いつか思い出す、初めての日
上層へと向かう階段を登っていく、若い冒険者たち。頼りない歩行を見れば、彼らの冒険が残念な結果になったことは一目瞭然だった……己の無力を、思い知ることになったのである。
先頭を行くシデンも最後尾のナナも、他のふたりも無言である。
しかしそのとき、明るい声がダンジョンに響いた。
「よかった、無事だったのね!」
声の主はエフェリーナ・レプス・クレセントハート(旅芸人のエフィ・h05087)であった。
「大丈夫? 元気ないよ、みんな。帰るまでが冒険だよ?」
彼らが意気消沈している理由は十分にわかっている。ならば自分は、今日という日が楽しい旅の思い出になるよう、励ましてあげよう。
自分の思い出に触れる勇気は、残念ながら欠落して失っている。だからこそエフェリーナは、出会った彼らの思い出となりたい。
「初めてだもの。生きて帰るのが一番大切よ」
そう言ったあとは、兎耳をぴょこぴょこと動かしながら明るい声で話し続ける。
意気消沈していたシデンたちであったが、あまりにエフェリーナがにこやかに話しかけてくるものだから、だんだんとほだされていった。
「4人は幼馴染なんだ」
エフェリーナが4人を見回す。
「シデンとナナは、俺たちより前からだね。会った頃から、ずっとベッタリだよ」
「だって、それはナナが……」
「いや、シデンのほうがベッタリなんだよな」
「ち、ちがうだろそれはぁ!」
5人は賑やかに話しながら、上層へと至った。
「待って」
エフェリーナが皆を制す。暗闇の先に、病魔・黒死病が蠢いているのに気づいたのだ。どうやら、偶然に発生してしまったらしい。
霊剣を構えるエフェリーナ。
「どうする? 私ひとりでも大丈夫だけど……」
「いや。俺もやる。いくぞナナ、みんな!」
「そっか。じゃあ……!」
エフェリーナは笑顔を見せて踊り始めた。それは未来のあるシデンを励ます、『情熱の舞』。
「さぁ、頑張って♪ 大丈夫、あなたならできるよ!」
エフェリーナの応援によってシデンは覚醒し、ナナの魔法や仲間の援護を受けながら敵に挑む。そしてついに、病魔を斬り裂いた。
「やった!」
若者たちが歓声を上げた。
誰にでも、初めてはある。勇気を持って進むことができたなら、必ず次に繋がるのだ。
「やったね、おめでとう!」
エフェリーナもその輪に加わった。
いつか、今日という楽しい思い出を振り返る日が来る。
🔵🔵🔵🔵🔴🔴 成功