シナリオ

しせん

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 #√汎神解剖機関

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●おまえたち、なにもみてはならないよ
 閉ざされた戸を叩く音。
 こんこん。とんとん。たん、たん、どん。繰り返される音が古めかしい木造建築に響く。
 何度も戸を叩かれるうちに、屋内に居たであろう住人がゆっくりと、戸へと近づく。みしりみしりとわざと音を立て歩き、そうして、音の元へと辿り着く。

「ご無事ですか」
 足音を察してか、向こう側の者も気配に気づいたようだ。戸の向こうから、やたらとくぐもった声が聞こえる。
「ええ、ありがとう、無事です……」
 住人の返答に鼻を鳴らすような、納得したかのような声。
「あと少しの辛抱です……戸を開けてよいと、我々が言うまで。どうか、耐えてください」
 優しげな――だが、聞くものが聞けば分かるだろう。
 それは「偽善の声」である、と。
 彼らは小さな村の中。一軒、また一軒と、戸を叩いてまわる、まわる、まわる。
 何故か。
 そこに、「ひとがいる」ことを確認するためだ。
 ひとがいて、「暮らしている」ことを確かめるためだ。
 なぜ確かめる?
 それは――彼らの悲願を、目的を、達成するためである。

●おはよう。
「おはよう、親愛なるあなた」
 人間災厄「少女の偶像」は微笑む。時計の針は既に昼頃をさしているが、イリス・フラックス(ペルセポネのくちづけ・h01095)はソファに座ったまま、平然とそう挨拶をした。

「ゆめをみたの。恐ろしいゆめよ。暗い、昏い夢。ありとあらゆる人々は怯え、戸を閉じ、カーテンを閉めて。それに釘まで打ちつけて、何かにずっと怯えていたの」
 彼女が語るは「夢」ではない。それはさながら白昼夢。星詠みの能力、ゾディアック・サインが記した予知である。

「とざされた戸。人々の家をめぐる人がいた。こんこんノック、無事ですか、ええ大丈夫、あなたもご無事で。そんなやりとり……」
 予知の内容を語るイリスは、どこか憂鬱そうにため息をつく。
「何日も、繰り返されてるの。皆、外に出ようとはしない。けして。でも、それじゃあ」
 そう長くはもたない。いずれ食糧の備蓄が尽き飢えに苦しむ事となり。いくら己が過ごしてきた馴染みの家屋の中だとしても、閉鎖的に過ごし続ければ、精神は確かに、蝕まれていく。

「なるべく、早く。手段は選んでいられない。それに、わたしには分かる。……『災厄』が、居るわ」
 少女の姿を取る「それ」は、微笑んでみせる。――彼女もまた、災厄のかたち。「少女の偶像」はやわらかな笑みと共に、ローテーブルの上へと地図が記されたプリントを置く。一枚で収まってしまうような、小さな村の地図だった。
「何が起きているのか、調べてきて。わたしだけじゃ、限界がある……現地調査。足を使って。手も使っていいし、言葉でもいい、物だって使っていいの」
 ようは使えるものはなんでも使え。遠回しな言葉遊びを使う程度の余裕はあるようで。

「……できたら、たすけてあげて」
 拙い言葉でそう言うと、彼女は傍のクッションを抱え、ゆっくりと目を閉じた。

マスターより

R-E
 おはようございます、親愛なる皆様!
 そして、はじめまして。R-Eと申します。
 仄暗い予知。星詠みからの小さな「おねがい」をお届けに。

 まるで悪夢のように昏い村。
 彼らはどうして戸を閉ざして引きこもっているのか。戸を叩くその行為の真相は。
 ふしぎなことばかりですが、理由は確かに、この村の中にあるはずです。

 ひとびとにあかるい日差しを見せてあげましょう。
 それが彼らにとってまぶしすぎても、仕方がないってことで。
14

第1章 冒険 『閉鎖的な村』


POW 暴力や恫喝で村人に言うことを聞かせる
SPD 密かに村に侵入し、隠された何かを探す
WIZ 村人とうまいこと会話して情報を引き出す
√汎神解剖機関 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

非時香・綾瀬
「さてと、ここが例の村……私はこっそり侵入させてもらうわ」
と、胡散臭い女の姿から烏の姿に化け村を見渡す、そして怪しい所に目星をつけると今度はこねずみになり村の様子を調査した。

「さてと、ここが例の村……」
 呟くのは、非時香・綾瀬 (人間(√妖怪百鬼夜行)のどろんバケラー・h03355)。どこか胡散臭さのある彼女、昼だというのに薄暗い村、どんよりとした雲の掛かる空。ある意味では似合っていると言って良いだろう、雰囲気がある出立ちだ。

「さて、私はこっそり侵入させてもらうわ」
 どろん。烏の姿に化けた彼女は、翼を広げて上空へと飛び立った。
 見える光景は「寂れている」という表現のうちになんとか収まっているような、廃墟も一歩同然な家屋すら見受けられるほど、小さな村である。奥には神社らしきものも見え、まさしく都市伝説の生まれそうな土地だ。

 上空から観察する事しばらく。やや木々に隠れている手頃な民家が見えた。
 ここならば鳥の姿のままでも偵察するのは容易だろう。軒下に留まり気配を消せば、聞こえてくるのは屋内にいる住人たちのぼやく声。
「一体いつまで……」
「急に来て、あんな事を言われても……熊のほうが怖いわぁ」
 夫婦であろうか。男女の、日常的だが不穏な会話。察せる情報は、あの戸を叩く者たちが「外からの来訪者である」という事。しかし……。
「(……少し、緊張感がないわね)」
 ついそんなことを考える。幸いと言うべきか否か、この家はまだ余裕があるらしい。付けられているテレビから聞こえてくる音と談笑……これ以上、ここに留まる理由はなさそうだ。
 綾瀬は再び、ばさりと翼を広げた。

「――っいま、外で何か……」
「こらっ! 見るなって言われただろう――」
 そんな声を聞きながら、彼女は再度上空へと羽ばたく。
 鳥か、と安堵する住人の声を、僅かに聞き取りながら。
🔵​🔵​🔴​ 成功

アルブレヒト・新渡戸
|やーな《素敵な》雰囲気…ご同類の仕業かな?
気に入らないから邪魔しちゃお。人間の育て方下手っぴ?

