【天使化事変】戦え!正義のメタルエンジェル!?
「ぱんぱかぱーん!パンドラが来ましたよ!」
パンドラ・パンデモニウム(希望という名の災厄、災厄という名の希望・h00179)は元気よく声を張り上げたが、すぐ慌てた様子で√能力者たちを見回した。
「……って、それどころじゃありませんでした! 皆さんは「天使化事変」をもうご存じですか? 普通の人がいきなり「天使」と呼ばれる姿に変質してしまう病なのだそうです。それも、純粋に善なる心の持ち主しか罹らない病とのことなので、まあ私は絶対無理ですね……。それはともかく」
こほん、と空咳を払い、パンドラは改めて細い指を立て、話を続ける。
「その「天使化」の病に罹ってしまう一人の少年の運命が星から詠めました。ですが、私に読めるということは私以外の星詠みにも読めるということ。その「天使」になった少年を……狙うものたちがいます!」
きゅっと朱色の唇を噛み締め、パンドラは真剣な面持ちで言葉を継ぐ。
「それは同じく天使化の病に侵され、その病に喰われて、人でも天使でもないものになり果ててしまった哀れなものたち……オルガノン・セラフィムと呼ばれるもの。そしてもう一つは……『羅紗の魔術塔』」
パンドラは固く拳を握り締め、不安げに柳眉を曇らせた。
「ヨーロッパに古来より伝わる魔術を修めた魔術師たちです。彼らの狙いはオルガノン・セラフィム、そして天使をも自分たちの「素材」として奴隷化しようというものです。必ず防がなければなりません。たとえ羅紗の頂点、『アマランス・フューリー』その人が自ら出陣してこようとも、です!」
……と、そこまで強い口調で言い放って、けれど。
パンドラはふにゃっと首を傾げ、困惑したような表情を浮かべた。
「……という危険がピンチでデンジャーなのですが、その肝心の「天使」になった少年さんがですね……なんといいますか、私が詠んだ星を幻にしてお見せした方が早いですかね……」
そういうと彼女は宙に幻を描き出す。パンドラは幻影使いでもあるのだ。
その幻とは……。
●(幻影上映中。幻影泥棒にご注意ください。前の席を蹴ったり大きな音を立てないでください)
「……鋼の肉体と翼! 間違いない、これは変身! 僕は変身できたんだ!」
その少年、アイロスは、変わり果てた自分の肉体に何故か滅茶苦茶テンアゲだった。何ならバクアゲだった。
「今から僕はメタルエンジェル! これで困っている人を救うことができる! みんなのために頑張れるんだ! 行くぞ、正義と平和と愛のために!」
……えええ……。
いやもちろん、彼の心は間違いなく純情でありその動機は限りない善。
しかし、「天使」とは別にそんな仮面の戦士とかスーパーな戦士でもなんでもない。金属の体といっても多少は丈夫かもしれないが普通に傷つくし、翼だって別に自由に飛べるわけでもない。だってここ√汎神解剖機関であって√マスクドヒーローじゃないんだし。
それでも。
それでもアイロスは、変質してしまった自分の力を他の人を救うために振るおうと決めたのだ! その心、まさに美しきかな! 軽く勘違いが入っていたとしても!
「ようし、待っていてね困っている人たち! 今僕が助けに行くよ! とうっ!」
困っているのはこっちだー! やめて勝手に行動しないで! 君を狙うオルガノンや羅紗たちがうようよしているの! 誰か彼を止めてー!! つか止まれー!!
●(幻影上映終了)
「……というわけで」
パンドラは、疲れたように、はあと息を吐き出した。うん、それはまあ疲れる。
「皆さんには、アイロスさんを助けに行ってほしいんです。オルガノンや羅紗の魔の手から。でも、彼は「変身」できたことに興奮して爆走中。まず彼自身を捕まえないとですね……。彼の『他の人を助けたい』という気持ちは本物なので、こちらの保護下に入ってほしいという説得にも少々手がかかるかもですが」
かくして示されたルートを通り、能力者たちは『メタルエンジェル(自称)』を救うべく出撃するのだった……。
「あ、一応! さっきも言いましたけど、羅紗のトップのアマランスさん出て来るかもですから! 気を付けてくださいねー!」
マスターより

こんにちは、天樹です。
「天使化事変」のシナリオをお届けいたします。
男の子なら、「変身」したらアガっちゃうモノじゃない? まして、本当の善人ならなおさら。
まあそんなノリのシナリオですのでお気軽にどうぞ。ギャグ調でもシリアス調でも構いません。
ただパンドラもOPで言っていたように、バトル自体は強敵が出てくるかもしれませんので、ご留意くださいませ。
では皆様のご参加を心よりお待ちいたします。
26
第1章 冒険 『追跡』

POW
手頃な大きさのものを相手に投げつける
SPD
走って相手を追いかける
WIZ
相手の逃走ルートを予測して先回りする
√汎神解剖機関 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
「うおおお! 困ってる皆さん! 困ってる皆さんはどこですかー!? このメタルエンジェルがお助けいたします!!」
いずことも知れぬ古き街角を、猛烈な勢いで突っ走る黒い影。それこそは正義の心を胸に燃やす少年アイロス、またの名をメタルエンジェル(自称)だ!
「僕はこれまで、病気で長い間入院していた……その僕を支えてくださったのは、お医者さんや看護師さん、病院スタッフの皆さん、そして、もちろん家族や友人たち。僕は皆さんの善意と愛で生きてきたんだ。だから思ったんだ、この体が治ったら絶対に恩返しをしなくちゃって。世界中の人に恩返しを! そしたらこの鋼の体を手に入れた! 今こそ皆さんをお助けするときなんだ!」
ポンコツ少年と思えたアイロスに哀しき過去……。しかし、悲しいことに、彼の頑張りは今の場合は逆効果。
天使を狙うオルガノンにとってはめっちゃ走りまわるアイロスは活きのいいエサとしか見えないし、また羅紗の魔術師たちにとっても格好の実験材料として目をつけられてしまいかねない。
√能力者たちは、どこともわからぬ街角を走り回るメタルエンジェル(自称)を、技能やアイテム、√能力などを駆使して捜索し見つけ出して、彼を保護してほしい。しかし、人々を救いたいと願うアイロスは素直に√能力者に保護されることを渋るかもしれない。そこは√能力者たちの舌先三寸の見せどころである! 力づくで攫っちゃう? まあそれもアリかもしれないが……。

「天使かー。ドラゴンファンタジーのヤツとはまた違うんかなー?ま、とりま保護すればいいんだよね?」
「ねえねえねえ、聞きたいことがあるんだけど〜⭐︎」
とりあえずは聞き込みで人助けするヒーロー少年がどのあたりにいるか絞り込んで、そのへんを中心に活動かなー?あ、情報は味方と共有すんよ
活動内容として
「ん、どしたん? 困ったことがある系?」
ギャルのアグレッシブさで困ってる人に声をかけて人助けしてくよ。標的と同じことしてたら鉢合わせるんじゃね?的な
ちょっと大変そうなら「ちょっとこれはウチ一人じゃキツイかなー」とか大声でヘルプ
少年と遭遇できたら保護とは言わず
「今、人助けをする仲間を募集中なんだよねー⭐︎」
√汎神解剖機関に、困った人に優しいギャルは存在した!
「どしたんおじいちゃん? なんか困ったことがある系?」
大きな荷物を背負い、踏切の前で向こう側へ渡れずにいるおじいさんという、いかにも困っている感満々な老人にさらりと声を掛けたのは、|黄羽・瑠美奈《きば・るみな》(メイドイエロー・h05439)である。
彼女の黄金に光輝く艶やかな髪と澄んだ瞳、そして何よりも屈託のない笑顔は、眩く煌めいて、お困りの皆さんの雲った心を明るく隅々まで照らし出すようではないか。
「おうおう、お嬢さん、ありがとうよ。最近は優しい人が多いねえ」
「のーぷれのーぷれー。で、なーに、このおっきな荷物背負ってあげればいいのかな? いいからいいから遠慮しないで、これくらいお安い御用ってうわ重っ!? めっちゃ重っ!?」
おじいさんの荷物を背負った瑠美奈はそのあまりの重量に思わずよろけかける!
「いやおじいちゃんよくこれ背負ってたよね!?」
「なあに、この60年、地方から毎日行商に荷物を背負って来るから慣れたもんじゃよ。たった30㎏くらいじゃしのう」
「すごっ!? 何気に凄いおじいちゃんだった!? |超《スーパー》おじいちゃん人って感じだった!?」
「あ、さあさあ、踏切が開くぞい。ここは電車の行き来が激しい『開かずの踏切』でのう、30分に一度15秒だけ開くんじゃ。さあ今じゃ、走るんじゃ!」
「いやダッシュ!? これ背負ってダッシュ!? 過酷! 過酷すぎる人生! おじいちゃんすごすぎ!」
ぜえはあと息を切らしながらなんとか踏切を渡り切った瑠美奈は、にこやかに荷物を受け取るおじいさんに問いかける。先ほどのおじいさんのさりげない一言を、彼女は聞き逃してはいなかったのだ。
「えっと、おじいちゃん。さっきさあ、「最近は優しい人が多い」って言ってたじゃん? もしかしてなんだけど、ウチの他にも誰か、おじいちゃんを助けてくれた人がいたりした?」
「おうおう、ついさっきものう、優しい坊やに手を引いてもらっての。なんか真っ黒のかっこしてちょっとびっくりしたんじゃけど、わしゃナウいから知っとるよ、ありゃあ今流行りのこすぷれーいう奴じゃろ?」
「おっとー、ビンゴじゃん!」
瑠美奈は思わず心中でガッツポーズ。そう、同じように近隣で人助けをしていれば、アイロスとも遭遇しやすい、と踏んでの行動だった。無論、そんな意図などなくとも、彼女は困ったおじいさんを見捨てはしなかっただろうけれど。
「へえ、ウチも会ってみたいなー、そのコスプレ少年。どの辺にいたの? ふんふん、そっちかー。ありがとねおじいちゃん!」
おじいさんに手を振り、瑠美奈は元気よく駆けだす。
「この調子で人助けしていけばうまく天使の少年に出会えそう。天使っても、ドラゴンファンタジーのヤツとはまた違うんかなー? ま、とりま保護すればいいんだよね」
と、瑠美奈の黄金の瞳に映ったものは、またも現れた、困っていそうな人の姿だ。困った人に優しいギャルとしては捨て置けぬ!
「おっと、また困った人発見! どしたんおばあちゃん、話きこかー……? って、マジか」
おお、気軽に声を掛けた瑠美奈が目にしたものとは! 先ほどよりさらに巨大な風呂敷包みを背にしたおばあさんの姿! そしてその場所はめちゃくちゃ交通量の激しい横断歩道の前だ!
「まあまあお嬢さん、ありがとうよ」
「……もしかしておばあちゃん、この荷物30㎏くらいある?」
「50㎏くらいかねえ」
「……そんで、この横断歩道はなかなか渡れない感じだったり?」
「30分に一回、10秒くらいのチャンスがあるかねえ。その隙にダッシュするんだよ」
「なんなんこの町―! うわーん、ちょっとこれはウチ一人じゃキツイって!!」
轟く叫びを耳にしたとき、救いの天使は現れる!
「とうっ! お困りですかそこの皆さん! このメタルエンジェルがお助けしますよ!」
おお、それこそはまさに、漆黒に輝く金属質の体を翻し翼を舞わせた異形の姿! まぎれもない「天使」の少年、アイロスに他ならない!
「実はかくかくしかじかで」
「なるほどだいたいわかりました! 一人では難しいことも二人で力を合わせれば成し遂げられます! お姉さん、僕と一緒におばあさんをお助けしましょう!」
かくして無事におばあさんを向こう側まで送り届けた瑠美奈は、改めてアイロスに向かい合う。
「ありがとね、メタルエンジェルくん。キミさっきいいこと言ったよね、一人では難しいことも、力を合わせればって」
「はい、みんなで手をつなげばより多くの人をお助けできますね!」
「そうそう! 実はさ、ウチ、今、人助けをする仲間を募集中なんだよねー⭐︎ その名も、お助け戦隊キャットハンズ! 意味は『猫の手も借りたい』、なーんてね、へへ。どう、一緒にやってみない?」
「せ、戦隊!? すごい! かっこいいです!」
アイロスは宝石のように目を輝かせる。もともと「変身」にテンションが上がっていたアイロスには、きっと戦隊アピールは効くに違いない、そう考えた瑠美奈の思惑は正しかった。……まあもともと瑠美奈自身が戦隊メンバーではあるのだが。
「これからよろしくお願いします、ゴールド!」
「……いやウチ、イエローなんだけど」
🔵🔵🔵 大成功

WIZ 連携・アドリブ歓迎
正義感あふれる若者、いいじゃあないか
おいちゃんにも、そうやって燃えてた頃が……いや、そんなになかったかも
√能力でアイロスくんの走ってる周辺の地図を用意
先回りして、困っている人の演技をして注意を引く
「大変だぁ、こんなときに足をくじいちゃったよ。困ったなあ、これから大事な人のお迎えがあるのに」
注意を引けたら、正義のスカウトのフリをして同行を促す
「ありがとう、坊やは優しいねぇ。実は、坊やみたいな人を探していたんだよ。おいちゃん、実はお巡りさんなんだけど、ちょっと特別なお巡りさんなんだ。坊やみたいな強くて優しい人に、正義のために一緒に戦ってほしいんだよ」
「うおっまぶしっ! あの坊や、走りながら人助けしてるねえ……」
|与田・宗次郎《よだ・そうじろう》(半人半妖の汚職警官・h01067)は目を細めながら、遠くにちらちらと見え隠れする、若者の躍動する肉体を眺める。あちらで老人の手を引き、こちらで迷子の親を呼び、そこここで落とし物を拾い集めるその姿を。
その少年こそは今回の保護対象、新たな領域の生命体「天使」となったもの……アイロスに他ならない。たとえ少年のその体は漆黒の鋼の異形な姿となり果てていようとも、宗次郎の目を射る輝く光は少年の魂の底、胸の奥深くより迸る輝きだ。すなわち……一心不乱なる情熱と真摯なる善意の、それは光なのだ。
「正義感あふれる若者、いいじゃあないか……」
宗次郎は感に堪えぬように頷きながら無精ひげの目立つ顎を撫でさする。
「うんうん、おいちゃんにもね、昔はそうやって燃えてた頃が……」
そう、今でこそ宗次郎は人生半ばすぎ、汚職警官として鄙びた日々を送っている。だがそんな彼にも、通り過ぎた遠いセピア色の思い出の中、若き青春の暁には、おお、今のあの少年のように輝かしい情熱に身を焼く日々が!
「……いや、そんなになかったかも……」
なかった!
宗次郎は若いころからだいたいこんなだった!
まあ人間はあんまり年取ったからと言って変わったりはしないものである。春風駘蕩、飄々として泰然とした宗次郎は、昔からほぼほぼこんな感じっぽかった。
だが、だからこそ。
自分とは異なる青春を燃やし尽くそうとしているからこそ、宗次郎にとって少年は眩しく愛おしい。枯れた身をもって守るに値するほどに。
「さあて、そんじゃ、未来有望な若人を救いに行きますかねえ……」
宗次郎はしわの寄ったコートの懐に手を入れ、渋い様子で着付けの一服を取り出す。枯れた中年刑事と長い年月を共にしてきた愛好の一口は、人生の悲哀を僅かなりとも薄れさせてくれる一本の煙草であろうか。
「いやあ、この酢イカの味がたまんないよねえ」
……駄菓子だった! そう、宗次郎は知る人ぞ知る駄菓子愛好家であったのだ。
だが単に酢イカの酸味で気を引き締めたのみではない。駄菓子を口にし舌なめずりをする、その行為はすでに宗次郎の√能力の発動条件を満たすのだ。
「あー、執事さん? この辺の詳しい地図は用意できましたかねえ? うんうん、上出来上出来。えーと、さっきあの坊やはあっち方面へ爆走していったから……近道はこっちですかねえ」
うなずくと宗次郎はコートの裾を翻す。『事務所』と連絡を取り合い、詳細な情報を入手することができる、これが彼の能力である。おお、なんと見事な手際の良さであろうか。さすがベテラン刑事と言わざるを得ない!
かくしてアイロス少年の行く手に先回りをすることに成功した宗次郎は!“
「うわあ大変だぁ、こんなときに足をくじいちゃったよ。困ったなあ、これから大事な人のお迎えがあるのに」
おお、なんとわかりやすい説明台詞であろうか! もうどこからどう見ても、これから大事な人のお迎えがあるのに、足をくじいて困っている人の名演技と言わざるを得ない! だって本人がそう言ってるんだもん!
「ええっだいじょうぶですか、おじさん! さあ僕の手に捕まってください!」
そしてまんまと宗次郎の芝居に引っかかるアイロスのなんと純真で善良であることか。陽光に黒い光を跳ねさせて、彼は異形の鋼の手を、ためらうことなく宗次郎に差し伸べたのだ。
金属質であるが故に冷ややかなで硬質なはずのアイロスの手は、けれど不思議と、温かさと柔らかさを伝えてくるものだった。その手を握り、宗次郎は確信する。アイロスの裏表のない優しさと純朴さを。
心ひそかに頷くと、宗次郎はアイロスの目を見つめ。語り掛ける。
「……ありがとう、坊やは優しいねぇ。実は、坊やみたいな人を探していたんだよ。おいちゃん、実はお巡りさんなんだけど、ちょっと特別なお巡りさんなんだ」
「ええっ、特別なお巡りさん? うわ、カッコいいです! それ、秘密捜査官ってやつですね!? テレビで見ました!」
「う、うん。それでね、協力者を探しているんだ。坊やみたいな強くて優しい人に、正義のために一緒に戦ってほしいんだよ」
「な、なんですって! 僕が秘密捜査官のメンバーに!? 僕なんかでお力になれるなら喜んで!」
目をキラキラと輝かせ、力を込めて手を握り返してくるアイロスに、宗次郎は胸の内で呟く。
(はは、おいちゃんにとってはちょっと眩しすぎるかもねえ。だが、そんな少年だからこそ、おいちゃんみたいな汚れた大人が、嘘をついてでも護らなきゃならないんだよね……)
……だが、宗次郎のそれもまた、優しさと呼べるものであるだろう、いわば「汚れた優しさ」と。たとえ宗次郎本人は苦笑して否定するとしても。
🔵🔵🔵 大成功

