フェイクウェポンとフェイクドラゴン
異世界から繋がる道を抜けて√ドラゴンファンタジーを訪れた君の目に飛び込んでくるのは、建てられた時代も様式も材料も不統一なビルや家屋、城壁が無秩序に組み合わさった巨大な集合建築と、その屋上に設置されたアンテナや小屋に胴体を擦るのではないかと思える程の低空を飛ぶ旅客機と竜の姿である。
「√能力者さん、で合ってますよね? 東洋の魔窟へようこそ!」
冒険王国『九龍城砦』の威容を眺める君にミミズクの特徴を持つ獣人の女性、ベニー・タルホ(冒険記者・h00392)が話しかけてくる。彼女は自身が君と同じ√能力者であり、ついでに星詠みであることを伝えた後、この王国の特徴と王国が現在抱えている問題について、ゾディアック・サインによって得た予知を交えて語り始める。
√EDENでは1994年に解体されてしまった世界有数の違法建築群『九龍城砦』であるが、√ドラゴンファンタジーにおいては内部にダンジョンを抱える冒険王国として未だ健在であり、かつて√EDENに存在したそれ以上の活気と魅力、そして危険を内包している。
東アジアにおける流通と金融のハブである香港の一角という元々恵まれた立地に加えて、現在では様々な国や地域からダンジョンに眠る財宝目当ての冒険者と彼らを相手にする商人が訪れており、その多国籍ぶりたるや君が広東語や中国語、英語を話せず、アプリ等の翻訳手段を持ち合わせていなかったとしても意思疎通に殆ど困らない程である。反面、仮に冒険者や√能力者であることを商人に勘付かれた場合、君は『竜漿兵器』を始めとする冒険用商品売り込みの格好の標的となることだろう。
しかし商人のセールストークがどれほど魅力的だったとしても、彼らの見せる商品、特に竜漿兵器には迂闊に手を伸ばしてはならない。と言うのも、近頃『九龍城塞』で流通している竜漿兵器には粗悪な偽造品が混在しており、他でもないこの『偽造竜漿兵器』こそが王国に問題を引き起こしている原因なのである。
『偽造竜漿兵器』は外見こそ本物そっくりに作られているものの完全な見掛け倒しであり、品質は劣悪の一言。兵器を起動するために血液を注いでも何も効果を表さないのはまだマシな方で、ひどいものになると使用中に突如炎上、爆発した事例も確認されているという。
星詠みが予知で得た情報によれば、『偽造竜漿兵器』の製造拠点はダンジョン内部に存在する工場であり、その首謀者も判明している。
その名は『リンドヴルム『ジェヴォーダン』』。
高い知能と変身能力を持つドラゴンプロトコル型のモンスターである彼が如何にして竜漿兵器の偽造という犯罪に手を染めるようになったのか、その動機は定かではないが、冒険者、そして冒険王国『九龍城砦』としてはその所業を放っては置けない。
なぜなら、√ドラゴンファンタジーの冒険者にとって竜漿兵器は自らの命を預ける大切な仕事道具であり、そんな相棒とも言えるアイテムの信頼性が失われてしまっては、ただでさえ危険な冒険者稼業は早晩立ち行かなくなる。その影響が冒険王国全体へと波及して、いずれ『九龍城砦』がモンスターの蔓延る廃墟になってしまうことは想像に難くない。冒険王国の経済は多くの場合、冒険者の齎す富に依存しており、それはこの東洋の魔窟とて例外ではないのである。
事件を解決するためであれ単なる観光目的であれ、君が『九龍城砦』内部へ足を踏み入れる意思を星詠みへ伝えるのであれば、彼女は『偽造竜漿兵器』工場への移動経路と併せてこの王国に滞在する際の注意事項を述べる。
「『九龍城砦』は迷路のような巨大違法建築それ自体が観光名所となっています。あなたがここを初めて訪れるのであれば混沌とした様子に圧倒されるかも知れません。そんな時には、まず雰囲気に慣れるために肩の力を抜いて散策や買い物をすることをお勧めします」
星詠みはスマートフォンで建物内部の画像を見せながらさらに続ける。
「狭く入り組んだ通路の両脇や、場所によっては天井や床にまで数多くのお店が並んでいて、他所ではあまり手に入れられないような品々が扱われています。運が良ければ思わぬ掘り出し物に出会えるかも知れません。ただし偽物には注意して下さい。それでは、ご武運を!」
最後に「自身の地元に伝わる旅の安全を祈るおまじない」と言って何やら呪文のようなものを呟くと、星詠みは君を笑顔で送り出し、異世界からの新たな訪問者に対して今しがた君にしたのと同じように、冒険王国『九龍城塞』のチュートリアルを開始するのであった。
マスターより

このシナリオは√ドラゴンファンタジーでダンジョンの奥に潜むモンスターを退治するという内容です。
傾向としてはコメディ寄りになると思います。
第1章は、冒険王国『九龍城砦』を観光する日常シーンです。
この王国には冒険用品店の他にも、在りし日の九龍城砦と同じように飲食店や雑貨屋、床屋といった様々な店舗から映画館や演劇場等の娯楽施設、教会や寺院等の宗教施設、病院、学校、墓地に至るまでありとあらゆるものがあります。もしかしたら悪い人もいるかも知れません。
能力値別の選択肢はあまり気にせず、「こういう場所へ行きたい」、「こういうグッズが欲しい」、「こういう体験がしたい」という希望がある場合は、その旨をプレイングに記載して下さい。
第2章には分岐がありますが、場所はいずれもダンジョン内部の『偽造竜漿兵器』工場です。
【A】偽造品を作るための見本、すなわち本物の竜漿兵器を探す冒険シーンです。
発見したい竜漿兵器に具体的な希望がある場合はプレイングに記載して下さい。また能力値別の選択肢はあまり気にしないで下さい。
【B】工場で働く『ハーピー』との集団戦シーンです。
『ハーピー』は上半身が女性、下半身が猛禽類の怪物で、腕そのものが翼になっているモンスターです。
第3章は、第2章に引き続き工場を舞台とした『リンドヴルム『ジェヴォーダン』』とのボス戦シーンです。
様々な姿へ変身する以外に獣型の配下を召喚する能力を持つ、なかなか器用な、そして謎めいたモンスターですが、このシナリオにおける『ジェヴォーダン』はドラゴンプロトコルのように真竜に変身できない、つまり本物のドラゴンでないことを大変気に病んでいます。
それでは、よろしくお願いします。
16
第1章 日常 『冒険王国の観光名所』

