシゴーレムを自分の相棒にすることに決めたのでした。
 そうと決まればカスタマイズです。カラーリングをしたりシールをつけたり、アタッチメントをつけて……オリジナルのケシゴーレムを作ることができるのが『ケシバトリオン!』の醍醐味です。
「セレブである私が扱うケシゴーレムとなれば、カラーリングは金ピカと決まってます!」
 眩しいほどに金色一色に染まったケシゴーレム。一生懸命に手を加えて完成させたそれを、満代は満足げに頭上へ掲げるのでした。
「これが……私の愛機! 名付けましょう、あなたはゴールデン・ゴージャス・ゴーレム! これからよろしくね…!」

 その後、満代は会場にいる少年少女と満足いくまでケシゴバトルを行いました。負ける時も、勝つ時もあります。しかし、バトルの後にはお互いの健闘を讃えて笑顔で握手……!

 ある時は少年と——。
『へへっ! ……お前強いな!』
「あなたとケシゴーレムの連携も素晴らしかったですよ。対戦ありがとうございました!」

 ある時は老人と——。
『これで終わりじゃあ! ケシゴフレイム!』
「耐えて! ゴールデン・ゴージャス・ゴーレム! ……ふふ、それじゃあ今度は私たちの番ね。行っけぇ!」

 ある時は怪しい黒ずくめの男と——。
『サージサジサジ! 金ピカとはいいセンスをしているねえ〜〜! わたしのサジタウルス・ケシゴキングほどではないですが……悪くないケシゴーレムだ!』
「まあ、ありがとうございます。あなたのケシゴーレムも素敵ですね!」

 満代は全力でケシバトリオンを楽しく遊ぶのでした。

「『ケシバトリオン!』……こんなに楽しいのに、この会場のどこかに悪さをしている怪人さんがいるんですよね」
 そのことを思うと、満代は寂しげな気持ちになってしまいます。こんなにも熱く楽しめるものを持っているというのに、どうして悪いことをしようとしてしまうのでしょうか。遊んでみてわかりました。ケシゴーレムというのは決して争いの道具ではありません。対戦をすることで、お互いを理解し合い、成長しあうことができる最高の|相棒《ホビー》なのです。決して……決して、『ケシバトリオン!』は誰かを傷つけるための道具なんかじゃない!
「……そう伝えるために、怪人さんを見つけなければいけませんね」
 強まる思いを自分の中で確かな言葉にして、怪人を見つけるべく満代は動き出すのでした。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

リニエル・グリューエン
【wiz】
√マスクド・ヒーロー、ここにもシャリス神の威光を知らしめ、布教につなげるわ!
さしずめ、迷い子達を救うためにも『ケシバトリオン!』なる物に挑戦だけど…,力なければ語る資格なし!ここは、金の力で栄光を!
さぁ、行くがいいわ、消しゴム教皇『ケシゴエロファント!』

…あら?「姉ちゃん、金の力にモノを言わせちゃ、ケシゴマスターの道は遠いぜ、本当のバトルの楽しさを教えてやる」ですって?
あははっ!ならば汝を踏み砕いて、ケシゴロードの道をゆくわ!
さぁ、かかってきなさい!
(この後、めちゃくちゃ楽しみ合い、互いをリスペクトし合い)

な,中々楽しいわね、これ!
なのにインチキとは…、救済もまた、わたしの仕事ね

「√マスクド・ヒーロー! ここにもシャリス神の威光を知らしめ、布教につなげるわ!」
 『ケシバトリオン!』の大会会場に足を踏み入れ、大きな杖を掲げて声高々に宣言する一人の女性がいます。彼女の名はリニエル・グリューエン。彼女の信じるシャリス神の威光を全ての√に伝えるべく行動する一介の信仰者です。
 怪しい怪人、そして迷える子羊がこの会場にはわんさと存在する。その一切衆生にシャリス神の教えを授け、救って差し上げたい……その一心で会場へと現れたリニエルですが、どうやら周りの人達はそんな彼女の存在をたいして気にしていない様子。
 それと言うのも、『ケシバトリオン!』会場に集まっているのは老若男女問わず皆ケシゴマスター……。ケシゴマスターと|対話《コミュニケーション》できるのは、同じケシゴマスターの魂を持つものだけ……!
 ……というわけで、布教をするためにはまずケシゴマスターになる必要がある。周囲の少年たちから逆に『ケシバトリオン!』を布教されることになってしまったリニエルであった。

「よし、大体ルールは覚えたわ! ふふん、早速バトルにも挑戦よ!」
 自信満々に|武舞台《テーブル》に向かうリニエル。その手には彼女の相棒ケシゴーレム……消しゴム教皇『ケシゴエロファント』が光る!
「ククク……! 姉ちゃん、随分自身ありげじゃねえの」
 その様子を見て、|武舞台《テーブル》の反対側に座るリニエルの対戦相手——帽子を深く被った怪しい男——がおかしそうに笑い声をあげ、声をかけてきます。
「当然! この対戦場所に立てるのは力あるものだけ……わたしはケシゴバトルは初めてだけど、そこらの少年少女に負けないくらいの力を持っています。……お金という大人のパワーをね!」
 バーン! と勢いよく手元のケシゴーレムを見せつけます。そう、リニエルは相棒ケシゴーレムを最強カスタマイズするために大金という代償を支払いました。全ては、勝利という栄光を掴むために……!
「ククク……なるほどねぇ。しかし姉ちゃん、金の力にモノを言わせてるようじゃあケシゴマスターへの道は遠いぜ。……来なよ。本当のバトルというものを享受してやるぜ」
「あははっ! ならば汝を踏み砕いて、ケシゴロードの道をゆくだけだわ! さあ、かかってきなさい!」
 リニエルは高笑いをひとつ、彼の喋る言葉を戯言として跳ね飛ばします。お互いに相棒ケシゴーレムを|武舞台《ステージ》にセッティング……どちらが正しいのかはケシゴバトルで決めるといたしましょう。
「「……ケシゴバトル!! ゴー!!」」


「へー、結構テクニックが必要なのね」
「おうよ。初めてにしちゃカスタマイズは悪くないが、やっぱりケシゴ捌きは一朝一夕で身につくものじゃないぜ」
「……あ! 今の技すごくない?! わたしにもできた!」
「やるじゃねえか! へへ……未来の大ケシゴマスターを生み出しちまったようだな…!」
 先ほどまでのドラマティックな雰囲気はどこへやら。バトルを通してお互いを認め合った二人は楽しくケシバトリオンで遊んでおります。
 指で弾くだけの簡単アクションでこんなにも自由自在にケシゴーレムを動かすことができるとは……ケシバトリオンの魅力に完全に魅了された様子のリニエルです。
「ふう……! 中々楽しかったわ!」
 対戦相手に礼を言うと、満足した様子でリニエルは立ち上がります。ケシゴエロファントとリニエルの物語はまだ始まったばかり、これから先どんなバトルが待っているのか……それを考えると楽しくてたまりません。
「こんなに楽しいのにインチキとは……救済もまた、わたしの仕事ね」
 楽しく遊んではいますが、リニエルはここに来た目的を忘れたわけではありません。怪人の討伐、そしてシャリス神の布教を果たすため……リニエルはその場を後にするのでした。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

薄羽・ヒバリ
童心を忘れない大人は素敵だけど、子ども相手にズルしてるとかマジ論外っ
んで、ソイツはケシバトリオンっていうので遊べば誘き出せるんだ
んー。ちょーっとイメージつかないからアニメ観て勉強してこ

うう、ケシバトリオンまじエモ……っ
今まで知らなかったのが人生の損失すぎっ

大会では盛り盛りにカスタムした映えケシゴーレム(ルール厳守)を使用
どこから見ても今日もビジュ最高〜!
ふふ、私のケシゴーレムしか勝たん的な?