元気でごぜーますなー、普段なら良いことでごぜーますが今回はめんどーなだけでごせーます
とりあえずどこにいるのか把握しないといけないやつでごぜーますな
【小動物転生】でインジブルを小鳥に変化させて「動物と話す」技能でアイロスさんの場所を聞いたり、一緒に探してもらうでこぜーますよ
見つけてもらえたなら、近くまで行って実体化して「おかぁぁぁぁぁさぁぁぁぁんどこぉぉぉぉ!?」と迷子のフリをしながら叫ぶでごせーますよ
正義の味方を名乗るならきっと一緒に探してくれるでごせーますよな?
あとはさり気なく誘導して味方と合流するなら保護できる場所に連れて行くでごせーますよ
連携アドリブ等歓迎でごせーます
「……なるほどなるほど。元気でごぜーますなー」
|十・十《くのつぎ・もげき》(学校の怪談のなりそこない・h03158)は、町のそこかしこを走り回る黒いつむじ風の目撃談を、半ば感心し、半ば苦笑めいた気持ちで聞き入っていた。
曰く、うっかり高い枝に登り過ぎ、降りられなくなった仔猫を助け降ろした。ついでに自分自身は転げ落ちた。
曰く、巣から転げ落ちそうになっている鳥の卵を巣に戻してあげた。ついでに自分は敵と間違われて親鳥につつかれた。
曰く、喧嘩している猫の仲裁をしようとして、両方から引っかかれた。
曰く、曰く、曰く……。
「……元気っていうか、ん-……ドジっ子属性でごぜーます?」
類話には事欠かないらしく、尽きることない甲高く可憐な声でさえずりながらそれを語るのは、十の肩や手に止まる何羽もの小鳥たち。……いや、それは小鳥にあらず、鳥に姿を仮託したインビジブルだ。十の√能力により、現世にとどまる魂の残滓、インビジブルたちはかりそめの姿を与えられている。
|小鳥《インビジブル》たちが語るその相手こそは、金属の冷たい輝きを放つ体の中に熱く優しい心を宿す、新たな領域の存在──至善なる「天使」と呼ばれるもの。その一人、アイロス少年に間違いない。そう、天使と呼ばれるものたちは純粋な善人なのだ。……たとえ多少ドジっ子属性が入っていようとも!
インビジブルたちと同じように、ふわりふわりと風に揺れ気の向くままに宙に舞う、そんな「幽霊」である十にとり、ややポンコツが入っていつつも元気いっぱいの「天使」は少々眩しくも感じられただろうか。
「オバケと天使。取り合わせがいいような悪いような、なんとも奇妙な感じでごぜーますが……ま、動物のみんなにも優しいのはいいことでごぜーますな」
細い肩を竦め、十は情報をまとめる。インビジブルたちの話を総合して、大体のアイロスの行動範囲はおおよそ把握できた、ならば、あとは……。
「元気過ぎてあちこちにうろつきまわるのは多少めんどくせーでごぜーますが……ま、たぶん近くに行けば自然にわかるような気がするでごぜーますね。だって……」
「待って待って! 違います、僕は君の縄張りに入り込もうというつもりはなくてですね、ただ飛んでいった洗濯物をお届けしようと……わーん、吠えないでー!」
「……ほらね」
けたたましく騒ぎ立て吠えたてる犬の声! そして泣き声! 間違いない、騒動が起きるところにだいたいドジっ子あり! 天使の少年アイロスの居場所は少し離れたところからでも丸わかりであった。
「それがよくねーんでごぜーますよ、つまり敵にも居場所が筒抜けってことでごぜーますからね……早く保護しねーとでごぜーますが、すると、このあたりに逃げてくるでごぜーましょうね……では」
こほん、と咳払いすると、十はおもむろに意識を切り替えた。幻冥の幽世から喧噪の現世へと。
霧が晴れるように、朧げだった十の体はその輪郭を明晰にしてゆく。
だが皮肉にも、肉体が霧から抜けるのと反対に、十の内部には霞のように薄い頭痛が宿る。幽体から実体化するときに起こるいつもの現象だとはいえ、慣れるものでもない。
しかし、十のその軽い痛みは、むしろ今の場合、真に迫った声を出すことに役立った。つまり。
「おかぁぁぁぁぁさぁぁぁぁんどこぉぉぉぉ!?」
……ギャン泣きする迷子を演じるための。
「とうっ! どうしたんですかそこの君! 何かお困りなら、このメタルエンジェルがお助けしますよ!」
「釣れたでごぜーます」
「え?」
「ううん、おかあさんがいなくなっちゃったのぉぉぉぉお! わああああん!!!」
「なんですって、それは大変です! きっとお母さんも心配しているでしょう! しかしこのメタルエンジェルがきっとお母さんの元へお連れします!」
「……心配してるんでごぜーますかね……」
「え?」
「ううん、きっとこっちにいると思うんでごぜーます」
自然に差し出されたアイロスの手を十は握り、連れられる体を装いながら彼をさりげなく誘導していく。他の√能力者たちがいる場所については、既にインビジブルたちによって情報を得ている。
「……いつも触れ合っているインビジブルや霊の友だちとは違う、物理の手でごぜーますか。やれやれ、重たいし、硬いし……」
ぽつりとつぶやきながら、しかし、十は小さく微笑を浮かべ、きゅっとアイロスの手を握り返していた。
「……ま、そんな重さも硬さも、たまにはいいもんでごぜーますね」
🔵🔵🔵 大成功

【WIZ】で勝負!
心情
……ええ、出力の方向性はともかく、善良で純粋な方を危険な目に合わせるわけには行きませんね。
作戦
【ゴーストトーク】を使用。アイロス君の動向を調査し、先回りしたうえで「友人や保護者とはぐれて道に迷った子供」を装い接触します。
いい感じにヒーローとして持ち上げつつ、他の参加者の元に誘導します。
「一つ、お尋ねしたいのですが……」
「うーん……困りましたね……」
「メタルエンジェル、さん?ご当地ヒーローさんでしょうか?」
「旅の恥はかき捨て、ですね。どうかご助力お願いします」
(嘘も方便、とは言え生きるための嘘を重ねる度に純粋さは失われていく気がしますね。)
アドリブ・連携などお任せします。
日一日と春の香りを感じられるようになりつつも、いまだ風の中には冬の名残の冷たさも宿るようなこの頃、読者諸氏にはいかがお過ごしでしょうか。そんな軽い肌寒さを覚えるような時には、|米満・満代《よねみつ・みつよ》(マウンテンセレブ・h0006)さんの手を握ってお出かけになると良いでしょう。
満代さんのふっくりぽよぽよと肉づいた柔らかい手はあなたの手を優しく包み込み、その豊満な体つきの奥から伝わる温かさがきっと身も心も温めてくれるでしょうから。
……ということで、満代は相手と手を取り合い、ぽてぽてと歩みを進めていた。
満代の体が春の温かさと柔らかさ、そして実りを象徴するような豊満と表現するならば、手を繋ぐ相手はその対極、鋼の硬さと冷たさ、いびつさを備えた冬のような体。
しかしそれでも、満代と相手の繋いだ手の間には、確かに伝わる思いやりと信愛が存在していた。春と冬の間の、ちょうどまさにこの時期のように。
その相手こそは、今回の事件の保護対象、天使化現象により異形の存在へと変質してしまった少年──アイロスに他ならなかった。
(……ええ、出力の方向性はともかく、善良で純粋な方を危険な目に合わせるわけには行きませんものね)
満代は天使の少年との邂逅を想起しながら心中で呟いていた。
先ほど彼女が使用した能力は「ゴーストトーク」。インビジブルたちに呼びかけるその√能力は、幽明の狭間に漂う彼らに現世での器を与え、知識を聞き取ることができるものである。
……もっとも……。
「ぽんぽこ」
なぜか受肉したインビジブルは皆、まるまるぽんぽこりんなタヌキであったが。ここヨーロッパではタヌキは比較的珍しいのだが、やはり召喚主の体形に影響されるのだろうか。
「本来、丸々とした体形は恥ずかしいことではありません。それは豊かな食生活を象徴し人生が充実していることを意味しており土偶などの古い女神像にもまんまる体形のものが多いのはそういった観点から」
ガチでぽっちゃり体形を肯定している奴だ!
まあそれはともかく、満代はこのように|ぽんぽこタヌキさん《インビジブル》たちに聞き込みを行うことでアイロスの居場所を割り出し、彼の前に現れることに成功したのだった。
そこで彼女は。
「ああ、どういたしましょう。こんな時に限ってスマホの充電は切れていますし地図もありませんしガイドブックもありませんし何ならヨーロッパ語もよくわかりません。歩き過ぎて疲れてきましたしなんだか雨も降りそうなのに傘もありません。どうでしょう、この困りごとのセレブっぷりは。どこかにこんなナイナイ尽くしな私をお助けしてくださるお方はいないでしょうか」
「とうっ! なんかめっちゃすごい勢いでお困りのようですねそちらのお嬢さん! 微力ながらこのメタルエンジェルがお助けいたしますよ!」
即参上してくる黒い鋼の異形の姿! そう、満代はまんまとアイロスを引っかけることに成功したのである!
「メタルエンジェル、さん? ご当地ヒーローさんでしょうか? ……」
きょとん、と首を傾げて見せた満代は、さりげなく『ヒーロー』の言葉を織り込むことによって、アイロスの表情が、良くは判別できないながらも明らかに嬉し恥ずかしそうにふにゃふにゃとなっていることを察した。
「え、えへへ、ヒーローだなんてそんな大それたものじゃ。僕はただお困りの皆さんのお手伝いを少しでもできればいいなと思ってるだけで……」
(確かに、聞いていた通りの本当に純粋な少年ですね……それだけに、敵の手からはお守りしませんと)
決意を新たにした満代は、アイロスに手を差し出す。
「ご迷惑をおかけしますが、旅の恥はかき捨て、ですね。どうかご助力お願いします。待ち合わせの場所がありまして、そこにお連れ頂ければ」
「お任せください! さあ、はぐれないようにしっかり手を握ってくださいね」
かくして場面は冒頭へと戻るのだった。
「そうですか、観光にこの町へ。ここは古い町ですが、それだけに風情もありますし、歴史が好きな方には喜んでいただけると思いますよ!」
「はい、私の実家も古い家柄でして、異国の古い町並みにも興味があるものですから」
和やかに話を交わしながら、満代の心は少々苛まれてもいる。
(……嘘も方便、とは言え……生きるための嘘を重ねる度に純粋さは失われていく気がしますね。彼と手を繋いでいると、心から私を信じてくださっていることがわかります、それだけに……)
だが満代は知らない。アイロスもその時、同じように思っていたことを。
(この人はこんな姿の僕を驚いたり怖がったりしなかった。今もぎゅって手を握ってくれている。なんて優しいんだろう。僕も、こんな優しい人にならなくちゃ!)
お互いにお互いの純粋さと優しさに胸を打たれながら、ころころとぽてぽてと、二人の道行きは続いてゆく。春はもうすぐそこまで近づいてきていると感じられる、そんなふんわりとした空気の中を。
🔵🔵🔵 大成功

感染病のキャリアなので、あまり動いて欲しくないのですが…
しかし、そのヒーロー願望を活用しましょうか
始めまして、わたくしはアレクシア・ディマンシュ
汎神解剖機関の構成員ですわ
そう言って『汎神解剖機関からのスカウト』という体で接触
汎神解剖機関の『人類に害を及ぼす怪異を人知れず葬り、人知を超えた怪異を捕獲し、実験や解剖を以て怪異に脅かされる人類を延命する研究を行う』側面を主題として紹介し、ヒーロー願望を√能力で擽りアイロスをスカウトしていきますわ
√能力で感情を増幅させ、スカウトをしやすくしますわ
これで汎神解剖機関への所属も納得しやすくなりましたわね
「人々を助けたいと願うその志はまことに高貴。称賛に価しますわ」
灰白色の美しく艶やかな髪を爽やかに靡かせ、サファイアのように澄んだ蒼い瞳を煌めかせて、少女は満足げな表情を浮かべた。優艶な身のこなし、格調高く荘厳な雰囲気と気品ある美貌は、あたかも一つの芸術品のごとくに完成の域に達しており、彼女がまぎれもない貴顕なる家系の出自であることを物語ってもいた。
彼女こそは|アレクシア・ディマンシュ《Alexia・Dimanche》(ウタウタイの令嬢・h01070)──由緒あるフランス貴族の誇り高き末裔である。
しかし、と、アレクシアはその柳眉を微かに曇らせた。
「善なる動機はほむべきかなです。しかし同時に、感染病のキャリアなので、あまり動いて欲しくないのですが……」
アレクシアが案じるのは、無論今回の重大事案……「天使」の少年に関してのことだった。
既に彼女の元には情報が集まっている。「天使化」は単なる一個人の問題では収まらないのだ。それに加えて、とアレクシアは報告書の頁をめくる。
『ケース1:落とし物がないか下を向いて歩き過ぎ、木の枝に頭をぶつけた』
『ケース2:遠くで困っている人がいないか視線を上げ過ぎ、目の前の穴ぼこに躓いてコケた』
『ケース3:小川に嵌ってしまった子猫を助けたら、サビた』
「……いや錆びるんですのこの子!? 金属だから!? 金属だからサビちゃうんですの!? まあその前の2件も大概アレでナニですが……」
はあ、とアレクシアはため息をつき、報告書を閉じた。
「これは……彼を守るためにも早急に保護せねばなりませんわね。敵の手からというより……この子自身のドジからこの子を守るために!」
かくしてアレクシアは颯爽とドレスの裾を春風に乗せて翻す!
「困っている人がいなければあなた自身を救えばいいじゃない、ですわ!」
「えっ何が何で何なんですか!?」
輝く陽光を背中に受けて、凛然と立つお嬢様ここにあり。彼女こそアレクシア・ディマンシュそのひとだ!
そして彼女の眼前にいるものこそ、漆黒の金属質の体を輝かせた異形なる新生命、「天使」の少年、アイロスに他ならない。
「はじめまして、わたくしはアレクシア・ディマンシュ。汎神解剖機関の構成員ですわ」
まず相手の意表をついてペースを握るのは戦術の基礎だ! まあこの場合は、相手は敵ではなく保護対象だが、だいたい同じである!
「は、汎神解剖機関!?」
「ご説明いたしましょう! 汎神解剖機関とは、人類に害を及ぼす怪異を人知れず葬り、人知を超えた怪異を捕獲し、実験や解剖を以て怪異に脅かされる人類を延命する研究を行う秘密組織なのですわ! 以上、パンフレットより引用ですわ!」
「な、なんですってー! うわカッコいい! めちゃくちゃカッコいいじゃないですか!」
「そうでしょうそうでしょう。そして汎神解剖機関は……あなたの力を今! 必要としているのです!」
「ええっ、僕を!?」
そう、相手に心の余裕を与えず、二の矢三の矢を続けて打ち放つ、これもまた戦術の基本! 相手が保護対象であっても同じである!
そこですかさずアレクシアは奥の手を解放! それこそは『ウタウタイ』たる彼女の本領、妙なる玲瓏の歌声によって√を改竄する、恐るべき人間災厄としての力の発動!
「|聖歌絶唱・怒りの如く洗し共する魂と思の歌《オラシオン・ラース・オブ・コミューニオン》……『世界を変えなさい、我が歌よ』!!」
おお、今こそアレクシアの艶めく朱唇から流れ出すのは、天上遥かなる領域から響く、星々が奏でる音楽かとさえ思える華麗な歌声。その調べは耳を澄ますものの魂に対し根源的に響き渡り、情緒を揺さぶり感情を沸き立たせる!
ましてや、聴取者が純真素朴な天使であった場合、「歌」の効果はさらに絶大だ!
「ぼ、僕がその……なんだか難しい名前の組織に?」
「ええ、誰かを助けたいと純粋に願うその高貴な志は、まさに我が機関が求める同志に相応しいのですわ」
美貌を笑顔に優しく彩って、アレクシアはアイロスに手を差し伸べる。
「わたくしと友に舞いましょう、世の人々を助けるために。それがあなたの願いでもあるはずですわ」
感動に打ち震えるアイロスはアレクシアの繊手をそっと取りつつも、そのときめきを抑えきれない。
「僕が、誰かにそんなに必要とされるなんて、感激です。ううっ、嬉しい……嬉しいです……!」
ああ、だが。
アレクシアの歌はあまりにも美しすぎ、感動を与えすぎた!
「嬉しいです! うえええーん!!」
「え? あ、あら!? ちょっとあなた、泣かないでくださいませ!? あまり泣いたら……!」
そう、涙は塩水。
ゆえに。
「またサビちゃいますわー!?」
🔵🔵🔵 大成功