POW
名所を歩いて巡り、絶景を楽しむ
SPD
名所おすすめの名物を買ってみる
WIZ
名所特産の食べ物をいただく
√ドラゴンファンタジー 普通5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
星詠みの言葉の通り『九龍城砦』の中はひどく雑然としている。
元々狭い通路を露天商とその売り物、昼寝中の犬や猫、電線、水道管代わりのゴムホース、ゴミ等が占有しており、この場所に慣れていない者は通り抜けるだけでも一苦労だろう。
壁や天井の隙間から投げかけられる鋭い、あるいは好奇心に満ちた視線は、訪問者の身なりや振る舞いからその人物の立場や財布の重さ、時には腕っぷしの強さを見定めようとしているかのようだ。
ある一角には屋台が軒を連ねており、食欲を誘う肉や魚の香りに八角や唐辛子といったスパイスの香り、熟れた果実の香りに良くわからない食材の嗅いだことのない香りが渾然一体となっている。
路地裏から聞こえてくる音は子どもの遊ぶ声、おそらくは鍛冶屋であろうハンマーを打ち付けた際の金属音、複数の宗教の厳かな祈りの声、華麗な歌声、激しく争う人々の声、銃声や爆発音と実にバリエーションに富んでいる。
まさに混沌といった有り様のこの冒険王国で何に出会うのか、それを決めるのは君自身である。

私はダーティ!ダーティ・ゲイズコレクター!
不快な悪事の邪魔をする汚職警官ダーティとは私のことです!
(軍服のようなドレスを纏った女性が名乗りを上げる)
冒険には欠かせない大事なものを!しかも危険なものも混ぜ混ぜした偽物を売りさばくとは
とても不快な悪です!
パトロール中でしたがこっち優先で!
パパッと終わらせちゃえばバレないでしょう!
しかしここは良いところですね!視線をたくさん感じます!
いろんなお店がありますがここは一際熱い視線をくださる所へ行きましょう!
きっと素敵な出会いがあるはずです!
それに先に警官と名乗っておけば偽物を売ってはこないでしょう!
これも役得というやつですね!
(しかしここは良いところですね! 視線をたくさん感じます! いろんなお店がありますがここは一際熱い視線をくださる所へ行きましょう! きっと素敵な出会いがあるはずです!)
人妖「バフォメット」の汚職警官ダーティ・ゲイズコレクター(Look at me・h00394)が嫌いなものは不快な悪で、好きなものは注目を浴びること。
九龍城砦の住人から向けられる好奇の目だけでは満足できず、より多くの、より熱い視線を集めたいと思う君は、引き寄せられるようにして小さいながらも豪奢な意匠が施された劇場へと辿り着き、「こんな施設まであるのか」と驚く間もなく、軍服のようなドレスを身に付けた君は、そそっかしいスタッフにより演者と間違われて無理やり舞台へと押し上げられてしまう。
君が警棒を見せて自身が警察官であることをアピールしても、観客は「まるで本物のようだ」という称賛の声と共にうっとりとした視線を向けるばかりであり、スタッフは客の食いつきの良さに満足している様子である。
君はステージの上でスポットライトと視線のシャワーを浴びながら思う。これもまた「素敵な出会い」というやつなのかも知れない、と。
出番を終えて退場した君に、先程のそそっかしいスタッフが声を掛ける。
「ご、ごめんなさい! まさか本物とは思いませんでした! 何しろ警官がこの辺りを巡回することなんて滅多にないものですから……」
お詫びをしながらも「でもさっきの舞台、本当に良かったですよ」と付け加えるスタッフの顔はとても幸せそうに見えた。
🔵🔵🔵 大成功

ドラゴンのことも気になるけど、爆発ー!?
むむーん…ずっと使ってるから大丈夫だと思うけど急にどかーんってならないよね…(愛用のハンマーを眺める)
ダメだよー!あたしもなんども竜漿武器に命を助けられてきたからそれが急に使えなくなったらこう…あれだよ!みんな困るよ!
▼行動
『九龍城砦』を目の当たりにしたらきっと圧倒されてみとれちゃうと思う!あたし…ぜんぜんちっちゃいね!
決めた!あたしここで一番高い所に行ってみる!そこから見える空と、見下ろす景色を見てみたいんだぁ。
視線を感じたらそっちに手を振ったり道を尋ねたり!割と行き当たりばったりで!
ここは賑やかで良い所だね。竜のままだったら、知らなかっただろうなぁ

もぐもぐ……今の私は潜入調査員。
この変わった食べ物の中にも『ぎぞうぶらっどうえぽん』なるものが
混ざってるかもしれない。野生の感がそう言っている。
だからそう、ここのすべて(の食材)を調査しなくては!
そう自分に言い聞かせながら食べ歩くその姿は
異国情緒あふれる珍しい食材に夢中で正直依頼なんぞ
もはやどうでもいいといった感じだった。
まぁある意味街に溶け込んでいるといっても過言ではないだろうか?
ついでに本当に偽造竜漿兵器の情報が屋台とかから
ポロっと出てきてくれたらラッキーくらいの気持ちで
●シアニ・レンツィ(|不完全な竜人《フォルスドラゴン・プロトコル》・h02503)の場合
人混みをかき分け多くの階段を上り、廊下や時には店や住居の中を抜けて九龍城砦の最上層へと辿り着いた君は、この王国を訪問して以来最大の解放感を味わう。
「一番高いところへ」と屋上の貯水槽へよじ登れば、南西には湾岸の高層ビル群が、北には山々がそびえ立っているのが見える。山肌のいくつかは香港における紅葉シーズンである今、鮮やかな赤や黄に染まっており、その上に広がる青い空と美しいコントラストになっている。
景色を眺める君の周囲では、洗濯物を干す住人の傍らで何人かの子供が楽しそうに走り回っている。はしゃぐ子供たちの声や彼らが屋上の縁に近付かないよう注意する大人の声の大きさは、低空を行く飛行機の轟音にも負けていない。君の両足に伝わってくる止まない振動は、ダンジョンを糧として生きる住人の活気そのものである。
「ここは賑やかで良い所だね。竜のままだったら、知らなかっただろうなぁ」
その言葉を聞いた子供たちが一斉に君を取り囲む。
「お姉ちゃん竜だったの? すげえ!」
「肌が空色なのは、もしかしてずっと空を飛んでたから?」
「あはは、そうかもね」
子供たちと打ち解けるのにさほど時間は掛からず、今までに君が体験したことや冒険王国での暮らしについて楽しく話す中、君は奇妙な噂を耳にする。
曰く、本物そっくりの偽物の人間がこの国で目撃されたらしい。
「武器だけじゃなくて人の偽物まであるの!?」
真偽は定かではないが、思ってもいない情報に君は首を傾げるのであった。
●十枯嵐・立花(白銀の|猟狼《ハウンドウルフ》・h02130)の場合
標的はここにある食べ物のすべて、という方針の元に屋台の調査を開始した君の舌と心は、たちまち異国情緒あふれる味の数々の虜になってしまう。幸運にも、育ち盛りの14歳特有の見事な食べっぷりも相まって君の振る舞いは屋台の並ぶ界隈によく馴染み、そのせいで君を警戒する者は誰一人としていない。
酸っぱいものに甘いもの、苦いもの。食材も調理法も様々な料理のうち、とりわけ君の心を捉えたのは、イギリス経由で持ち込まれたスパイシーなカレーと、痺れるような辛さ、「麻辣」を特徴とする四川料理。それらは絶望的な辛党である君を満足させるに足りるものだった。
「なあ兄ちゃん、このあたしにガラクタを売り付けて儲けた金で食う飯は美味いか?」
「この飯はいつだって美味いよ。でもあんたなんて知らないし、ガラクタを売った覚えもない」
一通りの調査を終えた君が声のする方へ目を向けると、筋肉質な体のあちこちに包帯を巻いた女が大きな袋を抱えた男と言い争っている。風体や口ぶりすると女は冒険者であり、商人の男から買った「竜漿兵器」の役立たずぶりにクレームを言いに来たようだ。
(もしかしてこれが例の偽造品ってやつかな?)
君が事件のことを思い出し、二人に詳しい話を聞こうと腰を上げたその時である。狩りで培った鋭い感覚野生の勘が、物陰からこちらを見つめる人影を捉える。
君と目が合うや急いで逃げてしまうが、驚いたことにその姿は冒険者に詰め寄られている男と全くの同じであった。ただ一つ、口元に邪悪な笑みを浮かべていたことを除けば、だが。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第2章 集団戦 『ハーピー』

