シナリオ

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天使に愛の歌を

#√汎神解剖機関 #天使化事変 #羅紗の魔術塔 #プレイング受付中

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●決意と別れ
 黒い肌。大きな翼。人間にあるまじき金属質の臓器。
 変わり果てた我が子の姿を目にしても、子の無事を願う母の心は変わらなかった。
 しかし、この子はもうこの村には居られない。この異形と化した姿を村人は拒絶するだろうし、小さく狭いコミュニティの中では隠し通すことも難しいだろう。
 何より、今、この村は危機に陥っている。正真正銘の化け物に襲われているのだ。どことなく我が子に似た姿の、しかし理性の欠片もなく暴れ回る化け物に。
 村の出口まで何とかやってきたが、このままでは化け物に追いつかれてしまう。民家の物陰に隠れて周囲を窺いながら、母は腹を括った。我が子――セレナだけでも逃げられるよう、どうにかしなければ。
「セレナ、お願い。森に住むジャックおじさんに危険を知らせてあげて」
 大人用のマントと帽子を身につけさせ異形の姿を隠したセレナに向き合い、母は声を潜めて言った。
「でも、おかあさんは? みんなは?」
 己に差し迫る危機より母や村人を心配する娘へ、母は柔らかく笑いかける。分かっていた。この子は優しく、思いやりに満ちた子なのだ。――だからこそ、母は嘘を吐いた。
「お母さんは村の人の避難を手伝うわ。それより、何も知らないジャックおじさんが心配よ。きっと後でお母さんも行くから、あのひとを助けてあげて」
 母の言葉に、セレナは口を引き結んでしっかりと頷いた。使命感を宿した瞳の、何と頼もしいことか。
 周囲に誰の姿も見えないことを確認すると、母はセレナの背を押した。
 走り出した娘の後ろ姿が森の入り口へ消えていくのを見届け、母は村の出口にバリケードを築き始める。この先へは、何人たりとも通さない。――たとえこの命と引き換えになろうとも、あの子の元へは行かせない。
 民家に残されていた猟銃を手にして、母はスコープを覗き込む。その照準は、村の外へ出ようとする全ての者に定められた。

●捕食者と被食者と、惑いの森
 エレン・ジョーンズワート(魔法使いの犬・h01093)は、集まった√能力者たちを前に、悄然とした鳴き声を漏らした。
「やぁ、すまないね……。今回は、一般人の女の子を敵に食べられないよう助けてあげてほしいんだ」
 エレンは居住まいを正すと、予知した事件について語り出した。
「√汎神解剖機関のヨーロッパ各地で、風土病が流行っているようでね。なんでも、『善なる無私の心の持ち主のみ』が感染する奇病らしい」
 その病に感染した者は、ほとんどの場合オルガノン・セラフィムという怪物に変貌してしまう。しかし、中には怪物にならず真に「天使」と化した……肉体は美しく異質な存在に変貌したが、理性と善の心を失っていない人も存在するようだ。
 今回の予知で言えば、セレナがその「天使」に当たる。
「ゾディアック・サインによれば、セレナは村と隣接している森へ向かったようだ。この森は『惑いの森』と呼ばれ……森の中を進む者は、恐ろしい幻覚に襲われるという」
 自分にとっての一番怖いものが、すぐ後ろから追ってくる幻覚に惑わされるのだ。まっすぐ前を向いて歩き続ければいずれは振り切れるのだが、一度振り返ってしまえば恐怖に囚われ、恐慌状態に陥ったり意識を失ったりするらしい。
「……お母さんは健闘したが、防ぎきれなかったようだ……。セレナさんが森に入った後から、何体かの化け物――天使化に失敗したオルガノン・セラフィムが追いかけてくる。実は、オルガノン・セラフィムは天使を捕食する本能があるのだって」
 元は善良な人間同士が食って食われる関係になるなんて悪夢だね……とエレンはまた鳴き声を漏らす。
「そんな恐ろしい相手に追われながらセレナさんは惑いの森の奥へと向かうのだが……不思議とその足取りは確かで、迷うことがないようだ」
 天使には何か特別な力があるのかな、とエレンは首を傾げた。
「ともあれ、みんなにはまず、森に入ってセレナさんを追いかけてもらいたい。もし他の天使を見かけることがあれば、その人も一緒に連れて行ってほしいな。きっとみんなにも恐怖の幻覚が襲いかかるだろうけれど、惑わされないように気をつけて」
 そうしてセレナに追いついたなら、味方であることを伝え彼女を安全な場所まで護送する。
「道中、敵に追いつかれて戦闘になることもあるかもしれない。それから……オルガノン・セラフィムだけではなく、ヨーロッパの魔術師組織が天使を狙っているという噂もある。万全の体制で臨んでくれれば幸いだよ」
 どうか気をつけて行ってらっしゃい、とエレンは心配そうに尻尾を振った。

