シナリオ

善いひとであれ

#√汎神解剖機関 #天使化事変 #羅紗の魔術塔

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 #√汎神解剖機関
 #天使化事変
 #羅紗の魔術塔

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●善い人であれ
 善い人でありなさい。
 それが、おばあさまの教えだった。
 わたしは、おばあさまが大好きだった。善い人であることは、善いことだと思っていたし、わたしはその言いつけに従い、善い人であろうと努めた。
 今もそう。
 かろうじて「人型」と言える化け物。ソレに追いかけられていた。たった一人で。
 惹き付けて、囮になって、なんだか知らないけれど、化け物はわたしに惹き付けられてくれたからいいの。
 この化け物が、村の人に悪さをしないように、村から引き離す。そのためにわたしは逃げている。なんだか、化け物の数が増えているような気がするけれど……これで、いいの。
 わたしが逃げ延びられるかはわからないけれど、みんなを守るのは、善い行いだと信じている。
「はあ、はあ……っ」
 息が荒れる。体は変異して、刺青のように秀麗な模様が浮かんでいる。金属? みたいだけれど、よくわからない。ただ、わたしの体は変異して、普通の人間と違う物質でできているのは知っていた。
 それで、何か変わるわけじゃない。少し不思議なことが起こるけれど、走り続ければ疲れるし、息は苦しくなる。
 大丈夫、もっと、森の方へ。深い森だけれど、化け物だって迷うはずだわ。
 それにおばあさまが言っていたわ。

『善い人でありなさい。善い人のところには、幸運と星が導かれるのです』

●人を助けること
「天使病の話は聞きましたか?」
 ヴェル・パヴォーネは自らの拠点とする教会に人を集め、そう切り出した。
「オルガノン・セラフィムに追われている天使の方について、ボクのところに星がやってきました。ミラさんという方で、真っ白な肌の上に彫刻みたいな模様の神秘金属が張っている方です。オルガノン・セラフィムに遭遇したミラさんは、それを不運としませんでした。『村のみんなが襲われる前に』と自ら囮になって、引き離そうとしています」
 「天使病」とは純粋に善良な心の持ち主がなるもの。ミラのその心根はそれに相当したのだろう。
「村の人が天使なのかはわかりませんが、ミラさんは天使だった。そして、天使の成り損ないであるオルガノン・セラフィムは天使に惹き付けられるようで、ミラさん的には、作戦成功なんでしょうけど」
 これは彼女にとっては断じて「不運」などではない。故にヴェルは徹底して、ミラを憐れむ表現を避けていた。
 ミラにとって、僥倖続きだとしても、待ち受ける危難が無効となるわけではない。
「オルガノン・セラフィムは√能力を使います。けれどミラさんは√能力者ではありません。どうにか逃げられているようですが、いつまで保つのか……。
 それに、逃げきれたとしても、羅紗の魔術塔の魔術師がいます」
 羅紗の魔術塔。アマランス・フューリーがオルガノン・セラフィムを|新物質《ニューパワー》として狙っている。成り損ないでない『天使』を発見したなら、そちらを|新物質《ニューパワー》にしようとするのは明白。
「アマランス・フューリーの他、静寂・冬路、マレーネ・ヴァルハイトなど羅紗の魔術塔に与する√能力者との戦いが待つ可能性があります。
 ……通常より多くの星詠みの干渉があるためか、今回は可能性の分岐が多く、どうなるかはわかりません。アマランス・フューリーは本人ではなく、怪異を放ってくる場合もあります」
 どんな可能性が拓かれようと、臨機応変に対応しなければならない。しかも基本的に戦闘続きで、連戦だ。厳しい任務となる。
「……とにもかくにも、まずはオルガノン・セラフィムを倒して、ミラさんを助けてあげてください」
 よろしくお願いいたします、とヴェルは頭を下げる。
「彼女はこの困難を不運と思っていません。だから、その心のままでいられるよう……彼女の道行きが決して『不運』になんてならないよう、力を貸してください」

マスターより

九JACK
 九JACKです。
 天使事変、開幕です。
 いつも通り、公開から翌日の15時までが一章受付です。断章はありますし、見てからのプレイング投下が好ましいでしょうが、仕事の合間での投下となりますので、少々お時間いただきます。
 基本的にたくさんのシナリオを回したい! という私の願望のため、短期間募集となります。ご無理のないよう、みなさまらしいプレイングをお待ちしております。
 みなさまの切り開く√が善いものとなるよう、努めます。
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第1章 集団戦 『オルガノン・セラフィム』


POW 捕食本能
【伸び縮みする爪】による牽制、【蠢くはらわた】による捕縛、【異様な開き方をする口】による強撃の連続攻撃を与える。
SPD 生存本能
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【黄金の生体機械】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【虹色の燐光】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
WIZ 聖者本能
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【頭上に降り注がせた祝福】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
√汎神解剖機関 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●深い森
 水色の長い髪を靡かせて、少女が走っていた。時折、迫りくる『オルガノン・セラフィム』を確認している。
 深い森。出口は見えない。でも、村からは離れた。
 逃げ続けていれば、みんなは無事だ。きっと、きっと。
 水色の髪の『天使』ミラは、金色の金属部分を仄かに光らせながら、走っていた。
 けれど、オルガノン・セラフィムとて、何もしないわけではない。その不自然に長い腕を伸ばし、『天使』を捕食しようとしていた……!
ミネタニ・ケイ
「善人狙い撃ちの風土病って世界そのものが悪質過ぎるね」

POWで挑戦。
可能な限り味方と連携を取る。アドリブOK。
WZ錦奇装着状態で出撃し、プロジェクトカリギュラを発動して天使の少女に腕を伸ばす敵へぶちかまし(エネルギーバリア+怪力+ダッシュ)を当てて戦闘開始。
戦闘中は天使の少女を追う敵を優先して格闘攻撃(怪力+グラップル+各種攻撃)して追跡を阻止する。
自分狙いの攻撃(とくにはらわたによる捕縛)は可能な限り回避、天使の少女を狙う攻撃は八重の防具+エネルギーバリア+オーラ防御+鉄壁+各種耐性で受け止めて天使の少女を守る。

「化け物に追われてる人が居るって連絡が来たから助けに来たよ。怪我はなかった?」
マハーン・ドクト
(【R・O・C】を使用。雨が降り始め、深い森の中を雨音が支配する。やがて雨脚は強くなり、そこに頭を覆う仮面をつけて歩いてくる。)

