世界の壁を補修せよ
世界は2つに隔てられている。壁の中と外だ。中は人の世界、外は戦闘機械群の世界だ。人はこの世界の「中」だけに生きる事が許されている。完全な循環系をもつライケイは街と言うよりは宇宙船かタイムカプセルだった。第3次世界大戦の始まりより世界から隔離され、20年以上が経った。外の世界に頼ることなく都市機能を維持できるシステム、地下発電プラントと農業プラントによってこの都市は維持されていた。天に映る人工光による空、水循環システムによる十分な量の水道水などなど。大豆合成肉とわずかな鶏肉、ソイミルクに人工バター。文句を言わなければそれなりに食べられるものもある。
ある日、世界の中と外を隔てる電磁障壁、クラウドウォールが壊れた。街は混乱に包まれた。世界の外は地獄だと、みなそう思っていたからだ。知らないことは不安と恐怖を深める。ましてや√ウォーゾーンだ、そこにいるものの年齢は若い者が多い。隔離された都市故の問題があったのだ、感染症が広まると対策できるまでに時間がかかる。2000年代の中頃、この都市で蔓延した伝染病の影響で年かさのものがいなくなっていたのだ。外の世界を知るものはもう数えるくらいになっていた。それが街の混乱に拍車をかけていた。
「事件を1つ予知しました。√ウォーゾーンにライケイと言う街があります。ライケイにはクラウドウォールと言う強力な防御壁があり街を守っていたのですが、つい先日クラウドウォールが機能停止してしまいました。それに気づいた戦闘機械群がライケイに向かって進軍しています。みなさんにはクラウドウォールの補修とやってくる戦闘機械群の撃退をお願いします」
木原・元宏(歩みを止めぬ者・h01188)はそう言うとARのスクリーンに街の風景を写しだした。
「ライケイは完全な自己循環機構を備えた都市です。全ての資源はライケイ内で循環しています。それ故に大戦発生後、街の外と一切の交流を持つことなく街を維持することが可能でした。人口は伝染病で一時減りましたが今は数千人が暮らしています。エネルギーは地下の核プラントから得ています。この先数百年以上は使える想定だそうです。まずはライケイに赴きクラウドウォールの修理をお願いします。ライケイに入るためには別√からの進入口があるのでそこを利用すると良いでしょう。中に入ったら壊れている箇所を探したり、部品を交換したりしてクラウドウォールを直してください。修理が終わったらやって来る敵を待って撃退してもらえれば大丈夫です。よろしくお願いします」
元宏はそう言うと、√能力者達を送り出した。
「良かったの? これで外に出られると思うけど、街が襲われちゃうよ?」
少女が聞いた。
「仕方ないよ。こうしないと外には出られない。おばあが言ってた本物の空を見られない。この街の濾過された空気じゃなくて、自然の本物の空気を吸って、太陽の光を浴びて。そしてアキと旅に出るためだから。ここは息苦しい。俺には辛すぎる」
一緒にいた少年、ヨシトが答える。
「私もここにいるのは辛い。でもここの人たちはそれが一番いいことだと思ってる」
「わかってるよ。だからパーツを一つ抜き取っただけだよ。ゲートのロックは外せそう?」
「あともう少し、何時間もかからないと思う」
ヨシトは少しだけ悩んだ顔をする。
「クラウドウォールが直るまでに間に合うかな」
「これで間に合わなかったら捕まるだけだもの、がんばる」
「おい、どこが悪いかわかるか?」
「出力段だと思います。でも特定はできません」
「なんとか早く見つけないと。今戦闘機械群に襲われたらひとたまりもないぞ」
マスターより

こんにちは、九野誠司(くの・せいじ)です。
√ウォーゾーンの都市がピンチを迎えています。電磁障壁の修理と敵の撃退をお願いします。
プレイングの受付は「プレイング受付中」のタグでお知らせします。みなさまらしいプレイングを是非送っていただけますと幸いです。
それではよろしくお願いします。
33
第1章 冒険 『大型設置兵器修理』

POW
重い大型部品運搬など
SPD
修理作業への参加など
WIZ
性能強化、機能追加などの改良作業