くう……っ
やるじゃん、君……!
でも私は、強いカスタムじゃなくてイケてるカスタムで勝つの!
自分の好きを貫き通す大切さ、アニメ第37話で教えてもらったから……っ!
いっけえええ
(目的を忘れて全力で楽しむギャル)

「童心を忘れない大人は素敵だけど、子ども相手にズルしてるとかマジ論外っ」
 今回の依頼の説明を受けて早速現地へ向かおうとする√能力者、薄羽・ヒバリは呆れ顔だ。
 『ケシバトリオン!』については何も知らないヒバリだが……いい大人が子ども向けホビーを使って一体何をやっているのだか。大体怪人のパワーを手に入れてまでやることがそれかよ……。などといった頭が痛くなる話が多い今回の案件である。しかし、どうやら怪人をおびき寄せるためにはこちらも『ケシバトリオン!』について知る必要があるらしい。
「んー……。ちょーっとイメージつかないからアニメ観て勉強してこ」
 ルールとか難しいかもしれないし、ちゃんと調べとかないとだめだよね。こういうホビー関係に関してはヒバリはあまり詳しくない。なのでまずは下調べをしてから現地に向かうことにしたようである。
 さて、『ケシバトリオン!』のアニメは全部で4クール、テレビスペシャルなどを含めるとその総話数は脅威の60話超え。子供番組とはいえ子供騙しではない熱い展開、出会いと別れ、友情! それを真っ向から浴びたミーハーなギャルがどうなるか……!
「うう、ケシバトリオンまじエモ……っ。今まで知らなかったのが人生の損失すぎっ……!」
 こうなった。
 完全に『ケシバトリオン!』ファンとなってしまったヒバリは、オープニングソングで自身を鼓舞しながら胸を張って会場へ向かうのであった。

「ケシゴーレム! セットアップ! ……どこから見ても今日もビジュ最高〜! ふふ、私のケシゴーレムしか勝たん的な?」
 持参したケシゴーレムを|武舞台《ステージ》に|乗せ《セットアップ》、ヒバリは|対戦相手《ケシゴマスター》の到来を待つ。
 ヒバリのケシゴーレムは盛り盛りの盛り過ぎくらいにカスタマイズした相棒ケシゴ。盛ったのは性能ではない、映え意識でキラキラのギラッギラなのだ。当然、ルールに則った上でのカスタムではあるが。

『わー、あのお姉ちゃんのケシゴーレムきれいー』
『…ふん! キラキラしてるケシゴーレムなんて邪道じゃい!』
『へへっ! 俺もあのケシゴとバトってみたいぜ!』

 観客たちが好き勝手なことを言いながらガヤガヤと盛り上がっているなか、ケシゴバトルが始まります。ヒバリの対戦相手は怪しい格好をした男で、持参した金ピカの特注ケシゴーレム、『サジタウルス・ケシゴキング』を得意げに操り戦います。
「サージサジサジ! お嬢さんのケシゴーレム、実に倒しがいがありますねえ! 早速喰らえっ、キングバスター!」
「くうっ……! やるじゃん…っ、君っ……!」
 焦りからくる流れる汗に気付きながらも、ケシゴバトルの中でしか味わえない熱い戦いにヒバリはついつい頬が緩んでしまいます。……というか気付いて! あの対戦相手絶対今回の目的の怪人だよ!
「でも私は、強いカスタムじゃなくてイケてるカスタムで勝つの! 自分の好きを貫き通す大切さ、アニメ第37話で教えてもらったから……っ!」
 すると突然、ヒバリが握るキラキラのケシゴーレムが、主人の熱い思いを受け取ったかのように光り輝きます。ヒバリの手から撃ち放たれたケシゴーレムは光の奔流とともに武舞台を走り抜けると、相手のケシゴーレムに勢いよく激突します。
 ……敵のサジタウロス・ケシゴキングは、√能力によって決して弾かれなくなっている強靭なケシゴーレム。
 しかしそれを弾き飛ばすために、完璧な存在などこの世にないのだと示すために、ケシゴーレムはギャルギャルと勢いを止めずにどこまでも押し続けます。
 実はこの必殺技を繰り出すためにヒバリも無意識に√能力を使ってしまってますが……まあそれは一旦いいでしょう。
「わ、わたしの無敵のケシゴーレムが!? そんなことはありえないいいい!」
「ありえないものなんてこの世に絶対ありえないんだって、主人公が言ってたし! いっけええええ、私のケシゴーレム!」
 ついに力負けして|弾き飛ばされ《リングアウトす》る相手のケシゴーレム。
「ば、バカなあああ!!」
 怪しい男はわなわなと震えると、がくりと膝をついて崩れ落ちました。……哀れみを覚えるほどの悲痛な表情を浮かべておりますが、この男に負けてケシゴーレムを奪われた少年少女はかなりの数います。彼らからすると胸が空くような光景でしょう。

 しかし、今のヒバリにはそんな光景は目に入りません。初勝利にはしゃぎ、すぐにでも次の対戦相手と戦いたい! ……ただただそんな思いでいっぱいです。
 ——こうして新たなケシゴマスターが一人、この世に誕生したのでした。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

シュガーポップ・シュガージャック
面白そうな遊びじゃないか。飛び入りだがボクも参加させておくれよ
ボクの相棒はコイツ、その辺のケシゴマスターおじさん達から譲って貰った(ヒント:魅了と催眠術)強化パーツでゴテゴテに飾った完璧なケシゴーレム
その名も『パーフェクト・シュガーくん』総重量1キロ超え!
見せてあげよう、姫プの力を!
ゴー、シューッ!
……
ふふ、重すぎてあんまり動かないや。そりゃそうだよ
だがこの重さは防御力の裏返しでもある。このままジワジワと追い詰めて…
あれ
なんかお相手キッズのケシゴーレムが光りだしたんだけれども
なんかドラゴンの幻覚が浮かびあがってきたのだけれども
そんですごい勢いで迫ってくるのだけれども!?
う、うわーッッッ!!!

「面白そうな遊びじゃないか。飛び入りだがボクも参加させておくれよ」
 盛り上がりは最骨頂を見せる大会会場にふらりと現れたのは甘い香りを漂わせる獣妖のシュガーポップ・シュガージャックです。
 『ケシバトリオン!』は初めて遊びますが…大丈夫! 初心者を見つけてコーチングを行うのが最高の楽しみといういい趣味の大人たちがここにはたくさんいるのです。
 シュガーポップは早速人だかりに囲まれて、ケシバトリオン!の奥深さとケシゴーレムの取り扱いについてのレクチャーを受けることになりました。
「なるほど……。このケシゴーレムとそのケシゴーレムを合体させると強いんだね。ふふふん、お兄さん……このケシゴーレムもあのケシゴーレムも、ボクがもらってもいいかな?」
「「「「「はい、喜んで!!!!お姫様!!!!」」」」」
 ……良くない取り引きが行われてる気がしますが、まあ本人たちが満足してるのならいいのでしょう。シュガーポップが持つ魔眼が持つ能力は、全ての人を魅了する甘いお菓子の誘惑です。魅了されたことでお兄さん方が貢ぐ君になってしまったことは間違いありませんが、上級者が初心者に現物をポイポイ渡して『ケシバトリオン!』沼に沈めようとする光景はこの世界だと日常茶飯事ですから。

 ホクホク顔でたくさんのケシゴーレムを手に入れたシュガーポップは、それらを合体させて最強の相棒ケシゴーレムを作り上げていきます。
「……ここにデコレーションをして、お砂糖をかけて……できた、ボクの完璧なケシゴーレム! 『パーフェクト・シュガーくん』!!」
 テーブルにどでーんと聳え立つデコレーションケーキの如き見栄えのそのケシゴーレムこそ、シュガーポップが作り上げた最高傑作です。なんとその総重量1キロ越え!!

 早速パーフェクト・シュガーくんの初陣といきましょう。シュガーポップは|武舞台《つくえ》の前にて腕組みをし、挑戦者を待ちます。やがて現れた対戦相手の少女はシュガーポップのケシゴーレムを見てびっくりした表情です。
「ボクの相棒の前に立ちはだかる敵は全て踏み潰されるのみ……。悪いけど蹂躙させてもらうよ」
 シュガーポップのその言葉に、少女はこくりと頷きます。そして、自分の相棒ケシゴーレムを|武舞台《つくえ》に|召喚《セッティング》。シュガーポップのケシゴーレムと比べるとまるで巨人と兎……体格差は圧倒的です。
「見せてあげよう、姫プの力を!! パーフェクト・シュガーくん発進! ゴー、シューッ!!!!」
 ぺしんっ。シュガーポップが勢いよく指で弾いたケシゴーレムはずしんずしんと音を立てながら動き出し……2ミリくらい動いて止まりました。
「…ふふ、重すぎてあまり動かないや」
 そりゃそうだよ。
 しかし、重いということは|吹き飛ばされる《リングアウト》のリスクはかなり低いということを意味します。|武舞台《つくえ》の8割を占領するほどの大きさのシュガーくん。想定通りの蹂躙とはいきませんでしたが、動かざること山の如し。兵法に則ってじわじわと追い詰めて踏み倒してやることにいたしましょう。
 悪そうな笑みを浮かべ対戦相手のケシゴーレムを見つめるシュガーポップ。対戦相手の少女はごくりと唾を飲み込み……覚悟を決めたように目を見開きます。
「つかうしかない……れんしゅうしたひっさつわざ!」
「ふふん……キミに一体何ができる……な、なんですと!?」
 シュガーポップが驚きに思わず立ち上がります。というのも、対戦相手の少女の指先が急に炎に包まれ、それに呼応するように小さなケシゴーレムが光り輝き始めたからです。こ、こんな現象、√能力者以外が使っていいの!?
「らいじーんぐ……どらごんっ!!」
「えっ?えっ!? な、なんかドラゴンの幻覚が見えるんだけれども! ……そんで凄い勢いで迫ってくるのだけれども!?」
 弾かれたケシゴーレムが作り出す光の軌道はまさに竜の降臨…砂糖菓子の巨人を打ち負かすべく、ぐるぐると|武舞台《リング》を縦横無尽に動き回り……そして、恐るべき破壊力を持った体当たりをぶちかましました! これぞケシバトリオン奥義『ライジングドラゴン』! 超、エキサイティング!!
 その勢いはあまりにも強烈で、1キロもあるケシゴーレムが見事に|武舞台《つくえ》の外へと|吹き飛ば《リングアウト》されます。
「う、うわーーッッ!! 奥が深いね! 『ケシバトリオン!』!!!」
 ケシゴバトルは最後まで、何が起こるかわからない。
 シュガーポップは敗北をしたものの、清々しい満足感でいっぱいです。相手の勝利を讃え親指をグッと立てると、そのまま机の向こう側に崩れ落ち|見えなくなっ《ノックアウトされ》たのでした。
 
🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 冒険 『シデレウスカードの所有者を追え』


POW 戦いを挑み、シデレウス化した人物を無力化させる
SPD 他の民間人が事件に巻き込まれないよう立ち回る
WIZ シデレウス化した人物の説得を試みる
√マスクド・ヒーロー 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「そ、そんなバカな…? このわたしの無敵の『サジタウルス・ケシゴキング』が敗れるですと…?」
 楽しく遊ぶ…もしくは調査をしていた√能力者たちの前に、わなわなと震えながら何事かを呟く一人の怪しい男が現れます。
 何を隠そうこの男こそが、シデレウスカードを拾ったことで怪人『シデレウス』となった今回の事件の犯人です。しかし、いつのまにか、誰も気付かない間に男はすでにケシゴバトルにて大会敗退をしていたご様子。自分の敗北を信じられないと言った様子で自身の金色ケシゴーレム、『サジタウルス・ケシゴキング』を見つめます。
「ええい、こうなったらもはや手段などこだわってはいられません! わたしの相棒ケシゴーレムが負けたというのなら、わたし自身がケシゴーレムとなって天下を取ればいいのです!」
 バサァッ! と、怪しい男は被っていた黒ずくめの装束を脱ぎ放ちます。そして、手に持っていたケシゴーレムと融合合体!
 そこに立っているのは、もはや先ほどの男ではありません。消しゴムの能力を吸収し強化されたシデレウス怪人、『サジタウルス・カエサル』です。
 頭部は皇帝カエサルを思わせるデザインの金ピカマスク、消しゴムを放つための巨大な両手、肩からは牛の角が生えております。全体的にどっしりとした体格で、見るからに打たれ強そうです。
「サージサジサジ! ここからはルールをこの会場そのものをリングと見立てたバトルロイヤルに変えさせてもらいます! わたしのキングバズーカでどいつもこいつもリングアウトしちゃいなさい! わたしこそが最強なのです!」
 ドカン! ボカン! 巨大な両腕から放たれる消しゴム砲丸にて暴れまくるシデレウス怪人。会場は大騒ぎです。
 みんなが遊んでいる会場でこんな馬鹿騒ぎ……許すわけにはいきません。被害が大きくなる前に、√能力者たちの本気のバトルでわからせてあげることにいたしましょう。
 気をつけろ√能力者、怪人の使う消しゴム指弾攻撃、そして強烈な体当たり攻撃は結構厄介だ! そしてシデレウス怪人はシデレウスカードを破壊するかリングアウトさせて屈服させるかをしないと負けを認めないぞ! 俺たちはこいつに勝てるのか!?
 次回、『完全勝利! ケシゴマスターよ永遠に!」
 ケシゴバトル、ゴー!
リニエル・グリューエン
【wiz】アドリブ、サポート歓迎。
騒ぎを駆けつけにくれば……、これは見過ごせないわ!
まずは会場の皆を逃さなければね。
『神聖竜詠唱』を使い、まずは会場の皆を避難させるわ。

無事に皆を逃した後、『サジタウルス・カエサル』と対面ね。
「汝は、ケシゴマスターとしての思いを無くしたのかしら?』
初心者のわたしでも感じれたあの熱気、互いのリスペクト。
負けるのは悔しくても、それを乗り越えることで得られる達成感。
「汝が真のケシゴマスターなら、このような暴挙は許せないはず!思い出しなさい、汝の真の思いを!」
もし説得に心が揺らげば、隙をついてシデレウスカードを破壊。
願わくば、汝は皆の目標として高みを目指しなさい。
薄羽・ヒバリ
ちょっと〜!
勝負がついたら握手だってアニメ第1話からの常識じゃん?
――ってウソ、あのお兄さんが怪人で、ケシゴーレムで、それでえーっと……サジタウルス・カエサル!

いいよ、受けて立つ
私が――私達こそがケシゴーレムなんだから!

映えケシゴーレムを握り締め、怪人に向かって猛ダッシュ
指弾攻撃は弾道計算しながらその軌道を見切り、ルートブレイカーの力で無効化
続いて体当たりをDef:CLEARのエネルギーバリアを展開して凌ぐ
シデレウスカードを見付けたらパンプスKick-Assの隠し刃で切り裂いちゃお

つーかケシゴーレムは人を傷付ける道具じゃないっしょ!
思い出して!
初めてケシゴーレムを手に入れたあの日のときめきを!
シュガーポップ・シュガージャック
やめろーッ!
ケシゴーレムは人を傷つけるものじゃない!楽しい遊びのオモチャなんだ!
そう、ボクも思い知った…例えるなら一話限りの敵キャラなのに妙に人気が出て主人公サイドへと光落ちしたかの如く、ケシバトリオンの楽しさを!(くもりなきまなこ)
お前にもワクワクを思い出させてやる!ボクとケシゴバトルで勝負だ!

ボクのケシゴーレムはボク自身だ。そっちだってしてる事だから文句ないだろう
呼び出した『乗騎ナイトメア』に騎乗して、砲丸を避けながら縦横無尽に駆け回る
駆け回るのは避ける為だけじゃない。勢いを溜めているのさ
お前のその鈍重な図体、まるでさっきまでのボクのケシゴーレムだ…重さという強さに奢り、身動きの取れない姿そのものだ!
その奢りごと吹き飛ばしてみせる
キッズよ、技を借りるよ!駆け昇れボク!
【ライダーキック】…いいや、今はこの名が相応しいッ!
今必殺の!ライジーング、ドラゴンッ!
米満・満代
【WIZ】で勝負!

心情
私が『ケシバトリオン!』に触れたのは今回が初めてですが、とても楽しいものでした。
きっと、この人にだって初心はあったはずです!

作戦
【都市伝説『ケセランパサラン』】を使用。
『ケシバトリオン!』やケシゴバトルの楽しかった思い出を思い出させます。
「渾身のカスタマイズを施したケシゴーレムを使い、ケシゴバトルに勝利するのは、もちろん楽しいと思います」
「それでも、初めたての頃はたとえ負けたとしても楽しかったのではありませんか?」
「相手のカスタマイズ、戦略、戦術、自分の中にはなかった発想、それらを取り込んでさらなる高みを目指していく……そんな日々が!」

連携・アドリブなどお任せします。

「サージサジサジ! やっぱりわたしこそが最強のケシゴマスター…いや、ケシゴーレム! わたしが優勝していないこんな大会など無効です! 全てを滅ぼし、わたしの最強を世に示してやるのです!」
 力に酔った口調で両腕から消しゴムを放つシデレウス怪人『サジタウルス・カエサル』。その砲弾の威力はもはやホビーと呼べるようなものではありません。それは兵器、悪夢と呼ばれる代物。逃げ惑う人々は悲鳴を上げ、涙を流し、怒りを叫んでおります。
 先ほどまでの楽しかったケシバトリオン会場を返してほしいという怨嗟の思いが会場に立ち込めております。
 『ケシバトリオン!』は勇気と希望に溢れた夢のある作品。暴力だって描写されることはありますがそれは|競技《ケシゴバトル》の中で起こる|もの《アクシデント》。それをこのように曲解して暴れ回る怪人など許していいはずがありません。