戸にクヴァリフ式拳銃で超常現象阻害弾丸をドーン。
これで閉じ込められているのが精神支配とかの類なら力が阻害されて外に出てくれるはず。
それでも出ないなら能力で魅了しちゃおっか。家の中の人たちも外の人たちも。外の人たちは多分銃声聞きつけて近くに来てくれるだろうから何人かからまとめて情報を収穫しちゃおう。

情報聞いた結果、村人たちが望んでこうなってるってことが分かったとしても私に従わせて外に出すよ。【魅了・催眠術】
日の光を浴びなきゃ美味しく育たないのは植物も人間も同じだからね。

いや、食べないよ。悪い子以外は。

 頭上では烏が鳴き、がさりと暗がりになっている茂みが揺れる。そんな陰鬱な空気に包まれてなお。
「|やーな《素敵な》雰囲気……ご同類の仕業かな?」
 ふーんとアルブレヒト・新渡戸(人間農園の主・h00594)が鼻で笑う。その通りご同類の仕業。星詠みも思わずにっこり。だが情報はまだ足りない。彼女もそれを確と理解している。

「気に入らないから邪魔しちゃお。人間の育て方下手っぴ? 今から代わりに育ててあげてもいーんだけど……」
 愛銃の照準を合わせるは、確と閉じられた家屋の戸――

「きゃあっ!?」
「うわあっ!!」
 無慈悲な銃声とほぼ同時に聞こえたのは、中年らしき女性と若い男性の悲鳴。慌ただしくなる屋内、続いて「母さん奥へ!」「行っちゃだめ!」といった親子の会話が聞こえて。
 暫し待てば壊れた戸の側へと人が寄る気配がした。息子の方であろう。
「こんにちは〜。何してるの?」
「何って、誰だアンタ! 戸を壊すなんて!」
 気楽な挨拶をするアルブレヒトに怒声を上げる青年。純粋に銃声に驚き近づいてきたのか、顔を見せようとしない。本気で「見てはいけない」と考えているようだ。

 そして遠くから、何者かが駆けてくる足音。どうやら「ご到着」のようである。
「お前! 一体何を……?!」
 彼女の容姿か、武装に驚いたか。足を止めたその者は明らかこの場に相応しくない不気味なローブ姿。声からするに男。
 ならば仕方がない。
「……いい子にしていてね」
 あたりに立ち込める熟れた果実の甘い匂い――プランテーションの香り。

「なん……だ、この匂い……」
 ローブ姿の男が呟き口を覆うももう遅く、意味はない。
「ほら、ちょっと顔出して?」
 青年が言われるがまま、ふらりと壊れた戸から顔を出す。彼女の姿を見るなり一瞬ぎょっとして目を見開くが、逃げることはしなかった。

「お話しよ。なんでみーんな引きこもってるの?」
「み……見たらいけないものが、出るんだ。いなくなったやつもいる、だから……」
 そう言う彼の視線は泳ぐどころか釘付け。仕方ない。彼女の身体も中々見てはいけない。
「そっちのは? なんで安否確認してるの?」
「い……『居ないと困る』から……」
 彼の視線も恐らく釘付け。仕方ない、仕方ない。

「じゃ見ないように出ちゃお。お母さんも連れて。そっちのもおいで? 困るんだったら最初から確認しなきゃいいの」
 口八丁だが魅了された男達には効くものである。奥から出てきた母らしき女性も驚きはしていたが、彼女の√能力の内に居たのだ。抵抗なく共に家から去る事となった。

 ――日の光を浴びなきゃ美味しく育たないのは、植物も人間も同じ。薄曇りだろうと日が出てないよりマシ。
「大丈夫……食べないよ。悪い子以外は」
 見た目が悪い子な男が、心配だ。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

狐沼・志尽
こう言った村落へいきなり乗り込んだ所で余程上手く口を回らせ無ければ話を聞く事は難しい事でしょう。残念な事に私も口を使うのは然程得意ではありません、不得意ですらあります。

幸いこっそりと物を調べるための手管には自信があります。村の近くまで訪れてから管狐を呼び極力物陰等から村へ侵入し、内部を探らせます。多少【霊的防護】が使えるとは言えそこまで強い子達ではありませんからもし敵を発見した場合は即座に帰還させます。
特定の時期まで閉じ込める必要があるのかはたまた閉じ込める事で得られる不安の感情等が欲しいのか…… せめて理由だけでも探れると良いのですが。
白皇・奏
同じ災厄でありながら……人に危害を加える存在は放っておけない。
おれのファム・ファタールの権能は拘束具で抑えられている。

村には人っ子ひとりいない、普通の聞き込みも無理そうだ。

情報収集と、あわよくば人を外に連れ出すなら、悪いけど善意に付け込ませてもらう。
民家を回って、扉を叩いてか弱い女の子の声で、
「お腹が空いたの……入れて?お願い、助けてほしいの」と頼んで回ろう。

もし入れてもらえたのなら、そのまま外へ連れ出せれればよし、断られたのならば、
「どうして?」とできる限り追及してみよう。

扉を叩いて安堵を確認する偽善の存在以外が来たら、どんな反応をするのか、それだけでも情報収集になるはずだ。

「(……こう言った村落へいきなり乗り込んだ所で、余程上手く口を回らせ無ければ、話を聞く事は難しい事でしょう)」
 村からはやや離れた、しかし視界を確保できる場所に立ち、閑散とした村を注意深く眺め……狐沼・志尽(きつねのおまわりさん・h02549)はそう思考を巡らせる。
 本人曰く、口を使うのは得意ではない。相手が閉鎖的な集落で暮らしている者達となれば当然、難易度も上がるというものだ。しかし手練手管に長けておらずとも、他の手段を用いれば良い。

「……さて、仕事をして頂きますよ」
 声掛けと共に、彼女の前にぼふんと現れるは五匹の管狐だ。そのうちの一匹の背を優しく撫で、志尽は「お願いしますね」と声をかける。直接的な命令をせずとも視線を合わせるだけで各々が茂みへと入り、彼らは村の方へと向かっていく――
 林や獣道を抜けて、たどり着いた村は情報通りの光景。人が居るであろう家屋の戸は閉ざされ、光の一筋も入らないようにしている様子である。
 まさしく人っ子ひとりも居ない状況だ。管狐達はそれぞれ別の家の床下へと容易く潜り込み、耳を立てる――。