アドリブ絡み諸々歓迎
鋼の肉体に変身するんですか!?なんてカッコいい…!凄く凄い騎士っぽいです!
……ハッ!そうです、そういう場合ではないんです。ワタシの目的はあの方を止める事です
早く行かなければ!そして後で秘訣を教えてもらいましょう!
何処に行くのかは分かりませんが、今はとにかく追いかけるのみです
野を越え山を越えワタシの頭も踏み越えて…とにかく進みましょう
追い付いたらワタシの頭をいくつも彼の目前に出して足を止めさせます
故郷の妖怪さんたち以外にこの姿を見せたら大抵驚くとワタシも学びましたから!
足が止まったら声をかけるチャンスです!
メタルエンジェルさん!ワタシと一緒に皆さんを救いましょう!騎士として!
「鋼の肉体の天使ですか!? なんて……なんてカッコいい! 凄く凄い騎士っぽいです!!」
感に堪えぬように、エーファ・コシュタ(突撃|飛頭騎士《デュラハン》・h01928)は身をよじる。それはもうぎゅんぎゅんという勢いでよじる。その反動で頭がごろんと転げ落ちるほどに。だってデュラハンだから。
実際、騎士を自らの本分としその一生を捧げるべき道と心得るエーファにとっては、騎士と同じく鋼に身を包むもの、そして騎士と同じく人を助けるものである「天使」の姿は憧憬と共感に溢れるものだといえるだろう。あとカッコいいし。それとカッコいいし! そうそうカッコいいしカッコいいしカッコいいしぃぃぃぃ! ……と、エーファの多数の頭が同じ言葉を輪唱しかけたところで、彼女はハッと我に返る。
「そ、そうです、そういう場合ではないんです。ワタシの目的はあの方を止める事です!」
危ない所であった。そう、デュラハンのいくつもの頭が同時に同じ思考に陥ることで歯止めが効かなくなる、これが俗にいうエコーチェンバー現象である(違う)。
「早く行かなければ! そして……後で変身の秘訣を教えてもらいましょう! だってカッコいいから!」
……まあ我に返ったとしても、やっぱりカッコいいのは変わらないのだった。
ともあれ、まずは街中を暴走する天使の少年、アイロスの行方を突き止め、彼に出会わねばならぬ。
「ということで、さあ行くのです、ワタシの頭たち!」
号令一下、エーファの頭が舞い上がり空を飛ぶ! その頭に乗ってエーファも飛ぶ!
「騎士というのは何かに乗るものですからね!」
騎士が乗るのはだいたい馬だけど! でも「ウマ」と「アタマ」は少し似ているので問題ない!
さらには、多くの頭を舞わせることにより複数視点での広域視界を確保することもできる。これぞエーファの大いなる√能力、『|人頭戦術《ユウシカイヒコウ》』に他ならぬ。
「これならあのカッコいい天使さんを探すことなど造作もありません! そうですねワタシたち!」
うん!と一斉にうなずくエーファの頭たち。つまりエーファの乗っているアタマも頷いた。
なので。
「いやそのワタシは頷いちゃだめでしょおお!?」
その上に乗っているエーファも空高くからまっ逆さまに落ちた。どすんと。
「あ、あの……大丈夫ですか? カラダ落としましたよ?」
おお、だが何たる幸運か! エーファが落とした体をちゃんと拾い、心配して頭の元へと届けてくれた人がいる。……MSももう何書いてるんだかよくわからなくなってきたが、とにかくエーファは体を落としたのでそれは落とし物である。そして落とし物をちゃんと拾ってくれる親切で善良な相手、それはまさしく天使の少年、アイロスであったのだ。
「……えっと、ワタシがアタマを落としたのではなく、アタマがワタシを落とした? ってことになるんでしょうか……ワタシの主格はどっちにあるんでしょうね? カラダ? アタマ?」
エーファのカラダが哲学的な難問に悩んでいる中、いくつものアタマたちはカラダを届けてくれたアイロスにきちんとお礼を述べていた。並んで一斉にぺこりと。うーん礼儀正しい、さすが騎士。さすきし。
「……と言うか、ワタシの姿に驚かない人がいるとは思いませんでした、大体の人は驚くのですが……」
「いえ驚きましたよ? 体の落し物は初めて見ましたから。あ、失礼、もの扱いは良くないですね、落とし体というべきですよね。それも初めて見ました」
丁寧に言葉をただすアイロス、うーん礼儀正しい。さすが天使。さすてん。
「それはともかく、あなたはもしやメタルエンジェルさんではないでしょうか?」
頭をかぽっと付け直し、改めて問うたエーファに、アイロスは驚いた表情を浮かべる。
「そ、そうですが、なぜご存じで?」
「あちらこちらで人を助けている優しい天使さんの噂はもう有名ですから」
にこりと笑みを浮かべると、エーファははにかむアイロスにおもむろに声を掛けた。
「ならば、メタルエンジェルさん! これも何かのご縁です。ワタシと一緒に皆さんを救いませんか! 騎士として!」
「ええっ!? なぜそこで騎士なんです!?」
今回一番驚かれたポイントはそこだった。
「騎士というのはきっと困難に立ち向かう勇気と困った人を見過ごせない優しさを持つものだからです。ならばアナタも騎士に違いありません!」
騎士のことはよくわかっていない、だがそれでも、エーファの発言は常に、肝心な部分ではしっかりと正鵠を射る。それは彼女の抱く本能とでもいうべき正義への求道によるものだった。
「なのでアナタはこれからメタルエンジェルナイトさんです!」
「えっそれもカッコいいです!」
「でしょう!? カッコいいですよね!? カッコいいですよねですよねですよねー!!!!(エコーチェンバー)」
……まあ若干アレなところがあるにしても。
🔵🔵🔵 大成功

凄く良い子なのは間違いないみたいだな…
それだけに危ないのも分かる。何とかしてやらないと。
走り回る子供の扱いは仕事柄大体分かっている。
こういう場所を通りそうだな、という所にアタリをつけて
「ゴーストステップ」で潜伏。
タイミングを見て姿を現し声をかける。
…今のお前がどれくらい強くなったか見てみたいし、
俺がリフティングするサッカーボールを奪ってみてくれないか?
…当然渡す気は全く無い。これで体力的には
そこまで向上していない、と分かって貰えるといいんだが。
あ、勿論頑張った後は褒めてあげよう。
子供に教える上で鉄則だな。
「凄く良い子なのは間違いないみたいだな……」
|烱烱《けいけい》と輝く右目で情勢を睥睨しつつ、閉じた左目で深く沈思して、|戌神・光次《いぬがみ・こうじ》(|自由人《リベロ》・h00190)は乾いた吐息をついた。
今回の事案、すなわち新たな領域の存在として目覚めた「天使」なるものの守護を目指すミッションにおいて、当面の目標は、アイロスという名の少年の保護だ。
だが、そのアイロスは。
「とうっ! 落とし物ですよおばあさん! とうっ! 迷子かな坊や? 一緒にお母さんを探そう! とうっ! あ、郵便局は二番目の角を右に曲がって真っ直ぐです!………」
などなど。
とにかくも猛然とした勢いで街中を駆け回り、お困りの皆さんに対しお助けしまくっているのだった。
「……ホイッスルと同時に前掛かりになり過ぎだ。健康になれたこと、そして「変身」したことで昂揚しているわけか。マインドがそのままフィジカルに直結するタイプだな。悪いことではないが、それだけに……」
光次は、やれやれ、と頭を振る。感情が体調に直接影響するタイプだというなら、それがポジティヴに出ているうちにはまだいい。だが逆の場合……すなわち、それがネガティヴな影響を現してしまうこともありうるわけだ。
「……危ないのも分かる。何とかしてやらないと」
光次はどこか優しい苦笑を引きしまった唇に浮かべ、コートの裾を翻した。
彼の脳裏に浮かぶのは、いくつものキラキラ輝く宝石のような瞳。いくつもの躍動し弾けるような純粋な魂。いくつもの汗と涙、そして情熱の炎。……それは光次が教え導く少年たちの姿。
自分自身のかつての栄光と歓喜、そして何よりも、サッカーに対する愛情。それを次の世代にも伝え、全身で味わってもらうために、今の光次は少年サッカークラブの指導者の立場にいる。
だからこそ、わかる。夢に向かって走る少年のひたむきさと危うさが。
ならばそれを守るのも、光次の役割だ。
√能力者として、その使命として「天使」を守るのも大事だが。それと同時に──。
(ああ、何よりも……一生懸命な子の手を引き、背中を押すのが……俺は好きなんだ)
その深く黒い姿は、眩い陽光の中、幻影のように溶けて消えていく……。
「どこかにお困りの方はいませんかー!?」
「なかなか攻撃的なポジションだ。だがフィールド全体を見る目を養うことも大切だぞ」
「うわああっ!? 誰ですかぁっ!?」
走り回っていたアイロスの前に唐突に現れた黒い影!
口元にニヒルな笑みを湛えた彼こそは、姿を消し去る√能力「ゴーストステップ」を駆使していた光次その人だ。職掌柄、彼には走り回る子供の行く先は大体見当が付くのだ。
「通りすがりのサッカーコーチだ。気にするな」
「いえ気にしますが!?」
「ではサッカーを始めよう」
「いえどうしてそうなるんです!?」
「君は先ほどからずいぶんと走り回っているようだな。その走力、次のサッカー界に必要な人材かもしれない。さあ俺と一緒にワールドカップを、そしてバロンドールを目指すんだ」
「ええっ僕がそんなに!?」
この子、やはりチョロすぎて危険だな……と内心しみじみと思いつつ、光次は目を情熱に輝かせたアイロスを見つめ、サッカーボールを取り出した。
「では簡単なテストをしてみよう。俺のリフティングからボールを奪ってみてくれ」
「わ、わかりました!!」
かくして光次とアイロスのサッカー勝負の幕がここに切って落とされた!
……が。
片目を失っているとはいえ、かつてはトッププロとして衆目を一身に集めていた光次と、この間まで入院していた素人の少年とでは相手になろうはずもない。
「はぁ、はぁ……」
「なかなか粘ったな、その食いつきは良かったぞ」
激しく息を切らし膝に手をついたアイロスに、汗一つかきもしないまま凛と立つ光次の姿は残酷とさえ言えるような対比であった。そしてまさに光次の狙いはそこにこそあったのだ。
(これで、体力的にはそこまで向上していない、と分かって貰えるといいんだが……)
感情のままに暴走してしまいそうなアイロスに、自分の限界をきちんと伝えることこそが何よりもアイロス自身を守る。それが、多くの子供たちを指導してきた光次の経験からくる判断であった。
だが。
「このままじゃ……コーチに申し訳ない! コーチをがっかりさせちゃう! うおおおっ!!!」
「……むっ」
光次は一瞬、隻眼を光らせた。
あたかも空気が歪んだかのようにさえ思えた、その気迫。最後の気力を振り絞って向かってきたアイロスの迫力は、それまでと桁が違うものであったがために。
無論、だからと言って光次には通じるものではなく、アイロスはあえなくバランスを崩して転んだだけではあったが。
(……自分のためではなく、他人のために真なる力が出せる……。天使というのはそういう種族か……!)
アイロスに手を差し伸べながら、光次の顔は、柔らかな微笑を湛えていた。
「君は本当にチームプレイに向いているかもしれない。もしよければ、本当にサッカーをやってみないか。楽しいものだぞ、サッカーは」
🔵🔵🔵 大成功
第2章 集団戦 『オルガノン・セラフィム』

POW
捕食本能
【伸び縮みする爪】による牽制、【蠢くはらわた】による捕縛、【異様な開き方をする口】による強撃の連続攻撃を与える。
【伸び縮みする爪】による牽制、【蠢くはらわた】による捕縛、【異様な開き方をする口】による強撃の連続攻撃を与える。
SPD
生存本能
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【黄金の生体機械】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【虹色の燐光】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【黄金の生体機械】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【虹色の燐光】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
WIZ
聖者本能
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【頭上に降り注がせた祝福】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【頭上に降り注がせた祝福】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
かくして、√能力者たちは無事に「天使」の少年、アイロスの保護に成功した。
だが、彼らの表情からは緊迫の色が消えない。何故ならば、能力者たちは察知していたからだ。その周辺に集う無数の不気味な影の存在に。
おお、それこそは、オルガノン・セラフィムと呼ばれる異形の怪物たち!
天使化の病が哀しくも悍ましい方向に発症してしまったものたちだ。
残念ながら、オルガノンたちは既に人としての、いや生物としての心も理性も永遠に喪失してしまっている。今はただ、「天使」を──すなわちアイロスを喰らい、貪りつくしたいという血生臭い本能と欲望のみで動いている、獣ですらない、ただの「現象」にすぎないのだ。彼らを救うことはもはやできない。せめて速やかに天に返してやるしかない。
オルガノンは多数だが、しょせんは有象無象、√能力者たちが全力で挑めば殲滅は容易いだろう……本来ならば。
だが、今はアイロスを守らねばならない。
たとえほとんどのオルガノンを倒したとしても、アイロスを殺されてしまっては意味がないのだ。
能力者たちには「アイロス少年を守りつつオルガノン・セラフィムの群れを倒す」ことが求められる!

遠距離から攻撃ができれば楽でごぜーますけどなーできないでごぜーますなー
なのでこうするでごぜーますかねー
【憑依合体】で子猫と融合、猫耳としっぽを生やしてにゃーんと鳴くでごぜーますよ
アイロスの近くで戦うために敵を吸い寄せてむりやりちかづけるでごぜーますよ
先制攻撃には「野生の勘」で先読みして対応、隠密状態には猫の嗅覚でみつけて猫パンチ(掌底)でなぐるでごぜーますな
あとは猫パンチと昇猫拳(回転アッパー)で殴って敵を倒すでごぜーますよ
ついでに「野生の勘」で飛び出そうとしてるだろうアイロスを察知して止めるでごぜーますかね
連携アドリブ等歓迎でごぜーます
「行くでごぜーますよ……ていっ!」
|十・十《くのつぎ・もげき》(学校の怪談のなりそこない・h03158)の裂帛の気勢轟くところ、幽明の境より朧に浮かび上がった蒼白き炎が揺らめきながら物悲しき音を立てつつ、群れなす恐るべき化生の魔物たちに襲い掛かった!
……ぱちん。
……そして線香花火のように儚く散り果てたのだった。
「あー、やっぱり無理でごぜーましたか。まあ、僕の鬼火は演出用でごぜーますからね……」
細い肩を竦め、十は首を振る。オバケである十が此岸に現出する時に周囲に浮かべ、ヒュードロドロ! と気分を盛り上げる……彼の操る鬼火はそのためのものであって、別に高い攻撃力があるというわけではなかった。
「遠距離から攻撃ができれば楽でごぜーます、と思ったんでごぜーますけどなー、できないでごぜーますなー。まあできないんなら仕方ない」
飄々と淡々とした十の態度に、それまでは様子をうかがっていた恐るべき敵の群れ、すなわちオルガノン・セラフィムたちは一斉に甲高い歌にも似た吠え声を上げて大気中に振りまいた。純粋で混じりけのない、それは鮮やかともいえるほどに明確な殺意の現われ。形になっていないだけの血塗られた刃ともいうべき悪意だ。
それを聞いた「天使」の少年、アイロスは、十の傍らで震えながら、しかし戦慄く足を懸命にぎこちなく動かそうとする。
……それは、逃げるためではなかった。
十の前に出るためだった。
十を庇うために。
一歩一歩、いや半歩を進めるのにさえ、どれほどの勇気が必要なことか。
「に、逃げてください! わかるんです、あの人たちの狙いは僕だって! だ、だから、あなたは逃げて……! 僕が……食べられている間に!」
だがそんなアイロスの言葉に、十は唇を微笑の形に曲げる。
「『純粋な善人』でごぜーますか。尊敬するでごぜーますが、今はボクに任せてほしいでごぜーます」
言い終る前に、唸りを上げて飛んできたのはオルガノンたちの身に纏った、いやその体の一部たる黄金の殺戮機械! 触れただけで容易く命を奪うに足る無情の刃は、甘美なまでの無慈悲さと残酷な美しさを伴って、十たちの存在そのものを否定せんと牙を剥いた!
「あぶねーでごぜーます! ……ぐっ!!」
おお、なんたる悲劇か! 虚空に鮮血の花が舞い踊る。それは……アイロスを守ろうとし、彼を突き飛ばした結果……自らが殺戮機械に斬り裂かれた十の血であった!
「あ、あああっ!?」
絶望と悲哀に満ちたアイロスの叫びが響く中。
けれど。
「……オバケでも殺されると多少痛いでごぜーますにゃんよ?」
なんと、揺らめきふわりと起き上がったのだ。その口元に笑みを刷き、骸と化したはずの十の華奢な体が!
おお、その十の姿はいかなることか。見よ、その頭部に蠢く獣の耳を、その腰から生える獣の尾を、そして鋭き眼光を光らせる獰猛なる縦長の瞳を! ……あとなんだか「にゃん」な語尾を!
これぞ、十の秘められし力の発動に他ならぬ。それこそは、野生動物の霊をその身に宿す、幽体の彼ならではの√能力!
「『君の爪は僕の爪、君の牙は僕の牙、君の恨みは僕の恨み。力を貸して、一緒に戦おう』 ──|憑依合体《ノケモノ》!! でごぜーますにゃん!」
そう、十が合一化したのは猫の霊だ! まあにゃんにゃん言ってるしね!
獰猛なる狩猟本能と野生の勘、そして……殺されても即時に復活できる力を宿す恐るべきその能力を持って、十は逆襲に転じる!
オルガノン・セラフィムは知性も理性も持たぬ本能だけの存在。だからこそ、分かる。
例え、表面上はただでさえ可憐な十がネコミミ化した上、にゃーにゃ―言うあざと可愛さを伴おうとも、その本質において……眼前の獣人化した少年が、自分たちにとってどれほどに恐ろしい相手であるかを。
恐怖心を持たぬはずのオルガノンが、それでもあたかも泡を喰ったかのように殺戮機械を乱れ撃つ。だが猛然と獲物に飛び掛かる肉食獣の激烈さと身のこなしの柔軟さを何人が凌駕し得ようか。
唸る刃を軽々とかわし、虚空のゆがみの中に身を隠そうとする相手をも嗅ぎ取って、十の猫手が真っ赤に燃える!
「ひぃっさつ! ねこぱーんち!!」
小さな十といえども、跳躍に伴った勢いと肉食獣の力を込めて全力で撃ちこんだ掌底は、容易くオルガノンの体を吹きとばした!
「あーんど! |昇・猫・けーん《回転アッパー》!!!」
その勢いのまま反転、旋風を巻き起こしきりもみ状態から天空高く突き上げる、恐るべきアッパーカットが空間ごと刈り取るかと思われるほどの威力で爆発! オルガノン・セラフィムの群れをまとめて叩きのめしたのだ!
散り果てるオルガノンたちを、しかし十は見つめる。ほんの少しだけ、悲し気な瞳で。
「人にも戻れず天使にもなれなかったオルガノン……せめて、オバケにはなれるといいでごぜーますな。そしたら一緒に遊ぶでごぜーますよ……」
🔵🔵🔵 大成功