本当に、何してんだか、俺。|√ウォーゾーン《クソッタレな世界》の戦闘機械共でただでさえ手一杯、自分でもまだまだ実力不足でひぃひぃ悲鳴上げてるだけだってのにさ。なんてったってこんなとこに首突っ込んでるかな。

(やめだやめ、と頭を振ってから前を見据える。目の前には天使の少女。情報だと、自分が囮になる事を買って出たのだったか。)

随分立派な心掛けだ。俺なんかより、よっぽどヒーロー…あぁいやヒロイン?に向いてるよ。だからこそ。
…「転身開始」

(スマホを取り出し、認証コードを送信。受諾。)
(全身を青のスーツが包み込み、さらにその上から黒いレインコートを羽織る。)

助太刀、させてもらうよ。そっちには悪いけど…一気にいかせてもらう。

(【R・G・C】を使用。降り注ぐ雨の中をプリズムレーザーを分散させ、乱反射させ、一気に広範囲の敵を様々な角度から包囲)

(アドリブ、絡みは歓迎だ)
四之宮・榴
アドリブ・アレンジ・連携歓迎。

心情
……ただ、助けたい。
言葉が通じないかもしれないので、それはスマホの翻訳に…頼みましょう。
助けたい。貴女を逃がしたい。安全を提供したい。
…機械翻訳が、何処まで、信じて貰えるか…分かりませんが…
最悪…行動で、示しましょう…!

行動
間に合うか分かりませんが、オルガノン・セラフィムの間に入って戦闘を仕掛けます。
遠距離はタロットで[貫通攻撃]を、近距離は深海の捕食者で攻撃、[カウンター]、[受け流し]を主流に、ダメージ不可避の時は[ジャストガード]を狙ってダメージを最小限に。
攻撃されと隠密されるので範囲攻撃【見えない怪物達の襲撃】で反撃です。
少女を護る為なら庇います。
ジャック・ザ・リッパー
天使を追う天使擬きを、殺人鬼が追う……つまり、鬼ごっこだね?面白そう!私が鬼ね!

「六六六人衆の殺人鬼、切り裂き魔ジャック・ザ・リッパー……霧夜の悪夢に舞い踊るよ!」

『領域展開「鏖殺領域」』
「さあ、鏖殺だよ!逃げ場なんてないんだから!」
先ずは攻撃対象を指定せず私の全周囲を領域で包み込んで、そこから広範囲攻撃で絶え間無く隙間無く攻撃し続けるね!
これなら敵が√能力で跳んで来たら、領域に触れた瞬間に殺せるよね!

√能力と殺戮刃物で瞬時に
「解体するね?」
「後ろから刺すけど、怒らないでね?」

あんまり美味しく無さそうだけど、食べてみよっかな?
だって私、お腹すいたんだもん!

●慈雨を
「はあ、はあ、はあ……」
 ずいぶん走った。どれくらい走ったのかわからない。どこを走っているのかもわからない。ただまっすぐ……まっすぐ、進んでいる、と信じたい。
 強い気持ち。それだけでひたすら、前に、前にと進むミラ。疲れた。呼吸を整えたい。でも、止まったら、死ぬ。
 怪物が普通でないことだけはわかっているのだ。けれど、走る速度は、落ちてしまう。腕が迫る、迫る。
 追い討ちをかけるように、雨が降ってきた。もう、方角も見失ってしまったのに。……それでも彼女は走り続けた。
 おばあさまが言っていたから。

『一度決めたことは最後まで成し遂げなさい』
『どんなにつらく、苦しいことでも、それを不幸と断じるのは、一度待ちなさい。一度思考を止めて、切り替えるのです。その中に一縷の望みはないかと』
『パンドラの罪は箱を開けたことではありません。箱の中に災い以外のものが入っている想定をしなかったことです』
『ティースプーン一杯であろうと、希望は希望。それを信じ、拾うことが大切なのです』

 雨は視界が悪くなる。あの化け物に目玉らしき部位は見られなかったが、ミラだけをずっと追ってきているのだ。「見えている」可能性は大いにある。それなら、視界が悪くなって、獲物を見失うことがあるかもしれない。
 異形だけれど、足もある。足で地を蹴り、こちらを追いかけてきている。翼を持たぬ者は泥濘だろうと踏みしめねばならぬ。それはあの怪物も同じ。それならきっと、ぬかるんだ土に足を取られて転ぶことだって。
 一つ希望を見出だせば、次々と希望が湧いてくる。それはミラの足を動かす燃料となった。冷たい雨でさえ、心に煌めきをもたらすのだ。

 眩しいな。
 深い森。ただでさえ暗いのに、空は暗く淀み、涙していた。何が悲しいのだろうか。天使になれなかった怪物が闊歩するからだろうか。それとも、天使の死を危ぶんでいるのだろうか。——そうだとしたら、涙するには早すぎる。
 この雨をもたらしたのは一人の√能力者なのだから。