 一軒目。家族数人が暮らしている家のようだ。
「……そろそろ米が尽きちまう……」
「どうにか食いつなげねぇもんか、あの人らに聞くしかないか……」

 二軒目。母娘の会話だ。
「ねえ、いつになったら外に出られるの?」
「お母さんにもわからないの……ごめんね」

 三軒目……どうやら留守のようだが、何か匂いが残っていた気がするだとか。

 そして四軒目。
「……さっきの音、なんだったんだろう」
「やっぱり外にゃ出んほうがええのか……?」
 音の話をしているが、管狐にはよくわからない。こてんと首を傾げた。

「ああ、もう、もう嫌だ! いつまでアイツらに従わなきゃならねぇんだ!」
 五件目に差し掛かり、どんっと床を踏み地団駄をする男の声。思わずビクリと管狐が跳ねる。
「何が「しせん」だ! 見られてどうなる、見えてどうなる!! ろくに教えもしねぇくせにっ、くそっ、くそっ、クソ!!」

 ……「幅広く情報を集める」。その作戦は、どうやら深く刺さったようだ。
 戻ってきた管狐達の情報は――管狐たち同士で情報を交換し、身振りや尾振り、あるいは鳴いたり転がってみたり、二匹で演じてみたりとでやや精度には欠けるものの、彼らと通じ合う仲である志尽には、なんとなくではあるが理解できた。一人で行動するより、多く収穫があったと言えよう。

「ありがとうございます。……どうやら、『閉じ込めておく』のが目的のようですね」
 じゃれてくる管狐達をあやしながら、顎に手を当て、考える志尽。
「では次は、閉じ込めておく理由。理由なくして目的はあらず……考えましょう」


 そんな中、白皇・奏(運命は狂いゆく・h00125)もまた、村への侵入を果たしていた。
 同じ災厄でありながら、人に危害を加える存在は放っておけない。それは、かの……彼の信条。
 人間災厄といえど、考え方は様々だ。仕方なく従っているものもいれば、仁義や人情を持ちながらも、その生まれや権能ゆえに『災厄』として認定されるものも存在する。彼もまた、その一人である。
 どうやら出歩く者はいない。それなら、足を使ってしまうのもいいだろう。彼はそう考え、一軒ずつ戸を叩いて回ってみることにした。

 こんこん、扉を叩く。暫く待てば、奥から人の気配がし、「はい」とやや弱々しい声が扉越しに聞こえてきた。
 それに対して奏は少女のようなか弱い声を作り、声をかける。
「お腹が空いたの……入れて? お願い、助けてほしいの」
「……っ……! だっ、誰だ……!?」
 途端、怯えた声が聞こえ。ばたばた、後ずさるような音がする。想像していた来訪者と異なっていたからか、それとも。
「お願い……もう、お家にごはん、なくて……」
「……ッそんな声の子供、この村には居ない! お前、何者だ!?『あいつら』の言ってた奴か!?」
 はて、「奴」とは。――尻尾を掴んだ。確信した奏は、さらに扉越しに、詰めていく。
「あいつら、って何? どうして入れてくれないの?」
「この家にゃお前にやれる飯なんてない!! ……ああっ、頼む、お願いだ……どっかへ、行ってくれ! 『あいつ』みたいにゃなりたくない……頼む、頼むよ……!」
 上擦った声で懇願する男に内心困惑しながらも、奏は「わかったわ」と残念そうな声で返答し、家を離れていった。

 彼はさらに家々を回り、同じように扉を叩いていく――彼への応対はどこも、似たようなものだ。
 怯えるもの、怒鳴るもの、わめくもの、彼ら全てが、最終的には「立ち去ってくれ」と懇願してくる。
 ……彼らは、戸を叩き安否を確認する者以外の、『訪うもの』を恐れているのだと想像が出来た。
 戸を叩く者達は、彼らの安否を……否、家に居ることを確認し、自分達以外に訪ねてくるものが居ると教えているのだろう。そして実際、消えたものがいるようである。
 何故だ。

――さて、遠くから聞こえてくる足音。それは当然、√能力者達のものではない。
 奏は咄嗟に、物陰に身を隠す。――日が、落ちてきている。その暗がりに乗じて、彼は一旦その場を立ち去った。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 集団戦 『狂信者達』


POW 狂信の斧槍
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【狂信の斧槍】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【怪異への狂信により得た魔力】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
SPD 狂信の旗印
事前に招集しておいた12体の【狂信者達】(レベルは自身の半分)を指揮する。ただし帰投させるまで、自身と[狂信者達]全員の反応速度が半減する。
WIZ 狂信の炎
【教主】から承認が下りた場合のみ、現場に【魔力砲『信仰の炎』】が輸送される。発動には複数の√能力者が必要となる代わり、直線上の全員に「発動人数×2倍(最大18倍)」のダメージを与える。
√汎神解剖機関 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

 落ちる日の中を照らす明かりがある。
 ざくざくと足音を立て近付く影がある。
 夕暮れの緋色はまだ少し遠い。しかし暗いこの村において、その「明かり」の緋色は嫌にまばゆく、目立つものだった。

「……一人、足りないな。おい、奴はどこへ?」
「さあ。嫌気がさして逃げたんでは?」
「愚か、愚か、いずれ罰が降るとも……」
 目立つ装飾を身につけたものを先頭に。雑談にしては物騒な会話をしながら彼らは歩く。

 ローブを着た者達が、戸を叩く。とんとん、こんこん、がん、ごん。がん。

 出迎えてやろう。
 彼らの『目的』を暴いてやれ。
狐沼・志尽
見るからに実働役の様な方々のお出ましですね。こちらから探す手間が省けて有り難い限りです。
皆様どうやら、この村の異変に関わりのあるご様子。
「私は警察署の方から参りました狐沼と申します。降伏は無意味です、抵抗しなさい。」

先制攻撃されると分かっているなら備え様もあると言うもの、躱しながらカウンターを叩き込んでやりましょう。敵が隠密状態になったなら狐火を燃え上がらせ、あたかも周囲一体を無差別に焼き払おうとしている様に見せ掛けます。敵の輪郭や声位は分かるでしょうからそこを目掛けて切り払います。
万が一にも住民が出て来てしまった場合は管狐で避難誘導を行います。市民を守る事こそ我々の任務ですから。