POW
ハンティング・ザ・スカイ
【上空からの襲撃】の体勢を取る。移動力と戦闘力を3分の1にする事で、肉眼以外のあらゆる探知を無効にする。嗅覚・聴覚・カメラ・魔術等、あらゆる探知が通用しない。
【上空からの襲撃】の体勢を取る。移動力と戦闘力を3分の1にする事で、肉眼以外のあらゆる探知を無効にする。嗅覚・聴覚・カメラ・魔術等、あらゆる探知が通用しない。
SPD
スカイレイダー
【脚の爪】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
【脚の爪】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
WIZ
シャウトバレット
【音波】属性の弾丸を射出する。着弾地点から半径レベルm内の敵には【轟音】による通常の2倍ダメージを与え、味方には【士気高揚】による戦闘力強化を与える。
【音波】属性の弾丸を射出する。着弾地点から半径レベルm内の敵には【轟音】による通常の2倍ダメージを与え、味方には【士気高揚】による戦闘力強化を与える。
√ドラゴンファンタジー 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●『偽造竜漿兵器』工場
九龍城砦の奥深く、天上界の遺産が産み出した疑似世界『ダンジョン』を星詠みから聞いた経路通りに進んで行くと、やがて高い天井を持つ広い部屋へ到着する。
木製のパネルが敷き詰められた床の上には複数の長机が並んでおり、机上には彫刻や塗装に使う道具と作りかけの武器が置かれ、机脇にある大きな箱には素材と、おそらくは偽物の竜漿兵器が入っている。
この部屋が『偽造竜漿兵器』工場、その作業場であることを君が確信したその時、奥にある大きな扉が開いて、上半身が女性、下半身が猛禽類、腕そのものが翼になったモンスター、『ハーピー』達がお喋りをしながら現れる。
「姉さん、武器作りなんてもう嫌! キラキラしたアクセサリーとか作りたい!」
「そうは言っても人間に化けてダンジョンの外で商品を売り捌くのは『ジェヴォーダン』にしかできないんだから、ウチらはあの人に頼まれた物を作るしかないじゃないか」
「それはわかるけど飽きたものは飽きたの! ……ちょ、ちょっと待って、あれ冒険者?」
「丁度良い。偽造品のラインナップを増やしたいって思ってたんだ。やつらの装備を奪って見本にしよう」
「姉さんはどうしてそんなに真面目なの!? でも冒険者をぶっ殺すのは大賛成!!」
この工場で働く職人であろう『ハーピー』の姉妹は君への殺意をあらわにすると、翼を大きく広げて一斉に襲いかかってくるのだった。
「行こう! 妹達よ!」
2体のハーピーのうち姉と呼ばれた個体が鬨の声を上げると、作業場奥の扉からさらに複数のハーピーが勢いよく飛び出してくる。
「お姉様、楽しい時間は皆でシェアするものですよ」
「そうだぞ、姉貴! 俺等も混ぜろ!」
かくして√能力者とハーピー姉妹の戦いの火蓋が切られる。

アドリブ連携歓迎
量子力学の時間だオラぁ!!というわけで戦闘から観千流ちゃんの参戦ですよ
さて敵は空飛ぶそうですが問題なし
量子干渉弾頭で弾幕を貼り相手の周辺の空気を固めて不可視にして頑丈な檻の中に閉じ込めう移動を封じる援護射撃
相手は音波……つまり波の性質よる攻撃を行うようですが固定化された空気は振動を行わないので外に音を漏らす心配はありません、よって轟音によるダメージは無効!こちらは√能力で檻の外から安全に攻撃を行いましょう
え、自分の攻撃も檻に阻まれるんじゃないかって?そこはご安心ください
この攻撃は指定地点から発生します、つまり檻の内側だけをピンポイントで攻撃する事も可能ですよ多分
ハーピーの中で最も小柄な個体が作業場奥の扉の前から動かずに叫ぶ。
「一匹貰うぜ、姉貴!」
息を大きく吸い込むハーピーに対し、キラキラした瞳で狙いを定めるのは真心・観千流(真心家長女にして生態型情報移民船壱番艦・h00289)。彼女の両手に握られた2丁の銃から嵐の如く弾丸が飛び出し、一瞬遅れてハーピーが『シャウトバレット』を繰り出す。
「バラバラになっちまえっ!!」
ハーピーの叫びは眼前に迫る多数の銃弾を跳ね飛ばすのに十分な威力を持っており、事実、観千流の放った多くの弾丸はその全てがハーピーの周囲で弾け飛ぶ。彼女は勝利を確信するが、獲物を打ち据えるはずの轟音は意外にも彼女自身の鼻先で炸裂する。異常な点はそれだけではない。獲物の足音や衣擦れの音に姉達の羽ばたく音、戦場から聞こえるはずの音の一切が失われているのだ。ハーピーの全身に悪寒が走る。
口数多くマイペースな観千流による解説を挟むまでもなく、それは彼女の仕業である。観千流が放った銃弾『量子干渉弾頭』の弾幕はハーピーの周囲の空気を固定、音の伝達を遮ることで『シャウトバレット』の到達を防いだのである。
(俺のシャウトをシャットアウト!?)
空気の壁に捕らわれたハーピーは脱出しようと暴れまわるが、観千流としては籠から鳥が逃げるのを待つつもりはない。『|神の見えざる手《イミテイト・エデン》』の300もの見えない光線に貫かれ、ハーピーの全身を包む羽毛のあちこちが燃え上がる。その断末魔は姉達に届くことなく、不可視の壁の中で反響するだけであった。
🔵🔵🔵 大成功