√ウォーゾーン 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ウォーゾーンの都市が危険という事ならば、私の製造意義的に救援に赴くのは当然というものです。
設置兵装の修理ですか……ソフトウェア面での問題は無いでしょうから、ハードウェア面に関しては設計図等で構造を把握する事が出来れば【クラフト・アンド・デストロイ】による修理そのものはそう難しくは無いと思います。
ただ、兵装の目的がMLRSのような広域兵器なのか、単一目標に対し有効な兵器なのかは気に掛かるところです。レーザーやビームのような「光線系」の兵装であれば「発振時間の延長」と「首振り」機構を追加すれば「広域」にも「単一」にも対応可能となりますが、現地で確認してみなければ分かりませんね。

おお〜、ライケイですか。話で聞いたことしかありませんが、まだ稼働していたんですね。一部では機械にやられて壊れただの、楽園実験みたいに内部で崩壊したとか根も葉もない噂がありましたが…
シェルターによって守られた街は人類の存続には大事な拠点の1つっす。もちろん修理に行かせてもらうっすよ。
ひとまず現場に着いたら【分解再構築プロセッサMk-II】で自動修復プログラムを組んで、他の部品の修理が必要な部分は人力で作業をしましょ〜。あと、どうして壁が壊れたのかもちゃんと把握しときたいっすね。これが戦闘機械群の仕業であれば防衛機能を増やす必要がありますし、もし中からだったら…ま、これはその時に考えましょ〜。

「はっはっは! お困りのようだな!」
悠々と現れるぞ
「ここまで大掛かりな修理も珍しい。中々やりがいがありそうだな!」
【赤龍院財閥の力】でウォールを修復したいという願いを叶えるぞ。財閥のスタッフ達を召喚し、すぐ修理を任せよう。ついでにプラントも問題ないか見せてもらおう。こうして√ウォーゾーンの知識や情報を集めるのも大事だからな
「人助けでもあるが、これも未来への投資だ。気にするな」
他にも困り事があれば、敵が襲いかかるまでの懸念を事項を潰しておきたいし、できるだけ解決しておくぞ
その他、連携アドリブお任せするぞ
ライケイの街はドーム型をした壁に包まれている。その壁の外側に強力な電磁場による障壁があり、街を守っていた。3層にわたる障壁が敵の侵入と攻撃を防ぐ仕組みだ。その間に防衛用の兵器が近づいてきた敵を焼き払う、そうやって20年以上も街は守られてきた。バリアが消えたとは言えまだ鋼鉄の天蓋が街を覆っていたが、戦闘機械群に対してどれほどの効果があるかはわからなかった。
「おお〜、ライケイですか。話で聞いたことしかありませんが、まだ稼働していたんですね。一部では機械にやられて壊れただの、楽園実験みたいに内部で崩壊したとか根も葉もない噂がありましたが…。シェルターによって守られた街は人類の存続には大事な拠点の1つっす。もちろん修理に行かせてもらうっすよ」
ヨシマサ・リヴィングストン(朝焼けと珈琲と、修理工・h01057)はそう言うとライケイ近くから別√に潜り込む。ライケイ内部に入り込む事ができる場所は事前に確認済みだった。
「ウォーゾーンの都市が危険という事ならば、私の製造意義的に救援に赴くのは当然というものです」
駒門・クレイ(90式戦車型少女人形レプリノイド・h02390)は戦車のレプリノイドだ。街を守ろうという意識も強い。ライケイに入るとクラウドウォールの制御棟に赴き、協力を申し出る。
「設置兵装の修理ですか……ソフトウェア面での問題は無いでしょうから、ハードウェア面に関しては設計図等で構造を把握できるものがあれば修理できるでしょう」
クレイは設計図のデータを受け取るとその解析をはじめた。
「はっはっは! お困りのようだな!」
高らかな笑い声とともに悠々と現れたのは 赤龍院・嵐土(プレジデントレッド・h05092)だった。赤龍院財閥の総帥である嵐土はライケイに財閥のスタッフを集めるとクラウドウォールの責任者と話し始める。