 覆面をつけた男が歩いている。雨脚が強くなり、泥濘んだ地面がぴちゃりと音を立てた。
「何やってんだ、俺」
 思わずといった感じで、男は言葉をこぼす。マハーン・ドクト(レイニーデイ・ホールインザウォール・h02242)は雨の中、動転した思考を回転させていた。
 |√ウォーゾーン《クソッタレな世界》。あそこで生きるのに手一杯だ。戦うのだって、ひぃひぃ言いながら、やっとこさ生きている。余裕などとは縁遠い。
 それなのに、どうしてこんなところまで出張って来てしまったのか。
(やめだやめ)
 助けたいから手を伸ばす。決めたからにはやる。そこに迷いも惑いも必要ない。迷うその思考の瞬間で、ガトリング砲はいくつの弾を吐き出すか、戦闘機械群は何人の命を刈り取るか。考えている暇、のんびりと瞬きをした次の瞬間にも、自分は死んでいるかもしれない。隣にいたヤツが死んでいるかもしれない。そんな世界をマハーンは駆けてきた。
 星詠みの話を聞いて、ここに来た。それが全てだ。
 水色の髪の天使は、自ら囮となり、人を助けようとしている。
(それはもう俺なんかよりヒーロー……いや、女の子だからヒロインか? まあ、だから)
「転身開始」
 スマホに打ち込んだ認証コードが承認される。それと同時、マハーンの全身を青色のスーツが包んだ。目の冴えるような青だ。その上から、黒のレインコートを羽織る。
 雨粒が弾けた。抜けた風に、ミラが目を見開く。
「助太刀、させてもらうよ」
「え」
 パルスブレードでミラを捉えようとしていた腕を切り裂く。ギギャ、と耳障りな悲鳴がした。
 レイン砲台によるレーザー射撃も用い、オルガノン・セラフィムに対処するマハーン。ミラは、助けてくれたのだ、と理解する。
 知らない人だけれど、善い人だ。本当に、信じていれば幸運は来てくれる。そう感じて、ミラは胸の中の希望の灯りを強く保つ。
 けれど、それを打ち消さんとばかりに、オルガノン・セラフィムが数を増やしていた。こんなにいた!? とミラは思わず目を見開く。
 しかし、オルガノン・セラフィムがミラに手を伸ばすより速く、彼らの体にカードが突き刺さった。
 ミラとオルガノン・セラフィムたちの間に割って入るようにして、四之宮・榴(虚ろな繭〈|Frei Kokon《ファリィ ココーン》〉・h01965)が立つ。ちら、とミラの目を見、それからスマホを起動しつつ、声をかけた。
「貴女を助けに来ました」
 翻訳機能を使おうとしたが、そういえば、どの国の言葉で行けば、と思いつつ、翻訳が正確になるよう、シンプルな言葉で伝える。
 タロットを投げ、オルガノン・セラフィムを屠り、牽制しながら。
「ただ、助けたいのです。貴女を逃がしてあげたい。安全な場所で、安心してほしいです。僕たちが道を切り開きます」
 伝わらなくても、行動で示せばいい。榴は敵の気配を察知し、くるりと身を返す。タロットカードで貫通攻撃をし、接近してくる者には【深海の捕食者】を遣わす。巨大な影が、ぬらぁ、と成り損ないたちを蹂躙した。
 それでもまだ、うぞうぞと出てくるオルガノン・セラフィム。どうにか抜けようとするミラ目掛けて肉薄するそれを深紅に輝くパワードスーツ型の機械兵器が弾き飛ばす。豪快なタックルがオルガノン・セラフィムの体を弾き飛ばし、迫りくる者には怪力と重量攻撃の合わせ技で殴り飛ばす。
 グゲ、と倒れていくオルガノン・セラフィム。
 決戦型WZ「錦奇」を纏って現れたのはミネタニ・ケイ(逸般通過超重量級おっぱいさん・h00931)だ。ミラに振り向く。
「化け物に追われてる人がいるって連絡がきたから、助けに来たよ。怪我はない?」
 優しい女性の声。なんとなく意味はわかったのか、ミラは大きく頷く。
 よかった、と胸を撫で下ろしつつ、ケイはオルガノン・セラフィムに向き直る。
(守ってくれている。それなら、留まった方がいい? 目に傷のある人は、逃げてほしいと言っていたけれど)
 ミラは安全な道がないか目を走らせる。駆けつけた三人のおかげで、オルガノン・セラフィムは順調に数を減らしていた。だから今なら、逃げられる道があるはず。
 頭を巡らすミラ。けれど、√能力者たちが覆いきれない隙間はオルガノン・セラフィムの狙っていた。
 飛び上がり、ミラを襲おうとするオルガノン・セラフィム。だが、その体は千々に切られた。
「いいねえ、雨だ。霧雨というにはちょっと強いけれど、雨はいい。死神が出るには、いい日和だ。そう思わない?」
 ジャック・ザ・リッパー(霧夜の殺人鬼/切り裂き魔・h02647)。死神の代名詞のような名を持つ√能力者が、範囲攻撃でオルガノン・セラフィムをバラバラにした。異形の腕も、足も、はらわたも、全てをバラバラに、バラバラバラバラと切り裂いていく。
 ぼてぼてと無残に肉片を散らすオルガノン・セラフィム。ジャックは紫の目をゆらぁ、と歪ませ、くつくつくつくつと肩を揺らす。
「たくさんいる! 天使を追う天使擬きを、殺人鬼が追う……つまり、鬼ごっこだ。天使擬きはヒトじゃないもんね? 怪物だもんね? じゃあ、|鏖殺《ミナゴロシ》だぁ!!」
 嬉々とした声。狂喜が雨音と競り合う。
 恐ろしげなことを言っているけれど、この人も助けてくれている……? それなら、とミラは胸の前で両手を組み、祈るように目を閉じた。

『どうか、優しいみなさまに、希望が灯し続きますように』

 √能力者たちの脳内に響く少女の声。ミラの声だと、初めて耳にした者も何故かわかった。
「面白い! なんかいつもよりすごいことできそう」
 ジャックがそう呟いて、残るオルガノン・セラフィムに切り込んでいく。
「後ろから刺すけど、怒らないでね?」
 【怪異解剖執刀術】でオルガノン・セラフィムを切断。切れた腕を拾った。
「美味しくなさそうだけど、いただきまーす。おなかすいたんだもん」
 がぶり。

(声……言葉が通じるんでしょうか? それに、あの獣人様の言う通り、体が軽い気がする)
(へえ、これが噂に聞いた「天使」が使えるっていう力なのか? ……行こう)
 思考を巡らせながら、榴とマハーンが駆け出す。
 榴に向かい、【生存本能】による攻撃を行うオルガノン・セラフィム。榴はすっと目を細め、【見えない怪物たちの襲撃】で反撃。インビジブルたちが、成り損ないたちの肉を喰らう。隠密など、取る暇もない。
「すごい。『錦奇』が整備直後みたいな動きをするよ!」
 ケイもミラの「声」による恩恵を受けたらしく、オルガノン・セラフィムを千切っては投げ、千切っては投げと繰り返した。
 ただ投げているのではない。なるべく纏まるように、一箇所に集めている。榴を守るように泥濘の中を泳ぐ影も、オルガノン・セラフィムを同じ方へ追い立てた。マハーンもレーザー射撃を主体とし、牽制と誘導を行う
「ごちそうさまでした! あ、食べきってない部分は、ほーい」
 仕上げとばかりに、ジャックもその箇所にオルガノン・セラフィムを投げた。
 【R・G・C】——雨により分散するプリズムレーザーの展開。乱反射したレーザーが、集められたオルガノン・セラフィムを焼き尽くしていく。
「素晴らしい鏖殺だね、フフッ」
 死神が嗤った。
 雨が塵となった成り損ないの天使を流していく。
 本物の天使は、祈りを絶やさぬよう、目を瞑っていた。その敬虔な様子は、なるほど「天使」と形容するに相応しい。
「善人狙い撃ちの風土病って世界そのものが悪質過ぎるね」
 ミラの姿を眺めつつ、ケイが呟いた。
 本当に、その通りだ、と場の誰もが共感した。
 雨は降り続いている。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 集団戦 『オルガノン・セラフィム』