「よっしゃ敵だね! ぶっ倒しに行くよ!」
アイロス少年を守りつつだけど、素直に守るって言っても言うこと聞くか,分からんよね
「ウチが遠くの敵を倒すから、掻い潜ってきた敵を少年がやっつけて!」
『ウイングシューター』で、敵の群れのかたまり具合に合わせて拡散モードや貫通モードに変えて撃ちまくる
掻い潜ってきた敵は
「そっちお願い!」
と声掛けして味方やアイロス少年に倒してもらう。一応、アイロスに向かう敵には『フェニックステイル』でさりげなく転倒させたりしてこっそりアシスト
少年の自尊心を傷つけないようにはしたいけど、もしもの時は命優先かな
あとの連携アドリブはお任せだよ!
「うーわ空気読めてないすぎる! ねえ、メタルブラック!?」
|黄羽・瑠美奈《きば・るみな》(メイドイエロー・h05439)のプンスカぴーな態度に、傍らにいる「天使」の少年、アイロスはきょとんとした表情を浮かべる。
「メ、メタルブラックって僕ですか? カッコいいです! でも、空気読めないって、何がですか?」
「ウチの知り合いにブラックはもういるからメタルブラックにしたよ☆ それにしてもさ、あいつら!」
と、瑠美奈は眼前に居並ぶ悍ましき異形の集団を指さす。彼らこそはかつて人であったもの、そしてその尊厳を永遠に失い化け物と成り果てたもの、オルガノン・セラフィムに他ならぬ。ただの捕食本能のみに突き動かされる不気味なオルガノンたちに対し、瑠美奈が抱く怒りとは!
「お約束無視しすぎじゃん! ここは採石場でもないし埼玉超絶アリーナでもないんだよ!」
ヒーローの美学を愛するゆえの熱き怒りだった!
「……はい?」
「ヒーローに集団で掛かってくるモブ敵は! そういう場所じゃないとダメなの!」
「そ、そうなんですか?」
ちなアイロスはヨーロッパの人間である! あんま通じなくても仕方ない!
「そうなの! ……でもまあ来ちゃったものは仕方ない。じゃ、ぶっ倒しに行くよ、──二人でさ!」
「は、はい!」
にこっと微笑んだ瑠美奈に、アイロスは強く励まされたように頷く。誰かの役に立ちたいと強く願うアイロスにとり、自分を除外しない言葉……「二人で」という言葉は深く心を震わせるに足るものだった。そして、そんな大切な言葉をさりげなく口に出せるのが、瑠美奈という少女でもあったのだ。
しかし同時に、先輩ヒーローとして瑠美奈はアイロスに注意するのも忘れない。
「つっても勢い任せに突っ走るだけじゃアウトだからね、ちゃんと回りの状況をよーく見て……」
『ほう。君が。君がそんなことを言うのですか。よりによって君が? 普段、自分が何をやっているのか忘れましたか?』
「うわああごめんて! ごめんて! ついテンアゲで暴走しちゃってええ!!」
おお、一体何があったのか! あたかも頭の中で誰かにこっぴどく怒られたかのような様子で思わず耳を抑えうずくまってしまった瑠美奈に、アイロスもきょとんとした視線を向けざるを得ない!
「えっどうしたんですかゴールド?」
「いやその、ちょっと蒼いカメみたいな幻聴が聴こえた気がして……あとウチイエロー」
「???」
「あはは、何でもない! くっそ、こんなとこでまでカメにお小言喰らうとは思わなかったじゃん、幻聴だけど! このムカつきは……アンタらにぶつけるし!」
ビシッと指さされたオルガノン・セラフィムたちが、えええ……って顔をしたような気がするが特に問題なし! どうせブッ倒すのに違いはない!
「ウチが遠くの敵を倒すから、掻い潜ってきた敵をメタルブラックがやっつけて! 行くよっ! ウイングシューター・ペネトレーション!!」
抜く手も見せず瑠美奈の手に翻るは華麗なる閃光放つハンドガン。見事なガンスピン一颯、大気を斬り裂いて迸った光条がオルガノンの群れに突き刺さり、数体をまとめて貫いていく! 自在に機能を変えるビームガンの、それは焦点を絞り貫通力を高めたモードだ!
奇怪な鳴き声を上げ、オルガノンたちは自らに今迫る脅威を認識する。本能のみで動く哀れな怪物ゆえに、その危機感知能力は高い。集団でいることの危うさを察知し、オルガノンは大会が割れるがごとくその勢力を分散させた。
だが瑠美奈に、そしてウイングシューターに一切の死角なし。その名の所以でもある銃身を飾る華やかなウイングパーツが孔雀の翅のように華麗に展開したかと思うと、次の瞬間。
「ウイングシューター・ディフュージョン!!」
撃ち出した閃光は天空を彩る大輪の花火のように散華展開し、広範囲のオルガノンたちを包み込むように焼き払う! 貫通力こそ低下するが、代わりに一匹たりとも逃がしはしない、拡散モード!
「ふわああ、凄い、凄いですゴールドイエロー!」
「イエローだって! って、メタルブラック、一匹行ったよっ!」
だが殲滅の炎をかいくぐり、一体のオルガノンがアイロスに肉薄する! 敵意や悪意よりもより悍ましい、食欲という牙を剥いて! つい先日まで普通の少年だったアイロスにとってはあまりにも恐ろしすぎる一瞬、彼の両足は竦んで動けない!
が。
びたーん。
その瞬間、なんとしたことか、オルガノンがコケた!
思いっきり足をもつれさせてひっくり返ったのだ!
「い、今ですっ、えい!」
ぽかり、とオルガノンはアイロスに石ころでブッ叩かれ、目を回したかのように動きを止めた。
「や、やった! やりましたよゴールドイエロー!」
「だからイエロー! でも、カッコいいじゃん、凄いよメタブラ!」
くすっと瑠美奈は柔らかく微笑む。もとより、オルガノンの脚に絡みついたのが、彼女が放った変幻自在の鞭『フェニックステイル』であったことは、ことさらに言い立てる必要もないのだから。
「さー、この調子でどんどんやっつけてこー!」
🔵🔵🔵 大成功

【SPD】で勝負!
心情
彼らも被害者ではありますが……今は戦って止めるしかありませんね。
戦闘
選択した√能力を使用。なるべく視覚的なインパクトの少ない都市伝説を複数召喚し、半数をアイロス君の護衛に回します。
もう半数でオルガノン・セラフィムを1体ずつ攻撃させ、跳躍・着地後の隙を狙って【インビジブルを制御】し死霊や攻性インビジブルで攻撃します。
(出自と現状が悲劇的過ぎて、虹色の燐光を纏ったらむしろ目立ちますよね!?というツッコミが入れ辛い……!)
アイロス君への謝罪
「嘘をついて申し訳ありません。信じて下さいとは言えませんが、この危機を切り抜けるまではどうか同行をお願いします」
アドリブ・連携などお任せ
「彼らも被害者ではありますが……今は戦って止めるしかありませんね」
|米満・満代《よねみつ・みつよ》(マウンテンセレブ・h00060)の慈愛に満ちた瞳が、今は悲しみにやや曇る。その視界の彼方に蠢くは、既にかつて人であったことを忘れ去ってしまった悍ましき異形の群れ、オルガノン・セラフィムの一団だ。美しいがゆえに不気味な装飾に身を包んだオルガノンたちには、もはや意思もなく理性もなく、シンプルなたった一つの欲望にのみ従って動く……すなわち、「天使」たる少年アイロスの捕食!
オルガノンの発症は悲劇ではあるが、もはや救うことはかなわない。ならばせめて、と、満代は決意を固める。……安らかな眠りの旅へと送り出すしかない、と。
「ならば、あなたの残滓を今一度この場に。『囁いて――『ラジオウェーブ』!』
満代の声の響くところ、虚空に無数の鎖が閃いたかのような幻影が一瞬揺らめく。
煌めく鎖の奥底に閉ざされたものは不可思議な謎めく塔……電波塔の影でもあるだろうか。その電波塔から送られてくると思しき声がノイズ交じりにささやいた。あるべからざるもの、あってはならぬもの、ありうるはずもないその存在を。
それは伝説、それは噂、それは巷間の実体なき存在。都市伝説と呼ばれる概念の現実化だ!
「アイロス君を守ってください、『少年』と最も相性のいい都市伝説さん。その名は!」
おお、その名は!
「その名は!」
その名は!
「八尺様!」
『ぽぽぽぽぽぽ!!!』
眩い陽光の中に揺らめく陽炎のように現れたのは、純白のロングスカートを翻し鍔広の可憐な帽子を目深にかぶった、長い髪の清楚で上品な女性たちの姿だ! だが瞠目せねばならぬ、その美女たちの異形さにも!
「……おっきい……です……!」
アイロスがはるか情報を見上げねばならぬのもむべなるかな。その美女たちこそ、身長実に2・4mほどもあろうかという巨女であれば! ブーム来てる! これこそ都市伝説『八尺様』の顕現だ!
「さあ八尺様たち、半分はアイロス君を守ってください、そしてもう半分は敵の攻撃を」
『ぽぽぽぽぽぽ!!』
「いえ半分だけが警護で、あとの半数は攻撃を……」
『ぽぽぽぽぽぽぽ!!!!』
「わー、アイロス君を取り合いしないでくださいー!?」
おおしかし、なんたることか。召喚された八尺様たちは寄ってたかって全員がアイロス少年のガード役になりたがってしまった! アイロスを中心にしたおしくらまんじゅうが形成されるがごとしだ! そう、八尺様は子供が、特に純真純情無垢な少年が大好きなのだった!
「くっ、しまったです。少年と八尺様は相性が良すぎましたか!」
満代は思わず臍を噛む。だがそんなことをしている間にも、オルガノンたちは猛然と間合いを詰めてくる!
虚空を引き裂く勢いで、オルガノンたちの身に纏った殺戮機械が解き放たれ、四方八方からアイロスを喰らわんと牙を剥く!
『ぽぽぽぽ!!』
だがそのアイロスへと向けられた殺意は八尺様たちを刺激した。おねショタの間に挟まろうとするオルガノン滅ぶべし!
弾丸を超える速度で向かってきた殺戮機械を、八尺様の繊細な手が軽々と受け止め、そのまま掴んで大きく引きずり回しぶん投げる! 流星のように投げ飛ばされたオルガノンは仲間たちに次々と激突しはじけ散っていく。
さらに別の八尺様は虚空に伸び上がり、天頂方向から雪崩れ落ちてきた殺戮機械をカウンターで殴り返す! 弾き返された殺戮機械は持ち主であるオルガノン自身を切り裂いて天空に血の花を咲かせていく。
「今です、私も行きますよ! インビジブルの皆さんっ!」
オルガノンの群れが八尺様の猛攻に浮足立った、その瞬間を見逃す満代ではない。たとえオルガノンたちが虹色の閃光の影に姿を隠そうとも、輝きの残滓は鮮やかに空間にこびりつき、哀れな天使のなり果ての行方を教えるのだから。
「その輝き、姿を隠すというよりむしろ目立ちますが……」
空間に満ちたインビジブルたちに指示を与え、一斉にオルガノンたちに襲い掛からせながら、満代は思いを馳せる。
「……見てほしかった、のですか。あなたたちは。そんな姿になってしまっても、自分たちを見てほしいから……それが輝きとなって表れているのですか……」
崩壊していくオルガノンたちを見送りながらつぶやく満代は、傍らにそっと立ったアイロスの気配に気づき、静かに頭を下げた。
「嘘をついて申し訳ありません。信じて下さいとは言えませんが、……この危機を切り抜けるまではどうか同行をお願いします」
「いえ、信じますよ。だって、あなたは……今。あの怖い人たちにさえ、優しい言葉を掛けたじゃないですか。そんな人を疑うはずはありません」
「……優しいのはあなたの方ですよ。でも、ありがとうございます」
戦場に咲いた一凛の花が風にそっと揺れるがごとき優しさの触れ合いに、かくして。
『ぽぽぽぽぽぽ―!!!』
全八尺様がぽぽぽと感動の号泣をしていたのだった。
「……やっぱり呼び出す都市伝説間違えましたか……」
🔵🔵🔵 大成功

これまた不気味な奴らが来たね
とはいえ、アイロスくんを渡すわけにはいかないからね
一肌脱ぎますか
√能力で呼ぶ【配下妖怪】のひとりとして、ぬりかべを召喚
「アイロスくん、この壁の陰に隠れててくれないかな。特別なお巡りさんの、大事な仕事を任せたいんだよ」
他の【配下妖怪】には、敵への攻撃を頼む
「みんな、隠れ鬼の時間だよ。鬼は、この機械っぽい奴ら。全員やっつけたら、ミルクホールで打ち上げだ!」
【配下妖怪】の攻撃で敵の√能力が発動したら、アイロスくんに虹色が見える方向を教えてもらって、そこを射撃
アイロスくんに敵の攻撃が向いたら、身を挺してかばう
これもお巡りさんの仕事のうちさ
「これまた不気味な奴らが来たね……いや……」
|与田・宗次郎《よだ・そうじろう》(半人半妖の汚職警官・h01067)は、普段は飄々として泰然自若、春風駘蕩な枯れた顔を僅かに曇らせた。
その視線の先には、悍ましく蠢く異形なる怪物──オルガノン・セラフィムの一群の姿がある。
「天使化」を発症し、しかし天使になることができずに、人でも天使でもない「モノ」になり果ててしまった哀れな化生たちが。
「……不気味にさせちまったね、というべきかねえ。……おいちゃんたち刑事はさ……事件が起きてからじゃないと捜査できないことが多くてね。ほんとは事件を未然に防ぐべきだったんだ。それができなかったのはおいちゃんたちにも責任があるよ」
悲し気に微かに首を振ると、宗次郎はしわがれたコートの襟をそっと立てた。春まだ浅く、冷気を残した風が時折彼の首元をそよいでゆく。その寒さに、立ち向かうかのように。
「……だが、君らが哀れとはいえ、アイロスくんを渡すわけにはいかないからね。一肌脱ぎますか」
こきこき、と首を鳴らした宗次郎の瞳が深い闇の色に染まった。ぞわり、と見るものを総毛だたせるような威圧感を持って。
理性も知性も持たぬオルガノンは、しかしそれゆえにこそ察知したに違いない、この男を放置しておくことは危険すぎると。
瞬時──。
オルガノンたちの身に纏った生態殺戮帰機械がうなりを上げ、風を吹き裂いて飛んだ! 機先を制し、恐るべき敵を抹殺するために! おお、その猛烈な勢いの前に、宗次郎とアイロスは動き得ぬ。このまま無惨な鮮血の花を咲かせるのか!
否。
唸りを上げた生態殺戮機械を──。
軽々と遮り、叩き落としたのだ。
無造作に差し上げた巨大な手が。
そう、大地の底から岩盤を割って差し伸べられた巨大な手が!
「やー、ぬりちゃん、ご苦労さんだねえ、わざわざヨーロッパまで。出張手当弾んじゃうよー」
『フォ、フォ、フォ。出張手当ッテ、どうせ駄菓子ナンダナ。ケドモ、おやっさんのお呼びナラ……お安い御用ナンダナ』
気安く声を掛けた宗次郎に答えた野太い声が大地の底から響く。いや、大地そのものが答えたかのごとくにさえ思える。おお、次の瞬間に立ち上がったものは、紛れもない巨大な大岩盤そのものではないか! 目を丸くし驚愕の色を隠せないアイロスに、頭上遥かから声が降る。
『ぬりかべ……おやっさんのお呼びにヨリ、参上ナンダナ』
おお、まさにそれは伝説に謳われ昔話に蠢き言い伝えの中に息づく妖怪変化。ぬりかべと呼ばれる巨大なる怪異そのものではないか!
これこそが宗次郎の恐るべき√能力。妖怪変化を召喚し使役する、半人半妖の彼だからこそ発揮しうる力に他ならぬ!
「さ、アイロスくん、この壁の陰に隠れててくれないかな。特別なお巡りさんの、大事な仕事を任せたいんだよ。つまり、監視だ」
「か、監視……?」
「うん、一歩引いた位置からの方が全体を把握しやすいからねえ。おいちゃんたちが戦ってる間、あいつらの動きを見張って教えてほしいのさ」
アイロスに言伝ると、宗次郎はコートの裾を翻し、オルガノンの群れに鋭い目を向ける。
「んじゃ、みんな、隠れ鬼の時間だよ。鬼は、この機械っぽい奴ら。全員やっつけたら、ミルクホールで打ち上げだ! 行こうか、|百鬼夜行《デモクラシィ》!!!」
その声に応じ、陽炎のように朧のように、歪み軋んだ空間の奥から、聞こえる、無数の歓声が。轟く、天地に木霊する祭り囃子が。おお、湧き出てきたものは──数え切れぬ異形!
然り、宗次郎が呼び寄せたものはぬりかべのみにあらず、古来より日の本に棲み暮らす古き民、数え切れぬ妖怪変化の群れだ! その凄絶なる軍勢に、感情さえ持たぬはずのオルガノンにさえ動揺と恐怖の色が浮かんだように見えたとしても決して不思議ではないだろう。
まっしぐらに先陣を切ってオルガノンたちを斬り裂いたのは鎌鼬であろうか。オルガノンたちの動きを制する白いつむじ風は一反木綿か。火車と釣瓶火が力を合わせた炎が渦を巻き、逃げまどおうとする哀れな敵を、その背にしがみついた子泣き爺の超重量が押し潰す。
だがオルガノンたちの、その欲望を満たさんとする執念を侮ることはできぬ。妖怪たちの襲撃から空間に潜み身を隠し、反撃を狙おうとするものも一体や二体ではなかった。
だが、だからこそ。
「み、右です、右側に虹色の光が!」
ぬりかべに守られながら、アイロスはその凶兆を見逃さぬ。揺らめく虹色の光輝くところにオルガノンの悍ましき姿あり!
「いいねえ、ドンピシャ!」
響いた銃声のもと、立ち昇る硝煙は、宗次郎の手にしかと握られた銃がくゆらせたもの。過たぬその狙いが撃ち抜いたのは、何もない虚空か……いや。
一瞬の後、空間の奥からよろめくように現れ、もんどりうって倒れ伏したのは鋼に輝く悍ましき姿、オルガノンにまぎれもない。
宗次郎の一発の銃弾は、見えぬ敵を確かに貫いていたのだ。
「ま、こういうのは下手に狙わない方が当たるもんさ」
『フォ、フォ、フォ。おやっさん、ソロソロ老眼だからナ』
「おいおいぬりちゃん、そいつを言っちゃいけないよ。駄菓子あげないよ?」
妖刑事と妖怪はニヤリと人外の、しかし人懐こい笑みを浮かべ合う。その笑みに誘われて、いつしかアイロスの顔にも、自然に笑顔が浮かんでいた。
🔵🔵🔵 大成功