ハーピーか。初めて狩るタイプの獲物だ。
手羽先は身が少なそうだけど…腿はしっかりしてそうだね。
胴体は人型だからさすがに…だけどあの尻尾みたいのは何だろう?
堅そうだけど割れば身とか出てくるのかな…?
…とか暢気なこと考えながら(あるいは無意識に声に出しながら)も
《ジャンプ》や《逃げ足》を駆使してのスピード重視の機動戦。
(その際、商品入った木箱とか気づかず踏み壊してるかもしれない)
攻撃タイミングは《野生の感》や【獣の眼光】で隙を見つけ次第
翼や頭部などを《スナイパー》《部位破壊》で狙い撃つ。
天井付近でホバリングをするハーピーが羽を打ち下ろす度、起きる風が十枯嵐・立花(白銀の|猟狼《ハウンドウルフ》・h02130)の鼻腔に届けるのはダンジョンの淀んだ空気とハーピーの尾脂腺から分泌される脂の独特な臭い。立花とハーピーの目が合うや臭いと羽の音は掻き消え、ハーピーの襲撃態勢が整ったことを狼神の子にして若きハンターへと伝える。
自身を目掛けて急降下するハーピーに対して、立花はフットワークを活かして逃げ回りながらハーピーの姿を燃え上がる右目で視界に捉え続ける。初めて対峙する獲物を観察するのは『|獣の眼光《ワイルズディテクト》』により反撃の機会を伺う以外にも理由がある。
ハーピーの強靭な鉤爪が立花の鼻先をかすめる。
(手羽先は身が少なそうだけど…腿はしっかりしてそうだね)
鋭い刃を備えた尾が床に穴を穿つ。
(あの尻尾、堅そうだけど割れば身とか出てくるのかな…?)
狩りの報酬について思いを巡らせながらハーピーの隙を探していると、ついにその瞬間がやってくる。
立花の足が床に置かれた箱にぶつかり、その中に入っていた偽造品が大きな音を立てて散らばる。
「その隙、見つけたよ…!」
自身の作品を足蹴にされて全身を強張らせるハーピーの眉間を、旧式軍用小銃「熊殺し七丁念仏」から放たれた弾丸が撃ち抜く。
どうして頭部を狙ったのか? そう質問されたなら、彼女は「頭に隙があったから」という以外にこう答えるであろう。
「人型の部位は流石に…」
並外れた悪食の立花であっても、そういう趣味は持ち合わせていないのだ。
🔵🔵🔵 大成功

私はダーティ!ダーティ・ゲイズコレクター!
不快な悪事の邪魔をする汚職警官ダーティとは私のことです!
本日2度目です!覚えていただけましたか!?
それはそうと偽物を作るだけに飽き足らず
口封じをしようだなんて超悪ですね!
むむむ…すごく腹が立ってきましたよ!
義憤ではない謎の怒りが!
(嫉妬にかられた後ハーピーたちの視線を{ゲイズパワー}に変換すると『エネルギーバリア』に使って敵の弾丸と音波攻撃を防ぎつつ√能力の攻撃範囲まで接近する)
ここは殺し間!逃げ場などないと思ってください!
では…公務執行妨害および私見極悪の罪にて現場射殺と相成り〼!
(【穢れた屠殺場】発動)
視線に込められた感情が好意であれ敵意であれ、見られれば見られる程に強くなる。それがダーティ・ゲイズコレクター(Look at me・h00394)の特性である。
彼女はハーピーから向けられる殺意の視線を自らの力に変えた後にバリアとして出力、彼女を葬らんと飛来するハーピーの見えない弾丸を防ぎながら、一歩、また一歩と床を踏みしめてハーピーへ近付いていく足取りには力強さと共に怒りが宿っており、その表情の険しさは警官として罪なき市民に接する時の彼女からは程遠いものである。彼女の怒りはハーピーが偽物を作るだけに飽き足らず目撃者の口を封じようとしていることに起因するものではあったが、その属性は義憤ではなく嫉妬である。なんと彼女はハーピーに嫉妬しているのだ。
自分の前で悪事を働く相手が羨ましく、そして許せない。なぜ彼女がそう思うのかは彼女自身にもわからないのだが、心の底から沸き起こる衝動に従わないというルールは彼女には存在しないし、仮にあったとしても悪に憧れる彼女なら躊躇なくルールを破るだろう。
ダーティが憤怒に駆られる時、そこは『|穢れた屠殺場《ダーティ・キルゾーン》』と化す。
リボルバーの銃口から飛び出した二発の弾丸のうち一発はハーピーの翼を、もう一発は白い胸元を撃ち抜く。悲鳴を上げながら作業台へと墜落したハーピーがそこに並べられた工具を引っくり返すと、血しぶきと共に羽毛が飛び散り、はらはらと舞い落ちる。
公務執行妨害および私見極悪の罪に対して下された罰は現場射殺という無慈悲なものであった。
🔵🔵🔵 大成功