「騒ぎを聞いて駆けつけてきたら……これは見過ごせないわ!」
 法衣をたなびかせて現れた緑髪の√能力者、リニエル・グリューエンは、その惨状に胸を痛めます。
 とにかく、まずは観客たちを避難させなければいけません。横目に入る光景では、消しゴムを構えて気丈にも立ち向かおうとしている少年少女がいるのが目に入りますが、いくらなんでも相手が悪すぎます。
 リニエルはシャリス神へと祈るための杖を手にし、ただ一心に祈り始めます。
「|神聖竜《ホーリー・ホワイト・ドラゴン》よ。今ここに舞い降りて、力足りずとも尽力する全てのか弱き迷い子を助けたまえ!」
 リニエルの白き神聖なる祈りによって、上空から神々しい竜が顕現します。|神聖竜《ホーリー・ホワイト・ドラゴン》は祈りに応え、その願いを叶える存在。リニエルの願い通り、逃げ惑う人々へ力を分け与えます。
『な、なんだ? 体が浮いていくぞ!』
『白い光に包まれて…俺たちを守ってくれてるみたいだ』
 【神聖竜詠唱】によって観客たちは白き光に包まれ、その場にてふわふわ浮遊し始めます。怪人が放った消しゴム砲弾がぶつかっても命に別状はありません。この光は、神聖なる完璧な守りのバリア。このまま安全な場所へと皆を連れて行ってくれます。
 これで、観客が戦闘の余波にて傷つく心配はなくなりました。リニエルはそれを確認すると、ほっとした表情で息を吐きます。
 そしてきっと怪人を睨みつけます。許し難いのは無辜の観衆を痛め付けようとしたこと、そしてそれ以上にケシゴマスター失格の歪んでしまった心根です。
「汝は、ケシゴマスターとしての思いを無くしたのかしら?」
 リニエルは、ケシゴバトルを始めたばかりの初心者です。しかしそれでも、ケシゴマスター達がこの競技にかけるとんでもない熱量、互いに向け合うリスペクトの精神。この一日で多くのものを感じ取ることができました。
 それだと言うのに、明らかに『ケシバトリオン!』歴が長いであろうこの男がそれらを忘れ、怪人となるような薄暗いケシゴマインドを持っていることには腹立たしさすら感じます。
「汝が真のケシゴマスターなら、このような暴挙は許せないはず!思い出しなさい、汝の真の思いを!」
「な、何をいう。ケシゴマスターだからこそではないか! ケシゴマスターだからこそ、勝利を第一に考える。当然のケシゴマインドではないか!」
 強い言葉をかけられて多少揺れ動いたようなサジタウルス・カエサルですが、自身の力に酔いしれるその傲慢な精神はまだまだ変わる様子はありません。
 この輩は痛い目を見て、自身が井の中の蛙であることを理解させる必要があるだろう。そう思ったリニエルは一度退くことを決意します。
 後陣の|√能力者《ケシゴマスター》達。ケシゴマインドに目覚めた彼らにここは一旦、託すと致しましょう。


「ええい、よくわからんが小癪な真似を! わたしのキングバズーカから逃げようったってそうはいきませんよー!」
 苛立った様子でバリアに消しゴムを撃ちまくるシデレウス怪人。それを見ていた薄羽・ヒバリは呆れた表情で自身のきらきら映えケシゴーレムを握りしめます。
「ちょっと〜! 勝負がついたら握手だってアニメ第1話からの常識じゃん?」
 アニメから学んだはずの大切なメッセージを、一体どこに捨ててきてしまったのか…。この怪人を前にすると、ヒバリは憐憫の情さえ湧き上がってきます。ならば、再び教えてあげなければなりません。
 ケシゴバトルの楽しさを、『ケシバトリオン!』の奥深さを!
「サジサジサジ……? あ、あなたっ…よく見たらこのわたしを負かしたケシゴマスターではないですかっ! あ、あなたのせいでぇ〜!」
「えっ!? ……ウソっ、よく見たらあの時対戦したお兄さん! あのお兄さんが怪人で、ケシゴーレムで、それでえーっと……」
「……サジタウルス・カエサルだっ! この恨み、あなたに向けさせていただきますよお〜っ!」
 怒りが爆発した様子のサジタウルス・カエサル。今まで会場に向けていた消しゴムの連打をヒバリ一人に向けて撃ち始めます。それをヒバリは、弾道を完全に読み切ることでするすると回避していきます。回避しきれない砲弾は、【ルートブレイカー】を発動させた右手のケシゴーレムでもって力いっぱい弾き飛ばします。
「……ちゃんと覚えてるよっ!! ……いいよ、受けて立つ。私が、私たちこそがケシゴーレムなんだからっ!」
 猛烈な勢いでヒバリは駆け出し、逆に相手を吹っ飛ばすくらいのつもりで怪人へと接近します。
 そう、相手だけがケシゴーレムと融合を果たしてると思ったら大間違いです。そもそもケシゴマスターというものは相棒ケシゴーレムと一心同体。付け焼き刃の合体怪人など、ケシゴマスターとケシゴーレムの本当の合体連携と比べたらまだまだ底が浅いもの。本当のケシバトリオンってものを見せつけてやるのです!
 ……まあ、ヒバリがケシゴマスターになったのはついさきほどのことなのですが。
「もう……許しません! わたしのミラクルキングアタックで場外まで吹き飛ばしてやります!」
 怒りに震えるサジタウルスは深く腰を落としヒバリを受け止める気満々。肩の角をこちらへ突き出すと、凄まじい威力のタックルにて迎え撃ちます。
 その強烈な攻撃がヒバリに撃ち込まれる瞬間、ヒバリを守るべく、エネルギーバリア『Def:CLEAR』が展開されます。衝撃エネルギーを中和するそのバリアはお互いの体当たりを受け止める防波堤となって、ギャルギャルと火花を散らしながら二人の間にて耐え凌ぎます。
 必要なのは、この距離でした。怪人の目をしっかり見つめて言葉を届けることができる、この距離。
「つーかケシゴーレムは人を傷付ける道具じゃないっしょ! 思い出して! 初めてケシゴーレムを手に入れたあの日のときめきを!」
 ……その言葉が届いたのか否か。わずかに怪人の勢いが弱まったように感じるのは気のせいでしょうか。
 ヒバリは何かを確信した様子でひとつ頷きます。伝えたいことは伝えました。それならば後は、ケシゴバトルとしての決着をつけるのみ。ヒバリはバリアを支える手をぐっと強めるのでした。


「やめろーッ! ケシゴーレムは人を傷つけるものじゃない! 楽しい遊びのオモチャなんだ!」
 √能力者と激しい鍔迫り合いを繰り広げるサジタウルス・カエサルへと、シュガーポップ・シュガージャックが思いの丈を叫び伝えます。
 シュガーポップは呼び出した馬の形の使い魔『乗騎ナイトメア』に騎乗しております。そして、全方位に撃ち出され続ける敵の消しゴム砲弾をひらりひらりと避けながら戦場を縦横無尽に走り回ります。
「そう、ボクも思い知った…例えるなら一話限りの敵キャラなのに妙に人気が出て主人公サイドへと光落ちしたかの如く、ケシバトリオンの楽しさを!」
 そうです、かつてはシュガーポップもケシバトリオンのダークサイドに堕ちかけていた時期がありました……。魅了にて集めた巨大ケシゴーレムにて、子供達を蹂躙しようとしていた|暗い過去《ついさっき》が。
 ひょっとしたら、一歩間違えるとあちら側に立っていたのはシュガーポップだったかもしれません。そう考えると、あの怪人を放っておくわけにはいかないという気持ちがメラメラと燃え上がるシュガーポップでした。
「お前にもワクワクを思い出させてやる! ボクとケシゴバトルで勝負だ!」
「…ええい、ちょこまかちょこまかと、鬱陶しいんですよあなた!」
 怪人は苛立ったようにシュガーポップの方向をきっと睨みつけると、一際大きな消しゴムを使い魔めがけて撃ち出します。
「ちょこまかしてるのは避ける為だけじゃないぞ!」
 跳ね馬となった使い魔で宙を舞うようにしてその弾丸を飛び越え……シュガーポップのスピードは、さらに、さらに増していきます。そのスピードは怪人の強化された動体視力でも追いつけないほど。鈍重な巨人と、俊敏な兎。
 ……はて、この光景はシュガーポップにとってはどこか見覚えのある展開です。
「お前のその鈍重な図体、まるでさっきまでのボクのケシゴーレムだ……重さという強さに奢り、身動きの取れない姿そのものだ!」
「何をいうかと思えば……強者は山の如く弱者の前に立ちはだかるもの! わたしのサジタウルスは不動にして最強なのです!」
「やれやれ、その驕りごと吹き飛ばしてみせる…! ……キッズよ、技を借りるよ!」
 シュガーポップはナイトメアから飛び降り、勢いよく跳躍します。空気を燃やすほどのスピードで走り抜けたシュガーポップは空中でくるくる回転し…やがて構えるのは【ライダー・キック】の体勢。
 しかしそれは、見るものにとある|幻影《イメージ》を想起させるもので……。
「ま、まさか!?!」
『まさか…!?』
『竜の輝きを纏うあのケシゴーレムは……!?』
『出てしまうのか!?』
『あ! わたしの技だ! わーい!』
 観客が騒ぐのも無理はありません。それはまさに、『ケシバトリオン!』界最大の奥義! そしてシュガーポップにとっては先ほど対戦相手から学んだばかりの|必殺技《フェイバリット》!
「今必殺の! ライジーング、ドラゴンッ!」
 光り輝くドラゴンのオーラを纏ったシュガーポップの蹴り技は、やがて一筋の煌めきとなって怪人へと突き刺さります。それは|当然《原作通り》、頑強な怪人の装甲といえど耐えられるものではなく……壁をぶち破りながら怪人を|会場《リング》の外へと吹き飛ばします。
「ば、ば、バカなあああ!!!」
「……奥深いよね! ケシバトリオン!」