「問題があるのは電磁障壁発生装置の出力段です。ここが機能しないと障壁を張るための電磁場を維持できなくなります。制御段なら街の天蓋もろとも爆発してなくなっていた可能性がありますから、そこは不幸中の幸いですね」
「そうか、なら必要な部品などを手配させよう。他にも傷んでいるものがあれば用意するぞ」
「ありがとうございます。でも、いいんですか。私達の都市から返せるものはあまりありませんよ?」
嵐土は豪快な笑顔を見せて言う。
「人助けでもあるが、これも未来への投資だ。気にするな。こうして√ウォーゾーンの知識や情報を集めるのも大事だからな」
ヨシマサは現場に着くと技術主任の男と話し込んでいた。
「どうして壁が壊れたのかもちゃんと把握しときたいっすね。これが戦闘機械群の仕業であれば防衛機能を増やす必要がありますし」
クラウドウォールの修理は【分解再構築プロセッサMk-II】の自動修復プログラムが粛々と行っている。プログラムのログによると、壊れた原因は部品が一つ抜き取られたためのようだった。その生で他の部分に負荷がかかって増幅用のパーツが焼けてしまったようだった。
「設計図を見ると、増幅を制御する部品がなくなったようですね。そのせいで増幅装置がオーバーロードされたようですが、そうなる可能性はそう高くないと思います」
クレイは構造把握のために設計図を見ていたのだが、構造がわかれば壊れている箇所から原因を特定することもできる。部品を抜き取ったものはクラウドウォールの機能停止のみを狙っていたようだった。
「それはそうと、ここの迎撃兵器は光学兵器のようですね。『発振時間の延長』と『首振り』機構を追加すれば『広域』にも『単一』にも対応可能となりますが」
クレイがそう言うと、嵐土が肯く。
「必要ならその機構の組み込みをすることにしよう」
うんうんと何か考えるそぶりを見せていたヨシマサがポツポツと話し始めた。
「内部の者の犯行っすかね。なら動機はなんでしょうか。外とは通信も繋がらなかったみたいっすからね。戦闘機械群の手引きという事はなさそうっすけど」
「誰かが『外』に出ようとしたのかもな。クラウドウォールがある以上、外に出るゲートを通っても黒焦げになるだけだ。ここ20年で何件か脱出を試みた例がある。一件も成功したことはなかったけどな。ウォールの電磁場で見事に黒焦げになるものが出たくらいだ。防衛上の問題で一時的にでもウォールを止めることは出来ないからな」
主任技師がなんとも言えない顔でそう言った。
「電磁障壁っすからね。解除されると無線でハッキングされる可能性もあるっすからね」
「そう言うことだ。まあ、今その危機に瀕してるんだがな。我々のプログラムの水準は25年以上前のものだ。現代のものに比べると脆弱だからな」
嵐土はそれを聞いて提案する。
「ここの施設を全体的に見せてくれないか? クラウドウォールだけじゃなく発電などのプラント群や他の部分も。俺の財閥にできる援助は全てしようじゃないか」
「いいんですか?」
主任の男がビックリして言う。嵐土は豪快に笑った。
「未来への投資と言っただろう。だがここまで大掛かりな修理も珍しい。中々やりがいがありそうだな!」
程なくしてクラウドウォールは修復された。それはウォールを壊したものにとっては大きな誤算だった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第2章 日常 『天蓋下の少年少女』

POW
刻まれた過去、歴史。個人的感傷について。
SPD
悩み、恋バナ、青春の日々について。
WIZ
明日とか、未来とか、夢について。
√ウォーゾーン 普通5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
「え? おい! 早すぎる!」
ヨシトが大きな声を出した。最後のゲートを開けるその手前。外界はあと数メートルのところまで来ていた。大きな震えるような発信音とともに電荷が戻るのを感じる。クラウドウォールが再稼働したようだった。
「もう出られないよ。私が外に出たいって言ったから」
アキはうつむいた。