POW 捕食本能
【伸び縮みする爪】による牽制、【蠢くはらわた】による捕縛、【異様な開き方をする口】による強撃の連続攻撃を与える。
SPD 生存本能
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【黄金の生体機械】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【虹色の燐光】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
WIZ 聖者本能
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【頭上に降り注がせた祝福】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
√汎神解剖機関 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●刺す
 オルガノン・セラフィムの殲滅に成功した一同。ミラは彼らに歩み寄り、刺青のように体を這う金色を不思議に光らせながら、助けてくれた「善い人たち」に歩み寄る。
「『助けてくださり、ありがとうございます。あなたたちは一体……?』」
 ミラの発音する言葉がわかる者もわからない者も混在するだろうが、それとは別に、ミラの話している言葉は「あなた」にわかる言語の情報として流れ込んでくる。テレパシー技能に近いものがあるかもしれない。
 ミラは村の近くで先程の化け物に遭遇したこと、村が襲われないよう、村から引きはなそうと囮になっていたことなどを説明した。大体星詠みが話した内容と同じだ。
 言葉の端々を見るに、自分が不思議な力——テレパシーのような意思疎通やバフを与える祈りを扱えることを自覚していないようだ。テレパシーは自動発動のようだが、祈りはどうなるかわからない。
 色々と確認をしてみたいところだが、安堵を浮かべていたミラの顔に、緊張が走る。
「『え、さっきの怪物の『声』……?』」
「え」
 √能力者たちが周囲を見回すと、オルガノン・セラフィムがわらわらとこちらを囲っていた。
 一網打尽にしたのに?
「天使の成り損ないを回収に来たら、本物の天使と遭遇するとは。僥倖と言えましょう」
 涼やかな女の声。紋様の走る白布を纏い、優美な女性がこちらへ歩いてきていた。
「天使を手に入れられるなら、これらは使い果たしてもかまわないでしょう。いきなさい」
 アマランス・フューリー。羅紗の魔術塔の魔術師の一人だ。
 オルガノン・セラフィムを奴隷化し、操っているらしい。|新物質《ニューパワー》のためにオルガノン・セラフィムを集めている話は小耳にしたが……まさか、天使を狙ってくるとは。
 先のオルガノン・セラフィムの数が妙に多かったのは、アマランスの手勢が混じっていたのかもしれない。
 こんな心ある少女を、人類のための生贄に?

 させるわけ、ないだろ。

 ミラは目を見開き、呻くように呟いた。
「『怪物の声が、聞こえる……。怖いひとたちだけど、苦しんでる。操られて、苦しいって。望んでなったのではないのに、死んでまで苦しまなきゃいけないなんて、ひどい……』」

 そうだった。
 |その怪物《オルガノン・セラフィム》も、かつてはヒトだったのだ。
ミネタニ・ケイ
「『楽園は聖者の競争で作られ、盗人の競争はより悪質な盗人のみを生み出す』。なら対処できるうちに盗人はとっちめないとね」

POWで挑戦。
可能な限り連携を取る。アドリブOK。
味方にミラがどさくさ紛れに拐われないよう注意し、前に出て敵の攻撃を引き付ける。
敵の攻撃は八重の防具+エネルギーバリア+オーラ防御+各種耐性で受け止め、味方やミラを狙った攻撃も引き受ける。噛みついてくる敵は膝で下顎をカチ上げたり横っ面を殴って迎撃。
一気に敵が押し寄せてきたら怪力をあわせた百錬自得拳を発動、可能な限り攻撃を繋げて次々敵を殴り倒していく。

「善人は怪物にされ悪人がそれを食い物にする。そういうの、気分悪くて嫌いなんだよね」
四之宮・榴
アドリブ・アレンジ・連携歓迎。

心情
…|彼女《ミラ様》の言葉を…信じるなら…あの怪物は…貴方の…!
僕に出来ることは、これ以上苦しまない様に、操られ尊厳を失うような行いをさせられない様に…して差し上げること、だけなのでしょう、か…
…御免なさい。貴方達だって…好きで、そんな姿になった訳ではないでしょうに…。
…僕を、恨んで下さっても構いません、から。

行動
近距離は深海の遠距離はタロットで[貫通攻撃]を、近距離は深海の捕食者で攻撃[受け流し]からの[カウンター]を主流に、ダメージ不可避の時は[ジャストガード]を狙ってダメージを最小限に。
【見えない怪物達の天泣】で、天から雨の様に、もう二度と操られない様に。
ヒルデガルド・ガイガー
「新手の化け物のようですね。目的が何であれ要らぬ危害を与えるのならば滅却するのみです」

ミラさんの救出のため、オルガノン・セラフィムを一体とも残らず殲滅します。
初手に「呪詛領域」を展開し、同時に「九頭覇竜」で一斉に攻撃します。
ダメージ蓄積の大きな個体から「鬼哭砲」「邪霊両斬」で各個撃破を狙っていきます。
これらの攻撃に「毒使い」「マヒ攻撃」の技能を乗せます。
技能「敵を盾にする」で同士討ちも試しましょう。
「気色悪ぃ化け物どもが、怪異殺しの魔女って呼ばれたこの俺がまとめて灰にしてやるぜ。」
「元人間ねぇ…むしろ彷徨える亡霊はさっさとあの世に送ってやるのが道理ってもんだろ?」

味方の装備に「サプライズ・フューチャー」による強化を付与しつつ、負傷者には「忘却回生」で回復支援します。
敵からの攻撃は「受け流し」でダメージ相殺します。
マハーン・ドクト
(あーあ、と内心でため息を吐く。やっぱこんな状況に首を突っ込むんじゃなかった。|√ウォーゾーン《クソッタレな世界》だけで悪辣さは十分だってのに)

(思わず同情しそうになる。それが余計に腹立たしい。その状況に思う所はあっても、結局どうにもならないのだから)

したくもない事を、動けないのに、無理やりさせられる。…出来ることと言えば、その苦しみを早めに終わらせることくらいか。悪いね、天使さん。耳とか目とか。閉じててもいいよ。聞いていたいものでもないでしょ?