●歌声を追って
「ジャックおじさんに、つたえなきゃ……!」
 セレナは森の中を早足で歩いていた。
「ばけものがでたって、もりのなかまでくるかもしれないって、おしえなきゃ……!」
 危機感と使命感に逸る心で道を行くが、分かれ道にさしかかったところで歩みが止まった。
「……ど、どっちだったっけ……?」
 何度かおじさんの家には行ったことがあるものの、両親が連れて行ってくれていたものだからセレナは正確な道順を覚えていなかった。
 途方に暮れて俯いたその時、セレナの耳に馴染みのある声が届いた。
「おかあさんのうただ……!!」
 いつも寝る時に、母が枕元で歌ってくれる子守歌。
 セレナはぱっと顔を上げると、慌てて歌の聞こえる方へ歩き出す。
「おかあさん、まって! いっしょにいこうよ!」
 母は答えず姿も見えなかったけれど、セレナは歌声を頼りに森の奥へと進んでいく。
 ――居ないはずの母の声に導かれるセレナ。それは天からの|贈り物《ギフト》なのかもしれない。
これまでのお話

第2章 集団戦 『オルガノン・セラフィム』


POW 捕食本能
【伸び縮みする爪】による牽制、【蠢くはらわた】による捕縛、【異様な開き方をする口】による強撃の連続攻撃を与える。
SPD 生存本能
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【黄金の生体機械】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【虹色の燐光】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
WIZ 聖者本能
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【頭上に降り注がせた祝福】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
√汎神解剖機関 普通11

●ジャックの家へ向かって
 その後、探索中だった√能力者たちとも合流し、一行は森の奥にあるジャックの家へと向かう。その間に、セレナは村に起こった出来事を語った。
 ある日突然、村に異形の化け物が複数体現れた。化け物は村人たちの家を破壊しながら、何かを探しているようだった。村人にはあまり興味がないようで積極的に襲う様子はなかったが、家を守ろうと立ちはだかった村人は容赦なく殺されてしまった。
「……おかあさんは、むらのひとたちをひなんさせるっていってた。わたしは、ばけものがでたよって、ジャックおじさんにおしえにいくところだったの」
 セレナはマントの裾をぎゅうっと握りしめて√能力者たちを見上げる。
「おかあさん、だいじょうぶだよね……? だって、おかあさんのうた、きこえるもん」
 セレナは森の中で迷いそうになったところを、どこからか聞こえてきた母の歌に導かれて進んだそうだ。√能力者たちは顔を見合わせたものの、誰もその歌は聞いていない。
「いまも、きこえてるのに……。わたしにしか、きこえないの……?」
 セレナは不思議そうに首を傾げた。

 話しながら進んでいた一行だったが、後方から何者かが草木をかき分けながら勢いよく接近してくる気配に臨戦態勢をとる。どうやら、村から追いかけてきた化け物――オルガノン・セラフィムに追いつかれたようだ。
「キィイーーヤァアア――――!!」
 オルガノン・セラフィムはセレナを見つけると雄叫びを上げた。仲間を呼んでいるようだ。じきに集まってくるに違いない。
 幸い、進行方向には回り込まれていない。ジャックの家に向かって逃げつつ、追ってくる敵は叩きのめそう。セレナは集中的に狙われるので守りながら戦ってほしい。