「俺だって行きたかったし。ウォールを壊したのは俺だ。悪いのは俺ってことにすればいい。どのみち、この中にいても楽しいことなんかないしさ」
「私はヨシトと一緒じゃないと嫌。処分されるなら一緒に」
ヨシトは頭をかいた。
「嬉しいけどさ。生きてれば次があるんだ。わかるだろ?」
「次はないよ。2人では」
アキは怒ったように言う。ヨシトは困った顔のまま笑った。
「仕方がないヤツだな。どうせなら2人とも街の外に追放ってことにならないかな」
外へ続く通路の最終ゲートの手前に熱源が2つ確認されたのは今し方の事だった。恐らく外への脱出を企んだものが2名、そこまでたどり着いたのだろう。ライケイ警備隊は√能力者達に協力をお願いした。犯人を捕まえてきて欲しいとのことだった。
犯人をどうするかは2人の元に向かう√能力者達に委ねられている。見逃すも、他の√に連れて行くも、外に出してやるのも。もちろん、捕まえてもいい。

外に出たい、分からないでもありませんが……
現時点では数日間と限定しても生き延びる事は難しいでしょう。
食料の調達や水分の調達が困難なのは当然ながら、野営能力や戦闘機械群と交戦しても撃退出来るだけの戦闘能力が求められます。
また、負傷や疾病を適切に治療出来る技能も必要です。
こちらの世界の危険度は現在接近中の戦闘機械群との交戦を見れば分かると思います。
この世界とは比較的マシな他世界に渡るという解決方法もありますが、それは知人や親類との完全な別れになりうる道ですね。
他世界に渡ったとしても身分や国籍も不詳な状況で金銭を入手する手段は限定されます。選択するなら手伝いは可能ですが、お薦めはしません。

ありゃ、犯人はお年頃のお二人かあ。なかなかの行動力ですが、都市を一つ危険に晒すのは感心しませんね~。
これも若気の至りかもしれませんし、本来ならとっとと家に帰して終わりっすけど…
少し二人の話を聞いてあげるのも手かもしれませんね~。ライケイのこととか、これからの展望とか。
2人がどうしてもっていうなら…『√EDENへの流刑』って名目で犯人を処分したってことには出来ます。流石にライケイの外にそのまま出すのは見殺しと一緒っすからね。
でも、一度外へ行ったらもう√WZには…ここには戻ってこれないかもしれません。
担当者に適当いって時間を稼ぐくらいは出来るので、一日ほど考えて欲しいっす。ボクらは待ってますから。

「なるほど。それが君の夢か」
追跡自体はパーツを抜いた箇所から【不思議骨董品】で追跡技能でも上げて追いかけ、少年達に話しかけよう
「君たちの想いを否定するつもりはない。だが、その為に街の人々を危険に晒すのはいただけないな」
街を戦闘機械群達の脅威に晒した罪は重い。境遇的に可哀想に思えてもこのまま放っておけば、何かと理由をつけて自分達の欲を優先して周りに迷惑を与えかねないから、ある程度罰は必要だろう
仲間と折衷案になっても良いが、こちらが求める罰は二つ。一つは能力者と戦闘機械群との戦闘を見届けてもらい、その脅威を解ってもらう。もう一つは壁の修理費用の一部負担
「返すアテがないならうちで働いてもらおうか」
犯人の追跡は簡単にできた。防衛のためにも、外に出るためのルートは限られている。熱源反応を追うと最後の隔壁の前に2人はいた。
「ありゃ、犯人はお年頃のお二人かあ。なかなかの行動力ですが、都市を一つ危険に晒すのは感心しませんね~。これも若気の至りかもしれませんし、少し二人の話を聞いてあげるのも手かもしれませんね~」
ヨシマサ・リヴィングストン(朝焼けと珈琲と、修理工・h01057)は2人を見つけるとそんな感想を漏らした。犯人の2人は10代の中頃、少年と少女、少年の名前はヨシト、少女の名前はアキと言った。
「アキは悪くない。パーツを抜き取ったのは俺だからな。このまま街に突き出されたら、死刑になるのはわかってる。前に捕まったヤツが公開で死刑になっていたからな。だから俺が犯人だ」
ヨシトは真剣な顔でヨシマサに言った。