(【R・G・C】を使用。降り注ぐ雨の中をプリズムレーザーを分散させ、乱反射させ、一気に広範囲の敵を様々な角度から包囲、殲滅)

(アドリブ、絡みは歓迎だ)

●哀しみだけが、止むように
 雨が降り続く。空が泣いている。
 ざぶざぶと影が泳いだ。地面を。人が人たる所以の一つは、大地に立って歩かねばならぬということ。二つの足で、立たねばならぬということ。
 天使の成り損ないには羽根がなく、彼ら、或いは彼女らは、二本の足で立っている。歩いている。走って、地面を蹴って、泥濘に踏ん張り、水溜まりが跳ねても、追いかけるしかなかった。
 捕食本能のままに。或いは、生存本能のままに。
 ——人としては、既に死んだも同然というのに、彼ら彼女らは生きようとしているのだ。操り糸の先の人物は、|怪異同然《にんげんではない》とみなしているのに。
 さぞや滑稽なことだろう。
 そんな笑い方、四之宮・榴(虚ろな繭〈|Frei Kokon《ファリィ ココーン》〉・h01965)にはできなかった。
 榴はその琥珀の目を大きく見開いて、ミラを見つめていた。スマホの翻訳機能でコミュニケーションのために奮闘していた榴にとって、ミラの謎の能力は瓢箪から駒だった。けれど、そのすべてをさいわいとするには食むこととなった現実はえぐみが強い。
 苦味ではなく、えぐみだ。コーヒーを嗜み、苦味を好むからわかる。苦味とえぐみは違う。コーヒーのように「好みは分けるが、嗜好品として成り立つ類の味わい」なら、それは苦味の範疇だ。えぐみは違う。えぐみ抜きを怠った山菜はどんな悪食でも吐き出す。腹を壊すことさえある。つまり「食えたもんじゃない」ということだ。
 嚥下するのが難しい。天使を殺そうとするこの異形が声を持ち、意思を持ち、言葉を持つ。それは彼ら彼女らがかつて人間だったという証左。灰汁を煮詰めた汁を流し込まれたような、不味さ。
(|彼女《ミラ様》の言葉を、信じるなら……あの怪物は、貴女の……!)
 そのおぞましい推測を榴は口にしなかった。言えない。言えるわけがない。天使となるほど善良で、無垢なる心のミラが苦しむことなど、決して。
 榴と同じ心持ちで、雨に打たれる男がいた。仮面を被ったままのマハーン・ドクト(レイニーデイ・ホールインザウォール・h02242)は、内心で溜め息を吐きつつ、ミラの隣へ回る。
「悪いね、天使さん。耳とか目とか。閉じててもいいよ。聞いていたいものでもないでしょ?」
 早く終わらせるから。そう告げるマハーンに、ミラはこくこくと頷いた。
 泥濘から、ぬうっと巨大な魚影が顔を出す。ミラと|榴《あるじ》を守るように、ぐるりと回った。

「『楽園は聖者の競争で作られ、盗人の競争はより悪質な盗人のみを生み出す』。なら対処できるうちに盗人はとっちめないとね」
 泥濘を物ともせぬ威風堂々とした様子でオルガノン・セラフィムたちの前に進み出たのはミネタニ・ケイ(逸般通過超重量級おっぱいさん・h00931)。それに続いて、ヒルデガルド・ガイガー(怪異を喰らう魔女・h02961)もオルガノン・セラフィムとその奥に控えるアマランス・フューリーを見据えた。
「新手の化け物のようですね。目的が何であれ要らぬ危害を与えるのならば滅却するのみです」
 淑やかにそう告げたが、直後、ヒルデガルドの赤い目は好戦的に煌めき、オルガノン・セラフィムを射抜く。
「元人間、なあ? それなら、彷徨える亡霊はさっさとあの世に送ってやるのが道理ってもんだ」
 言うなり【|呪詛領域《カースドテリトリー》】と【|九頭覇竜《ノネット・ドレイク》】を発動。発される物々しい気配は、近くの大木を揺るがし、そばにいたオルガノン・セラフィムを太い枝で貫く。それに伴って落ちてきた小枝が、周囲のオルガノン・セラフィムの視界を妨げ、目や皮膚を突いたりしたのは思わぬ僥倖。
 追い立てるように九つの竜頭がうねり、その頑強な顎で肉を噛み、骨を砕いた。
「気色悪ぃ化け物どもが、怪異殺しの魔女って呼ばれたこの俺がまとめて灰にしてやるぜ」
 うぎぃ、と耳障りな断末魔。それを妨げるように降り注ぐ雨音。好戦的に閃くヒルデガルドの声と表情にを拒絶するように、オルガノン・セラフィムたちは腕を伸ばし、牽制を放つ。
 それを潜って、ケイは【|百錬自得拳《エアガイツ・コンビネーション》】を繋げた。
 拳をオルガノン・セラフィムの頬にめり込ませ、飛んできた手を範囲攻撃で弾き、はらわたの飛来を警戒して、再びの拳は腹部へ。【聖者本能】で回復を試みようとするオルガノン・セラフィムには鎧砕きを乗せた一撃必殺。
 技を繋いで、オルガノン・セラフィムたちを屠っていく。隙を見て高みの見物を決めている|盗人《アマランス》がミラを拐ったりしないか気を配っていたが、そのそばには巨大な影と透明な魚たちを操る少女。小柄で華奢だが、誠実な眼差しは騎士を彷彿とさせる。
「かつてはひとだった貴方たちが、これ以上苦しまない様に、操られ尊厳を失うような行いをさせられない様に……」
 金宿る琥珀の瞳が、透明な想いを反射する。
「贄たる我が声が聴こえるのなら、降り注ぎ全てを黒雨を……」
 【|見えない怪物達の天泣《レイン・オブ・インビジブル》】——乞う声。それに応えたのは白鯨。透明だから色は関係ないかもしれない。けれど、どんなものでも、多く集えば「黒」を織り成すのだ。
 今この地に注ぎ続ける雨のように。……まあ、雨というには、鯨は大きすぎる。
 |白鯨《モビーディック》といえば、船を沈めた怪物の名前だ。怪物に宛がうのが正しいだろう。それが、300。
 質量を幻視するような地面すら抉る攻撃。それでもまだ、オルガノン・セラフィムは出てくる。使い潰すと宣言していたが、既にどれだけを隷属しているというのか。
 マハーンが残党のオルガノン・セラフィムを狩りながら、短く息を吐く。
(クソッタレなのは、|√ウォーゾーン《あの世界》だけで充分に過ぎるってのに)
 人の形を失っただけで、権利や尊厳が消失したかのように、消耗品のように、扱われる。オルガノン・セラフィムを隷属し、消費する、羅紗の魔塔およびアマランス・フューリーのやり方は、人類を30%だけ残し、内輪揉めを始めた戦闘機械群とどっこいどっこいだ。戦闘機械群は「機械」であるため、人の心がなくてもいくらか仕方がない分、こちらの方がタチが悪いかもしれない。
 比較するようなことじゃない。それでも、マハーンはオルガノン・セラフィムにも、ミラにも、同情を覚えた。覚えかけて、込み上げる嫌悪に歯噛みする。
 いくら憐れんだって、どうにもできない。
「したくもない事を、動けないのに、無理やりさせられる。……出来ることと言えば、その苦しみを早めに終わらせることくらい、か」
 ちら、と背後を振り向く。榴がそばで、ミラを守るように立ち回り、近くでケイとヒルデガルドが近づけまいと殲滅を続けている。
 早く終わらせる。そもそも同胞だった者たちが無残に殺されていく様を、ミラに見させるわけにはいかない。
 大丈夫、雨はマハーンの味方だ。プリズムレーザーを乱反射し、敵を散り散りにしてくれる。
 【|R・G・C《レイニーデイ・ガトリングコール》】——さらさらと雨とレーザーが降り注ぎ、成り損ないに慈愛をもたらす。成り損ないの肉体は焼かれたことで散り散りとなり、花びらのようにひらひらと落ちた。
 生まれ直したら、また花と咲いて。そうしたらきっと、微笑めるから。
 命を奪うことでしか、救えない。けれど、それだって確かに救いなのだ。胸を張れなくとも……報いられたはずだ。
 【|見えない怪物達の天泣《レイン・オブ・インビジブル》】が止んでも、【|R・G・C《レイニーデイ・ガトリングコール》】が止んでも、空の涙はまだ止まなかった。
 |天《そら》が泣いている。
 善いものであるゆえ、踏みにじられた命に。