 これがケシゴバトルならば完全に|試合終了《リングアウト》。怪人はコンクリート塀に叩きつけられて息も絶え絶え、怪人としての装甲も歪んで息苦しそうにしております。
「そんな……わたしは、わたしは最強のはずなのに……」
 わなわなと震えて悔しそうな怪人。しかしなお、戦う意思は消えていない様子です。自分が最強なんだ、最強じゃないといけないんだ。そういう強迫観念にも似た思いに取り憑かれたまま、必死に立ちあがろうとしております。
 そんな怪人を悲しげに見つめながら、米満・満代が近づきます。
 満代がケシバトリオンに触れたのは今回が初めてです。初心者ということで気後れをする気持ちも少しありましたが、心躍る本当に楽しいバトルができた1日でした。
 きっと、きっとこの怪人にも、自分と同じ楽しかった最初の1日があったに違いないのです。
「……あの人にその時の気持ちを思い出させてあげたい。叶えて……ケセランパサラン」
 満代は√能力、【都市伝説『ケセランパサラン』】を発動します。
 すると、ふわふわした白い毛玉——ケセランパサランがどこからか雪のように舞い降りて……怪人の元へと吸い込まれるように消えていきます。
 ケセランパサランは幸運を届け、願いを叶える都市伝説。満代の優しい願いは確かに怪人へと伝わったようで、全身に力をこめていた怪人は段々とリラックスしてきたような様子へと変わり、その場に座り込みます。
「渾身のカスタマイズを施したケシゴーレムを使い、ケシゴバトルに勝利するのは、もちろん楽しいと思います。……それでも、初めたての頃はたとえ負けたとしても楽しかったのではありませんか?」
「……そうだ。あの頃は負けたとしても笑顔だった。ただ、ケシゴーレムを動かすのが楽しかった。しかし、わたしは…!」
「『勝利』だけを求めてしまったんですよね……気持ちはわかります。でも、あなたにもあったはずです。相手のカスタマイズ、戦略、戦術、自分の中にはなかった発想、それらを取り込んでさらなる高みを目指していく……そんな日々が!」
「そうだ、たしかにわたしには……」
 ハッとした様子で怪人は自身の手を見つめます。ケシゴバトルは確かに勝ち負けが発生するゲームではありますが、その根底に存在するのは友達との交流、リスペクトの精神。いつからその楽しさを忘れてしまったのだろうか……怪人は思う所が多くあるようで、言葉を失ったように静かになってしまいました。


 その様子を見て、笑顔になったヒバリが近づいてきます。
「……ケシゴマスターとしての気持ち、思い出してくれたみたいじゃん! お兄さんのことはケシゴバトルを通して悪いやつじゃないってのはわかってたし……これでハッピーエンドだよね!」
 一度ケシゴバトルを行えば、二人はもう友達です。アニメから学んだその精神を伝えるべく、ヒバリは笑顔でピースサインを送りました。
 そして、リニエルがその横から颯爽と現れます。
「やれやれ、やっとわかったのね。それならもう汝にはその怪人ボディは必要ないわね。さっさと脱いでしまいなさい」
 早速怪人の元に歩み寄ると、胸元から二枚のシデレウスカードを奪い取り投げ捨ててしまいます。
 すかさずヒバリがカードに近づき、隠し刃付きのパンプス『Kick-Ass』にてカードを踏みつけ破り千切ります。
 これで、怪人サジタウルス・カエサルは完全消滅です。融合が解け、そこにいるのは怪人体ではないただの男。もはや怪しい黒装束も羽織っておらず、気弱そうに項垂れる一人の男です。
「わたしは……いや、あっしはなんてことをしてしまったんでヤンスか。みんなに迷惑をかけてしまって申し訳ないでヤンス…」
 うってかわって弱々しく、男は√能力者達に謝り続けます。怪人としての全能感によって溺れてしまった男は、どこにでもいるただの一般人。シデレウスカードなんてものがなければ、楽しく大会に参加していただろうと言うことを考えるとやるせない気持ちです。
「なんとお詫びをしたらいいものか…」
「いえいえ、あなたの本当の顔が見られてよかったです。今の気持ちを忘れないままでいてくださいね!」
 満代がほっとした顔で男に声をかけます。あのまま怪人として退治してしまえば、きっとこの男は完全に駄目になってしまっていたことでしょう。人間として救ってあげられたことに肩の荷が降りた気持ちです。
「闇堕ちから救ってあげられて良かったよ! これでもうボク達、ケシゴメイトだね!」
 シュガーポップが笑顔で男に手を差し出します。戦いが終わったならば握手と決まっています。男ははにかみながらその手を取るのでした。
「あなたのライジングドラゴン……素晴らしかったでヤンス。純真だったあの頃を思い出すようなケシゴテクニック。目が覚める一撃でヤンした…!」
「キミのキングバズーカも大したものだったよ! 今度はボクも勝てるかはわからない……次は武舞台で会おう!」
 友情の握手です! 美しい……!
「願わくば、汝は皆の目標となるような高みを目指しなさい。これを糧とすれば、汝は素晴らしいケシゴマスターとして成長することでしょう!」
 リニエルのその言葉にて、この事件は一件落着となるのでした。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第3章 ボス戦 『『ドロッサス・タウラス』』


POW タウラスクラッシャー
【星界の力に満ちた堅固な肉体】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【一等星の如き光に満ちた世界】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
SPD ドロッサス・スマッシュ
【星界金棒】で近接攻撃し、4倍のダメージを与える。ただし命中すると自身の【腕】が骨折し、2回骨折すると近接攻撃不能。
WIZ アクチュアル・タウラス
【星炎】のブレスを放つ無敵の【金属の牡牛】に変身する。攻撃・回復問わず外部からのあらゆる干渉を完全無効化するが、その度に体内の【星界の力】を大量消費し、枯渇すると気絶。
√マスクド・ヒーロー 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「一件落着……となるわけがなかろう!!」
 突如、乱入者が会場跡地へと姿を表します。
 反省して蹲っている元怪人の男を見つけると、乱入者はその首根っこを掴み、軽々と引っこ抜くようにして後方へ投げ飛ばします。
 投げられた男は会場の設備をぐちゃぐちゃに巻き込みながら吹き飛ばされます。元怪人は今は一般人……本来ならば死んでもおかしくないくらいの吹き飛び方でしたが…設備の中に含まれていた大量のケシゴーレムがクッションとなって気絶するだけで済みました。ケシゴマスターとしての幸運が、男に微笑んでくれたというところでしょうか。
「しばらく様子を見ておったが、やはりこんな半端者にシデレウスカードを与えたのは間違いだったな。…ふん! 使えぬ駒であったわ!」
 現れた乱入者は吐き捨てるように言い放ちます。乱入者は水牛に似た姿を持っており、かなり強そうな雰囲気を身に纏っております。
「我が名は『ドロッサス・タウラス』! 使えぬにしてもシデレウス怪人を倒す程の人類を放っておくのも面倒だ。この場に集まった有象無象よ、纏めてかかってくるがいい! 我が暇つぶし程度に相手をしてやろう!」
 ドロッサス・タウラス……この名前には聞き覚えがある√能力者も多いでしょう。シデレウスカードをばら撒き、怪人を作り出している真の元凶です!
 ……ははーん、さては先ほどの怪人名のサジタウルスの『タウルス』要素はこの怪人から受け継いだものだったんですねえ! もし射手座由来だったらサジタリウスって呼ぶはずだからおかしいと思ったんだよねえ! 作者が間違えてたとかではないわけだよねえ!
 ……こほん。この怪人は|黄道十二星座《ゾディアック》の力を色濃く持つかなりの強敵。ですが……どうやらこのお相手、人類そのものを舐めて舐めて舐めまくっているご様子です。その傲慢さの隙をつけばきっと、勝利を得ることができるでしょう。
 消しゴム遊戯はもはや通用する相手ではありませんが……ケシゴマスターとしての経験はきっとこの相手にも応用できるはず! 思いっきり吹っ飛ばして、事件を本当に一件落着させましょう!
赤星・勇太郎
SPD
アドリブ絡みOK
ヨウカイレッドに変身して参加。
「ヨウカイレッド参上、楽しい遊びで悪事を混ぜるな迷惑野郎!」
と叫び戦いを挑む。
他の仲間がいれば力を合わせて戦う。
動き回りつつスタンビューとを振るい爆発させて行く。
敵のルート能力は激痛耐性で踏ん張る。
一分間耐えてから、こちらのルート能力のレッドバーニングパンチでお返し。
米満・満代
【SPD】で勝負!
心情
恐ろしい程の力ですが……
その油断と慢心、付け込ませて頂きましょう!

戦闘
選択した√能力を使用。
召喚した都市伝説達を三分割し、3回に分けて襲い掛からせます。
「囁いて──『ラジオウェーブ』」
「強力ですが有限のリソースならば、吐き切った所を叩く……ケシゴバトルと同じ要領ですね!」
(というか複数人を相手取るのに気軽に腕を折る技を振るうのは慢心が過ぎる気が……)
(自称神ゆえに、人間などどうとでもなると思っているのでしょうか……?)

連携・アドリブなどお任せします。
薄羽・ヒバリ
出た!今回の事件の元凶
わけわかんないカードをばら撒いて人を駒扱いとか、まーじで何様のつもり?