わー!一瞬穏便に終わらせられるかもって思ったけどそんなわけないよね!
▼行動
空を飛ぶ相手みたいだから、【視力】【見切り】で常に動向に気を配っておくよ。
できれば飛ばれる前に押し切りたいから√【 不完全な竜は急に止まれない】で一気に距離を詰めて攻撃。
最初に狙うはお姉ちゃんの方で。竜漿兵器に興味あるみたいだし…?
見てほらあたしの武器、かっこいいでしょー!
倒しきれればよし、届かないところに飛ばれたり隠れたりされた場合
√【不完全な竜はご近所迷惑】を作業場の作りかけの偽造品に向けて叩き込むね。どーんっ!!
お姉ちゃんの方は真面目みたいだから…多少の揺さぶりにはなるっ!よねっ!
降りてこないなら、作業机や偽造品の残骸を【怪力】【吹き飛ばし】でぶっ飛ばして攻撃!離れてると作業場に被害が行くと思わせてみるね。
ねえねえ!こんなに脆い武器じゃあ竜と戦えないよー!?
防御面は相手の攻撃に合わせて【武器受け】【見切り】【ジャストガード】で弾くね
連携・アドリブ歓迎!
先輩たちの迷惑にならないよう気を付けるよー!
「見てほらあたしの武器、かっこいいでしょー?」
姉と呼ばれたハーピーが竜漿兵器を欲しているのなら、自分の武器を見せれば相手の気を引けるのでは? そう考えたシアニ・レンツィ(|不完全な竜人《フォルスドラゴン・プロトコル》・h02503)が巨大な槌型竜漿兵器『シアニハンマー』をハーピーの目に留まるように構えると、飛び立とうとしていたハーピーはシアニの狙い通りに一瞬動きを止める。
思惑通りの結果に喜ぶ間もなくシアニは間合いを詰める。彼女の両脚は空色に輝く|不完全な竜《フォルスドラゴン》のものに変わっており、不完全とは言えドラゴンの脚力から生み出される速度とハンマーの大質量はダンジョンに棲息する多くの怪物にとって脅威的だ。
シアニはハーピーの眼前で大きく跳躍し、頭部目掛けてハンマーを打ち下ろす。
(こいつ、速い!)
元来頭上から攻撃される機会に乏しいことに加え、シアニの携える武器の重厚さから相手の機動力を見誤ったハーピーは、ひどく焦りながらも自身が持つ中で最も硬い部位を用いて攻撃の軌道を反らそうとする。外殻で強化された尾を回し蹴りのようにしてハンマーの頭へぶつけると、先端に備わった鋭い刃が激しい火花を散らし、次の瞬間には尾を包む装甲もろとも砕け散る。
先程まで装飾付きの装甲に覆われていた尾を包んでいるのは今や柔らかな羽毛だけであり、裂けた皮膚からは血が滲んでいる。尾を犠牲にしながらも何とか空中へと逃れたハーピーはシアニへ語りかける。
「私の作品を壊すだなんて、これを作るのにどれほどの手間を掛けたと思っているんだ」
自らの纏う光り輝く品々が彼女達自身によるハンドメイドであることや、デザインや素材集め、加工といった作業における苦労を語りながら、ハーピーは体力が回復するまでの時間稼ぎを図るが、高所から一方的に放たれる言葉は皮肉にもそれを聞くシアニに対して閃きを与える。
突如として作業場に置かれた机のひとつが真っ二つに圧し折られ、置かれたままであった作りかけの偽造品が粉砕されて宙を舞う。やったのは他でもない、シアニである。
「モノ作りの苦労について話したばかりじゃないか!」
シアニはその言葉を無視して別の机の傍らに立つと、再びハンマーを振り上げる。偽造品もまた苦労して手掛けた作品であることには違いなく、その破壊はハーピーにとってこれ以上ない挑発である。
「やめろ!!」
ハーピーが怒声と共に急降下する。一方、シアニはこの時を待っていたとばかりにハンマーを握る両腕を竜化させ、作業机へと振り下ろす。
竜の膂力を乗せた打撃『|不完全な竜はご近所迷惑《フォルス・ドラグスタンプバースト》』の被害を受けるのは作業机と偽造品だけではない。槌と石造りの床の衝突で発生する轟音、衝撃波は、ハーピーから平衡感覚を始めとする全感覚を奪うのだ。
「ジェ、『ジェヴォーダン』、こいつら強いぞ。気を付け……ギャッ!」
シアニが身体の制御を失い墜落したハーピーの長姉に対して止めの一撃を放ったのは、他の√能力者がハーピーの妹達を仕留め終えたのと同じ頃。
かくしてハーピー姉妹との戦いは終わり、竜漿兵器偽造工場の作業場にしばしの静寂が訪れるのだった。
🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『リンドヴルム『ジェヴォーダン』』

POW
ミステリアス・ジェヴォーダン
10÷レベル秒念じると好きな姿に変身でき、今より小さくなると回避・隠密・機動力、大きくなると命中・威力・驚かせ力が上昇する。ちなみに【大狼】【飛竜】【過去の英雄】への変身が得意。
10÷レベル秒念じると好きな姿に変身でき、今より小さくなると回避・隠密・機動力、大きくなると命中・威力・驚かせ力が上昇する。ちなみに【大狼】【飛竜】【過去の英雄】への変身が得意。
SPD
ジェヴォーダンの烙印
【獣型モンスターの群れ】を召喚し、攻撃技「【ビーストファング(噛みつき)】」か回復技「【ヒーリングムーン(癒やしの月光)】」、あるいは「敵との融合」を指示できる。融合された敵はダメージの代わりに行動力が低下し、0になると[獣型モンスターの群れ]と共に消滅死亡する。
【獣型モンスターの群れ】を召喚し、攻撃技「【ビーストファング(噛みつき)】」か回復技「【ヒーリングムーン(癒やしの月光)】」、あるいは「敵との融合」を指示できる。融合された敵はダメージの代わりに行動力が低下し、0になると[獣型モンスターの群れ]と共に消滅死亡する。
WIZ
偽竜創造
自身が受けた武器や√能力を複製した【真竜を模した部位】を創造する。これは通常の行動とは別に使用でき、1回発動すると壊れる。
自身が受けた武器や√能力を複製した【真竜を模した部位】を創造する。これは通常の行動とは別に使用でき、1回発動すると壊れる。
√ドラゴンファンタジー 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ハーピー姉妹との戦いを制した君達の頭上、作業場の天井から落ち着いた調子の声が聞こえてくる。
「ハーピーの煌びやかな装飾品を見たかい? 全て彼女達のお手製で、その器用さは竜漿兵器の偽物作りにも役立ってたってわけ。そして出来上がった品を人間どもに売り捌くのが俺の仕事さ」
天井からぶら下がっている照明器具のひとつからぶわっと煙が吹き出し、その中から大きな袋を背負った人間の商人が現れ、音もなく床に舞い降りる。商人はハーピーの屍や偽造竜漿兵器の破片に視線を向けてしばらく沈黙した後、いきなり肩を震わせて笑い始める。
「ごめん、ちょっと思い出し笑いをしちゃってね。……俺が適当な商人の姿に化けて偽物を売る時、営業スマイルなんかで表情を偽る必要はなかったんだ。それが偽造品であることを疑いもせずに喜んで金を払う冒険者や、偽物の被害に遭った冒険者と俺が化ける際にモデルにした本物の商人との言い争いを見れば、自然と笑顔になるってものさ」
そう話しながらケラケラと笑う様子からはハーピーが倒されたことに対する悲しみや怒りは一切感じられない。それも当然である。なにしろ照明器具に変身してハーピーがやられるのをずっと見ていたのだから。
商人は一層大きなら笑い声を上げて煙に包まれると、異形のモンスターへと姿を変える。その身体は部分的にドラゴンのように見え、また別の部位は人間のそれに、顔には仮面を付けているように見える。
「そうだ、自己紹介がまだだった。俺はリンドブルム『ジェヴォーダン』。ここまで来たってことは知ってるんだろうけど今度のことは全て俺の仕業だ」
『ジェヴォーダン』と名乗る怪物は荒れ果てた作業場をぐるりと見渡してため息をつく。
「これからアジトを変えて次の計画を練らなくちゃいけないが……その前に君達にプレゼントがある。あの世への片道チケットだ。これだけは本物だから安心して受け取ってくれ」
竜漿兵器偽造事件の首謀者は自信に溢れた態度で言い放つや、君達√能力者を倒すための切り札となる姿へと変え始めるのであった。