…なるほど、こうなるのか。
この子をあんな姿にさせる訳にはいかないな。
少年。よく見ておくんだ。
俺のポジションはセンターバック。
攻撃的ディフェンダー…リベロとも呼ばれるポジション。
その守備と攻撃を兼ね備えた戦いの型をな。
俺はアイロス少年にサッカーボール渡すと
代わりにインビジブルボールを掌から生成。
それを転がして少年の前に立つと、その場から
ボール蹴ってオルガノン・セラフィムに叩き込む。
ここでポイントなのはボールへの回転のかけ方で
自分の元へ返ってくるようにする事。
これにより、俺は「この場から一歩も前進せずに」
少年を守りながら戦えるという訳だ。
せっかくだ。色んなシュートの型を見せてやるか!
「……なるほど、こうなるかもしれなかったのか」
|戌神・光次《いぬがみ・こうじ》(|自由人《リベロ》・h00190)の短い一言は、けれどその中に深く重い感情を宿して、大地に零れ落ちるように響いた。
月輪のごとき隻眼は冷えた光を放ち、刺すように相手を見据える。
──オルガノン・セラフィムと呼ばれる異形の悍ましき存在を。
幾何学の狂った設計をそのまま組み立てた機械が、己自身のエラーコードに身をよじりながらのたうっているような、不気味にして哀れな姿。それは、「天使」になり切れなかった、成果ての醜い形骸。死にきれずもがく鋼の屍。……今、光次の背で怯えている、天使の少年アイロスの、あり得たかもしれない可能性だったのだ。
「……この子をあんな姿にさせる訳にはいかないな」
強く光次は唇を噛む。決断と覚悟を宿して。
子供たちに対し、サッカーを通じてその未来の輝きを、将来の希望を見る彼にとって、一人の少年の存在をその夢ごと喰らわんとするオルガノンは断じて見過ごすわけにはいかぬ相手であったのだから。
狂気に満ちて襲い掛かってきたオルガノンに慌てる様子もなく、光次は身構えた。
だが、無数の敵を相手にしつつ、同時にアイロスをも守らねばならぬ。この難局をどう切り抜けるか、光次!
「少年。大事なボールだ、預かっておいてくれ。お前を男と見込んでの頼みだ。これは俺の夢であり宝だからな」
さらりと言い放つと、光次は背後のアイロスにサッカーボールを投げ渡す。慌ててしっかりとボールを抱きかかえるアイロスの姿を横目で眺め、小さく笑むと、彼は右手を差し伸べた。
と、……次の瞬間。掌の上の景色が歪む。それは概念そのものが物理的な影響を生み出すほどの力の凝縮に他ならない。やがて凝固した力場は球を為す、すなわち──サッカーボールの姿を!
「サッカーをしよう、とさっき言ったな。サッカーにはいろいろなポジションがあるが、俺のポジションはセンターバック。攻撃的ディフェンダー……リベロとも呼ばれるポジションだ」
光次は漆黒のコートを天空を舞う大鴉のように翻す。風を孕んで、黒衣が意志を持ったかのように踊った、次の瞬間。。
「よく見ておくんだ、その守備と攻撃を兼ね備えた戦いの型をな!」
引き裂かれた空間が哭き声を上げたかとさえ思えた刹那。それは光次の脚先が奏でた戦いの序曲、凄絶なる勢いで蹴り出され、風を巻いて旋風を生み出したエネルギーボールが奏でる破滅の交響曲だ!
超一流のサッカー選手が放つシュートの時速は200㎞に迫る。まして√能力を込めたその一撃の速さは音速を軽々とブッ千切る! いかにオルガノン・セラフィムが人外の化け物であったとしても、到底反応などできるはずもないほどに!
これこそが──光次のファイナルシュート!
「『ハウンド・ショット』ォォッ!!!」
破壊という結果が先にあらわれ、衝撃と爆裂という経過は後からついてくる。そのあまりの速さがゆえに。
オルガノン・セラフィムの群れはエネルギーボールの引き起こした超衝撃とそれに伴う超高熱により、融点を超えて溶解し、微塵に引き裂かれ、粉々に打ち砕かれた。
ああ、だが。
それすらも──第一段階に過ぎないとするならば?
オルガノンたちを蹴散らしたボールは、次の瞬間、凄まじい旋風と逆回転を引き起こし、天空を裂く!
「そう、サッカーは奥深く、果てしがない。だからこそ命を懸けて追い求めるに値する」
薄く笑んだ光次の……一歩、いや半歩たりとも動いていないその足元に、再びボールが舞い戻ったのだ、あたかも意志あるがごとくに!
おお、信じられようか。精密にして凄絶な回転を掛けられたボールが、相手に炸裂したその衝撃をも加えて、1ミリの狂いもなく、再び蹴り脚の元へと帰還するというその奇跡を。
人は言うだろう、光次の支配する、一種の|領域《ゾーン》のごとき世界がそこに広がっていると。
「うわあ……す、凄い!」
「これで、俺はこの場から一歩も動かず、君を守りながら戦うことができる。面白いだろう、サッカーって」
感動に身を震わせているアイロスの姿に優しい微笑みを浮かべると、光次は再び大きく怪鳥のように脚を振り上げた。
「せっかくだ。色んなシュートの型を見せてやるか!」
大地を抉る猛虎の爪のような勢いのシュートが、北海を羽搏く荒鷲のような一撃が、さらには、オルガノンに突き刺さって返ってきたボールをその勢いのままさらにカウンターで返すシュートが! あたかも超絶技巧の百花繚乱のごとくに華麗にして強烈に荒れ狂い、オルガノン・セラフィムの一群を破砕しつくしていったのだった。
だが。
「……本当は殺し合いに使うべき技術ではない。全身全霊を込めて競う中でお互いに全存在を高め合っていくためのもの。……それはわかっているのだがな……」
ぽつりと少し寂しげにつぶやいた、その光次の声はアイロスに届いただろうか。真の戦士が身に纏わざるを得ない悲しさという響きが。
🔵🔵🔵 大成功

アドリブ絡み諸々歓迎
とってもカッコいいメタルエンジェルナイトさんと一緒なら何も恐れる物はありません!さあ!共に悪を打ち払いましょう!
ワタシの本体は【守護騎士の反撃】の為にチャージに入ります
ですがご心配なく。動けない間もワタシの頭による頭突き・ビームで本体も彼も守ります
いざとなれば彼に頭を振り回してもらってもいいかもしれませんね。《かばう》のは得意分野ですから!
チャージ完了まで耐え忍べば後は振るうだけです!
騎士二名による合体!ビーム斬りです!必殺技はこうでなくちゃですね!
ワタシたち騎士ならこの程度なんて事ありません!ですよね?
「……これ、ワタシです」
ずしっと重みのある「何かの塊」を天使の少年アイロスに渡し、エーファ・コシュタ(突撃|飛頭騎士《デュラハン》・h01928)は淡々と告げた。おお、なんと悲劇的にして戦争の狂気を伝える演出であろうか!
……いや別にそんなことはなかった。
「ええっ、そんな、これが騎士さんだなんて……騎士さんですね」
渡されたアイロスも手の中の重みを確認して一応驚いて見せてくれた。だって彼は純粋な善人だから。とはいえ。
「はい、ワタシですよ!」
手の中のもの、すなわちエーファの頭がニコニコと笑っているのだから仕方ない。なにせ、エーファはデュラハン。無数の頭を持つ存在なのだ。
「……それで、この騎士さんをどうすればいいのでしょう?」
「はい、敵はすぐ近くに迫ってきています!」
うんうん、と周囲に浮かぶエーファのアタマたちは一斉にうなずく。そう、くすみ、ひずんだ鋼の異形、天使になり切れなかった哀しき成れ果てたるオルガノン・セラフィムの群れは、知性も理性もなくしたまま、ただ捕食本能のみに突き動かされて今しもエーファとアイロスの元へと迫りくる。その様は悍ましくも恐ろしく、そしてどこかもの悲しくさえあったのだが。
「今からワタシは超必殺技をぶちかまします!」
「すごいです!」
「でもそのためにはチャージ時間が必要です! 結構長いです!」
「えっダメなんじゃ!??」
「なので、今お渡ししたワタシを使ってください!」
「使うって……?」
どこまでもマイペースに話を進めていくエーファと、どこまでも純粋なのでしっかりリアクションを取ってくれるアイロスは実際いいコンビである。
「具体的には、大きく振りかぶってください」
「はい、振りかぶります!」
「そして投げます!」
「はい、投げま……投げるんですか!?」
ね、ちゃんとリアクションしてくれるでしょ?
まあそりゃアイロスもびっくりするさ! ってなものだが、けれどエーファは大真面目である。いつも彼女はとても真面目なのだ。騎士だから。どっちの方向を向いて真面目なのかはともかくとして。
「大丈夫です! だってワタシは頭が固いとよく言われますからね!」
「それは違う意味なのでは!?」
「ともかく、ワタシの頭をどん投げ付けてください! これぞドッジワタシ!」
もう何が何やらだが、既にオルガノンたちは指呼の間に迫ってきている、これ以上コントを続けている暇はない!
「わ、分かりました……いっけええ、ドッジ騎士さん!」
ばびゅーん! と唸りを上げ、エーファのアタマその1がまっしぐらにオルガノンの群れを目掛けて飛んでいく! だがそれだけではない。
「高速回転! 目からびぃぃぃぃむ!」
おお、エーファのアタマは高速回転しつつ目からビームを撃ち放ち、燃え上る炎の塊となって突っ込んでいったのだ! まさに炎の飛頭弾!
この攻撃にはさすがにオルガノンたちもたじろがざるを得ない。何せ自分たちの攻撃は単に身に付けた殺戮機械を投げつけるだけだが、相手が投げてきたのは頭! それも燃える頭を投げてきたのだから! 発想のスケールでエーファの勝ちだ!
どごおおん! 投擲の勢いをビームがさらに強める相乗効果も相まって、オルガノンたちに命中したドッジエーファ弾は見事に数体の敵をなぎ倒す!
すかさず次弾装填! アイロスはエーファのアタマその2を、そしてその3を続けざまに手に取ってぶん投げまくる!
どっかんどっかん! ストライク連発されるレーンのボーリングピンのように弾き飛ばされるオルガノンの群れはすでにヨロヨロのボロボロだ。エーファのアタマもあんまり無傷ではないが、まあ……ささいなことだろう……。
「今です、チャージ完了ですよ! さあ!共に悪を打ち払いましょう! 一緒にこの槍を取ってください!」
「は、はい!!」
デュラハンとメタルエンジェルナイト、二人の騎士の力が今一つに! 限界までエネルギーをチャージしきったエーファの槍は、今、二人の精神のごとく黄金に光輝き、天空斬り裂きビームの奔流迸る無限の光撃と化す!
「がぁったいひぃぃっさつぅ! 『|守護騎士の反撃《エンチャントビーム》斬り』ぃぃぃっ!!!!!」
エーファとアイロスはそのまま……すでにグロッキー状態だったオルガノンの群れにビーム槍を真っ向微塵と振り下ろした!
閃光と爆炎に包まれ、大地ごと抉り破砕するほどの破局がオルガノンたちを包み込み飲み込んでいき、ある意味ではたった一つの救いかもしれない終焉を彼らにもたらしたのだった。
「フッ、やはりワタシたち騎士ならこの程度なんて事ありませんでした! ですよね?」
「……騎士って頭をドッジしないといけないのでしょうか……ちょっと自信がなくなってきました……」
🔵🔵🔵 大成功

さて、ここからはわたくしの歌ですわ
マイクを辿り、音響現象に現実改変を付与しながら√能力を発動
オルガノン・セラフィムよ、葬送してあげましょう
瞑目すると同時、|世界《√》の現実を改竄する歌がオルガノン・セラフィムが密集している地点を中心に現実改変を発生
アイロス、わたくしの傍に
オルガノン・セラフィムに襲われない様、現実改変を遠方にいるオルガノン・セラフィムに打ち放ちながら高らかに美声を持って現実改変…シンプルに、時空を歪めてそのままオルガノン・セラフィムを歪曲していきますわ
アイロス、貴方が英雄になるなら…この様な光景が数多に待ち受ける事でしょう
その覚悟は、良いですね?
「ご覧あそばせ、アイロス。あの姿を」
|アレクシア・ディマンシュ 《Alexia・Dimanche》(ウタウタイの令嬢・h01070)は可憐にして気品ある強いまなざしを彼方に送る。
そこに待ち受けるものは、世界そのものを揺るがせるような悍ましき異形なる怪物の群れ、金属の廃棄物をでたらめに積み重ね、折り畳んでいって偶然生れ出たような歪んだ姿を持つもの――その名をオルガノン・セラフィム。
その世界の軋みそれ自体が形をとったかのような存在が、今、怒涛のようにアレクシアと、彼の傍らの少年アイロスに襲い掛かかる、食らうために、ただ喰い尽くすためだけに。
耳障りな金属音を響かせて、オルガノンはその鋼の爪を伸ばし金属の牙を剥きだした! 大気中に殺意を充満させ、虚空ごと引き裂くかのように!
だが……、ふわりと。さらりと。
敵の剥き出しの暴威とあまりにも対照的に、アレクシアはアイロスを庇いつつも、春風のように身をかわし、花がそよぐように、オルガンの凶猛なる攻撃を受け流していく。彼女が舞っていくその後に、ただ響きだけが残る。それは……『響き渡る魔弾の射手』、撃ち放たれた魔銃の、死をもたらす宣告だ。
穿つ! 砕く! オルガノンの金属の体を魔弾が次々と!
ああ、だが、なんと恐ろしい光景か。
それを呼ぶのか、「祝福」と。
破壊されたオルガノンの頭上に美しい花と輝く光が降り注ぐ……砕け散ったオルガノンの身体を癒すかのように! そう、その美しい奇跡は、醜いオルガノンに再生をもたらすのだ! 死ねぬ、壊れぬ、祝福とは呪いのことであるやも知れぬ。
「ああ、そ、そんな……」
天使の少年アイロスは、その冒涜的な光景をただ震えながら見つめる。
だがアレクシアは動じない。
「あなたがたの悲劇は理解しますわ。だからこそ」
オルガノンが「天使」になれなかったものどもの哀れな末路であることをアレクシアは承知している、そして、もう彼らを救う術はないことも。そう、今見たように……致命傷でさえ彼らを殺せないのだ。
そう、「だからこそ」。
「だからこそ、……ここからはわたくしの歌ですわ。……オルガノン・セラフィムよ。わたくしが葬送してさしあげましょう。せめて末期は歌に乗って、逝きなさい……!」
アレクシアはためらわない。アレクシアは容赦しない。その一瞬、その刹那がオルガノンの悲劇を長引かせるだけになることを知っているから。
アッシュグレイの髪を靡かせた風が天空に一颯するとき、アレクシアの唇は静かに開かれる。誰にも弔ってもらえぬ怪物たちを送るための弔歌となって!
「――『世界を変えなさい、我が歌よ。我が歌声は人々を震わせ、精神を震わせ、世界を震わせ、現実を震わせる』……!」
流れ出た調べは月夜の湖上に嫋嫋と流れゆく銀糸の琴の音を思わせる玲瓏の美声、星空の彼方から降り注ぐさんざめく輝きが形になったような無窮の歌。それこそは稀代の歌姫たるアレクシアが送る別離の唄。
心持たぬオルガノンさえも一瞬聞き惚れたかにさえ見える、だがその美しき歌は、今、世界の理を破壊する!
握りつぶされたかのようにオルガノンがひしゃげた。引き裂かれたかのようにオルガノンが千切れた。飲み込まれたかのようにオルガノンが食われた。何によって? 世界によって。いや、現実という概念そのものによってだ。
おお、アレクシアの歌は……比喩にあらず、誇張にあらず、文字通り「現実を描き替える」のだ!
「『|聖歌絶唱・万象を変転させ給え我が歌よ《オラシオン・レゾナンス・オブ・リアリティ》』!!」
混乱したかのようなオルガノンたちは再び「祝福」を引き起こし再生を図ろうと図る。だが意味をなさぬ、祝福は働かぬ。アレクシアは既に『オルガノンが祝福を受ける現実』を否定しているのだから!
……そこに物語はなかった。そこに人の心を打つような物語は何もなかった。
ただ、「現実」に否定され、「現実」に押しつぶされて、「現実」ではなかったものにされていく「何かだったもの」の姿があるだけだった。そしてそれこそが、オルガノン・セラフィムと呼ばれたものの「事実」だったのだ……。
その時響き渡った、金属を乱雑にすり合わせるようなひび割れた声は、断末魔の悲鳴であったのか、それとも……それとも、やっと死ねるという喜びであったのか。
答えを知る者はおらず、ただアレクシアの珠玉のような残響のみが物悲しく、誰もいなくなった戦場に響き渡ってゆく。
「アイロス、貴方が英雄になるなら……この様な光景が数多に待ち受ける事でしょう。……その覚悟は、良いですね?」
荒野に立つアレクシアの華奢な背中が振り返らぬままアイロスに語り掛ける。少年は、決して忘れられぬその景色を瞳に焼き付けながら、ただ美しき歌姫が送る葬送の歌を聞き続けていた。
🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』』

POW
純白の騒霊の招来
【奴隷怪異「レムレース・アルブス」】を召喚し、攻撃技「【嘆きの光ラメントゥム】」か回復技「【聖者の涙ラクリマ・サンクティ】」、あるいは「敵との融合」を指示できる。融合された敵はダメージの代わりに行動力が低下し、0になると[奴隷怪異「レムレース・アルブス」]と共に消滅死亡する。
【奴隷怪異「レムレース・アルブス」】を召喚し、攻撃技「【嘆きの光ラメントゥム】」か回復技「【聖者の涙ラクリマ・サンクティ】」、あるいは「敵との融合」を指示できる。融合された敵はダメージの代わりに行動力が低下し、0になると[奴隷怪異「レムレース・アルブス」]と共に消滅死亡する。
SPD
輝ける深淵への誘い
【羅紗】から【輝く文字列】を放ち、命中した敵に微弱ダメージを与える。ただし、命中した敵の耐久力が3割以下の場合、敵は【頭部が破裂】して死亡する。
【羅紗】から【輝く文字列】を放ち、命中した敵に微弱ダメージを与える。ただし、命中した敵の耐久力が3割以下の場合、敵は【頭部が破裂】して死亡する。
WIZ
記憶の海の撹拌
10秒瞑想して、自身の記憶世界「【羅紗の記憶海】」から【知られざる古代の怪異】を1体召喚する。[知られざる古代の怪異]はあなたと同等の強さで得意技を使って戦い、レベル秒後に消滅する。
10秒瞑想して、自身の記憶世界「【羅紗の記憶海】」から【知られざる古代の怪異】を1体召喚する。[知られざる古代の怪異]はあなたと同等の強さで得意技を使って戦い、レベル秒後に消滅する。
「一足遅かったか。すでにオルガノン・セラフィムどもを根絶するとはな。あれでも良い新物質の素材になれたものを、蒙昧にして物の価値を知らぬものどもよ」
オルガノンたちを倒した√能力者たちの耳に届いたのは、涼やかな衣擦れの音。優雅にして華麗に、そして底知れぬ禍々しさを併せ持つその音は、薄衣――「羅紗」を身に纏った傾国の美女からもたらされたものだ。そう、彼女の名は……。
「だが我が名のもと、そこなる希少な「天使」だけは持ち帰らせてもらう。そう、この羅紗の魔術師、――アマランス・フューリーの名に置いてな」
おお、彼女こそは「羅紗の魔術塔」にその人ありと謳われた恐るべき魔女、アマランス・フューリーその人に他ならぬ!
彼女の透徹にして冷ややかな視線は容赦なく少年アイロスを見据える。そこにあるのは異様な情熱。ただし……アイロスを人として見るのではなく、ただの素材としてしか見ていないところからもたらされる情熱だ。
「邪魔をするのだろうな。それは星で詠めている。ならば羅紗の魔術の真髄、その身で味わうがいい。……お前たち√能力者も、まあ良き実験素材にはなろう。光栄に思うが良い。誇るが良い。悦ぶが良い。歓喜の涙を流すが良い。すべては悠久にして深遠なる魔術のため。魔術の真髄を極めるための礎になれるのだからな……」
まともな話の通じる相手ではない。全力で挑むしかない。さもなければ、アイロスだけではなく、√能力者たちもまた実験素材にされるという末路が待つのみだ……!