お兄さんの勝ちたいっていう純粋な心を利用して、大会をめちゃくちゃにした罪は激重
ちょーギルティ!

いくよ、レギオン
あの怪人にわからせるの――ケシゴマスターの友情は永久不滅だって!

Key:AIRを操作して打ち込む指示はCODE:Blast
レギオンが放つ爆破属性の炸裂弾で怪人を狙い撃ち、爆風で動きも封じちゃおう
加えて追い風で仲間を後押し!

星界金棒のリーチに入らないよう注意しつつ、危ない時はDef:CLEARのエネルギーバリアを展開して中和
映えケシゴーレムのラインストーンも、私のネイルも一枚だって欠けさせないし!

「出た、今回の事件の元凶! わけわかんないカードをばら撒いて人を駒扱いとか、まーじで何様のつもり?!」
 薄羽・ヒバリがドロッサス・タウラスを指差し、嫌そうな表情でその所業を弾劾します。
「小娘、我が行ったのは星界の力宿しシデレウスカードをばら撒いたことのみよ。暴れたのも、力に飲まれたのも、その者が未熟だっただけのこと!」
「親切でやってるつもりなら相手をちゃんと選べって言ってんの! お兄さんが持ってたのは勝ちたいって純粋な気持ちだけ……あんたが大会をめちゃくちゃにした罪は激重! ちょーギルティ!」
 ドロッサス・タウラスは何を言われようと知ったことかという態度を崩しません。その太々しい態度に、ヒバリの心も苛立ちます。
 そこへ、先制攻撃を仕掛けるべく一人の√能力者が登場します。電撃を放つ特殊警棒、スタンビュートを片手に現れたのは赤星・勇太郎です。
「とぅ!ヨウカイレッド登場! さっきから聞いていれば、楽しい遊びに悪事を混ぜるな馬鹿者!」
 スタンビュートを鞭のように振り下ろし、勇太郎はドロッサス・タウラスの動きを牽制します。
「ふん、悪くない一撃だが我に通じると思うなよ? 『遊び』だと? 幼稚なことばかりしているからどいつもこいつも稚児の如し貧弱さなのだ! 消しゴムを飛ばして何が『バトル』よ……片腹痛し!」
「遊びによって成長するのは友との絆であって強い弱いではない! お前の基準で勝手に人を定義するなと言っているんだ!」
 勇太郎の爆発する警棒を前に、苛立ったようにタウラスが鼻息を吐き出します。
「話にならんな。我は力弱きものには制御されぬ、従わぬ。やかましい虫ケラはさっさと駆除してしまうとしよう」
 ついに、ドロッサス・タウラスが動き始めます。巨大な金棒……|黄道十二星座《ゾディアック》の力を宿す星界金棒を振り上げて、√能力者を攻撃しようと近付いて参ります。
 
「囁いて、ラジオウェーブ!」
 米満・満代が√能力【|『ラジオウェーブ』による都市伝説の実体化《タタリガミエフェクト》】を発動します。
 語られたことによりうようよと姿を現した都市伝説たちは、ドロッサス・タウラスを押さえつけようと縋り付きます。
「邪魔だ!」
 星界金棒を振り回し、都市伝説を弾き飛ばすタウロス。とはいえ、都市伝説は生半可な強さの有象無象ではありません。それぞれが√能力者には及ばなくともその程度《レベル》に近しい実力を持つらしい……そういう噂《そんざい》です。
 都市伝説たちは満代を守るべく連携して動きます。狙うべきはあの厄介な金棒……そう判断した都市伝説達は、それを奪い取ろうと武器へしがみつきます。
「ぐはは、虫ケラはいくら集まろうと虫ケラ……その証拠を見せてやろう!」
 タウラスは金棒を握りしめ、しがみつく都市伝説もろとも地面に叩きつけます。
 ドッグワァアアン!!
 そのあまりにも強大な質量の一撃は例えるなら隕石の如し。地面に巨大なクレーターをあけると同時に、しがみついていた都市伝説達を消し去りました。
「都市伝説さん!」
「危ないぜ嬢ちゃん! 破片が来る!」
 金棒によって押し除けられた地面の瓦礫は殺人的な破片の散弾となって近くにいた満代へと襲いかかります。
 それをヨウカイレッド、勇太郎は直線上に飛び込むと、自身の体で破片を受け止めます。飛んでくる無数の土砂は頑丈な勇太郎とはいえ無傷ではすまない破壊力。
「ぐぐっ……! うおお、溜めろストレス、燃やせ正義の怒り……!」
 その時、勇太郎の体が真っ赤に燃えたぎります。どんな衝撃が自身の体を苛もうと、この心を燃やす炎は消せはしません。天まで赤く立ち昇る炎は、勇太郎の魂の輝きです。
 これこそ、【レッドバーニングパンチ】を放つ為の準備段階です。魂の炎をチャージしている限り、その間に受けたダメージによって倒れ伏すことはありません。無傷というわけではなく、一旦後回しにするだけなのですが……ここは踏ん張りどころ。この技を使う価値はあるでしょう。

「みんな見て! 怪人も無傷じゃあ無いみたい!」
 素早く金棒の範囲外に避難していたヒバリが声を上げ、怪人をぴしりと指さします。
 見ると、怪人の金棒を振るう腕が……あらぬ方向へと曲がっています。クレーターを作るほどの桁外れの破壊力ですが、その反動もとてつもないというわけです。
「なるほど、強力な技ですが有限のリソースならば、吐き切った所を叩く。そういった戦法が有効と……ケシゴバトルと同じ要領ですね!」
 戦力の1/3を失い悲しげな満代でしたが、その甲斐はあったようだと力を感じられる声色へと変わっております。強力な敵ですが、光明が見えたというところでしょう。
 しかし、負傷を敵側に悟られたというのにも関わらず、タウラスは口を大きく開け笑って見せます。
「グッハッハ! ……わからんか? これほどのハンデをつけて戦わぬと我にとっての『遊び』にならぬということよ!」
 へしゃげた方の腕から無事な方の腕に金棒を持ち替えると、タウラスは平気な様子で立ち上がります。再びぶんぶんと星界金棒を振るい始めるタウラス。
「そう、これこそが『遊び』である! 貴様らの行う児戯とは段違いの楽しみ、強者だけが許される遊戯! ……圧倒的な力による蹂躙よ!」
「なんという自信でしょうか……いや、それは慢心です! あなたが自称『神』だろうと、人間の底力は団結と学習力にあるってことを教えてあげます!」
 満代は都市伝説に指示を出していきます。慢心をしているあの相手ならば、取れる手段もあるはずだ。そう信じて、都市伝説を位置に着かせ戦闘準備です。
「……バトルを通して友情を深め合う|遊び《ケシバトリオン》の方がずっと…ずっと最高なのに! いくよ、レギオン。あの怪人にわからせるの――ケシゴマスターの友情は永久不滅だって!」
 ヒバリは、レギオンコントローラー、Key:AIRを高速タイピングによって操作し、レギオンへと指示を届けます。大切なものを砕き散らそうとするあんな存在には、絶対に負けるわけにはいきません。大事なネイルも、映えケシゴーレムのラインストーンも、一つだって傷つけさせてやるものかと、戦意がみなぎるヒバリでした。