「(見るからに実働役の様な方々のお出ましですね)」
 管狐達の偵察の結果を聞き、村内へと入った志尽は視界に入った者たちの姿をそう評価する。話の通りに家々を巡り戸を叩き、ぐるりと周囲を回りありとあらゆる窓や扉を見回っていくそれ。この村の異変に関わりがあるのは明らかだった。

 ――であれば堂々と、正面から向かって良い。根拠は彼女の身分、そしてその能力。
 自分達以外の足音と気配を感じ取ったローブ姿の者――いや、こう呼ぶべきか――『狂信者達』は各々、タイミングは違えど、ぐるりと首を回して志尽を見た。
「私は『警察署』の方から参りました、狐沼と申します」
 一見、丁寧に見える挨拶である。――ブラフ。「警察」であると直接名乗らないことによる反応を見た。それに返答はない、が。

「降伏は無意味です、抵抗しなさい」
 ――ぼう、と燃え上がる狐火が志尽の周囲へ現れた。

 途端、それを見た狂信者の一人が地を蹴り、志尽へと接敵しようと駆け出す。
「ッづぁっ!?」
 だが、何かがその脚を挫いた。召喚された管狐が狂信者の脚へとぐるり巻き付き、その跳躍を阻害したのだ。
 半端な距離で止まり、手に持つ得物を挫かれた勢いのまま空振ることとなった狂信者の懐へ入り込み、志尽は剣を振るう。妖力を込められた一撃が見事腹部へ直撃し、突っ込んできた狂信者が地へ倒れ伏す。
 そこでようやく、ローブ姿の男達がざわりと声を上げる。
「お前……何者だ」
 静かに、しかし驚愕を含む声が志尽へと向けられるも、彼女は剣を振るい、血飛沫をその刀身から払って。

「言ったでしょう。警察署から来た、と」
「――ッ!」
 瞬間、息を飲む音。まだ生きていたのか、起き上がった狂信者が小さく何かを唱え、狂信の闇に紛れようとするが――志尽はそんな彼らではなくその周囲へ向け、側で揺れていた狐火を放つ。
 家屋へ、茂みへ、木々へと無差別に放たれたそれが、僅かに歪む空間を映し出した。
「そこです!」
「ぐゥッ!?」
 浮かび上がる姿目掛けて、逃走を図っていたであろう「それ」の背を斬りつける志尽。地に伏せ完全に沈黙した彼を見て、ひときわ目立つ装束を着た男が声を上げた。

「侵入者だ! 増援を呼べッ!」
 焦る彼ら。幸い、住人は家から出てくることはない。外で何が起きているのか、閉ざされた家屋の中からでも、多少なりとも察しているのだろう。今、ここから出るべきではないと。
「(……避難誘導は、必要ないようですね。助かります)」
 狐火は燃え広がることなく消えていく。狂信者達を睨みつける彼女に向け、首領であろう男が恨めしげに問う。
「……機関の人間か」
「それはもう、答えましたね」
 肩をすくめてみせる志尽に、首領は忌々しげに舌打ちをした。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

非時香・綾瀬
「正面から挑むのは苦手なのよね……だから私は裏からコッソリと」
烏に化けていた時に各地に仕込んで置いた時限爆弾、爆破地点から半径10m内の全員を「凶暴化」させ同士討ちさせる特注の【怪異腹腹時計】を起爆する。
「恨むなら集団でゾロゾロ連れ回ってた自分たちを恨みなさいね?」

「正面から挑むのは苦手なのよね……」
 そうぼやくは非時香・綾瀬(人間(√妖怪百鬼夜行)のどろんバケラー・h03355)。
 隠密行動を得意とする彼女にとって、集団と真正面から交戦することは避けたい事態である。だが敵が戦闘態勢に入った以上、争いは避けられない……。

 念のためにと周囲に仕込んでおいた時限爆弾、『怪異腹腹時計』――己の思う通りに、さまざまな効果をひとつ選び、影響を及ぼす爆弾。
 だがそれは、範囲的に一般人を巻き込みかねない。ならばギリギリのラインを攻めればよいのだ。一発で、足りる。数を使わずとも、これひとつで混乱に巻き込める。

「私は裏からコッソリと――」
 起爆。

「!? げほっ、ゴホッ……何だ!?」
 唐突な爆発と土煙。視界を遮られ狂信者が叫ぶも、もう遅い。適切な位置の茂みへと仕込んだ爆弾が炸裂したのだ。慌てて加勢に来た狂信者達をも巻き込んで、その効果はあっという間に広がっていく。

 ――そうして。
「貴様ァッ! 誰だ、誰だあッ!?」
「っぐぉッ!? この――何を!」
 立ち上がる土煙と爆弾の効果、そして彼らの√能力の欠点。「反応速度」も判断能力も落ちた彼らでは、背後から迫ってきた増援の存在を正しく認識できなかった。
 斧槍を振り下ろす狂信者、ひとり。
「ッあッあぁ来るな来るな来るなぁあ!」
 女性らしき狂信者が剣を振り回す。乱雑な太刀筋ではあるが、それは増援として呼ばれた『実働隊』ではない、本来後方支援に回っているはずの弱き狂信者を切り捨てていく。

 段々と土煙が晴れ――多少の冷静さが彼らに戻ってきたところで、狂信者の一人が綾瀬の存在に気がついた。
「ア、ア、アアアァ!!」
 剣を振りかぶり、物陰へと隠れていた綾瀬へと迫る。混乱状態に陥っているからか読めぬ剣筋に、咄嗟に急所を庇い腕を切りつけられる綾瀬。だが彼女は、散る血液越しに、笑ってみせて。

 「恨むなら、集団でゾロゾロ連れ回ってた自分たちを恨みなさいね?」
 首を傾げ、微笑む。狼狽える狂信者の腹を強く蹴り、彼女は狂信者の一人を地面へと叩き伏せた。
🔵​🔵​🔴​ 成功

白皇・奏
物陰に隠れてローブを着た狂信者たちの様子を探る。
彼等がおれの隠れる物陰に近づいてきたときが、逆に絶好の好機だ……!
√能力を使う、噂話を語るときだ。

「ねぇ、知ってる?この噂。
人々を閉じ込める因習村、我が物顔で歩く不届き者たち。
人々が見ていない今ならどんな残虐非道も許されると、彼らを裁く月明かりの女神が現れるんだって?」