悪の女幹部には退場願うでごぜーますな
「空中浮遊」でゆらぁりゆらぁりと移動しながら突撃
「野生の勘」でアイロスに当たらないものに関してはよけつつ、当たるものだけを「呪詛」の塊でふせぎながら受けるでごぜーます
「ヒーローに大事な物
情熱、思想、理念、友情、勇気、努力、勝利!
なによりも必殺技 でごぜーますよ」
攻撃のあたり距離まで近づいたら【一点集中全力突】を起動
「必殺自分の骨を砕くだけのただのグーパンチ!」
防御も回避も全部やめて、「鎧砕き」を乗せた「捨て身の一撃」でぶん殴るでごぜーます
まだ元気そうならもーいっぱつ殴るでごぜーますよ
連携アドリブ等歓迎でごぜーます
「悪の女幹部には退場願うでごぜーますな」
|十・十 《くのつぎ・もげき》(学校の怪談のなりそこない・h03158)はたじろがず、恐れず、引かぬ。たとえ眼前に、地獄の妖花と呼ぶにふさわしい『羅紗の魔術塔』の魔女――アマランス・フューリーの、美しき中にも底知れぬ怖ろしさを秘めた姿を認めようとも。
アマランスは十の言葉を聞き、麗しい唇を嘲笑の形に歪めた。
「悪? フッ、悪とは浅薄な。魔術の真髄を極め古き歴史に光を当て、人類を延命させる――その大義を善悪というつまらぬ尺度で測ろうとするとは、しょせん幼子よ」
おお、その優雅なる姿から醸し出される人外の威圧感はどうであろう。アマランスこそはまさしく古の魔術という暗黒の深淵、そのかつて誰も踏み入ったことのない冒涜的な領域にまでたどり着いた恐るべき存在なのだ。
だが、十は動じない。
「ほほう。悪も善も関係ないというのでごぜーますな? ……じゃあ悪と呼んでもいいじゃねーですか。やーい悪の女幹部、あーくあーく。どう呼ばれてもいいのなら、たっぷりと悪呼ばわりさせてもらいますでごぜーます。ハイ悪けってーい」
「…………」
「おやおやあ? 何か悪い顔が真っ赤でごぜーますよ悪の女幹部の人? まさか悪って呼ばれたくらいで怒ったりはしねーですよなあだって悪って言われても平気なはずだし?」
「………………ええい黙れ! 人を悪い奴っていう方が悪いのだぞ!!」
アマランス、キレた! なんか意外に転がしやすい子かもしれない!
「……ということでごぜーましてな、アイロス」
アマランスの癇癪を柳に風と受け流し、十は傍らの「天使」の少年、アイロスを振り返る。
「こうしてせっかく悪の女幹部さんが、『自分を悪と呼んでも一向に構わんッ、さあ存分に悪呼ばわりしたまえッ!』 と言ってくださってるでごぜーますので」
「……い、言ってるんでしょうか?」
「言ってくださってるんでごぜーますので、お言葉に甘えて、こちらは正義のヒーローとしてのアクションを起こすでごぜーます。ということで、あたーっく!」
ゆらぁりゆらぁり、と深い影が闇の中に蠢くように、十はその華奢な体を宙に舞わせ、鬼火を纏ってアマランスへと立ち向かう! なんか絵面的には美人のお姉さんを襲う怖いオバケのように見えるがそれはさておいて!
「ええい、おのれ! 羅紗の魔術、その身で味わうが良いわ!」
アマランスの身に纏った薄絹が妖しくも華麗に輝きを放つ。そう、彼女たち魔術師が『羅紗』の名で呼ばれる所以に他ならぬのだ、この衣に込めた神秘の魔術文字に宿る力を自在に操る能力こそが!
見よ、アマランスの羅紗がはためくように翻り、次元を超越してそこに記された文字列が煌々たる輝きとなって空に浮かぶ。それは触れてはならぬ何かだと、直感的に、本能的に悟らずにはいられない、物理法則を超えた世界からの侵攻! 輝いた瞬間には周囲のものを飲み込んでいる回避不可の攻撃だ!
だが、神秘には神秘を、怪異には怪異を。
十とても学校の怪談……のなりそこない、異界の存在としてアマランスの魔術といえどもむざむざと喰らうものではない。
「物理法則なんか知らねーってのはこっちも同様でごぜーますよ」
空間に炸裂した魔術文字、そこから僅かに距離を隔てて十は舞う。右に左に、上に下に。
「馬鹿な、我が魔術を回避できるはずがない!」
「でごぜーますねえ、それは撃った瞬間にもう当たってる、おっそろしい攻撃。でごぜーますから」
愕然とするアマランスに、十はくすりと微笑んだ。
「……当たってもらったんでごぜーますよ。僕の体に当たるより前にね」
彼の言葉を示すかのように、十の周囲の空間が淀み、濁り、ドロリと滴るように溶け落ちる。
おお、それは――呪詛を満たした空間侵食であった!
アマランスの魔術文字は十に命中する前に、彼の身を包む呪詛に喰われ、目標への到達を阻まれていたのだ!
衝撃に一瞬棒立ちとなったアマランスの隙を、野生ともいえる十の艦は見逃さぬ!
「いいでごぜーますかアイロス、ヒーローに大事な物、それは! 情熱、思想、理念、友情、勇気、努力、勝利……そして何よりも!」
「な、何よりも!?」
目を見張るアイロスにその雄姿を見せつけざま、十はまっしぐらに――敵目掛けて猛然と突っ込んだ!
「必殺技!!でごぜーますよ!! つまりぃ……全力でぶん殴る!! |一点集中全力突《パイルバンカー》ァァァッ!!!!」
おお、それこそは! 防御もなく回避もなく、ただ一念一撃、拳の唸りにすべてを込めた燃え上る魂の爆発だ!
「ぐわああああ!!??」
アマランスの美しい体に直撃した超重爆撃拳は十自身の体もへし折るほどの衝撃!
しかし!
「まだ元気そうでごぜーますな? ならもーいっぱつ殴るでごぜーますよ!」
「ま、待て、別に私はもう元気では………!」
「殴らせろーわるいやつめー!!!」
「ぐわあああああああ!!!!!????? 外道ぉぉぉぉぉ!!!???」
そうだ、せっかく腕は二本あるのだから、両方使っておかねば損というもの!
かくして再び爆裂した十の鉄拳は、アマランスを見事、星の彼方へブッ飛ばしたのだった。
「アイロス、これがヒーローでごぜーますよ!」
「なんか途中から悪い感じになってたような……」
「ヒーローでごぜーます! いいね!?」
「……アッハイ」
🔵🔵🔵 大成功

人間(√EDEN)の霊能力者×|古代語魔術師《ブラックウィザード》、16歳の男です。
普段の口調は「脱力(僕、呼び捨て、だね、だよ、~かい?)」仲間には「丁寧(僕、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。
√能力は指定した物をどれでも使用し、運動が苦手なのであまり積極的には行動せず、他の√能力者に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
よろしくおねがいします!

後衛より戦闘支援。弾道計算による着弾観測で距離を調整し、敵の攻撃が届かぬ場所からカノン砲による援護射撃を行う。
【範囲攻撃】で敵数を減らしたり、キャニスター弾で散弾をばら撒くことで敵の進軍や足並みを崩す遅滞戦闘【牽制射撃】【時間稼ぎ】も行う。
守るべきヒトや建物が無ければ、【無差別攻撃】で敵対目標諸共一面を焦土とする…
カノン砲の射程距離外まで近づかれれば無力だが、全重量を乗せた【重量攻撃】による【特攻】も辞さない。
なお√能力は使用しない。
「では、出撃しよう」
「俺からの愛、受け取ってくれたか?」
「大丈夫だ。愛する人間ども。俺が守ってやる」
「へえ、魔術師……ヨーロッパの古代魔術か」
|観王寺・透《かんおうじ・とおる》(人間(√EDEN)の霊能力者・h01836)は、闇のように深い漆黒の瞳で、戦場に現れた美と妖の化身をじっと見つめた。
その相手こそは、古代より連綿と続く欧州の深淵に咲き誇る、絢爛と退廃の独自なる神秘に到達していたものたち、――『羅紗の魔術塔』の一人、アマランス・フューリーと呼ばれる魔女に他ならぬ。
「……|古代語魔術師《ブラックゥイザード》として、欧州魔術がどんなものか、ちょっと気になるね」
然り、透もまた魔術師、歴史の中に深く埋もれた古代語を駆使しその言霊を操るもの、古代語魔術師である。ゆえに、事件の顛末とは別に、透は自らの中で、魔術師としての興味も強く蠢き始めたのを感じていた。
「では挑んでみるが良い。大丈夫だ。愛する人間。俺が守ってやる」
背後から降ってきた硬質な声に振り向いた透は、そこに、天叩く聳え立つ巨大な鋼のシルエットを認めた。ベルセルクマシン、と即時判断できるほどの威圧感ある巨躯、しかしその頂点で朧に発光するモノアイは、どこか軋んだ感情を持つものであるように透には思えた。
鋼の巨人はゆっくりと名を名乗る。――戦闘機械群・|社会式《しゃかいしき》(Block Head・h01967)と。
「ありがとうございます。けれど、僕あまり動くのが得意ではないもので……」
「そうか、その繊細さも愛おしい。安心しろ、俺は後方支援が専門、お前が奴に近づくまではこの火力をもって奴の注意を引き、囮となって奴の動きを制して見せよう」
そういうことなら……と、透は社会式と頷きあうと、同時に行動を開始した。
閃光が輝き大地が割れ天地に響き渡る轟音と共に竜の鎌首のような火柱が立ち昇る。
アマランス・フューリーの身に纏った「羅紗」が微かに揺れた。そう、微かに。
アマランスはさすがに偉大なる魔術師、突如巻き起こったその凄絶なる猛爆撃の中で、傷一つついてはいなかった。とはいえ、彼女は柳眉をひそめる。
「機械? ……いや、新たな√能力者か。確かに凄まじい火力だが、……魔術の深奥に達したこのアマランス・フューリーに単純な物理攻撃が通用すると思うか」
「良いな、その傲慢ぶりも愛おしい。魔術師よ、お前もまた人間なれば、俺が愛するものだ。ゆえに……」
まさに物理法則を無視し遥か彼方までを見通すような鋭いまなざしで、遠く離れた自らを凝視するアマランスを、社会式はセンサーで把握し、回路が過熱するようなエネルギーの加重圧を感知する。それはおそらく……、生物ならば、歓喜と呼ばれる感情に近いものであっただろう。
「ゆえに、俺は……ああ、愛せば愛す程――|愛《こわ》したくなるのだ」
社会式のモノアイがどろりと蕩けるように光った。それは愛、愛だと彼が思うもの。愛だと彼に上書きされたもの……!
ひび割れ壊れかけた「愛」を伴って、社会式のカノン砲は一層の凄絶さを増し炎を吐いていく。世界の終りの荒野に孤独に立つただ一人であるかのように。さしものアマランスでさえも、一瞬怯まずにはいられないほどの轟爆を。
「……まだ一人いたか」
振り返りもせず冷たく言い放ったアマランスの声は、無論、その隙に背後に立ったもう一人の√能力者を……透を指してのもの。
社会式の凄まじい爆撃は、先天性の神経失調という難問を抱える透をして、見事にアマランスへの間合いにまで送り届けることに成功していたのだ。
「まあね。『羅紗』の魔術、聞いたことはある。どれほどのものか、興味があってさ」
「なるほど、系統は違えど、貴様も魔術師か。良い素質があるようだな。……それだけに惜しい。高貴なる欧州の血筋さえ入っていれば配下に加えてやってもよかったのだが」
「悪いけどさ、僕は今の僕が気に入っててね」
振り向かぬまま言葉を紡ぐアマランスと、だるそうに淡々と答える透の不思議な会話であった。
……いや、否。
会話ではない。
既に、……始まっていたのだ。二人の魔術師の戦いが!
時が。瞬間が、炸裂した――。
「記憶の海よ!!」
「ウィザード・フレイムッ!!」
アマランスの魔術は一定時間の瞑想を。
透の魔術もまた、動かないままの詠唱を。
それぞれ必要とするがゆえに。二人は言葉を交わしつつ、術式を練り上げていたのだ。
魔力が充満し虚空を引き裂いて嵐のように激突する中、アマランスの呼び出した古代の異形が牙を剥き、透の首元を引き裂かんと猛襲した! されど透の呼び起こした炎は怪異の攻撃を跳ね返し、アマランスを焼き尽くさんと渦を巻く。しかしアマランスの怪異もこれを防ぎ火炎を引き裂いて逆襲に転じようとし――。
「では受け取ってもらおう、俺の愛を」
双方の意識が相手に向かった一瞬。
天空そのものが崩れ落ちてきたような巨大な影が、アマランスの頭上に指した――!
そう、それはまさに、戦闘機械群・社会式の巨影に他ならなかった。
遠距離攻撃をその特性とする社会式が秘めていた隠しの一撃、それは、自らの巨体それ自体を砲弾とも化した重爆のダイブ!
魔力のすべてを『記憶の海』の術に向けていたアマランスは咄嗟に古代の怪異をもって社会式を防がざるを得ず、そしてそれは必然的に――!
「ま、面白い魔術だったよ、羅紗」
ぽつりとつぶやいた透の声とともに、彼の炎が魔女を火刑に処す結果を招いたのだった。
灰燼と化す魔女を眺め、社会式はつぶやく。
「まさに燃え上がる愛か。そう、愛の結末とはこうでなければならん。そうだろう?」
「はは、どうでしょうね……」
透は曖昧に笑い、それ以上のことについては口をつぐんだのだった。そう、……自らの魔眼が見通した、社会式のAIに上書きされた歪な「愛」のことなどは。
🔵🔵🔵🔵🔴🔴 成功