「善人は怪物にされ悪人がそれを食い物にする。そういうの、気分悪くて嫌いなんだよね」
 ケイが残るアマランス・フューリーを見据え、吐き捨てるように言う。
 もちろん悪人とはお前のことだ、と睨んだ。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第3章 ボス戦 『羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』』


POW 純白の騒霊の招来
【奴隷怪異「レムレース・アルブス」】を召喚し、攻撃技「【嘆きの光ラメントゥム】」か回復技「【聖者の涙ラクリマ・サンクティ】」、あるいは「敵との融合」を指示できる。融合された敵はダメージの代わりに行動力が低下し、0になると[奴隷怪異「レムレース・アルブス」]と共に消滅死亡する。
SPD 輝ける深淵への誘い
【羅紗】から【輝く文字列】を放ち、命中した敵に微弱ダメージを与える。ただし、命中した敵の耐久力が3割以下の場合、敵は【頭部が破裂】して死亡する。
WIZ 記憶の海の撹拌
10秒瞑想して、自身の記憶世界「【羅紗の記憶海】」から【知られざる古代の怪異】を1体召喚する。[知られざる古代の怪異]はあなたと同等の強さで得意技を使って戦い、レベル秒後に消滅する。
√汎神解剖機関 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

●睥睨
「天使を渡しなさい」
 紋様の光る白布、羅紗を纏い、『羅紗の魔術師『アマランス・フューリー』』は言う。
 羅紗を用いることで、彼女は怪異を隷属化し、操る。オルガノン・セラフィムもそうして操っていた。
 そして、彼女は暗にミラのことを「怪異」だと言っている。
 奴隷は道具だ。道具は消耗されるためにある。人間が消耗するためにある。
 自分が何を言っているのか、この女はわかっているのだろうか?
 いや、この世界の人間に、まともさを求めるべきではなかった。
 理知的に見えてもやはり、怪異を「使う」と考える人間は、しっかり狂っているのだ。
 立ち止まった世界で、くるくるくるくる狂い続けているのだ。
 廻ってしまえばいい。√能力者の、永劫続く生の輪廻に。
ヒルデガルド・ガイガー
「あれが親玉ですね。ならば手加減は要りません、配下の後を追わせて差し上げましょう」

アマランス・フューリーを捕捉次第「呪詛領域」を展開し、「鬼哭砲」で追撃します。
技能「毒使い」「マヒ攻撃」「暗殺」なども乗せておきます。
奴隷怪異が出現次第「九頭覇竜」で一斉に攻撃しましょう。
討ち漏らした敵は「敵を盾にする」で文字通り肉壁になっていただきます。
接近戦に持ち込まれた場合「邪霊両斬」で対処します。
技能「受け流し」にて敵からの攻撃を凌ぎます。
周囲にある物体も盾として活用します。
味方には「サプライズフューチャー」による武器強化や「忘却回生」による回復支援を行います。
「テメェは実に調教し甲斐があるぜ。悲鳴を上げさせてやろうじゃねぇか。命乞いなんてさせねぇ、『くっ殺せ』とばかりの屈辱的なセリフを言わせてやるぜ!」

●災禍あれ
「調教のしがいがありそうだ」
 舌舐りでもするかのような声。嫌みに這うようなそれをアマランス・フューリーに向けながら、ヒルデガルド・ガイガー(怪異を喰らう魔女・h02961)は【|鬼哭砲《オーガバースト》】による霊波攻撃を放ち、闇の神通力を纏う。
 【|呪詛領域《カースドテリトリー》】に呼応して蠢いたのはなんとフューリーの纏う羅紗だった。主の首に巻きつき、呼吸を奪おうとする。
 術の施された布だ。魔術的な力もあり、殺傷力があるのかもしれない。けれど、首を絞められ、少し顔を歪めたものの、その眼差しは静かだ。
 【羅紗の記憶海】から召喚した古代の怪異が、羅紗を切り裂き、フューリーを助ける。そのままヒルデガルドに向かった。
 その様子をヒルデガルドは鼻で笑う。
「はん、お山の大将ってか? 大した猿山だ」
「品性の欠片もないあなたこそ、猿なのでは?」
 お山の大将、高みの見物がお得意とだけあって、口はよく回るようだ。本当に、調教のしがいがある。この澄まし顔が崩れ、屈辱に歪み、自ら死を望む言葉を吐き出す姿を想像すると、なかなか愉快な気持ちになる。
 召喚された古代の怪異は蟷螂のような腕をしているヒトガタ。薄羽がついているが、飛べるのだろうか。
 追撃とばかりに、フューリーは【レムレース・アルブス】も飛ばしてくる。白い幽体のようだが、ヒルデガルドは怪異を喰らう魔女。霊力攻撃を乗せれば、簡単に討ち取れる。掴んで蟷螂の斧から身を守るよう盾にし、蟷螂には毒と麻痺を付与した斬霊刀「黄泉」で切りつけ。
 手下たちを圧倒し、フューリー本人に肉薄。
「自慢の奴隷怪異も、お猿さんほど役には立たなかったみてぇだな?」
「驚きです。これしきで私の首が獲れるとでも? さすがお猿さんだわ」
 ヒルデガルドの袈裟斬りを飛び退いてかわすフューリー。そんな十円のガムほども味のしない挑発では、お猿さんでも怒らない。
 ヒルデガルドは嗤う。
「その余裕、いつまで保つか愉しみだなァ」
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​ 成功

四之宮・榴
アドリブ・アレンジ・連携歓迎。

心情
…この方は、何を仰っているのだろう?
…本当に意味が…分からない。
この|天使《ミラ》様は、人間です。純粋な…とても綺麗なお方です。
…貴方様には…絶対に、渡しません!