語ればそこは、今と同じ村に変わる。
悪事を裁く月明かりの女神になって、必中攻撃となった月の弓で、彼らを攻撃する。

村の人達が見ていない今なら、噂通りに彼らを裁くことができる。
ただし、ただ倒すことだけが目的じゃない。

ある程度弱らせたら、彼らの目的を問おう。

 周囲が騒がしくなってきた。外から響いてくる物音や叫び声に対し、家屋の中でも混乱が起きつつあるのだろう。白皇・奏(運命は狂いゆく・h00125)はその声や物音に乗じ、物陰から狂信者たちの様子を探る。
 既に「隠れていた者」の存在を知ったからか、周囲を見回し駆け、得物を探す彼ら。
 その一人が、孤立した――今こそ好機だ。
 ひとりの狂信者、その目前にすらりと現れた奏が、口を開く。

「ねぇ、知ってる? この噂」
 唐突に現れた彼に返答をする事が出来ぬまま、狂信者はその「噂」を聞くこととなる。
「人々を閉じ込める因習村、我が物顔で歩く不届き者たち。……人々が見ていない今なら、どんな残虐非道も許されると……」
 それは、この村の現状。閉じ込められた人々、戸を叩く者。残虐非道に、√能力者へと得物を振るう者たちの話。
 立ち止まった狂信者と奏の語りに気がついたのか、遠くから首領が声を張り上げる。
「その者の話を聞くな! 私が『許す』――焼き払えッ、燃やせ、殺せッ!」
 だが、その言葉は残念ながら、周囲の狂信者達に届くまで僅かな時間がかかったようだ。
「まあまあ、焦るな。最後まで、聞き逃さないでくれよ?」
 武器や明かりを掲げた狂信者達が、直線上に魔力砲を放つも、迫る炎に焦ることはなく。

「……そんな彼らを裁く、月明かりの女神が現れるんだって?」
 奏は紡ぎきった。ざ、と薄曇の空が晴れる。いつの間にか夜へ変貌した空へと、とん、と軽く飛び上がる彼。
 その下を過ぎ去る炎が消えれば、真っ白な月を背に、浮かぶ奏の姿があった。
 手の中に現れた三日月のような弓をぐっ、と引き絞り、――矢を放つ!

 その矢はさながら月明かりのように遍く広がり分かたれ、狂信者達を射抜いていく。影へと隠れようとした者も、迎え撃とうとしたものも。女神の蹂躙だ。裁きの時間だ。慈悲なく放たれる必中の矢。月明かりの女神の力を得た彼の矢は、敵対者を逃さない。
 炎を放つものもすべて、すべて。居抜ききった彼がぎり、と歯噛みをする首領に問う。その肩には輝く矢が突き刺さり、深々と貫いて、黒いローブへ血液を滲ませていっている。

「さ。数が減ってきた。目的を聞かせてもらおう」
 地面へと降り立つ彼に、教主は半ば絶叫するように吐き捨てる。

「ッ……いいや、まだだ……まだ……我が、信仰は! かの『翼』のためにィッ!」
 ヒステリックに喚く男。――あと、一押しだ。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

アルブレヒト・新渡戸
先に逃げた子は運が良かったんだと思い知ることになるよ。

果樹園を創造して樹々から種子を雨霰と降り注がせる。
種子が当たった敵は寄生されて動けなくなるよ。防御力も上げてあげちゃうし回復までしてあげちゃうけど、関係ないね。
命の果実の種子は命を喰らって発芽・成長する。そのタイミングは私が選べる。だから一人一人に目的が何か質問していって答えてくれなかったら種子を発芽させて果実の苗床にしちゃう。果実が成れば死んじゃうよー。
相手は回復もするし、じわじわと捕食させながらじっくり育てる拷問とかもありかな?

我慢比べだね?何人目で話してくれる?
ま、さっき一人確保したからここにいる皆は全員食べちゃってもいいんだけどね。

 アルブレヒト・新渡戸(人間農園の主・h00594)は喚く教主を目前に、はあと溜息を吐く。ここまで来て、奇妙な信仰を貫く者たち。
 実に、「美味しそう」ではないか!
 だが刈り取るにはまだ早熟。さらに美味しく頂くには、あと少しだけ……待ってやっていい。

「先に逃げた子は運が良かったんだと、思い知ることになるよ」
 逃げた。一人足りない。はっと気づいた教主がすぐさま狂信者達へと命じようと口を開――こうと、した。
「さっき一人確保したから。ここにいる皆は全員食べちゃってもいいんだけど……」
 ……やはり『彼』は食われるらしい。

 育つ、育つ、育つ。地面から小さな植物が芽吹き、あっという間に成長し、まるで果樹園のように、植物のツルがあたりを覆い尽くしていく!
「えぇい、小癪なッ……焼けッ、よく燃えるだろう!」
「ざぁんねん。燃えませぇ~ん」
 鼻で笑うかのような、甘ったるい忠告。数が少なくなってきた狂信者が同時に放つ炎を、伸びに伸びたツルが受け止めアルブレヒトの体を守る。じりっと肌に熱気を感じるものの、ダメージには繋がらない。

「それじゃ。おいしく育ってね?」
 にっこりと、蠱惑的に笑う顔が、萎れたツルから見えた瞬間。『雨』が頭上から降り注いだ。落ちてくるそれは屋根をこんっと叩き地面に落ち、そして狂信者達の体にも命中していく。
 それは種子。即座に周囲のインビジブルを喰らい育ち、ツ狂信者達へと巻き付き締め上げ、その体を拘束する。
「っづ……ぉ……ッこれ、は!」
 呻く首領と狂信者達。肌へと食いつき、根を張るかの如く身動きの取れない状況へと追い込んでいく。だが彼らはまともな痛みを感じることはない。皮膚の下、口の中、ありとあらゆる場所から侵食されていっているというのに、ぴりりと痛むだけで――ある者はその痛みを、僅かに。快楽であると、感じ取ってしまった。