「外に出たいって言ったのは私が最初だから私も同罪よ。だから私も捕まえて。本物の空を見たかったけどしょうがない。おばあちゃんに聞いた昔話なんだ。昔は空の下で人は生きていたって。それに、この街に居続けてもダメなのよ。閉鎖された小さな世界はそのうち人が生きていけなくなる。個体が均質化するし、遺伝的にも弱くなる。前に伝染病が流行ったときもそうだったらしいの。世代が進めば治す方法がわからないうちに全滅するような病気が現れる可能性が高いって」
アキが難しい顔で言った。
「外に出たい、分からないでもありませんが……。現時点では数日間と限定しても生き延びる事は難しいでしょう。食料の調達や水分の調達が困難なのは当然ながら、野営能力や戦闘機械群と交戦しても撃退出来るだけの戦闘能力が求められます。また、負傷や疾病を適切に治療出来る技能も必要です。こちらの世界の危険度は現在接近中の戦闘機械群との交戦を見れば分かると思います」
駒門・クレイ(90式戦車型少女人形レプリノイド・h02390)は訥々と現実を噛みしめるように言った。その通りだろう。戦闘機械群の侵攻が著しい外界で、ただの少年と少女が生き延びられる可能性はないに等しい。
「それも覚悟の上だった。見たことはないから外から来たあんた達の言ってる事は正しいんだろう。できるだけの装備は持ったし、乗り物を盗んでいくつもりだった」
ヨシトは食料と拳銃、サバイバルに必要だと思われる道具をバックパックから取り出した。想像で考えたにしてはいい方だろう。ただ、前日はもっともっと厳しいのだが。
「どうして外から来たってわかったっすか?」
「雰囲気が違う。街の人間はそんなに活力がないからな。ちょっとずつ死んでいってるんだよ。ここは棺桶なんだ。ゆっくり死ぬためのさ。そこで死にたいヤツはそれでいいけど、そうじゃないヤツもいるんだよ。人間はみんな違うだろ?」
「なるほど。それが君の夢か。君たちの想いを否定するつもりはない。だが、その為に街の人々を危険に晒すのはいただけないな」
それまで話を聞いていた赤龍院・嵐土(プレジデントレッド・h05092)が肯きながらそう言う。
「街を戦闘機械群達の脅威に晒した罪は重い。境遇的に可哀想に思えてもこのまま放っておけば、何かと理由をつけて自分達の欲を優先して周りに迷惑を与えかねないから、ある程度罰は必要だろう。こちらが求める罰は二つ。一つは能力者と戦闘機械群との戦闘を見届けてもらい、その脅威を解ってもらう。もう一つは壁の修理費用の一部負担だな」
嵐土がそう言うとクレイも自分の意見を口にする。
「先ほど言いましたように外で生き延びることはむずかしいでしょう。この世界とは比較的マシな他世界に渡るという解決方法もありますが、それは知人や親類との完全な別れになりうる道ですね。他世界に渡ったとしても身分や国籍も不詳な状況で金銭を入手する手段は限定されます。選択するなら手伝いは可能ですが、お薦めはしません」
「そうは言ってもここにいても処刑されるだけだ。金を稼いで返す時間は無いさ。生き残りたいならもうここにはいられない」
ヨシトが思い詰めた顔で言った。
「2人がどうしてもっていうなら…『√EDENへの流刑』って名目で犯人を処分したってことには出来ます。流石にライケイの外にそのまま出すのは見殺しと一緒っすからね。でも、一度外へ行ったらもう√WZには…ここには戻ってこれないかもしれません。担当者に適当いって時間を稼ぐくらいは出来るので、一日ほど考えて欲しいっす。ボクらは待ってますから」
ヨシマサは2人の目を見ながら珍しくまじめな顔でそう言った。できる妥協はそのくらい、考える時間も必要だと思ったからだった。
「戦いを見るのはかまわないよ。それで決めるじゃダメかな。√EDEN、噂というか、お伽噺くらいの感じで聞いたことがある。楽園みたいなところだって」
アキが悩みながら口にする√EDENは誇張された美しい世界だろう。
「残念ながら夢のような世界はありません。√EDENと言っても生きていくための困難はついて回ります」
クレイが念を押す。
「よしわかった。ならまずは戦闘機械群との戦闘を見てもらおう。その後で一昼夜考える時間を与える。もう一つの罰については再考しよう。それでどうかな?」