アドリブ連携歓迎
ふむ、変身に自信があると……閃いた
姿が変わってるということは一度自分を構成している素材を分解して再構成しているということ
相手が√能力を使用したらこちらもカウンターで√能力を発動!相手を解析して情報収集したら量子干渉弾頭をドーン!
変身のために分かれた量子をさらに分解しつつ量子操作マテリアルで滅茶苦茶に再結合してやりましょう!再構成事態は相手が行ってる事なので消費量はお得!
今の貴方はパズルのピースを数個ぶん投げた上でハマらないピースを無理矢理はめ込んだ状態……つまりは穴だらけの歪みまくりで崩壊寸前というわけです!
そこにレイン砲台からのレーザー射撃を撃ち込んで致命打を狙いましょう!

私はダーティ!ダーティ・ゲイズコレクター!
不快な悪事の邪魔をする汚職警官ダーティとは私のことです!
ご存じですよね?
だってハーピーさんたちがやられるのをずっと見ていたんですから!
なんて悪!不快すぎます!
ですが貴方の悪事も今日ここまで!
私の悪の礎にしてくれましょう!
(UC【穢れた制圧】を発動し{ダーティリボルバー}の弾幕を張ることでダーティへ視線を向けさせ、その視線を{ゲイズパワー}に変換し鎖で捕縛、止めに{ダーティガントレット}で『衝撃波』を纏ったパンチを叩き込む)
公務執行妨害および私見暴悪の罪にて武力制圧と相成り〼!

へー変身するのか。
そういえば大きな飛竜とかにも変身できるときいたよ。
リクエストできる?
無論、酔狂でそんなリクエストをするわけではない。
大きくなってくれたほうが狙う的が大きくなるうえ
機動力でかく乱しやすくなるだろうし、隙も狙いやすくなるだろう
という考えのもとだ
(…というのは建前で単に獲物が大きいほうが燃えるというのが理由の8割だろう)
という感じで巨大化を誘い死角に回り込むような立ち回りで
《逃げ足》と【獣の眼光】で機動戦をしつつ隙を伺い、
目や口腔内など柔らかそうな部位を《スナイパー》《部位狙い》を
使用し、クリティカルな一撃を狙う。
逆鱗はあとで剥ぎたいので狙うのはやめとこう。