行動
面倒なのは、状態異常ですかね?
【唐菖蒲の囁き】を使用します。
戦闘方法が…本来の僕に似てますので、遠距離タイプなら持久力を上げましょう。
|彼女《ミラ様》は、絶対に…狂った貴女様には差し上げられません。
僕は近距離も可能ですが、|彼女《ミラ様》から離れるとその隙を突かれ大惨事は嫌ですから、此処は回復と|遠距離《タロット》での[貫通攻撃]攻撃です。[継続戦闘]が必要なら蜘蛛の糸も使用。ミラ様は庇います。
ミネタニ・ケイ
「地面に額擦り付けて頼んだって渡さない」

POWで挑む。
可能な限り連携を取る。アドリブOK。
敵を至近距離に捉え続けて10秒瞑想する暇を与えず、召喚される奴隷怪異を出現即撃破していく。
味方へ向けられる輝く文字列は八重の防具+エネルギーバリア+オーラ防御+各種耐性で受け止める。
敵が無理に瞑想し始めるか、味方の攻撃で体勢を崩したら一気に踏み込んで怪力と魔力吸収を乗せた百錬自得拳を繋げられる限り叩き込み続ける。

「天使が欲しければ自分が無私の善人になれば良い。自分を高めず至った人を使うことだけ考えるから負ける」

敵を撃破したらWZから出て直接ミラと顔を合わせて自己紹介する。その後は彼女を安全圏まで護衛する。
マハーン・ドクト
ばーか。こんな状況でハイ渡しますとか、言えると思ってんのか。だいたい、渡してほしいっていうんなら、もっと穏便に言ってくれ。散々こっちに暴力消しかけといてからじゃ、とてもじゃないけどそんな気分になりゃしないんだよ。

…ま。そもそも、あんたたちの目的自体が穏便じゃなさそうだから。どっちにしろ渡せねぇんだけどさァ!

(【R・G・C】を使用。まだ雨が降り注いでいるならば雨の中。止みつつあっても…周囲のものはまだ「濡れている」。水溜りもあるはずだ。「雨の結果」にプリズムレーザーを分散させ、乱反射させ、敵を包囲し集中攻撃。瞑想の時間を与えない。)

雨さえしのげれば、とか思ってんじゃねぇだろうな…!こっから先は、雷雨にご注意くださいってなァ!

(【R・V・A】を使用。高圧電流を纏わせたスタンビュートを鞭の様に振るい、雷鳴の一撃の様に叩き込む!)

…雨は、直に止むだろう。お前たちを、洗い流す事によって。

(戦いが終われば、自分のレインコートを天使にかぶせてあげようと。風邪、引いちゃだめだからね。)