「まずはそこの赤いのを屠るとしよう。グハハハハ、何をしているかは知らぬが狼煙の如く目立つ的よ!」
 タウラスは力を溜めている勇太郎へと目をつけました。手始めに屠るのならば目立つのがいいとばかりに、猛烈な脚力にて一気に勇太郎へと突撃するタウラス。その様は闘牛を思わせる光景です。
 問題は、力を溜めている間の勇太郎は闘牛士のようにひらりと身を躱わすことができないということ。痛みを先送りにする√能力を使ってるとはいえ、この攻撃は致命傷になりかねません。
「くるなら来いっ!」
 勇太郎は魂の炎を集中させながらも、鞭のようにしなるスタンビュートを目の前にかざし、どこからでもかかってこいとばかりに迎撃の体勢を構えます。
「だめです! その金棒を受け止めようとしてはいけません!」
 満代が声を張り上げます。呼び出した都市伝説を一振りで消し去るほどの強大な力……真っ向から対峙していい相手ではありません。
 ものすごい勢いで勇太郎を攻撃せんと迫り来るタウラス。満代は都市伝説をバリケードのように展開させて少しでも勢いを弱めようといたしますが、タウラスの猛攻を止められるほどの壁にはなりません。うなりをつけて金棒の一撃が勇太郎へと迫ります。
「…ちいっ! タイミングは良くないけど、使わないわけにはいかないよね! レギオン、よろしく!」
 ッターン! 
 ヒバリの上空を飛び回るドローン、レギオンに伝えたコードは【CODE:Blast】。爆破の属性を持った弾丸での援護射撃命令です。機械の正確さによって確実にタウロスの眉間へと狙いをつけ……。
 バララララッ!! チュドーンッ!!
 レギオンが放った炸裂弾による爆風が辺りを包み込みます。吹き荒れる爆風、熱量の輝き。……いかにタウルスが強靭といえど、これにはひとたまりもないでしょう。
 命中していれば……の話ですが。
「……今のはなかなか悪くない攻撃だったぞ!」
 ドロッサス・タウラスは星界金棒にて炸裂弾の直撃をガードしておりました。よって、爆風による火力もも金棒に遮られている部分は半減。倒すには至りません……。
 √能力者たちに力を見せつけたことに歓喜したドロッサス・タウラスが大きく口を開けて笑います。
「グハハハハ! 楽しい『遊び』だったがこれにて終焉だ!」
 無事な方の腕にて星界金棒をゆるゆると、√能力者たちに叩きつけるべく持ち上げていくドロッサス・タウラス。もはや直撃するしないは関係ありません。これほど渾身の力を込めたドロッサス・スマッシュは巨大隕石に近しい威力……これを叩きつければ全てが終わります。
「我がドロッサス・スマッシュにて滅びるがよい! 喰らえ!」
 ぼそりと満代が呟きます。
「……やっぱり、慢心しましたね」
 いつの間に回り込ませていたのでしょう。満代の都市伝説の一群がドロッサス・タウラスの背後をとっており…そして、一斉に金棒へと掴みかかります。
 ドロッサス・タウラスのドロッサス・スマッシュは究極の奥義。自身の腕を砕くほどのエネルギー、地にクレーターを作り出すほどの破壊力のその一撃は星界金棒あってこそのものです。
 ……金棒はレギオンの爆炎によって熱を与えられ、柔らかくなっていたこと。都市伝説によって反対側を押さえ込まれていたこと。力を入れるタイミングにて虚を突かれたこと。慢心によってそれらに気付かず金棒を振り下ろしてしまったこと。
 いくつもの理由が重なり、起きることは必然。金棒はぽっきりと空中にて折れてしまいました。
「な、何だとぉーっ!?」
「最初から狙っていたのはその金棒です! へし折るにはあと一歩……足りないかと思っていましたが、ナイスな爆発でした!」
 満代はヒバリへ親指を立てて感謝の意を伝えます。
「とーぜんっ! これこそ友情パワーってやつだし!」
 ヒバリはサムズアップして満代に応えます。レギオンで眉間を狙ったのは金棒で防がせる為…でもあります。|戦士《ケシゴバトラー》たるもの、幾つも|作戦《サブプラン》を練っているものなのです!
「そして思い出して。あんたは爆発を防いでご満悦だったかもしれないけど……爆風には吹き返しの風ってのがあるよね! そして……あんたがいるのはその中心!」
 ドロッサス・タウラスが目を見張ります。自身の方向へ向かって、3人の√能力者達が一斉に突っ込んで来るからです。逃げようにも……言葉通り四方から強烈な風が押しつぶすような勢いで吹き込んで来る為その場から動くことができません。
 そして、タウラスは背後から一際大きな殺気が向かってくることに気が付きます。
「そして……てめぇを守るものはもう手元には無いってこったな。覚悟しろよ……!」
 そこにいるのは、怒りの炎をチャージしきった勇太郎です。今こそ好き勝手やられた意趣返しをする時。追い風にに乗って威力はさらに上昇! 右手の燃え盛る拳を突き放ちます。
「レッドバーニングゥゥ!! パーンチッッッ!」
 炎の一撃が、|黄道十二星座《ゾディアック》の化身の装甲を撃ち破ります。
 自信満々、余裕綽々といった様子だったドロッサス・タウラスにもはやその名残はありません。苦悶の表情を晒し、地に膝を付けるのでした。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

リニエル・グリューエン
【wiz】アドリブや他の方との連携歓迎。

黒幕とご対面だけど……何とも生意気な態度ね。
「暇つぶしとは言うわね?シャリス神に代わり、断罪を執行するわ!」

けど、こちらの攻撃を無効化……厄介ね。
「なら、これならどう⁉︎」
「神の極光」による範囲物量攻撃で、その厚い装甲を削ってみせるわ。
一発一発の威力は弱く、完全無効化により弾かれるから、きっと侮るでしょうけど……それが策よ。
一撃は弱い雷撃も、その分和だけは膨大。
精々馬鹿にして侮りなさいな、300発の小さな針が、穴を開けることもあるのだから!

共に戦う同士がいれば、梅雨払いはわたしがするわ。
「あとは汝が、終止符を打ちなさいな!」

教皇たる私は表には立たず、ただ背中を押し、そして人々を優しく照らす存在だから……。
って、シャリス教団教皇らしく振る舞えたかしら!かしら♪(自画自賛なお調子者教皇)
傷ついた仲間には「生命樹の輝き」で回復も忘れないわ。
シュガーポップ・シュガージャック
ようやく黒幕のお出ましかい。やれやれ
うん?さっきまでの熱血マインドはどこ行ったって?だってボク、ダークサイドな妖怪だし
さあ|夕方6時アニメ《キッズタイム》はもうお終い。ここからは|深夜枠《アダルト》に行こうか

またまた【乗騎ナイトメア】に騎乗して駆け巡ろうか
ただし今度はボクと乗騎、二人で催眠ブレスを放ちながら敵の攻撃や√能力の領域範囲から逃げ回り、撹乱していくよ
最終的に敵が眠ればこちらのもの
悪夢の支配者、ナイトメア。その本領と行こう
敵をちっぽけなケシゴーレムにして、ボクは(黒いモヤのようで不明瞭な)獣妖の姿を晒し【獣妖暴動体】で暴れまわる、そんな悪夢を見せようか
とはいえ夢はあくまで夢。死ぬほどの目にあっても死にはしない。そういうのは他の人に譲ろうか

ふん、遊びを企みに利用したバツさ

「ぐ、ぐうう……今のはなかなか効いたぞ。虫ケラにしては悪くない一撃だった」
 √能力者の一撃によって膝をつくドロッサス・タウラス。しかし、苦痛に顔を歪めてはいるものの未だ余裕そうな口調は健在です。
「星界金棒を破壊したのには驚いた…確かにさっきまでの我は少々舐めすぎていたか……。ならば、少しばかり本腰を入れて、虫ケラ退治をするとしよう!」
 ドロッサス・タウラスは金棒がなかったとしても、星界の力満ちる肉体そのものが恐るべき武器。むんっ! と筋肉をパンプアップさせ、やる気満々な雰囲気です。
 緑髪の|神聖祈祷師《ホワイトクレリック》、リニエル・グリューエンはタウラスを厳しい視線で見つめ、呆れたように言葉を発します。
「虫ケラ虫ケラと……生意気な態度は治らなかったようね。シャリス神に代わり、このリニエル・グリューエンが断罪を執行するわ!」
「グハハハ! やってみろ!」
 ドロッサス・タウラスは間髪入れず、鋭い足刀蹴りをリニエルに対して放ちます。手負いだというのになんというスピードと技の切れでしょう。リニエルはそれを紙一重で回避します。
 標的からは外れたタウラスの足技ですが、その一撃は空気を割き空間を砕き、そこから生じた光の帯が一等星の如き光の奔流をあたりに放射いたします。
「…くっ、眩しい!」
「そして我の本当の標的は貴様だぁ!」
 タウロスが叫んだ先には『乗騎ナイトメア』に乗って光の奔流から逃れようとするシュガーポップ・シュガージャックの姿があります。いかに素早い獣であろうが、光のスピードからは逃げられません。騎手ごと獣を飲み込む光の奔流……シュガーポップは全身を襲う星界のパワーに苦しみの声を上げます。
「いけないっ、……生命樹よ、かの者の救う光を!」
 リニエルは自身の崇めるシャリス神へと一心に祈りを捧げます。すると、大地が急に隆起し、そこから一本の巨大な大木がみるみる伸び始めました。その見るからに神聖そうな大木が放つ【生命樹の輝き】は、浴びるものに祝福と癒しを与えます。
 光から逃れ、走り続けるシュガーポップの傷跡が段々と癒えていくのが確認できると、リニエルはほっと息を吐きました。
 さらに、生命樹の根はタウラスの作り出した空間のヒビを縫い止めるようにすくすくと伸びていきます。√能力を巧みに利用した対処法に、タウラスも厳しい顔を隠せません。