「さぁて、どうしちゃおっかな……」
 見事な『荘園』の中、優雅に歩くアルブレヒトは、狂信者の一人……最も弱っているであろう彼の頭部のローブを引き剥がし、その顎を撫でる。
「何が目的? 誰のせい、何のせい? ね、教えてよ」
 ぐっとその豊満な体を押し付け、呼吸の音すら聞こえる距離で狂信者を問い詰める彼女だが、男は震えるばかり――答えられなかった。
「じゃ、ダメ。ばいばぁい」
 かぷり。……これは、「やわらかく言って」、その表現。
 さらにツルが育つ。とどめを刺すために。種子に養分を吸い取られ……カラカラになった狂信者はそのまま砂のように消えていく。
 それを何度か繰り返していけば、必然的に……首領、教主へと辿り着く。

 「随分減っちゃったねー? 結局最後……」
「……っ……!」
 アルブレヒトは明らかに焦る教主の口に巻き付いていたツルを操り、開放する。すると彼は、すっかり荒くなった呼吸で……笑い、はじめた。

「は……はは……まさか……我々、が」
 我々。その言葉に、アルブレヒトは首を傾げる。教主はまだ笑っている。笑って、わらって、わらって……。

「ああ。私は……あなたの糧として! ここに、命を捧げましょう!!」
 絶叫。瞬間、ツルを引き裂き教主が両腕を天へと伸ばす。ふと見上げれば月が、見えている。月が――
 それを遮る、影。まるで繭のような白い「なにか」。

「なぁるほど」
 アルブレヒトは、天から息も絶え絶えな教主へと視線を移す。

「そっちも、『育ててた』んだ?」
 教主の返答は、ない。
 彼は既に、息絶えていた。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

第3章 ボス戦 『対処不能災厄『ネームレス・スワン』』


POW 災厄拡大
自身の【頭部】がA、【脊髄】がB、【翼】がC増加し、それぞれ捕食力、貫通力、蹂躙力が増加する。ABCの合計は自分のレベルに等しい。
SPD ネームレス・スクリーム
【狂気と絶望に満ちた叫び】を放ち、半径レベルm内の自分含む全員の【発狂】に対する抵抗力を10分の1にする。
WIZ スワンズ・ソング
【新たなる『ネームレス・スワン』】が顕現し、「半径レベルm内の困難を解決する為に必要で、誰も傷つける事のない願い」をひとつ叶えて去る。
√汎神解剖機関 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 おまえたち、なにもみてはならないよ。
 ――どうして?
 窓の隙間から覗くから。
 ――何が?

 それは、『歌う災厄』。最奥の『神社』より飛び立ってきた、うつくしき、白。
 月の光を遮り、繭のような翼が開く。

 おまえたち、にげてはならないよ。
 おまえたち、きいてはいけないよ。

 彼らの望んだ『|視線《死線》』は、ここに。
非時香・綾瀬
「出てくる前に終わらせたかったけど…まったくあの教主は死ぬ寸前まで迷惑だったわ」

さてと、どうしようかしら。
残る時限爆弾は幾つか、他の武器は無し、ハァ……偵察だけで帰れば良かったわ。
でもせめて一撃ぐらいはいれたいわよねぇここまで来たら。

……決めた、手持ちの時限爆弾をセット、アレが叫ぶ瞬間に爆破でひるませる。私はその間に叫びの範囲外まで後ろに引いて後は他の皆様方のバックアップ。今、私が出来る最善手はこの程度かしら?
もどかしいわね。でもそうと決まれば、先陣は貰うわね、無論密かに。

「出てくる前に終わらせたかったけど……」
 どうしたものか。『彼ら』の儀式そのものは、√能力者の直接的な妨害により不完全となったが、頭上遠くを羽ばたく『それ』は此処に在り。顕現した対処不能災厄、『ネームレス・スワン』は上空をゆったりと浮かぶように飛び、翼をゆっくりと羽ばたかせ、その不気味な頭部をごきり、ぐりぐりと動かし周囲を観察しているようだった。

「まったく、あの教主は死ぬ寸前まで迷惑だったわ」
 非時香・綾瀬(百面の侵入者・h03355)は悪態をつく。手持ちの爆弾も数が減り、武器の持ち合わせとしても心もとなく、正面切って戦うには頼りない。
 偵察だけで帰ればよかった。それでもここまで付き合ってしまった。――一撃くらい食らわせてやらなければ気が済まない。
 己は悪だ。相手もまた異なる悪だろう。だが今、どちらがより「脅威」であるか。彼女自身も、理解しているはずだ。

 村に満ちるあまりにも暗く底気味悪い空気を払うように、爽やかな風が吹き、洗い流す。彼女の背から吹き上げるように、上昇気流が生まれ――。
「――先陣は貰うわね」
 もちろん、彼女の流儀通り、密かに!

 風が吹いた事、異形はそれに狼狽えることも姿勢が揺らぐことも無い。そして綾瀬の姿に気づくこともなかった。
 時限爆弾、セット。
 数秒後には爆発するそれを、彼女は気流に乗せ、勢いよく天使にも似たその異形へと投擲する。
 食らわせてやる、今ここで。「あれ」に下るべきは神罰である。それがまだ落ちていないというのなら、己の 手で。

 命中と同時、頭上で炸裂する腹腹時計。視界に入るそれを見、叫ぼうとしたとて遅い。爆破――『ネームレス・スワン』のいくつかの頭部や脊髄を吹き飛ばす!
 甲高い悲鳴、やたらと人間じみた、然し人のものではない違和感を持った叫びが上空から降り注ぐ。常人であれば狂うほど。絶望に満ちこの世を呪うかのようなその悲鳴は、地上へ『正しく』届くことにはなかった。
 何せ奴は「上空」だ。叫びが届く範囲、さらにその外へと逃げた彼女を呪う声は届かない!