嵐土がそう言うとヨシトとアキは肯いた。
「それじゃ、担当者に連絡しておくっすね。大丈夫、うまくやるっすから安心してください~」
ヨシマサはそう言うと街の警備隊に連絡を取った。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『ミドガルドシュランゲ』

POW
ヘリオビーム
【大きく開け放たれた口から炎熱】属性の弾丸を射出する。着弾地点から半径レベルm内の敵には【衝撃波と熱風】による通常の2倍ダメージを与え、味方には【圧倒的な火力を見せ付け、戦意高揚】による戦闘力強化を与える。
【大きく開け放たれた口から炎熱】属性の弾丸を射出する。着弾地点から半径レベルm内の敵には【衝撃波と熱風】による通常の2倍ダメージを与え、味方には【圧倒的な火力を見せ付け、戦意高揚】による戦闘力強化を与える。
SPD
スカイボルト
指定地点から半径レベルm内を、威力100分の1の【空から降り注ぐ無数のマイクロミサイル】で300回攻撃する。
指定地点から半径レベルm内を、威力100分の1の【空から降り注ぐ無数のマイクロミサイル】で300回攻撃する。
WIZ
ブルーピーコック
爆破地点から半径レベルm内の全員に「疑心暗鬼・凶暴化・虚言癖・正直病」からひとつ状態異常を与える【遠隔操作でも起爆可能な地雷】を、同時にレベル個まで具現化できる。
爆破地点から半径レベルm内の全員に「疑心暗鬼・凶暴化・虚言癖・正直病」からひとつ状態異常を与える【遠隔操作でも起爆可能な地雷】を、同時にレベル個まで具現化できる。
街の外に出ると空が眩しかった。ヨシトとアキは目に涙を溜めて言った。
「これが、空か。見られて良かった。もう死んでもいいな」
「ちょっと、これからでしょ!」
2人を後方の安全な場所へと連れて行く。しばらく時間が過ぎたあとゴロゴロと言う重たく大きな音が響いてきた。巨大列車砲だ。ただ、線路がなくても自走できるように改良されている。ただただ破壊をまき散らす為に作られたそれは、ライケイに向けて進軍していた。街に被害が出る前にこいつを破壊しなければならない。

あれが街の中に侵入したら被害は甚大だ。そうなれば少年一人の命で償う所の話ではなかっただろう
「よし、ファンダーヴィークル出撃だ! 俺は新型で出る!」
【戦隊招集】でファンダーズのメンバーをそれぞれのマシンと共に召喚。マイクロミサイルを亀型マシンの装甲で盾にしてもらいながら総攻撃して気を引いてもらう
「これが新型マシン『ファンダークラーケン』だ!」
この前の地中探査機のデータから地中を進めるイカ型マシンで地中から奇襲。ドリルで攻撃したり、触腕で拘束したり仲間と連携だ
ヨシトとアキはある程度稼いで独り立ち出来るようになるまでは財閥で預かってもいい。扱いは異世界風に言うと借金奴隷に近いだろうが

さて~、いつも通りの仕上げと行きましょ~。
頼もしい仲間もいるので【神経過駆動接続】で全員の反応速度を上昇、僕は援護に回るっすよ~。あとはレギオンとファミリアセントリーを使いながら敵の距離と進む方向を検知して、細かい攻撃は撃ち落としていきましょう~。弾道計算で撃つ方向についても指示を出していきます。ここら辺は任せてくださいな~。
…お二人のことは他の仲間にお任せしましょう。ボクが手を貸すのは、√を渡る時だけっすよ。
…棺桶かあ。案外外にいる人も、そんなに変わらないのになあ。でも…ボクたちは死にたくないから足掻いてるのかな?うーん、皆生まれた時から足掻いてたから、今更実感は湧きませんね。

アドリブ・連携お任せします。
・大型が相手だと徹甲爆弾がよさそうですね!
ライケイに近い航空基地で少女分隊を招集してレーダーで探りながら飛んでいきます。
・目標は前方の巨大列車砲、イーグルアイ起動。
情報収集して弱点がないか探る。あれば友軍に通信。
・長機攻撃態勢に入りました…爆弾投下!
できれば友軍が戦闘開始する前に、列車砲の上空後方から進行方向に追い越すように通って五号爆弾を投下、装甲を貫通攻撃で抜いて爆破。
・航空支援続けます!