アドリブ絡み諸々歓迎
実験ですか!?ワタシの頭一つ程度で良ければお貸しして…やっぱり怖いのでダメです!
その実験が何だかは分かりませんが、メタルエンジェルナイトさんもワタシも渡すわけには行きません!
彼を守るように頭を呼び出し、馬上槍と共に攻撃や怪異を受け止めます
怪異の融合も頭で《かばう》事で比較的安全に消失させ、攻撃も槍での《カウンター》で弾き返します
槍や頭での攻撃で相手の手数を減らし《鎧砕き》で相手の防御を突き崩し【目力光線一斉掃射】です!
そしてビームに集中しているワタシの代わりに馬上槍を彼に託し、ビームと槍による合体攻撃を今一度!
この二人の力は実験などでは推し測れないでしょう!これが騎士です!
「ええっ、ワタシたちを実験材料にするというのですか!?」
エーファ・コシュタ(突撃|飛頭騎士《デュラハン》・h01928)は、無数にぷかぷかと浮かぶ頭で一斉に息を飲む。
エーファ、そしてエーファに庇われている「天使」の少年アイロスを、なんということか。目の前にいる恐るべき魔女アマランス・フューリーは実験素材にするという。
アマランスこそは、ヨーロッパの永い歴史の影に常に蠢き、暗黒の深淵に禁断の知識を追い求め、神秘の階梯を登り続けてきた『羅紗の魔術塔』の一員なのである。
「ふふ、天使に加え、デュラハンとはなかなかの良質素材。我が偉大なる魔術の進歩に資すると思えばこれほどの幸甚もあるまい?」
艶めく唇に悍ましい言葉を載せて、アマランスは冷笑する。
「くっ、まあワタシの頭はいっぱいありますから、一個くらいは差し上げてもという気はしなくもないですが……」
「だ、ダメですよ騎士さん!? もし騎士さんのアタマがあの人の手に渡ったら、きっと酷いことを……『闇堕ち』とかいうことをされますよ!」
「ええっ闇堕ち!?」
「闇堕ちです!」
「つまり、ワタシが闇堕ちしたら……それは!」
「そう、それは!」
「「暗黒騎士!!」」
奇しくもエーファとアイロスの言葉はぴたりと一致! 二人は同時に顔を見合わせ、そして同時に頬を紅潮させた!
「「……か、カッコいい!!!」」
ダメだこの二人!
「……暗黒騎士といえば! 孤独な放浪の戦士、時には敵、時には味方、しかし強大な共通の敵と戦う時には『フッ、アナタを倒すのはこのワタシですからね』などとツンデレつつ力を貸してくれる、強敵と書いてともと読んでライバルとも読む系!」
「カッコいいです!! ……で、でもやっぱりそれは良くないのでは?」
「そ、そうですね。ワタシはあくまでも正道を歩み王道を進む、光の騎士を目指すべきなのです。……でも……ワタシのアタマの一つだけが涙をのんで暗黒騎士になることでこの場が収まるのなら、それも尊い犠牲かもしれません!」
しみじみとつぶやいたエーファ(本体)に、エーファ(頭)の一つが深く頷く。
「そうですね、では仕方ありません、ワタシが暗黒騎士に」
が、その隣のもう一つの頭が彼女を止める。
「いえ、ワタシが犠牲になることはありません。代わりにワタシこそが暗黒騎士に」
「いえ暗黒騎士になるのはワタシです。これもみんなのため」
「いえいえワタシが」「ワタシがワタシがワタシが」
ダメだこの頭たち!
だが、収拾がつかなくなりかけた時。
「いや別に暗黒騎士とやらにはしないが……何を言っているのだお前たち」
眉をひそめてツッコんだアマランスの言葉にその場が凍り着く!
そして次の瞬間。正義の怒りに煮えたぎったエーファの裂帛の気勢が響き渡った!
「おのれ羅紗の魔術士! 純粋な人の真心を弄ぶとは許せません!!」
「えっ? いや私は別に何も言ってな」
「成敗です!」
今こそ日輪に鎧兜を眩く輝かせ、騎士エーファの正しき魂を堂々と示すときだ!
彼女は無数の頭に飛び乗るとそのまま吶喊! それはもう怒りに燃えたまなざしでアマランスを睨みつけつつ!
「くっ、八つ当たりの逆ギレではないか!」
虚空を引き裂き荒らしを巻き起こして迫りくるエーファのド迫力にたじろぎながらも、しかし恐るべき魔女アマランスは自らの魔術を素早く起動する。輝く魔法陣が天空に記されたかと見るや、その奥、すべての物理法則を超越した計り知れぬ角度から、異形なる何ものかが躍り出た。この世界に所属せぬもの、奴隷怪異レムレース・アルブスと呼ばれるものが!
襲い掛かるレムレースに対し、しかしエーファは引かぬ。
「アタマシャワーッ!!」
号令一下、エーファのアタマたちはレムレースに次々とぶつかっていく! しかし危ない、レムレースの恐ろしさは攻撃と回復を併せ持つだけでなく、敵と融合してしまうところにこそあるのだ、これでは敵の思うツポではないか!?
だが。
1個。2個。5個。10個。
次々とエーファのアタマがレムレースに対しぶつかる……自ら融合されるために!
そしてそのたびごとに、さすがにレムレースの動きも鈍くなってゆくではないか。それはそうである、人の頭は大体5~6㎏くらいはあるもの。それを10個も20個も、しかもブランブランと揺れる状態でぶら下げていては、いかに魔獣といえどもまともに動きづらい!
「今です! ひっさつ、|眼力光線一斉掃射《メカラビーム》!!!」
閃光! そして爆炎! 動きの鈍った相手に対し、エーファのアタマたちは天地をも焼き尽くさんばかりの勢いで、一斉に超絶破壊光線を撃ち放った! そう、レムレースに融合されているアタマたちも含めて! ある意味、一番当たる位置にいるのだから!
「さあメタルエンジェルナイト! 先ほどのドッジワタシの訓練の成果を見せる時ですよ!」
「は、はいっ!」
アイロスはエーファに託されていた馬上槍をしっかりと構え直すと、大きく振りかぶり、天空果てまでも届けよという勢いで思い切り投げつけた! さらにそこへ、エーファのビームが集中し威力が激増!
これぞドッジエーファの効果、燃え上った槍の投擲は狙い過たずまっすぐにレムレースをぶち抜くと、その反動で、なんと! アマランスにもヒットしたのだ! これこそドッジ奥義ダブルアウト投法である!
「ぐわあああっ!!!??? そ、そんなバカな……! ダブルアウトルールは採用していない場合もあるのだぞ……!?」
崩れ落ちるアマランスに、エーファとアイロスは見つめ合い、朗らかに笑い合うのだった。
「ワタシたち二人の力は実験などでは推し測れないでしょう! これが騎士というものです!」
🔵🔵🔵 大成功

連携・アドリブ歓迎
おやおや、今度は美人さんが来たね
だけど、未成年者略取は犯罪だよ……って、ここは日本じゃないけどさ
「ここから先は、特別なお巡りさんの専売特許だ。アイロスくんは、ちょっとの間動かないでね」
配下妖怪に死の危険があるので、一騎打ちを挑む
技能「零距離射撃」「カウンター」を中心に立ち回る
敵が能力を使ってきたら、√能力で失敗させる
(因果関係の詳細はおまかせします)
「おやおや、今度は美人さんが来たね」
|与田・宗次郎《よだ・そうじろう》(半人半妖の汚職警官・h01067)は半白の髪を撫でつけながら、眼前に迫る形持った美を、そして形持った恐怖を見つめた。
その相手こそは、古く長き欧州の歴史の影の中、一部のものたちから声を潜めて噂から噂に伝えられてきた神秘の集団――『羅紗の魔術塔』の魔女、アマランス・フューリーその人に他ならぬ。
その容貌は天女のごとく、されど身に纏う雰囲気は悪鬼の如し。アマランスは妖艶な唇に微笑を湛えたまま、衣擦れの音もあえかに静かに歩み寄ってくる。彼女の華奢な身に纏う天人の羽衣のようにさえ見える薄絹が、まるでそれ自体が意志と命を備えるがごとく、優雅にして不気味に舞っていた。
「さて、ここから先は、特別なお巡りさんの専売特許だ。アイロスくんは、ちょっとの間動かないでね」
アマランスの威容に、宗次郎の傍らに控えていた「天使」の少年、アイロスは思わず身を竦ませ、怯えを隠せずにいた。いや……アイロスのみではない。宗次郎が先ほど呼び出した百鬼夜行の妖怪たちでさえ、アマランスの気配には僅かにたじろがざるを得ないほどだった。
だが、宗次郎は飄々とした態度を崩さない。春の柔らかい風を穏やかに受け流す柳の古木のように。
「……お嬢さん、わざわざここまで苦労さんだけど、未成年者略取は犯罪だよ……って、ここは日本じゃないけどさ」
飄々と口にする宗次郎に、アマランスは嘲笑で応えた。
「犯罪か。たかだか百年程度の歴史しかない浅薄な規範で深遠なる魔術を縛ろうなどと愚かな思い上がりだ」
「それが嫌なら人の世界に入ってきてほしくないんだよねえ。人の世界に来たんならルールを守んないとさ」
目を焼く閃光を、アイロスたちは見た。ゆっくりと近づき、そしてそのまますれ違ったかに見えた、宗次郎とアマランスの間に走り抜けた光条の痕跡だけを、見た。
すれ違いざまにアマランスの羅紗と宗次郎の拳銃が互いに火を引いていたのである。相互の攻撃を相互が弾き、ただ残響と光の軌跡だけが虚しくあとに残された。そのまま距離を取り、アマランスの振るう羅紗が千に変じ万に化して、虚空を埋め尽くし宗次郎を襲う。だが刑事は縒れたコートの裾を翻し、巧みにこれを交わしながら銃火を放ち続ける。
一瞬の攻防に相互の手練を見て取り、宗次郎とアマランスは共に薄い笑みを浮かべた。
「いいだろう、羅紗の魔術の真髄、見せるに相応しい相手のようだ」
「いやおいちゃんはそれほどでもないんだけどね、全然見せなくてもいんだよ真髄。むしろ見せない方がいいんじゃないかなーってね」
「韜晦を……!」
アマランスの長い髪が燃え立つ炎のように揺れ逆立った。彼女の総身から漏れる青白い燐光は、物理法則を超えた境界の彼方よりもたらされる、知ってはならぬもの、知られてはならぬものの訪れを意味していた。
アマランスの意思は時空を超え、無明の彼方より、おお、今現れる、顕現する、おぼめく神秘の化生が! それこそは奴隷怪異、レムレース・アルブスと名付けられし破滅のもたらし手だ!
天地に響き渡る咆哮を上げて、レムレースは世界を揺るがせるように獲物に飛び掛かる。その猛威の前では、人一人など嵐の海の木の葉のごときものに過ぎぬ。
……もしまともに食らえば。だが。
一瞬。レムレースの攻撃が宗次郎に触れたかに見えた一瞬に……。
刑事の姿は忽然と書き消えたのである。
虚しく空を切ったレムレースの巨体が虚しく空に泳ぎ、地面に激突する。そしてそのまま……ただもがき暴れるのみ。
「これは!?」
愕然とするアマランスの傍らの地面が陥没し、その底からひょっこりと顔を出したのは宗次郎その人であった。
「だからさ、真髄とか見せない方がいいよーって言ったじゃない? 年長者の言うことは聞くもんだよ。あっでも、お嬢ちゃんの方がおいちゃんより年上かもねえ。魔術師は年齢わかんないしね。レディに年齢は聞かないけどさ」
「貴様!?」
振り返った瞬間、アマランスの額に銃口が突きつけられた。
「単純な話さね、地面に抜け穴を用意しておいて、ギリギリまで引き付けた瞬間にそこに潜っただけさ。でも、お嬢ちゃんの怪異は『相手と同化』するんだよねえ。つまりさ。……地面とぶつかった瞬間、『地球と同化』しちゃったわけさ。さすがにそこから動けないでしょ。そして、地球の動きが止まるわけもないから死ぬこともない、だから次の子を召喚もできない」
「……すべて策を用意していたのか、あらかじめ」
「そりゃそうでしょ。だって、アイロスくんをここに連れてきたのはおいちゃんだもん」
肩を竦める宗次郎の用いた、それこそが彼の√能力。事前に用意しておいた策を起動させ相手の行動を失敗させるもの。
だがその√能力自体に加えて、何よりも恐るべきは。
「……罠を用意していることを微塵も感じさせもしなかった、貴様のその飄然とした雰囲気そのものに……私は出し抜かれたということか」
「……おいちゃん、悪いことは得意なのさ。汚職刑事だからね」
乾いた銃声の中に、自嘲のような言葉だけが微かに影を残して消えた。
「アイロスくん、がっかりしたかな。おいちゃんが悪い大人でさ」
「いいえ。刑事さんは……やっぱり僕のヒーローです」
🔵🔵🔵 大成功

星で詠めている、か。なら勝敗も詠めているか?
まぁどっちでもいい。必中のシュートもポストで跳ねる時はある。
絶対なんてない。
それを今から見せてやるか。
相手の技は召喚系か。それも融合を狙ってくる厄介なやつ…
ならば直接触れずに一気に叩く。
「ビリオンノッカー」でレムレース・アルブスを蹴り飛ばす。
ただの蹴りではなくボールを挟んだ蹴りにより融合されるのを避け
他の動きも無数の蹴りで潰していく。
そしてボールをレムレース・アルブスごと吹き飛ばして
アマランス・フューリーに叩きつけ、更に蹴りで追撃。
トドメに渾身のオーバーヘッドを叩き込む!
…少年。いや、アイロス。この名刺を受け取ってくれ。
気が向いたら顔を出してくれよ。
虚空を斬り裂いて旋風と衝撃が迸った。滑るように空を走ったものはボール。|戌神・光次《いぬがみ・こうじ》(|自由人《リベロ》・h00190)の瞬脚より蹴り出された鮮烈なるシュート!
シュートは重力に逆らうように天へ駆けた、と見えた刹那。急激に唸りを上げて角度を変え、鋭角に目標へと突き刺さらんとする。これぞ超高速回転が生み出す芸術ともいうべきキック、ドライブシュート! そしてその目指すところはゴールにあらず……恐るべき魔女、アマランス・フューリーだ!
おお、だが。
アマランスはその柳眉一つ動かさぬ。彼女の眼前に迫ったボールは、なんと、急制動を掛けて手も触れぬままに制止し、そのまま光次の元へと弾き返されたではないか。これぞヨーロッパの歴史の影に蠢く神秘なる集団『羅紗の魔術塔』が誇る使い手の一人、アマランスの魔術の恐ろしさだ。
「無駄なことだ。お前が撃ってくる軌道は星で詠めていたぞ。もっとも……」
アマランスは艶めく唇に笑みを浮かべ、冷ややかな視線を満足の色に染めた。
「悪くはない。それはサッカーだな。サッカーは偉大なる魔術ほどの歴史は無論ないとはいえ、我らと同じくヨーロッパ発祥の文化。模倣ながらもそれを学び愛するというのなら、ただのサルよりは多少マシだな」
それは皮肉ではない、純粋なる称賛、ただしこの上もない倨傲と狷介不遜がもたらす妄言に他ならぬ。
光次の隻眼がゆらりと燃えた。単なる怒りよりも、激情よりももっと深いものが、魂の奥底に震える。
「……つまらん戯言を。サッカーは確かにヨーロッパ発祥、芸術ともいえるヨーロッパサッカーは俺も心より敬慕している。だが同時に今やサッカーは南米がもう一つの本場。いや、ヨーロッパと南米だけではない。アフリカでもアジアでもサッカーの文化は花開いている」
轟然と燃え上がる、光次の闘志が、蒼い炎となって! 彼の人生であり魂そのものであるサッカーが、つまらぬ選民思想の比喩に使われた、その侮辱は断じて許せぬと!
「つまり、サッカーは言葉の通じぬすべての人々を結び付け心を通じ合わせるもの! お前たちの苔の生えた下らぬ魔術遊びと一緒にするな!」
土煙を上げ、光次は自ら漆黒の風と化して走り出す! 音を置き去りにし光と共に、衝撃そのものとなって駆け抜ける!
「軌道は星で詠めている、か。なら、勝敗も詠めているか? 必中のシュートもポストで跳ねる時はある。絶対なんてない。それを今から……見せてやる」
「お前は真正面から来ることはすでに詠めている。軌道がわかっている以上、お前がどんな攻撃をしようとも、我がしもべに同化されるのみ!」
アマランスの輝く髪が靡き、その身に纏う美しい薄絹が翻る。爆発するような力の奔流、物理法則を超越した古の神秘の力が凝結し、悍ましき魔法陣の形をとった時、歴史に置き去りにされたはずの角度の底から、アマランスの奴隷怪異が現れる! レムレース・アルブスの名で呼ばれる異形なる存在が! 何人も見てはならず知ってはならぬ、狂った地平線の果てに吠えるその姿を!
猛然と襲い来るレムレース、その能力は、今しもアマランスが告げたごとくのもの。すなわち――獲物を自らのうちに融合する力だ。
「俺を取り込むつもりか。ならば……!」
瞬間。光次の爪先からボールが跳ねる。舞う。踊る。無限の変化を伴って、ボールは空中に無限の円環を描き久遠の弧月を印す。あたかもボールそのものが無限に増えたかのように見えた、刹那。
「ビリオンノッカァーッ!!!」
その無限のボールすべてを! 無限の光次の脚が蹴り抜いた!
無限の連弾は無限の衝撃をもって魔獣に突き刺さり、抉り、ぶち抜く!
何度となくレムレースは光次を襲わんとするが、かなおうものか。さんざめく星の数ほどに降り注ぐ爆裂蹴球の弾幕はレムレースの攻撃を防ぐ完璧な盾であり、同時にレムレースを撃ち砕く完璧な矛ともなる。攻撃と防御をその一身に兼ねた、これぞリベロたる光次の顕現ともいうべき技だ!
百に、千に、万に! ボールを叩きつけられ続けるレムレースはその勢いを押し戻され、まっすぐに向かう――アマランスの元へと!
「な……にぃッ!?」
「そうだ、お前の読み通り、俺は真正面からきた。だが、お前は詠めていてもかわせなかった。詠むことと勝敗は違う、知っておくべきだったな」
ビリオンノッカーに打ち砕かれたレムレースはアマランスに叩きつけられ、さしもの魔女もその優雅な体を吹きとばされる。そこへ。
――奇跡があった。天と地がその定められた位置に異を唱えるがごとき奇跡が。
それはアマランスの魔術をも超えた魔法。サッカーという芸術の中でもひときわ美しく輝く黄金の一瞬――!
重力が消え去り、時が止まり。
その一蹴が鋭烈に鮮明に、魔女を縦一文字に引き裂いていた。
……オーバーヘッド。
そう呼ばれる至宝の技によって。
灰と化す魔女をもう見もせず、光次は「天使」の少年、アイロスへと視線を移す。
少年の紅顔には紛れもない感動と憧れの高揚が満ちていた。
「………少年。いや、アイロス。この名刺を受け取ってくれ。気が向いたら顔を出してくれよ。……日本に来るのは難しいかもしれんが」
汎神解剖機関は天使を保護するつもりだろうが、多少なりとも自由時間が与えられるならば、と光次は願う。もし興味を持ってくれたなら、ぜひ共にフィールドを駆けたいと。
「ま、ヨーロッパでも昔の伝手はいろいろあるから紹介できる。世界中どこにだって、サッカークラブはあるからな」
「……でも僕は、せっかくですから……コーチに教わりたいです」
そうつぶやいてはにかむアイロスの頭を、光次は優しく撫でるのだった。
🔵🔵🔵 大成功