 まさしく、最適解。最善手。吹き飛ばされたからかバランスを崩し、ゆっくりと堕ちてくるそれ。
 さっさと帰って酒でも飲むのだ。あんなやつを思い出して飲むのは癪ではあろうが、戦果をあげれば減役のチャンスもある……。
 念の為と距離を取る彼女の姿を、「あれ」はとらえられていない。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

ニコル・エストレリタ
・同道する皆さんと連携します。
・口調等設定はステータスシートを参照ください。

行動
・当該建物の周辺を探索
・建物内の異常を点検、罠・儀式の痕跡などがないか探索する
・部屋から出てこない住人たちを落ち着かせて扉越しに事情を聴いて回る
・水や食料を差し入れることができれば多少は持ってゆく。

探索中、邪魔に思った敵が出てくるかもしれないので常に周囲に警戒する

今回は調査に主眼を置き、できるだけ戦闘は避けるが、
必要なら身を挺して一般人の避難誘導、救護に当たる。

記述不足があった際はお任せいたします。
白皇・奏
見るからに、どう見ても。
普通の人が見たら確実に狂気で我を失うような怪物、とんでもない災厄だ……。

同じ災厄としても人間災厄とは比べものにならない、こんな奴が暴れたら村の皆は完全に消されてしまう、意識も、存在も。

だから、見ないでくれ、聞かないでくれ、村人達。
代わりに、俺達√能力者が何とかするんだ。

災厄だって運命から逃れられない。ファム・ファタールが魅せる。
『運命の女が魅せる災厄』、俺の魔性の視線が放たれれば、災厄の狂ってしまう運命への耐性はほぼ無くなる。
俺もだけど……俺は平気さ、もう運命は狂っている。

狂った運命が災厄に何をもたらすのか、後は災厄の攻撃を避けたり対処したりしながらその行く末を見守る。

 おちる。意志があるのか、ないのか、それとも本能か。
 歌声すら忘れて不格好におちてくる。
 まるで悪あがきのように飛翔しようと羽ばたき、周囲に巻き起る風。上空からゆっくりと、確かに|落《堕》ちるそれを見て、白皇・奏(運命は狂いゆく・h00125)が息を呑む。
 白鳥の|悲鳴《初声》は。どこか自分のそれと重なって。眉をひそめて睨みつけた。

 このまま落下し、家屋を崩し……地上であの歌声を聴けば、ひとびとがどうなるか。我々も、どうなるか。察するまでもない。
 確実に狂気に蝕まれ、その後の保証はない。……災厄たる己よりも強大な存在を目にすれば。人類を滅ぼしかねない存在、「同類」扱いをされているような者でも、時に怯え立ちすくむことしか出来なくなるだろう。
 だが彼は駆け出す。村の中心へと、己の『|権能《√能力》』がすべての村人へ届き切る範囲へと。
 使命とは、決意とは強いものだ。怪異を前にし、立ち止まる勇気とは尊いものだ。

 それに続くは増援として村へと訪ったニコル・エストレリタ(|砂糖菓子の弾丸《キャンディーブリッド》・h01361)。状況は見ての通り、頭上から足掻きながら堕ちる白鳥。その巨体をもって家屋を押し潰し、その声でこの村を破滅に導くであろう存在。
 今自分が何をすべきか。あれが落ちてくる……ならば、避難誘導だ。行動は迅速であった。
 家屋を周り、前もって聞いていた「戸を叩く」以外の儀式や罠などが無いかとざっと周囲を見渡し、行動を起こす。ニコルはやや乱暴に玄関のドアを叩き――。
「出てきてください! 聞いたでしょう、上から『落ちてくる』!」
 そう屋内の住人へと声をかけていく。先の騒々しい様子や悲鳴で何が起きたのかを察していたか、すぐに扉を開いて出てくる住人たちを連れ、村の外に逃げるためその手を引く。

 ……外へ出た瞬間――ひとりの住人が、『それ』を見た。

「――ヒ、ぃ」
 喉が鳴るような悲鳴を上げた彼に呼応するように、一瞬で広がる混乱。だが――奏が彼らを見る。
 本来ファム・ファタールに魅了されたら、そこでお終い。だが彼の√能力は今、彼の制御下にある。
 それは、『|運命の女が魅せる災厄《 クライシス・ファム・ファタール》』。狂うはずの運命へ抗う視線。無様に、しかしある意味では美しく落ち行く白鳥の姿を遮るように立つ奏。彼の視線が人々を射抜く。
 唇が動く。
「見ないでくれ、聞かないでくれ」
 言葉は届かない。だが、視線は届いた。……正気を一瞬取り戻した彼らへ、さらにニコルの√能力が重なる。
「大丈夫、『忘れていい』、いいんだ! ボクに続いて! ここから逃げるよ!」
 立ちすくむ者へと強く声をかけ、怪異から離れようと走る彼らとともに、足が悪いのかおぼつかない足取りの老齢男性の手を取り、ニコルは地面を踏みしめる。
「――生き残るんだ。絶対に!」
 村人たちを、そして自分自身を鼓舞するように進む。
 強い相乗効果。狂気を克服させ、忘れさせ、逃げなければならないという本能を用いて、彼らは村から住人達を避難させる。その声が届かぬほど遠くへ――。

 残された奏が呟く。
「……俺は平気さ、もう運命は狂ってる」
 それでも正しく状況を理解している。己の目を見なければいい、それだけだ。目を伏せ、奏は静かに深く、呼吸をする。
「どうにもならない運命なら、おれが変える」
 言葉通りに。彼は、彼らは未来を、運命を変えてみせた。

 圧。家屋を圧し潰す。風。羽ばたく翼が暴れまわる。しかし足掻くのも、もうおしまい。
 ――落ちて、『増える』。爆破され喪った部位を補うように『ネームレス・スワン』の頭部や脊髄、翼が再生していく。「それ」なりの応急処置であろう。本来の力を取り戻す事はできない。
 これがまともな思考能力のある、通常の人型の怪異ならば、その無数の頭が忌々しげな目線を向けてきていた事だろう。
 脊髄と翼を頼りに体を起こし、再度飛翔しようと無数の翼を広げ、天を仰ぐ。再度、歌うために。天から「しせん」を向けるために。白翼の理性は、運命は、既に狂いきって。こうして、あふれだして――。

 そんな「|白鳥《おまえ》」でも、運命からは逃れられない。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

狐沼・志尽
尻尾の多い私の言えた事ではありませんがそのあまりにも多い翼と頭、動き難くありませんか?
そもそも脊髄に直接それらが付いた様な存在に言う事ではありませんが……
何度見ても不思議な外見で恐ろしさよりも疑問と好奇心ばかりが湧き上がります。勿論霊的防護は常に働かせて発狂させられない様にはするつもりですが、一先ず仲間や無辜の市民を攻撃しないようにだけ気を付けましょう。
一対一では勝負がどうなるか分かりませんが管狐さん達を召喚すれば良い具合に囲んで叩く形に出来る事でしょう。管狐達にはバラバラに行動させて一掃されない様に気を付けなければいけませんね。余裕があれば家屋の方へ敵の攻撃が向かない様にも留意致します。
アルブレヒト・新渡戸
一番悪い子が一番美味しい果実を実らせるところだったのに…横取りは酷くない?
何にせよ…食べていいのはさっきの子まで。あとの良い子たちは食べちゃ駄目。