●善いひとであれ、善いひととなれ
 雨が降り続いている。冷たい雨が。
 雨はいい。善悪の区別なく、平等に降り注ぐ。あなたがもたらすのは、傘を差してあげる優しさだろうか、共に濡れる優しさだろうか。濡れた人に、タオルを差し出す優しさだろうか。
 優しさなど、怪異には必要ないだろう。そう言わんばかりに雨よりも温度のない無慈悲なる羅紗の魔術師は√能力者に今一度告げた。
「天使を渡しなさい」
「地面に額擦り付けて頼んだって渡さない」
「ばーか。こんな状況でハイ渡しますとか、言えると思ってんのか」
 ミネタニ・ケイ(逸般通過超重量級おっぱいさん・h00931)とマハーン・ドクト(レイニーデイ・ホールインザウォール・h02242)が即座に返す。ケイは「錦奇」の中、マハーンは仮面をしているため、直接表情を伺うことはできないが、不愉快であることだけはありありとわかった。
 渦中の人、天使であるミラはその透明な色の目に、フューリーを映す。
(綺麗なひと。でも、怖い。……特に、あの布)
 無垢であるからか、天使になったことにより研ぎ澄まされた第六感かはわからないが、ミラはフューリーの纏う羅紗を少し、警戒しているようだ。
 眼差しを怖いとは言わないようだ。人の形をしているからだろうか。フューリーはミラをもう「ひと」とは思っていなさそうなのに。
「この|天使《ミラ》様は、人間です。純粋な、とても綺麗なお方です。貴方様には、渡しません! 絶対に!!」
 四之宮・榴(虚ろな繭〈|Frei Kokon《ファリィ ココーン》〉・h01965)はその琥珀に怒りと決意を宿していた。きっと、他の二人も同じだ。そうわかる。
 ミラは人間だ。「天使」になったからって、万能になるわけではない。全能になるわけではない。翼が生えても空を飛べるわけではないし、泥濘には当たり前に足を取られる。少し不思議な力を使えるが、√能力者ほど自在ではない。ただただきれいな心と眼差しの「人間」だ。
 どこかの怪異を宿した男が言っていた。「無辜の民のため、という大義なら、解剖機関も、収容局も、魔塔でさえ同じなのだ」と。
 そうだというのなら、何故に「ひと」を害すのか。
「天使病について、ご存知ない?」
 フューリーは小首を傾げる。嘲りの色はない。ただの純粋な問いかけだ。
 知らなくとも、無理のないことである。元々が極めて稀な風土病であり、外部に伝わるほどの流行をみせたこともない。羅紗の魔塔のあるヨーロッパでさえ、「おとぎ話」という認識が一般的だ。
 善人狙い打ちの風土病。確かに、タチが悪い。更にタチの悪いことに、
「天使病は治りません。成り損ないも、そこの天使も、人間に戻ることはできない」
「人間でなくなれば、組織の庇護の対象じゃなくなると?」
 ケイの投げかけた言葉に、フューリーはさらりとそうですね、と頷いた。
「そういう犠牲は、必要ではありませんか? 生きていくためには。人も、人でないものも、何かを犠牲にして生きている。そんな当たり前の現実を、どうして拒絶するのか」
「そんな当たり前、勘弁だな!」
 既にぼろぼろのフューリーの羅紗。けれどそれは神秘の煌めきを放つことをやめない。白い幽体「レムレース・アルブス」がいくつも召喚される。
 マハーンとケイが反応した。二人がフューリーに向かったのを見て、榴はミラのそばにいることを判断する。
 記憶の海から古代怪異が召喚されるのは阻止できる。瞑想はさせない、とケイは拳を繰り出し、フューリーの鳩尾を狙う。瞑想のために目を閉じようとしていたフューリーは、羅紗を翻し、ケイの拳を受け流した。受け流し自体はできたが、余波はあり、じり、と後退することとなる。
 哀れなる奴隷怪異が主人を守るため、割り入る。ケイはオーラ防御を展開し、拳でレムレース・アルブスを振り払った。手応えがないが、払われてはくれる。
 雨は足を止めた。けれど、それはマハーンの能力が使用不能になったことを示さない。パルスブレードで斬りかかりながら、マハーンは機を見計らっていた。
 ここは森。木は露を孕み、新芽を育む。泥濘は簡単に乾きはしない。水は、雨は、森の友で森の家族。どんな暗い空の下でも、輝けるそれらは反射する。
 ——【|R・G・C《レイニーデイ・ガトリングコール》】。
 霧雨が、フューリーの肌に傷をつけていく。白い幽体を散らしていく。致命の一撃にはならないまでも、細やかな傷はじっくりと心を蝕んでいくはずだ。病のように。
 フューリーが羅紗に浮かぶ模様、文字列に指を走らせる。【輝ける深淵への誘い】を放とうとしていた。
「『だめ! やめて! その布は怖いの!!』」
 悲鳴のようなミラの「声」が響く。フューリーの耳にもそれは届いたのだろう。彼女は目を見開いていた。同時に、羅紗から輝きが失われていることに気づく。
(√能力? いえ、そのような所作はなかった。ということは「天使」の)
「なるほど、益々『欲しい』ですね」
「渡してほしいって? だったらもっと穏便な手法にしてくれよ。散々こっちに暴力消しかけといてからじゃ、とてもじゃないけどそんな気分になりゃしないんだよ」
 マハーンはブレードを振るいながら、右手から左手に持ち替えることでラグを生じさせつつ、右手の裏拳とブレードの斬撃をフューリーに叩き込む。弾き飛ばされた先では、ケイが拳を構えており、鉄拳をフューリーに叩きつけた。
 地面に転がるフューリー。泥濘に染まり、土留色を成す羅紗を縫いつけるように、タロットカードが飛んでくる。
「本当に、何を仰っているのですか? 意味がわかりません」
 ゆっくり、天使の手を引いて、榴が近づく。アマランス・フューリーを今度は彼女が睥睨する。
「欲しいから、なんですか? 暴力でもって欲しいものを手に入れる? 貴女様は一体おいくつなのですか? 今時そんな駄々っ子も珍しいですよ」
「……レムレース・アルブス」
 白い幽体の奴隷怪異に命令を下すフューリー。けれど、怪異を操る羅紗は効力を失い、既に召喚していたレムレースも、たった今、最後の一体がケイにより殴り飛ばされたところだ。
 意味を成さない羅紗を脱ぎ捨て、立ち上がるフューリー。雨は止んでいる。地面はぬかるんでいるし、既に泥まみれだが、雨がないだけ走りやすい。逃げることは叶うだろう。
「雨が止んだから終わり、逃げられるとか思ってんじゃねぇだろうなぁ……!? こっからは雷雨にご注意を!!」
「ぅあ」
 スタンビュートがぴしゃりとフューリーを打つ。白磁の肌につく火傷の蚯蚓腫れ。マハーンの【|R・V・A《レイニーデイ・ボルトアサルト》】はそれを一度きりで済ませたりしない。二度目の鞭が、フューリーを打ち、痛めつける。
 地面からぬらりと顔を出す魚影が、フューリーを飲み込むようにざぷんと泥濘から飛びかかる。加護も隷属も使い物にならない「ただの人間」はあまりにも無力だった。
「天使が欲しければ自分が無私の善人になれば良い。自分を高めず至った人を使うことだけ考えるから負ける」
 殴る相手もいなくなったため【|百錬自得拳《エアガイツ・コンビネーション》】が途切れたケイだったが、√能力じゃないだけで、殴ることはできる。
 「錦奇」を纏うことにより、凶悪さの増した剛腕を振り上げた。怪力と、重量攻撃と、貫通攻撃と。ありったけを込めて、振り抜かれる拳。
 【|剣《グラジオラス》】は敵を癒さず、ただ見つめた。雨で冷えた無私なるあなたの傷のみを包み、癒していく。……まだ√能力者でない天使が、忘れられるように。
 往生際悪く、瞑想を始めようとするフューリーの胸をタロットカードが貫いた。天使の描かれたカードは【節制】。
「狂った貴女様に、ミラ様は渡しません。絶対に」
 欲張るな、と釘を刺すようなカードに仕留められ、フューリーは死に連れ去られて消えた。

 ケイが「錦奇」から出て、ミラと顔を合わせる。
「はじめまして、ミラさん。ボクはミネタニ・ケイ。怪我はない?」
「『はい。大丈夫です。他のお二方も、名前を伺ってもよろしいですか?』」
 ミラは柔らかく笑みながら、恩人たちに問う。マハーンはミラの肩にレインコートをかけながら、榴は恐縮しつつ、名乗った。
「マハーン・ドクトだ」
「……四之宮・榴と申します」
「『ミネタニ様、マハーン様、シノミヤ様。助けてくださり、ありがとうございました』」
 深々と、ミラはお辞儀をする。
「ミラ様がご無事でよかったです」
「オルガノン・セラフィムも蹴散らしたし、安心して村に帰れるね」
 ケイの言葉にはっと目を見開くミラ。
 そう。みんなを危険から遠ざけるために、一人で駆けていたのだった。恐ろしくも悲しい生き物がいなくなった今、戻っても平気になった。帰っても、いいのだ。
 ミラの頬を涙が伝う。自分のことなんて考えていなかった。考えていなかったけれど、それでも、もう帰れないかもしれないことは寂しさとして降り積もっていたのだろう。
 震えるミラの背を、マハーンはそっとさすった。……あのオルガノン・セラフィムがミラの知人だった可能性はあるが、村の全員が全員、ああなったわけではないだろう。
 帰りたい場所があって、そこに帰ることができるのは、本当に……いいことだ。当たり前に赦されるべきことのはずなのに、許されない世界もある。この無私の善人が赦しから拒絶されなくてよかった。
 木々の合間から、日が射す。傾きかけているけれど、雨が止んでいることを示していた。きっと、ミラの頬を伝うのは、帰りそびれた雨の残滓だ。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

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