友軍が戦闘開始したら低空に降りてつかず離れず援護射撃。ミサイルラックや銃架を制圧射撃。ミサイルで狙われたら弾幕で迎撃。
撃破後はそのまま離脱。

線路以外を走れるなら列車砲の定義からは外れているように思いますが、まぁ良いでしょう。
全車両に駆動部が無いと仮定すれば、先頭車両と後続車両の連結部を破壊するのが有効でしょう。
90式戦車の特性を活かし、基本は停止せずに砲撃を行う行進間射撃で対応します。
戦車中隊による包囲戦を行います。
【弾道計算】による【装弾筒付翼安定徹甲弾】と【成形炸薬弾】の砲撃を車両連結部に集中し全車一斉射撃にて連結部の破壊を狙います。
「連結部の破壊確認、後は先頭車両を破壊すれば後続はただの的ですね」
【ヘリオビーム】には【高出力レーザシステム】で弾丸を迎撃、スカイボルトにも迎撃は多少は有効でしょう。
地雷は対策は難しいですね。
「あれが街の中に侵入したら被害は甚大だ。そうなれば少年一人の命で償う所の話ではなかっただろう」
赤龍院・嵐土(プレジデントレッド・h05092)はやって来た『ミドガルドシュランゲ』を見てそう言った。巨大な砲塔が蛇の口のような先頭車両から覗いている。電磁障壁が直る前にミドガルドシュランゲがここに来ていたら大変なことになっただろう。
「さて~、いつも通りの仕上げと行きましょ~。頼もしい仲間もいるので【神経過駆動接続】で全員の反応速度を上昇、ボクは援護に回るっすよ~」
ヨシマサ・リヴィングストン(朝焼けと珈琲と、修理工・h01057)は仲間に回線を繋ぐとサポートに徹する。放ったレギオンがミドガルドシュランゲの動向を常に観察してヨシマサにデータを届ける。
「戦闘空域に到達しました。援護しますね」
川西・エミリー(晴空に響き渡る歌劇・h04862)はライケイにほど近い航空基地で招集するとレーダーで状況を確かめながらライケイ上空にたどり着いたのだった。
「目標は前方の巨大列車砲、イーグルアイ起動。弱点が分かれば逐次報告します」
「線路以外を走れるなら列車砲の定義からは外れているように思いますが、まぁ良いでしょう」
駒門・クレイ(90式戦車型少女人形レプリノイド・h02390)はそう言うとミドガルドシュランゲを見る。現在の姿はたしかに列車砲ではなく、列車砲のような自走砲くらいだろう。クレイは観察を続ける。
「全車両に駆動部が無いと仮定すれば、先頭車両と後続車両の連結部を破壊するのが有効でしょう」
クレイはそう言うと90式戦車の特性を活かし、行進間射撃でミドガルドシュランゲを砲撃する。
「よし、ファンダーヴィークル出撃だ! 俺は新型で出る!」
【戦隊招集】でファンダーズのメンバーを召喚した嵐土がミドガルドシュランゲの前に立ち塞がる。ミドガルドシュランゲは嵐土達を邪魔に思ったのか一声吠えるとマイクロミサイルを乱射する。
「私にお任せ下さい」
ファウンダーズの1体、亀型マシンが前進すると、その装甲でミサイルを受けきる。その隙に残りのファウンダーズ達がミドガルドシュランゲを総攻撃する間に嵐土は自らが乗るマシンとともに地中へと姿を消す。
「長機攻撃態勢に入りました…爆弾投下! 連結部を狙います」
ミドガルドシュランゲの真上まで移動したエミリーが五号爆弾を投下する。ファウンダーズとの戦いで気を取られていたミドガルドシュランゲは迎撃することができずに爆弾の直撃を受けた。連結部に確実にダメージが入り、動く度に軋むような嫌な音を立てる。ミドガルドシュランゲがのたうつように揺れた。多数の地雷を作り出すと周囲にまき散らすがミドガルドシュランゲを包囲していたクレイの戦車中隊が主砲の砲撃で全てを撃ち落とす。そのままの勢いで【装弾筒付翼安定徹甲弾】を撃ち出すと弱っていたミドガルドシュランゲの連結部はガキンという音とともに壊れた。
「連結部の破壊確認、後は先頭車両を破壊すれば後続はただの的ですね」
後部車両がなにもしなければ恐らくそうなっていただろう。だが後部車両の砲塔から一斉にミサイルが射出された。恐らく分解したときに自動で射出されるように仕込まれていたのだろう。
「大丈夫っすよ~。計算できてましたから撃ち落としますよ~」
後方で状況を確認していたヨシマサがファミリアセントリーでミサイルを撃ち落とす。空高く飛んで行ったミサイルもエミリーが弾幕を張って迎撃、事なきを得る。
