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腕いっぱいに甘い幸せを抱えて

#√EDEN #ノベル #バレンタイン2025 #お買い物

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 √EDENへのルートを探し、|白・琥珀《つくも・こはく》(一に焦がれ一を求めず・h00174)は路地を歩いていた。
 ゆらりゆら。
 白い袂が、羽のようなマントが、2月の風を受けて靡き、ちりんと魔除けの鈴が澄んだ音色を鳴らす。
 確か前はこの辺りに分岐があったはず。
 記憶を辿る琥珀の背に、声がかけられた。
「あら、何処かにお出かけ?」
 振り返った先にいたのは、クレハ・エテルニテだった。
「はい。√EDENにチョコを買いに行こうかと思いまして」
 髪に結んだ白いリボンを揺らして、琥珀はにこりと笑顔で答えた。
「確かに√EDENならバレンタインチョコも豊富よね」
 √妖怪百鬼夜行でもチョコレートは売られているが、√EDENならばこの世界では売られていないような品物が、たくさん見つかるに違いない。√EDENのバレンタインデーは、他の世界とは一味も二味も違うのだ。
「……ついて行っても良いかしら」
 興味を惹かれたらしきクレハに問われ、琥珀はもちろんですと快諾した。

 そうそう、ここだった。
 琥珀は見覚えのある角を曲がって√EDENへと。
 どこに出たのかを確認すると、琥珀はさっと目的地へと歩き出した。
 下調べは万全。目指すのは、この辺りで一番大がかりなバレンタインフェアが催されているデパートだ。
「なんだかとても人が多くない?」
 どこから来たのだろうと思う大人数がひしめくフェア会場に、クレハの顔は引きつるけれど、混雑するのは当然覚悟してきた琥珀は、ただただ嬉しそうに人混みを渡ってゆく。

「あのチョコ、良くないですか?」
 琥珀が指さす先には……どれ? あまりにチョコレートがあり過ぎて、見極められないまま、クレハは琥珀についていった。
 琥珀が見つけたのは、猫が描かれた缶に入ったチョコレートだった。
「この子たち、みんな可愛いですね」
 おすましした黒猫、キュートな子猫、お洒落な白猫。描かれている猫はいろいろだが、そのどれにも猫がいたずらしたみたいな爪あとが引かれている。
「これとこれ、あ、そちらのも。全部ひとつずつください」
 あっという間に琥珀は猫のチョコレート缶を手に入れて、店頭から離脱した。
 かと思うと、
「あの缶も素敵ですね」
 とまた、別の店へと引き寄せられて。
 ほらと嬉しそうに琥珀が見せたのは、白い蓋にエンボスだけで花びらが浮かび上がっている、上品なチョコレート缶だった。
 もちろん琥珀はそれも即座にゲットする。
「綺麗な缶ね。中に入っているのはホワイトチョコレートだったりするのかしら」
「さあ、どうでしょう」
 首を傾げる琥珀の顔を、クレハはえっと見直す。
「中身が分からないのに買ってるの?」
「はい。ゆっくり考えていたら時間が無くなってしまいますし、売り切れてしまうかもしれませんから」
 見つけたその瞬間が好機なのだ。
「種類とか味とか気にならない?」
「√EDENの日本のチョコですから、どれも味は保証されていますからね。見た目で選んでも問題ないでしょう」
 このチョコレートフェアに並べられるということ自体が、選りすぐりのチョコレートである証明のようなものだという琥珀に、クレハはなるほどねと納得した。

 それから先も、琥珀の勢いは止まらない。
 淡い色彩のイラストが描かれた、紅茶チョコレート入りのティートランク缶。
 ロンドンのテレフォンボックスを模した缶は、立てた状態で飾ることができる。
 可愛かったり、綺麗だったり、素敵だったりする缶を、琥珀は片っ端から購入していった。
「このシリーズ、どれも味がありますよね」
 レトロな喫茶店のメニューにあるような、プリンアラモード、クリームソーダなどがついた缶は、大箱、小箱、全部まとめ買い。
 凄まじい量になってゆくチョコレートに、クレハはそっと琥珀の袖を引いた。
「ねえ、そんなに買って大丈夫?」
「心配ないです。チョコは日持ちするし、ちゃんと保存すれば大丈夫なはず」
「そういうことじゃなくて……」
 琥珀の持つ買い物袋をじいっと見つめるクレハの前に、
「だってほら……」
 琥珀はチョコレート入りのポーチを掲げた。
「こういうの惹かれません?」
 まるでクッキーにとろりとチョコレートをかけたような、おいしそうで可愛いポーチに、クレハも思わずこくりと頷く。
「惹かれるわ」
「でしょう? 良かったらお揃いでいかがです?」
「お揃い……素敵ね。決めた、わたしも買うわ」
 クレハはポーチを握りしめ、これお願いしますと店員に差し出した。

 眺める喜び、食べるおいしさ。
 食べ終わったあと、どこに飾ろうか、何を入れようかと考えるのも楽しみで。
 今年も、琥珀のチョコレート缶コレクションは増加の一途を辿ることとなった。
 おそらくは来年もまた――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

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