ボスとかヤバヤバなのが出てきたじゃん。でも、魔術の真髄うんたらよりも少年の身近な人を助ける気持ちの方がずっと大切だと思うんだよね
とりまここは、
「ファンダーヴィークル出動⭐︎」
ファンダーフェニックスを呼び出して搭乗するよ。Ankerは出来ることも限られてるし、こうやって射撃支援をしておくよ。アイロス少年には「乗ってく?」って訊いて乗ってくれるなら、そのまま機体の中で保護かな
「実はウチ、闘志戦隊ファンダーズのメイドイエローなんだよね〜」
あとの連携とかそういうのはお任せだよ
「うーわボスとかヤバヤバなのが出てきたじゃん。ウケる」
「う、ウケるんですか?」
|黄羽・瑠美奈《きば・るみな》(メイドイエロー・h05439)の相も変らぬパリピな態度に、「天使」の少年アイロスは目を白黒させずにはいられない。何しろ、彼らのもとに迫りつあるのは、恐るべき魔女なのだ。
ヨーロッパの古き歴史の中に埋もれつつも、その暗部で密やかに語り継がれた隠秘の伝承を受け継ぐ者たち。踏み越えてはならぬ領域へ足を踏み入れ、知ってはならぬ冒涜的な知識を狂気と引き換えに我がものとした禁断の学徒たち。人は声を潜めて彼らを呼ぶ、『羅紗の魔術塔』と!
そして瑠美奈とアイロスに迫る妖艶なる美女こそは、『羅紗』の中でもその人ありと謳われた傾国の麗人、アマランス・フューリー!
「そりゃ一周回ってウケるっしょ、ウチ√能力者じゃないのに、王権執行者相手とか割と無理無理カタツムリじゃね?」
「確かにお前からは力を感じぬな、只人か。ならば実験素材にする価値もない、天使を置いて失せよ」
冷ややかな声音がアマランスの唇から漏れる。その言葉は恫喝にあらず威圧にあらず、事実を淡々と述べただけであり、そしてそれゆえにこそ何よりも――恐ろしい。
それを確かに感じとりながら、されど瑠美奈は引かぬ。
「わおご親切。でもさ、魔術の真髄うんたらよりも、少年の身近な人を助ける気持ちの方がずっと大切だと思うんだよねー」
きらり、と澄んだ瞳を輝かせる瑠美奈の表情に怯懦なし、されどそれはただの無謀であろうか。否!
「ってことでウイングシューター!!」
抜き手鮮やかに舞わせたレーザーガンが閃光を放つ。おお、だが。鋼さえ撃ち抜くレーザーといえども、アマランスほどの魔術士に対しては効果は疑わしいのではないか?
いや、ウイングシューターの狙いはアマランスではなく、その手前の大地だ。そして、モードは拡散広範囲攻撃に切り替わっている!
大地を広く抉り削り、濛々と巻き上がった砂塵と土砂は、一瞬瑠美奈とアイロスの姿をアマランスの視界から遮断した。
「今だよっ、ファンダーヴィークル出動⭐︎」
キランと虚空の彼方が煌めくとき、輝く日輪翼に受けて、正義と希望のスーパーマシンが現れる! これこそ瑠美奈の愛機、ファンダーフェニックスだ!
「とうっ! ささメタブラも一緒に!」
「は、はいっ!」
身を翻しコクピットに消えた二人を、しかしアマランスが捨て置くはずがない!
「おのれ小細工を!」
翻る羅紗は魔力を満たした兇刃と化し、フェニックスを破壊せんとする。だがそれより一瞬早く、フェニックスは雄々しく翼はためかせる不死鳥の名に相応しく、天空高く飛び立っていた!
「その程度で逃れられると思っているか!」
だが恐るべし、アマランスは言いようもなく名状しがたき異界の獣を呼び出すと、これにまたがり一気に追跡に移る! その速さたるや、まさに物理法則を超越しているというほかにない!
あっという間に追い付かれてしまったファンダーフェニックスのコクピットに、アマランスが攻撃を仕掛けんとした時。だが、そこに見たものは!
『ただいま留守にしていまーす☆ ごくろうさま☆』
パイロットシートにべったり貼り付けられた落書きに他ならなかったのだ! 無論、コクピット内には瑠美奈もアイロスもいない!
「な、なんだと……!」
愕然とするアマランスをよそに、正にその逆側。フェニックスが飛び立ったのと正反対の方向に、瑠美奈とアイロスはトコトコと駆けていたのだった。
「ふふっ、説明しよう☆ 砂煙で一瞬視界を隠し、ウチらはフェニックスのコクピットの右から入って……そのまんま左から降りたんだよ☆ あとはフェニックスを自動操縦でばびゅーんとね」
「まさか戦闘機を呼び出してそのまま乗らずに走って逃げるとは思わないですよね……凄いです!」
「ふっふーん。相手が|魔術《マジック》なら、こっちも|奇術《マジック》を使っちゃうよ!」
と、ドヤ顔で瑠美奈が胸を張った時。
「ただの手品を我が魔術と一緒にするなぁぁぁ!!!!!」
顔を真っ赤にするほどブチ切れたアマランスが、それはもうものっそい勢いで飛び戻ってきたのである!
「うわああイエロー! 来ましたよ!」
「おけまる、タイミングバッチ☆」
アマランスが今しも攻撃姿勢に移ろうとした、しかしその瞬間……!
「フェニックステイル! ごーっ!!」
おお、瑠美はアイロスを抱えたまま、――超スピードで後方へ、すなわちアマランスの追撃してくる方向へ飛び出したのだ! 当然、それは双方向の速度を加えたすさまじい勢いのカウンターとなる!
「なっ!? グワーッ!!!???」
攻撃にのみ意識を集中していたアマランスはものの見事に超爆速ラリアートを喰らい、空中から撃墜!
そのまま瑠美奈とアイロスは引き戻されるかのように宙空を飛んで、ファンダーフェニックスのコクピットへ無事たどり付いたのだ。これはいかなることか!
「説明しよう☆ ウチは最初にフェニックスのコクピットを乗り越えた時に、あらかじめフェニックステイルをコクピットに結び付けておいたんだよね! それを引っ張ったまま逆方向に走って行って、魔女っちが戻ってきた瞬間に解放! フェニックステイルの弾力で無事こっちに戻ってきたってワケ☆」
「戦闘機に乗ったと見せて乗らなかった、と見せてやっぱり乗る……凄いフェイントです!」
アマランスを倒すことはできなくとも、√能力者ではない二人が、恐るべき王権執行者をすっかり手玉に取り、出し抜いて、完全脱出に成功したという事実は、まさに大勝利と言っても過言ではない。感動に目を輝かせるアイロスに、テレテレと瑠美奈は髪をかき上げる。
「実はウチ、闘志戦隊ファンダーズのメイドイエローなんだよね。闘志があればさ、どんな危機でも乗り越えられる! そう思うんだ☆」
🔵🔵🔵 大成功

さて、それはどうでしょうか?
わたくしの歌は、魔導の深淵すら飲み込むのですから
√能力を発動
唸りを上げる人間災厄レベルの対並行世界決戦歌唱能力を以て、アマランスの√能力の発動に必要な十秒間の瞑想を妨害
相手の√能力が不発に終わったならーーこちらは、2回攻撃が可能なのですわ
√能力により2回目の歌唱攻撃をアマランスへと仕掛け、人間災厄レベルの対並行世界決戦歌唱能力で彼女の脳髄を揺らして精神的にも物理的にも、魂魄にも干渉しながら内部崩壊させていく
魔術の真髄、それがいかなるものか…
いずれ極めさせて貰いますわ
それは、僅か10秒の物語。
それは、僅か10秒に己と世界の命運をかけた、二人の美女の物語。
1秒。
|アレクシア・ディマンシュ《Alexia・Dimanche》(ウタウタイの令嬢・h01070)は唇を開く。その艶めく口中に、真紅の舌は呼気を孕み神気と化して肺腑の奥へと送り込む。
そして一方、恐るべき暗黒の深淵に咲き誇る妖花、歴史の影に潜みし忌むべき領域の探究者たる『羅紗の魔術塔』の魔女、アマランス・フューリーもまた長い睫を震わせ、白い瞼をそっと閉じた。
アマランスの√能力は「10秒の瞑想」を発動条件とする。それは果て無き暗黒の深奥に穿ち開けた名状しがたき角度より、何人も知ってはならぬ時の彼方の怪異を呼び出す前の、たった一つの隙でもあった。
そして同時に。
アレクシアの力は「歌」をその源泉とする。ただの「音」を歌とは呼ぶまい。いくつかの音が連なり連関し共鳴し、しかも一定のリズムとメロディを伴った時に、それは「歌」の名で呼ばれるのだ。それにはやはり、ある程度の時間が必要とされること、言うを待たぬ。
ならば。
おお、奇しくも同じく、ヨーロッパの長い歴史の中に燦然と輝く尊き由緒を抱いた二人の美女の対決は、その僅かな時間に己の力をどこまで充足し充填させ得るかで――勝敗が左右されることになるではないか。
2秒。
体内に満ちた息吹はアレクシアの細くしなやかな喉を通り、珠玉を転がすような玲瓏の美声となって漏れ始める。だがそれはまだ歌として完成されてはいない。
一方アマランスの周囲には、膨れあがるような悍ましき力の奔流が早くも形成され始める。魔女の意識は自意識の深き底へと沈みゆき、無意識を通じた暗黒の領域の扉と繋がっていく。
4秒。
流れゆくアレクシアの声は意味を持ったつながりになり始める。そこにメロディと旋律が生まれかけ、歌としての完成が間近いと知らせる。そう、このままならばアレクシアの「歌」が先に成就する!
おお、だが。
魔女アマランスの周囲に展開し始めた魔法陣の輝きは威圧ある光となって……なんと恐るべきことか、空気を、いや空間を乱し始めたのだ!
「フッ、愚かな。この10秒が私の隙となることなど当然承知。ならば無論、それに対する対策も構築している」
瞳を閉じたまま、悍ましき魔女は嘲笑を浮かべる。未だ魔法陣が完全なものとは程遠いがゆえにその威力は小さい、小さいが、――それは「音」を乱すには十分すぎる影響を備える!
アレクシアの完成しかけた「歌」が……途絶させられる……!?
6秒。
微笑んでいた。
人間災厄のウタウタイ、名門ディマンシュ家の末裔である令嬢は優艶に典雅に微笑んでいた。
なぜならば。
途絶させられた「音」が。消された「音」が。
それ自体が生み出していたのだ、――スタッカートの効果を!
短く切られた音という現象そのものが調べの中に織り込まれて、より躍動的なキレのある「音」となって連続性の中で蘇るという奇跡がそこにあった! 響きが楽し気に舞い、踊り始める。そうだ、「音」が踊り始めたというならば、それは。それはすでに。
8秒。
――すでに、「歌」であった。
「ええ。……わたくしの歌は、魔導の深淵すら飲み込むのですから」
9秒。
完成した「歌」は天地に響き唸りを上げ、魔法陣の奥深く、此の世ならぬ朧めいた領域にさえも甘美なる旋律をもって反響し共鳴して、その世界を破壊する! 並行世界さえも打ち砕く、これこそがアレクシアの、ウタウタイの力!
「世界を変えなさい、我が歌よ。並列する総ての世界には我が声が響き渡る。それは人間。それは災厄。世界を書き換える歌声である――『|聖歌絶唱・並列する世界に響き渡れ我が災禍の声《オラシオン・カラミティ・オブ・パラレルワールド》』!!!!!」
時空引き裂く超常の嵐に妙なる音曲が備わった時、それはすべてを滅ぼす歌となって現れる。物理法則に従わぬ羅紗の魔法陣でさえも引き裂く力を。
「ぐ、ぐうううっ! 馬鹿な、我が魔術が、羅紗の魔術の奥義が破れるだと!?」
「歌」に魔法陣を破壊され、魔力は当然――術者であるアマランスに逆流する! 過剰な魔力をその身に浴び、よろめき蒼白となったアマランスに、ウタウタイは華麗な笑みをもって、告げた。
「では――リフレイン、ですわ」
おお、アレクシアの聖歌の真に恐るべきは単にその威力のみにあらず。
|繰り返しの歌唱《リフレイン》をもその術式の中に組み込んだところにこそあった!
今こそアレクシアの歌は再び朗々と蕭々と運命を逆転させ世界を翻弄して響き渡る! 魔女の幾星霜をけみしたかもわからぬ身体を内側から崩し去るように破壊し、その誇る昏き歴史も丸ごと無慈悲に押し潰して、歌は轟く!
「ぐ、ぐわあああああっ!!!!」
時間と世界そのものに引き裂かれていく魔女の断末魔の悲鳴を伴奏として、歌は静かに終わりを迎えていく。
「魔術の真髄、それがいかなるものか……いずれ極めさせて貰いますわ。では、ご清聴ありがとうございました」
その歌劇の、たった一人の観客であった「天使」の少年、アイロスに対し優雅に腰をかがめ、静かに告げたアレクシアの言葉が戦場に響いたのは。
10秒。
凄絶な戦いが始まって、僅か10秒の後のことであった。
そう、それは僅か10秒の物語。
僅か10秒に、己と世界の命運をかけた、二人の美女の物語……。
🔵🔵🔵 大成功

心情
天使化の条件もあってか、今回狙われる天使の方は少年少女も多いんですよね……
つまりこの人はロリショタ誘拐お姉さん……!
アイロス君への警告
「気をつけて下さい!こちらの方は男女問わずに子供を誘拐しようとするお姉さんです!」
戦闘
【絶対切断糸】を使用。羅紗を切断し使用不能にします。
「結んで──『絶対切断糸』」
煽り
「この世界の中だけで新物質を探すのはいささか視座が低くはありませんか?もっと外の世界にも目を向けるべきでしょう」
「シデレウスだのマガツヘビだの色々な力が目白押しですよ?」
(そして勝手に潰しあって頂けると助かりますね)
連携・アドリブなどお任せします。
「はれんち! はれんちです!」
「なにがだ!?」
ビシッと自分に向けて指をさし、凛とした声で断言した|米満・満代《よねみつ・みつよ》(マウンテンセレブ・h00060)の声に、さしものアマランス・フューリーも困惑の色を隠せない! いかにアマランスが、ヨーロッパの長い歴史の影に隠れ潜み、人の触れてはならぬ領域に触れ、、知ってはならぬ禁断の知識を蓄えた『羅紗の魔術塔』の王権執行者であったとしてもだ!
「今はあちこちで混乱が起き、シデレウスだのマガツヘビだの、他の世界では色々な力が目白押しですよ? それなのに、あなたは執拗に「天使」の皆さんだけを狙っていますね」
傾国ともいえる美貌を誇るからこそ、鬼のような形相となったアマランスの顔はまさに血も凍りつくほどの恐ろしさといえる! だが満代は頓着することなく、ずいずいと話を組み立てていく!
「当然だ、天使は人類に新たな扉を開く新物質の鍵となる存在であり我ら羅紗の魔」
「そして!」
「話聞け!」
「そして、天使の皆さんはなんか少年少女が多い模様です!」
「だから何だ!」
すうっ、と息を吸い込むと、満代は再び――はっきりとした声で明言した!
「つまりあなたはロリショタ誘拐お姉さん! はれんちです!」
「何故そうなる!?」
「いえもちろん私も、おねショタやおねロリそれ自体は尊いと思います。年の離れた相手同志に通い合う甘い憧憬、妹や弟のように思っていたのにいつの間にか胸をときめかせるようになってしまった自分への罪の意識……けれどそんな罪悪感を溶かし去ってくれるロリショタさんの純粋さ……そしてついに結ばれる、背徳ゆえに限りない純愛のドラマ。ああ素晴らしいです……!」
「何が始まったのだ!?」
「ですがおねショタもおねロリも、あくまでも互いの同意の上での話です! あなたは同意がないのにおねショタやおねロリをしようとしていますね! それではただのはれんちなのです!」
「勝手に話を進めるな!」
「だってその格好はどうです! そんなバインバインでぼいんぼいんでぼよよんなバディをスケスケの布切れ一枚で……ああはれんち。これはもう青少年の性癖を歪ませようとするなんかの陰謀でしかありません!」
「ち、違う! この格好はその……魔術的な効果がだな、いやホントだぞ? マナやエーテルに身を馴染ませるためにはなるべく着衣を薄くした方がいいと……なんだその疑わしそうな目はああああ!!! ほんとだもん!!!!!!」
なんか勝手に涙目になっているアマランスを尻目に、ぽむ、と満代は傍らの「天使」の少年、アイロスの肩に手を置くと、しみじみと語って聞かせるのだった。
「ということで、気をつけて下さい! こちらの方は男女問わずに子供を誘拐しようとするはれんちお姉さんです!」
「泣かす!!!!」
さすがに限界を突破したか、アマランス、キレた!
彼女の身に纏ったはれんちな……いや薄絹の羅紗が、それ自身が意志を有するかのように舞い、ゆらめく。布の奥からあたかも染み出るかのように、まばゆく輝く光が浮き出、虚空に滲みだす。呪いを込めた輝きは怨嗟の言葉を紡ぎ、邪悪なる願いの中に穢れた文字を描き出していく!
「そうはさせません。結んで──『絶対切断糸』!!」
だが怪異に対するのもまた怪異! 満代の詠唱響くところ、新たな都市伝説がその姿を現す。あらゆるものを斬り裂く絶対切断糸が!
天女の羽衣のごとき羅紗の絹が宙を花吹雪のように舞い、対して煌めいて弧を描く切断糸がはためき輝いて、目も綾にこれを迎え撃つ。
目もくらむように鮮烈にして絢爛豪華な羅紗と糸の宙空乱舞はあたかも一服の絵画の如し。一歩間違えば死が待つ怖ろしさを秘めているとわかりつつも、誰しもその美しさから目を逸らすことはできぬほどに。
だが、その舞が果てる時、最後に残ったのは――糸だ!
満代の絶対切断糸は、羅紗から呪いの文字列が構築される寸前に、羅紗そのものを斬り裂いていた。いかに魔術文字の力が悍ましかろうとも、その下地となる羅紗自体を断ち切れば問題はなし!
「くっ、おのれ!」
「見ましたか我が切断糸の力を! はれんちおねショタさん!」
「誰がはれんちおねショタさんか!」
「だって、ほら」
おおなんということか! 読書諸氏はなるべくなら紳士淑女の礼儀として目を背けていただきたい、なぜなら、絶対切断糸が羅紗を切り裂いた結果……!
「え? え? ……ちょ、ちょっとぉぉぉ!!!???」
おお、はれんちアマランスの衣がビリビリに! それはもう色々まろび出てしまいうそうなっていうか事実上まろび出てね? っていうくらいな状態に! とはいえもちろん少年誌レベルであるのでそこはごあんしんしていただきたい!
「ほら、はれんちさんじゃないですか。ダメですよアイロス君、あんなはれんちおねショタお姉さんにたぶらかされては」
「お前がやったんだろぉぉぉぉ!!!??? もうやだああああ!!!」
必死にはれんちな体を隠しつつ、アマランスはふえええ、と泣きながら脱兎のごとく逃げ去っていったのだった。
「フッ……青少年の健全な性癖はこれで護られました」
ふう、となんか知らないが額の汗を健康的にぬぐいながら白い歯を輝かせた満代に、アイロスは憧れの目を向けずにはいられない。
「すごいです、そんなに一生懸命僕たちの性癖を守ってくれるなんて!」
いや言い方。
「あなたみたいな人、憧れちゃいますっ!! 身も心もふくよかで、温かくて、柔らかくて、あとふくよかな人に!」
あ、性癖決まっちゃった。
🔵🔵🔵 大成功