聞き入れてもらえないなら仕方ないね。喰らい合おう。
狂信者が実らせた命の果実を食べてパワーアップ。殴りかかるか蹴りかかる。躱されてもいいぐらいの雑さで。
手足が当たらなかったら代わりに種子がばら撒かれてご同類さんの血肉を土壌に農園が完成するから。色々増やしたかったんでしょ?ならついでに樹もたくさん生やそうよ。

それで相手は動きづらくなる…というか、そのまま吸われ尽くして一回休みでしょ。
じゃ、また会おうね。次は私みたいに食べる子選ぶようになってると嬉しいな。

「一番悪い子が一番美味しい果実を実らせるところだったのに……横取りは酷くない?」
 悶え苦しむように暴れ、村を破壊しながらようやく浮かび上がった『ネームレス・スワン』。手にした果実を齧り、やや唇を尖らせてつまらなそうにアルブレヒト・新渡戸(人間農園の主・h00594)が鼻をふんっと鳴らす。
 美味しそうな教主は食えずとも、例の彼はやっぱり食べられてましたね。悪い子だから仕方ないです。わりと美味しい感じの味だったと思いますが憐れむ必要全く無し。
 食べていいのはさっきの子まで。
 あとの良い子たちは食べちゃ駄目。――その良い子達はどうやら無事に逃げおおせた。
 残るはこの巨悪。狂信者どもを狂わせ、己の糧となるものを延々求めた結果がこれだ。
 星読みに察知され、己の想像以上の抵抗を受け、地に落とされた。蠢く脊髄はまるで樹木のツルのようであるが、たわわに実るは真白いヒトの頭部である。まったく、彼女らの『それ』と比べれば、禍々しいったらありゃしない。

 そんな人類を雑に解体したかのような、「無数のあれこれ」で構成された狂気の存在へ。
 尻尾の多い私が言えた事ではありませんが、動き難くありませんか。
 口には出さずとも、狐沼・志尽(きつねのおまわりさん・h02549)が疑問を抱くのは当然のことである。好奇心だって湧いても疑問ではないが――それほどの余裕をもってこの怪異と対峙する彼女の精神は逞しい。霊帯装束による霊的防護は正しく働いているようだ。

 彼女たちの敵対心を感じ取ったか、脊髄に連なった無数の頭が二人を見る。見る。見る。一斉ではなく、連鎖的に頭がこちらを向いてくる。
 弱っている――それでも一対一では分が悪い。だが。

 志尽の前へアルブレヒトが立つ。彼女は志尽を振り返ることはなく。食べ終わった果実、その果汁が付いた指をぺろり舐め、片腕を軽く挙げて手を振った。
 察した志尽が管狐を召喚する。増援要請、一匹、二匹、三匹――もはや「群れ」と呼ぶには総数の多い彼らが、数匹のチームとなり散り散りに分散していく!

 一斉に多方面から白鳥へ襲いかかる管狐。顎で脊髄に食らいつき引きちぎり、翼の羽根を毟り取り。「それ」が落ちた際に叩き潰された家屋がこれ以上の被害を受けないよう、志尽と管狐は立ち位置を調整しながらそれの攻撃を誘う。
 身を捩って血飛沫を上げ、管狐たちを振り払おうとする白鳥へ――彼らとほぼ同時に、アルブレヒトが地を蹴り跳び上がり迫っていた。
「い~っぱい増えなくて、残念だったね? 本当ならもっと実ってたんでしょ。私も残念」
 まるで同情をする気はなさそうな言葉と共に、やや雑な蹴りが繰り出された。見切られる前提の動きだ。白鳥は翼や頭を引っ込めるようにしてアルブレヒトの一撃をかわし、地面へと着地する彼女を見て、『増える』。
 まだまだ実る頭部に翼、根を張るように脊髄も――だが、彼女が狙っていたのは蹴りでの一撃などではない。
 静かに。管狐たちが抉った傷、生まれた血飛沫を糧に。撒かれた種が、芽吹いて。

「――来ます」
 構える、志尽。翼で振り払われ狐火となり消える彼女の召喚した管狐の群れ――邪魔なものがようやく消えたと『歌おう』と口を開く頭部たち。
 それを待っていたとばかりに、その口へとねじ込まれていくは植物のツル。頭部へ、根を張る。
 頭部はあっという間に、果実の実る、うつくしい農園へと変化していく。
「さ、喰らい合おう」
 人間災厄「プランテーション」。彼女が、アルブレヒトが災厄たる所以――!

 口へとねじ込まれた植物を噛み砕きまだ歌おうとする喉を、別働隊として残されていた管狐が飛びかかり噛みちぎる。生み出された荘園によって行動を阻害されるが、「数の暴力」とはこのことだ。

 ――僅かに歌う声が聞こえる。甲高く甘く美しくだが穢く。小さくとも脳へと響き渡る歌声。揺らぐ視界と揺さぶられる脳、それでも彼女たちは立っている。
 狂気を知らぬ樹木は変わらず侵食する。そして狂気に侵されてなお、本能で食らいつく管狐の顎。

 とどめとなったのは、何だったのか。もはやどれとも分からぬ、|襤褸《ぼろ》く無様な姿となったそれはようやく――うらむような、声で。
「アァ」
 と。ひとつの頭から、感嘆するような声を上げ。
 実った頭部をぼろぼろと落とし。翼の羽根は抜け落ちて手羽先のように身を晒し。脊髄もまた、枯れ果てた植物のようにパキパキ音を立てて、朽ちていった。

 剣をおさめ、一仕事を追えたと理解し息を吐く志尽。その目前で。
「――じゃ、また会おうね」
 月光に照らされ、消えていく怪異を見下しながら、アルブレヒトは言う。
「次は私みたいに、食べる子選ぶようになってると嬉しいな」

 ――怪異にしては「賢い」これが、この言葉を聞く耳が残っていたのならば。もしかすれば次は、果樹園ではなく、美しい菜園でも作っていたかもしれない。
 だが白鳥の脳裏に、その言葉が刻み込まれることはなかった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

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挿絵イラスト