「先頭車両の弱点は開いた口の中です。頭部に制御用のチップがあるようでそこが一番装甲が薄いみたいですよ!」
エミリーがミドガルドシュランゲの弱点を仲間に伝えた。
「よし分かった!」
地中から巨大なイカ型のマシンが飛び出す。ドリルでミドガルドシュランゲを貫くと派手な火花が散った。
「これが新型マシン『ファンダークラーケン』だ!」
嵐土はそのまま蝕腕を伸ばしてミドガルドシュランゲを押さえつけるとミドガルドシュランゲは苦しそうに頭を振る。
「捕まえたぞ! とどめを頼む!」
ヨシマサの弾道計算のデータを受け取ったエミリーが低空飛行でミドガルドシュランゲに近づき精密にミドガルドシュランゲだけを撃ち抜く。車輪を撃ち抜かれたミドガルドシュランゲは動くこともままならずに奇怪な叫び声を上げると最後の力を振り絞って口の中の砲塔から強烈な炎を吐く。
「対策は講じてあります。そろそろ終わりにしましょう」
【高出力レーザシステム】で炎を相殺すると【成形炸薬弾】をミドガルドシュランゲの口の中に連続で叩き込む。ミドガルドシュランゲは鎌首をもたげるように跳ね上がるとそのまま爆発して動かなくなった。
「作戦は成功ですね。当機は速やかに帰投します!」
エミリーはそのまま基地へと帰っていった。
「どうですか? 戦闘機械群との戦闘を見た感想は?」
「すごいな。安全なところにいなかったら風圧だけで首が飛びそうだと思った」
ヨシトがそう言うとアキも肯く。
「あれと戦うなんて無理。どうやって逃げるかを考えないと。でもこの世界を旅してたらいっぱい出てくるのよね」
「そうなりますね」
クレイがそう答えると2人は少し考える。
「別の√に行けるならそうしたい。もう帰るところはないからな。俺は死んでもいいけど、アキは死んでほしくないからな」
「いいっすけど、ボクが手を貸すのは、√を渡る時だけっすよ。……その後のお二人のことは他の仲間にお任せします~」
ヨシマサがそう答えると嵐土が言った。
「ヨシトとアキはある程度稼いで独り立ち出来るようになるまでは財閥で預かってもいい。扱いは異世界風に言うと借金奴隷に近いだろうが」
「燃そう言ってくれるのはありがたいけど、奴隷はさすがにな。√EDENまで送ってもらえたら、あとはなんとかするよ。これでも技術の一つや二つはあるからさ。それに、外にいれば出来ることもあるだろうしな」
ヨシトは嵐土に申し訳なさそうに答える。
「案外外にいる人も、そんなに変わらないのになあ。でも…ボクたちは死にたくないから足掻いてるのかな? うーん、皆生まれた時から足掻いてたから、今更実感は湧きませんね~」
「墓場か棺桶かってことかな。確かに違わないかもしれないけど、どっちで死ぬかは選びたいのよ。でも、みんな大変なんだってことは分かった。一つだけ言い訳させてもらえるなら、クラウドウォールのパーツを抜き取ったけど、戻せばすぐに直ると思ってたのよ。回路を一カ所寸断するだけだから。だから私達の知識なんてたかがしれてると思う。ヨシトはバカみたいに自信たっぷりみたいだけどね。それと、アンタが死んだら私も跡を追うからね。こうなった責任は取ってもらうから」
アキはそれでも晴れやかな顔で言った。
「以前に言いましたが、ほかの√に行ったところで生きていくのは簡単ではありません。それでもいいのですね?」
クレイがまじめな顔でそう言った。
「ヨシマサさんが言ったみたいにさ。俺達だって死にたくないから足掻いたんだ。命が無くなるか、社会に押しつぶされるかの違いはあるだろうけどさ。生きる場所が選べるなら選びたいんだよ。あそこよりも俺達に向いている場所をさ」
「それは立派な心がけだが、他の人間を蔑ろにする物ではないぞ」
嵐土が念を押すとヨシトとアキはすまなそうな顔をした。
「それはそうだ。もし誰も傷つけずに、なんのリスクも無しにできるならそうしたよ。すまなかった」
「ごめんなさい。みんな自由に自分がここだって言う場所を選べればいいのにね。それに、もっと行きやすい世の中だったらね」
「そろそろいいすっか~? 念のために言いますが、手を貸すのは√を渡るときだけっすからね~」
ヨシマサがそう言うと、ヨシトとアキは真剣な顔で肯いた。√を渡った後のことはまた別のお話になるだろう。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功