「やれやれ、逃げ切れると踏んだけどそう甘くもないか」
 シュガーポップは獣騎ナイトメアで走り続けながら、自身を癒すリニエルの光に感謝します。
 同じ光でもタウラスの放つ方の光は、流石に平気な表情ではいられない殺人的な威力でした。しかし、あのような攻撃を喰らうことは二度とないでしょう。
「もう、覚えた」
 シュガーポップの速さでは光には太刀打ちできませんが、タウラスの動きから星界のエネルギー波が来る方向をを予測し、対処して動くことならば可能です。
 獣騎ナイトメアを巧みに操り、光のヒビの中に入らないように飛び越えながらシュガーポップは進み続けます。
 シュガーポップの顔はいたって冷静。シデレウス怪人と戦闘をしていた時のような熱い感情は鳴りを潜め、怖さすら感じるほどの暗い目つきにて敵を睨みつけております。それもそのはず、そもそもシュガーポップが属する|属性《アライメント》は|悪性《ダークサイド》。獣妖「ナイトメア」が目覚める時間がやってきたということです。
「さあ|夕方6時《アニメキッズタイム》はもうお終い。ここからは|深夜枠《アダルト》に行こうか…」
 シュガーポップの口から、甘い香り漂わせる催眠ブレスが流れ出でます。同時に、その香りは騎乗する獣騎ナイトメアからも生じており、二人の作り出す眠りの煙がまるで飛行機雲のような帯となってあたりに振りまかれます。そして、タウラスの周りをぐるぐると走り回るうちにその煙は中心のタウラスを包み込む雲となり……眠りへの誘いにてドロッサス・タウラスを撹乱するといたしましょう。
「こ、これは…!」
 百戦錬磨のドロッサス・タウラスはすぐにこの香り……そしてシュガーポップの意図に気が付き、同時に対処を迫られます。神聖たるゾーク12神の一人といえど、催眠ガスのようなものからは生体である以上逃げられません。すぐにこの場から退かなければ、無防備な眠り姿を晒すこととなるでしょう。
 とはいえ、虫ケラと見下す相手から逃げ出すなど、己のプライドが許しません。ここは、最終手段を使う時といえましょう。
「小賢しい真似をしおって! よかろう、この世の地獄を見せてやるわ!」
 そうしてドロッサス・タウラスは自身の姿を変容させていきます。使う√能力は【アクチュアル・タウラス】、無敵の金属の牡牛に変身して、全てを焼き尽くしてしまう算段です。

「小賢しいのはどちらかしら!」
 タウラスの怪しい動きに、リニエルがすぐに反応します。無敵の金属といえど、変身しきる前ならば攻撃は通るはずです。天へと手を向けると、シャリス神の威光、電気の渦が天空にて渦巻きます。
 ——それはまさに青天の霹靂。√能力【|神の極光《ディヴァイン・ジャッジメント》】による300もの雷を降らせるための準備段階です。
 リニエルは神の怒りを降させる|標的《ドロッサス・タウラス》を聖杖にてぴしりと指定します。
「神撃よ、驟雨の如く降り注げ!」
 カッ!!!!
 天から迸る雷が、変身途中のタウラスを打ち貫きます。先ほども言ったように、光から逃げられる獣など存在しません。雨のように無数に降り続ける雷の槍によって、タウラスはその場に縫い止められるのでした。
「ぐ、グオオオオオ! だが、効かぬ! 効かぬぞぉ!!」
 【|神の極光《ディヴァイン・ジャッジメント》】の弱点は、ひとつひとつの攻撃自体の威力はかなり弱体化されてしまう、というところにあります。ドロッサス・タウラスの変身を止めるほどの火力は、どうやらこの雷には不足しているようで……リニエルの額に冷たい汗が流れます。
「グオオオオ……グハハ、ハ、ハ! どうやら我を止めることはできなかったようだな! 恐れるが良い! これこそ我の最強形態、アクチュアル・タウラスだ!」
 無数の雷に撃たれながら、金色の牡牛へと変身したタウラスが獣の四肢を使い立ち上がります。無敵のボディと化したその体表にはもはや雷は通用しません。リニエルの猛攻をものともせず、前に進み出でようと足を動かします。
 そのタウラスに対し、リニエルができることはただひとつです。降らす雷撃の勢いを、さらに増していくのみ!
「おおっ……? 効かぬとわかっている攻撃だというのに……グハハ、所詮は虫ケラの浅知恵! すぐに踏み潰してやろうぞ!」
「…精々馬鹿にして侮りなさいな、強大な岩だろうと……300発の小さな針が、穴を開けることもあるのだから!」
 バリィィッ!!
 突如、聞き馴染みのない音がタウラスの体内にて響き渡りました。無敵のはずのアクチュアル・タウラスの鋼鉄ボディ……しかし、それにはほんのわずかの傷が存在していたのです。それは、タウラスの装甲が√能力者の必殺の一撃にて砕けた時に刻みつけられたもの。巨大な牡牛の怪物へと変容した後も、その傷は治ることなく体に残っておりました。
 その傷は、数ミリほどのわずかなもの。しかし、確かに存在する突破口です。数百の降り注ぐ雷撃、ついにその一つが、タウラスの唯一の弱点を刺し貫きました。
「グアアアアアア!!」
 悶絶するドロッサス・タウラス。神罰たる雷撃は無敵の鋼鉄ボディの表面を、寄るべなく駆け巡り続けておりました。そしてついに見つけた自分たちが進むべき道……全ての電撃エネルギーがタウラスの体内へと流し込まれたのです。きっと内側から肉体を焼かれるというとてつもない痛みがタウラスを襲っていることでしょう。
「さあ、梅雨払いは済みました! あとは汝が、終止符を打ちなさいな!」
 言葉を発すると同時に仰々しく身を翻すリニエル。そして、開かれた勝利へのゲートへと、走り近寄る一つの影が現れます。獣妖「ナイトメア」……シュガーポップ・シュガージャックです。
「さあようこそ、悪夢の世界へご案内するよ…」

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『……はっ!? ……ここは一体?』
 ドロッサス・タウラスが目を開くと、そこには一面の闇が広がっておりました。星界の輝かしい光などどこにもない……一面の闇、闇、闇。
『我が全てを破壊し尽くしてしまったのか…? いや、そんな記憶はない…』
 √能力者は、戦闘跡は、|消しゴム遊び《ケシバトリオン!》の会場は一体どこに行ってしまったのか……。歩いて調べに行こうとしたものの、なぜかできません。タウラスの体は、ちっぽけな消しゴムになってしまっているからです。
『バカな!? 動けん! なんなんだ一体!?』
 そして、そんなタウラスを喰らい尽くすべく……一体の怪物が近付いて参ります。頭、腕、足、全てが異形…暗いモヤのようで全体の姿は捉えられませんが……唯一確信としてわかるのは、それは自身にとって、最も『恐ろしいもの』であること……!
『や、やめろ! 我をどうする気だ! 助けてくれーーっ!!!』

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「冷めない悪夢の中で少し頭を冷やすといい。ふん、遊びを企みに利用した罰さ」
 ひと仕事をやり切ったシュガーポップがニヒルに笑います。地面で大の字になって寝ているドロッサス・タウラスは既に元の姿。どんな悪夢を見ているのやら、大汗をかいて苦しんでおります。
 これぞ悪夢の支配者、「ナイトメア」の本領発揮。眠りの世界でシュガーポップに勝てる相手などいやしないのです。
「これにて本当に一件落着ってわけね」
 リニエルが誇らしげな表情で声をかけてきます。
「よくやりました。長き戦いもこれにて終幕……それでは、汝の手によってトドメを刺すことで、全ての終わりといたしましょう!」
 リニエルがシュガーポップに、最後の一撃を促します。……しかし、シュガーポップはその提案には嫌な顔。
「えー…ボクって悪夢を見せるまでが仕事の妖怪だし……トドメを刺すのは別になあ……。キミがやっていいよ」
 そう言われるとリニエルも困ります。「汝の手で!」と、もう言っちゃいましたし……ここで「あ、そう? じゃあわたしが…」なんて態度は、シャリス教団教皇としては相応しくありません。
「……いいのです。手柄を掴むべきは汝です。教皇たる私は表には立たず、ただ背中を押し、そして人々を優しく照らす存在なのだから……!」
 キラキラした表情で言い切るリニエル。自分が教皇らしい物言いをできていることに実に満足げです。
「えー、いや、いいよ。やってよ」
 それをばっさりと切り捨てるシュガーポップ。
「……あのね。わたし教皇ですので……」
「でも…」「だから……」
 ……などと、眠り続けるドロッサス・タウラスを前に押し問答を繰り広げる二人。
 その言い合いに剛を煮やしたのは「獣騎ナイトメア」。やれやれと言いたげに動き出し、主人たちに代わってタウラスのそばへと近寄ると……。
 パッコーーン!
 勢いよくタウラスを蹴り飛ばします。タウラスは綺麗な放物線を描いて空を舞い、空間の割れ目へと吸い込まれて消えました。

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『う、うおおお! 消しゴムたる我が凄い勢いで空を飛んでいる! 恐るべき怪物から離れるための救いの一撃がら我を光の方へと導いてくれている! これは…! この感覚は……!!』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 さて、これにて本当に一件落着です。
 シデレウスカードの暗躍から皆を守り、救うことができました。
 これで、『ケシバトリオン!』で遊ぶのを邪魔するものはもう誰もいません。
 それどころか……たとえ他の怪人による『ケシバトリオン!』を用いた暗躍があったとしても、まるで何者かが事前に防いでくれたかのようにして、すんなりと解決してしまうことさえしばしばあるそうです。
 ひょっとしたらそれは……ケシゴ|精神《マインド》に目覚めた誰かさんが頑張ってくれているからなのかもしれませんね!
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

挿絵申請あり!

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挿絵イラスト