ほんの少し過ごしただけだけどさ、九龍城塞はいいところだったよ。
装飾品を売るだけならきっと色んな人が喜んでくれたと思う…から!とっても残念!
誰かを騙して陥れてそれを笑う気持ちはちょっとあたしにはわかんないな!
悪い竜は、びたーんだよ!
▼行動
連携・アドリブ歓迎!
下記方針をベースに先輩たちに迷惑が掛からないように動くよ!
√【不完全な竜は急に止まれない】で脚を竜化!
マントを深く被って【迷彩】を活かしながら高速で動き回って敵の視線を散らしながらちまちま攻撃を加えていくね。
痺れを切らして大振りの攻撃が来たら【ジャンプ】でかわして頭に一発叩き込んじゃうよ!
ハンマーの届かない場所に飛ばれた時はそこら辺にいっぱいある残骸を【怪力】+ハンマーで【吹き飛ばし】て散弾攻撃!
敵が姿を変えたり仲間を召喚してきたら√【不完全な竜はご近所迷惑】で広範囲をまとめてどーん!
轟音と衝撃で怯んでる所を一気に畳み掛けるよー!
防御は相手の動きを【見切り】ながら【ジャストガード】で弾くね。
天井のランプから商人へ、商人から真の姿へと変身した際にやったのと同じように全身から煙を吹き出すジェヴォーダンに対して、ダーティ・ゲイズコレクター(Look at me・h00394)は立て続けに鉛玉を撃ち込む。
「私はダーティ! ダーティ・ゲイズコレクター! 不快な悪事の邪魔をする汚職警官ダーティとは私のことです! ご存じですよね? だってハーピーさん達がやられるのをずっと見ていたんですから!」
「そうさ、よくわかっている。でもお前はわかっていないようだね。姿を見せずに逃げることもできた俺がこうして出てきた、その意味を」
煙の中から現れたのは巨大な角を持つ鹿の獣人。鹿そのものの頭部には人間に似た形状の上半身が繋がっており、さらにそれは馬ほどもある大きなの鹿の胴体に繋がっている。獣人階梯3の鹿獣人となったジェヴォーダンが踏みしめる作業場の床には、先程の銃撃によるものであろう出血の跡が確かに残っているが、彼の全身を包む毛皮には傷一つなく綺麗な鹿の子模様があるのみである。
「どれほどの深手を負わされようとこの通り。変身能力がある限り俺は不滅、無敵なのさ!」
無傷の姿へ変身することによって負傷を回復したジェヴォーダンは雄叫びを上げると頭部の角を振りかざしてダーティへ襲いかかろうとするが、それは十枯嵐・立花(白銀の|猟狼《ハウンドウルフ》・h02130)とシアニ・レンツィ(|不完全な竜人《フォルスドラゴン・プロトコル》・h02503)によって阻まれる。立花によって前足を狙撃されて体勢を崩したところへシアニの追撃を受けたジェヴォーダンは突進の勢いそのままに転がり、出荷前の偽造竜漿兵器にぶつかって派手な音を立てる。
「あんなのずるいよ。ねえ、先輩?」
「無敵なわけない。血が出るなら殺せる」
シアニからの問いかけに対して立花はクールに、しかし力強く答えると、戦場全体に注意を配りながらダーティと共に手早くリロードを終わらせる。
「私も同感です。そこで皆さんにお願いがあります」
口を開いたのは真心・観千流(真心家長女にして生態型情報移民船壱番艦・h00289)。彼女の視線の先にはジェヴォーダンの血痕があり、それは今や機能だけでなく見た目もガラクタとなった偽造品の山へと続いている。ガラクタに頭を突っ込んだまま新たな変身を始める敵を見ながら、観千流は自身がこれから敵が持つ変身能力の分析に注力することを告げ、そのために敵にできるだけ多くの傷を負わせ、多くの変身をさせるよう立花、シアニ、ダーティへ依頼する。
「|飛竜《リンドヴルム》狩りと聞いていたのに、鹿を狩って終わりとは思わなかったよ」
観千流が敵の変身能力を解析するべく『|多次元移動用ソナー投射《ルート・アナライズ》』を開始するのに合わせ、立花がわざとらしく呟くと、強い風がガラクタの山を床に横たわっていた4羽のハーピーの屍もろとも吹き飛ばし、それと同時に大きな影が木片や金属片、羽毛を巻き込みながら舞い上がる。
「リクエストに応えてやろう。俺は優しいからね」
一対の翼と一対の脚、そして長い尾を持つ飛竜を見上げ、狙い通りの状況に立花は内心ほくそ笑みながらも静かに闘志を燃やす。
身体が大きければそれだけ死角は増える。自由の効く長い首の先に目を持ち、空中から地上を見下ろせる飛竜であっても、同時に全ての方向を見られるわけではない。
「これだけ大きければどこを撃っても当たりますね」
ダーティは立花の移動と給弾をリボルバーによって援護し、飛竜の目を地上へと縛り付け、また立花は敵に狙いを絞らせないように戦場を駆け回りながら、目や口といった柔らかく重要な器官の集まる頭部を|的確《クリティカル》に撃ち抜くことで、味方全員の動きをフォローする。
立花の燃える右目『|獣の眼光《ワイルズディテクト》』は敵、味方を問わず視界内のあらゆる『隙』を見逃さない。この√能力に長い射程を持つ小銃、そして立花の高い射撃技術があわされば、まさに鬼に金棒。単独で行う狩りはもちろんのこと、集団での戦いにおいてこれほど頼りになるものはないだろう。
「おい、青いのはどこへ行った? ……わかったぞ。上か!」
飛竜が鎌首をもたげて天井を見上げると、そこには自身の顔面を目掛けて照明の中から飛び降りてくるシアニの姿がある。ダーティと立花が注意を引いている間に、『|不完全な竜は急に止まれない《フォルス・ドラグアサルト》』によって得た脚力を使って壁を蹴り、天井へと駆け上っていたシアニは|襲撃《アサルト》を敢行する。
「食べやすいように口の近くまで来てくれたのか? ……馬鹿な!」
翼を持たぬシアニが空中での戦いを挑むなど本来であれば自殺行為である。しかしシアニを飲み込もうとした飛竜は牙を備えた口を大きく開けたまま動きを止める。彼が針のように縮まった瞳孔で目にしたもの。それは空中で2つに別れるシアニの姿。シアニは自身の身体と同じ空色に輝くマントを咄嗟に脱ぎ捨て、囮としたのである。
ハンマーによる強打を受け、リンドヴルムは力なく落下する。墜落の巻き添えを食らわないよう一同は敵から距離を取る。
「やったね、先輩!」
「でも犯人はまだやる気みたいです!」
血溜まりの中で再び煙を吐き出し、ジェヴォーダンは漆黒の鎧をまとった騎士へと姿を変える。
「でかけりゃいいってものじゃないな。それはわかった。今度こそ本番だ。堕落騎士『ロード・マグナス』の剣技をお見せしよう」
彼は高らかに言い放つと、これまた漆黒の大剣を構えて悠然と歩き始める、ダーティと立花はジェヴォーダンの足止めをするべく射撃を行うが、銃弾は重厚ながらも滑らかな曲線を帯びた鎧によって弾かれてしまう。
「もう、それは効かないぜ。まずはドラゴンモドキ。目障りなお前から始末してやる」
兜越しに聞こえてくる声からは先程までの明るさは感じられず、低いトーンには並々ならぬ敵愾心、あるいは嫉妬心が宿っているようである。
フットワークを活かしてヒットアンドアウェイを繰り返すシアニに対して、黒騎士は大剣や、時には篭手でハンマーを受け止めて致命打を回避する。重厚な鎧と卓越した剣技を得て今や難攻不落の要塞と化したジェヴォーダンへダーティは尚も銃撃を続ける。
「聞こえなかったのか。それは効かないと言ったはずだ」
「コッチヲミタナ?」
ジェヴォーダンがシアニから目を逸らし、ダーティを睨みつけた時である。ダーティーの背後から何本もの太い鎖が放たれ、黒衣の騎士の四肢や胴体、剣に巻き付いてぎりぎりと締め上げ始める。
「これなら足止め程度にはなるかもな。だが無駄なことだ」
ジェヴォーダンは全身を恐るべき力で捕らえられながらも、脇構えから剣を頭上に持ち上げた上段へと構えを移行していく。彼が渾身の一撃でダーティもろとも鎖を断ち切ろうと魔剣の切っ先を天に掲げるのに合わせて、ダーティはがら空きになった懐へ猛然と飛び込む。
相手に防御を許さない状態から放たれたガントレットによる強打は、漆黒のプレートメイルを貫通する衝撃波となって内部の肉体を激しく打ち据える。
「公務執行妨害および私見暴悪の罪にて武力制圧と相成り〼!」
『|穢れた制圧《ダーティ・サプレス》』を受け崩れ落ちる騎士へ向けて、ダーティは高らかに宣言する。ジェヴォーダンの甲冑の隙間という隙間からどくどくと流れ出す血の量は、彼が負った傷の大きさを物語っている。
「まだ、まだ終わっちゃいない。今度こそ、今度こそ本番だ。これだけは使いたくなかったが……見るが良い! 『フェイクドラゴンプロトコル・イグニッション』!」
怒りに満ちた叫び声と共に本日何度目かの煙に包まれるジェヴォーダンに対して2発の銃弾が放たれる。その軌跡を逆に辿った先には今の今まで沈黙を保っていた観千流が立っており、顔には自信あり気な表情を浮かべている。
四肢とは別に一対の翼を持ち、飛竜よりもさらに一回り大きな巨体を誇る『|真竜《トゥルードラゴン》』、その紛い物への変身を終えたはずのジェヴォーダンは全身に走る苦痛にたまらずうめき声を上げる。
無敵のドラゴンとなるはずであった彼の翼の皮膜には幾つもの大きな穴が空いており、本来であれば全身を鎧のように覆っていたであろう鱗は無惨にも剥落し、筋繊維や骨、腹部に至っては臓器までもが露出している。|竜の偽物《フェイクドラゴン》ですらない、|竜の屍《ドラゴンゾンビ》とでも呼ぶべき姿である。
「ガハッ……!! な、何をした?」
ドラゴンゾンビは混乱に陥りながら、口内に水を注ぎ込まれながら話しているような不快な雑音が混じった声を絞り出すようにして発する。
観千流が√能力によって解析したジェヴォーダンの変身プロセスは、肉体を一回分解した後に再構成を行うという実に驚異的なものであった。しかし観千流はこれを逆手に取ることで標的の身体組成を無作為にかき乱すことに成功したのだ。彼女は変身のために繋がりを解いたジェヴォーダンの肉体をさらに『分解』、無理矢理に『結合』するという2つの命令をそれぞれ『量子干渉弾頭』にプログラムして撃ち込んだのである。
「今の貴方はパズルのピースを数個ぶん投げた上でハマらないピースを無理矢理はめ込んだ状態……つまりは穴だらけの歪みまくりで崩壊寸前というわけです!」
ならばと再度の変身によって傷を塞ごうとするジェヴォーダンであるが、それを実行するための魔力は彼の身体に残っていない。
「クソッ、駄目だ! 魔力を、竜漿を失いすぎた!」
√能力者達の波状攻撃はジェヴォーダンに傷を負わせる度、出血という形で変身に必要な魔力を彼から奪い取っていたのだ。
「皆、今です!」
観千流のレイン砲台から放たれる閃光、ダーティのガントレットによる打撃、立花の正確無比な弾丸が、せめて彼女達を道連れにしようと暴れ回るドラゴンゾンビの巨体を穿ち、その生命力を削り取っていく。
「モンスターを統べる者、『|王権執行者《レガリアグレイド》』である俺がたった4人にやられるだと? そうは行くか! この部屋もろとも焼き尽くしてやる!」
満身創痍の屍竜の口内に小さな火が灯り、灼熱の息が今まさに吐き出されようとしたその刹那、シアニは蹴り足が石造りの床を抉る程の勢いで跳躍し、竜の下顎を渾身の力で殴りつける。
「悪い竜はびたーんだよ!」
『|不完全な竜はご近所迷惑《フォルス・ドラグスタンプバースト》』の一撃によって出口を塞がれたファイアブレスはたちまち竜の体内へと逆流する。
巨体を作業場に横たえ動かなくなったジェヴォーダンを眺め、シアニは複雑な思いに駆られる。
ほんの少し過ごしただけであるが、シアニにとって九龍城砦は良いところであった。冒険王国の住民は、ハーピーやジェヴォーダンが誰かを騙して陥れてそれを笑うのではなく普通に装飾品を売っていたのであれば、喜んで受け入れてくれたに違いない。
そんなシアニの心中を悟ったのであろう観千流とダーティがシアニに駆け寄るのを横目に見ながら、立花はジェヴォーダンから隙が消え去った、すなわち獲物の命が尽きたことを確認し、全員に戦いの終わりを告げる。
●エンディング
全員の無事を確認した君達は各々帰る準備を始める。
「ハーピーの尻尾の中ってこうなってたんだ。食べれるのかな? ニセドラゴンの逆鱗も忘れずに持っていこう」
モンスターの死骸から料理等の素材として使えそうな部位、あるいは強敵を倒したトロフィーを狩りの報酬として剥ぎ取る立花。そのナイフ捌きは実に手慣れたものである。
「私はダーティ! ダーティ・ゲイズコレクター! 不快な悪事の証拠品を押収完了しました!」
事件現場の調査を行っていたダーティが、作業場に隣接する倉庫から大きな箱を抱えて姿を表す。箱の中には偽造品を作る際のコピー元にしたであろう本物の竜漿兵器が収められている。
「ジェヴォーダンの最期の言葉、『|王権執行者《レガリアグレイド》』というのは少し気になるものの、ひとまず片付きましたね。2人はあの通りですがシアニさんはこれからどうするんですか?」
観千流の質問に対してシアニは少し思案した後、『九龍城砦』で仲良くなった子供達から冒険王国における暮らしがどういったものか聞く中で、冒険を終えた冒険者がすることについて教えてもらったのを思い出す。
「パーティー……そうだよ先輩、皆でパーティーしよう!」
冒険の成功とダンジョンからの生還を祝しての宴。それが『九龍城砦』に限らず冒険王国に集まる多くの冒険者の習わしである。
「ナイスアイデアです。シアニさん、じゃなくてシアニちゃん!!」
真面目モードを解除した観千流がハイテンションに応じると、戦利品をカバンに入るだけ詰め込んだ立花が振り向く。
「それなら良い店を知ってるよ。私、詳しいんだよね」
屋台飯ならばっちり調査済み。それに今なら新鮮な食材だって持っている。
「勝利の凱旋ですね! ワクワクします!」
元より注目を浴びるのが大好きなダーティである。パーティーと聞いてじっとしていられるわけもなく、証拠品の入った箱をがしゃがしゃと揺らしながら猛然と走り出す。
ダーティ・ゲイズコレクターは今年で38歳。人生の大先輩のはしゃぐ姿はシアニと観千流を大いに笑わせ、そして立花の口元をも緩ませるのであった。
飛竜を名乗る狡猾な変身の達人は4人の√能力者によって退治され、冒険王国『九龍城砦』を騒がせた竜漿兵器偽造事件も幕を閉じた。不滅に近い蘇生能力を持つ存在『|王権執行者《レガリアグレイド》』であるリンドヴルム『ジェヴォーダン』は、いずれどこかのダンジョンで蘇りを果たし、この世界で暮らす人々へ害を為すことは間違いないだろう。しかし、それはまだ先の話である。
今はただ√ドラゴンファンタジーの流儀にならい、君達の帰りを待つ東洋の魔窟『九龍城砦』の住人と共に冒険の成功を祝おうではないか。
おめでとう!
そして、お疲れ様!
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功